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特開2023-65659血漿カリクレインおよび第XII因子に対する二重特異性抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065659
(43)【公開日】2023-05-12
(54)【発明の名称】血漿カリクレインおよび第XII因子に対する二重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230502BHJP
   C07K 16/36 20060101ALI20230502BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230502BHJP
   C07K 16/40 20060101ALI20230502BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230502BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230502BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230502BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230502BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALN20230502BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20230502BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/36 ZNA
C07K16/46
C07K16/40
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61K39/395 N
A61P9/00
C12Q1/37
C12N5/071
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035060
(22)【出願日】2023-03-07
(62)【分割の表示】P 2021150755の分割
【原出願日】2015-12-31
(31)【優先権主張番号】62/200,363
(32)【優先日】2015-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/099,236
(32)【優先日】2015-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/261,609
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】カマウ,ステファン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ニクソン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】カストラペリ,ニクサ
(72)【発明者】
【氏名】ケニストン,ジョン,エー.
(72)【発明者】
【氏名】コンレー,グレゴリー,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マソン,シャウナ
(72)【発明者】
【氏名】リンドバーグ,アリソン,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】コパチ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】アデルマン,ブルト
(57)【要約】
【課題】血漿カリクレイン(pKal)および第XII因子に結合する二重特異性抗体、ならびに接触系に関連する疾患または障害(例えば、遺伝性血管性浮腫または血栓症)を治療するためのそのような二重特異性抗体、二重特異性抗体を作製および使用する方法を提供する。
【解決手段】第1の抗体の軽鎖を含む第1のポリペプチドであって、軽鎖が軽鎖可変領域(V)および軽鎖定常領域(C)を含む、第1のポリペプチドと、第1の抗体の重鎖を含む第2のポリペプチドであって、重鎖が重鎖可変領域(V)および重鎖定常領域(C)を含む、第2のポリペプチドと、を含む二重特異性抗体。二重特異性抗体は、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドが、単鎖抗体である第2の抗体であって第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドのいずれかのC末端に融合されている第2の抗体をさらに含み、第1の抗体および第2の抗体の一方が血漿カリクレイン(pKal)に結合し、他方の抗体が第XII因子に結合する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本出願の明細書または図面に記載される発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2015年1月2日に出願された米国仮出願第62/099,236号、2015年8月3日に出願された米国仮出願第62/200,363号、および2015年12月1日に出願された米国仮出願第62/261,609号の出願日の恩典を主張する。言及されたこれらの出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
第XII因子(FXII)は、プレカリクレインを血漿カリクレイン(pKal)に変換する主要活性化因子である。活性化された血漿カリクレインは、高分子量キニノーゲン(HMWK)を切断してブラジキニン(BK)を遊離させる。pKalはまた、潜在型第XII因子を活性化して活性型第XII因子(第XIIa因子)にすることもできる。遺伝性血管性浮腫など、接触系の異常活性化に関連する疾患状態では、制御されないBKレベルが患者の発作を誘発し得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、第1の抗体の軽鎖を含む第1のポリペプチドであって、軽鎖が軽鎖可変領域(V)および軽鎖定常領域(C)(例えば、κ軽鎖またはλ軽鎖)を含む、第1のポリペプチドと、第1の抗体の重鎖を含む第2のポリペプチドであって、重鎖が重鎖可変領域(V)および重鎖定常領域(C)を含む、第2のポリペプチドと、を含む二重特異性抗体である。二重特異性抗体の第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドのいずれかは、第2の抗体をさらに含み、第2の抗体は、単鎖抗体であり、第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドのいずれかのC末端に融合されていてよい。第1の抗体および第2の抗体の一方は血漿カリクレイン(pKal)(例えば、活性型pKal)に結合し、他方の抗体は第XII因子(例えば、活性型第XII因子またはFXIIa)に結合する。例えば、第1の抗体がpKalに結合し、且つ第2の抗体がFXIIaに結合するか、あるいはその逆である。
【0004】
一部の実施形態において、第1の抗体はIgGである。一例では、IgGは、野生型の対応物と比較してC末端リジン残基が欠失または変異している変異型重鎖を含む。例えば、第1の抗体の変異型重鎖はC末端グリシン残基を、野生型のIgG重鎖におけるようなリジン残基の代わりに、含んでよい。一例では、二重特異性抗体は四価であってよい。
【0005】
一部の実施形態において、二重特異性抗体中の第2のポリペプチドは、第1の抗体の重鎖と第2の抗体との間にペプチドリンカーを含む。一例では、ペプチドリンカーはSGGGS(配列番号22)であってよい。
【0006】
scFv抗体である第2の抗体において、Vは、VのN末端に融合されていてよい。あるいは、Vは、VのC末端に融合されている。一部の例では、第2の抗体は、V領域とV領域との間にペプチドリンカー、例えば(GS)(配列番号23)というリンカー、を含む。一部の実施形態において、scFc抗体は、V鎖とV鎖との間に形成されたジスルフィド結合を含む。例えば、V鎖は位置44にシステイン残基(C44)を含んでよく、V鎖は位置100にシステイン残基を含んでよく、ここで、VのC44とVのC100との間にジスルフィド結合が形成され得る。一部の例では、第2の抗体は、そのC末端にKRモチーフを含まない。
【0007】
本明細書に記載される二重特異性抗体のいずれにおいても、第1の抗体のVは、配列番号1におけるものと同一の相補性決定領域(CDR)を有する。一部の例では、第1の抗体のVは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一例では、第1の抗体の重鎖は、配列番号9の残基20~470のアミノ酸配列を含む。一例では、第1の抗体の重鎖は、配列番号9、149または150のアミノ酸配列を含む。代替的に、または追加的に、第1の抗体のVは、配列番号2におけるものと同一のCDRを有する。一部の例では、第1の抗体のVは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0008】
さらに、第2の抗体のVは、配列番号3、4および123~126のうちのいずれかにおけるものと同一のCDRを有してよい。一部の例では、第2の抗体のVは、配列番号3、4および123~126のアミノ酸配列のうちのいずれかを含む。代替的に、または追加的に、第2の抗体のVは、配列番号5~8および127~130のうちのいずれかにおけるものと同一のCDRを有する。一部の例では、第2の抗体のVは、配列番号5~8および127のアミノ酸配列のうちのいずれか1つの残基1~111を含む。一例では、第2の抗体のVは、配列番号5~8および127~130のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含む。
【0009】
一部の例では、本明細書に記載される二重特異性抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドを含み、第2のポリペプチドは、配列番号11~20、47~122、141~148および151~158のアミノ酸配列のうちのいずれかを含む。
【0010】
別の態様では、本開示は、血漿カリクレイン(pKal)に結合する第1の抗体と、第XII因子に結合する第2の抗体と、を含む二重特異性抗体を提供し、例えば、第1の抗体は活性型pKalに結合し、および/または、第2の抗体は活性型第XII因子(FXIIa)に結合する。一部の実施形態において、第1の抗体は、配列番号1におけるものと同一の相補性決定領域(CDR)を含むV鎖および/または配列番号2におけるものと同一のCDRを含むV鎖を含む。例えば、第1の抗体のVは配列番号1のアミノ酸配列を含み、および/または、第1の抗体のVは配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0011】
代替的に、または追加的に、第2の抗体は、配列番号3または4におけるものと同一のCDRを含むV鎖および/または配列番号5、6、7または8におけるものと同一のCDRを含むV鎖を含む。例えば、第2の抗体のV鎖は配列番号3または4のアミノ酸配列を含み、および/または、第2の抗体のVは配列番号5、6、7または8のアミノ酸配列を含む。
【0012】
代替的に、または追加的に、第2の抗体は、配列番号123~126のいずれかにおけるものと同一のCDRを含むV鎖および/または配列番号127におけるものと同一のCDRを含むV鎖を含む。例えば、第2の抗体のV鎖は配列番号123~126のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含み、および/または、第2の抗体のVは配列番号5~8および127のアミノ酸配列のうちのいずれか1つの残基1~111を含む。
【0013】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような第1のポリペプチドまたは第1の抗体をコードする第1のヌクレオチド配列と本明細書に記載されるような第2のポリペプチドまたは第2の抗体をコードする第2のヌクレオチド配列とを含む、単離された核酸または核酸のセットを提供する。一部の実施形態において、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、2つの別個の核酸分子(例えば、2つのベクター(発現ベクターなど))上に位置する。あるいは、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列は、1つの核酸分子(例えば、発現ベクターなどのベクター)上に位置する。
【0014】
本明細書に記載される核酸または核酸のセットは、第1のヌクレオチド配列を含む第1のベクターと第2のヌクレオチド配列を含む第2のベクターとを含む、ベクターのセットであってよい。一部の例では、第1のベクターおよび第2のベクターは、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列がプロモーターに機能可能に連結している発現ベクターである。他の例では、本明細書に記載される核酸は、第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列の両方を含むベクターである。本明細書に記載されるベクターのいずれも、発現ベクターであってよい。例えば、発現ベクターは、プロモーターに機能可能に連結している第1のヌクレオチド配列および第2のヌクレオチド配列を含んでよい。また、本明細書に記載されるベクターまたはベクターのセットを含む宿主細胞も、本開示の範囲内に属する。
【0015】
さらに、本開示は、本明細書に記載されるような二重特異性抗体または核酸/核酸のセットのうちのいずれかと医薬的に許容される担体とを含む組成物を提供する。このような組成物は、接触活性化系に関連する疾患(例えば、遺伝性血管性浮腫(HAE)または血栓症)を治療するために使用できる。本明細書に記載される治療方法は、それを必要とする対象に本明細書に記載される医薬組成物の有効量を投与することを含む。本開示はまた、本明細書に記載されるような疾患の治療に使用するための医薬組成物であって本明細書に記載される二重特異性抗体または当該二重特異性抗体をコードする核酸/核酸のセットのうちのいずれかと医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物、および、そのような疾患(HAEまたは血栓症など)の治療に使用するための医薬の製造におけるそのような医薬組成物の使用、も提供する。一部の実施形態において、血栓症は、心房細動、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症、脳卒中、または動脈もしくは静脈の血栓事象に関連している。
【0016】
さらに別の態様では、本開示は、二重特異性抗体を調製するための方法であって、(a)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの発現を可能にする条件下で本明細書に記載されるような宿主細胞または宿主細胞のセットを培養することと、(b)第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む二重特異性抗体を単離することと、を含む方法を特徴とする。一部の例では、宿主細胞は、第1のポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列と第2のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列とを含む発現ベクターを含む。
【0017】
本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本開示の他の特徴または利点は、以下の図面およびいくつかの実施形態の詳細な説明ならびに添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0018】
以下の図面は、本明細書の一部を成し、本開示の特定の態様をさらに実証するために包含される。この本開示の特定の態様は、本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面のうちの1つ以上を参照することによって、より良く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、クローンX120-A01(scFv=559C-M184-B04 H4L)、X121-E01(scFv=559C-M184-G03 H4L)、X122-A01(scFv=559C-M71-F06 H4L)およびX122-C01(scFv=559C-M71-F06 L4H)を含む様々な二重特異性抗体クローンの、pKalの阻害についての活性を示すグラフである。
図2-1】図2は、クローンX120-A01(AおよびB)、X122-A01(C)、X121-E01(D)、X122-C01(E)および対照クローンM71-F06 IgG(F)のFXIIa阻害活性を示すグラフを包含する。
図2-2】図2は、クローンX120-A01(AおよびB)、X122-A01(C)、X121-E01(D)、X122-C01(E)および対照クローンM71-F06 IgG(F)のFXIIa阻害活性を示すグラフを包含する。
図2-3】図2は、クローンX120-A01(AおよびB)、X122-A01(C)、X121-E01(D)、X122-C01(E)および対照クローンM71-F06 IgG(F)のFXIIa阻害活性を示すグラフを包含する。
図3-1】図3は、5種の例示的二重特異性分子の分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のトレースを示すグラフを包含する。前方のピークは、これらのクローンが高分子量の凝集体を有するということを示し、HMWの%は16.5~33.8の範囲である。A:620I-X136-C11。B:620I-X136-C05。C:620I-X136-G05。D:620I-X136-D12。E:620I-X136-A01。
