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特開2023-64929液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023064929
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230502BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175392
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】長橋 和人
(72)【発明者】
【氏名】米田 良太
(72)【発明者】
【氏名】益田 俊顕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 猛
(72)【発明者】
【氏名】三輪 圭史
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF21
2C057AF93
2C057AG14
2C057AN05
2C057AP25
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】液体の吐出性能の変動を低減する液体吐出ヘッドを提供すること。
【解決手段】液体吐出ヘッド300aは、液体を加圧する圧電素子12と、圧電素子12を保持する保持基板50と、液体が吐出される複数のノズル4を有し、保持基板50に接合されるノズル板1と、保持基板50のノズル板1が接合される面と逆の面に、接着剤90を介して保持基板50と接合するフレーム70aと、を備える。フレーム70aは、保持基板50との接合面に、少なくとも一つの凸形状としてのボス71aを有し、ボス71aは、ボス71aを液体吐出方向に投影したとき、圧電素子12と重ならない位置に配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を加圧する圧電素子と、
前記圧電素子を保持する保持基板と、
液体が吐出される複数のノズルを有し、前記保持基板に接合されるノズル板と、
前記保持基板の前記ノズル板が接合される面と逆の面に、接着剤を介して前記保持基板と接合するフレームと、を備え、
前記フレームは、前記保持基板との接合面に、少なくとも一つの凸形状を有し、
前記凸形状は、前記凸形状を液体吐出方向に投影したとき、前記圧電素子と重ならない位置に配置される
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記保持基板は、ダンパーを有し、前記圧電素子を支える基板と、前記ダンパーを保持する基板とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記接合面は、四角形であり、
少なくとも一つの前記凸形状は、複数であり、前記フレームの四隅に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
複数の前記凸形状は、前記四隅から、少なくとも二つの辺に沿って、中央に向かって、任意の間隔で複数配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記保持基板は、前記凸形状と対向する部分の反対側となる面の部分に、溝が形成されてない
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記凸形状は、
高さが、20から100マイクロメートルであり、
前記保持基板と対向する面の形状が、円形または角がフレット処理された多角形である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを備える液体吐出ユニット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、または、請求項7に記載の液体吐出ユニットを備える液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニットおよび液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドとして、例えば、複数の圧電素子が配列されたアクチュエータ部材上に、圧電素子を覆う保持部材を接合し、保持部材が、個別液室へ液体を供給する共通液室を形成するフレームと接着剤で接合したものが知られている。
しかし、液体吐出ヘッドでは、接着剤よる接合時に異物を挟み込むことで、局所的に強く加圧され圧電素子やその周辺の構造が変形して、液体の吐出性能に影響を及ぼすという問題があった。
例えば、特許文献1、2は、接着剤を介して二つの部材を接合する技術を開示しているが、異物の挟み込みが圧電素子の吐出性能に影響を及ぼすことに着目しているものではなく、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、液体の吐出性能の変動を低減する液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、
液体を加圧する圧電素子と、
前記圧電素子を保持する保持基板と、
液体が吐出される複数のノズルを有し、前記保持基板に接合されるノズル板と、
前記保持基板の前記ノズル板が接合される面と逆の面に、接着剤を介して前記保持基板と接合するフレームと、を備え、
前記フレームは、前記保持基板との接合面に、少なくとも一つの凸形状を有し、
前記凸形状は、前記凸形状を液体吐出方向に投影したとき、前記圧電素子と重ならない位置に配置されるものとする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液体の吐出性能の変動を低減する液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成例の概要を説明する図である。
図2】実施形態1の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。
図3図2の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図2のIIIA-IIIA線に沿った断面図であり、(B)は、図2のIIIB-IIIB線に沿った断面図である。
