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  • 特開-ビスケット類の割れ防止方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023065894
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】ビスケット類の割れ防止方法
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20230508BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20230508BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20230508BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D6/00
A21D13/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176298
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】出口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】能島 桃子
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB21
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK18
4B032DL01
4B032DP02
4B032DP06
4B032DP08
4B032DP23
4B032DP40
(57)【要約】
【課題】本発明は、焼成後、経時的なクラックや割れが生じ難いビスケット類を得ることを課題とする。
【解決手段】ビスケット類の製造において、澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して20質量%以下のα化穀粉及び/又はα化澱粉を使用すると、焼成後、経時的なクラックや割れが生じ難いビスケット類を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスケット類用の生地に、α化穀粉及び/又はα化澱粉を含有させることを特徴とする、ビスケット類の割れ防止方法であって、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量が、前記生地に含まれる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して20質量%以下である、前記方法。
【請求項2】
α化穀粉及び/又はα化澱粉を有効成分として含有する、ビスケット類用割れ防止剤。
【請求項3】
請求項2に記載のビスケット類用割れ防止剤と、澱粉質原料とからなるビスケット類用澱粉質原料組成物であって、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量が、澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して20質量%以下である、前記組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のビスケット類用澱粉質原料組成物、油脂及び糖類を含有するビスケット類用プレミックスであって、油脂及び糖類の合計質量が、ビスケット類用プレミックスの全質量に対して40質量%未満である、前記プレミックス。
【請求項5】
請求項2に記載のビスケット類用割れ防止剤又は請求項3に記載のビスケット類用澱粉質原料組成物又は請求項4に記載のビスケット類用プレミックスを含有する、前記ビスケット類用生地。
【請求項6】
請求項5に記載のビスケット類用生地を焼成する工程を含む、ビスケット類の製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載のビスケット類用割れ防止剤と澱粉質原料とを使用するビスケット類の製造方法であって、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量が、澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して20質量%以下である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスケット類の割れ防止方法、ビスケット類用割れ防止剤、ビスケット類用澱粉質原料組成物、ビスケット類用プレミックス、ビスケット類用生地及びそれらから製造されるビスケット類に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスケット類とは、小麦粉、糖類、食用油脂及び食塩を原料とし、必要により澱粉、乳製品、卵製品、膨張剤、食品添加物等の副原料を混合して得られる生地を成形し、成形済み生地を焼成して製造される食品であり、弾性が低く、含水率が低く、水分活性が低いという特徴があり、干菓子に分類されことがある。ビスケット類は、保存性に富み、主食代用にもなるため、広く愛好されている焼き菓子の一種である。
ビスケット類は、弾性が低く硬めの物性であるため、製造や流通の過程における振動や衝撃によりクラックが入りやすい、割れやすい、欠けやすいという欠点がある。特に機械成形した生地を高温でオーブン焼成する食品工業的なビスケット類の製造においては、製造後の保管において経時的にクラックが生じ、極端な場合には割れが生じ、製造ロスにつながるという問題があった。これは、高温で短時間焼成することにより、ビスケットの表面付近と中心部付近との水分値の差が大きくなり、焼成後の経時的な水分拡散により中心部付近から全体に水分が行き渡る過程でクラックが生じるためである。
中でも、「ビスケット」は、糖分と脂肪分との含有量が40質量%以下であるために保水性が低いため、焼成したビスケット表面付近の水分値が低くなりやすく、その結果として表面付近と中心部付近との水分勾配が大きくなり、クッキーなど他のビスケット類に分類される焼き菓子よりも「クラック」、「割れ」、「欠け」が起こりやすい。
このようなビスケットの保存中に生じる割れの問題を解決するために各種の検討がなされている。
