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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064837
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20230502BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20230502BHJP
【FI】
H04B1/04 Z
H04W24/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175224
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 亮介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宜史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】北川 諒真
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】李 傲寒
【テーマコード(参考)】
5K060
5K067
【Fターム(参考)】
5K060HH31
5K060HH32
5K060PP03
5K067AA03
5K067AA26
5K067AA43
5K067DD00
5K067JJ56
(57)【要約】
【課題】早期に通信環境に適応することが可能な通信技術を提供する。
【解決手段】通信装置は、自装置の位置又は時刻の少なくとも一方に応じて変化する情報のうち、特定の瞬間に取得された情報である状態情報を記憶する状態記憶部と、情報通信を行う際に用いられる通信パラメータの演算に用いられる情報と、前記状態情報とを対応付けて内部状態情報として記憶する内部状態記憶部と、状態記憶部に記憶された前記状態情報と、前記内部状態記憶部に記憶された前記内部状態情報とに基づき、前記通信パラメータを演算する演算部と、演算された前記通信パラメータを出力する出力部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置の位置又は時刻の少なくとも一方に応じて変化する情報のうち、特定の瞬間に取得された情報である状態情報を記憶する状態記憶部と、
情報通信を行う際に用いられる通信パラメータの演算に用いられる情報と、前記状態情報とを対応付けて内部状態情報として記憶する内部状態記憶部と、
状態記憶部に記憶された前記状態情報と、前記内部状態記憶部に記憶された前記内部状態情報とに基づき、前記通信パラメータを演算する演算部と、
演算された前記通信パラメータを出力する出力部と
を備える通信装置。
【請求項2】
前記演算部は、機械学習アルゴリズムを含み、
前記内部状態情報は、前記機械学習アルゴリズムにより学習された学習済みパラメータを含む
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記機械学習アルゴリズムとは、強化学習アルゴリズムであって、
前記内部状態情報は、前記強化学習アルゴリズムによって用いられる行動価値関数を含む
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記状態記憶部は、複数の瞬間に取得された前記状態情報を複数記憶し、
前記演算部は、蓄積された複数の前記状態情報に基づき、前記通信パラメータを決定する
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記状態情報を取得する状態情報取得部を更に備える
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記状態情報とは、時刻を示す情報であり、
前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される時刻に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記状態情報とは、環境情報を示す情報であり、
前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される環境情報に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記状態情報とは、自装置の位置情報を示す情報であり、
前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される位置情報に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記位置情報は、測位システムを使って取得された位置座標である
請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記位置情報は、前記状態情報を取得するための電波及び情報通信を行うための電波の双方またはいずれか一方に基づいて推定される
請求項8に記載の通信装置。
【請求項11】
前記演算部は、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報から自装置の周囲の電波の混雑状況を推定し、推定した前記混雑状況に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項12】
前記演算部は、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報から自装置の周囲の人の粗密を推定し、推定した前記人の粗密に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項13】
前記状態情報とは、自装置の周囲が撮像された画像情報であって、
前記演算部は、前記画像情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項11又は請求項12に記載の通信装置。
【請求項14】
前記状態情報とは、自装置の周囲において収音された音声情報であって、
前記演算部は、前記音声情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項11又は請求項12に記載の通信装置。
【請求項15】
前記状態情報とは、自装置の周辺の天気を示す情報であり、
前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される天気を示す情報に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項16】
前記内部状態記憶部は、複数の前記内部状態情報を記憶し、
前記演算部は、記憶された複数の前記内部状態情報のうち、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に対応する前記内部状態情報に基づいて前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項17】
自身とは異なる装置の内部状態を示す情報を、前記内部状態情報として取得する内部状態取得部を更に備え、
前記内部状態記憶部は、取得した前記内部状態情報を記憶し、
前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された前記内部状態情報に基づき、前記通信パラメータを演算する
請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項18】
前記内部状態記憶部に記憶された前記内部状態情報を、所定の継承タイミングにおいて出力する内部状態出力部を更に備える
請求項17に記載の通信装置。
【請求項19】
請求項1から請求項18のいずれか一項に記載の前記通信装置と、一以上の前記通信装置との間で前記内部状態情報の送受信を行う中継装置とを備え、
前記中継装置は、
前記通信装置により出力された前記内部状態情報を、中継情報として取得する中継情報取得部と、
取得した前記中継情報を記憶する中継情報記憶部と、
記憶された前記中継情報を、前記内部状態情報として前記通信装置に出力する中継情報出力部とを備える
通信システム。
【請求項20】
前記中継装置は、複数の前記通信装置から取得した前記中継情報に基づいて共有中継情報を生成する共有中継情報生成部を更に備え、
前記中継情報記憶部は、前記共有中継情報を前記中継情報として記憶し、
前記中継情報出力部は、前記共有中継情報を前記中継情報として出力する
請求項19に記載の通信システム。
【請求項21】
自装置の位置又は時刻の少なくとも一方に応じて変化する情報のうち、特定の瞬間に取得された情報である状態情報を記憶する状態記憶工程と、
情報通信を行う際に用いられる通信パラメータの演算に用いられる情報と、前記状態情報とを対応付けて内部状態情報として記憶する内部状態記憶工程と、
記憶された前記状態情報と、前記内部状態情報とに基づき、前記通信パラメータを演算する演算工程と、
演算された前記通信パラメータを出力する出力工程と
を有する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送信装置と受信装置とを備える無線通信システムにおいて、送信装置から受信装置へ情報を送信する際、周波数が異なる複数のチャネルを使用して無線通信する方法があった。このような無線通信システムにおいて、無線通信の干渉が検出された場合、検出されたチャネルを使用しないことにより、不要な電力消費を防ぐ技術があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-157429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来技術では、無線通信の干渉の有無を検出するまでは、不要な電力消費を防ぐことができなかった。したがって、送信装置が置かれた通信環境によっては、早期に通信環境に適応することが困難である場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、早期に通信環境に適応することが可能な通信技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る通信装置は、自装置の位置又は時刻の少なくとも一方に応じて変化する情報のうち、特定の瞬間に取得された情報である状態情報を記憶する状態記憶部と、情報通信を行う際に用いられる通信パラメータの演算に用いられる情報と、前記状態情報とを対応付けて内部状態情報として記憶する内部状態記憶部と、状態記憶部に記憶された前記状態情報と、前記内部状態記憶部に記憶された前記内部状態情報とに基づき、前記通信パラメータを演算する演算部と、演算された前記通信パラメータを出力する出力部とを備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記演算部は、機械学習アルゴリズムを含み、前記内部状態情報は、前記機械学習アルゴリズムにより学習された学習済みパラメータを含む。
【0008】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記機械学習アルゴリズムとは、強化学習アルゴリズムであって、前記内部状態情報は、前記強化学習アルゴリズムによって用いられる行動価値関数を含む。
【0009】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記状態記憶部は、複数の瞬間に取得された前記状態情報を複数記憶し、前記演算部は、蓄積された複数の前記状態情報に基づき、前記通信パラメータを決定する。
【0010】
また、本発明の一態様に係る通信装置は、前記状態情報を取得する状態情報取得部を更に備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記状態情報とは、時刻を示す情報であり、前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される時刻に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0012】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記状態情報とは、環境情報を示す情報であり、前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される環境情報に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0013】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記状態情報とは、自装置の位置情報を示す情報であり、前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される位置情報に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0014】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記位置情報は、測位システムを使って取得された位置座標である。
【0015】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記位置情報は、前記状態情報を取得するための電波及び情報通信を行うための電波の双方またはいずれか一方に基づいて推定される。