図4】実施形態2の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。
図5図4の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図4のVA-VA線に沿った断面図であり、(B)は、図4のVB-VB線に沿った断面図である。
図6】比較例1の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。
図7図6の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図6のVIIA-VIIA線に沿った断面図であり、(B)は、図6のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
図8】比較例2の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。
図9図8の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図8のIXA-IXA線に沿った断面図であり、(B)は、図8のIXB-IXB線に沿った断面図である。
図10】異物の挟み込みによるVj低下発生率を説明する表である。
図11】ボスによるVj低下の抑制効果を説明する図である。
図12】本発明に係る液体吐出ヘッドを用いるヘッドモジュールの一例のヘッド短手方向に沿う断面説明図である。
図13】同ヘッドモジュールの分解斜視説明図である。
図14】同じくベース部材、ヘッド及びカバー部材の分解斜視説明図である。
図15】同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
図16】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
図17】同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
図18】本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例の要部平面説明図である。
図19】同装置の要部側面説明図である。
図20】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
図21】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る液体吐出ヘッドの構成例の概要を説明する図である。
液体吐出ヘッド300は、複数のノズルを有するノズル板1と、圧電素子を保持する保持基板50と、保持基板50と接着剤を介して接合するフレーム70とを備える。
ノズル板1は、保持基板50に接合され、フレーム70は、保持基板50のノズル板1が接合される面と逆の面に接合される。
液体吐出ヘッド300は、フレーム70を保持基板50の上層とする。
以下、各実施形態を説明する。
【0009】
実施形態1.
図2は、実施形態1の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。図2は、液体吐出ヘッド300aを上面(フレーム70a側)から見た図であり、共通液室10、圧電素子12および凸形状としてのボス71aの配置を透過して示している。
図3は、図2の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図2のIIIA-IIIA線に沿った断面図であり、(B)は、図2のIIIB-IIIB線に沿った断面図である。
【0010】
保持基板50は、例えば、ノズル4に連通する個別液室6を構成する液室部材51と、ノズル板1と反対側で液室部材51と接合し、圧電素子12を配列したアクチュエータ部材53と、圧電素子12を収容する凹部が形成された保持部材55と、を有する。ここでは詳細な説明を省略する。
【0011】
フレーム70は、個別液室6に液体を供給する共通液室10と、液体を共通液室10へ供給する開口部16とを有する。
フレーム70は、保持基板50と接合する接合面に、ボス71aが形成され、保持基板50と接着剤90によって接合されている。
ボス71aは、ボス71aを液体吐出方向に投影したとき、圧電素子12と重ならない位置に配置される。
ボス71aは、保持基板50と対向する対向面を、例えば、角がフィレットされた四角形とするとよい。図2の右側に、対向面の形状例を拡大して示している。
【0012】
フレーム70aは、ボス71aの対向面が保持基板50と接着剤90を介して接触する。このようにすると、ボス71aの対向面と保持基板50との間の距離は、接合面のうちボス71aが配置されていない面と保持基板50との間の距離より短くなり、フレーム70aの接合面のうち、ボス71aを設けない面は、保持基板50との間に介在する接着剤90が、ボス71aを設けた部分より厚くなる。これにより、ボス71aの対向面と保持基板50との間のような接触面積を削減することが可能になる。
このように、ボス71aによりフレーム70aと保持基板50との間にギャップを設けることで、液体吐出ヘッド300aは、異物挟み込みによる圧電素子12の変形を低減し、液体の吐出性能の変動を低減することができる。
【0013】
フレーム70aは、圧電素子12の上方に位置する接合面の部分にボス71aを配置しないように構成する。このようにすると、異物を挟み込んだ場合の圧電素子12の変形を抑制するとともに、ボス71aによる圧電素子12の変形を防止することができる。
【0014】
また、ボス71aは、四角形のフレーム70aの少なくとも四隅に配置されるとよい。このようにすると、保持基板50のそりや変形を抑制することができる。
【0015】
さらに、保持基板50は、振動エネルギーを消散させて衝撃または振動の振幅を軽減するダンパー57を有するとよい。保持基板50は、例えば、圧電素子12を配置したアクチュエータ部材53を保持する保持する圧電素子保持基板と、ダンパー57を保持するダンパー保持基板とを有するとよい。
このようにすると、圧電素子12により生じる振動などが、フレーム70aに伝わることを軽減することができる。
なお、図3では保持部材55がダンパー57を有する構成例を示しているが、ダンパー57を設けない保持基板50であってもよく、ボス71aにより生じる圧電素子12の変形を抑止する効果を生じさせることができる。
【0016】
実施形態2.
