(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065064
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】シリコン単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20230502BHJP
C30B 15/00 20060101ALI20230502BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175635
(22)【出願日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】森 由行
(72)【発明者】
【氏名】坪田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】堀 義明
(72)【発明者】
【氏名】塚原 龍一
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 宣範
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF01
4G077EH04
4G077HA12
4G077PA01
(57)【要約】
【課題】ネック部を形成する工程においてスリップ転位と軸状転位の両方を効率良く除去可能なシリコン単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法においては、ネック部育成過程において縮径部31と拡径部32とを交互に繰り返し形成し、さらに、ネック部21の育成中はシリコン融液Mと育成中のネック部21との固液界面の形状を鉛直上向きの凹形状に維持することとした。また、縮径部31の角度θ1を80°≦θ1<90°とし、角度θ1で縮径部31を形成することとした。さらに、拡径部32の角度θ2を105°≦θ2<140°とし、縮径部31の形成時に比べて急な角度θ2で拡径部32を形成することとした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネック部育成過程において、縮径部と拡径部とを交互に繰り返し形成するシリコン単結晶の製造方法であって、
ネック部とシリコン融液との固液界面の形状を鉛直上向きの凹形状に維持した状態で、 水平面と前記縮径部の外周面とのなす角である第1の角度を80°以上90°未満とし、当該第1の角度で前記縮径部を形成し、
さらに、水平面と前記拡径部の外周面とのなす角である第2の角度を105°以上140°未満とし、前記縮径部の形成時に比べて急な前記第2の角度で前記拡径部を形成する、
ことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記拡径部の最大径は前記縮径部の最小径よりも3mm以上大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記縮径部の鉛直方向の長さである第1の長さと前記拡径部の鉛直方向の長さである第2の長さとの比である「第1の長さ/第2の長さ」の値を2.5以上とする、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記第1の長さを9mm以上30mm以下の範囲とし、前記第2の長さを3mm以上8mm以下の範囲とする、
ことを特徴とする請求項3に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(CZ法)によりシリコン単結晶を引き上げるシリコン単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造においては、種結晶をシリコン融液に接触させ、回転させながらゆっくりと引き上げることでシリコン単結晶を製造する。この際、種結晶をシリコン融液に接触させた後に、一旦結晶直径を細く絞ることにより縮径部を形成する、いわゆる種絞り(ネッキング)を行う。このネッキングの工程においては、結晶直径が細く絞られた縮径部を形成することによって、熱衝撃により種結晶に高密度で発生するスリップ転位を消滅させる。このようなネッキングはダッシュネック法として広く知られている。
【0003】
上記ネッキングの工程でスリップ転位を消滅させてシリコン単結晶を製造する方法としては、下記特許文献に記載されたものが開示されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、種結晶をシリコン融液に接触させた後、種結晶から結晶径d0を縮径させて、種結晶の直下に最小径d1が5mm以上である縮径部を形成し、次いで、最小径d1から結晶径を拡径させて、最大径d2が種結晶の結晶径d0よりも小さい拡径部を形成し、その後、縮径部および拡径部をこの順で交互に繰り返してネック部を形成することが記載されている。また、縮径部の縮径率を0.6mm/mm以上1.5mm/mm以下とし、拡径部の拡径率を0.1mm/mm以上1.0mm/mm以下とすることが記載されている。また、拡径部の最大径d2は、縮径部の最小径d1よりも1mm以上2mm以下大きいことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、種絞りを、絞り部、拡径部を交互に形成するようにし、絞り部の最小径を5mm以上として種絞りを行うことが記載されている。また、絞り部および拡径部の形成において、単位引き上げ長さ当りの直径変化量を0.5mm/mm以上とすることが記載されている。また、拡径部の最大径と絞り部の最小径との比率を2倍以上15倍以下とすることが記載されている。