【0016】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記演算部は、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報から自装置の周囲の電波の混雑状況を推定し、推定した前記混雑状況に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0017】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記演算部は、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報から自装置の周囲の人の粗密を推定し、推定した前記人の粗密に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0018】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記状態情報とは、自装置の周囲が撮像された画像情報であって、前記演算部は、前記画像情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0019】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記状態情報とは、自装置の周囲において収音された音声情報であって、前記演算部は、前記音声情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0020】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記状態情報とは、自装置の周辺の天気を示す情報であり、前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された情報であって、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に示される天気を示す情報に対応する情報に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0021】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記内部状態記憶部は、複数の前記内部状態情報を記憶し、前記演算部は、記憶された複数の前記内部状態情報のうち、前記状態記憶部に記憶された前記状態情報に対応する前記内部状態情報に基づいて前記通信パラメータを演算する。
【0022】
また、本発明の一態様に係る通信装置は、自身とは異なる装置の内部状態を示す情報を、前記内部状態情報として取得する内部状態取得部を更に備え、前記内部状態記憶部は、取得した前記内部状態情報を記憶し、前記演算部は、前記内部状態記憶部に記憶された前記内部状態情報に基づき、前記通信パラメータを演算する。
【0023】
また、本発明の一態様に係る通信装置において、前記内部状態記憶部に記憶された前記内部状態情報を、所定の継承タイミングにおいて出力する内部状態出力部を更に備える。
【0024】
また、本発明の一態様に係る通信システムは、上述したいずれかの前記通信装置と、一以上の前記通信装置との間で前記内部状態情報の送受信を行う中継装置とを備え、前記中継装置は、前記通信装置により出力された前記内部状態情報を、中継情報として取得する中継情報取得部と、取得した前記中継情報を記憶する中継情報記憶部と、記憶された前記中継情報を、前記内部状態情報として前記通信装置に出力する中継情報出力部とを備える。
【0025】
また、本発明の一態様に係る通信システムにおいて、前記中継装置は、複数の前記通信装置から取得した前記中継情報に基づいて共有中継情報を生成する共有中継情報生成部を更に備え、前記中継情報記憶部は、前記共有中継情報を前記中継情報として記憶し、前記中継情報出力部は、前記共有中継情報を前記中継情報として出力する。
【0026】
また、本発明の一態様に係る通信方法は、自装置の位置又は時刻の少なくとも一方に応じて変化する情報のうち、特定の瞬間に取得された情報である状態情報を記憶する状態記憶工程と、情報通信を行う際に用いられる通信パラメータの演算に用いられる情報と、前記状態情報とを対応付けて内部状態情報として記憶する内部状態記憶工程と、記憶された前記状態情報と、前記内部状態情報とに基づき、前記通信パラメータを演算する演算工程と、演算された前記通信パラメータを出力する出力工程とを有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、早期に通信環境に適応することが可能な通信技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の実施形態に係る通信システムの装置構成の一例について説明するための図である。
図2】第1の実施形態に係る通信システムの情報通信の一例について説明するための図である。
図3】第1の実施形態に係る送信装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る送信装置の一連の動作について説明するための図である。
図5】第1の実施形態に係る通信パラメータの探索と活用について説明するための図である。
図6】第1の実施形態に係る送信装置が送出するデータのタイミングの一例を示すタイミングチャートである。
図7】第1の実施形態に係る通信履歴情報について説明するための図である。
図8】第2の実施形態に係る通信システムの構成の一例について説明するための図である。
図9】第2の実施形態に係る送信装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態に係る送信装置の機能構成の第1の変形例を示すブロック図である。
図11】第2の実施形態に係る送信装置の機能構成の第2の変形例を示すブロック図である。
図12】第2の実施形態に係る送信装置同士の継承について説明するための図である。
図13】第3の実施形態に係る通信システムの構成の一例について説明するための図である。
図14】第3の実施形態に係る中継装置を中継した場合における継承について説明するための図である。
図15】第3の実施形態に係る中継装置を中継した場合における代理継承について説明するための図である。
図16】第3の実施形態に係る中継装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図17】第3の実施形態に係る中継装置の機能構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下において説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限定されない。
【0030】
[第1の実施形態]
まず、図1から図7を参照しながら、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る通信システムの装置構成の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、通信システム1について説明する。
【0031】
[通信システム]
通信システム1は、送信装置20と、受信装置30とを備える。送信装置20と受信装置30とは、互いに情報通信を行う。通信システム1は、複数の送信装置20と、複数の受信装置30とを備えていてもよい。この場合、それぞれの送信装置20は、一以上の受信装置30との間で情報通信を行う。同図を参照しながら、通信システム1の一例として、一の送信装置20と、複数の受信装置30とを備える場合について説明する。具体的には、受信装置30の一例として、受信装置30-1と、受信装置30-2と、受信装置30-3とを備える場合について説明する。
【0032】
送信装置20と受信装置30とは、互いに近距離無線通信により情報通信を行う。以降の説明において、送信装置20と受信装置30とは、近距離無線通信の一例として、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth)の規格に準拠する無線通信、特にBLE(Bluetooth Low Energy)の規格に準拠する無線通信により情報通信を行う場合の一例について説明する。
本実施形態における近距離無線通信は、BLEの一例に限定されず、種々の通信方式を採用可能である。例えば、近距離無線通信とは、NFC(Near Field Communication)、Wi-Fi(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、TransferJet(登録商標)、ZigBee(登録商標)等であってもよい。あるいは、無線通信は近距離に限定されず、LPWA(Low Power Wide Area)などであってもよい。
【0033】
通信システム1がBLEの規格に準拠する無線通信により情報通信を行う場合、送信装置20はペリフェラルであり、受信装置30は、セントラルであってもよい。
ペリフェラルである送信装置20は、受信装置30を特定せずに送信情報ISを送信する。送信装置20の付近に存在する受信装置30は、送信情報ISを受信した場合に、受信情報IRを送信する。
送信装置20及び受信装置30の間で行われる情報通信とは、所定の周波数帯域の中で複数の通信チャネルが定義された通信方法であってもよい。例えば、送信装置20と受信装置30とは、BLEの規格に準拠する無線通信におけるアドバタイズパケットを用いて情報のやり取りを行ってもよい。
【0034】
図2は、第1の実施形態に係る通信システムの情報通信の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、通信システム1が備える送信装置20と受信装置30との間で行われる情報通信の一例について説明する。
送信装置20は、アルゴリズム231により算出された通信パラメータに基づき、送信情報ISを送信する。通信パラメータとは、例えば、通信に使用する周波数帯、信号の送信間隔や送信回数、又は送信電力等を含んでいてもよい。
【0035】
送信装置20は、制御部21と、無線通信部22とを備える。
無線通信部22は、制御部21から取得した通信パラメータに基づき、アンテナ221から送信する電波を制御する。また、無線通信部22は、アンテナ221により受信した電波に基づく情報を制御部21に出力する。
【0036】
制御部21は、アルゴリズム231を備え、通信パラメータを演算する。制御部21は、アルゴリズム231を備えることにより、通信履歴情報233に基づき通信パラメータを演算する。制御部21は、演算した通信パラメータを指針情報232として随時更新する。制御部21は、演算した通信パラメータを、無線通信部22に出力する。
また、制御部21は、無線通信部22から、アンテナ221により受信した電波の情報を取得する。制御部21は、取得した電波の情報に含まれる劣化率に基づいて、指針情報232を更新する。
【0037】
劣化率とは、通信品質の劣化の程度を示す値であり、例えば、送信装置20が送信した送信情報ISがいずれかの受信装置30に到達したか否かに基づいて算出されてもよい。すなわち、劣化率とは、送信装置20と受信装置30との間で通信が成功したか否かを示す値であってもよい。この場合、劣化率は、2値であってもよい。劣化率が2値である場合、制御部21は、受信装置30が正しく送信情報ISを受け取った場合に返送する制御信号(例えば、ACK信号)等によって算出される。
制御信号の他の実施形態として、BLEのアドバタイズパケットに対するスキャンレスポンス要求の有無を劣化率として用いてもよい、また、セントラル(すなわち、受信装置30)からのコネクション要求の有無を劣化率として用いてもよい。受信装置30が無線通信を介さず、異なる通信手段を用いて、正しく送信情報ISを受け取ったか否かを伝えてもよい。制御部21は、受信装置30が正しく送信情報ISを受け取った場合、劣化率を低く設定する。制御部21は、受信装置30が正しく送信情報ISを受け取った場合、劣化率を0(ゼロ)に設定してもよい。
【0038】
また、他の実施形態として、劣化率とは、アンテナ221が受信装置30から受信した電波に含まれる電波の強度に関する情報に基づいていてもよい。電波の強度に関する情報とは、例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator)等であってもよい。この場合、受信装置30は、不図示の電波強度測定部を備え、送信情報ISを受信した時の電波強度を測定する。受信装置30は、測定した電波強度を送信装置20に受信情報IRとして送信する。制御部21は、受信した受信情報IRに含まれる電波強度が低いほど、劣化率を高く設定する。すなわち、劣化率は、小さいほど、受信装置30に送信した電波が劣化していないことを示す。
【0039】
さらに、他の実施形態として、劣化率は、誤り検出符号あるいは誤り訂正符号により符号化された情報を受信装置30が受け取った際に、その誤り率から算出されたものであってもよい。この場合、受信装置30が備える制御部31は、送信装置20から取得した送信情報ISの誤り率を算出する。受信装置30は、算出した誤り率を受信情報IRとして送信装置20に送信する。送信装置20が備える制御部21は、受信した受信情報IRに含まれる誤り率が高いほど、劣化率を高く設定する。
換言すれば、出力された通信パラメータに基づいて受信装置30に送信される信号は誤り検出機能を持つ符号化方式で符号化されており、劣化率は、受信装置30から受信した信号を復号した際の誤り率に基づく。
【0040】
受信装置30は、制御部31と、無線通信部32とを備える。
無線通信部32は、アンテナ321を介して送信装置20から電波を受信する。制御部31は、無線通信部32から入力された、受信した電波の情報に基づいて、受信した電波の電波強度(RSSI)や、誤り率等を算出する。無線通信部32は、制御部31により算出された電波強度や、誤り率等を受信情報IRとして出力する。
【0041】