図3-2】図3は、5種の例示的二重特異性分子の分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のトレースを示すグラフを包含する。前方のピークは、これらのクローンが高分子量凝集体を有するということを示し、HMWの%は16.5~33.8の範囲である。A:620I-X136-C11。B:620I-X136-C05。C:620I-X136-G05。D:620I-X136-D12。E:620I-X136-A01。
図4-1】図4は、ある範囲の濃度にわたる620I-X0173-A11(H44/L100設計ジスルフィド結合を有する620I-X0136-D12)についての高分子量凝集体の減少を示すグラフを包含する。A:1mg/mLの620I-X0173-A11。B:10mg/mLの620I-X0173-A11。C:20mg/mlの620I-X0173-A11。D:45mg/mlの620I-X0173-A11。
図4-2】図4は、ある範囲の濃度にわたる620I-X0173-A11(H44/L100設計ジスルフィド結合を有する620I-X0136-D12)についての高分子量凝集体の減少を示すグラフを包含する。A:1mg/mLの620I-X0173-A11。B:10mg/mLの620I-X0173-A11。C:20mg/mlの620I-X0173-A11。D:45mg/mlの620I-X0173-A11。
図5-1】図5は、再構成血漿アッセイ(reconstituted plasma assay)によって決定された抗pKal抗体、抗FXIIa抗体、抗pKal抗体と抗FXIIa抗体の組み合わせおよび二重特異性抗体D12の阻害活性を示すグラフを包含する。A:一本鎖HMWK存在下におけるDX-2930。B:一本鎖HMWK存在下における抗FXIIa抗体。C:一本鎖HMWK存在下におけるDX-2930+抗FXIIa。D:一本鎖HMWK存在下における二重特異性クローン620I-X0136-D12。
図5-2】図5は、再構成血漿アッセイ(reconstituted plasma assay)によって決定された抗pKal抗体、抗FXIIa抗体、抗pKal抗体と抗FXIIa抗体の組み合わせおよび二重特異性抗体D12の阻害活性を示すグラフを包含する。A:一本鎖HMWK存在下におけるDX-2930。B:一本鎖HMWK存在下における抗FXIIa抗体。C:一本鎖HMWK存在下におけるDX-2930+抗FXIIa。D:一本鎖HMWK存在下における二重特異性クローン620I-X0136-D12。
図6-1】図6は、再構成血漿アッセイによって決定された抗pKal抗体、抗FXIIa抗体、抗pKal抗体と抗FXIIa抗体の組み合わせおよび二重特異性抗体D12の阻害活性を示すグラフを包含する。A:HMWK非存在下におけるDX-2930。B:HMWK非存在下における抗FXIIa抗体。C:HMWK非存在下におけるDX-2930+抗FXIIa。D:HMWK非存在下における二重特異性クローン620I-X0136-D12。
図6-2】図6は、再構成血漿アッセイによって決定された抗pKal抗体、抗FXIIa抗体、抗pKal抗体と抗FXIIa抗体の組み合わせおよび二重特異性抗体D12の阻害活性を示すグラフを包含する。A:HMWK非存在下におけるDX-2930。B:HMWK非存在下における抗FXIIa抗体。C:HMWK非存在下におけるDX-2930+抗FXIIa。D:HMWK非存在下における二重特異性クローン620I-X0136-D12。
図7図7は、血漿アッセイ(plasma assay)によって決定された抗pKal抗体、抗FXIIa抗体、抗pKal抗体と抗FXIIa抗体の組み合わせおよび二重特異性抗体D12の阻害活性を示すグラフを包含する。A:HMWK非存在下におけるDX-2930。B:HMWK非存在下における抗FXIIa抗体。C:HMWK非存在下におけるDX-2930+抗FXIIa。D:HMWK非存在下における二重特異性クローンD12。
図8図8は、抗FXIIa抗体(D06)および抗pKal抗体(H03)と比較した、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)アッセイにおける3種の濃度での二重特異性抗体(D12)の効果を示すグラフである。
図9図9は、pKal(上のセンサーグラム)およびFXIIa(下のセンサーグラム)に対する620I-X0173-A11(ジスルフィドを有する620I-X0136-D12)のビアコアでの結合を示すグラフを包含する。A:pKalとの結合(上の曲線)は、ブランク表面(中)およびプレカリクレイン(下)よりも高い。元のFXIIa単離体はビアコアのチップに対して非特異的結合を示した。これは、プレKalおよびブランクの場合に観察された結合シグナルを説明する。B:FXIIaとの結合(上の曲線)は、FXII(下)およびブランク(中)よりも明らかに高い。
図10-1】図10は、血漿阻害アッセイ(Plasma Inhibition Assay)における3種のジスルフィド拘束(disulfide-constrained)二重特異性抗体のIC50および見かけのKiの算出を示すグラフを包含する。AおよびB:クローン620I-X0173-A11。CおよびD:クローン620I-X0173-C07。EおよびF:クローン620I-X0173-G11。
図10-2】図10は、血漿阻害アッセイ(Plasma Inhibition Assay)における3種のジスルフィド拘束(disulfide-constrained)二重特異性抗体のIC50および見かけのKiの算出を示すグラフを包含する。AおよびB:クローン620I-X0173-A11。CおよびD:クローン620I-X0173-C07。EおよびF:クローン620I-X0173-G11。
図10-3】図10は、血漿阻害アッセイ(Plasma Inhibition Assay)における3種のジスルフィド拘束(disulfide-constrained)二重特異性抗体のIC50および見かけのKiの算出を示すグラフを包含する。AおよびB:クローン620I-X0173-A11。CおよびD:クローン620I-X0173-C07。EおよびF:クローン620I-X0173-G11。
図11図11は、血漿阻害アッセイにおいて決定された二重特異性抗体620I-X0177-A01(別称620I-X0173-A11)の阻害特性を示すグラフである。
図12-1】図12は、親IgGと二重特異性抗体との間で親和性の低下が見られるということを示すグラフを包含する。A:親クローン559C-X0211-A01(左側のパネル)および二重特異性抗体620I-X0177-A01(右側のパネル)の結合特性。B:親クローンDX-2930(左側のパネル)および二重特異性抗体A01(右側のパネル)の結合特性。
図12-2】図12は、親IgGと二重特異性抗体との間で親和性の低下が見られるということを示すグラフを包含する。A:親クローン559C-X0211-A01(左側のパネル)および二重特異性抗体620I-X0177-A01(右側のパネル)の結合特性。B:親クローンDX-2930(左側のパネル)および二重特異性抗体A01(右側のパネル)の結合特性。
図13図13は、示される様々な抗体によるAPTTの用量依存的遅延を示すチャートである。クローンD06、1A01およびF12は抗FXIIa抗体である。クローンH03は抗pKal抗体である。クローンD12および7A01は、それぞれ、ジスルフィド結合を有さない二重特異性抗体およびジスルフィド結合を有する二重特異性抗体である。
図14図14は、クローン1A01(559C-X211-A01)および7A01(620I-X0177-A01)によるフィブリン析出の用量依存的遅延を示すチャートである。
図15図15は、還元条件下(レーン2~4)および非還元条件下(レーン6~8)の二重特異性抗体620I-X0177-A01のサンプルを示すSDS-PAGEタンパク質ゲルである。
図16図16は、pH依存的切断を実証する二重特異性抗体620I-X0177-A01の分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のトレースを示すグラフを包含する。15.7分~16.1分の間のピークは、正しく形成された二重特異性抗体を表す。17分のピークは、DX-2930 IgG1を表す。22分のピークは、切断された単鎖抗体を表す。A:pH6.0。B:pH7.0。C:8.0。
図17図17は、t=0における、IgGのC末端リジンを変異または欠失させるように改変された、示される二重特異性抗体のSDS-PAGEタンパク質ゲルを包含する。A:非還元条件。B:還元条件。
図18図18は、還元条件下でのt=48時間における、IgGのC末端リジンを変異または欠失させるように改変された、示される二重特異性抗体を含むSDS-PAGEタンパク質ゲルを示す。陽性対照は二重特異性抗体620I-X0177-A01である。
図19図19は、対照の二重特異性抗体620I-X0177-A01の分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のトレースを示すグラフを包含する。15.7分~16.1分の間のピークは、正しく形成された二重特異性抗体を表す。17分のピークは、DX-2930 IgG1を表す。22分のピークは、切断された単鎖抗体を表す。A:t=0。B:t=48時間。
図20-1】図20は、pH=7.5において室温で48時間経った後の再改変された二重特異性抗体の分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のトレースを示すグラフを包含する。A:620I-X180-E07。B:620I-X180-G03。C:620I-X180-A05。D:620I-X180-E06。E:620I-X180-C11。F:620I-X179-C01。G:620I-X179-G05。H:620I-X179-A09。
図20-2】図20は、pH=7.5において室温で48時間経った後の再改変された二重特異性抗体の分析用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のトレースを示すグラフを包含する。A:620I-X180-E07。B:620I-X180-G03。C:620I-X180-A05。D:620I-X180-E06。E:620I-X180-C11。F:620I-X179-C01。G:620I-X179-G05。H:620I-X179-A09。
図21図21は、非還元条件下の、重鎖IgGのC末端リジンを変異または欠失させるように改変された、示される二重特異性抗体を示すSDS-PAGEタンパク質ゲルを示す。陽性対照は620I-X0177-A01である。37℃にて1時間、エンドプロテイナーゼLys Cと共にサンプルをインキュベートした。
図22図22は、例示的な二重特異性抗体によるpKalの阻害を示すグラフを包含する。プレート1は、二重特異性抗体620I-X0179-A09(白丸)、620I-X0179-C01(黒三角)および620I-X0179-E05(白三角)の阻害特性を示す。プレート2は、二重特異性抗体620I-X0179-G05(白丸)、620I-X0180-E07(黒三角)および620I-X0180-G03(白三角)の阻害特性を示す。プレート3は、二重特異性抗体620I-X0180-A05(白丸)および620I-X0180-C11(黒三角)の阻害特性を示す。プレートのそれぞれにおいて抗体DX-2930を対照として使用した。
図23図23は、例示的な二重特異性抗体によるFXIIaの阻害を示すグラフを包含する。プレート1は、二重特異性抗体620I-X0179-A09(白丸)、620I-X0179-C01(黒三角)および620I-X0179-E05(白三角)の阻害特性を示す。プレート2は、二重特異性抗体620I-X0179-G05(白丸)、620I-X0180-E07(黒三角)および620I-X0180-G03(白三角)の阻害特性を示す。プレート3は、二重特異性抗体620I-X0180-A05(白丸)および620I-X0180-C11(黒三角)の阻害特性を示す。プレートのそれぞれにおいて抗体DX-4012(559C-M0192-H11)を対照として使用した。
図24図24は、例示的な二重特異性抗体による活性化血漿(activated plasma)の阻害を示すグラフを包含する。左上のパネルは、対照プレート1、2および3のDX-2930、ならびにDX-4012の阻害特性を示す。右上のパネルは、二重特異性抗体620I-X0179-A09(黒丸)、620I-X0179-C01(白丸)の阻害特性を示す。左下のパネルは、二重特異性抗体620I-X0179-E05(黒丸)、620I-X0179-G05(白丸)および620I-X0180-E07(黒三角)の阻害特性を示す。右下のパネルは、二重特異性抗体620I-X0180-G03(黒丸)、620I-X0180-A05(白丸)および620I-X0180-C11(黒三角)の阻害特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
接触活性系は、炎症促進性ペプチドであるブラジキニン(BK)の遊離を介して凝固の内因性経路を開始させる。BKの遊離は、接触活性化系における一連の酵素活性化ステップによって促進される。第XIIa因子(FXIIa)は、プレカリクレインを血漿カリクレイン(pKal)に変換する。活性化されたpKalは、次に、高分子量キニノーゲン(HMWK)を切断してブラジキニン(BK)を遊離させる。重要なことに、pKalは、潜在型第XII因子を活性化して追加的な活性型第XIIa因子をもたらすこともできる。pKalがFXIIを活性化してFXIIaにし、FXIIaがプレカリクレインを活性化してpKalにするという、正のフィードバックが形成されると考えられる。
【0021】
接触活性化系に関連する疾患(遺伝性血管性浮腫(HAE)または血栓症など)では、制御されないBKレベルが炎症反応(患者のHAE発作など)を誘発し得る。従って、BKのレベルを制御するための作用物質(例えば、pKalおよびFXIIの阻害剤)は、重要な治療上の価値を有する可能性がある。
【0022】
本明細書では、pKalおよびFXII(例えば、活性型pKalおよび/またはFXIIa)の両方に結合する二重特異性抗体、ならびに、pKalおよびFXIIの両方を阻害して、接触活性化系に関連する疾患(遺伝性血管性浮腫(HAE)および血栓症など)を治療することにおける当該二重特異性抗体の使用、が説明される。以下の実施例に示されるように、本明細書に記載されるような、いくつかの例示的な二重特異性抗体がpKal活性およびFXIIa活性の両方を阻害することが示された。理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載される二重特異性抗体は、pKalまたはFXIIのいずれかを阻害できる作用物質と比較して、接触活性化系に関連する疾患の治療において優れた治療効果を示すと予想される。これは、二重特異性抗体がpKalおよびFXIIの両方の活性を阻害でき、それにより、例えばpKalとFXIIとの間の正のフィードバックループを遮断することによって、相乗的にBKレベルを低下させるためである。
【0023】
pKalおよびFXIIに結合する二重特異性抗体
本明細書で使用される場合、抗体(互換的に複数形で使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して標的抗原(炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、またはポリペプチドなど)に結合することが可能である免疫グロブリン分子またはその機能断片である。多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)は、複数種の標的抗原(例えば、2種の抗原、または1つの抗原の2種のエピトープ)に結合することが可能である免疫グロブリン分子またはその機能断片/バリアントである。本明細書に記載される二重特異性抗体は、血漿カリクレイン(pKal)および第XII因子の両方に結合できる。一部の実施形態において、二重特異性抗体は、活性型pKalおよびFXIIaの両方に結合してその両方を阻害できる。
【0024】
本明細書で使用される場合、抗原は、抗体を生じさせる能力を有する任意の分子(例えば、タンパク質、核酸、多糖、または脂質)を指す。エピトープは、抗体が結合する、抗原の一部(例えば、pKalまたはFXIIの一部)である。エピトープは通常、アミノ酸または多糖側鎖などの部分の化学的に活性のある(極性、非極性または疎水性など)表面集団からなり、固有の三次元構造特性ならびに固有の電荷特性を有し得る。エピトープは、本質的に直鎖状であってよいか、または不連続なエピトープ(例えば、アミノ酸の直鎖状の連なりではなく抗原の隣接していないアミノ酸同士の間の空間的関係によって形成される、立体構造エピトープ)であってよい。立体構造エピトープには、抗原の直線的配列の別々の部分に由来するアミノ酸同士が3次元空間において極めて近接するようになる、抗原の折り畳みによって生じるエピトープが包含される。
【0025】
本明細書に記載される二重特異性抗体は、pKal(例えば活性型pKal)に結合する第1の抗体部分およびFXII(例えば、FXIIa)に結合する第2の抗体部分という、2つの抗体部分を含む。第1の抗体部分および第2の抗体部分は、所望の抗原(すなわち、pKal(例えば活性型pKal)およびFXII(例えば、FXIIa))に結合することが可能な2種の親抗体に由来してよい。本明細書に記載されるような二重特異性抗体を構築するための親抗体の一方または両方は、天然に存在する抗体(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ウマまたはヒツジなどの好適なドナーに由来する抗体)、遺伝子組換え抗体(例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体)、または天然もしくは合成の抗体のライブラリーに由来する抗体であってよい。一部の実施形態において、一方の親抗体はIgG抗体(例えば、pKalに結合するIgG抗体(DX2930など)またはFXIIaに結合するIgG抗体)であり、他方の親抗体はscFv抗体(例えば、FXIIaに結合するscFv抗体(本明細書に記載される抗FXIIaクローンなど)またはpKalに結合するscFv抗体)である。
【0026】