特許文献1には、焼菓子の生地において、穀粉100重量部に対して単糖または二糖の糖アルコールを6重量部以上含有させる、焼菓子の割れを防止する方法が開示されており、クッキー等の割れを防止できることが記載されている。
特許文献2には、86質量%以下の穀粉、糖類、油脂と、0.01質量%以上のセルロースを含み、密度が0.30~1.00g/cm3である菓子が開示されており、ビスケットやクッキー等において製造時や流通時の割れや欠けが低減されることが記載されている。
特許文献3には、配合の主体となる穀物粉100部に対し、1.0~7.0%重量のグリセリンを含有することを特徴とする、焼成直後の水分値が10%未満の焼き菓子が開示されており、製造後の保管時においてビスケットのひび割れの発生を抑制できることが記載されている。
特許文献4には、焼き菓子生地に大豆蛋白含有素材、タピオカ澱粉およびトレハロースを用いる焼き菓子の製造法が開示されており、焼成後のひび割れの問題が改善されることが記載されている。
しかしながら、ビスケット類の焼成後の保管におけるクラック、割れ、欠けを抑制するためにα化穀粉及び/又はα化澱粉を使用する試みは為されていなかった。
一方、焼き菓子にα化された澱粉質原料を使用する試みもなされている。
特許文献5では、小麦全粒粉と、α化穀粉及びα化澱粉からなる群から選択されるα化穀粉類の1種以上とを含有する焼き菓子用ミックスが開示されており、外観及びもちもち感に優れるホットケーキが得られることが記載されている。
特許文献6では、低アレルゲン化小麦粉にα化澱粉および非α化澱粉を配合して用いた焼き菓子が開示されており、好ましい粘度のクッキー生地が得られ、これを焼成するとサクミのある良好な食感のクッキーが得られることが記載されている。
特許文献7では、α化小麦粉を含有する生地を焼成して得られる中空棒状のプレッツェルが開示されており、澱粉特有の埃っぽくかつ粉っぽいという欠点がなく優れた食感であり、プレッツェル本来の香ばしい風味のチョコレート入りプレッツェルが得られることが記載されている。
特許文献8では、小麦粉45~70重量部、α化小麦粉および/またはα化澱粉10~30重量部、エーテル化澱粉10~30重量部からなる澱粉系原料100重量部に対し、砂糖50~280重量部、食用油脂10~50重量部および膨剤5~10重量部を加えた混合物からなることを特徴とする焼菓子用プレミックスが開示されており、しっとりとして、もちもちとした新規な焼菓子(実施例2の記載からバターケーキ系の焼菓子と考えられる)が得られることが記載されている。
特許文献9では、粒径100~300μの小麦粉を20~100重量%含んだ粗粒小麦粉に、その13~20重量%の油脂と砂糖、膨剤および増粘剤、α化小麦粉、化工澱粉の単独又は、混合物を添加したことを特徴とする油脂分の少ないクッキー類等用ミックスが開示されており、サクサクとした口当たりで口溶け良好なクッキーが得られることが記載されている。
特許文献10では、小麦粉、油脂、卵、及び必要によりその他の成分を原料として、小麦粉全量の0.1~0.8倍量(重量基準、以下同じ)の卵を含有し、小麦粉全量の20~50%がα化されていて、卵全量の50%以上であって、α化された小麦粉量の0.5倍量以上の卵が熱変性されている焼菓子用生地を調製し、しかる後成形、焼成することを特徴とする焼菓子の製造方法が開示されており、α化率の高いソフトなビスケット類(原料構成はクッキー)が得られることが記載されている。
特許文献11では、α化加工物に老化処理を施して、該α化加工物中の澱粉を老化させる老化工程と、該老化処理されたα化加工物、及び小麦粉を主体とする穀粉類を用いて小麦粉含有生地を調製する生地調製工程とを有する、小麦粉含有生地の製造方法が開示されており、クッキーの歯切れ及び口溶けが良好になることが記載されている。
しかしながら、何れにおいても、ビスケットの製造後のクラックや割れの発生の抑制に関する記載も示唆もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-180359号公報
【特許文献2】特開2014-087313号公報
【特許文献3】特開2010-104259号公報
【特許文献4】特開平11-009176号公報
【特許文献5】特開2020-025527号公報
【特許文献6】特開2001-275553号公報
【特許文献7】特開2001-275552号公報
【特許文献8】特開平08-038028号公報
【特許文献9】特開平05-168397号公報
【特許文献10】特開昭49-124249号公報
【特許文献11】特開2018-074952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、焼成後、経時的なクラックや割れが生じ難いビスケット類を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ビスケット類の製造において、特定量のα化穀粉及び/又はα化澱粉を使用すると、焼成後、経時的なクラックや割れが生じ難いビスケット類を提供することができることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕ビスケット類用の生地に、α化穀粉及び/又はα化澱粉を含有させることを特徴とする、ビスケット類の割れ防止方法であって、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量が、前記生地に含まれる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して20質量%以下である、前記方法。
〔2〕α化穀粉及び/又はα化澱粉を有効成分として含有する、ビスケット類用割れ防止剤。
〔3〕〔2〕に記載のビスケット類用割れ防止剤と、澱粉質原料とからなるビスケット類用澱粉質原料組成物であって、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量が、澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して20質量%以下である、前記組成物。
〔4〕〔3〕に記載のビスケット類用澱粉質原料組成物、油脂及び糖類を含有するビスケット類用プレミックスであって、油脂及び糖類の合計質量が、ビスケット類用プレミックスの全質量に対して40質量%未満である、前記プレミックス。