ここで、送信装置20と受信装置30とは、同様の装置構成を有していてもよい。すなわち、通信システム1において、ある時点で送信側のふるまいを行う装置を送信装置20と呼称し、送信装置20により送信された電波を受信する装置を受信装置30と呼称する。以降の説明において、送信装置20と受信装置30とを区別しない場合は、通信装置10とも記載する。
【0042】
[送信装置の機能構成]
図3は、第1の実施形態に係る送信装置の機能構成の一例を示すブロック図である。同図を参照しながら、送信装置20の機能構成の一例について説明する。通信システム1の説明において既に説明した構成については、同様の符号を付すことにより、説明を省略する場合がある。
送信装置20は、制御部21と、無線通信部22とを備える。送信装置20は、バスで接続された不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)又はRAM(Random access memory)等の記憶装置等を備え、送信プログラムを実行することによって制御部21と、無線通信部22とを備える装置として機能する。
制御部21は、内部状態記憶部242と、演算部212と、出力部213と、記憶制御部215と、状態記憶部251と、状態情報取得部252とを備える。
【0043】
なお、送信装置20の各機能の全てまたは一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。送信プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。送信プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0044】
状態記憶部251は、状態情報ICを記憶する。状態情報ICとは、自装置の位置又は時刻の少なくとも一方に応じて変化する情報のうち、特定の瞬間に取得された情報である。状態情報ICとは、例えば、時刻を示す時刻情報、自装置の位置を示す位置情報、自装置周辺の環境情報等であってもよい。
なお、自装置の位置を示す位置情報とは、三次元空間における自装置の位置を示す位置情報であってもよいし、二次元的な座標情報における自装置の位置を示す位置情報であってもよい。二次元的な座標情報の場合、高さ(高度)の情報を要しない。
【0045】
状態情報ICが時刻情報である場合、例えば、状態記憶部251は、送信装置20に備えられる不図示の計時部により計時された現在の時刻を記憶してもよい。時刻情報は計時部により更新されてもよい。
状態情報ICが位置情報である場合、例えば、測位システムを使って取得された位置座標であってもよい。当該位置座標は、送信装置20に備えられる不図示のGPS(Global Positioning System)通信部により取得される。GPS通信部は、GPS等の人工衛星から電波を受信する。受信した電波により、自装置の位置が測定される。
状態情報ICが環境情報である場合、例えば、状態記憶部251は、温度、湿度、照度、UV(紫外線)、気圧、騒音、加速度等の環境情報を記憶する。状態情報ICは、環境情報の種類に応じて、送信装置20に備えられる不図示の温度センサ、湿度センサ、照度センサ、紫外線センサ、気圧センサ、騒音センサ、加速度センサ等の環境センサ(環境情報取得部)により取得される。
なお、計時部、GPS通信部、環境センサは、送信装置20外部に備えられていてもよい。この場合、送信装置20は、外部に備えられた計時部、GPS通信部、環境センサから状態情報ICを取得する。
【0046】
送信装置20が状態情報ICをWi-Fi経由で取得する場合、位置情報は、接続されるアクセスポイントの情報に基づいて推定されてもよい。また、位置情報は、アクセスポイントの位置情報と、アクセスポイントから自装置までの距離情報に基づいて推定されてもよい。すなわち、位置情報は、状態情報ICを取得するための電波に基づいて推定されてもよい。
また、位置情報は、状態情報ICを取得するための電波とは異なる情報通信を行うための電波に基づいて推定されてもよい。すなわち、位置情報は、状態情報ICを取得するための電波、及び情報通信を行うための電波の双方またはいずれか一方に基づいて推定されてもよい。
【0047】
計時部、GPS通信部、環境情報取得部等の状態情報ICを取得するための装置を区別しない場合は、状態情報取得装置50とも記載する。
状態情報取得部252は、状態情報ICを、状態情報取得装置50から取得してもよい。
【0048】
なお、状態記憶部251は、複数の瞬間に取得された状態情報ICを複数記憶していてもよい。すなわち、状態記憶部251は、状態情報ICの履歴を記憶していてもよい。
【0049】
内部状態記憶部242は、内部状態情報ISIを記憶する。内部状態情報ISIとは、送信装置20が情報通信を行う際に用いられる通信パラメータPMの演算に用いられる情報と、状態情報ICとが対応付けられた情報である。通信パラメータPMの演算に用いられる情報とは、例えば、機械学習アルゴリズムにより学習された学習済みパラメータであってもよいし、強化学習アルゴリズムによって用いられる行動価値関数であってもよい。
【0050】
なお。内部状態記憶部242は、通信履歴情報IHを記憶する通信履歴情報記憶部211として機能してもよい。
ここで、通信履歴情報IHとは、内部状態情報ISIの一例である。通信履歴情報IHは、情報通信を行うための通信パラメータPMと、当該通信パラメータPMを用いて情報通信を行った際の劣化率Dとが対応付けられた情報である。劣化率Dとは、受信装置30に情報を送信する際に通信パラメータPMを用いて送信された電波と、受信装置30から受信した電波とに基づく値である。例えば、劣化率Dは、劣化率D=(受信した電波の電波強度/送信した電波の電波強度)により定義されてもよい。通信履歴情報記憶部211は、揮発性のRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよいし、不揮発性のROM(Read Only Memory)を含んでいてもよい。
【0051】
演算部212は、状態記憶部251に記憶された状態情報ICと、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIとに基づき、通信パラメータPMを演算する。状態記憶部251に複数の状態情報ICが記憶されている場合、演算部212は、蓄積された複数の状態情報ICに基づき、通信パラメータPMを決定する。
【0052】
状態情報ICが、時刻を示す情報である場合、状態情報ICに示される時刻に対応する情報を内部状態記憶部242から取得し、取得した情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。すなわち、演算部212は、内部状態記憶部242に記憶された情報であって、状態記憶部251に記憶された状態情報ICに示される時刻に対応する情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。
【0053】
同様に、状態情報ICが、環境情報を示す情報である場合、状態情報ICに示される環境情報に対応する情報を内部状態記憶部242から取得し、取得した情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。すなわち、演算部212は、内部状態記憶部242に記憶された情報であって、状態記憶部251に記憶された状態情報ICに示される環境情報に対応する情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。
【0054】
同様に、状態情報ICが、自装置の位置情報を示す情報である場合、状態情報ICに示される位置情報に対応する情報を内部状態記憶部242から取得し、取得した情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。すなわち、演算部212は、内部状態記憶部242に記憶された情報であって、状態記憶部251に記憶された状態情報ICに示される位置情報に対応する情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。
【0055】
状態情報ICの他の一例として、状態情報ICとは、自装置の周囲が撮像された画像情報、又は自装置の周囲において収音及び録音された音声情報であってもよい。この場合、状態情報取得部252は、不図示のカメラ又はマイクから画像情報又は音声情報を取得する。
この場合、演算部212は、取得した画像情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて通信パラメータPMを演算する。同様に、演算部212は、取得した音声情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて通信パラメータPMを演算する。
【0056】
また、演算部212は、状態情報ICから、電波の混雑状態を推定し、推定した混雑状況に基づいて通信パラメータPMを演算してもよい。すなわち、演算部212は、状態記憶部251に記憶された状態情報ICから自装置の周囲の電波の混雑状況を推定し、推定した混雑状況ICに基づいて通信パラメータICを演算する。
【0057】
また、演算部212は、電波の混雑状況に代えて、人の粗密を推定してもよい。この場合、演算部212は、状態記憶部251に記憶された状態情報ICから自装置の周囲の人の粗密を推定し、推定した人の粗密に基づいて通信パラメータPMを演算する。
【0058】
状態情報ICの他の一例として、状態情報ICとは、自装置の周辺の天気を示す情報であってもよい。状態情報ICが自装置の周辺の天気を示す情報である場合、演算部212は、状態情報ICに示される天気を示す情報に対応する情報を内部状態記憶部242から取得し、取得した情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。すなわち、演算部212は、内部状態記憶部242に記憶された情報であって、状態記憶部251に記憶された状態情報に示される天気を示す情報に対応する情報に基づいて通信パラメータPMを演算する。
ここで、天気を示す情報は、気温、湿度、視程、風、雲量、雨、雪、雷などの気象に関する情報を含み、不図示の各種センサによって取得される。あるいは、何らかの通信方法により外部から取得されたものであってもよい。
【0059】
演算部212は、機械学習アルゴリズムを用いて、通信パラメータPMを演算する。機械学習アルゴリズムは、たとえばQ学習、深層強化学習などの状態情報を用いる強化学習アルゴリズムであってよい。機械学習アルゴリズムが強化学習アルゴリズムである場合、機械学習アルゴリズムは劣化率Dから算出される値を報酬として、報酬が最大化するための通信パラメータPMを学習する。なお、劣化率Dが高いほど、報酬は小さい値となることが好ましい。
【0060】
ここで、機械学習アルゴリズムは、予め学習された学習済モデルであってもよい。なお、初回動作時は、機械学習アルゴリズムが未学習である場合がある。そのため、機械学習アルゴリズムは未学習の場合、乱数によって結果が決められてもよい。
機械学習アルゴリズムは、通信履歴情報IHに基づき、学習される。通信履歴情報IHとは、出力部213により出力された通信パラメータPMと、当該通信パラメータPMを用いて情報通信した結果得られる劣化率Dとが対応付けられた情報である。すなわち、演算部212は、出力部213により出力された通信パラメータPMを用いて情報通信した結果得られる劣化率Dに基づき学習される。
【0061】
なお、内部状態記憶部242は、複数の内部状態情報ISIを記憶してもよい。この場合、演算部212は、記憶された複数の内部状態情報ISIのうち、状態記憶部251に記憶された状態情報ICに対応する内部状態情報ISIに基づいて、通信パラメータPMを演算する。
【0062】
演算部212は、演算した通信パラメータPMが含まれるパラメータ情報IPを、出力部213に出力する。
【0063】
出力部213は、演算部212により演算された通信パラメータPMが含まれるパラメータ情報IPを、無線通信部22に出力する。
無線通信部22は、出力部213により出力されたパラメータ情報IPに含まれる通信パラメータPMに基づいて、受信装置30との間で情報通信を行う。
【0064】
記憶制御部215は、無線通信部22から、劣化率Dが含まれる劣化情報IDを取得する。記憶制御部215は、取得した劣化情報IDを、通信パラメータPMと対応づけて、通信履歴情報IHとして通信履歴情報記憶部211に記憶させる。記憶制御部215は、出力部213又は無線通信部22のうち少なくともいずれか一方からパラメータ情報IPを取得し、取得したパラメータ情報IPに含まれる通信パラメータPMと劣化率Dとを対応付けることにより通信履歴情報IHを生成し、生成した通信履歴情報IHを通信履歴情報記憶部211に記憶させる。
【0065】
図4は、第1の実施形態に係る送信装置の一連の動作について説明するための図である。同図を参照しながら、送信装置20の動作の一例について説明する。
演算部212は、状態記憶部251に記憶される状態情報ICと、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIとを参照し、通信パラメータPMを決定する。
【0066】
ここで、内部状態情報ISIの一例について説明する。内部状態情報ISIは、“通信環境”と、“価値関数A”と、“価値関数B”とが対応付けられた情報である。“通信環境”とは、状態情報ICの種類に対応する情報である。状態情報ICが、時刻情報である場合、“通信環境”は時刻に関する情報である。状態情報ICが、位置情報である場合、“通信環境”は位置に関する情報である。状態情報ICが、環境情報である場合、“通信環境”は環境に関する情報である。
“価値関数A”及び“価値関数B”は、いずれも強化学習における行動価値関数であってもよい。
【0067】