図4は、実施形態2の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。図4は、液体吐出ヘッド300bを上面から見た図であり、共通液室10、圧電素子12およびボス71bの配置を透過して示している。
図5は、図4の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図4のVA-VA線に沿った断面図であり、(B)は、図4のVB-VB線に沿った断面図である。
【0017】
実施形態2では、ボス71bの対向面が円形であり、フレーム70bの四隅に加え、さらに複数配置されている点が、実施形態1と異なる。他の部分は実施形態1と同様である。
ボス71bは、フレーム70bの四隅から、少なくとも二つの辺に沿って、中央に向かって、任意の間隔(例えば等間隔)で複数配置されるとよい。
ボス71bを四隅以外に複数設け、保持基板全体の反りや変形を抑えることで、圧電素子の変形を抑制することができる。また、保持基板50の剛性が弱い場合でも、保持基板の変形を抑制することができる。
【0018】
その他の実施形態.
以降の説明では、フレーム70a、70bまたはボス71a、71bを区別しないときには、フレーム70またはボス71と称する。
上記各実施形態において、保持基板50は、ボス71が接触する面と反対側の面には溝を形成しないことが好ましい。このようにすると、ボス71による保持基板50の変形を防止することができる。
【0019】
また、ボス71の高さは想定される異物サイズより高くし、低粘度の接着剤も使用可能にするために最低限の高さにするとよい。例えば、ボス71の高さは、20から100マイクロメートル(μm)とするとよい。
【0020】
さらに、ボス71は、対向面を、円または楕円などの円形状、もしくは、多角形の場合は角がフィレットされている形状とするとよい。このようにすると、保持基板50の損傷や応力の集中を防ぐことができる。
【0021】
上記各実施形態では、フレーム70にボス71を設けた構成例を説明したが、保持基板50に(保持基板50がフレームと接合する接合面に)、保持基板側凸形状としてのボスを設けてもよい。
また、フレーム70と保持基板50との両方にボスを設けてもよい。両方にボスを設ける場合には、ボス同士が接触しないように配置するとともに、圧電素子の上方に配置しないようにするとよい。フレーム70と保持基板50とに配置されるボスが、フレーム70の四隅から、少なくとも二つの辺に沿って、中央に向かって、任意の間隔となるように、交互に(または、二つずつ連続して交互にするなどの所定の規則に基づいて)複数配置されてもよい。
【0022】
<評価結果>
以下、実施形態1、2の液体吐出ヘッドについて、比較例1、2を用いて、液体の吐出性能の変動を評価した結果を説明する。液体の吐出性能として、液体吐出ヘッドがノズルから液体を吐出する速度Vjを用いて評価する。以降、「速度Vj」を「Vj」と称することもある。
【0023】
まず、比較例について説明する。
比較例1.
図6は、比較例1の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。図6は、液体吐出ヘッド300p1を上面から見た図であり、図2、4と同様に、圧電素子12などの配置を透過して示している。
図7は、図6の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図6のVIIA-VIIA線に沿った断面図であり、(B)は、図6のVIIB-VIIB線に沿った断面図である。
比較例1の液体吐出ヘッド300p1は、フレーム70p1にボス71を設けていないこと以外は実施形態1と同様である。
【0024】
比較例2.