【0006】
さらに、下記特許文献には、スリップ転位に加え、軸状転位を消滅させることが開示されている。
【0007】
たとえば、特許文献3には、スリップ転位を除去するために、ネック部を絞るネッキング操作を行って第1ネック部および第2のネック部を形成すること、また、軸状転位を除去するために、第1ネック部とシリコン融液が接する固液界面を、鉛直上向きの凸形状の固液界面形状から、一旦鉛直上向きの凹形状の固液界面形状に変化させること、が記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、ネッキング工程を2ステップに分け、第1ステップで主要なスリップ転位を除去し、第2ステップで軸状転位を除去することにより、ネック部の無転位化を図ることが記載されている。具体的には、第1ステップでは、固液界面形状を鉛直上向きの凸形状とし結晶直径を細くすることによりスリップ転位を除去している。第2ステップでは、固液界面形状が鉛直上向きの凹形状となるように制御し、固液界面角度が結晶増径角度よりも大きくなるように引き上げ条件を制御する。また、固液界面角度は4~8°であることが好ましい旨記載されており、この場合、結晶増径角度は4°を超えない角度となる。
【0009】
また、特許文献5には、絞り部を形成した後、ネック部を形成する過程で増径部と減径部を繰り返し形成してネック部径を増減させ、この際、ネック部径の増減を、ネック部を形成する過程の最終段階で行うことにより、軸状転位を含むすべての転位を除去することが記載されている。また、増径または減径によるネック部径の増大または減少幅を1mm以内とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-153034号公報
【特許文献2】特開平11-199384号公報
【特許文献3】特開2011-57460号公報
【特許文献4】特開2016-183072号公報
【特許文献5】特開2009-263142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1および上記特許文献2には、スリップ転位を消滅させることは記載されているが、固液界面に対して垂直の方向に伝播する軸状転位については除去することが難しく、無転位化できない問題がある。
【0012】
また、上記特許文献3に記載のシリコン単結晶育成方法においては、第1ネック部の形成時に鉛直上向きの凸形状となった固液界面形状を一旦鉛直上向きの凹形状に変化させる必要があるため、固液界面形状が所定の鉛直上向きの凹形状となるまでに時間を要する。また、第2ネック部の形成時に固液界面が鉛直上向きの凸形状となるため、軸状転位が結晶外周部に到達して消滅する前に中心部に引き戻されて無転位化できない問題がある。
【0013】
また、上記特許文献4に記載のネッキングにおいては、結晶増径角度を、4°を超えない角度となるように引き上げているため、拡径に時間を要する。また、第1ステップから第2ステップに移行しても引き上げ速度の変化が少ないために固液界面の変化が少なく、ネック中心付近の軸状転位は移動しにくく残留する問題がある。
【0014】
また、上記特許文献5のシリコン単結晶育成方法においては、ネック径の縮径時に固液界面が鉛直上向きの凸形状となるため、上記特許文献3と同様に、軸状転位が結晶外周部に到達して消滅する前に中心部に引き戻されて無転位化できない問題がある。
【0015】
すなわち、従来のシリコン単結晶の製造方法においては、スリップ転位と軸状転位との両方を効率よくかつ十分に除去できていない点で改善の余地がある。
【0016】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであって、ネック部を形成する工程において、スリップ転位と軸状転位の両方を効率良く除去可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法は、ネック部育成過程において、縮径部と拡径部とを交互に繰り返し形成するシリコン単結晶の製造方法であって、ネック部とシリコン融液との固液界面の形状を鉛直上向きの凹形状に維持した状態で、水平面と前記縮径部の外周面とのなす角である第1の角度を80°以上90°未満とし、当該第1の角度で前記縮径部を形成し、さらに、水平面と前記拡径部の外周面とのなす角である第2の角度を105°以上140°未満とし、前記縮径部の形成時に比べて急な前記第2の角度で前記拡径部を形成することを特徴とする。