図4に示す一例においては、“通信環境”として環境1、“価値関数A”としてA1、“価値関数B”としてB1が対応付けられ、“通信環境”として環境2、“価値関数A”としてA2、“価値関数B”としてB2が対応付けられ、“通信環境”として環境3、“価値関数A”としてA3、“価値関数B”としてB3が対応付けられ、“通信環境”として環境4、“価値関数A”としてA4、“価値関数B”としてB4が対応付けられ、…、“通信環境”として環境n、“価値関数A”としてAn、“価値関数B”としてBn
が対応付けられる(nは1以上の自然数)。
【0068】
演算部212は、状態記憶部251から状態情報ICを取得し、状態情報ICと内部状態情報ISIとに基づいて、通信環境に応じた価値関数を選択し、選択された価値関数に基づいて通信パラメータPMを決定する。
通信パラメータPMには、例えば通信チャネルと、通信強度とが含まれる。
図4に示す一例においては、環境2に応じた価値関数が選択され、選択された価値関数に基づいて、通信チャネルと、通信強度とが決定される。具体的には、通信チャネルとして、チャネル37と、チャネル38とが決定され、通信強度として-8[dBm]が決定される。
【0069】
演算部212は、通信に用いたパラメータと、通信結果に応じて、内部状態記憶部242に記憶される内部状態情報ISIを更新する。
このように、演算部212は、好適な通信パラメータを学習する動作である「探索」と、探索において決定した通信パラメータPMを使用し、通信を行う動作である「活用」を繰り返しながら、情報通信を行う時点において最適な通信パラメータを導く。
【0070】
図5は、第1の実施形態に係る通信パラメータの探索と活用について説明するための図である。同図を参照しながら、アルゴリズム231の「探索」と「活用」について説明する。アルゴリズム231は、演算部212の一例である。
“パラメータA”及び“パラメータB”は、通信パラメータPMの一例である。すなわち、同図を参照しながら説明する一例において、通信パラメータPMは、2つのパラメータを有する。それぞれのパラメータの時間変化を、横軸を時間として示す。“通信”は、アルゴリズム231が「探索」又は「活用」のいずれを行っているかについて、横軸を時間として示す。「探索」は黒塗りの矩形にて、「活用」は白抜きの矩形にて示す。
【0071】
時刻t11において、アルゴリズム231は、「探索」を行う。アルゴリズム231は、パラメータAの値を“A1”に、パラメータBの値を“B1”に決定する。時刻t11から時刻t12にかけて、送信装置20は、決定された通信パラメータPMを用いて情報通信を行う。すなわち、時刻t11から時刻t12にかけて、「活用」を行う。
時刻t12において、アルゴリズム231は、時刻t11から時刻t12にかけて「活用」された結果、蓄積された通信履歴情報IHに基づき、より好適な通信パラメータPMを「探索」する。探索の結果、アルゴリズム231は、パラメータAの値を“A1”から“A2”に、パラメータBの値を“B1”から“B2”に決定する。時刻t12から時刻t13にかけて、送信装置20は、決定された通信パラメータPMを用いて情報通信を行う。
【0072】
時刻t13において、アルゴリズム231は、時刻t11から時刻t12、及び時刻t12から時刻t13にかけて「活用」された結果、蓄積された通信履歴情報IHに基づき、より好適な通信パラメータPMを「探索」する。探索の結果、アルゴリズム231は、パラメータAの値を“A2”から“A3”に、パラメータBの値を“B2”から“B3”に決定する。時刻t13から時刻t14にかけて、送信装置20は、決定された通信パラメータPMを用いて情報通信を行う。
【0073】
上述したように、アルゴリズム231は、「探索」と「活用」とを繰り返しながら、好適な通信パラメータPMを導き、導いた通信パラメータPMに基づき情報通信を行う。
なお、図6に示した一例では、「探索」を行うタイミングである時刻t11、時刻t12、時刻t13、及び時刻t14、はアルゴリズム231により決定された所定のタイミングである。「探索」を行うタイミングは、この一例のように、不定期であってもよいし、定期的なタイミングであってもよい。
【0074】
アルゴリズム231は、具体的には機械学習アルゴリズムである。より具体的には、アルゴリズム231はMAB(Multi Armed Bandit、多腕バンディット)アルゴリズム等であってもよい。すなわち、演算部212は、MABアルゴリズム(多腕バンディットアルゴリズム)を用いて学習されてもよい。
MABアルゴリズムを用いることにより、送信装置20は、少ない消費電力で、確実に受信装置30に向けて情報を発信することができる。
【0075】
[MABアルゴリズム]
以下、MABアルゴリズムについて説明する。MABアルゴリズムは、報酬を得られる確率が明らかでないスロットマシンが複数台ある場合に、限られた試行回数の中で報酬を最大化する問題を解くために使用されるアルゴリズムである。このMABアルゴリズムを用いて好適な通信パラメータPMを決定するためには、送信に必要な電力消費と、受信装置30が正しく情報を受信したか否かのトレードオフを考慮して報酬量を設定しなければならない。
送信装置20は、所定の方法により、通信に要した電力量を取得する。送信装置20は、例えば不図示の電力測定器を備えることにより、実際に消費される電力量を測定してもよい。また、送信装置20は、通信パラメータPMと、電力消費推定量とが対応づけられた不図示の電力消費量対応表を記憶し、電力消費量対応表を参照することにより電力量を取得してもよい。
【0076】
電力消費は少ない方がより好ましいため、電力消費が増えるにしたがって報酬量を減少することが望ましい。電力消費が増えるにしたがって報酬量を減少することにより、MABアルゴリズムであるアルゴリズム231は、電力消費を低減させるように通信パラメータPMを決定することとなり、送信に要する電力量を抑止することができる。劣化率Dは低いほど高品質に(すなわち、確実に)情報を送信できたことを意味するため、劣化率Dが低いほど報酬量を増加させることが望ましい。
【0077】
アルゴリズム231は、算出された劣化率Dを用いて、通信履歴情報IHを構成する。例えば、通信履歴情報IHは、劣化率Dの時系列データであってよい。アルゴリズム231は、劣化率Dの時系列データである通信履歴情報IHに基づき、好適な通信パラメータPMを決定する。
なお、通信履歴情報IHは過去に蓄積された劣化率Dに基づき算出された単一の値であってもよい。
【0078】
他の一例として、通信履歴情報IHを送信装置20に保持する一例に代えて、他の装置から通信履歴情報IHを取得してもよい。他の装置とは、例えば、受信装置30であってもよい。すなわち、他の一例において、受信装置30は、送信装置20に代えて通信履歴情報IHを保持する。この場合、受信装置30は、送信装置20から取りこぼさずに情報を受信できた回数をカウントし、カウントした回数に基づいて劣化率を推定してもよい。この場合、受信装置30は、所定のタイミングにおいて送信装置20に通信履歴情報IHを送信する。
【0079】
また、通信パラメータPMが、その構成要素として複数のパラメータを有し、さらに各パラメータが離散値により構成されている場合、アルゴリズム231は通信パラメータPMが取り得る全ての組み合わせから一つを選ぶことができる。すなわち、アルゴリズム231は、通信パラメータPMに含まれる複数の構成要素の組み合わせのうち、一つの組み合わせを選択することにより、通信パラメータPMを演算する。
具体的には、通信パラメータPMが、構成要素x、構成要素y及び構成要素zを有する場合について説明する。例えば、構成要素xがx1、x2及びx3の三値であり、構成要素yがy1及びy2の二値であり、構成要素zがz1、z2及びz3の三値であった場合、アルゴリズムは18(3×2×3)の組み合わせから一つを選ぶことにより通信パラメータPMを決定できる。このように構成することにより、アルゴリズム231は、容易に複数要素からなる通信パラメータPMを最適に選択することができる。
【0080】
ここで、アルゴリズム231は、ある程度複雑な通信パラメータPMの組み合わせである場合には、UCB(Upper Confidence Bound)1アルゴリズムを用いることができる。この場合、演算部212は、UCB1アルゴリズムを用いて学習される。
また、アルゴリズム231は、スペックが低いマイコンで動作させる必要がある場合には、より軽量なTOW(Tug Of War)アルゴリズムを用いることができる。この場合、演算部212は、TOWアルゴリズムを用いて学習される。
なお、ここでいうUCB1アルゴリズムは、UCB1アルゴリズムと、UCB1-tunedアルゴリズムとを含む。
【0081】
[通信パラメータ]
図6は、実施形態に係る送信装置が送出するデータのタイミングの一例を示すタイミングチャートである。同図を参照しながら、通信パラメータPMの具体的な構成要素について説明する。この一例において、通信パラメータPMは、その構成要素として、「通信チャネル」、「第1の送出間隔SI1」、「第2の送出間隔SI2」、「送信回数ST」、及び「送信電力」を有する。同図に示す一例においては、「通信チャネル」として、BLEのアドバタイズに用いられるアドバタイズチャネルである37ch(2402MHz)、38ch(2426MHz)、39ch(2480MHz)の3チャンネルを用いる。同図には、それぞれのチャネルに送信されるデータの時間変化について、横軸を時間軸として示す。
【0082】
時刻t21から時刻t22において、無線通信部22は、37ch、38ch及び39chのそれぞれに順次データAを出力する。期間T21は、データAの送出に要する期間を示す。
具体的には、無線通信部22は、時刻t21において37chにデータAを出力し、その後、38chにデータAを出力し、その後、39chにデータAを出力する。無線通信部22は、それぞれのチャネルにデータAを出力した後、第1の送出間隔SI1を空けて、再度、それぞれのチャネルにデータAを出力する。これを、所定の送信回数STになるまで繰り返す。図7に示す一例によれば、送信回数STは4であるため、各チャネルにつき、4回ずつ同一のデータを出力する。
すなわち、通信パラメータPMは、第一の送出間隔SI1を含み、無線通信部22は、第一の送出間隔SI1に基づいて、受信装置30に信号を送出する。
【0083】
ここで、第1の送出間隔SI1とは、それぞれのチャネルに同一のデータを送る間隔である。BLEによれば、アドバタイズメント処理は、複数存在するアドバタイズチャネルのそれぞれに対して実行される処理であり、例えば、37、38、39チャネルの3つのアドバタイズチャネルに対して別個に実行される。ここで、各チャネルは、空間中に存在する他の電波と干渉する場合がある。3チャネルともに干渉が発生した場合、又は受信装置30の受信準備が整っていない場合、送信装置20により送信された情報が、受信装置30に到達しない事態が発生する。このような事態に備え、同一のデータを符号化したパケットを複数回にわたって定期的に送信する。
なお、受信装置の受信準備が整っていない場合とは、BLEの受信側(セントラル)において、消費電力を抑えるために断続的に受信動作を行う場合等である。
【0084】
無線通信部22は、時刻t21においてデータAを出力し始めてから第2の送出間隔SI2経過後、データAとは異なるデータBを出力し始める。すなわち、時刻t23から時刻t24において、無線通信部22は、37ch、38ch及び39chにデータBを出力する。第2の送出間隔SI2とは、データが更新され、新たに送信するまでの間隔である。
【0085】
ここで、無線通信部22は、信号を生成し始めてから送出し終えるまでの時間である送出時間の間に受信装置30への情報送出処理を完了する。
演算部212は、無線通信部22により送出された情報を受信装置30が連続して安定的に受信した場合に、送出時間を減少させるように通信パラメータPMを調整してもよい。この場合、演算部212は、受信装置30から受信した受信情報IRに含まれる情報に基づいて、送出時間を減少させるように通信パラメータPMを調整してもよい。
【0086】
なお、無線通信部22により送出された情報を受信装置30が連続して安定的に受信した場合とは、受信装置30により判定されてもよいし、送信装置20により判定されてもよい。送信装置20により判定される場合、送信情報ISに対する応答である受信情報IRがあったか否かに基づいて判定されてもよい。
【0087】
また、無線通信部22は、システムの起動時から想定動作寿命までの間に繰り返し送出処理を行う。システムとは、例えば送信装置20を動作させるシステムであって、システムの起動時とは、送信装置20に電源が投入されたときであってもよい。送信装置20に電源が投入されたときとは、工場出荷前に初めて電源投入されたときであってもよいし、工場出荷後に初めて電源投入されたときであってもよい。
【0088】
この場合、演算部212は、無線通信部22により送出された情報を受信装置30が連続して安定的に受信した場合に、情報送出処理に必要な合計時間を減少させるように通信パラメータPMを調整する。演算部212は、受信装置30から受信した受信情報IRに含まれる情報に基づいて、情報送出処理に必要な合計時間を減少させるように通信パラメータPMを調整してもよい。
【0089】
また、無線通信部22は、同一データを符号化した第1のデータ(データA)を第一の送出間隔SI1に基づいて特定の送信回数STに達するまで送出した後、第1のデータとは異なる第2のデータ(データB)を第二の送出間隔SI2に基づいて送出する。さらに、継続して第二の送出間隔SI2に基づいて、第3、第4、…、第n(nは1以上の自然数)の異なるデータを送出してもよい。
この場合、通信パラメータPMは、第二の送出間隔SI2と、送信回数STを含む。
【0090】
また、演算部212は、無線通信部22により送出された情報を受信装置30が連続して安定的に受信した場合に、送信回数STを減少させるように通信パラメータPMを調整する。演算部212は、受信装置30から受信した受信情報IRに含まれる情報に基づいて、送信回数STを減少させるように通信パラメータPMを調整してもよい。
