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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065011
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20230502BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230502BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/01 301
B41J2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175543
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】三輪 圭史
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA06
2C056HA07
2C056HA16
2C056HA23
2C057AF65
2C057AF70
2C057AN01
2C057AN05
2C057AP25
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル保護部材と接合部材との間の封止性を確保しつつ接合力を向上させる。
【解決手段】液体を吐出するノズルが設けられたノズル板31と、ノズル板31の液体吐出方向を向くノズル面31aのうち、ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材23と、ノズル保護部材23に対して接着剤を介して接合される接合部材32を備える液体吐出ヘッドであって、接合部材32のノズル保護部材23に対して接合される接合部のうち、液体吐出ヘッドの短手方向に延在する部分81Yに、接着剤が充填される凹部80が設けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルが設けられたノズル板と、
前記ノズル板の液体吐出方向を向くノズル面のうち、前記ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材と、
前記ノズル保護部材に対して接着剤を介して接合される接合部材を備える液体吐出ヘッドであって、
前記接合部材の前記ノズル保護部材に対して接合される接合部のうち、液体吐出ヘッドの短手方向に延在する部分に、前記接着剤が充填される凹部が設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記凹部は、前記接合部材の前記ノズル保護部材に対して接合される接合部のうち、液体吐出ヘッドの短手方向に延在する部分のみに設けられる請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記接合部材は、前記ノズル板の前記ノズル面とは反対の面側に配置され、前記ノズルへ供給される液体の流路を形成する流路形成部材である請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記凹部は、前記接合部材のノズル面中央側とは反対側を向く端面において開口する請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル面と直交する方向から見て、前記凹部は、前記ノズル板と重なるように配置されている請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ノズル面と直交する方向から見て、前記凹部は、前記ノズル板と重ならないように配置されている請求項1から4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記凹部の一部は、前記ノズル板と前記接合部材を仮接合するための仮接合用接着剤が充填される仮接合用凹部を構成する請求項1から6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置として、紙などのシートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
インクジェット式の画像形成装置には、インクを吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドが搭載されている。シートが液体吐出ヘッドに対向する位置に搬送されると、ノズルからインクが吐出され、シートに画像が形成される。このとき、シートがノズルに接触すると、ノズルが損傷し、安定したインクの吐出ができなくなる虞がある。そのため、インクジェット式の画像形成装置においては、ノズルを保護するノズル保護部材が設けられているものがある。
【0004】