【0018】
上記縮径部の形成により、ネック部内の熱応力が増加し、結晶の外周側に伝播するスリップ転位は結晶径が縮径されることによって抜けるため、スリップ転位の下方への伝播を低減させることができる。また、上記拡径部の形成により、ネック部内の熱応力が低減し、ネック部の中心側に伝播するスリップ転位が移動しにくくなるため、縮径部の中心側に伝播するスリップ転位の下方への伝播を低減させることができる。したがって、縮径部と拡径部とを交互に繰り返し形成することによって、スリップ転位を消滅させることができる。
【0019】
また、固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持し、水平面と縮径部の外周面とのなす角である第1の角度を80°以上90°未満とし、水平面と拡径部の外周面とのなす角である第2の角度を105°以上140°未満(縮径部の形成時に比べて急な角度)とすることにより、鉛直上向きの凹形状の高さ(深さ)をより高く(深く)することができる。また、軸状転位は固液界面に対して垂直の方向に伝播されるため、軸状転位をよりシリコン単結晶の外周側に伝播させることができる。以上のことから、軸状転位が外周側に向かって抜けてやすくなるため、軸状転位を消滅させることができる。
【0020】
すなわち、本発明によれば、ネック部を形成する工程において、固液界面形状を常に鉛直上向きの凹形状に維持しつつ、緩やかな角度で結晶径を縮径させた縮径部と急な角度で結晶径を拡径させた拡径部とを交互に繰り返し形成するため、スリップ転位と軸状転位の両方を効率良く除去することができる。
【0021】
また、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法においては、拡径部の最大径が縮径部の最小径よりも3mm以上大きいこと、縮径部の鉛直方向の長さである第1の長さと拡径部の鉛直方向の長さである第2の長さとの比である「第1の長さ/第2の長さ」の値を2.5以上とすること、が望ましい。
【0022】
さらに、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法においては、上記第1の長さを9mm以上30mm以下の範囲とし、上記第2の長さを3mm以上8mm以下の範囲とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ネック部を形成する工程においてスリップ転位と軸状転位の両方を効率良く除去可能なシリコン単結晶の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法を実施可能な単結晶引上装置の断面を示す模式図である。
【
図2】
図2は、シリコン単結晶の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、ネック部のイメージを示す模式図である。
【
図5】
図5は、軸状転位が残留する場合の一例を示すイメージ図である。
【
図6】
図6は、軸状転位がシリコン単結晶の外周側に抜ける場合の一例を示すイメージ図である。
【
図7-1】
図7-1は、SIRDマップの一例を示す図である。
【
図7-2】
図7-2は、SIRDマップの一例を示す図である。
【
図7-3】
図7-3は、SIRDマップの一例を示す図である。
【
図7-4】
図7-4は、SIRDマップの一例を示す図である。
【
図7-5】
図7-5は、SIRDマップの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、X線トポグラフを用いたネック部の縦割り評価による固液界面形状を示す図である。
【
図9】
図9は、
図8に示す固液界面形状の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法の実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0026】
<単結晶引上装置の構成>
図1は、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法を実施可能な単結晶引上装置の断面を示す模式図である。
【0027】
図1において、単結晶引上装置1は、円筒形状のメインチャンバ10aの上にプルチャンバ10bを重ねて形成された炉体10を備え、この炉体10内に、鉛直軸回りに回転可能かつ昇降可能に設けられたカーボンサセプタ(または黒鉛サセプタ)2と、カーボンサセプタ2によって保持された石英ガラスルツボ3とを具備している。
【0028】
石英ガラスルツボ3は、直胴部3aとその下に形成された底部3bとを有し、カーボンサセプタ2の回転とともに鉛直軸回りに回転可能である。また、カーボンサセプタ2の下方には、このカーボンサセプタ2を鉛直軸回りに回転させる回転モータなどの回転駆動部14と、カーボンサセプタ2を昇降移動させる昇降駆動部15とが設けられている。なお、回転駆動部14には回転駆動制御部14aが接続され、昇降駆動部15には昇降駆動制御部15aが接続されている。