天然に存在するIgG分子の重鎖は通常、C末端にリジン残基を含む。一部の実施形態では、このC末端リジン残基は、本明細書で開示される二重特異性抗体において欠失または(例えばグリシン残基に)変異させてよい。代替的に、または追加的に、軽鎖可変領域と軽鎖定常領域との接合部に通常存在するKRモチーフは、本明細書に記載される二重特異性抗体において、第1の抗体、第2の抗体、またはその両方、の軽鎖から欠失させてよい。一部の例では、KRモチーフは、本明細書に記載される二重特異性抗体のいずれかのscFv部分から(例えば、scFvのC末端で)欠失している。これらの変異は、二重特異性抗体のタンパク質分解的切断を低減する可能性、ならびに/または二重特異性抗体の発現、産生および/もしくは製造を改善する可能性がある。
【0027】
一部の例では、少なくとも1つの親抗体は親和性成熟抗体であってよく、この親和性成熟抗体は、改変されていない親抗体と比較して1つ以上のCDRまたはフレームワーク領域(FR)に1つ以上の改変を有し、これが標的抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす、抗体を指す。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルあるいはピコモルの親和性を有する可能性がある。抗体の親和性成熟は、可変ドメインシャッフリング(例えば、Marks et al.1992,Bio/Technology 10:779-783を参照のこと)、CDRおよび/またはFRの残基のランダム変異誘発(例えば、Barbas et al.,1994,Proc Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813;Schier et al.,1995,Gene 169:147-155;Yelton et al.,1995,J.Immunol.155:1994-2004;Jackson et al.,1995,J.Immunol.154(7):3310-9;およびHawkins et al,1992,J.Mol.Biol.226:889-896を参照のこと)によるものを含め当技術分野で公知の様々な方法によって実施できる。親抗体は、任意のクラス(IgD、IgE、IgG、IgAまたはIgMなど)、またはそれらのサブクラス、または単鎖抗体(scFvなど)のものであってよい。
【0028】
本明細書に記載されるような二重特異性抗体中の各抗体部分は、限定されるものではないが完全なままの(すなわち完全長の)抗体、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、単鎖抗体(scFv抗体)および四価抗体を含む、任意の形態の抗体であってよい。一部の実施形態において、二重特異性抗体は四価であり、これは、2つのpKal結合部位および2つのFXII結合部位を含む。
【0029】
一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性抗体中の抗pKal部分、抗FXII部分またはその両方は、対応する標的抗原またはそのエピトープに特異的に結合する。抗原またはエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当技術分野において十分に理解される用語であり、このような特異的結合を決定する方法も当技術分野において周知である。分子が、別の標的と反応または会合する場合に比べて、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性で、特定の標的抗原と反応または会合する場合、その分子は「特異的結合」を示すと言われる。抗体が、他の物質に結合する場合に比べて、より高い親和性、親和力で、より敏速に、および/またはより長い持続時間で、結合する場合、その抗体は、標的抗原またはエピトープに「特異的に結合する」。例えば、抗原(例えば、ヒトのpKalまたはFXII)またはその中の抗原エピトープに特異的(または優先的)に結合する抗体は、他の抗原または同じ抗原内の他のエピトープに結合する場合に比べて、より高い親和性、親和力で、より敏速に、および/またはより長い持続時間で、この標的抗原に結合する抗体である。この定義を読むことで、例えば、第1の標的抗原に特異的に結合する抗体は第2の標的抗原に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいということも理解される。そのため、「特異的結合」または「優先的結合」は、必ずしも独占的結合を必要とするわけではない(但し、独占的結合を包含してもよい)。一般に、但し必ずしもそうであるわけではないが、結合への言及は優先的結合を意味する。一部の例では、標的抗原またはそのエピトープに「特異的に結合する」抗体は、他の抗原または同じ抗原内の他のエピトープに結合しない可能性がある。一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性抗体は、活性型pKalおよびFXIIaの両方に特異的に結合する。
【0030】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるような二重特異性抗体は、その標的抗原(例えば、pKalまたはFXIIa)もしくはそれらの抗原エピトープの一方または両方に対して好適な結合親和性を有する。本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、見かけの会合定数またはKを指す。Kは、解離定数(K)の逆数である。本明細書に記載される二重特異性抗体は、その標的抗原もしくは抗原エピトープの一方または両方に対して、少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10Mの結合親和性(K)、またはそれよりも低い結合親和性(K)、を有する可能性がある。結合親和性の増加は、Kの減少に相当する。抗体が第1の抗原および第2の抗原に対して第3の抗原よりも高い親和性で結合することは、第3の抗原への結合についてのK(またはKの数値)に比べて第1の抗原および第2の抗原への結合についてのKがより高い(またはKの数値がより小さい)ことによって示され得る。このような場合、抗体は、第1の抗原および第2の抗原(例えば、第1の立体構造の第1のタンパク質またはその模倣物および第1の立体構造の第2のタンパク質またはその模倣物)に対して、第3の抗原(例えば、第2の立体構造である同じ第1もしくは第2のタンパク質またはその模倣物;または第3のタンパク質)よりも、特異性を有する。(例えば、特異性または他の比較に関しての)結合親和性の差は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000または10倍であってよい。
【0031】
結合親和性(または結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、または分光法(例えば蛍光アッセイを用いるもの)を含め、様々な方法によって決定できる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-P緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、0.005%(v/v) Surfactant P20)中である。これらの手法を用いて、標的タンパク質の濃度の関数として、結合した結合タンパク質の濃度を測定できる。結合した結合タンパク質の濃度([Bound])は、以下の式:
[Bound]=[N][Free]/(Kd+[Free])
によって、遊離標的タンパク質の濃度([Free])および標的上の結合タンパク質結合部位の濃度に関連付けられ、ここで(N)は、標的分子あたりの結合部位の数である。
【0032】
しかし、例えばELISAまたはFACS解析などの方法を用いて決定され、Kに比例し、従って比較(高い方の親和性が例えば2倍高いかどうかを決定することなど)のために使用できる、親和性の定量的測定値を得ることで、または、例えば機能アッセイ(例えばインビトロまたはインビボのアッセイ)における活性から、親和性の推定値を得ることで、十分である場合があるため、必ずしもKを正確に決定する必要があるわけではない。
【0033】
(i)抗pKal部分
活性型pKalなどのpKalに結合することが可能な任意の抗体が、本明細書に記載される二重特異性抗体の構築に使用できる。一部の例では、二重特異性抗体中の抗pKal抗体部分は、ヒトpKalに結合でき、その活性を少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、95%または95%超)阻害する。阻害定数(Ki)は、阻害剤の効力の尺度を提供する。阻害定数(Ki)は、酵素活性を半減させるのに必要な阻害剤の濃度であり、酵素または基質の濃度に依存しない。本明細書に記載される二重特異性抗体中の抗pKal抗体部分の阻害活性は、通例の方法によって決定できる。一部の例では、本明細書に記載されるような二重特異性抗体は、1nM未満(例えば、0.5nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、0.01nM、または0.01nM未満)の抗pKal Ki,app値を有する。抗体のKi,app値は、当技術分野で公知の方法に従って推定できる。
【0034】
一部の実施形態において、二重特異性抗体の抗pKal部分は、ヒトpKalの以下の残基:
V410、L412、T413、A414、Q415、R416、L418、C419、H434、C435、F436、D437、G438、L439、W445、Y475、K476、V477、S478、E479、G480、D483、F524、E527、K528、Y552、D554、Y555、A564、D572、A573、C574、K575、G576、S578、T596、S597、W598、G599、E600、G601、C602、A603、R604、Q607、P608、G609、V610、およびY611、
のうちの1つ以上と相互作用できる。関与するアミノ酸残基(太字および下線)を包含するヒトpKalのC末端断片のアミノ酸配列を以下に示す(配列番号21)。
【0035】
【化1】
【0036】
一部の例では、抗pKal抗体部分は、pKalのエピトープであって上記の配列番号21の以下のセグメント:
V410-C419、H434-L439、Y475-G480、F524-K528、Y552-Y555、D572-S578、T596-R604、またはQ607-Y611、
のうちの1つを含むエピトープに結合できる。
【0037】
一例では、本明細書に記載される二重特異性抗体の抗pKal部分は、米国出願公開第20120201756号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される抗体DX-2930に由来する。DX-2930の重鎖可変領域および軽鎖可変領域ならびにこの抗体の完全長の重鎖および軽鎖を以下に提示する(CDR領域:太字および下線;シグナル配列:イタリック体)。
【0038】
【化2】
【0039】
一部の例では、二重特異性抗体の抗pKal部分は、配列番号1と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号2と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む。2つのアミノ酸配列についての「パーセント同一性」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77, 1993におけるように改変されたKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68, 1990のアルゴリズムを用いて決定される。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al.J.Mol.Biol.215:403-10, 1990のNBLASTおよびXBLASTのプログラム(version 2.0)に組み込まれている。XBLASTプログラム(score=50、wordlength=3)を用いてBLASTタンパク質検索を実施して、目的のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列の間にギャップが存在する場合には、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402, 1997に記載されるようにGapped BLASTを利用できる。BLASTおよびGapped BLASTのプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメータを使用できる。
【0040】
他の例では、本明細書に記載されるような二重特異性抗体中の抗pKal部分は、配列番号1におけるものと同一の3つのCDRを含む重鎖可変領域、および/または配列番号2におけるものと同一の3つのCDR、を含む。同一のCDRを有する2つの重鎖可変領域(または2つの軽鎖可変領域)とは、同じ番号付けスキームによって決定される、その2つの重鎖可変領域(または軽鎖可変領域)内のCDRが同一であるということを意味する。抗体のCDRを決定するための例示的な番号付けスキームには、「Kabat」番号付けスキーム(Kabat et al.(1991),5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health,Bethesda,Md.)、「Chothia」番号付けスキーム(Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948)、「Contact」番号付けスキーム(MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996))、「IMGT」番号付けスキーム(Lefranc M P et al.,Dev Comp Immunol,2003 January;27(1):55-77)および「AHo」番号付けスキーム(Honegger A and Pluckthun A, J Mol Biol,2001 Jun.8;309(3):657-70)が包含される。当業者であれば理解するが、本明細書で同定された例示的な抗pKalおよび抗FXII抗体のCDR領域は、例として使用される「Chothia」番号付けスキームによって決定される。
【0041】
あるいは、抗pKal部分は、配列番号1および/または配列番号2と比較して、CDRのうちの1つ以上に1つ以上(例えば、最大で2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つ)の変異を含んでよい。このような変異は、保存的アミノ酸置換であってよい。本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対電荷またはサイズ特性を変化させないアミノ酸置換を指す。アミノ酸の保存的置換には、以下のグループ内のアミノ酸間でなされる置換が包含される:(a)M,I,L,V;(b)F,Y,W;(c)K,R,H;(d)A,G;(e)S,T;(f)Q,N;および(g)E,D。
【0042】
本明細書に記載される例のいずれにおいても、二重特異性抗体の抗pKal部分は、参照抗体と比較して、1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ以上)の変異または欠失を含んでよい。このような変異は、例えば、二重特異性抗体のタンパク質分解的切断を低減するために、ならびに/または二重特異性抗体の発現、産生および/もしくは製造を改善するために、導入されてよい。一部の実施形態において、二重特異性抗体の抗pKal部分はIgGであり、このIgGの重鎖は、その野生型の対応物と比較して、C末端リジン残基が除去されているか変異している。一部の実施形態において、IgG重鎖のC末端リジンは、中性アミノ酸残基(例えば、グリシン残基またはアラニン残基)に変異している。
【0043】
二重特異性抗体の抗pKal部分の、このような変異型重鎖の例示的配列を以下に提示する(例としてDX-2930の重鎖を使用)。
【0044】
【化3】
【0045】
上記に提示した配列のイタリック体部分は、シグナルペプチドを指す。本明細書で開示される二重特異性抗体の抗pKal部分は、同じシグナルペプチドを含んでよく、シグナルペプチドが除去されるか異なるシグナルペプチドで置き換えられてもよい。分泌タンパク質の作製に使用するためのシグナルペプチドが当技術分野において周知である。
【0046】
二重特異性抗体中の抗pKal部分は、限定されるものではないが完全なままの(すなわち完全長の)抗体、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、および単鎖抗体を含む、任意の抗体形態であってよい。一部の例では、本明細書に記載されるような抗pKal部分の重鎖可変領域は、重鎖定常領域(C)に連結されており、この重鎖定常領域(C)は、完全長の重鎖定常領域またはその一部(例えば、C1、C2、C3、またはそれらの組み合わせ)であってよい。重鎖定常領域は、当技術分野において公知である任意のCに由来してよい。一部の実施形態において、Cはγ重鎖である。代替的に、または追加的に、抗pKal部分の軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域(C)に連結されており、この軽鎖定常領域(C)は、当技術分野において公知である任意のCであってよい。一部の例では、Cはκ軽鎖である。他の例では、Cはλ軽鎖である。抗体の重鎖および軽鎖の定常領域は、当技術分野において周知である(例えば、IMGTデータベース(www.imgt.org)またはwww.vbase2.org/vbstat.php.において提供されるもの;これらは両方とも、参照により本明細書に組み込まれる)。一部の例では、抗pKal部分は、DX-2930と同じ重鎖(配列番号9)および/またはDX-2930と同じ軽鎖(配列番号10)を含んでよいIgGである。
【0047】
あるいは、本明細書に記載されるような二重特異性抗体中の抗pKal部分は、例えばペプチドリンカー((GGGGS)(配列番号23)というリンカーなど)を介して、重鎖可変領域と軽鎖可変領域が融合されている単鎖抗体(ScFv)であってよい。一例では、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、H→Lの方向で融合されている。別の例では、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、L→Hの方向で融合されている。一部の実施形態において、ScFvの軽鎖部分は、そのC末端にLys-Arg(KR)モチーフを含まない。