【0091】
通信パラメータPMに第二の送出間隔SI2が含まれる場合、無線通信部22により送出された情報を受信装置30が連続して安定的に受信した場合に、第二の送出間隔SI2を増加させるように通信パラメータPMを調整してもよい。また、演算部212は、無線通信部22により送出された情報が受信装置30により連続して受信されなかった場合に、第二の送出間隔SI2を増加させるように通信パラメータPMを調整してもよい。また、通信環境が改善し、データが安定的に受信できるようになった場合、第二の送出間隔SI2を減少させる、あるいは元の値に戻してもよい。第二の送出間隔SI2を減少させる、あるいは元の値に戻すことにより、受信装置30と接続されるまでの時間を短くすることができ、安定して接続することができる。
また、第二の送出間隔SI2は、緊急性の高いデータを送信する場合には減少させてもよい。これにより、通常のデータを送信する場合には消費電力を抑制しつつ、緊急性の高いデータを送信する場合には遅延なく受信装置30に送信することができる。
【0092】
[チャネルマスク]
次に、通信パラメータPMの一例であるチャネルマスクについて説明する。チャネルマスクとは、使用帯域の中で複数のチャネルが定義された通信方法を用いる場合、使用するチャネルを決めるための通信パラメータである。使用帯域の中で複数のチャネルが定義された通信方法を用いる場合、通信パラメータPMとして、使用するチャネルを決めるためのチャネルマスクを含んでもよい。
【0093】
換言すれば、チャネルマスクにより指定されるチャネルは通信に使用されないチャネルであってもよい。具体的には、本実施形態における通信方法が、BLE規格で定義されるアドバタイジングである場合、通信チャネルとは、BLE規格で定義されるアドバタイジングチャネルであってもよい。アドバタイジングとは、コネクション可能なアドバタイジングであってもよい。劣化率Dとは、コネクション要求が返答されたかどうかに基づいて算出される値であってもよい。
演算部212は、演算した通信パラメータPMに含まれるチャネルマスクを介して特定の相手方の受信装置30に通信を行った際に、劣化率Dが減少するように通信パラメータPMを決定する。
【0094】
例えば、BLEのアドバタイズ処理は、37、38、39チャネルの3つのアドバタイズチャネルに対して別個に実行される。このとき、38チャネルをマスクすれば37チャネル及び39チャネルによりアドバタイズ処理が行われ、38チャネル及び39チャネルがマスクされれば37チャネルによりアドバタイズ処理が行われる。このとき、当然使用チャネルが少ないほど送信に必要な電力が削減できるが、一方で干渉によって情報が伝達できない確率が増加するといったトレードオフの関係が生じる。
【0095】
送信装置20の置かれた環境が干渉の少ない通信環境であれば、チャネルマスクによって使用するチャネル数を最小限に抑え、かつ最も干渉の確率の少ないチャネルに限定するべきである。また、送信装置20の置かれた環境が干渉の多い通信環境であれば消費電力を犠牲にしてでも使用するチャネルを多く使用するべきである。送信装置20は前もって通信環境の状況を知ることはできないが、チャネルマスクの「活用」と「探索」によって、置かれている通信環境に適応し、小さい電力消費で情報を送信するような好適なチャネルマスクを選択することができる。
【0096】
ここで、単純化された手続きとしては、劣化率Dが増加したときには情報通信に使用するチャネルが増えるようにチャネルマスクを調整するのが好適である。また、劣化率Dが十分に小さいとみなせるときは、通信に使用するチャネルを減少させて電力消費を抑えることが好適である。これらは相反するものであって、アルゴリズム231は情報の確実な伝送と消費電力のトレードオフを考慮して、適切にチャネルマスクを更新することが好適である。
【0097】
一例として、アドバタイジングはスキャン要求を受け入れてもよい。この場合、アドバタイジングパケットを受信したセントラルはスキャン要求を発送でき、劣化率Dは、スキャン要求が返答されたかどうかに基づいて算出される。また、送信装置20が、複数の受信装置30と通信する場合、劣化率Dは、特定の一又は複数の受信装置30がアドバタイジングパケットを受信した数に基づいて算出されてもよい。
【0098】
[送信の時間間隔と回数]
次に、通信パラメータPMの一例である第1の送出間隔SI1、送信回数ST及び第2の送出間隔SI2について、より具体的に説明する。
第1の送出間隔SI1は、同一のデータを送信するための時間間隔である。これは情報の送信を時間的に分散(冗長化)することで干渉の確率を低減させるものである。ただし、単に劣化率に対して手続きを定義するのは現実的ではなく、たとえば、比較的長期間にわたって連続した干渉が発生するような場合には時間間隔を長くすることが望ましい。一方で、バースト的に(短時間に凝縮する形で)干渉が頻発する場合には時間間隔を短くすることが望ましい。こうした通信環境の時間に依存した干渉度合いは、事前に推測することは困難であるため、送信装置20は、「活用」と「探索」を用いて、好適な通信パラメータPMを導き出す。
【0099】
送信回数STは、劣化率Dが増加したときには増加させ、また劣化率Dが十分に小さいとみなせるときは、減少させることが望ましい。これは、送信回数STを減らすことにより所要電力を削減するためである。
第1の送出間隔SI1と、送信回数STとを合わせて考慮すると、同一データを送信完了するまでに必要な時間(必要送出時間、たとえば第1の送出間隔SI1×送信回数ST)を短縮することが電力削減において望ましい。これは、必要送出時間の間は次の送信処理のために不図示の制御部(マイクロコントローラや集積回路、その他の電子回路)が動作を継続する必要があり、必要送出時間が増加するにつれて電力を消費するためである。
【0100】
したがって、必要送出時間は、劣化率Dが増加したときには増加させ、また劣化率Dが十分に小さいとみなせるときは、減少させることが望ましい。必要送出時間は第1の送出間隔SI1と、送信回数STとによって規定されるものであるため、アルゴリズム231は、これらの値を独立して調整する。
【0101】
演算部212は、無線通信部22により送出された情報を受信装置30が連続して安定的に受信した場合に、第一の送出間隔SI1を減少させるように、通信パラメータPMを調整してもよい。
【0102】
第2の送出間隔SI2は、更新された情報を新たに送信する間隔である。たとえば情報の更新の頻度が高くない場合においては、劣化率Dが十分に小さいとみなせるとき、第2の送出間隔SI2を増加させることが望ましい。第2の送出間隔SI2も、装置の稼働開始から稼働終了までの期間における電力消費に影響する。
【0103】
情報を送信する対象の装置である受信装置30が、送信装置20の通信可能範囲内に存在しないと推測される場合においては、無用な情報送出を頻繁に行うことを抑止するために、第2の送出間隔SI2を増加させることが望ましい。これは、例えば、すべてのチャネルを使用し、かつ送信電力を十分に大きくした場合であっても不通であったときなどである。通信の相手方となる受信装置30が復帰したときの場合のためにチャネル数や送信電力はそのまま維持すべきであるが、存在確認の頻度は落とすべきである。
【0104】
上述したような時間的要素(第1の送出間隔SI1、送信回数ST及び第2の送出間隔SI2)は、アルゴリズム231によって決定された数値と必ずしも完全に一致した値で使用する必要はない。例えば、アルゴリズム231により決定された数値に、ある程度の幅を持たせて通信間隔として使用してもよい。すなわち、第1の送出間隔SI1、送信回数ST及び第2の送出間隔SI2は、ランダム値に基づいた時間間隔であってもよい。例えば、決定された数値にランダムな値を加減算して使用すること等により、ランダム値に基づいた時間間隔を実現してもよい。
ランダム値に基づいた時間間隔を用いる方法は、複数機器が通信システム1の手法を利用したときに、互いに間隔が一致することで干渉しあうことを防ぐのに有用である。例えば、装置Aの送信間隔が400[ms(ミリ秒)]であり、装置Bの送信間隔も400[ms]である場合に、タイミングが一致しているため干渉し続ける場合がある。このような場合であっても、ランダム値に基づいて時間間隔を決定すれば、干渉を避けることができる。
【0105】
[送信電力]
送信電力が通信パラメータPMに含まれる場合において、劣化率Dが増加したときには電波の強度を増加させ、劣化率Dが十分に小さいとみなせるときは、電波の強度を減少させることが望ましい。通信環境に適応して電波の強度を加減することにより、所要電力を削減するためである。
【0106】
なお、通信パラメータPMとして、送信装置20が有する構成要素について説明してきたが、受信装置30が有する構成要素を通信パラメータとしてもよい。受信装置30が有する構成要素とは、例えば、受信装置30の通信部のONデューティー比、多段増幅器の段数、受信パケットに対する返答の応答速度等であってもよい。
【0107】
[通信履歴情報の変形例]
図7は、実施形態に係る通信履歴情報の変形例を示す図である。同図を参照しながら、通信履歴情報IHAについて説明する。通信履歴情報IHAは、通信履歴情報IHの変形例である。通信履歴情報IHと同様の構成については、同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。通信履歴情報IHAは、パラメータ識別子PMIDを更に有し、通信パラメータPMとして、チャネルマスクCMと、第1の送出間隔SI1と、送信回数STと、第2の送出間隔SI2と、消費電力PCとを有する点において、通信履歴情報IHと異なる。
【0108】
通信履歴情報IHAは、通信履歴情報記憶部211に記憶され、演算部212は、通信履歴情報記憶部211に記憶された通信履歴情報IHAに基づき、通信パラメータPMを演算する。消費電力PCとは、通信履歴情報IHAに含まれる通信パラメータPMを用いて電波を送信することにより生じる消費電力である。通信履歴情報IHAには、当該通信パラメータPMを用いた際の劣化率Dが対応付けられる。すなわち、演算部212は、通信履歴情報IHAに含まれる通信パラメータPMを用いて電波を送信することにより生じる消費電力PCと、対応する劣化率Dとに基づいて通信パラメータPMを演算する。より具体的には、演算部212は、消費電力PCを低減させるよう通信パラメータPMを演算する。
【0109】
通信履歴情報IHAは、通信パラメータPMとして、チャネルマスクCMと、第1の送出間隔SI1と、送信回数STと、第2の送出間隔SI2と、消費電力PCとを有するため、送信装置20は、より精度よく、通信の信頼性と消費電力とのトレードオフを考慮して、好適な通信パラメータPMを用いて通信することができる。
【0110】
ここで、通信履歴情報IHAは、パラメータ識別子PMIDを有するため、それぞれの通信パラメータPMが取りうる値の全ての組み合わせについて、漏れなく検討することができる。また、通信履歴情報IHAは、パラメータ識別子PMIDを有するため、アルゴリズム231は、好適なパラメータを容易に探し出すことができる。
【0111】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、送信装置20は、状態記憶部251を備えることにより状態情報ICを記憶し、内部状態記憶部242を備えることにより内部状態情報ISIを記憶し、演算部212を備えることにより状態情報ICと内部状態情報ISIに基づいて通信パラメータPMを演算し、出力部213を備えることにより演算された通信パラメータPMを出力する。したがって、本実施形態によれば、状態情報ICに基づいて通信パラメータPMを決定するため、早期に通信環境に適応することができる。
【0112】
また、以上説明した実施形態によれば、演算部212は機械学習アルゴリズムを含み、内部状態情報ISIは、機械学習アルゴリズムにより学習された学習済みパラメータを含む。したがって、本実施形態によれば、機械学習を用いることにより、複数の入力変数(通信の結果、複数の状態情報)に基づいて、好適な通信パラメータPMを決定することができる。
【0113】
また、以上説明した実施形態によれば、機械学習アルゴリズムは、強化学習アルゴリズムであって、内部状態情報ISIは、強化学習アルゴリズムによって用いられる行動価値関数を含む。したがって、本実施形態によれば、自身で探索と活用を繰り返し、環境に適応した通信パラメータPMを早期に決定することができる。
【0114】
また、以上説明した実施形態によれば、状態記憶部251は、複数の瞬間に取得された状態情報ICを複数記憶し、演算部212は、蓄積された複数の状態情報ICに基づき、通信パラメータPMを決定する。したがって、本実施形態によれば、現在の状態だけでなく、過去の状態についても、蓄積・活用することができる。よって、本実施形態によれば、より好適な通信パラメータPMを決定することができる。
【0115】
また、以上説明した実施形態によれば、送信装置20は、状態情報を取得するための状態情報取得部252を更に備える。したがって、本実施形態によれば、送信装置20は、自装置内又は自装置外に備えられたセンサから情報を取得することができる。
【0116】
また、以上説明した実施形態によれば、状態情報ICとは、時刻を示す情報である。ここで、時間帯によって通信状況に変動が生じる場合がある。例えば、多くの人が電波を使用する日中の時間帯は通信状況が悪く、多くの人が電波を使用しない夜間の時間帯は通信状況がよい場合がある。本実施形態によれば、送信装置20は、時間帯により通信状況に変動のある通信環境に適応することができる。
【0117】
また、以上説明した実施形態によれば、状態情報ICとは、環境情報を示す情報である。ここで、周囲の環境によって通信状況に変動が生じる場合がある。例えば、雨の日と晴れの日では、電波を使用する人の数が異なる場合がある。本実施形態によれば、送信装置20は、周囲の環境により通信状況に変動のある通信環境に適応することができる。