【0029】
また、単結晶引上装置1は、石英ガラスルツボ3に装填された半導体原料(原料ポリシリコン)を溶融してシリコン融液Mとする抵抗加熱によるサイドヒータ4と、ワイヤ6を巻き上げることによって育成されたシリコン単結晶Cを引き上げる引き上げ機構9とを備えている。引き上げ機構9が有するワイヤ6の先端には、種結晶Pが取り付けられている。
【0030】
なお、サイドヒータ4には供給電力量を制御するヒータ駆動制御部4aが接続され、引き上げ機構9にはその回転駆動を制御する回転駆動制御部9aが接続されている。また、単結晶引上装置1においては、炉体10の外側に磁場印加用電磁コイル8が設置される。この磁場印加用電磁コイル8に所定の電流が印加されると、石英ガラスルツボ3内のシリコン融液Mに対して所定強度の水平磁場(横磁場)が印加されるようになっている。磁場印加用電磁コイル8には、その動作制御を行う電磁コイル制御部8aが接続されている。
【0031】
すなわち、本実施形態においては、シリコン融液M内に磁場を印加してシリコン単結晶Cを育成するMCZ法(Magnetic field applied CZ法)が実施され、これにより、シリコン融液Mの対流を制御し、単結晶化の安定を図る。
【0032】
また、石英ガラスルツボ3内に形成されるシリコン融液Mの上方には、シリコン単結晶Cの周囲を包囲する輻射シールド7が配置されている。この輻射シールド7は、上部と下部が開口形成され、育成中のシリコン単結晶Cに対するサイドヒータ4やシリコン融液M等からの余計な輻射熱を遮蔽するとともに、炉内のガス流を整流するものである。なお、輻射シールド7の下端とシリコン融液M1との間のギャップは、育成するシリコン単結晶Cの所望の特性に応じて所定の距離を維持するように制御される。
【0033】
また、輻射シールド7の内側には、円筒状の水冷体12が配置されている。この水冷体12には、冷却水供給手段12aによって冷却水が供給され、循環することによって所定温度が維持されるように構成されている。
【0034】
また、単結晶引上装置1は、記憶装置11aと演算制御装置11bとを有するコントローラ11を備え、ヒータ駆動制御部4a、電磁コイル制御部8a、回転駆動制御部9a、冷却水供給手段12a、回転駆動制御部14a、昇降駆動制御部15aは、それぞれ演算制御装置11bに接続され、制御されている。
【0035】
<シリコン単結晶の製造方法>
図2は、
図1に示す単結晶引上装置1によるシリコン単結晶の製造方法の流れを示すフローチャートである。ここでは、上記のように構成された単結晶引上装置1を用いて、たとえば、直径300mmのシリコン単結晶Cを育成する場合を想定する。そして、石英ガラスルツボ3に原料ポリシリコン(たとえば350kg)を装填し、炉体10内を所定の雰囲気(主にアルゴンガスなどの不活性ガス)とした状態において、コントローラ11が記憶装置11aに記憶されたプログラム読み出し、実行することにより、シリコン単結晶Cの育成が開始される。
【0036】
まず、コントローラ11は、ヒータ駆動制御部4aを制御することによりサイドヒータ4を加熱させ、この加熱により石英ガラスルツボ3内に装填された原料ポリシリコンを溶融し、シリコン融液Mを生成する(ステップS1)。さらに、回転駆動制御部14aおよび昇降駆動制御部15aを制御することにより、石英ガラスルツボ3を所定の高さ位置において所定の回転速度(rpm)で回転させる(ステップS2)。
【0037】
つぎに、コントローラ11は、電磁コイル制御部8aを制御することにより磁場印加用電磁コイル8に所定の電流を流し、シリコン融液M内に1000~4000Gaussの範囲内において設定された磁束密度(たとえば2500Gauss)で、水平磁場を印加する(ステップS3)。また、回転駆動制御部9aを制御することによりワイヤ6を降ろして種結晶Pをシリコン融液Mに接触させ、さらに、サイドヒータ4への供給電力や引き上げ速度、磁場印加強度などをパラメータとして引き上げ条件を調整することにより、ネック部(後述する縮径部、拡径部に相当)を形成する(ステップS4)。また、ネック部が形成されると、コントローラ11は、さらに、サイドヒータ4への供給電力や引き上げ速度、磁場印加強度など(引き上げ条件)を調整し、肩部(クラウン部)C1を形成する(ステップS5)。
【0038】
そして、結晶径が徐々に拡径されて肩部C1が形成されると、つぎに、コントローラ11は、さらに、サイドヒータ4への供給電力や引き上げ速度、磁場印加強度など(引き上げ条件)を調整し、製品部分となる直胴部C2を形成する(ステップS6)。このとき、シリコン単結晶Cの直胴部C2の形成が進むことによるシリコン融液面M1の低下にあわせて、コントローラ11が昇降駆動制御部15aを制御して石英ガラスルツボ3を収容するカーボンサセプタ2を上昇させることにより、位置が固定された輻射シールド7およびサイドヒータ4とシリコン融液面M1との距離が維持される。また、たとえば、1000~4000Gaussの範囲、より好ましくは2000~3000Gaussで設定された磁束密度の磁場が印加されることにより、シリコン融液Mの自然対流が抑制される。なお、水平磁場の磁束密度を上記よりも低く、たとえば、800~1000Gaussの範囲に設定すると、シリコン融液Mが不安定となり、結晶変形が生じ易くなる。