【0048】
一例では、本明細書に記載される二重特異性抗体中の抗pKal部分は、配列番号9の重鎖と配列番号10の軽鎖とを含む本明細書に記載されるDX-2930(IgG抗体)、またはその抗原結合断片、である。
【0049】
(ii)抗FXII部分
活性型FXII(FXIIa)などのFXIIに結合することが可能な任意の抗体が、本明細書に記載される二重特異性抗体の構築に使用できる。一部の例では、二重特異性抗体中の抗FXII抗体部分は、ヒトFXIIaに結合でき、その活性を少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、95%または95%超)阻害する。本明細書に記載される二重特異性抗体中の抗FXII抗体部分の阻害活性は、通例の方法によって決定できる。一部の例では、本明細書に記載されるような二重特異性抗体は、1nM未満(例えば、0.5nM、0.2nM、0.1nM、0.09nM、0.08nM、0.07nM、0.06nM、0.05nM、0.04nM、0.03nM、0.02nM、0.01nM、または0.01nM未満)の抗pFXIIa Ki,app値を有する。抗体のKi,app値は、当技術分野で公知の方法に従って推定できる。
【0050】
一部の例では、本明細書に記載される二重特異性抗体の抗FXII部分は、抗FXIIクローン559C-M0071-F06、559C-M0179-D04、559C-M0181-C02、559C-M0180-G03および559C-M0184-B04に由来する。これらのクローンの重鎖可変領域および軽鎖可変領域を以下に提示する(CDR:太字および下線)。
【0051】
【化4】
【0052】
クローン620I-X0173-A11(配列番号:127)、620I-X0173-C07(配列番号128)、620I-X0173-E07(配列番号129)および620I-X0173-G11(配列番号130)の軽鎖可変領域は同一である。
【0053】
一部の例では、二重特異性抗体の抗FXIIa部分は、配列番号3もしくは配列番号4と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号5~8のうちのいずれかと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む。例えば、重鎖可変領域は、配列番号3と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよく、軽鎖可変領域は、配列番号5~8のうちのいずれかと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよい。あるいは、重鎖可変領域は、配列番号4と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよく、軽鎖可変領域は、配列番号5と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよい。
【0054】
一部の例では、二重特異性抗体の抗FXIIa部分は、配列番号123~126のうちのいずれかと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および/または配列番号127~130のうちのいずれかと少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む。例えば、重鎖可変領域は、配列番号123と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよく、軽鎖可変領域は、配列番号127と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよい。あるいは、重鎖可変領域は、配列番号124と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよく、軽鎖可変領域は、配列番号128と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよい。あるいは、重鎖可変領域は、配列番号125と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよく、軽鎖可変領域は、配列番号129と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよい。あるいは、重鎖可変領域は、配列番号126と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよく、軽鎖可変領域は、配列番号130と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、または98%)同一であるアミノ酸配列を含んでよい。
【0055】
他の例では、本明細書に記載されるような二重特異性抗体中の抗FXIIa部分は、クローン559C-M0071-F06、559C-M0179-D04、559C-M0181-C02、559C-M0180-G03、559C-M0184-B04、620I-X0173-A11、620I-X0173-C07、620I-X0173-E07もしくは620I-X0173-G11のものと同一の3つのCDRを含む重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域、ならびに/あるいはこれらのクローンのものと同一の3つのCDR、を含む。以下の表1を参照のこと。
【0056】
【表1】
【0057】
あるいは、抗FXIIa部分は、クローン559C-M0071-F06、559C-M0179-D04、559C-M0181-C02、559C-M0180-G03、559C-M0184-B04、620I-X0173-A11、620I-X0173-C07、620I-X0173-E07または620I-X0173-G11のうちのいずれかと比較して、上記の表1に列挙される重鎖および/または軽鎖のCDRのうちの1つ以上に1つ以上(例えば、最大で2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つ)の変異を含んでよい。このような変異は、本明細書に記載されるような保存的アミノ酸置換であってよい。
【0058】
一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性抗体中の抗FXIIa部分はIgG分子であり、このIgG分子は、天然に存在するIgGまたは、例えば二重特異性抗体のタンパク質分解的切断を低減するために、二重特異性抗体の電荷不均一性を低減するために、ならびに/または二重特異性抗体の発現、産生および/もしくは製造を改善するために、例えば1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ以上)の変異もしくは欠失を含む、変異体であってよい。一部の実施形態において、IgGの重鎖は、その野生型の対応物と比較して、C末端リジン残基が除去されているか変異している。一部の実施形態において、IgG重鎖のC末端リジンは、中性アミノ酸残基(例えば、グリシン残基またはアラニン残基)に変異している。
【0059】
二重特異性抗体中の抗FXIIa部分は、限定されるものではないが完全なままの(すなわち完全長の)抗体、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)、Fvなど)、および単鎖抗体を含む、任意の抗体形態であってよい。一部の例では、本明細書に記載されるような抗pKal部分の重鎖可変領域は、重鎖定常領域(C)に連結されており、この重鎖定常領域(C)は、完全長の重鎖定常領域またはその一部(例えば、C1、C2、C3、またはそれらの組み合わせ)であってよい。重鎖定常領域は、当技術分野において公知である任意のCに由来してよい。一部の実施形態において、Cはγ重鎖である。代替的に、または追加的に、抗pKal部分の軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域(C)に連結されており、この軽鎖定常領域(C)は、当技術分野において公知である任意のCであってよい。一部の例では、Cはκ軽鎖である。他の例では、Cはλ軽鎖である。抗体の重鎖および軽鎖の定常領域は、当技術分野において周知である(例えば本明細書に記載されるもの)。
【0060】
あるいは、本明細書に記載されるような二重特異性抗体中の抗FXIIa部分は、例えば柔軟なペプチドリンカー((GGGGS)(配列番号23)というリンカーなど)を介して、重鎖可変領域と軽鎖可変領域が融合されている単鎖抗体であってよい。重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、H→Lの方向で融合されていてよいか、またはL→Hの方向で融合されていてよい。一部の実施形態において、ScFvの軽鎖部分は、そのC末端にKRモチーフを含まない。
【0061】
一部の実施形態において、抗FXIIa部分は、配列番号3もしくは配列番号4の重鎖可変領域、および/または配列番号5~8のうちのいずれかの軽鎖可変領域、を含むscFvである。一例では、抗FXIIa部分は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で配列番号3の重鎖可変領域および配列番号5~8のうちのいずれかの軽鎖可変領域を含むscFv抗体である。別の例では、抗FXIIa部分は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で配列番号4の重鎖可変領域および配列番号5の軽鎖可変領域を含むscFv抗体である。一部の実施形態において、抗FXIIa部分は、配列番号123~126のうちのいずれかの重鎖可変領域、および/または配列番号127~130のうちのいずれかの軽鎖可変領域、を含むscFvである。一例では、抗FXIIa部分は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で配列番号123の重鎖可変領域および配列番号127の軽鎖可変領域を含むscFv抗体である。一例では、抗FXIIa部分は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で配列番号123の重鎖可変領域および配列番号127の軽鎖可変領域を含むscFv抗体である。別の例では、抗FXIIa部分は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で配列番号124の重鎖可変領域および配列番号128の軽鎖可変領域を含むscFv抗体である。別の例では、抗FXIIa部分は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で配列番号125の重鎖可変領域および配列番号129の軽鎖可変領域を含むscFv抗体である。別の例では、抗FXIIa部分は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で配列番号126の重鎖可変領域および配列番号130の軽鎖可変領域を含むscFv抗体である。
【0062】
一部の実施形態において、本明細書に記載されるscFv抗体のうちのいずれかの重鎖および軽鎖可変領域は、例えばジスルフィド結合(Vの残基44とVの残基100との間のものなど)を介して、さらに連結されている。
【0063】
(iii)抗pKal/抗FXII二重特異性抗体の構成
本明細書に記載されるような抗pKal/抗FXIIa二重特異性抗体は、当技術分野において公知であるような二重特異性抗体についての任意の構成(例えば、Klein et al.,mAbs 4(6):653-663, 2012;Kontermann et al.,mAbs 4(2):182-197, 2012;およびColoma et al.,Nature Biotechnology 15:159-163, 1997に記載されるもの)であってよい。一部の例では、二重特異性抗体は、pKalに結合する一本の腕(重鎖/軽鎖複合体)とFXIIに結合する別の腕(重鎖/軽鎖複合体)とを含む完全長ハイブリッド抗体(クアドローマ抗体または三機能性(trifunctional)抗体としても知られている)であってよい。一部の例では、二重特異性抗体は、pKalに結合する1つのFab断片とFXIIに結合する別のFab断片とを含む二重特異性Fab’、または、一方の標的抗原(例えば、pKalまたはFXIIa)に結合するFab断片を2コピーおよび他方の標的抗原(例えば、FXIIaまたはpKal)に結合するFab断片を1コピー含むトリ-Fab分子(tri-Fab molecule)である。あるいは、二重特異性抗体は、pKalに結合するscFvを少なくとも1コピーおよびFXIIaに結合する別のscFvを1コピー含むタンデムscFv分子である。本明細書に記載される二重特異性抗体はまた、当技術分野において公知であるようなダイアボディ(diabody)または単鎖ダイアボディであってもよい。他の例としては、限定されるものではないが、IgG、F(ab’)、CovX-body、scFv-Ig、IgG-scFv、scFv-IgG、DVD-Ig、IgG-sVD、sVD-IgG、2-in-1-IgG、mAb、Tandemab common LC、kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG-scFab、mAb-Fv、charge pairs、SEED-body、Diabody(Db)、dsDd、scDb、tandAbs、tandem scFv、triple body、Fab-scFvおよびF(ab’)-scFvが挙げられる。例えば、Kontermann et al.,mAbs 4(2):182-197, 2012のFig.2を参照のこと。
【0064】
一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性抗体の骨格は、IgG抗体部分と、IgG部分の重鎖または軽鎖のいずれかのC末端(例えば、IgGの重鎖のC末端;例えば、Coloma,M.J.&Morrison,S.L. Design and production of novel tetravalent bispecific antibodies. Nature Biotechnology.15(2):159-163. 1997を参照のこと)に融合されたscFv部分と、を含むように設計されている。IgGの重鎖または軽鎖は、短いペプチドリンカー(Gly残基およびSer残基に富むペプチドなど)を介してscFvと融合されていてよい。一例では、ペプチドリンカーは、SGGGS(配列番号22)というアミノ酸配列を含む。
【0065】
このような二重特異性抗体は、軽鎖可変領域(V)と軽鎖定常領域(C)とを含む第1の抗体の軽鎖を含む第1のポリペプチド;ならびに、N末端からC末端に向けて、重鎖可変領域(V)と重鎖定常領域(C)とを含む第1の抗体の重鎖、および単鎖抗体であってよい第2の抗体、を含む融合タンパク質を含む第2のポリペプチド、を含んでよい。あるいは、二重特異性抗体は、第1の抗体の重鎖であって重鎖可変領域(V)と重鎖定常領域(C)またはその一部とを含む重鎖、を含む第1のポリペプチド;および、N末端からC末端に向けて、軽鎖可変領域(V)と軽鎖定常領域(C)とを含む第1の抗体の軽鎖、および単鎖抗体である第2の抗体、を含む融合タンパク質を含む第2のポリペプチドを含んでよい。一部の例では、第1の抗体がpKal(例えば、活性型pKal)に結合でき、第2の抗体がFXII(例えば、FXIIa)に結合できる。他の例では、第1の抗体がFXIIaに結合でき、第2の抗体がpKalに結合できる。
【0066】
第1の抗体の軽鎖のCは、当技術分野において公知である任意のCであってよい。一部の実施形態において、Cはκ軽鎖である。一部の実施形態において、Cはλ軽鎖である。第1の抗体の重鎖のCは、当技術分野において公知である任意のCであってよい。一部の実施形態において、Cはγ重鎖である。このような重鎖および軽鎖の定常領域は、例えば本明細書に記載されるように、当技術分野において周知である。
【0067】
一例では、二重特異性体は、H→LまたはL→Hのいずれかの方向で、DX-2930に由来するIgG抗体と、クローン559C-M0071-F06、559C-M0179-D04、559C-M0181-C02、559C-M0180-G03、559C-M0184-B04、620I-X0173-A11、620I-X0173-C07、620I-X0173-E07または620I-X0173-G11に由来するscFv抗体と、を含む。上記の開示を参照のこと。親抗体に由来する抗体は、親抗体のものと実質的に類似する(少なくとも80%、85%、90%、95%または98%の配列同一性を有する)重鎖および軽鎖を含んでよい。一部の例では、このような抗体は、親抗体と同一の重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む。他の例では、このような抗体は、親抗体のものと実質的に同一である(例えば、親抗体のCDRと比較して、最大で5つ、4つ、3つ、2つまたは1つのアミノ酸残基の変化(保存的アミノ酸残基置換など)を含む)重鎖CDRおよび/または軽鎖CDRを含む。
【0068】
一部の実施形態において、二重特異性抗体中のscFv抗体は、VのN末端に融合されたVを含む。他の実施形態において、scFv抗体は、VのC末端に融合されたVを含む。本明細書に記載されるscFv抗体のいずれにおいても、V領域とV領域は、ペプチドリンカーなどのリンカーを介して融合されていてよい。
【0069】
本明細書に記載されるようなペプチドリンカーは、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または11個以上、のアミノ酸残基を含んでよい。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、2~50アミノ酸、5~25アミノ酸、または5~20アミノ酸を含んでよい。一部の実施形態において、ペプチドリンカーはSGGGSである。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは(GS)xであり、ここでxは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11以上、であってよい。一部の実施形態において、xは4である。