ノズル保護部材は、シートが接触しても剥離したり脱落したりしないように、ノズルが設けられたノズル板の周縁部のほか、フレーム部材などの接合部材に接合されている。例えば、特許文献1(特開2011-56922号公報)においては、ノズル保護部材を接合する構成として、接合部材(流路板)の全周に渡って凹部を設け、その凹部内に接着剤を充填してノズル保護部材を接合する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズル保護部材を接合する接着剤は、ノズル保護部材の剥離を防止するほか、インクなどの異物がノズル保護部材と接合部材との間から内部に侵入しないように封止する封止部材としての役割も果たす。この点に関して、上記特許文献1に記載の構成においては、接着剤が充填される凹部が接合部材の全周に渡って設けられているため、接着剤による封止が難しくなる課題がある。すなわち、ノズル保護部材と接合部材との間を接着剤によって封止するには、凹部内を接着剤で満たす必要があるが、特に粘度の高い接着剤を用いた場合は、接着剤の充填途中に気泡が混入したり隙間が生じたりする虞があり、凹部内を接着剤で完全に満たすことは難しい。このため、接着剤を充填しなければならない凹部が多く設けられていると、その分、凹部内に潤滑剤で満たされない部分が発生する虞が高まり、封止が難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、液体を吐出するノズルが設けられたノズル板と、前記ノズル板の液体吐出方向を向くノズル面のうち、前記ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材と、前記ノズル保護部材に対して接着剤を介して接合される接合部材を備える液体吐出ヘッドであって、前記接合部材の前記ノズル保護部材に対して接合される接合部のうち、液体吐出ヘッドの短手方向に延在する部分に、前記接着剤が充填される凹部が設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノズル保護部材と接合部材との間の封止性を確保しつつ接合力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図である。
図2】本実施形態に係るインクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
図3】液体吐出ヘッドの構成の一例を示す分解斜視図である。
図4図3に示される液体吐出ヘッドの短手方向の断面図である。
図5】ライン型のヘッドユニットの構成の一例を示す平面図である。
図6】シリアル型のヘッドユニットの構成の一例を示す平面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのカバー部材を取り外した状態を示す平面図である。
図8図7におけるI-I断面図である。
図9図7におけるII-II断面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
図11】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
図12】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
図13】本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
図14】比較例に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
まず、図1及び図2に基づき、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の構成について説明する。図1は、インクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図、図2は、インクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【0011】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成用のシートSを供給するシート供給部1と、シートSに画像を形成する画像形成部2と、画像形成部2にシートSを搬送する搬送部3と、シートSを乾燥させる乾燥部4と、画像が形成されたシートSを回収するシート回収部5を備えている。また、本実施形態に係る画像形成装置100は、シート供給部1、画像形成部2、搬送部3、乾燥部4、シート回収部5を制御するための制御部6(図2参照)を備えている。
【0012】
シート供給部1は、長尺のシートSがロール状に巻回された供給ローラ11と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構12を有している。供給ローラ11は、図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、供給ローラ11が回転することにより、シートSが繰り出される。張力調整機構12は、シートSを掛け渡して張力を付与する複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、シートSが供給ローラ11から一定の張力で繰り出される。
【0013】
画像形成部2は、シートSに対して液体のインクを吐出する液体吐出ユニットであるヘッドユニット13と、搬送されるシートSを支持するシート支持部材としてのプラテン14を有している。ヘッドユニット13は、複数の液体吐出ヘッドを有している。制御部6によって生成された画像データに基づいて各液体吐出ヘッドからシートSにインクが吐出されることにより、シートS上に画像が形成される。ここで、インクは、色材と溶剤、溶剤に分散された結晶性樹脂粒子を含む液体である。結晶性樹脂は、所定の融点以上に熱せられると相変化を起こし結晶状態から液体に融解する樹脂である。プラテン14は、ヘッドユニット13と対向するように配置されており、シート供給部1から供給されたシートSの下面を支持する。また、プラテン14は、ヘッドユニット13とシートSとの距離を一定に保てるように、ヘッドユニット13に対して接近離間可能に構成されている。