【0039】
そして、所定の長さまで直胴部C2が形成されると、コントローラ11は、さらに、サイドヒータ4への供給電力や引き上げ速度、磁場印加強度などを(引き上げ条件)を調整し、最後にテール部を形成する(ステップS7)。ここでは、シリコン単結晶Cの下端とシリコン融液Mとの接触面積が徐々に小さくなり、その後、シリコン単結晶Cとシリコン融液Mが切り離される。
【0040】
このように、本実施形態においては、上記ステップS1~S7の工程を実施することにより、シリコン単結晶インゴットを製造する。
【0041】
<ネック部形成>
つづいて、本実施形態のシリコン単結晶の製造方法におけるネック部形成の工程について説明する。
【0042】
図3は、本実施形態のネック部のイメージを示す模式図であり、(a)はネック部の模式的な外形図であり、(b)はネック部の育成過程を示す図である。また、
図4は、ネック部形成の工程により形成されたネック部の外観を示す図である。
【0043】
本実施形態のネック部形成工程においては、ネック部21を構成する縮径部31と拡径部32とを適正な角度および固液界面形状で交互に形成する。具体的には、ネック部21の育成過程において縮径部31と拡径部32とを交互に繰り返し形成することとし、さらに、ネック部21の育成中はシリコン融液Mと育成中のネック部21との固液界面の形状を鉛直上向きの凹形状に維持することとした。また、水平面(ネック部21における鉛直方向(軸方向)に対して垂直な面)と縮径部31の外周面とのなす角である角度θ1(以降、単に「角度θ1」または「縮径部31の角度θ1」と呼ぶ場合がある。)を80°≦θ1<90°とし、角度θ1で縮径部31を形成することとした。さらに、水平面と拡径部32の外周面とのなす角である角度θ2(以降、単に「角度θ2」または「拡径部32の角度θ2」と呼ぶ場合がある。)を105°≦θ2<140°とし、縮径部31の形成時に比べて急な角度θ2で拡径部32を形成することとした。これにより、固液界面の鉛直上向きの凹形状の高さ(深さ)をより高く(深く)して、軸状転位を抜けやすくしている。すなわち、本実施形態においては、上記構成により、ネック部21においてスリップ転位と軸状転位を効率良く除去し、クラウン部や直胴部へのスリップ転位および軸状転位の伝播を防いでいる。
【0044】
詳細には、ネック部21の育成は、まず、種結晶Pをシリコン融液Mに接触させた後、種結晶Pの結晶径D0から結晶径を縮径させ、種結晶Pの直下に、最小径D1が3.5mm以上6mm以下の範囲である縮径部31を形成する。ここでは、たとえば、緩やかな角度θ1(80°≦θ1<90°)で結晶径を縮径させる。
【0045】
つぎに、最小径D1から結晶径を拡径させ、最大径D2が7mm以上15mm以下の範囲である拡径部32を形成する。ここでは、たとえば、鉛直上向きの凹形状に形成された固液界面の膨らみをより大きくすることが可能な程度に急な角度θ2(105°≦θ2<140°)で、結晶径を拡径させる。そして、上記のように形成された縮径部31および拡径部32をこの順で交互に繰り返し形成する。
【0046】
なお、ネック部21の育成においては、上記のとおり、種結晶Pの直下に縮径部31を形成することが好ましい。種結晶Pの直下に拡径部32を形成すると、つぎの段階で縮径部31を形成する際に、縮径部31の応力が高まって転位が増殖しやすくなるため、好ましくない。また、ネック部21において、縮径部31および拡径部32は、それぞれ3つ以上繰り返し形成することが好ましい。
【0047】
上記のように縮径部31を形成すると、ネック部21内の熱応力が増加し、種結晶Pをシリコン融液Mに接触させた際に発生するスリップ転位が下方(シリコン単結晶の育成方向)に伝播しやすくなる。このとき、縮径部31の外周側に伝播するスリップ転位は結晶径が縮径されることによって抜けるため、スリップ転位の下方への伝播を低減させることができる。
【0048】
一方で、縮径部31の中心側に伝播するスリップ転位は外周側に抜けにくいため、縮径部31を形成した後に拡径部32を形成する。上記のように拡径部32を形成すると、ネック部21内の熱応力が低減するため、ネック部21の中心側に伝播するスリップ転位が移動しにくくなる。そのため、縮径部31の中心側に伝播するスリップ転位の下方への伝播を低減させることができる。
【0049】
また、軸状転位は、固液界面に対して垂直の方向に伝播されていくため、固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持することでシリコン単結晶の外周側に向かって抜けていく。すなわち、固液界面形状を常に鉛直上向きの凹形状に維持できれば、軸状転位の進む方向を外周側方向へ向けることができ、さらに鉛直上向きの凹形状の高さを高くすることができれば、軸状転位の進む方向をより外周側方向へ向けることができる。これにより、効率よく軸状転位を消滅させることができる。