図8は、比較例2の液体吐出ヘッドの構成例を説明する図である。図8は、液体吐出ヘッド300p2を上面から見た図であり、図2、4と同様に、圧電素子12などの配置を透過して示している。
図9は、図8の液体吐出ヘッドの断面を説明する図であり、(A)は、図8のIXA-IXA線に沿った断面図であり、(B)は、図8のIXB-IXB線に沿った断面図である。
比較例2の液体吐出ヘッド300p2は、フレーム70p2の接合面において、ボス71bの配置を変更した以外は実施形態2と同様である。詳細には、液体吐出ヘッド300p2は、ボス71bの数を実施形態2と同じとし、配置するボス71bのうち四つのボス71bを圧電素子12の上方に移して配置した。
【0025】
実施形態1、2および比較例1、2の液体吐出ヘッドを用いて、フレームと保持基板とを接着剤を用いて接合し、フレーム/保持基板間の異物挟み込みによるVj低下発生率と、ボスによるVj低下の抑制効果とを評価した。
図10は、異物の挟み込みによるVj低下発生率を説明する表である。
図11は、ボスによるVj低下の抑制効果を説明する図である。
【0026】
図10において、N数は、液体吐出ヘッドのヘッド数であり、30個とした。
異物挟み込みによるVj低下発生率[%]は、30個のヘッドのうち、Vj低下が発生したヘッドの割合を示す。
【0027】
図10に示すように、異物の挟み込みによるVj低下の発生率については、比較例1に比べボスを設けた実施形態1、2と比較例2とが小さい結果であった。
これは、ボスを設けたことでフレームと保持基板の間にギャップができ、異物を挟みこんだ場合も圧電素子の変形が抑制されたためである。
【0028】
図11において、異物の挟み込みがない液体吐出ヘッドと、異物の挟み込みがある液体吐出ヘッドとを用い、7m電圧で、ノズルから液体を吐出させたときの速度Vjの変化を示した。各グラフの縦軸は、速度Vj[m/s]であり、横軸はチャネル(ch)である。ここでは、400個のチャネルを有する液体吐出ヘッドを用い、各チャネルの位置を0(ゼロ)から400として示す。
【0029】
図11に示すように、速度Vjについては、フレームにボスが設けられかつ圧電素子上にボスが配置されていない実施形態1、2では、異物挟みの有無に関係なくチャネルごとの変化は小さい。
一方、ボスがない比較例1では、異物の挟み込みがあることで速度Vjの低下が発生した。また、ボスが圧電素子上に配置されている比較例2では、異物挟み込みの有無に関係なく速度Vjの低下が発生した。
図11では、破線の丸印を用いて、異物を挟み込んだ箇所(比較例1)とボスの位置(比較例2)を示している。
【0030】
実施形態1、2では、フレームと保持基板の間に、接着剤による十分なギャップが設けられており、フレームと保持基板との間に異物が挟み込まれた場合でも保持基板の局所的な加圧が発生しないため、速度Vjの低下が発生しなかった。
比較例1は、フレームにボスがないため異物が保持基板を局所的に加圧し圧電素子が変形したため速度Vjの低下が発生した。
比較例2は、異物の挟み込みよる速度Vjの低下はないもののボスが保持基板を局所的に加圧したため、速度Vjが低下した。
【0031】
以上の結果から、異物挟み込みによるVj低下発生率、Vj低下の抑制において実施形態1、2の構成が優位であるといえる。
【0032】
以下、上述した本発明の特徴を用いることができる液体吐出ヘッドを用いるヘッドモジュール(「液体吐出ユニット」とも称する)の構成例を説明する。図12は、本発明に係る液体吐出ヘッドを用いるヘッドモジュールの一例のヘッド短手方向に沿う断面説明図、図11は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、図14は同じくベース部材、ヘッド及びカバー部材の分解斜視説明図、図15は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【0033】
ヘッドモジュール110は、複数の液体吐出ヘッド100と、ベース部材102と、カバー部材103と、放熱部材104と、マニホールド105と、プリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0034】
複数の液体吐出ヘッド100は、ノズル4を形成したノズル板1と、ノズル4に通じる個別液室6などを形成する個別流路板20と、圧電素子12を含む振動板30と、振動板30に積層した中間流路板59と、中間流路板59に積層した共通流路部材60などを備えている。
【0035】
個別流路板20は、個別液室6とともに、個別液室6に通じる供給側個別流路22、個別液室6に通じる回収側個別流路24を形成している。
【0036】
中間流路板59は、供給側個別流路22に振動板30の開口31を介して通じる供給側中間個別流路56と、回収側個別流路24に振動板30の開口32を介して通じる回収側中間個別流路52とを形成している。
【0037】
共通流路部材60は、供給側中間個別流路56に通じる供給側共通流路61と、回収側中間個別流路52に通じる回収側共通流路72を形成している。供給側共通流路61はマニホールド105の流路151を介して供給ポート81に通じている。回収側共通流路72はマニホールド105の流路152を介して回収ポート82に通じている。
【0038】
プリント基板106と液体吐出ヘッド100の圧電素子12とはフレキシブル配線部材92を介して接続され、フレキシブル配線部材92にはドライバIC(駆動回路)91が実装されている。
【0039】
本実施形態では、複数の液体吐出ヘッド100が間隔を空けてベース部材102に取付けられている。液体吐出ヘッド100のベース部材102への取付けは、ベース部材102に設けた開口部121に液体吐出ヘッド100を挿入し、ベース部材102に接合固定したカバー部材103に、液体吐出ヘッド100の個別流路板20の周縁部を接合して固定している。また、液体吐出ヘッド100の共通流路部材60の外部に設けたフランジ部60aをベース部材102に接合して固定している。
【0040】
なお、液体吐出ヘッド100とベース部材102に固定構造は限定されるものではなく、接着、カシメ、ねじ固定などで行うことができる。
【0041】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図16及び図17を参照して説明する。図16は同装置の概略説明図、図17は同装置の液体吐出ユニットとしてのヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0042】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連帳紙、シート材などの連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0043】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0044】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0045】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ551A、551B、551C、551D(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