【0014】
搬送部3は、複数の搬送ローラ15を有している。各搬送ローラ15の間にシートSが掛け渡された状態で、各搬送ローラ15が回転することにより、シートSが画像形成部2へ搬送される。なお、搬送部3は、搬送ベルトなどの他の搬送手段を有するものであってもよい。
【0015】
乾燥部4は、シートS上のインクの乾燥を促進させるためにシートSを加熱する加熱ドラム16を有している。加熱ドラム16は、外周面にシートSが巻きつけられながら回転する円筒状の部材であり、内部にハロゲンヒータなどの加熱源が配置されている。また、シートSを加熱する加熱手段としては、加熱ドラム16などの接触式の加熱手段以外に、シートSに温風を吹き付ける温風発生装置などの非接触式の加熱手段を用いることもできる。
【0016】
シート回収部5は、シートSを巻き取って回収する回収ローラ17と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構18を有している。回収ローラ17は、図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、回収ローラ17が回転することにより、シートSがロール状に巻き取られて回収される。張力調整機構18は、シート供給部1の張力調整機構12と同じように、複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、回収ローラ17によってシートSが一定の張力で巻き取られる。
【0017】
制御部6は、PC(Personal Computer)などの情報処理装置によって構成される。制御部6は、シートSに形成される画像データを生成するほか、シート供給部1、画像形成部2、搬送部3、乾燥部4、シート回収部5の各種動作を制御する。例えば、制御部6は、供給ローラ11、回収ローラ17及び各搬送ローラ15の回転速度のほか、加熱ドラム16を加熱する加熱源の温度などを制御する。
【0018】
次に、図3及び図4に基づき、液体吐出ヘッドの構成の一例について説明する。
【0019】
図3は、液体吐出ヘッドの分解斜視図。図4は、図3に示される液体吐出ヘッドの短手方向(図3における矢印Y方向)の断面図である。
【0020】
図3に示されるように、液体吐出ヘッド20は、複数のヘッド本体21と、ベース部材22と、カバー部材23と、放熱部材24と、マニホールド25と、プリント基板(PCB)26と、モジュールケース27を備えている。
【0021】
複数のヘッド本体21は、保持部材としてのベース部材22に保持される。ヘッド本体21をベース部材22に取り付けるには、まず、ベース部材22に設けられた開口部22c(図4参照)にヘッド本体21を挿入する。次いで、ベース部材22に接合されたカバー部材23に、ヘッド本体21を接合する。カバー部材23は、各ヘッド本体21に対応した孔部23a(図3参照)が形成されており、この孔部23aの縁にヘッド本体21の周縁部が接合される。そして、ヘッド本体21がベース部材22に対してねじで締結して固定される。詳しくは、ヘッド本体21の長手方向(図4の紙面直交方向)の手前側と奥側に共通流路部材35(図4参照)のフランジ部が設けられており、このフランジ部がベース部材22にねじで締結される。これにより、共通流路部材35がベース部材22に保持され、ヘッド本体21が固定される。なお、ヘッド本体21とベース部材22の取付構造はこれに限定されるものではなく、接着、カシメなどによりヘッド本体21が取り付けられてもよい。
【0022】
図4に示されるように、ヘッド本体21は、ノズル30が設けられたノズル板31と、ノズル30に通じる個別液室41などが形成される流路基板32と、圧電素子40を含む振動板33と、振動板33に積層された保持基板34と、保持基板34に積層されたフレーム部材としての共通流路部材35などを備えている。
【0023】
流路基板32には、個別液室41のほか、個別液室41に通じる供給側個別流路42と、個別液室41に通じる回収側個別流路43が形成されている。保持基板34には、供給側個別流路42に振動板33の開口33aを介して通じる供給側中間個別流路44と、回収側個別流路43に振動板33の開口33bを介して通じる回収側中間個別流路45とが形成されている。
【0024】
共通流路部材(フレーム部材)35には、供給側中間個別流路44に通じる供給側共通流路46と、回収側中間個別流路45に通じる回収側共通流路47が形成されている。供給側共通流路46は、マニホールド25の流路51を介して供給ポート48に通じている。一方、回収側共通流路47は、マニホールド25の別の流路52を介して回収ポート49に通じている。
【0025】
プリント基板26とヘッド本体21の圧電素子40とは、フレキシブル配線部材50を介して接続されている。また、フレキシブル配線部材50には、ドライバIC(駆動回路)53が実装されている。
【0026】