【0050】
図5は、軸状転位が残留する場合の一例を示すイメージ図であり、
図6は、軸状転位がシリコン単結晶の外周側に抜ける場合の一例を示すイメージ図である。たとえば、
図5に示すようにθ1<80°の角度で急激に縮径させると、縮径部31において固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持することができなくなるため(固液界面形状が鉛直上向きの凸形状に変化するため)、固液界面に対して垂直な方向に伝播されていく軸状転位が固液界面の変化に伴って中心側へ伝播され、その結果として、軸状転移がシリコン単結晶の外周側に抜けない場合がある。
【0051】
しかしながら、本実施形態のように、緩やかな角度(80°≦θ1<90°)で結晶径を縮径させると、縮径部31においても固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持することができることから、たとえば、
図6に示すように、軸状転位が固液界面に対して垂直の方向に伝播され、その結果として、軸状転位がシリコン単結晶の外周側に向かって抜けていく。すなわち、軸状転位を除去することができる。
【0052】
そこで、本実施形態の縮径部31は、固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持できるように、最適な縮径部31の角度θ1を80°≦θ1<90°とし、緩やかな角度で結晶径を縮径させる。θ1<80°の角度で急激に縮径させると、スリップ転位の除去には有利に働くが、固液界面形状が鉛直上向きの凸形状に変化して軸状転位の除去には不利に働くため、好ましくない。
【0053】
一方、本実施形態の拡径部32は、鉛直上向きの凹形状に維持された固液界面の膨らみをより大きくさせるために、最適な拡径部32の角度θ2を105°≦θ2<140°とし、急な角度で結晶径を拡径させる。90°<θ2<105°の角度で緩やかに拡径させると、鉛直上向きの凹形状に形成された固液界面の膨らみをさらに大きくすることができず、縮径時に、鉛直上向きの凹形状に固液界面を維持することが難しくなるため(固液界面が鉛直上向きの凸形状に変化しやすくなるため)、好ましくない。
【0054】
上記のようにネック部を形成することによって、縮径部31においても固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持することができる。
【0055】
そして、本実施形態によれば、固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持しつつ、緩やかな角度θ1で結晶径を縮径させた縮径部31と急な角度θ2で結晶径を拡径させた拡径部32とを交互に繰り返し形成するため、スリップ転位と軸状転位の両方を効率良く短時間で除去することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、拡径部32の最大径を縮径部31の最小径よりも3mm以上大きくすることが好ましい。拡径部32の最大径を縮径部31の最小径よりも3mm以上大きくすると、拡径時の熱応力が低下し転位が止まりやすくなるため、スリップ転位除去に有利に働く。また、縮径部31を長く形成することが可能となり、鉛直上向きの凹形状に維持された固液界面の膨らみがより大きくなるため、軸状転位除去にも有利に働く。一方で、上記大きさが3mm以下である場合には、拡径部32を形成することによる効果が得られにくいため、好ましくない。
【0057】
また、縮径部31の鉛直方向の長さL1および拡径部32の鉛直方向の長さL2は、それぞれ使用する種結晶Pの結晶径D0や、縮径部31の最小径D1、拡径部32の最大径D2、縮径部31の角度θ1および拡径部32の角度θ2によって適宜設定される。縮径部31の長さL1は、たとえば、9mm以上30mm以下の範囲であることが好ましい。また、拡径部32の長さL2は、たとえば、3mm以上8mm以下の範囲であることが好ましい。また、縮径部31の長さL1と拡径部32の長さL2の比であるL1/L2の値は2.5以上であることが好ましく、3以上であることはさらに好ましい。L1/L2の値が2.5未満の場合には、ネック部21に占める、主に軸状転位が抜けやすい縮径部31の長さL1の割合が、相対的に小さくなり、軸状転位がシリコン単結晶の外周側に抜けにくくなる可能性があるため、好ましくない。
【0058】
なお、縮径部31の最小径D1が3.5mm未満の場合には、大口径(たとえば直径12インチ以上)のシリコン単結晶を製造する際の強度が低下し、ネック部21が破断する可能性があるため、好ましくない。また、縮径部31の最小径D1が6mmを超える場合には、強度的に問題となることはないが、ネック部21において転位を消滅させて無転位のシリコン単結晶を製造することが難しい。故に、縮径部31の最小径D1は3.5mm以上6mm以下の範囲であることが好ましい。