【0118】
また、以上説明した実施形態によれば、状態情報ICとは、自装置の位置情報を示す情報である。ここで、自装置の位置によって通信状況に変動が生じる場合がある。例えば、都会と田舎では、電波を使用する人の数が異なる場合がある。本実施形態によれば、送信装置20は、自装置の位置により通信状況に変動のある通信環境に適応することができる。
なお、本実施形態において、位置情報とは、絶対的な位置情報に限定されず、対象物との間における距離・位置関係などの相対的な位置情報も含む。
【0119】
また、以上説明した実施形態によれば、位置情報は、測位システムを使って取得された位置座標である。したがって、本実施形態によれば、送信装置20は、外部に備えられた測位システムから、位置情報又は座標情報を取得することができる。
【0120】
また、以上説明した実施形態によれば、位置情報は、状態情報ICを取得するための電波、及び情報通信を行うための電波の双方またはいずれか一方に基づいて推定される。したがって、本実施形態によれば、GPSの電波を取得できない建物内においても、位置情報を取得することができる。また、本実施形態によれば、GPSにより推定された位置情報に加えて、電波により位置情報特定するため、より簡易に、より詳細に位置情報を推定することができる。
【0121】
また、以上説明した実施形態によれば、演算部212は、状態記憶部251に記憶された状態情報ICから、自装置の周囲の電波の混雑状況を推定し、推定した混雑状況に基づいて通信パラメータPMを演算する。したがって、本実施形態によれば、送信装置20の置かれた通信環境の混線具合を推定し、推定された混線具合に基づいて、自装置の置かれた通信環境に早期に適応することができる。
【0122】
また、以上説明した実施形態によれば、演算部212は、状態記憶部251に記憶された状態情報ICから、自装置の周囲の人の粗密を推定し、推定した人の粗密に基づいて通信パラメータPMを演算する。したがって、本実施形態によれば、周囲の人の粗密に基づいて電波の混雑状況を推定し、推定された混雑状況に基づいて、自装置の置かれた通信環境に早期に適応することができる。
【0123】
また、以上説明した実施形態によれば、状態情報ICとは、自装置の周囲が撮像された画像情報であって、演算部212は、画像情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて通信パラメータPMを演算する。したがって、本実施形態によれば、カメラで取得した画像に基づいて混雑状況を推定することにより、周囲の人の数等から混線具合を推定する。本実施形態によれば、推定された混線具合に基づいて、自装置の置かれた通信環境に早期に適応することができる。
【0124】
また、以上説明した実施形態によれば、状態情報ICとは、自装置の周囲において収音された音声情報であって、演算部212は、音声情報に基づいて推定を行い、推定された結果に基づいて通信パラメータPMを演算する。したがって、本実施形態によれば、マイクが取得した音声情報に基づいて混雑状況を推測することにより、負荷の小さい処理で混線具合を推定することができ、消費電力の低減、及び装置の小型化をすることができる。
【0125】
また、以上説明した実施形態によれば、状態情報ICとは、自装置の周辺の天気を示す情報であり、演算部212は、内部状態記憶部242に記憶された情報であって、状態記憶部251に記憶された状態情報ICに示される天気を示す情報に対応する情報に基づいて通信パラメータを演算する。したがって、本実施形態によれば、通信システム1が天候に影響を受ける通信方法により通信する場合であっても、送信装置20は、環境適応することができる。
【0126】
また、以上説明した実施形態によれば、内部状態記憶部242は、複数の内部状態情報ISIを記憶し、演算部212は、記憶された複数の内部状態情報ISIのうち、状態記憶部251に記憶された状態情報ICに対応する内部状態情報ISIに基づいて、通信パラメータを演算する。すなわち、演算部212は、状態情報ICに対応する内部状態情報ISIを参照し、通信パラメータPMを決定する。したがって、本実施形態によれば、シンプルな処理により、容易に状態情報ICを活用することができる。
【0127】
[第2の実施形態]
次に、図8から図12を参照しながら、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態における通信システム1Aは、複数の送信装置20Aを備える。送信装置20Aは、複数の送信装置20A間において情報通信をする点において、送信装置20とは異なる。以降の説明において、送信装置20A間における情報通信を、「継承」とも記載する。
【0128】
まず、第2の実施形態の前提となる事項について説明する。第2の実施形態に係る送信装置20Aは、安定した外部電源が存在しない場所で稼働することを想定している。安定した外部電源が存在しない場所での稼働においては、電池寿命が尽きると、送信装置20Aは、その動作を継続することができなくなり、電池が充電あるいは交換されるまで動作不能状態であり続ける。
【0129】
また、送信装置20Aの電池は、充電ができず、使い捨てである場合がある。送信装置20Aの電池が使い捨てである場合、送信装置20Aは電池寿命が尽きた段階で廃棄される。しかしながら送信装置20Aによって得られるセンシング情報は重要であり、データの送信を途切れさせることが望ましくない場合、動作不能状態が問題となることがある。
このような場合、送信装置20Aは、自装置の周辺に存在する待機中の別の送信装置20Aに、その機能を継承していく。
【0130】
図8は、第2の実施形態に係る通信システムの構成の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、第2の実施形態における「継承」について説明する。
送信装置20Aの一例として、通信システム1Aは、送信装置20A-1と、送信装置20A-2と、送信装置20A-3とを備える。送信装置20A-1は、継承情報IIを送信装置20A-2に送信する。また、送信装置20A-2は、継承情報IIを送信装置20A-3に送信する。すなわち、送信装置20A-1は、送信装置20A-2に継承し、送信装置20A-2は、送信装置20A-3に継承する。
【0131】
ここで、継承情報IIとは、例えば、送信装置20Aが学習した結果を含む情報である。すなわち、本実施形態によれば、送信装置20A-1により学習された情報を送信装置20A-2に継承する。したがって、本実施形態によれば、送信装置20A-1が製品寿命又は故障等により使用できなくなった場合であっても、送信装置20A-2が送信装置20A-1に置き換わることにより、学習された情報を引き続き活用することができる。同様に、送信装置20A-2が製品寿命又は故障等により使用できなくなった場合であっても、送信装置20A-3が送信装置20A-2に置き換わることにより、学習された情報を引き続き活用することができる。
【0132】
図9は、第2の実施形態に係る送信装置の機能構成の一例を示すブロック図である。同図を参照しながら、送信装置20Aの機能構成の一例について説明する。送信装置20Aの説明において、送信装置20と同様の構成については同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。送信装置20Aは、継承制御部240を更に備える点において送信装置20とは異なる。
【0133】
継承制御部240は、内部状態取得部241と、内部状態出力部244とを備える。継承制御部240は、送信装置20A間にける内部状態情報ISIの継承を制御する。
図9に示す一例においては、送信装置20A-1の一例について説明する。送信装置20A-1は、送信装置20A-2から内部状態情報ISIを継承し、送信装置20A-3に内部状態情報ISIを継承する。以降の説明において、送信装置20A-2を第1装置、送信装置20A-3を第2装置とも記載する。
【0134】
内部状態取得部241は、自身とは別個の装置である送信装置(第1装置)20A-2から、第1装置の内部状態を示す内部状態情報ISIを取得する。内部状態取得部241は、取得した内部状態情報ISIを内部状態記憶部242に記憶させる。すなわち、内部状態記憶部242は、内部状態取得部241により取得された内部状態情報ISIを記憶する。
ここで、自身とは別個の装置とは、互いに通信を行う独立した装置をいう。したがって、同一規格の別個体についても、自身とは別個の装置である。
【0135】
演算部212は、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIに基づいた処理を行う。内部状態情報ISIに基づいた処理とは、例えば、内部状態情報ISIに基づいて情報通信を行うための通信パラメータPMを演算する処理であってもよい。演算部212は、処理を行った結果、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIを更新する。すなわち、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIは、演算部212により行われた処理に基づいて更新される。
【0136】
内部状態出力部244は、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIを、所定の継承タイミングにおいて出力する。具体的には、内部状態出力部244は、送信装置(第1装置)20A-2とは別個の装置である送信装置(第2装置)20A-3に出力する。
【0137】
なお、継承が行われる時点において、継承先の装置の一部の機能は休止状態であってもよい。休止状態にある一部の機能とは、例えば、演算部212等の継承の機能に関与しない機能であってもよい。すなわち、内部状態取得部241が内部状態情報ISIを取得した時点において、演算部212は休止状態であり、内部状態取得部241及び内部状態出力部244は休止状態でない。
【0138】
[第2の実施形態の第1の変形例]
図10は、第2の実施形態に係る送信装置の機能構成の第1の変形例を示すブロック図である。同図を参照しながら、送信装置20Aの第1の変形例について説明する。送信装置20Aの第1の変形例においては、継承タイミング情報取得部245を備える点において、上述した送信装置20Aとは異なる。
【0139】
継承タイミング情報取得部245は、継承タイミング情報ITを取得する。継承タイミング情報ITは、継承をするトリガーとなるタイミングである継承タイミングに関する情報を含む。内部状態出力部244は、取得された継承タイミング情報ITに含まれる継承タイミングに関する情報に基づいて、内部状態情報ISIを出力する。
【0140】
例えば、継承タイミング情報取得部245は、自装置を駆動する電源である電池60の電池残量に関する情報を、継承タイミング情報ITとして取得してもよい。電池60の電池残量に関する情報とは、電源電圧であってもよい。
内部状態出力部は、取得した継承タイミング情報ITに含まれる電池60の電池残量が所定の閾値を下回った場合に、内部状態情報ISIを出力する。電池60の電池残量に関する情報が電源電圧であった場合、内部状態出力部は、電源電圧が所定の閾値を下回った場合に、内部状態情報ISIを出力する。
【0141】
なお、送信装置20Aは、所定の周期に基づいて継承を行ってもよい。この場合、継承タイミング情報ITは、所定の周期に関する情報を含んでいてもよい。
前記内部状態出力部は、取得した前記継承タイミング情報に含まれる所定の周期で前記内部状態情報を出力する。
【0142】
[第2の実施形態の第2の変形例]
図11は、第2の実施形態に係る送信装置の機能構成の第2の変形例を示すブロック図である。同図を参照しながら、送信装置20Aの第2の変形例について説明する。送信装置20Aの第2の変形例においては、故障判定部246を備える点において、上述した送信装置20Aの第1の変形例とは異なる。
【0143】
故障判定部246は、自装置が故障状態にあるか否かを判定する。故障判定部246は、自装置が故障状態にあるか否かに関する情報を、継承タイミング情報取得部245に出力する。継承タイミング情報取得部245は、故障判定部246により判定された結果を、継承タイミング情報ITとして取得する。内部状態出力部244は、自装置が故障状態にある場合に、内部状態情報ISIを出力する。
【0144】
なお、故障判定部246は、演算部212により制御されるウォッチドッグタイマ(WDT)等であってもよい。
【0145】
図12は、第2の実施形態に係る送信装置同士の継承について説明するための図である。同図を参照しながら、送信装置20A同士の継承について説明する。同図に示す一例において、送信装置20Aは、ワイヤレスセンサネットワークを構成するセンサノードである。送信装置20Aをセンサノードと記載する場合がある。
【0146】
図12に示す一例では、送信装置20A-1から、送信装置20A-6の6台の送信装置20Aが示されている。送信装置20A-1は寿命により使用ができず、送信装置20A-2は故障により使用ができない状態である。送信装置20A-3及び送信装置20A-4は稼働状態であり、送信装置20A-5及び送信装置20A-4は待機状態(休止状態)である。
ここで、送信装置20A-3は、送信装置20A-1が寿命により継続的な使用ができなくなった際に、内部状態情報ISIを継承している。また、送信装置20A-4は、送信装置20A-2が故障により動作が停止する際に、内部状態情報ISIを継承している。
【0147】
ここで、センサノードが広範囲の複数の場所に設置される場合、すべてのセンサノードを同時に稼働させる必要がない場合がある。そのため、図12に示す一例においては、送信装置20A-3及び送信装置20A-4が稼働状態であり、送信装置20A-5及び送信装置20A-6が待機状態である。この場合、待機状態である送信装置20A-5及び送信装置20A-6は休止状態として待機し、予備のセンサノードとしての役割を担う。