ベース部材22は、線膨張係数が小さい材料によって構成されることが好ましい。 線膨張係数が小さい材料としては、例えば、鉄にニッケルを添加した42alloy(アロイ)又はインバー材などが挙げられる。ベース部材22がこのような材料により構成される場合は、ベース部材22が液体吐出ヘッド20の発熱により温度上昇しても、ベース部材22の膨張量が少ないため、ノズルの位置ずれが生じにくくなり、インク吐出位置のずれを抑制できる。また、ノズル板31及び振動板33を、シリコン単結晶基板により構成し、ベース部材22の線膨張係数とほぼ同じにすることにより、熱膨張によるノズルの位置ずれをより一層低減できるようになる。
【0027】
図5は、ヘッドユニットの構成の一例を示す平面図である。
【0028】
図5に示される例においては、ヘッドユニット13が、2つの液体吐出ヘッド20を備えている。各液体吐出ヘッド20は、それぞれの短手方向(矢印Y方向)がシート搬送方向Aを向き、それぞれの長手方向(矢印X方向)がシート搬送方向Aと直交する方向を向くように配置されている。ここで、液体吐出ヘッド20の「長手方向」とは、図5に示されるように、液体吐出ヘッド20を、上記ノズル30(図4参照)が露出するノズル面31aと直交する方向から見て、一方向へ延在する液体吐出ヘッド20の長手方向(矢印X方向)を意味する。また、液体吐出ヘッド20の「短手方向」とは、液体吐出ヘッド20を、ノズル面31aと直交する方向から見て、液体吐出ヘッド20の長手方向と直交する方向(矢印Y方向)を意味する。また、以下の説明において記載される液体吐出ヘッド20の「長手方向」及び「短手方向」も同じ意味である。
【0029】
図5に示されるヘッドユニット13は、いわゆるライン型のヘッドユニットであり、シートSがヘッドユニット13に対向する位置に搬送されると、搬送されるシートSに対してヘッドユニット13が移動することなく、各ヘッド本体21のノズルからインクが吐出されることによりシートSに画像が形成される。
【0030】
また、ヘッドユニットには、このようなライン型のヘッドユニットのほか、液体吐出ヘッドを主走査方向(シート幅方向)に移動させながらインクを吐出する、いわゆるシリアル型のヘッドユニットもある。
【0031】
図6は、シリアル型のヘッドユニット60の構成の一例を示す図であり、図6に示されるように、シリアル型のヘッドユニット60は、液体吐出ヘッド61を搭載するキャリッジ62と、キャリッジ62をシート幅方向Bである主走査方向へ案内するためのガイド部材(ガイドロッド)63と、キャリッジ62を移動させる駆動装置64を備えている。
【0032】
駆動装置64は、例えば、駆動源であるモータ65と、駆動プーリ66及び従動プーリ67に掛け回されたタイミングベルト68を備えている。モータ65が駆動し、駆動プーリ66が回転すると、タイミングベルト68が周回運動することにより、キャリッジ62がガイド部材63に沿って主走査方向へ移動する。また、モータ65の回転方向が一方向とその逆方向とに切り換えられることにより、キャリッジ62は主走査方向へ往復移動できる。
【0033】
このようなシリアル型のヘッドユニット60においては、キャリッジ62が主走査方向へ移動しながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド61からインクが吐出されることにより、停止しているシートSに対して1行分の画像が形成される。そして、シートSが図6中の矢印A方向に所定量ずつ移動しながら、キャリッジ62の往復移動とインクの吐出が繰り返し行われることにより、シートS上に順次画像が形成される。
【0034】
ところで、製品輸送時などの温度環境によっては、ヘッドユニット(液体吐出ヘッド)の温度が大きく変化することがある。このとき、ヘッドユニットの温度変化に伴って、ヘッドユニットを構成する各部材が膨張したり収縮したりすると、各部材の線膨張係数の違いにより部材同士の接合箇所に歪が生じ負荷がかかる。特に、カバー部材23には大きな負荷がかかるため、カバー部材23の接合箇所が負荷に耐えられなくなると、カバー部材23が剥離する。そして、カバー部材23の剥離が生じた場合に、万が一、インクなどの異物がカバー部材23の剥離箇所からヘッド本体21内に侵入すると、それが故障又は動作不良の原因となる。例えば、カバー部材23の剥離箇所からインクが内部に侵入し、ヘッド本体21内のフレキシブル配線部材50(図4参照)などの通電部にインクが付着した場合は、漏電による故障が発生する虞がある。また、内部へ侵入したインクがヘッド本体21内の圧電素子40(図4参照)に付着した場合は、その後固化したインクによって圧電素子40の良好な駆動が行えなくなり、インクの吐出不良が発生する虞がある。
【0035】
このように、カバー部材23の剥離は、動作不良又は故障などの種々の問題の原因となる。そのため、本発明の実施形態においては、以下に説明するような構成を採用している。
【0036】
図7は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのカバー部材を取り外した状態を示す平面図、図8は、図7におけるI-I断面図、図9は、図7におけるII-II断面図である。なお、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの基本構造は、上記図3及び図4に示される液体吐出ヘッドとほぼ同じであるため、すでに説明した部分については適宜説明を省略する。
【0037】
