(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064928
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230502BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B41J2/14 307
B41J2/14 501
B41J2/16 511
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175387
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 汐視
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF42
2C057AG01
2C057AG29
2C057AG47
2C057AG53
2C057AM40
2C057AN01
2C057AN05
2C057AP22
2C057AP25
2C057AR14
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液室が持ち上がることによるメカクロストークを抑制する液体吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】液体吐出ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズル3aと、隔壁28を介して並設され、複数のノズル3aに連通する複数の個別液室2bと、駆動信号に応じて伸長し、各個別液室2bに供給された液体を加圧する圧力を発生させる複数の駆動手段(圧電素子5a)と、隣り合う駆動手段の間の、隔壁28と対向する部分に配置され、駆動信号に応じて伸長する複数の支柱部5bと、を備え、複数の駆動手段が圧力を発生させるときに、少なくとも一つの支柱部5bを伸長する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、
隔壁を介して並設され、前記複数のノズルに連通する複数の個別液室と、
各個別液室に供給された液体を加圧する圧力を発生させる複数の駆動手段と、
隣り合う前記駆動手段の間の、前記隔壁と対向する部分に配置され、駆動信号に応じて伸長する複数の支柱部と、を備え、
複数の前記駆動手段が前記圧力を発生させるときに、少なくとも一つの前記支柱部を伸長する
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
隣接する二つの前記駆動手段の駆動条件が異なる場合、前記二つの駆動手段の間に配置された前記支柱部を伸長することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
複数の前記駆動手段が駆動する前記個別液室に対向するノズル面は、高さが均一になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
複数の前記駆動手段と複数の前記支柱部とは、一つの圧電部材をダイシングすることによって形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
複数の前記駆動手段と複数の前記支柱部とは、同じ回路による駆動信号で制御されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを備える液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子のダイシングピッチをバイピッチにし、駆動圧電素子間に支柱部を設けることで、メカクロストークを抑制する技術が考えられ既に知られている。
例えば、特許文献1には、液室隔壁変形によるメカクロストークを抑制する目的で、支柱部を収縮する構成が開示されている。
しかし、特許文献1の技術では、液室が持ち上がることよるメカクロストークは抑制されていない。このため、例えば、液室隔壁剛性が高く液室隔壁が変形しないヘッドの場合、メカクロストークの抑制に、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、液室が持ち上がることによるメカクロストークを抑制する液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、
液体を吐出する複数のノズルと、
隔壁を介して並設され、前記複数のノズルに連通する複数の個別液室と、
各個別液室に供給された液体を加圧する圧力を発生させる複数の駆動手段と、
隣り合う前記駆動手段の間の、前記隔壁と対向する部分に配置され、駆動信号に応じて伸長する複数の支柱部と、を備え、
複数の前記駆動手段が前記圧力を発生させるときに、少なくとも一つの前記支柱部を伸長することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液室が持ち上がることによるメカクロストークを抑制する液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図2】
図1のA-A線に沿う液体吐出ヘッドのノズル配列方向の断面説明図である。
【
図3】比較例の液体吐出ヘッドが隣り合う圧電素子に駆動信号を印加したときのノズル面中央部の変位例を説明する図である。
【
図4】比較例の液体吐出ヘッドが隣り合う圧電素子に駆動信号を印加したときのノズル面端部の変位例を説明する図である。
【
図5】比較例の液体吐出ヘッドが圧電素子に駆動信号を印加したときに隔壁が変形する状態例を説明する図である。
【
図6】支柱部の駆動を制御可能とする液体吐出ヘッドの一例を説明する図である。
【
図7】