【0059】
また、拡径部32の最大径D2が7mm未満の場合には、ネック部21に占める、主に軸状転位が抜けやすい縮径部31の長さL1の割合が、相対的に小さくなりやすくなる等、製造上の観点から、好ましくない。また、拡径部32の最大径D2が15mmを超える場合には、つぎの段階で、縮径部31を形成する際、縮径部31の応力が高まって転位が増殖しやすくなるため、好ましくない。故に、拡径部32の最大径D2は7mm以上15mm以下の範囲であることが好ましい。
【0060】
<効果>
以上のように、本実施形態のシリコン単結晶の製造方法においては、ネック部育成過程において縮径部31と拡径部32とを交互に繰り返し形成し、さらに、ネック部21の育成中はシリコン融液Mと育成中のネック部21との固液界面の形状を鉛直上向きの凹形状に維持することとした。また、縮径部31の角度θ1を80°≦θ1<90°とし、角度θ1で縮径部31を形成することとした。さらに、拡径部32の角度θ2を105°≦θ2<140°とし、縮径部31の形成時に比べて急な角度θ2で拡径部32を形成することとした。
【0061】
縮径部31の形成により、ネック部21内の熱応力が増加し、結晶の外周側に伝播するスリップ転位は結晶径が縮径されることによって抜けるため、スリップ転位の下方への伝播を低減させることができる。また、拡径部32の形成により、ネック部21内の熱応力が低減し、ネック部21の中心側に伝播するスリップ転位が移動しにくくなるため、縮径部31の中心側に伝播するスリップ転位の下方への伝播を低減させることができる。したがって、縮径部31と拡径部32とを交互に繰り返し形成することによって、スリップ転位を消滅させることができる。また、固液界面形状を鉛直上向きの凹形状に維持することにより、軸状転位は固液界面に対して垂直の方向に伝播されシリコン単結晶の外周側に向かって抜けていくため、軸状転位を消滅させることができる。すなわち、本実施形態によれば、ネック部を形成する工程において、固液界面形状を常に鉛直上向きの凹形状に維持しつつ、緩やかな角度θ1で結晶径を縮径させた縮径部31と急な角度θ2で結晶径を拡径させた拡径部32とを交互に繰り返し形成するため、スリップ転位と軸状転位の両方を効率良く除去することができる。
【0062】
なお、本実施形態のシリコン単結晶の製造方法におけるネック部形成工程において、拡径部と縮径部を形成する場合は、引き上げ速度の変化で縮径および拡径を調整する方法が一般的であるが、これに限るものではない。たとえば、引き上げ速度、ネック部21の最小径D1と最大径D2のギャップ幅、ヒーターパワー、ルツボの回転速度などの引き上げ条件の変化の組み合わせで、縮径および拡径の調整を行うことも可能である。
【実施例0063】
つづいて、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法の実施例について説明する。
【0064】
(試験1)
試験1では、上述の実施形態で示した構成の単結晶引上装置1において、石英ガラスルツボ3内に300kg~400kgの原料ポリシリコンと、ボロン(B:ホウ素)のドープ剤を投入し、石英ガラスルツボ3を回転させながら不活性ガス(アルゴンガス)雰囲気中で原料を加熱することでシリコン融液Mを生成した。
【0065】
円筒形状のシリコン種結晶Pをシリコン融液Mに接触させ、
図3に示すようなネック部、および肩部(クラウン部)C1を形成後、直径300mm~320mmおよび長さ1600mm~1800mmの直胴部C2を有するボロンヘビードープ(抵抗率20mΩcm以下)のシリコン単結晶インゴットの引き上げを行なった。
【0066】
また、シリコン融液Mの自然対流を抑制するために、引き上げ中に印加する水平磁場(横磁場)の磁束密度は2500Gaussに設定した。また、炉内圧を20Torr~30Torrとした。さらに、ルツボの回転数を1rpmとし、シリコン単結晶の回転数を9rpmとした(回転方向は互いに逆方向とした)。
【0067】
さらに、ネック部を形成するにあたり、上記同様に水平磁場を印加するとともに、引き上げ速度およびサイドヒータ4の温度を制御し、表1に示す実施例および比較例毎に縮径部の角度θ1と拡径部の角度θ2とを設定(縮径/拡径条件を設定)し、その他の条件は一定または所定の範囲内の値として縮径部および拡径部を形成し、それぞれの条件において(所定の範囲内で最小径D1および最大径D2を変えながら)シリコン単結晶の引上げを数回繰り返した。
【0068】
その他の条件は下記のとおりである。
・縮径部の最小径D1:4.5mm~5.5mm
・拡径部の最大径D2:7.5mm~10.0mm
・縮径部と拡径部の繰り返し形成回数:6回
【0069】
その後、実施例および比較例毎に得られたシリコン単結晶インゴットを用い、スリップ転位についてはシリコン単結晶の肩部(クラウン部)C1における有転位化有無にて評価を行った。また、軸状転位については、SIRD(Scanning Infrared Depolarization)装置による歪判定で軸状転位有無を評価した。
図7(