図7図9に示されるように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド20は、ノズル30(図4参照)が設けられたノズル板31と、ノズル30を保護するノズル保護部材としてのカバー部材23と、供給側個別流路42(図4参照)及び回収側個別流路43(図4参照)などが形成される流路形成部材としての流路基板32と、フレーム部材としての共通流路部材35と、共通流路部材35などを保持する保持部材としてのベース部材22などを備えている。
【0038】
なお、図7において、矢印X方向は液体吐出ヘッド20の長手方向を示し、矢印Y方向は液体吐出ヘッド20の短手方向を示す。また、図8及び図9において、矢印Z方向は、ノズル板31のノズルから液体(インク)が吐出される液体吐出方向を示す。すなわち、図8及び図9においては、ノズル板31のノズルが露出するノズル面31aが、上方を向いている。
【0039】
カバー部材23は、ノズル面31aのうち、ノズル以外の少なくとも一部を覆っている。本実施形態においては、カバー部材23が、ノズル面31aの縁部及びその近傍部分を覆っている。
【0040】
ここで、ノズル面31aの中央側(図8における右側)を「内側」とし、これとは反対側(図8における左側)を「外側」とすると、図8に示されるように、カバー部材23の外側の部分は、接着剤54を介してベース部材22に接着されている。ベース部材22は、ノズル板31、流路基板32、共通流路部材35の周囲に配置されており、このベース部材22の液体吐出方向Zを向く面220に、カバー部材23の外側の部分が接着されている。
【0041】
一方、カバー部材23の内側の部分は、接着剤55を介してノズル板31及び流路基板32に接着されている。流路基板32は、ノズル板31のノズル面31aとは反対の面側(図8におけるノズル板31の下面側)に配置され、その一部がノズル板31の縁部から外側へ突出しており、この外側へ突出する流路基板32の部分と、ノズル板31の縁部周辺に対して、カバー部材23が接着されている。
【0042】
このように、カバー部材23の内側と外側の両側の部分が、それぞれ接着剤54,55を介して各部材に接着され、各部材とカバー部材23との間が接着剤54,55によって封止されていることにより、これらの間から内部へのインク及びその他の異物の侵入が防止される。しかしながら、上記のように、温度変化に伴って液体吐出ヘッド20の各種部材が膨張又は収縮すると、カバー部材23の接合箇所に負荷がかかり、カバー部材23が剥離する虞がある。
【0043】
そのため、本実施形態においては、図7に示されるように、カバー部材23が接合される接合部材としての流路基板32に、複数の凹部80が設けられている。各凹部80は、流路基板32のカバー部材23に対して接合される接合部(ノズル板31よりも外側へ突出する部分)に設けられている。本実施形態に係る凹部80は、図8及び図9に示されるように、底面80aのほか、底面80aに直交(「直交」も含む)する4つの側面80b~80eを有する立方体状又は直方体状に形成され、液体吐出方向Zに向かって開口している。なお、流路基板32の接合部のうち、凹部80以外の部分は平面状の接合部(接合面)となっている。
【0044】
このように、本実施形態においては、複数の凹部80が流路基板32の接合部に設けられているため、流路基板32の接合部に接着剤55を塗布すると、図8及び図9に示されるように、接着剤55が凹部80内に進入し充填される。また、凹部80のほか流路基板32のその他の部分(平面状の接合部)にも接着剤55が塗布されると共に、ノズル板31とベース部材22のそれそれの接合部にも接着剤54,55が塗布される。そして、カバー部材23が各接着剤54,55の上から押し付けられ、その後、各接着剤54,55を硬化することにより、カバー部材23が各部材(流路基板32、ノズル板31及びベース部材22)に接合される。
【0045】
このとき、特に凹部80が設けられた箇所においては、接着剤55が凹部80内で硬化することによってアンカー効果が得られる。すなわち、接着剤55が凹部80内に進入した状態で硬化することにより、平面同士を接合する場合に比べて、接合力が増す。このため、本実施形態においては、接合部に凹部が設けられていない構成に比べて、カバー部材23と流路基板32との間における接合力が向上し、カバー部材23の剥離が生じにくくなる。
【0046】
また、上記のようなアンカー効果による接合力を確認するため、図14に示されるような比較例と本実施形態に係る構成において、接合力の評価試験を行った。比較例は、流路基板32の接合部に凹部80が設けられていない以外、本実施形態と同じ構成である。比較例及び本実施形態に係る各液体吐出ヘッドをそれぞれ30℃から70℃の間で温度変化させ、その温度変化サイクルを合計10回行い、カバー部材23の剥離が生じるか否かを確認した。
【0047】
その結果、比較例においては、カバー部材23の剥離が生じたものが半数あった。また、その他の比較例においては、カバー部材23の剥離が生じなったものの、カバー部材23の接合状態がなんとか保たれている状態であった。これに対して、本実施形態においては、カバー部材23の剥離が全く生じなかった。これにより、本実施形態の構成によれば、カバー部材23の離を効果的に抑制できることが確認できた。
【0048】