図6の液体吐出ヘッドが支柱部を収縮した状態例を説明する図である。
【
図8】本実施形態の液体吐出ヘッドが支柱部を伸長した状態例を説明する図である。
【
図9】本発明に係る液体を吐出する装置としての画像形成装置の一例の要部平面説明図である。
【
図11】本実施形態の液体吐出ヘッドを用いる画像形成装置の機能構成例を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0008】
本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
図2は、
図1のA-A線に沿う液体吐出ヘッドのノズル配列方向の断面説明図である。
図1は、液室の長手方向の断面、
図2は、液室の短手方向の断面となる。
【0009】
液体吐出ヘッド100は、ノズル板3と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材6とを積層接合している。そして、振動板部材6の振動領域(ダイアフラム領域、振動板)6aを変位させる圧電アクチュエータ5と、液体吐出ヘッド100のフレーム部材を兼ねている共通流路部材1とを備えている。
【0010】
ノズル板3は、液体を吐出する複数のノズル3aを配列したノズル列を有している。
【0011】
流路板2は、複数のノズル3aに通じる複数の個別液室(圧力室)2b、各個別液室2bにそれぞれ通じる流体抵抗部を兼ねる個別供給流路2a、一つまたは複数の個別供給流路2aに通じる一つまたは複数の中間供給流路2cを形成している。隣り合う個別液室2b、2bは隔壁28にて隔てられ、複数の個別液室2bは隔壁28を介して並設されている。
【0012】
本実施形態では、流路板2は、ノズル板3側から三枚の板状部材2A、2B、2Cを積層して構成している。
【0013】
振動板部材6は、流路板2の個別液室2bの壁面を形成する変位可能な複数の振動領域6bを有する。ここでは、振動板部材6は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層6Aと、厚肉部を形成する第2層6Bで構成されている。
【0014】
そして、薄肉部である第1層6Aで個別液室2bに対応する部分に変形可能な振動領域6bを形成している。振動領域6b内には、第2層6Bで圧電アクチュエータ5と接合する厚肉部である島状の凸部6aを形成している。
【0015】
そして、振動板部材6の個別液室2bとは反対側に、振動板部材6の振動領域6bを変形させる駆動手段(圧力発生手段)としての圧電素子5aを含む圧電アクチュエータ5を配置している。
【0016】
この圧電アクチュエータ5は、ベース部材4上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子5aと支柱部5bとを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0017】
圧電素子5aは、駆動電圧を与えることで振動領域6bを変位させる電気機械変換素子である。圧電素子5aは、駆動信号(電圧)が印加されることにより、伸長、収縮する。圧電素子5aは、駆動信号に応じて伸長すると、各個別液室2bに供給された液体を加圧する圧力を発生させる。
支柱部5bは、隣り合う個別液室2b、2b間の隔壁28と対向する部分に配置され、隔壁28を支えるとともに、駆動信号に応じて伸長する電気機械変換素子である。
【0018】
圧電素子5aは、振動板部材6の振動領域6bの凸部6aに接着剤で接合している。支柱部5bは、振動板部材6の隔壁28に対応する部位に接着剤で接合している。
【0019】
この圧電部材は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて二つの外部電極(端面電極)8に接続され、外部電極8にフレキシブル配線部材7が接続される。フレキシブル配線部材7は、外部電極8へ駆動信号を印加する。
【0020】
共通流路部材1は共通供給流路1bを形成している。共通供給流路1bは、振動板部材6に設けたフィルタ部6dを介して中間供給流路2cに通じている。共通供給流路1bには外部から液体を供給する供給ポート1aが通じている。
【0021】
本実施形態の液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子5aに与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子5aが収縮し、振動板部材6の振動領域6bが引かれて個別液室2bの容積が膨張することで、個別液室2b内に液体が流入する。
【0022】
その後、圧電素子5aに印加する電圧を上げて圧電素子5aを積層方向に伸長させ、振動板部材6の振動領域6bをノズル3aに向かう方向に変形させて個別液室2bの容積を収縮させる。これにより、個別液室2b内の液体が加圧され、ノズル3aから液体が吐出される。
【0023】
そして、圧電素子5aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって、振動板部材6の振動領域6bを初期位置に復元させ、個別液室2bを膨張させ、負圧を発生させる。このとき、共通供給流路1bから個別液室2bへ液体を充填させる。ノズル3aのメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液体吐出のための動作に移行する。
ヘッドの駆動方法については上述の例(引き打ち、押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0024】
また、本実施形態の液体吐出ヘッド100は、
図2に示すように、圧電部材のダイシングピッチをバイピッチにし、圧電素子5aを、個別液室2bを駆動する駆動素子とし、支柱部5bを、隔壁剛性を上げるとともに、個別液室2bの持ち上がりによるメカクロストークを抑制する素子とする。