【0070】
本明細書に記載されるペプチドリンカー(例えば、SGGGS(配列番号22)リンカーまたは(GGGGS)(配列番号23)リンカー)のいずれも、天然に存在するアミノ酸、および/または天然に存在しないアミノ酸、を含んでよい。天然に存在するアミノ酸には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gin)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(He)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、オルニチン(Orn)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)およびバリン(Val)が包含される。天然に存在しないアミノ酸には、アセチル、ホルミル、トシル、ニトロ等などの基で保護された天然に存在するアミノ酸など、保護されたアミノ酸が包含され得る。天然に存在しないアミノ酸の非限定的な例としては、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、ホモアリルグリシン、p-ブロモフェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニンまたはエチニルフェニルアラニン(ethynylephenylalanine)、トランス-クロチルアルケン(trans-crotylalkene)などの内部アルケンを含むアミノ酸、セリンアリルエーテル、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、ビニルグリシン、ピロールリジン、N-シグマ-o-アジドベンジルオキシカルボニル-L-リジン(AzZLys)、N-シグマ-プロパルギルオキシカルボニル-L-リジン、N-シグマ-2-アジドエトキシカルボニル-L-リジン、N-シグマ-tert-ブチルオキシカルボニル-L-リジン(BocLys)、N-シグマ-アリルオキシカルボニル-L-リジン(AlocLys)、N-シグマ-アセチル-L-リジン(AcLys)、N-シグマ-ベンジルオキシカルボニル-L-リジン(ZLys)、N-シグマ-シクロペンチルオキシカルボニル-L-リジン(CycLys)、N-シグマ-D-プロリル-L-リジン、N-シグマ-ニコチノイル-L-リジン(NicLys)、N-シグマ-N-Me-アントラニロイル-L-リジン(NmaLys)、N-シグマ-ビオチニル-L-リジン、N-シグマ-9-フルオレニルメトキシカルボニル-L-リジン、N-シグマ-メチル-L-リジン、N-シグマ-ジメチル-L-リジン、N-シグマ-トリメチル-L-リジン、N-シグマ-イソプロピル-L-リジン、N-シグマ-ダンシル-L-リジン、N-シグマ-o,p-ジニトロフェニル-L-リジン、N-シグマ-p-トルエンスルホニル-L-リジン、N-シグマ-DL-2-アミノ-2カルボキシエチル-L-リジン、N-シグマ-フェニルピルバミド-L-リジン、N-シグマ-ピルバミド-L-リジン、アジドホモアラニン、ホモプロパルギルグリシン、ホモアリルグリシン、p-ブロモフェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン、アジドフェニルアラニン、アセチルフェニルアラニンまたはエチニルフェニルアラニン、トランス-クロチルアルケンなどの内部アルケンを含むアミノ酸、セリンアリルエーテル、アリルグリシン、プロパルギルグリシン、およびビニルグリシンが挙げられる。
【0071】
一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性抗体のscFv部分は、高分子量凝集体の形成を低減する可能性がある1つ以上のジスルフィド結合の形成のためにV鎖およびV鎖の両方にシステイン残基を導入するように改変されていてよい。一部の例では、システイン残基は、V鎖の残基44に導入されてよい。代替的に、または追加的に、システイン残基は、V鎖の残基100に導入されてよい。
【0072】
例示的な抗pKal/抗FXIIa二重特異性抗体には、以下の実施例に記載されるクローンX0120-A01、X0120-C01、X0120-E01、X0120-G01、X0121-A03、X0121-C01、X0121-E01、X0121-G01、X0122-A01、X0122-C01、620I-X0173-A11、620I-X0173-C07、620I-X0173-E07および620I-X0173-G11が包含される。他の例示的な抗pKal/抗FXIIa二重特異性抗体には、以下の実施例に記載されるクローン620I-X138-A08、620I-X136-B02、620I-X139-A12、620I-X137-B08、620I-X142-A04、620I-X142-B11、620I-X138-B01、620I-X136-C01、620I-X138-A12、620I-X136-A12、620I-X138-A02、620I-X136-A05、620I-X138-C07、620I-X136-E07、620I-X142-B02、620I-X136-F11、620I-X142-A05、620I-X136-C09、620I-X138-B10、620I-X136-C08、620I-X139-A11、620I-X136-D05、620I-X138-D04、620I-X136-G08、620I-X142-B07、620I-X142-A11、620I-X138-G12、620I-X142-A10、620I-X138-D03、620I-X137-C08、620I-X142-E02、620I-X136-E05、620I-X138-B06、620I-X136-A09、620I-X138-A06、620I-X137-A10、620I-X139-B10、620I-X136-A04、620I-X138-D06、620I-X136-C11、620I-X138-B07、620I-X136-A02、620I-X139-G02、620I-X136-B07、620I-X138-E03、620I-X136-G05、620I-X139-D12、620I-X136-A01、620I-X138-C12、620I-X136-G10、620I-X138-D05、620I-X136-F07、620I-X138-A01、620I-X142-E09、620I-X138-D11、620I-X136-C05、620I-X142-A02、620I-X136-C04、620I-X138-F02、620I-X136-G04、620I-X139-G12、620I-X136-B11、620I-X142-D04、620I-X136-D06、620I-X139-A01、620I-X136-D12、620I-X138-F05、620I-X136-A11、620I-X139-E05、620I-X136-C12および620I-X138-E05が包含される。
【0073】
二重特異性抗体の調製
本明細書に記載される二重特異性抗体の調製のために、当技術分野において公知である任意の好適な方法(例えば、標準的な組換え技術)を用いることができる。以下に例を提示する。
【0074】
好適な親抗体の重鎖および軽鎖の遺伝子は、通例の技術(例えば、好適な供給源からのPCR増幅)によって取得できる。一例では、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)容易に単離および配列決定できる。ハイブリドーマ細胞などの細胞は、このようなDNAの供給源として役立つ可能性がある。別の例では、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAの配列は、例えばデータベースまたは他の公的に利用可能な情報源から取得される可能性があり、当該DNAを合成できる。親抗体の遺伝子はまた、目的の抗原を用いて好適な抗体ライブラリーをスクリーニングすることによっても取得できる。
【0075】
このようにして取得された抗体の重鎖および軽鎖の遺伝子は、通例の技術に従って相補性決定領域(CDR)領域を特定するために解析されてよい。本明細書に記載されるような二重特異性抗体中のポリペプチドのいずれも、従来の組換え技術によって調製されてよく、好適な宿主細胞における生産のための好適な発現ベクター中に挿入されてよい。
【0076】
本明細書に記載されるような二重特異性抗体のポリペプチドのうちの1つ以上をコードするヌクレオチド配列は、各ヌクレオチド配列が好適なプロモーターに機能可能に連結している1つの発現ベクターにクローニングされてよい。あるいは、ヌクレオチド配列は、両方の配列が同じプロモーターから発現されるように、単一のプロモーターと機能可能に連結していてよい。一部の例では、2つのポリペプチドの発現は、共通のプロモーターによって制御される。他の例では、2つのポリペプチドのそれぞれの発現は、別個のプロモーターの制御下にある。別の代替手段では、2つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、同じ細胞または別々の細胞に導入されてよい2つのベクターにクローニングされる。2つのポリペプチドが別々の細胞において発現される場合、2つのポリペプチドのそれぞれが、それらを発現する宿主細胞から単離されてよく、2つの単離された重鎖が、二重特異性抗体の形成を可能にする好適な条件下で混合およびインキュベートされてよい。
【0077】
一般に、当技術分野で公知の方法を用いて、二重特異性抗体の1つの鎖または全ての鎖をコードする核酸配列を好適な発現ベクターに、好適なプロモーターに機能可能に連結した状態でクローニングできる。例えば、好適な条件下でヌクレオチド配列およびベクターを制限酵素と接触させて、互いに対合できリガーゼでつなぎ合わせることができる相補的末端を各分子上に生じさせることができる。あるいは、合成核酸リンカーを遺伝子の末端に連結できる。これらの合成リンカーは、ベクター中の特定の制限部位に対応する核酸配列を含む。発現ベクター/プロモーターの選択は、抗体の生産に使用するための宿主細胞のタイプに左右されるであろう。
【0078】
本明細書に記載される二重特異性抗体の発現のために様々なプロモーターを使用でき、これらには、限定されるものではないがサイトメガロウイルス(CMV)中間初期プロモーター(intermediate early promoter)、ウイルスLTR(ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTRなど)、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、E.coli lac UV5プロモーター、および単純ヘルペスtkウイルスプロモーターが包含される。
【0079】
調節可能なプロモーターも使用できる。そのような調節可能なプロモーターには、lacオペレーターを保持する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節する転写モジュレーターとしてE.coli由来のlacリプレッサーを用いるもの[Brown,M.et al.,Cell,49:603-612(1987)]、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を用いるもの[Gossen,M.,and Bujard,H.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547-5551(1992);Yao,F.et al.,Human Gene Therapy,9:1939-1950(1998);Shockelt,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6522-6526(1995)]が包含される。他の系には、FK506ダイマー、エストラジオール(astradiol)を用いるVP16もしくはp65、RU486、ジフェノールムリステロン(diphenol murislerone)またはラパマイシンが包含される。誘導可能な系は、Invitrogen、ClontechおよびAriadから入手可能である。
【0080】
オペロンと共にリプレッサーを包含する調節可能なプロモーターが使用できる。一実施形態において、E.coli由来のlacリプレッサーは、lacオペレーターを保持する哺乳動物細胞プロモーターからの転写を調節する転写モジュレーターとして機能できる[M.Brown et al.,Cell,49:603-612(1987)]。Gossen and Bujard(1992)[M.Gossen et al.,Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992)]は、テトラサイクリンリプレッサー(tetR)を転写活性化因子(VP16)と組み合わせてtetR-哺乳動物細胞転写活性化因子融合タンパク質tTa(tetR-VP16)を作り出し、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要前初期プロモーター由来の、tetOを保持する最小プロモーターと組み合わせて、哺乳動物細胞において遺伝子発現を制御するtetR-tetオペレーター系を作り出した。一実施形態において、テトラサイクリン誘導性スイッチが使用される。テトラサイクリンオペレーターがCMVIEプロモーターのTATAエレメントの下流に適切に位置する場合、tetR-哺乳動物細胞転写因子融合派生物ではなくテトラサイクリンリプレッサー(tetR)単体が、哺乳動物細胞において遺伝子発現を調節する強力なトランス-モジュレーターとして機能できる(Yao et al.,Human Gene Therapy)。このテトラサイクリン誘導性スイッチの特別な利点の1つは、その調節可能という効果を達成するのにテトラサイクリンリプレッサーと哺乳動物細胞のトランス活性化因子またはリプレッサーとの融合タンパク質の使用(場合によっては細胞に対して毒性であることがある(Gossen et al.,Natl.Acad.Sci.USA,89:5547-5551(1992);Shockett et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92:6522-6526(1995)))を必要としないということである。
【0081】
さらに、ベクターは、例えば以下のうちのいくつかまたは全てを含んでよい:哺乳動物細胞における安定なトランスフェクタントまたは一過性のトランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択マーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの前初期遺伝子に由来するエンハンサー/プロモーター配列;mRNAの安定性のためのSV40に由来する転写終結シグナルとRNAプロセシングシグナル;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマの複製開始点およびColE1;内部リボソーム結合部位(IRES);多用途のマルチクローニングサイト;ならびに、センスRNAおよびアンチセンスRNAのインビトロ転写のためのT7 RNAプロモーターおよびSP6 RNAプロモーター。導入遺伝子を含むベクターを作製するのに好適なベクターおよび方法は、当技術分野において周知であり利用可能である。
【0082】
本明細書に記載される方法を実施するのに有用なポリアデニル化シグナルの例としては、限定されるものではないが、ヒトコラーゲンIポリアデニル化シグナル、ヒトコラーゲンIIポリアデニル化シグナル、およびSV40ポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0083】
本開示の他の態様は、二重特異性抗体を調製するための方法であって、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドの発現を可能にする条件下で本明細書に記載される宿主細胞または宿主細胞のセットを培養することと、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む二重特異性抗体を単離することと、を含む方法に関する。一部の実施形態において、宿主細胞は、本明細書に記載されるような第1のポリペプチドをコードする第1のヌクレオチド配列と本明細書に記載されるような第2のポリペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列とを含む発現ベクターを含む。
【0084】
本明細書に記載される二重特異性抗体の調製に使用するのに好適な宿主細胞は、限定されるものではないが細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞または哺乳動物細胞を含め、タンパク質生産に使用できる当技術分野で公知の任意の宿主細胞であってよい。
【0085】
本明細書に記載される二重特異性抗体は、細菌細胞(例えばE.coli細胞)において生産されてよい。あるいは、二重特異性抗体は、真核細胞において生産されてよい。一実施形態において、抗体は、Pichia(例えば、Powers et al.,2001,J.Immunol.Methods.251:123-35を参照のこと)、HanseulaまたはSaccharomycesなどの酵母細胞において発現される。別の実施形態において、二重特異性抗体は、哺乳動物細胞において生産されてよい。抗体を発現するための哺乳動物宿主細胞には、限定されるものではないが、293細胞(例えば、ATCC CRL-1573(American Type Culture Collection(登録商標))、およびExpi293F(商標)細胞(Life Technologies(商標))を参照のこと)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えばKaufman and Sharp,1982,Mol.Biol.159:601-621に記載されるように、DHFR選択マーカーと共に使用される、Urlaub and Chasin,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されるdhfr CHO細胞を含む)、リンパ球細胞株(例えば、NS0骨髄腫細胞およびSP2細胞)、COS細胞、およびトランスジェニック動物(例えば、トランスジェニック哺乳動物)由来の細胞が包含される。例えば、細胞は、乳腺上皮細胞である。