ここで、本実施形態においては、接着剤55を、流路基板32の全周(接合部全体)に渡って塗布しているが、凹部80は、流路基板32の接合部のうち、液体吐出ヘッド20の短手方向に延在する部分81Yのみに設けられている(図7参照)。このように、凹部80が、接合部全体ではなく、短手方向に延在する部分81Yのみに設けられているのは、特にこの部分において大きな負荷がかかるからである。
【0049】
本実施形態のような長手状に形成された液体吐出ヘッドにおいて、温度変化に伴う応力変化の確認試験をあらかじめ行ったところ、特に液体吐出ヘッドの短手方向に延在する部分において大きな負荷が生じることが分かった。このことから、流路基板32の全周に渡る接合部のうち、特に短手方向に延在する部分81Yが、カバー部材23の剥離が生じやすい部分であるといえる。そのため、本実施形態においては、流路基板32の接合部のうち、特にカバー部材23の剥離が生じやすい短手方向に延在する部分81Yに凹部80を設けている。これにより、短手方向に延在する部分81Yにおける接合力を、凹部80内に充填される接着剤55のアンカー効果によって向上させ、カバー部材23の離を効果的に抑制できるようになる。
【0050】
一方、流路基板32の接合部のうち、液体吐出ヘッド20の長手方向に延在する部分81Xには、凹部80が設けられていない(図7参照)。このため、長手方向に延在する部分81Xは、その全体に渡って凹部80の無い平面状の接合面となっている。このように、流路基板32の接合部のうち、長手方向に延在する部分81Xに凹部80を設けていないのは、接着剤による封止性を向上させるためである。
【0051】
一般的に、凹部を有する接合部は、平面状の接合部(接合面)に比べて、接着剤を塗布した際に気泡が混入したり隙間が生じたりしやすい傾向にある。また、本実施形態のように、カバー部材23が流路基板32に接合される構成においては、カバー部材23を接合する際の加圧力によって流路基板32が破損しないように、接着剤を厚く塗布し、流路基板32に加わる加圧力を低減する必要がある。このため、本実施形態においては、ある程度粘度が高い接着剤を用いる必要があるが、接着剤の粘度が高いと、凹部80内に接着剤をますます充填しにくくなるので、気泡又は隙間が生じる虞が高まる。なお、接着剤の種類によっては、気泡又は隙間が生じにくいものも存在するが、そのような接着剤は種類が限られるため、接着剤の選定範囲が狭くなる制約を強いられることになる。
【0052】
このように、凹部80には接着剤を充填しにくく、特に粘度が高い接着剤を用いる場合は気泡又は隙間が生じる虞が高まるが、上記のように、凹部80が設けられる部分を、接合部のうち短手方向に延在する部分81Yのみに限定的にすることにより、気泡又は隙間が生じる虞を低減できるようになる。すなわち、気泡又は隙間が生じやすい凹部80を必要最小限の領域に限定して設けることにより、接合部間において気泡又は隙間が発生しにくくなるため、封止性が向上する。
【0053】
また、本実施形態によれば、カバー部材23と流路基板32を接合する接着剤として、凹部80内において気泡又は隙間が生じにくい接着剤を選定しなくても、カバー部材23と流路基板32との間の封止性を確保できる。このため、接着剤の選定範囲を広げることができ、接着剤選定範囲の制約の問題を改善できるようになる。さらに、本実施形態のように、凹部80が限定的に設けられる場合は、凹部80が接合部全体に渡って設けられる場合に比べて、凹部80を埋めるのに必要な接着剤の量も少なくなるため、低コスト化も図れる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、凹部80を、特に大きな負荷がかかる短手方向に延在する部分81Yのみに限定的に設けることにより、接合力の向上と封止性の確保を両立できる。これにより、液体吐出ヘッド内への異物の侵入を効果的に抑制できるようになり、液体吐出ヘッドの動作不良及び故障の虞を低減できるようになるので、信頼性が向上する。なお、凹部80は、流路基板32の全周でなければ、短手方向に延在する部分81Yのほか、長手方向に延在する部分81Xの一部に渡って設けられていてもよい。このような場合でも、凹部80が流路基板32の全周に設けられている場合比べて、封止性を向上させることが可能である。
【0055】
凹部80は、短手方向に延在する部分81Yの全体に渡って設けることもできるが、封止性を向上させるには、図7に示されるように、凹部80が短手方向に延在する部分81Yの一部に設けられることが好ましい。また、短手方向に延在する部分81Yごとに設けられる凹部80の数は、2つである場合(図7参照)に限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。また、凹部80は、液体吐出方向Zから見て、矩形に形成されるほか、円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0056】
続いて、上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、それ以外の部分については基本的に同様の構成であるので適宜説明を省略する。
【0057】
図10は、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【0058】