【0025】
ここで、圧電アクチュエータ5を上述のバイピッチ構成とし、支柱部5bにより隔壁剛性をあげたても、クロストークの抑制が十分ではなく、ノズル面が均一とならない状態例について、比較例の液体吐出ヘッドを用いて説明する。
図3は、比較例の液体吐出ヘッドにおいて、隣り合う圧電素子に駆動信号を印加したときのノズル面中央部の変位例を説明する図である。
図4は、比較例の液体吐出ヘッドにおいて、隣り合う圧電素子に駆動信号を印加したときのノズル面端部の変位例を説明する図である。
図5は、比較例の液体吐出ヘッドにおいて、圧電素子に駆動信号を印加したときに隔壁が変形する状態例を説明する図である。
図4および
図5では、隣り合う圧電素子5aの駆動条件が異なり、駆動と非駆動との境界となる部分の状態例を示す。
【0026】
図3から
図5に示す液体吐出ヘッド100Pは、
図2に示す液体吐出ヘッド100と基本的な構成は同様であるが、外部電極8から支柱部5bに駆動信号が印加されない点が異なる。そこで、
図3から
図5は、
図2のノズル配列方向の断面説明図に、圧電素子5aに駆動信号を印加する外部電極8と、外部電極8から印加される駆動信号による圧電素子5aの伸長方向とを追加した説明図としている。また、非駆動時のノズル面の位置を破線で示している。
【0027】
図3に示すように、液体吐出ヘッド100Pは、駆動時の振動板の変位を支柱部5bが支えきれず、ノズル面が持ち上がる場合が生じる。隣接の駆動ノズル数が多いほど、相互作用が大きくなり、個別液室2bの持ち上り量は大きくなる
図4に示すように、液体吐出ヘッド100Pは、駆動する複数の個別液室2bのうち、端部の個別液室2bの液室持ち上り量は駆動中央部と異なるため、他所と比較して個別液室2bの持ち上がりによるメカクロストーク影響が少ない。例えば、破線で囲む符号T1の部分のノズル面は、非駆動の圧電素子5aに近い側で非駆動時のノズル面と同じ高さとなり、持ち上がった部分との間に傾きが生じている。
【0028】
また、ノズル面の変位に加え、個別液室2bを隔てる隔壁28の変形が生じる場合がある。
図5に示すように、液体吐出ヘッド100Pは、駆動時の個別液室2bにかかる圧力は隔壁28にも発生し、隔壁28の両側の個別液室2bが加圧されている場合には、圧力が均衡し隔壁28は変形しない。しかし、加圧されている複数の個別液室2bのうち、端部となる個別液室2b(以降「駆動端部液室2b1」と記載する)と、駆動端部液室2b1と隣り合う加圧されていない個別液室2b(以降「非駆動端部液室2b2」と記載する)との間の隔壁28では、駆動時の圧力均衡が偏るため隔壁28が変形する。この場合、ノズル3aへかかる圧力が低下するため、駆動端部液室2b1は、吐出効率が低下する。
【0029】
このような問題を解消するため、本実施形態の液体吐出ヘッド100は、支柱部5bの駆動を可能とする構成を用い、支柱部5bを伸長することで、個別液室2bの持ち上がり量を等しくする。
図6は、支柱部の駆動を制御可能とする液体吐出ヘッドの一例を説明する図である。
図6の液体吐出ヘッド100は、支柱部5bにも外部電極8を接続し、支柱部5bの駆動を制御可能な状態にする。
図6は、
図2のノズル配列方向の断面説明図に、圧電素子5aまたは支柱部5bに駆動信号を印加する外部電極8を追加した説明図としている。
【0030】
ここで、特許文献1に開示されている技術について言及する。
図7は、
図6の液体吐出ヘッドが支柱部を収縮した状態例を説明する図である。
図7に示す液体吐出ヘッド100Qは、
図6の構成に、外部電極8から印加される駆動信号による圧電素子5aの伸長方向と、支柱部5bの収縮方向と、隔壁28の変形とを示した説明図としている。また、非駆動時のノズル面の位置を破線で示している。
【0031】
例えば、特許文献1では、個別液室2bの隔壁28の変形を抑制するために、駆動端部液室2b1と非駆動端部液室2b2との間に配置された支柱部5bを収縮させている。
このようにすると、隔壁28の変形は抑制できるものの、ノズル面の持ち上がり量の差異によるクロストークについては改善できない。
また、圧電素子5aを伸長し、支柱部5bを収縮するため、印加する電圧の極性は異なる。このため、駆動信号を生成する回路機構は複雑となる。
【0032】
これに対して、本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル面の持ち上がりの差が生じる問題を解消するため、駆動端部液室2b1と非駆動端部液室2b2との間に配置された支柱部5bを伸長することで、液室持ち上り量を均一にする。
【0033】
図8は、本実施形態の液体吐出ヘッドにおいて、支柱部を伸長した状態例を説明する図である。
図8は、
図6に、外部電極8から印加される駆動信号による圧電素子5aおよび支柱部5bの伸長方向を示した説明図としている。また、非駆動時のノズル面の位置を破線で示している。
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、複数の圧電素子5aに駆動信号が印加され、複数の圧電素子5aが、個別液室2bの液体を加圧する圧力を発生させるときに、複数の個別液室2bにかかる圧力が等しくなるように、少なくとも一つの支柱部5bを伸長する。このようにすると、個別液室2bが持ち上がる場合でも、ノズル面を均一化することが可能になり、液室が持ち上がることによるメカクロストークを抑制し、駆動時の中央部と端部で液体の飛翔速度のばらつきを低減する。
【0034】
具体的には、液体吐出ヘッド100は、隣接する二つの圧電素子5aの駆動条件が異なる場合、二つの圧電素子5aの間に配置された支柱部5bが伸長するとよい。例えば、駆動端部液室2b1と非駆動端部液室2b2との間の支柱部5bを伸長する。このようにすると、単純なシーケンスで実行することができる。