図7-1~
図7-5)は、軸状転位有無についてのSIRDマップの一例を示す図であり、
図7-1は軸状転位なしの場合を示し、
図7-2~
図7-5は軸状転位ありの場合(拡大図)を示す。
図7-2~
図7-5における〇印の位置が軸状転位を表す。SIRD装置による歪判定では、肩部(クラウン部)C1をウェーハ状に切断し、各ウェーハにおいて歪が同じ位置に続いている場合に、軸状転位:「あり」と評価する。たとえば、
図7-2~
図7-5では、同一シリコン単結晶の2枚のウェーハ(GFMF01とGFMF02)の生画像(DEP)と平均化処置を行った画像(GBA)とを観察した結果として、同じ位置の歪を軸状転位と特定し、○印で表現している。なお、
図7-1に示す2枚のウェーハ(LBLK01とLBLK02)については、DEPおよびGBAの4枚の画像の同じ位置に、歪は認められない。すなわち、軸状転位:「なし」と評価することができる。
本試験における試験一覧および評価結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
表1に示すように、縮径/拡径条件が80°≦θ1<90°および105°≦θ2<140°の範囲内で形成された実施例1~6のネック部については、上記所定の範囲内で最小径D1および最大径D2を変更した場合であっても、スリップ転位および軸状転位が両方とも除去されているとの評価(スリップ転位「なし」、軸状転位「なし」)が得られた。一方、上記範囲以外の縮径/拡径条件で形成された比較例1~6のネック部については、スリップ転位は縮径および拡径の繰り返しにより除去できているが、軸状転位は残留していることがわかった。
【0072】
(試験2)
試験1の実施例1(縮径/拡径条件:θ1=85°,θ2=115°)および実施例2(縮径/拡径条件:θ1=85°,θ2=110°)において製造されたシリコン単結晶インゴットと、試験1の比較例1(縮径/拡径条件:θ1=80°,θ2=95°)において製造されたシリコン単結晶インゴットについて、それぞれネック部を切断し、X線トポグラフを用いてネック部の固液界面形状を評価した。
【0073】
図8は、X線トポグラフを用いたネック部の縦割り評価による固液界面形状を示す図であり、(a)は実施例1の縮径/拡径条件で形成した拡径部および縮径部を示し、(b)は実施例2の縮径/拡径条件で形成した拡径部および縮径部を示し、(c)は比較例1の縮径/拡径条件で形成した拡径部および縮径部を示す。また、
図9は、
図8に示す各ネック部の縦割り評価による固液界面形状の観察結果を示す図であり、(a)はネック長に対する固液界面の高さ(固液界面高さの2mmピッチ観察)を示し、(b)は、縮径/拡径条件別の平均固液界面高さを示す。
図9(a)においては、△(三角)で接続された直線が実施例1の縮径/拡径条件で形成されたネック部の固液界面高さを表し、〇(丸)で接続された直線が実施例2の縮径/拡径条件で形成されたネック部の固液界面高さを表し、◇(ひし形)で接続された直線が比較例1の縮径/拡径条件で形成されたネック部の固液界面高さを表す。
【0074】
上記
図8および
図9を観察した結果、3つすべてのネック部において、鉛直上向きの凹形状の固液界面が維持されているが、試験1にて軸状転位が「あり」と評価された比較例1のネック部については、
図9(a)に示された固液界面高さのピーク値および
図9(b)に示された平均固液界面高さのいずれも、試験1にて軸状転位が「なし」と評価された実施例1および実施例2のネック部と比較して、低い値となっていることがわかった。すなわち、実施例1および実施例2の縮径/拡径条件で形成されたネック部については、鉛直上向きの凹形状に維持された固液界面の膨らみを拡径部にてさらに大きくすることができているが、一方で、比較例1の縮径/拡径条件で形成されたネック部については、鉛直上向きの凹形状に維持された固液界面の膨らみを拡径部にてさらに大きくすることができていないと言える。特に、実施例1は実施例2に比べてさらに大きな角度で拡径されており、これにより、平均固液界面高さが実施例2に比べてより高くなっている。加えて、実施例1は長さL1と拡径部の長さL2の比であるL1/L2の値を3以上として縮径部を長くすることで、軸状転位を抜けやすくしている。また、実施例2のようにL1/L2の値を2.5以上とすることも好ましく、実施例1のようにL1/L2の値を3以上とすることはさらに好ましい。
【0075】
また、
図8によれば、比較例1の縮径/拡径条件で形成されたネック部については、縮径部の長さL1と拡径部の長さL2の比であるL1/L2の値が「15mm/12mm」となっており、2.5以上となっていないことがわかった。
【0076】
なお、本実施例では、ボロンヘビードープのシリコン単結晶インゴットについて試験を行ったが、これに限らず、ヒ素や赤燐などのヘビードープについても同様の効果(評価)が得られる。また、ヘビードープに限らず、ライトドープについても適用可能であるが、ライトドープは、ヘビードープに比べて転位の移動速度が速く、軸状転位は残留しにくいことが知られている。