図10に示される第2実施形態においては、上記ベース部材22(図8参照)が設けられていない。このため、本実施形態においては、カバー部材23が、ベース部材22に代えて共通流路部材(フレーム部材)35に接合されている。詳しくは、共通流路部材35が、ノズル板31及び流路基板32の周囲(外側)に配置され液体吐出方向Zへ突出する周壁部35bを有し、この周壁部35bにおける液体吐出方向Zを向く面350にカバー部材23が接着剤56により接着されている。なお、上記図8に示される実施形態(第1実施形態)においては、ベース部材22のうち、特に図の上部がノズル板31及び流路基板32の周囲に配置される周壁部22bに相当する。
【0059】
このように、第2実施形態においては、ベース部材22が設けられておらず、カバー部材23が共通流路部材35の周壁部35bに接合されている点において上記実施形態とは異なるが、このような構成においても、液体吐出ヘッドの温度変化に伴って各部材が膨張又は収縮すると、カバー部材23が剥離する虞がある。そのため、本実施形態においても、上記実施形態と同じように、カバー部材23が接合される流路基板32の接合部のうち、液体吐出ヘッド20の短手方向に延在する部分81Y(図7参照)のみに凹部80が設けられている。これにより、上記実施形態と同じように、接合力の向上と封止性の確保を両立でき、液体吐出ヘッド内への異物の侵入を効果的に抑制できるため、信頼性が向上する。
【0060】
図11は、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【0061】
図11に示される第3実施形態においては、凹部80が、流路基板32の外側(ノズル面中央側とは反対側)を向く端面320において開口するように構成されている。すなわち、本実施形態に係る凹部80は、上記第1実施形態に係る凹部80の外側に配置される側面80b(図8参照)を有していない。
【0062】
このように、第3実施形態においては、凹部80が流路基板32の外側に向かって開口しているため、凹部80内の気泡が開口部を通して外側へ排出されやすくなる。これにより、凹部80内を接着剤55によって満たしやすくなるため、接着剤55による封止性がより一層向上する。なお、本実施形態のような凹部80が流路基板32の外側に向かって開口する構成は、図11に示されるようなベース部材22を有する液体吐出ヘッド20に限らず、ベース部材22を有しない液体吐出ヘッド20(図10参照)にも適用可能である。
【0063】
図12は、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【0064】
図12に示される第4実施形態においては、上記図11に示される第3実施形態の構成に加え、さらに、凹部80が内側に拡大し、凹部80の一部がノズル板31のノズル面31a側とは反対側(図12におけるノズル板31の下面側)へ進入するように構成されている。すなわち、凹部80の一部が、凹部80をノズル面31aと直交する方向から見て、ノズル板31と重なるように配置されている。
【0065】
このように、第4実施形態においては、凹部80の一部がカバー部材23に重なるように配置されているため、接着剤55が凹部80内に充填されると、接着剤55がカバー部材23のノズル面31a側とは反対側へ潜り込むように進入する。そして、この状態のまま接着剤55が硬化することにより、接着剤55によるアンカー効果がより一層高まり、カバー部材23と流路基板32との間の接合力がさらに向上する。このため、本実施形態においては、カバー部材23の剥離をより効果的に抑制できるようになり、信頼性が向上する。これに対して、上記図7図9図10又は図11に示されるような凹部80がカバー部材23とは重ならない構成は、流路基板32の上にノズル板31を組み付けた後からでも、流路基板32に凹部80を形成できる利点がある。なお、本実施形態のような凹部80の一部がカバー部材23に重なる構成は、図12に示されるようなベース部材22を有する液体吐出ヘッド20に限らず、ベース部材22を有しない液体吐出ヘッド20(図10参照)のほか、凹部80が外側に向かって開口していない構成(図7図9図10参照)にも適用可能である。
【0066】
図13は、本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【0067】
図13に示される第5実施形態においては、上記図12に示される第4実施形態の構成に加え、さらに、凹部80の一部が、仮接合用凹部82として構成されている。この仮接合用凹部82は、ノズル板31と流路基板32を仮接合するための仮接合用接着剤57が充填される凹部である。凹部80及び仮接合用凹部82は、例えば、短手方向に延在する部分81Yの両端側にそれぞれ1つずつ設けられる。ただし、凹部80及び仮接合用凹部82の数及び配置は適宜変更可能である。
【0068】
このように、凹部80の一部を仮接合用凹部82として用いてもよい。本実施形態において、カバー部材23を接合するには、まず、仮接合用凹部82に仮接合用の接着剤57を充填し、ノズル板31と流路基板32とを仮接合する。仮接合用の接着剤57としては、例えば、接着剤の硬化を容易に行える紫外線硬化型の接着剤などが好ましい。そして、仮接合されたノズル板31及び流路基板32(凹部80)に本接合用の接着剤55を塗布し、ノズル板31及び流路基板32に対してカバー部材23を接合する。このように、ノズル板31と流路基板32とを先に仮接合してから、これらとカバー部材23とを本接合することにより、各部材同士の位置決めが容易となる。また、このような凹部80の一部を仮接合用凹部82として用いる構成は、図13に示されるようなベース部材22を有する液体吐出ヘッド20に限らず、ベース部材22を有しない液体吐出ヘッド20(図10参照)のほか、凹部80が外側に向かって開口していない構成(図7図9図10参照)にも適用可能である。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限らず、発明の内容を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【0070】