液体吐出ヘッド100は、例えば、複数の圧電素子5aがすべて駆動される場合には、ノズル列の端部に配置された圧電素子5aの端部側の支柱部5bを伸長するとよい。
【0035】
液体吐出ヘッド100は、
図8に示すように、駆動端部液室2b1と非駆動端部液室2b2との間に配置された支柱部5bを伸長し、圧電素子5aが、駆動する複数の個別液室2bに対向するノズル面の高さを均一にするとよい。ここで、高さが均一とは、例えば、駆動する個別液室2bに対向するノズル面の部分について、傾きがなく、非駆動時のノズル面と平行となることする。
図8では、破線で囲む符号T2の部分のノズル面に傾きがなく、高さが均一になっている。このようにすると、測定容易な部位でノズル面の高さを調整することができる。
【0036】
また、本実施形態の液体吐出ヘッド100は、一つの圧電部材をダイシングすることで、圧電素子5aと支柱部5bとを形成することができる。このため、加工が容易となる。
【0037】
さらに、複数の圧電素子5aと複数の支柱部5bとは、同じ回路による駆動信号で制御されるとよい。これは、圧電素子5aおよび支柱部5bともに伸長させるため、印加する電圧の極性は共通となるからである。従って、回路構成も容易となる。
なお、個別液室2bの隔壁28の変形は、隔壁28の剛性が高ければ発生しない。
【0038】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての画像形成装置の一例について
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は同装置の要部平面説明図、
図10は同装置の要部側面説明図である。
【0039】
この画像形成装置400は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0040】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0041】
液体吐出ヘッド100は、液体循環装置(図示せず)と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0042】
この画像形成装置400は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0043】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0044】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0045】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0046】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0047】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0048】
このように構成したこの画像形成装置400においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0049】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0050】
次に、
図9の画像形成装置の機能構成例の概要について説明する。
図11は、本実施形態の液体吐出ヘッドを用いる画像形成装置の機能構成例を説明するブロック図である。
図9と同じ構成は同じ符号としている。
【0051】
画像形成装置400は、制御部500、キャリッジ403、主走査モータ405、副走査モータ416、維持回復モータ517、搬送ベルト412、帯電ローラ519、操作パネル514およびセンサ群515を備える。
【0052】
キャリッジ403は、インクを吐出する液体吐出ヘッド100および液体吐出ヘッド100を駆動するヘッドドライバ509が搭載されている。また、キャリッジ403は、搬送ベルト412によって搬送される用紙に対して、用紙の搬送方向である副走査方向と直角な方向である主走査方向に動かされることにより、用紙の前面に対してインクを吐出して画像形成出力を行う。
維持回復モータ517は、
図9の維持回復機構420を駆動するモータである。
【0053】
操作パネル514は、画像形成装置400に必要な情報の入力及び表示を行うための操作部および表示部として機能するユーザインタフェースである。
センサ群515は、画像形成装置400における様々な情報を検知する各種センサである。具体的には、例えば、センサ群133は、主走査モータ109及び副走査モータ134の回転を検知するための回転検知センサ、用紙の位置を検知するための光学センサ、装置内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検知するインターロックスイッチ等である。
【0054】
帯電ローラ519は、搬送ベルト412を帯電させることにより、画像の出力対象である用紙を搬送ベルト412に吸着させるための静電力を発生させる。
【0055】
制御部500は、画像形成装置全体の制御を司る手段であり、空吐出動作の制御を行う手段を兼ねるCPU(Central Processing Unit)501と、CPU501が実行するプログラムやその他の固定データを格納するROM(Read Only Memory)502と、画像データ等を一時格納するRAM(Random Access Memory)503と、画像形成装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ(NVRAM)504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC(Application Specific Integrated Circuit)505とを備えている。