【0086】
本明細書に記載されるような二重特異性抗体の組換え発現のための例示的な系において、二重特異性抗体中のポリペプチドの両方をコードする組換え発現ベクターは、リン酸カルシウムにより媒介されるトランスフェクションによってdhfr CHO細胞に導入される。組換え発現ベクター内において、2つのポリペプチドをコードする核酸は、高レベルの遺伝子転写を駆動するためのエンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルス等に由来するもの;CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントなど)に機能可能に連結されている。組換え発現ベクターはまた、メトトレキサート選択/増幅を用いて、ベクターでトランスフェクトされているCHO細胞を選択すること、を可能にするDHFR遺伝子も保持する。選択された形質転換宿主細胞を培養して2つのポリペプチドを発現させる。それにより形成された四量体分子は、培地から回収できる。別の例示的な組換え発現のための系は、実施例2に記載されている。
【0087】
組換え発現ベクターの調製、宿主細胞のトランスフェクション、形質転換体の選択、宿主細胞の培養および培地からの抗体の回収のために、標準的な分子生物学的手法が使用される。例えば、一部の抗体は、プロテインAまたはプロテインGが結合したマトリックスを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって単離できる。
【0088】
二重特異性抗体の有用性
本明細書に記載される二重特異性抗体またはコード核酸もしくは核酸のセットは、診断および治療を目的として使用できる。それらはまた、基礎研究および治療研究において研究ツールとしても使用できる。
【0089】
(i)医薬組成物
本明細書に記載されるような二重特異性抗体(またはコード核酸もしくは核酸のセット)を医薬的に許容される担体(賦形剤)(緩衝剤を含む)と混合して、標的疾患の治療に使用するための医薬組成物を作製できる。「許容される」は、担体が組成物の有効成分に適合する(および好ましくは有効成分を安定化することが可能である)必要があり且つ治療される対象に有害でない必要があるということを意味する。医薬的に許容される賦形剤(担体)(緩衝剤を含む)は、当技術分野において周知である。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K.E.Hooverを参照のこと。
【0090】
本発明の方法において使用される医薬組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で医薬的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含んでよい(Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K.E.Hoover)。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用される用量および濃度においてレシピエントに無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝剤;抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む);防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストランを含む);EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン:金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含んでよい。
【0091】
一部の例では、本明細書に記載される医薬組成物は、Epstein,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwang,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号に記載されるものなど、当技術分野で公知の方法によって調製できる、二重特異性抗体を含むリポソームを含む。向上した循環時間を有するリポソームが米国特許第5,013,556号で開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法によって作製できる。所定の孔サイズのフィルターを通してリポソームを押し出して、所望の直径を有するリポソームを得る。
【0092】
二重特異性抗体またはコード核酸(複数可)はまた、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって調製されたマイクロカプセル(それぞれ例えば、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセルまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル)、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョンに封入されてもよい。このような手法は、当技術分野において公知である。例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing(2000)を参照のこと。
【0093】
他の例では、本明細書に記載される医薬組成物は、徐放性型に製剤化できる。徐放性調製物の好適な例としては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは成形品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸と7 エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドから構成される注射用マイクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、スクロースアセテートイソブチレート、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0094】
生体内投与に使用される医薬組成物は無菌でなければならない。これは、例えば滅菌濾過膜による濾過によって、容易に達成される。治療用抗体組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器(例えば、静脈内溶液の袋、または皮下注射針で穿孔可能な栓を有するバイアル)に入れられる。
【0095】
本明細書に記載される医薬組成物は、経口投与、非経口投与もしくは直腸投与、または吸入もしくは吹送による投与のための、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁液、または坐薬などの単位剤形であってよい。錠剤などの固体組成物を調製するために、主要有効成分を医薬担体(例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたはゴムなどの従来の打錠成分)および他の医薬希釈剤(例えば、水)と混合して、本発明の化合物またはその無毒性の医薬的に許容される塩の均質混合物を含む固体プレ製剤組成物を作製できる。これらのプレ製剤組成物を均質と称する場合、有効成分が組成物全体にわたって均一に分散されており、その結果、等しく有効な単位剤形(錠剤、丸薬およびカプセルなど)に組成物を容易に細分化できるということが意味される。この固体プレ製剤組成物は、次に、0.1~約500mgの本発明の有効成分を含む、上述のタイプの単位剤形に細分化される。新規の組成物の錠剤または丸薬をコーティングするか、そうでなければ混ぜ合わせて、持続性作用の利点をもたらす剤形を提供できる。例えば、錠剤または丸薬は、内側の投薬成分および外側の投薬成分を含んでよく、後者は、前者を覆う外被の形態である。これら2つの成分は腸溶層によって隔てられてよく、この腸溶層は、胃における崩壊を抑える働きをするとともに、内側の成分が完全なまま十二指腸へと通過するか、その放出が遅れることを可能にする。様々な材料が、このような腸溶層または腸溶コーティングに使用でき、そのような材料には、いくつかのポリマー酸、ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物が包含される。
【0096】
好適な界面活性剤には、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えば、Span(商標)20、40、60、80または85)などの非イオン性界面活性剤が包含される。界面活性剤を有する組成物は、好都合なことには0.05~5%の界面活性剤を含むであろうし、0.1~2.5%であってもよい。必要に応じて他の成分(例えばマンニトールまたは他の医薬的に許容されるビヒクル)を添加してよいということが理解されるであろう。
【0097】
好適なエマルジョンは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標)などの市販の脂肪エマルジョンを用いて調製されてよい。有効成分は、予め混合されたエマルジョン組成物中に溶解されてよいか、あるいは、有効成分を油(例えば、ダイズ油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油またはアーモンド油)中に溶解し、リン脂質(例えば、卵リン脂質、ダイズリン脂質またはダイズレシチン)および水と混合してエマルジョンを形成してもよい。他の成分(例えば、グリセロールまたはグルコース)を添加してエマルジョンの張度を調整してよいということが理解されるであろう。好適なエマルジョンは、典型的には、最大で20%(例えば、5~20%)の油を含むであろう。脂肪エマルジョンは、0.1~1.0.im(特に0.1~0.5.im)の脂肪滴を含んでよく、5.5~8.0の範囲のpHを有してよい。
【0098】
エマルジョン組成物は、二重特異性抗体をIntralipid(商標)またはその構成要素(ダイズ油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製されるものであってよい。
【0099】
吸入用または吹送用の医薬組成物には、医薬的に許容される水性溶媒もしくは有機溶媒またはそれらの混合物における溶液および懸濁液、ならびに粉末が包含される。液体組成物または固体組成物は、上記のような好適な医薬的に許容される賦形剤を含んでよい。一部の実施形態において、組成物は、局所的または全身的な効果のために、経口または経鼻の呼吸経路で投与される。
【0100】
好ましくは無菌の医薬的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧されてよい。噴霧された溶液が噴霧装置から直接吸い込まれてよいか、または、噴霧装置がフェイスマスク、テントまたは間欠的陽圧人工呼吸器に取り付けられてよい。溶液組成物、懸濁液組成物または粉末組成物は、適切な様式で製剤を送達する装置から投与(好ましくは経口投与または経鼻投与)されてよい。
【0101】
(ii)疾患治療
本明細書に記載される二重特異性抗体(またはコード核酸もしくは核酸のセット)は、二重特異性抗体が結合する抗原の一方または両方に関連する疾患または障害の治療に有用である。例えば、二重特異性抗体がpKalおよびFXIIaに結合してpKalおよびFXIIaの活性を遮断することが可能である場合、その二重特異性抗体は、接触活性化系の調節不全に関連する疾患(例えば、HAEおよび血栓症)の治療に使用できる。
【0102】
HAE(I型、II型およびIII型のHAEを含む)は、例えば四肢、顔、腸管および気道における、重度の腫脹の再発エピソードを特徴とする障害である。HAE発作(HAE attach)は、軽度の外傷またはストレスによって引き起こされる可能性がある。HAE発作に起因する腸管の腫脹は、重度の腹痛、吐き気および嘔吐を引き起こし得る。気道の腫脹は、呼吸を制限し、生命を脅かす気道の閉塞を引き起こし得る。
【0103】
血栓症(例えば、静脈血栓症または動脈血栓症)は、循環系を通る血流を妨げる可能性がある、血管内での血餅の形成を指す。血栓症には、心房細動、DVT、肺塞栓症、脳卒中または他の動脈もしくは静脈の血栓事象、に関連する血栓症が包含される可能性がある。
【0104】
本明細書で開示される方法を実施するために、上述の医薬組成物の有効量が、静脈内投与などの好適な経路を介して(例えば、ボーラスとして、または一定期間にわたる連続的注入によって、筋肉内経路、腹腔内経路、脳脊髄内(intracerebrospinal)経路、皮下経路、関節内経路、滑液嚢内経路、髄腔内経路、経口経路、吸入経路もしくは局所経路によって)、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に投与されてよい。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を含め、液体製剤用の市販の噴霧器が投与に有用である。液体製剤はそのまま噴霧でき、凍結乾燥粉末は再構成後に噴霧できる。あるいは、本明細書に記載されるような二重特異性抗体は、フルオロカーボン製剤および定量吸入器を用いてエアロゾル化できるか、または凍結乾燥され粉砕された粉末として吸入できる。
【0105】
本明細書に記載される方法によって治療される対象は、哺乳動物(より好ましくはヒト)であってよい。哺乳動物には、限定されるものではないが、家畜、スポーツ用動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットが包含される。治療を必要とするヒト対象は、HAEまたは血栓症などの標的疾患/障害を有するか、標的疾患/障害のリスクがあるか、標的疾患/障害を有することが疑われる、ヒト患者であってよい。一部の実施形態において、血栓症は、心房細動、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症、脳卒中または動脈もしくは静脈の血栓事象に関連している。標的の疾患または障害を有する対象は、通例の健康診断(例えば、臨床検査、臓器機能検査、CTスキャン、または超音波検査)によって特定できる。そのような標的疾患/障害のいずれかを有することが疑われる対象は、疾患/障害の症状を1つ以上示す可能性がある。疾患/障害のリスクがある対象は、その疾患/障害についての危険因子のうちの1つ以上を有する対象であってよい。
【0106】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、単独で、あるいは1種以上の他の活性薬剤と共同で、対象に治療効果を与えるのに必要とされる、各活性薬剤の量を指す。当業者には認識されるように、有効量は、治療される特定の状態、状態の重症度、個々の患者のパラメータ(年齢、健康状態、サイズ、性別および体重を含む)、治療期間、併用療法の性質(存在する場合)、特定の投与経路、ならびに、医療関係者の知識および専門知識の範囲内に属する同様の因子、に応じて変動する。これらの因子は、当業者には周知であり、通例の実験だけで対処できる。個々の成分またはそれらの組み合わせの最大用量、すなわち健全な医学的判断に従った最大安全用量、を使用することが一般に好ましい。しかし、患者が、医学的理由、心理的理由または実質的に任意の他の理由のために、より低い用量または許容される用量を要求する可能性があるということが当業者には理解されるであろう。
【0107】
半減期など、実験による検討事項は一般に、投与量の決定に寄与するであろう。例えば、抗体の半減期を延長するために、および抗体が宿主の免疫系に攻撃されるのを防ぐために、ヒト化抗体または完全にヒトのものである抗体など、ヒトの免疫系に適合する抗体が使用されてよい。投与頻度は、治療の間に決定および調整されてよく、一般的に、ただし必ずというわけではないが、標的疾患/障害の治療および/または抑制および/または寛解および/または遅延に基づく。あるいは、二重特異性抗体の持続的連続放出製剤(sustained continuous release formulation)が適切である可能性がある。徐放を達成するための様々な製剤および装置が当技術分野において公知である。
【0108】
一例では、本明細書に記載されるような二重特異性抗体の投与量は、抗体を1回以上投与された個体において実験的に決定されてよい。個体には、徐々に増える投与量でアンタゴニストが与えられる。アンタゴニストの有効性を評価するために、疾患/障害の指標を追跡してよい。
【0109】
一般的に、本明細書に記載される抗体のうちのいずれかの投与については、最初の候補投与量は約2mg/kgであってよい。本開示の目的のためには、典型的な1日投与量は、上述の因子に応じて、約0.1μg/kg~3μg/kg~30μg/kg~300μg/kg~3mg/kgのうちのいずれかから30mg/kg~100mg/kg以上までの範囲である可能性がある。状態に応じて数日間以上にわたって繰り返し投与される場合、治療は、症状の所望の抑制が生じるまで、あるいは十分な治療レベルが達成されて標的の疾患もしくは障害またはそれらの症状が緩和されるまで、持続される。例示的な投与計画は、約2mg/kgという初回用量を投与した後、毎週の抗体約1mg/kgという維持用量または1週間おきの約1mg/kgという維持用量を投与することを含む。しかし、施術者が達成したい薬物動態学的減衰のパターンによっては、他の投与計画が有用である可能性がある。例えば、1週間に1~4回の投与が企図される。一部の実施形態において、約3μg/mg~約2mg/kgの範囲(約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、および約2mg/kgなど)の投与が用いられてよい。一部の実施形態において、投与頻度は、1週間、2週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間もしくは10週間に1回、または1ヵ月、2ヵ月もしくは3ヵ月もしくは3ヵ月超に1回である。この療法の進展は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投与計画(使用される抗体を含む)は、時間と共に変化してよい。