【0148】
センサノードの1つが動作不能の状態に陥ったとき、そのセンサノード(以下、継承元ノードと記載する場合がある。)は他の1つのセンサノード(以下、継承先ノードと記載する場合がある。)にセンサノードとしての機能を、内部状態情報ISIとして継承する。このとき、継承によって、継承先ノードが稼働状態となり、センサ機能、通信機能等が有効となる。
【0149】
継承先ノードは、継承元ノードと同様の環境におけるセンサ情報を収集することが重要である。したがって、センサノードとしての機能継承のためには当然、継承先ノードは継承元ノードの付近に存在するべきである。すなわち、継承元ノードと継承先ノードは類似の通信環境で動作する。類似の通信環境とは、例えば、設置距離が近い、同一通信網を利用する等である。
本実施形態によれば、センサノードとして蓄積した情報を継承するため、学習した情報が失われることによる新たな学習を一から始める必要がない。すなわち、継承元ノードと継承先ノード間で学習した情報を共有することができるため、継承後即座に通信環境に適応することができる。
【0150】
ここで、継承のタイミングについて説明する。図12を参照しながら説明した一例においては、送信装置20A-1は寿命により使用ができなくなったタイミングにおいて継承し、送信装置20A-2は故障により使用ができなくなったタイミングにおいて継承する一例について説明した。しかしながら継承のタイミングはこれらの一例に限定されず、例えば装置が使用できなくなると判定される前に、継承を行ってもよい。
装置が使用できなくなると判定される前に継承を行う場合、同一の継承元ノード-継承先ノード間において複数回継承することにより、最新の情報を継承できるようにしてもよい。複数回継承することは、定期的に内部状態情報ISIのバックアップを実施することと同等である。したがって、定期的なバックアップにより、不意に内部状態情報ISIが失われることを防ぐことができる。
【0151】
また、センサネットワークの実際の使用上、オンデマンドで稼働ノード数を増やす必要がある場合がある、このような場合にも、継承を行ってもよい。
【0152】
次に、継承先ノードについて説明する。図12を参照しながら説明した一例においては、送信装置20A-1が送信装置20A-3に継承し、送信装置20A-2が送信装置20A-4に継承する一例について説明した。しかしながら継承先ノードはこれらの一例のように1つの装置である場合の一例に限定されず、複数の継承先ノードに継承を行ってもよい。
【0153】
さらに、継承には、いかなる通信機能を用いてもよく、内部状態出力部244による通信機能を介してもよいし、無線通信部22による通信機能を介してもよいし、その他の通信機能であってもよい。継承のための通信は、無線、有線通信を問わない。
【0154】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、送信装置20Aは、内部状態取得部241を備えることにより自身とは別個の装置から内部状態情報ISIを取得し、内部状態記憶部242を備えることにより取得した内部状態情報ISIを記憶し、演算部212を備えることにより記憶された内部状態情報ISIに基づいた処理を行い、内部状態出力部244を備えることにより所定の継承タイミングにおいて内部状態情報ISIを出力する。
したがって、本実施形態によれば、送信装置20Aが意図せず動作不能に陥った場合であっても、内部状態情報ISIを次代へ継承することができる。よって、本実施形態によれば、新たに一から学習をする必要がなく、先代が学習した結果を用いることができる。
よって、本実施形態によれば、送信装置20Aが置き換わった場合であっても、即座に次代の送信装置20Aの使用を開始することができる。
【0155】
また、上述した実施形態によれば、内部状態情報ISIは、演算部212により行われた処理に基づいて更新される。演算部212は、内部状態情報ISIに基づいて通信パラメータPMを演算する。すなわち、内部状態情報ISIは、通信パラメータPMに基づいて更新される。したがって、内部状態情報ISIとは、自装置が置かれた環境に応じて信号通信された結果に基づいて更新される。
したがって、本実施形態によれば、自装置が置かれた環境に応じて信号通信された結果に基づいて更新される内部状態情報ISIを承継するため、学習した結果を時代に継承することができる。
【0156】
また、以上説明した実施形態によれば、演算部212は機械学習アルゴリズムを含み、内部状態情報ISIは、機械学習アルゴリズムにより学習された学習済みパラメータを含む。したがって、本実施形態によれば、機械学習を用いるアルゴリズムで更新される学習済みパラメータを継承することができ、自装置が意図せずに動作不能に陥ったときに学習済みパラメータが失われてしまうことを防ぐことができる。
【0157】
また、以上説明した実施形態によれば、機械学習アルゴリズムは、強化学習アルゴリズムであって、内部状態情報ISIは、強化学習アルゴリズムによって用いられる行動価値関数を含む。したがって、本実施形態によれば、強化学習を用いるアルゴリズムにより更新される行動価値関数を継承することができ、自装置が意図せずに動作不能に陥ったときに行動価値関数が失われてしまうことを防ぐことができる。よって、継承先ノードである送信装置20Aは、強化学習が進んだ状態で処理を再開できる。
【0158】
また、以上説明した実施形態によれば、演算部212は、内部状態情報ISIに基づいて情報通信を行うための通信パラメータPMを演算する。送信装置20Aは、無線通信部22を備えることにより、演算部212により演算された通信パラメータPMに応じた情報通信を行う。したがって、本実施形態によれば、送信装置20Aが何らかの理由で動作不能状態に陥った場合であっても、送信装置20Aの学習結果を別の機器に継承できる。よって、継承先ノードである送信装置20Aは、通信環境に適応した状態で処理を再開することができる。
【0159】
また、以上説明した実施形態によれば、送信装置20Aは、継承タイミング情報取得部245を備えることにより、継承タイミングに関する情報を含む継承タイミング情報ITを取得する。また、内部状態出力部244は、取得された継承タイミング情報ITに含まれる継承タイミングに関する情報に基づいて、内部状態情報を出力する。したがって、送信装置20Aは、好適な継承タイミングにおいて内部状態情報ISIを出力することができる。
【0160】
また、以上説明した実施形態によれば、継承タイミング情報取得部245は、自装置を駆動する電源である電池60の残量に関する情報を、継承タイミング情報ISとして取得する。また、内部状態出力部244は、電池60の電池残量が所定の閾値を下回った場合に、内部状態情報ISIを出力する。したがって、送信装置20Aは、機能が完全に停止してしまう前に、次代に内部状態情報ISIを継承することができる。したがって、送信装置20Aに電池が一つのみである場合等、電池の残量不足により継承自体ができなくなるような事態を防ぐことができる。
【0161】
また、以上説明した実施形態によれば、送信装置20Aは、故障判定部246を備えることにより、自装置が故障状態にあるか否かを判定する。また、継承タイミング情報取得部245は、故障判定部246により判定された結果を、継承タイミング情報ITとして取得し、内部状態出力部244は、自装置が故障状態にある場合に、内部状態情報ISIを出力する。したがって、送信装置20Aは、処理を継続できなくなったときに継承を行うことができる。すなわち、送信装置20Aは、機能停止時に次代に内部状態を継承できる。換言すれば、送信装置20Aは、電源遮断以外の理由であっても、処理が継続できなくなったと判定された場合には、継承を行うことができる。
【0162】
また、以上説明した実施形態によれば、継承タイミング情報ITは、所定の周期に関する情報を含み、内部状態出力部244は、取得した継承タイミング情報ITに含まれる所定の周期で内部状態情報ISIを出力する。したがって、継承元ノードである送信装置20Aは、定期的に継承先ノードに内部状態情報ISIを出力することにより、継承ができない状況に陥った場合であっても、既に継承されている内部状態情報ISIに基づいて処理を再開することができる。
【0163】
また、以上説明した実施形態によれば、内部状態取得部241が内部状態情報ISIを取得した時点において、演算部212は休止状態であり、内部状態取得部241及び内部状態出力部244は休止状態でない。したがって、本実施形態によれば、継承先ノードである送信装置20Aを休止状態とすることにより、センサネットワークを構成する一部のセンサノードの電力を消費せずに予備機として設置することができ、かつ稼働中の装置が機能停止した際に待機装置に機能を継承できる。
【0164】
[第3の実施形態]
次に、図13から図17を参照しながら、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態における通信システム1Bは、送信装置20Aに代えて送信装置20Bを備える点において通信システム1Aとは異なる。また、通信システム1Bは、送信装置20Bに加え、中継装置40を備える。送信装置20Bは、通信システム1Aが送信装置20A間において継承を行うことに代えて、又は加えて、中継装置40に対して継承を行い、中継装置40から継承を行う点において、送信装置20Aとは異なる。送信装置20Bの説明において、送信装置20Aと同様の構成については、同様の符号を付すことにより説明を省略する場合がある。
【0165】
図13は、第2の実施形態に係る通信システムの構成の一例について説明するための図である。同図を参照しながら、送信装置20Bについて説明する。第3の実施形態に係る送信装置20Bは、中継装置40と直接、又は所定のネットワークを介して、接続される。所定のネットワークとは、クラウドシステムであってもよい。
送信装置20Bは、中継装置40に継承情報IIを送信し、中継装置40から継承情報IIを取得する。継承情報IIは、内部状態情報ISIを含んでいてもよい。
【0166】
中継装置40は、送信装置20Bから継承情報IIを取得すると、取得した継承情報IIに含まれる内部状態情報ISIを、記憶部に記憶する。中継装置40は、所定の継承タイミングで、又は送信装置20Bが動作不能になった場合に、送信装置20Bに継承情報IIを出力する。
すなわち、中継装置40は、送信装置20Bの内部状態情報ISIを記憶しており、送信装置20Bが何らかの理由で動作不能になり、かつ継承を行うことができなかった場合に、中継装置40が保持していた継承元ノードの内部状態情報ISIを新たな継承先ノードに継承することができる。この結果、継承先ノードは完全な初期状態からではなく、継承元ノードの内部状態情報ISIを継承した上で処理を継続できる。
【0167】
また、送信装置20Bがセンサネットワークを構成するセンサノードである場合、センサノードは定期的に内部状態を他のセンサノードに送信し、内部状態の複製を行ってもよい。たとえば、他のセンサノードに対して定期的に内部状態を送信し、何らかの理由で継承を実施することが不可能となった場合であっても、複製された内部状態を引き継ぐことが可能な構成にしてもよい。
【0168】
具体的には、複製先のセンサノードは、たとえば将来継承先となるセンサノードであってもよい。この場合、将来継承先となるセンサノードは休止状態であるが、複製元の内部状態のみを保有する。複製元センサノードが動作不能となったときに、将来継承先となるセンサノードは稼働を開始し、複製された内部状態の時点から動作を開始する。複製は中継装置40を介して行われてもよい。
【0169】
また、中継装置40自身が複製された内部状態情報ISIを格納してもよい。複製元センサノードが動作不能となった場合、中継装置40は将来継承先となるセンサノードに対して複製元センサノードの代わりに継承を行う。将来継承先センサノードは、中継装置40から継承された内部状態情報ISIに基づいて動作を開始する。このような構成とすることにより、継承先ノードをすぐに使用することが出来、更に待機電力を減少させることもできる。
【0170】
図14は、第3の実施形態に係る中継装置を中継した場合における継承について説明するための図である。同図を参照しながら、中継装置40を中継した継承の一例について説明する。
同図に示す一例では、送信装置20B-1、送信装置20B-2、送信装置20B-3が、それぞれ中継装置40を中継して継承を行う。送信装置20B-1は寿命又はその他の理由により使用ができない状態である。送信装置20B-2は稼働状態であり、送信装置20B-3は待機状態(休止状態)である。ここで、送信装置20B-2は、送信装置20B-1が寿命又はその他の理由により継続的な使用ができなくなった際に、中継装置40から内部状態情報ISIを継承している。また、送信装置20B-3は、待機状態であるが、次回継承候補であるため、中継装置40を中継して送信装置20B-2の内部状態情報ISIを継承している。
【0171】
図15は、第3の実施形態に係る中継装置を中継した場合における代理継承について説明するための図である。同図を参照しながら、代理継承について説明する。同図を参照しながら説明する一例において、送信装置20Bは、センサネットワークを構成するセンサノードである。
センサノードは、中継装置40に対して定期的に生存確認通信を行う。中継装置40は、センサノードから定期的な生存確認通信を取得することにより、センサネットワークを構成するセンサノードの稼働状態を把握することができる。
【0172】
具体的には、センサネットワークである通信システム1Bは、送信装置20B-1から送信装置20B-5と、中継装置40とを備える。送信装置20B-1は寿命により使用ができず、送信装置20B-2は故障により使用ができない状態である。送信装置20B-3は稼働状態であり、送信装置20B-4及び送信装置20B-5は待機状態(休止状態)である。