本発明において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出又は噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水又は有機溶媒などの溶媒、染料又は顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸又はたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子又は発光素子の構成要素、あるいは電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。液体吐出ヘッドは、上記実施形態のような複数のヘッド本体を備えるものほか、1つのヘッド本体を備えるものであってもよい。
【0071】
液体を吐出するエネルギー発生源としては、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0072】
また、本発明において、「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0073】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0074】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0075】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0076】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0077】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0078】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0079】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0080】
「液体吐出装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中又は液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0081】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0082】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0083】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0084】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能な搬送対象物であって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などのシート、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0085】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0086】
また、「シート」は、長尺に形成された連続シート(ロール紙など)のほか、あらかじめ所定のサイズにカットされたシート(カット紙など)であってもよい。さらに、本発明は、シート以外の搬送対象物を搬送する装置にも適用可能である。
【0087】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置(図6参照)、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置(図5参照)などが含まれる。
【0088】
また、「液体吐出装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【符号の説明】
【0089】
20 液体吐出ヘッド
22 ベース部材
23 カバー部材(ノズル保護部材)
30 ノズル
31 ノズル板
31a ノズル面
32 流路基板(流路形成部材)
55 接着剤
57 仮接合用接着剤
80 凹部
81X 長手方向に延在する部分
81Y 短手方向に延在する部分
82 仮接合用凹部
100 画像形成装置(液体吐出装置)
220 液体吐出方向を向く面
S シート(搬送対象物)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】
【特許文献1】特開2011-56922号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14