【0110】
一部の実施形態において、正常体重の成人患者については、約0.3~5.00mg/kgの範囲の用量が投与されてよい。特定の投与計画(すなわち、用量、時期および頻度)は、特定の個体およびその個体の病歴ならびに個々の薬剤の特性(薬剤の半減期および当技術分野において周知である他の検討事項など)に左右されるであろう。
【0111】
本開示の目的のためには、本明細書に記載されるような二重特異性抗体の適切な投与量は、使用される特異抗体(またはその組成物)、疾患/障害のタイプおよび重症度、抗体が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのか、以前の治療、患者の臨床歴およびアンタゴニストへの反応、ならびに主治医の裁量に左右されるであろう。典型的には、臨床医は、所望の結果が達成される投与量に達するまで二重特異性抗体を投与するであろう。1種以上の二重特異性抗体の投与は、例えば、レシピエントの生理的状態、投与の目的が治療的であるのか予防的であるのか、および当業者に知られている他の因子に応じて、連続的または間欠的であってよい。二重特異性抗体の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であってよいか、あるいは、間隔を空けた一連の投与(例えば、標的の疾患または障害の発症前、発症中または発症後)であってよい。
【0112】
本明細書で使用される場合、「治療」なる用語は、標的の疾患もしくは障害、当該疾患/障害の症状または当該疾患/障害の素因を有する対象に、障害、疾患の症状または疾患もしくは障害の素因を治癒する(cure)、治癒する(heal)、軽減する、緩和する、変化させる、改善する、寛解する、好転させる、またはそれらに影響を及ぼす目的で、1種以上の活性薬剤を含む組成物を適用または投与することを指す。
【0113】
標的疾患/障害を軽減することには、疾患の発症もしくは進行を遅らせること、または疾患の重症度を低減することが包含される。疾患の軽減は、必ずしも治癒的結果を必要とするわけではない。その点において使用される場合、標的の疾患または障害の発症を「遅らせること」は、疾患の進行を遅延させること、妨げること、鈍化させること、遅くすること、安定化させること、および/または先送りにすることを意味する。この遅延は、治療される疾患および/または個体の病歴に応じて、様々な長さの時間のものであってよい。疾患の発症を「遅らせる」か軽減する方法または疾患の開始を遅らせる方法は、その方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠内で疾患の症状を1つ以上発症する可能性を低減する、および/または所与の時間枠内で症状の程度を低減する、方法である。そのような比較は、典型的には、統計学的に有意な結果をもたらすのに十分な数の対象を用いた臨床研究に基づく。
【0114】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の最初の顕在化および/またはその後の進行を意味する。疾患の発症は、当技術分野において周知である標準的な臨床技術を用いて検出および評価できる。しかし、発症はまた、検出できない可能性がある進行も指す。本開示の目的のためには、発症または進行は、症状の生物学的経過を指す。「発症」には、発生、再発、および開始が包含される。本明細書で使用される場合、標的の疾患または障害の「開始」または「発生」には、最初の開始および/または再発が包含される。
【0115】
一部の実施形態において、本明細書に記載される二重特異性抗体は、治療を必要とする対象に、生体内で標的抗原の一方または両方の活性を少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%超)阻害するのに十分な量で投与される。他の実施形態において、抗体は、標的抗原の一方または両方のレベルを少なくとも20%(例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または90%超)低下させるのに有効な量で投与される。
【0116】
医薬分野の当業者に知られている従来の方法を用いて対象に医薬組成物を、治療される疾患のタイプまたは疾患の部位に応じて、投与できる。この組成物はまた、他の従来の経路を介して投与(例えば、経口投与、非経口投与、吸入スプレーによる投与、局所投与、直腸投与、経鼻投与、頬側投与、膣内投与または移植されたリザーバーを介した投与)できる。本明細書で使用される場合、「非経口」なる用語には、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内への注射または注入の技術が包含される。さらに、組成物は、1、3または6ヵ月用のデポー注射用または生分解性の材料および方法を用いるものなどの注射用デポー投与経路を介して対象に投与できる。
【0117】
注射用組成物は、サラダ油、ジメチルラクトアミド(dimethylactamide)、ジメチルホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノールおよびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)などの様々な担体を含んでよい。静脈内注射の場合、水溶性の抗体を点滴法によって投与でき、それにより、抗体と生理学的に許容される賦形剤とを含む医薬製剤が注入される。生理学的に許容される賦形剤には、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンゲル液または他の好適な賦形剤が包含される可能性がある。筋肉内用調製物(例えば、抗体の好適な可溶性塩形態の無菌製剤)は、注射用水、0.9%生理食塩水または5%グルコース溶液などの医薬用賦形剤に溶解して投与できる。
【0118】
一実施形態において、二重特異性抗体は、部位特異的送達技術または標的化局所送達技術を介して投与される。部位特異的送達技術または標的化局所送達技術の例としては、二重特異性抗体の様々な移植可能デポー源または局所送達カテーテル(注入カテーテル、留置カテーテルまたはニードルカテーテルなど)、合成グラフト、外膜ラップ(adventitial wrap)、シャントおよびステントもしくは他の移植可能なデバイス、部位特異的運搬体、直接注射、または直接適用が挙げられる。例えば、PCT国際公開第WO00/53211号および米国特許第5,981,568号を参照のこと。
【0119】
アンチセンスポリヌクレオチド、発現ベクターまたはサブゲノムポリヌクレオチドを含む治療用組成物の標的化送達も使用できる。受容体媒介性DNA送達技術は、例えば、Findeis et al.,Trends Biotechnol.(1993)11:202;Chiou et al.,Gene Therapeutics:Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J.A.Wolff,ed.)(1994);Wu et al.,J.Biol.Chem.(1988)263:621;Wu et al.,J.Biol.Chem.(1994)269:542;Zenke et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87:3655;Wu et al.,J.Biol.Chem.(1991)266:338に記載されている。
【0120】
ポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載される二重特異性抗体をコードするもの)を含む治療用組成物は、遺伝子治療プロトコルにおける局所投与のために、約100ng~約200mgのDNAという範囲で投与される。一部の実施形態において、約500ng~約50mg、約1μg~約2mg、約5μg~約500μg、および約20μg~約100μgのDNAという濃度範囲またはそれよりも高い濃度範囲が、遺伝子治療プロトコルの間に用いられてもよい。
【0121】
本明細書に記載される治療用のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを用いて送達できる。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルス起源または非ウイルス起源のものであってよい(一般的には、Jolly,Cancer Gene Therapy(1994)1:51;Kimura,Human Gene Therapy(1994)5:845;Connelly,Human Gene Therapy(1995)1:185;およびKaplitt,Nature Genetics(1994)6:148を参照のこと)。そのようなコード配列の発現は、内因性の哺乳動物の、または異種の、プロモーターおよび/またはエンハンサーを用いて誘導できる。コード配列の発現は、恒常的であっても調節されてもよい。
【0122】
所望のポリヌクレオチドの送達および所望の細胞における発現のためのウイルスベースのベクターは、当技術分野において周知である。例示的なウイルスベースのビヒクルには、限定されるものではないが、組換えレトロウイルス(例えば、PCT国際公開第WO90/07936号;同第WO94/03622号;同第WO93/25698号;同第WO93/25234号;同第WO93/11230号;同第WO93/10218号;同第WO91/02805号;米国特許第5,219,740号および同第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;および欧州特許第0 345 242号を参照のこと)、アルファウイルスベースのベクター(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67;ATCC VR-1247)、ロスリバーウィルス(ATCC VR-373;ATCC VR-1246)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923;ATCC VR-1250;ATCC VR 1249;ATCC VR-532))、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT国際公開第WO94/12649号、同第WO93/03769号;同第WO93/19191号;同第WO94/28938号;同第WO95/11984号および同第WO95/00655号を参照のこと)が包含される。Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147に記載されているような死滅アデノウイルスに連結したDNAの投与も利用できる。
【0123】
また、非ウイルス性の送達ビヒクルおよび方法も利用でき、これらには、限定されるものではないが、死滅アデノウイルスだけに連結された、または連結されていない、ポリカチオン凝縮DNA(例えば、Curiel,Hum.Gene Ther.(1992)3:147を参照のこと);リガンド連結DNA(例えば、Wu,J.Biol.Chem.(1989)264:16985を参照のこと);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば、米国特許第5,814,482号;PCT国際公開第WO95/07994号;同第WO96/17072号;同第WO95/30763号;および同第WO97/42338号を参照のこと)および核電荷中和または細胞膜との融合が包含される。また、裸のDNAも利用できる。例示的な裸のDNAの導入方法は、PCT国際公開第WO90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして働くことができるリポソームは、米国特許第5,422,120号;PCT国際公開第WO95/13796号;同第WO94/23697号;同第WO91/14445号;および欧州特許第0524968号に記載されている。さらなる手法が、Philip,Mol.Cell.Biol.(1994)14:2411およびWoffendin,Proc.Natl.Acad.Sci.(1994)91:1581に記載されている。
【0124】
本明細書に記載される方法において使用される特定の投与計画(すなわち、用量、時期および頻度)は、特定の対象およびその対象の病歴に左右されるであろう。一部の実施形態において、治療を必要とする対象に2種以上の二重特異性抗体、または二重特異性抗体と別の好適な治療薬との組み合わせ、が投与されてよい。二重特異性抗体はまた、薬剤の有効性を増強および/または補完するのに役立つ他の薬剤と共に使用されてもよい。
【0125】
標的の疾患/障害に対する治療有効性は、当技術分野で周知の方法によって評価できる。
【0126】
標的疾患の治療に使用するためのキット
本開示はまた、標的の疾患または障害の軽減に使用するためのキットも提供する。このようなキットは、本明細書に記載される二重特異性抗体のうちの1種以上および/または1種以上の単離された核酸または核酸のセットを含む、1つ以上の容器を含んでよい。
【0127】
一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載される方法のいずれかに従った使用のための説明書を含んでよい。含まれる説明書は、HAEまたは血栓症などの標的疾患を治療するための、それらの開始を遅らせるための、またはそれらを軽減するための、二重特異性抗体の投与についての説明を含んでよい。キットは、治療に適した個体を、その個体が標的疾患を有するかどうかを特定することに基づいて選択することについての説明をさらに含む可能性がある。さらに他の実施形態において、説明書は、標的疾患のリスクがある個体に抗体を投与することについての説明を含む。
【0128】
本明細書に記載されるような二重特異性抗体の使用に関する説明書は一般に、意図される治療のための投与量、投与スケジュールおよび投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)または副単位用量(sub-unit dose)であってもよい。本発明のキットに入っている説明書は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に記載された説明書であるが、機械で読み取ることができる説明書(例えば、磁気記憶ディスクまたは光学記憶ディスクに保持される説明書)も許容される。
【0129】
ラベルまたは添付文書は、組成物が、標的の疾患または障害を治療するために、それらの開始を遅らせるために、および/またはそれらを軽減するために、使用されるということを示す。説明書は、本明細書に記載される方法のいずれかを実施するために提供されてよい。
【0130】
本発明のキットは、好適な包装状態で存在する。好適な包装には、限定されるものではないが、バイアル、ボトル、広口瓶、フレキシブル包装(例えば、密封されたマイラーまたはプラスチックの袋)等が包含される。また、吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、噴霧器)または注入デバイス(ミニポンプなど)などの特定のデバイスと組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、無菌アクセスポートを有してよい(例えば、容器は、静脈内溶液の袋、または皮下注射針で穿孔可能な栓を有するバイアル、であってよい)。容器はまた、無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液の袋、または皮下注射針で穿孔可能な栓を有するバイアル、であってよい)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、本明細書に記載されるもののような二重特異性抗体である。
【0131】
キットは、任意選択で、緩衝液および判断情報などの追加的な構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器上のラベルもしくは添付文書(複数可)または容器に付随するラベルもしくは添付文書(複数可)と、を含む。一部の実施形態において、本発明は、上述のキットの内容物を含む製品を提供する。
【0132】
一般的な技術
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当技術分野における通常の知識の範囲内に属する分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を利用するであろう。このような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995)などの文献において十分に説明されている。
【0133】
さらなる詳述がなくても、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用できると考えられる。従って、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、決して本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用される刊行物は全て、本明細書で言及される目的または主題のために、参照により組み込まれる。
【実施例0134】
実施例1:pKalおよび第XIIa因子に結合する例示的な二重特異性抗体の構築および特徴付け
親抗体としてDX-2930と抗FXIIaクローン559C-M0071-F06、559C-M0184-B04、559C-M0179-D04、559C-M0181-C02および559C-M0180-G03のうちの1つとを用いて、クローンX0120-A01、X0120-C01、X0120-E01、X0120-G01、X0121-A03、X0121-C01、X0121-E01、X0121-G01、X0122-A01およびX0122-C01を含む、いくつかの例示的な抗pKal/抗FXIIa二重特異性抗体を構築した。以下の表2を参照のこと。
【0135】
【表2】
【0136】
抗FXIIaクローンのうち、559C-M0071-F06は親クローンであり、559C-M0184-B04はHCDR1+2の親和性成熟から取得され、559C-M0179-D04、559C-M0181-C02および559C-M0180-G03は軽鎖の親和性成熟から取得されたクローンである。