【0056】
また、制御部500は、印刷制御部508と、モータ駆動部510と、ACバイアス供給部511と、I/O部513と、ホストI/F506などを備えている。
印刷制御部508は、液体吐出ヘッド100を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を有する。
モータ駆動部510は、主走査モータ405と副走査モータ416と維持回復モータ517とを駆動する。
ACバイアス供給部511は、帯電ローラ519にACバイアスを供給する。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。
【0057】
ホストI/F506は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行う。ホストI/F506は、受信バッファを有する。
【0058】
ここで、画像形成装置400が液体を吐出する動作例について説明する。
制御部500において、ホストI/F506は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側からの画像データを、ケーブル或いはネットワークを介して受信し、受信バッファに格納する。
【0059】
CPU501は、ホストI/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ(図示せず)で行っている。
【0060】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROM502に格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、一つの駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0061】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される液体吐出ヘッド100の一行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に液体吐出ヘッド100の液体を吐出させるエネルギーを発生する駆動手段(ここでは圧電素子5a)に対して印加することで液体吐出ヘッド100を駆動する。このとき、ヘッドドライバ509は、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0062】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0063】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0064】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0065】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0066】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0067】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0068】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0069】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0070】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0071】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0072】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0073】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0074】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0075】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0076】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0077】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0078】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0079】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0080】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0081】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 共通流路部材
2 流路板
2b 個別液室
2b1 駆動端部液室
2b2 非駆動端部液室
3 ノズル板
4 ベース部材
5 圧電アクチュエータ
5a 圧電素子
5b 支柱部
6 振動板部材
6a 振動領域
28 隔壁
100 液体吐出ヘッド
400 画像形成装置
500 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】