ここで、送信装置20B-2は、送信装置20B-1が寿命により継続的な使用ができなくなった際に、中継装置40を中継して内部状態情報ISIを継承している。しかしながら、送信装置20B-2は、継承前に、故障により動作が停止しているため、内部状態情報ISIを次代に継承することができない。
【0173】
そこで、本実施形態によれば、送信装置20B-2に代えて、中継装置40が送信装置20B-3に対して代理継承を行う。このように構成することにより、送信装置20B-1から継承された内部状態情報ISIの情報が失われてしまうことを防ぐことができる。
【0174】
本実施形態において、中継装置40は、センサネットワークを構成するセンサノードの稼働状態を把握することができるため、故障などの理由で動作不能な状態になったセンサノードに対して、代理で継承することができる。
例えば、センサノードからの生存確認通信が途絶えた場合に、中継装置40は、センサノードが動作不能になったと判断し、他のセンサノードに継承を行う。
【0175】
図16は、第3の実施形態に係る中継装置の機能構成の一例を示すブロック図である。同図を参照しながら、中継装置40の機能構成について説明する。
第3の実施形態に係る通信システム1Bは、複数の送信装置20Bと、中継装置40とを備える。具体的には、送信装置20Bとして、送信装置20B-1と、送信装置20B-2とを備える。
中継装置40は、一以上の送信装置20Bとの間で内部状態情報ISIの送受信を行う。具体的には、中継装置40は、送信装置20B-1から内部状態情報ISIを取得し、取得した内部状態情報ISIを記憶し、送信装置20B-2対し記憶した内部状態情報ISIを出力する。
【0176】
中継装置40は、中継情報取得部401と、中継情報記憶部402と、中継情報出力部403とを備える。
中継情報取得部401は、送信装置20Bにより出力された内部状態情報ISIを、中継情報として取得する。中継情報記憶部402は、中継情報取得部401により取得された中継情報を記憶する。中継情報出力部403は、中継情報記憶部402に記憶された中継情報を、内部状態情報ISIとして送信装置20Bに出力する。
【0177】
なお、中継装置40が、センサノードからの生存確認通信が途絶えた場合に、他のセンサノードに継承を行う構成とする場合、送信装置20Bが備える内部状態出力部244は、所定の周期に基づいて中継装置40に内部状態情報ISIを出力する。また、中継装置40が備える中継情報出力部403は、中継情報取得部401が、所定期間以上、送信装置20Bから内部状態情報ISIを取得できなかった場合に、継承先ノードである送信装置20Bに対して中継情報を出力する。
【0178】
図17は、第3の実施形態に係る中継装置の機能構成の変形例を示すブロック図である。同図を参照しながら、中継装置40の変形例について説明する。
本実施形態において、中継装置40は、複数の送信装置20Bの内部状態を中継装置40に蓄積する。中継装置40に蓄積された内部状態は、統合処理され、他の送信装置20Bへの継承時に活用される。
【0179】
本実施形態において、中継装置40は共有中継情報生成部404を備える。
共有中継情報生成部404は、複数の送信装置20Bから取得した中継情報に基づいて、共有中継情報を生成する。この場合、中継情報記憶部402は、共有中継情報を中継情報として記憶する。また、中継情報出力部403は、共有中継情報を中継情報として出力する。
なお、共有中継情報生成部404は、例えば、中継情報取得部401が中継情報を取得したことをトリガーとして、共有中継情報を生成してもよい。すなわち、共有中継情報は、継承の処理を行う際に生成されてもよい。
【0180】
本実施形態において、中継装置40は、複数の送信装置20Bの内部状態を統合処理することにより、他の送信装置20Bの早期適用に寄与することができる。例えば、センサネットワークが広範囲に広がっており、センサノードが広範囲に点在する場合に、本実施形態における構成は有効である。送信装置20Bは、各々のセンサノードが設置された環境情報と内部状態に紐づいて自己学習した内容を、継承時に中継装置40に出力する。
【0181】
このとき、稼働中のセンサノードAと、新たに設置されるセンサノードBとは、場所は離れているものの、似た環境に設置されることとする。センサノードBは、中継装置40によりセンサノードAが学習した情報を継承させる。センサノードBは、搭載するセンサによる測定値によって、センサノードAと似た環境であることが分かるため、継承された内部状態のうちセンサノードAの内部状態を優先的に採用し、センサノードBが置かれた環境に早期に適応させることができる。センサノードが複数台、特に大規模なネットワークを構築できるとき、このような共有中継情報の蓄積による内部状態の共有は有効な手段となる。
【0182】
[第3の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、通信システム1Bは、複数の送信装置20Bと、中継装置40とを備える。中継装置40は、中継情報取得部401を備えることにより送信装置20Bから内部状態情報ISIを取得し、中継情報記憶部402を備えることにより取得した内部状態情報ISIを記憶し、中継情報出力部403を備えることにより記憶した内部状態情報ISIを送信装置20Bに出力する。したがって、本実施形態に係る通信システム1Bによれば、送信装置20Bは、中継装置40を介して継承することができる。
本実施形態によれば、中継装置40を介して継承することができるため、送信装置20B間で継承を行うことができない場合であっても、学習した結果が失われてしまうことを防ぐことができる。
【0183】
また、以上説明した実施形態によれば、中継装置40を介して継承することができるため、中継装置40により各々の送信装置20Bの電池残量や異常を監視することができ、適切な継承のタイミングを制御することができる。
【0184】
また、以上説明した実施形態によれば、送信装置20Bが備える内部状態出力部244は、所定の周期に基づいて中継装置に内部状態情報ISIを出力し、中継装置40が備える中継情報出力部403は、中継情報取得部401が所定期間以上、通信装置20Bから内部状態情報ISIが取得されなかった場合に、中継情報を出力する。したがって、本実施形態によれば、中継装置40は、送信装置20Bの電源が遮断された等により機能を継続できなくなった場合に継承を行うことにより、機能停止時であっても、次代に内部状態情報ISIを継承することができる。
【0185】
また、以上説明した実施形態によれば、中継装置40は、共有中継情報生成部404を疎なることにより、複数の送信装置20Bから取得した中継情報に基づいて共有中継情報を生成する。したがって、本実施形態によれば、複数の送信装置20Bから得られた内部状態を統合又は加工することにより、新たに継承される送信装置20Bが早期学習することができる。
【0186】
また、以上説明した実施形態によれば、共有中継情報は、中継情報取得部401が中継情報を取得したことをトリガーとして生成される。すなわち、共有中継情報は、継承の処理を行う際に生成される。したがって、本実施形態によれば、継承時に内部状態を蓄積することにより、余計な通信処理を発生させることなく、中継装置40に内部状態を蓄積することができる。
【0187】
また、上述した第1の実施形態と、第2の実施形態とは、組み合わせて用いることができる。例えば、第1の実施形態に係る送信装置20において、内部状態記憶部242は、取得した内部状態情報ISIを記憶してもよい。この場合、送信装置20は、内部状態取得部を更に備えることにより、自身とは異なる送信装置20の内部状態を示す情報を、内部状態情報ISIとして取得する。演算部212は、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIに基づき、通信パラメータPMを演算する。
【0188】
すなわち、第1の実施形態に係る送信装置20についても、他の送信装置20から内部状態を継承することができる。したがって、本実施形態によれば、予備の送信装置20を用意しておくことにより、一の送信装置20が動作不能な状態に陥ったときであっても、予備の送信装置20から機能継承し、通信システム1全体として信頼性を向上させることができる。
【0189】
また、第1の実施形態に係る送信装置20は、内部状態出力部を更に備えることにより、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIを、所定の継承タイミングにおいて出力してもよい。すなわち、本実施形態によれば、予備の送信装置20を用意しておくことにより、一の送信装置20が動作不能な状態に陥ったときであっても、予備の送信装置20に対して機能継承し、通信システム1全体として信頼性を向上させることができる。
【0190】
また、第1の実施形態に係る通信システム1は、中継装置40を備えていてもよい。中継装置40は、一以上の送信装置20との間で内部状態情報ISIの送受信を行う。また、中継装置40は、中継情報取得部401を備えることにより内部状態情報ISIを中継情報として取得し、中継情報記憶部402を備えることにより取得した中継情報を記憶し、中継情報出力部403を備えることにより記憶された中継情報を内部状態情報ISIとして出力する。したがって、本実施形態によれば、送信装置20は、中継装置40を介在し、継承することができる。
【0191】
また、第1の実施形態に係る通信システム1においても、中継装置40は、共有中継情報生成部404を備えていてもよい。共有中継情報生成部404は、複数の送信装置20から取得した中継情報に基づいて共有中継情報を生成する。中継情報記憶部402は、共有中継情報を中継情報として記憶し、中継情報出力部403は、共有中継情報を中継情報として出力する。したがって、本実施形態によれば、複数の送信装置20から得られた内部状態を統合又は加工することにより、新たに継承される送信装置20が早期学習することができる。
【0192】
また、第2の実施形態に係る送信装置20Aは、状態記憶部251を更に備えることにより状態情報ICを記憶してもよい。この場合、内部状態記憶部242は、通信パラメータPMの演算に用いられる情報と、状態情報ICとを対応付けて内部状態情報ISIとして記憶する。また、演算部212は、状態記憶部251に記憶された状態情報ICと、内部状態記憶部242に記憶された内部状態情報ISIとに基づき、通信パラメータPMを演算する。したがって、本実施形態によれば、状態情報ICに基づいて通信パラメータPMを決定するため、早期に通信環境に適応することができる。
【0193】
また、第2の実施形態に係る送信装置20Aにおいて、状態記憶部251は、複数の瞬間に取得された状態情報ICを複数記憶し、演算部212は、蓄積された複数の状態情報ICに基づき、通信パラメータPMを決定する。したがって、本実施形態によれば、現在の状態だけでなく、過去の状態についても、蓄積・活用することができる。よって、本実施形態によれば、より好適な通信パラメータPMを決定することができる。
【0194】
以上、送信装置20、受信装置30及び中継装置40が、無線通信により情報通信を行う場合の一例について説明したが、本実施形態は無線通信の一例に限定されない。送信装置20、受信装置30及び中継装置40は、有線通信により情報通信を行ってもよい。送信装置20、受信装置30及び中継装置40が有線通信により情報通信を行う場合、通信間隔、送信電力、通信が多重化されている場合はそのチャネルが通信パラメータとして含まれうる。
この場合、同一線路で接続される他の装置からの干渉を避けながら最小の電力消費で情報を送信することができる。有線通信の一例としては、バス接続、スター接続、メッシュ接続などの一体多、多対多の有線通信方式であってもよい。具体的には、インターネット、I2C(Inter-Integrated Circuit)、SPI(Serial Peripheral Interface)、CAN(Controller Area Network)等の通信方式であってもよい。
【0195】
なお、上述した実施形態における通信システム1が備える各装置、及び各装置が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0196】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0197】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0198】
1…通信システム、10…通信装置、20…送信装置、30…受信装置、21…制御部、211…通信履歴情報記憶部、212…演算部、213…出力部、215…記憶制御部、22…無線通信部、221…アンテナ、231…アルゴリズム、232…指針情報、233…通信履歴情報、31…制御部、32…無線通信部、321…アンテナ、240…継承制御部、241…内部状態取得部、242…内部状態記憶部、243…処理部、244…内部状態出力部、245…継承タイミング情報取得部、246…故障判定部、40…中継装置、401…中継情報取得部、402…中継情報記憶部、403…中継情報出力部、404…共有中継情報生成部、251…状態記憶部、252…状態情報取得部、50…状態情報取得装置、60…電池、IS…送信情報、IR…受信情報、IH…通信履歴情報、IP…パラメータ情報、ISI…内部状態情報、ID…劣化情報、II…継承情報、IC…状態情報、IT…継承タイミング情報、PM…通信パラメータ、D…劣化率、SI1…第1の送出間隔、SI2…第2の送出間隔、ST…送信回数
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
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