【0046】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0047】
ヘッドアレイ551は、例えば、本発明に係る液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0048】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について図18及び図19を参照して説明する。図18は同装置の要部平面説明図、図19は同装置の要部側面説明図である。
【0049】
この印刷装置400は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0050】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0051】
液体吐出ヘッド100は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0052】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0053】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0054】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0055】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド100の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0056】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド100のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0057】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0058】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0059】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0060】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図20を参照して説明する。図20は同ユニットの要部平面説明図である。
【0061】
この液体吐出ユニット440a、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド100で構成されている。
【0062】
なお、この液体吐出ユニット440aの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0063】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図21を参照して説明する。図21は同ユニットの正面説明図である。
【0064】
この液体吐出ユニット440bは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド100と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0065】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド100と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0066】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0067】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0068】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0069】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0070】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0071】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0072】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0073】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0074】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0075】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0076】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0077】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0078】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0079】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0080】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0081】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0082】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0083】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0084】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0085】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。また、上述の実施形態は、2以上の実施形態を適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0086】
1 ノズル板
4 ノズル
6 個別液室
10 共通液室
12 圧電素子
16 開口部
50 保持基板
51 液室部材
53 アクチュエータ部材
55 保持部材
57 ダンパー
70、70a、70b フレーム
71a、71b ボス(凸形状)
90 接着剤
100、300、300a、300b 液体吐出ヘッド
400、500 液体を吐出する装置
440、440a、440b 液体吐出ユニット
550 ヘッドユニット(液体吐出ユニット)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0087】
【特許文献1】特開2017‐71163号公報
【特許文献2】特開2005‐131948号公報
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