【0137】
上記の表2に列挙される例示的な二重特異性抗体クローンは全て、DX-2930の軽鎖(上記で提示された配列番号10)のポリペプチド鎖を2つ、およびFXIIaクローンのうちの1つのscFv鎖に融合されたDX-2930の重鎖(定常鎖のヒンジドメイン中のリジン残基を除く)という融合ポリペプチド鎖を2つ含む、4つのポリペプチド鎖を含む四価の分子である。5種の抗FXIIaクローンの各々のscFv鎖は、重鎖-軽鎖(H→L)の方向および軽鎖-重鎖(L→H)の方向の両方で合成した。scFv鎖の全ての例において、内部(GGGGS)リンカー(配列番号23)を使用した。軽鎖-重鎖の方向のクローンが、リンカー配列の始まる前に、定常領域を開始させる最初の2つのアミノ酸(RT)を含むように、scFvを構築した。重鎖-軽鎖の方向のクローンは、終止コドンの前に、軽鎖定常領域由来の最初のアミノ酸(R)のみを含んだ。
【0138】
例示的な二重特異性抗体の各々の融合ポリペプチドのアミノ酸配列を以下に提示する。
【0139】
【化5】
【0140】
上記の例示的な二重特異性抗体の発現カセットを構築するために、DX-2930の重鎖および軽鎖のコード配列を、scFvコード配列につながるC末端SGGGSリンカーで改変してpRh1-CHOベクターにクローニングした。リンカー領域は、scFvの効率的なクローニングのためにBamHI制限部位を含んだ。BamHI/XbaI制限部位によるコンストラクト中への挿入のために、5種の抗第XIIa因子クローンを選択した。
【0141】
上記で提示される配列のイタリック体部分は、シグナルペプチドを指す。本明細書で開示される二重特異性抗体の抗pKal部分は、同じシグナルペプチドを含んでよいか、または、そのシグナルペプチドが除去されるか異なるシグナルペプチドで置き換えられてよい。分泌タンパク質の生産に使用するためのシグナルペプチドは、当技術分野において周知である。
【0142】
(シストロンオペロン形式(cis-tronic operon format)で)二重特異性抗体をコードするヌクレオチド配列を以下に示す。
【0143】
【化6】
【0144】
上記の二重特異性抗体をコードするpRh1発現プラスミドを作製した。0.2μm滅菌濾過の後、LifeTechのプロトコル(Life Technologies(商標),Carlsbad,CA)で説明されているように、トランスフェクション試薬としてExpiFectamine(商標)を用いて、Expi293(商標)発現培地中で培養したExpi293F(商標)細胞のd1培養物60mLにプラスミドをトランスフェクトした。LifeTechのプロトコルで説明されているように、2日目の培養物にExpifectamine(商標)トランスフェクションエンハンサー1および2を添加した。培養物を37℃、8%CO、140rpmにて7日目までインキュベートした。遠心分離により培養物を回収した後、0.2μm滅菌濾過を行い、4℃で保存した。プロテインAカラムを用いてクローンをバッチ精製した。
【0145】
様々な濃度の二重特異性抗体をFXIIaサンプルおよびpKalサンプルのそれぞれと共にインキュベートし、ペプチド基質に共有結合された化学的部分の蛍光の変化を測定することにより、これらのプロテアーゼがペプチド基質を切断する能力を経時的にモニタリングした。この速度論的データの勾配は、酵素によるタンパク質分解の速度と同等であり、次に、阻害剤の濃度に対してプロットされる。次いで、得られたプロットを非線形回帰によって強結合阻害剤の式(式1)にフィットさせて見かけの阻害定数(K app)を得る。
【数1】
【0146】
図1および図2は、試験された二重特異性抗体の各々についてのpKal阻害活性およびFXIIa阻害活性のプロットを示す。試験されたクローンは全て、pKalおよびFXIIaの両方を阻害できた。各二重特異性抗体のK app pKalおよびK app FXIIaを以下の表3に列挙する。
【0147】
【表3】
【0148】
実施例2:pKalおよび第XIIa因子に結合する例示的な二重特異性抗体の構築および特徴付け
抗pKal/抗FXIIa二重特異性抗体の別の例示的なセットを以下のように構築した。分子のIgG部分は、実施例1で使用されたものと同じ(すなわち、DX-2930)であった。抗FXIIa成分については、36種の単離物を選択し、軽鎖/重鎖の方向および重鎖/軽鎖の方向の両方でscFvに変換した。SGGGS(配列番号22)リンカーを用いてscFvをDX-2930 IgGに融合した。scFvを構築する際、(GS)リンカーを用いて抗FXIIaの可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインを互いに融合した。二重特異性抗体の配列を以下に提示する。
【0149】
構築された二重特異性分子は、DX-2930について以前に決定された値と概して一致する抗pKal活性を示した(表4)。一部の値は、おそらく濃度計算における誤差に起因して、または、おそらく凝集に起因して、より低いpKalに対する効力を示した。scFv成分の抗FXIIa活性は、典型的には、おそらくscFvに付随する固有の不安定性に起因して、以前に決定された値よりも低かった(表4)。血漿アッセイにおける二重特異性分子の活性は、DX-2930および抗FXIIa IgGと比較して顕著な改善を示した。このアッセイにおいてDX-2930が70~100nMの範囲を示した一方で、抗FXIIa親抗体は約100nMの範囲で阻害を示した。試験された二重特異性分子のパネルは、1~10nMの範囲で阻害を示す(表5)。
【0150】
【表4】
【0151】
【表5】
【0152】
さらなる解析のために、5種の例示的な候補(620I-X0136-D12、620I-X0136-C05、620I-X0136-C11、620I-X0136-G05および620I-X0136-A01)を選択した。これらの5種の有力候補のうち、620I-X0136-A01については、発現値が低く、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のトレースにおいて複数種が存在したため、除外した。残りの4種の有力候補については、各単離物が、様々な程度の高分子量凝集体(16~35%)を含んだ(図3)。この凝集体は、濃度依存的であると決定され、scFvドメインを介して相互作用する二量体構造であると仮定された。
【0153】
血漿阻害アッセイによって、例示的な二重特異性抗体620I-X0136-D12(D12)を、それが血漿pKal活性を阻害する能力について評価した。簡潔に説明すると、HMWKの存在下または非存在下で一定量のプレpKalおよびFXIIを含む再構成血漿をアッセイバッファ(20mM Tris-HCl pH7.5、150mM NaCl、1mM EDTA、0.1% PEG-8000および0.1% Triton X-100)で1:40に希釈した。プレpKal、FXIIおよびHMWKの濃度は、血漿中におけるそれらの正常濃度と同等である。室温で96ウェルマイクロプレートにおいて、阻害剤を様々な濃度で再構成血漿に添加した。次に、25%(終濃度2.5%)の希エラグ酸溶液の添加によって接触活性化を開始させ、マイクロプレートを穏やかに振盪して混合し、室温で2分間進行させ、それにより100nMのCTIを添加した。次に、この混合物10μlを、30℃で予め平衡化したアッセイバッファ80μlを含む複製的マイクロプレートに移した。次に、この希釈プレートを30℃でさらに5分インキュベートし、上記のようにPFR-AMCのタンパク質分解を評価したが、ただし、強結合阻害剤のための改変されたMorrisonの式にカーブフィッティングするために、逆算した阻害剤濃度をX軸に用いた(最終的なアッセイ読み取りでは血漿を1:400に希釈した)。この試験の結果を図5(一本鎖HMWK存在下)および図6(HMWK非存在下)に示す。二重特異性抗体は、親IgGの合計よりも良好に振る舞った(特にHMWK存在下)。強結合阻害剤の式を用いて、D12の見かけのKi値がHMWK存在下では8.8nMであり、HMWK非存在下では2.6nMであると決定した。
【0154】
また、二重特異性抗体候補620I-X0136-D12(D12)を、それがAPTTアッセイにおいて活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を抗FXIIa抗体(D06)および抗pKal抗体(H03)と比較して遅延させる能力についても評価した(図7)。簡潔に説明すると、純粋な血漿に1:1混合物となるように阻害剤分子(または対照となる希釈バッファ=25mM HEPES、pH7.5、125mM NaCl)を3種の濃度(25、50、100)で添加し、37℃で5分間、前平衡化した。この混合物を2×50μlで2つの別個のKC4 Deltaアッセイキュベット(金属ボール有り)に分注した。60秒後に、回転しているキュベットに50μlのaPTT試薬(活性化因子、Pacific Hemostasis APTT-XL)を添加し、(t=0秒での)aPTTの添加から180秒後に50μlのCaClを添加した。KC4 Delta装置は数秒で凝固時間を記録した。
【0155】
また、二重特異性抗体候補620I-X0136-D12(D12)を、それがフィブリン形成を阻害する能力についても評価した(図8)。
【0156】
抗体の配列:この実施例に記載される二重特異性分子は全て、DX-2930の重鎖と、SGGGSリンカーと、重鎖/軽鎖または軽鎖/重鎖のいずれかの方向の抗FXIIa scFvと、を含む第1のポリペプチドを含んだ。また、同じベクターを用いてDX-2930の軽鎖も発現させた。重鎖+scFvの配列のみ、各単離物について列挙する。
【0157】
【化7】
【0158】
36種の例示的な抗FXIIa IgGに由来する二重特異性体
【化8】
【0159】
実施例3:ジスルフィド結合を含む例示的な二重特異性抗体の構築および特徴付け
これらの凝集体に対抗するために、VHの残基44(C44)とVLの残基100(C100)との間のジスルフィド結合を4種のクローン620I-X0177-A01(620I-X0173-A11)、620I-X0177-C01(620I-X0173-C07)、620I-X0177-E01(620I-X0173-E07)および620I-X0177-G01(620I-X0173-G11)のscFv領域内に設計した。ジスルフィドを有するscFvを含む二重特異性体のSEC分析は、高分子量のピークの劇的な減少を示し、その範囲は1~2%に低下した(図4)。この凝集の減少は、試験された全ての濃度にわたって当てはまった。これらの二重特異性クローンのビアコアは、pKalおよびFXIIaに対する強い特異的結合を示した(図9)。これらの単離物の血漿阻害は0.5~8nMの範囲にわたっていた(図10)。
【0160】
本明細書に記載されるような血漿阻害アッセイを実施して二重特異性抗体620I-X0177-A01の阻害活性を決定した。血漿を1:40に希釈し、希釈した血漿に阻害剤を添加した。2.5%(終濃度)の希エラグ酸溶液を血漿に添加した。約2分後、CTIの添加によって血漿の活性化をクエンチした。本明細書に記載されるようなプロ蛍光基質の添加によって血漿中のpKal活性を測定した。このようにして得られた結果を図11に示した。
【0161】
クローン620I-X0177-A01の阻害活性を、単独の親抗体または組み合わせた親抗体のいずれかの阻害活性と比較した。親IgGと二重特異性抗体との間で親和性の低下が観察された(図12)。
【0162】
さらに、本明細書に記載される方法に従って、APTTに対する様々な二重特異性抗体の能力を評価した。試験された抗体は全て、APTTの用量依存的遅延を示した(図13)。
【0163】
抗体クローン1A01(抗FXIIa)および7A01(pKalおよびFXIIの両方に対して二重特異性)の、フィブリン析出を阻害する能力も調べた。結果を図14に示す。フィブリン析出の用量依存的阻害が観察された。
【0164】
全般的に見れば、酵素阻害アッセイにより、例示的な二重特異性抗体620I-X0177-A01の抗pKal成分および抗FXIIa成分のそれぞれの見かけのKi値は、親分子と類似しており、それぞれ389pMおよび73pMという見かけのKi値である、ということが決定された。驚くべきことに、接触活性化希釈血漿におけるさらなる実験は、この二重特異性抗体がpKal生成の阻止において、親抗体の1:1の組み合わせよりも5倍超有効であり、親抗体のいずれか単独よりも20倍超有効であるということを明らかにする。これらのデータは、二重特異性抗体が、接触系活性化の正のフィードバックループを遮断する能力に関して比類なく強力であるということを示唆する。
【0165】
ジスルフィド拘束scFvを有する二重特異性抗体の配列を以下に提示する。
【0166】
【化9】
【0167】
実施例4:C末端の変異および/または欠失を有する例示的な二重特異性抗体の構築および特徴付け
例示的な二重特異性抗体(620I-X0177-A01、620I-X0177-C01、620I-X0177-E01、620I-X0177-G01)を、生産および製造可能性について評価した。分析の前に様々なpHにて48時間、室温で二重特異性抗体のサンプルをインキュベートした。次に、サンプルを、例えば図15で二重特異性抗体620I-X0177-A01について示されるように、SDS-PAGEタンパク質ゲル上で分離するか、またはサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した(図16A図16C)。還元条件下では、30kDaおよび50kDaのバンドのpH依存的増加ならびに80kDaのバンドの減少が観察された(図15、レーン2~6)。これらの予想外のバンドの出現は、二重特異性抗体が、予期せぬタンパク質分解的切断を受けているということを示した。非還元条件下における同じ30kDaの種の出現は、切断された種が単量体であるということを示した(図15、レーン6~8)。SEC分析によって、正しく形成された二重特異性抗体を表すピークが15.7~16.1分に、DX-2930を表すピークが17分に、切断された単鎖抗体を表すピークが22分に観察された(図16)。
【0168】
IgG1重鎖C末端リジン残基を除去するか当該リジンをグリシン残基に変異させるように、例示的な二重特異性抗体を設計した。
【0169】
第1の抗体の重鎖のC末端リジン残基の欠失またはC末端リジンのグリシン残基への変異を含む二重特異性抗体の第1のポリペプチドのアミノ酸配列を以下に提示する。これらの第1のポリペプチドは、DX-2930の軽鎖と対を成してよい。
【0170】
【化10】
【0171】
第1の抗体の重鎖のC末端リジン残基の欠失またはC末端リジンのグリシン残基への変異を含む例示的な二重特異性抗体の各々を、t=0においてSDS-PAGEゲル上で二重特異性抗体を分離することによって評価した(図17)。また、Amicon 10kDa分子量カットオフスピンフィルター(10 kDa molecular weight cut-off spin filter)を用いて例示的な二重特異性抗体の各々のサンプルを50mM HEPES(pH7.5)中で約10mg/mLまで濃縮し、室温で48時間インキュベートした。次いで、サンプルをSDS-PAGEゲルによって評価した(図18)。それぞれの場合において、C末端リジンの欠失または変異は、二重特異性抗体からのscFvの切断を低減または排除した。
【0172】
また、分析用サイズ排除クロマトグラフィーによっても二重特異性体のサンプルを評価し、C末端リジンの欠失または変異が二重特異性抗体の切断を低減するということを実証した(図19図20)。また、抗体をEndoLysCと共に37℃で1時間インキュベートした後、SDS-PAGEゲル上で分離することによっても、二重特異性抗体の切断を評価した(図21)。50kDaにあるタンパク質のバンドはDX-2930のFab部分に相当し、100kDaにあるバンドはFc-scFvのホモ二量体に相当し、これは、重鎖C末端リジンの欠失または変異が二重特異性抗体の切断を低減するということをさらに示した。
【0173】
また、C末端リジンの欠失または変異を含む例示的な二重特異性抗体を、DX2930およびDX-4012対照と比較して、pKal、FXIIaおよび活性化血漿を阻害する能力について特徴付けした(表1、図22図24)。例示的な二重特異性抗体の各々は、親の二重特異性抗体(IgG1重鎖C末端リジンの欠失または変異を含まない二重特異性抗体)と機能的に同等であることが見出された。変異は、二重特異性抗体の電荷不均一性を低減する可能性がある。
【0174】
【表6】
【0175】
代替的に、または追加的に、上記の抗FXIIa scFvのC末端のLys-Arg(KR)モチーフを除去できる。第1の抗体の重鎖のC末端リジン残基の欠失またはC末端リジンのグリシン残基への変異とscFvのC末端のリジン-アルギニン残基の欠失とを含む例示的な二重特異性抗体のポリペプチドのアミノ酸配列を以下に提示する。
【0176】
【化11】
【0177】
上記のポリペプチドはDX2930の軽鎖と対を成して、やはり本開示の範囲内に属する二重特異性抗体を形成できる。
【0178】
他の実施形態
本明細書で開示される特徴は全て、任意の組み合わせで組み合わされてよい。本明細書で開示される特徴はそれぞれ、同じ目的、同等の目的または類似の目的を果たす代替的特徴で置き換えられてよい。従って、特に明記しない限り、開示される特徴はそれぞれ、同等または類似の特徴の一般的な連なりの一例に過ぎない。
【0179】
以上の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認でき、それらの趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な用途および条件に適合させるために本発明の様々な変更および改変を行うことができる。従って、他の実施形態も特許請求の範囲内に属する。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21
図22
図23
図24
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2023-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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