〔5〕〔2〕に記載のビスケット類用割れ防止剤又は〔3〕に記載のビスケット類用澱粉質原料組成物又は〔4〕に記載のビスケット類用プレミックスを含有する、前記ビスケット類用生地。
〔6〕〔5〕に記載のビスケット類用生地を焼成する工程を含む、ビスケット類の製造方法。
〔7〕〔2〕に記載のビスケット類用割れ防止剤と澱粉質原料とを使用するビスケット類の製造方法であって、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量が、澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して20質量%以下である、前記方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、焼成後、経時的なクラックや割れが生じ難いビスケット類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】クラックありのビスケットとクラックなしのビスケットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ビスケット類>
ビスケット類とは、小麦粉、糖類、食用油脂及び食塩を原料とし、必要により澱粉、乳製品、卵製品、膨張剤、食品添加物等の副原料を混合して得られる生地を成形し、成形済み生地を焼成して製造される食品であり、弾性が低く、含水率が低く、水分活性が低いという特徴がある。ビスケット類のうち、「ビスケット類の表示に関する公正競争規約及び同施行規則」によれば、クッキーとは、「手作り風の外観を有し、糖分及び脂肪分の合計が40質量%以上のもので、嗜好に応じ、卵製品、乳製品、ナッツ、乾果、蜂蜜等により製品の特徴付けを行って風味よく焼き上げたもの」と規定されている。その規定に該当しない糖類と油脂との合計が40質量%未満のものはビスケットと呼称される。クッキーよりも食用油脂の使用量が多く、バターやマーガリン等の油脂の風味が強いものはサブレと呼称される。また、グルテン形成によってもビスケットは更に二種に大別され、グルテンを形成させるように練り上げた腰のある生地を焼成したものはハードビスケットであり、なるだけグルテンを形成させないように練り上げた生地を焼成したものはソフトビスケットである。更に前記原料にイーストや酵素等を添加して得られるものはクラッカー、乾パン、プレッツェル等であり、これらもビスケット類に分類されている。
本発明におけるビスケット類とは、特に限定されるものではなく、前記施行規則に則り分類されたビスケット類の何れであってもよい。好適には、糖類と油脂との合計が40質量%未満のビスケット(例えば、澱粉質原料、α化穀粉、油脂及び糖類の合計質量に対して糖類と油脂との合計含有量が40質量%未満のビスケット)である。そのようなビスケットは、糖類と油脂との合計含有量が低いために、保水性が低く、高温で短時間焼成するとビスケット内部と表面付近とで水分勾配が生じ、製造後の保管において水分が均等拡散する過程で他のビスケット類に分類される食品よりも「クラック」や「割れ」が生じ易いため、本発明の効果が如実に表れるためである。
なお、プレッツェルは、生地をアルカリ処理した後に焼成して得られるものであり、アルカリ処理という工程を経ることによりプレッツェルの表皮が光沢のある赤褐色になり、製造後の保管における「クラック」や「割れ」の発生はビスケットに比べて少ないという有利な特性がある。
本発明におけるビスケット類の形状は特に限定されず、生地を伸ばしてカットや型抜きにより任意の形状に成形することが可能である。好ましくは厚さは1~5mmであり、例えば直径10~100mmの略円状とすることができる。
本発明におけるビスケット類の水分量は好ましくは1~10質量%、より好ましくは1~5質量%である。
【0010】
<α化穀粉及び/又はα化澱粉>
本発明において、α化穀粉とは、穀粉類に加水して穀粉類に含まれる澱粉がα化されるよう加熱(α化処理)し、乾燥の後に任意に粉砕して得られる粉末のことである。一般に、穀粉類に含まれるタンパク質はα化処理により失活することが知られており、小麦粉であればグルテンの形成能を欠くことになる。α化穀粉を得るために使用する穀粉類としては特に限定されるものではなく、一般に食用に供される穀粉類であれば何れも好適に使用することができる。そのような穀粉類としては、普通小麦、デュラム小麦、米、ライ麦、大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などが挙げられ、これらの内の何れか2種以上を組合わせても良い。好ましくは小麦粉を主体とし、任意に小麦粉以外の穀粉や塊茎粉あるいは塊根粉を含むものであり、最も好ましくは小麦粉である。α化穀粉は、穀粉に含まれている澱粉がα化されているために、吸水性が高く、水溶きした際に容易に糊化するという共通した特性を有しているところ、α化小麦粉を使用することにより、製造するビスケット類における小麦に由来する風味が希薄化されることを避けることができる。
【0011】
本発明において、α化澱粉とは、α化穀粉と同様に澱粉類をα化処理して得られる粉末のことである。α化澱粉を得るために使用する澱粉類としては特に限定されるものではなく、食用に供される澱粉類であれば何れも好適に使用することができる。そのような澱粉類としては、穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらのワキシー澱粉並びにハイアミロース澱粉)、及び、前記澱粉類をエーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化処理、熱処理、酵素処理等並びにそれらの組合せを行った変性澱粉類などが挙げられ、これらの内1種を単独で又はこれらの内の何れか2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明において使用されるα化穀粉及び/又はα化澱粉は、公知の製造方法で製造したものを用いてもよく、市販されているものを用いてもよい。製造する場合であれば、例えば、穀粉及び/又は澱粉を20~45質量%になるように水に分散させてスラリーとし、100~500℃で加熱して糊化させ、加温乾燥、凍結乾燥、送風乾燥あるいはスプレードライし、ロール粉砕機やピンミル等で粉砕して得ることができる。あるいは、穀粉及び/又は澱粉100質量部と水分10~30質量とを混合してエクストルーダー等で混捏しながら加圧加熱処理した後、加温乾燥、凍結乾燥、送風乾燥あるいはスプレードライし、ロール粉砕機やピンミル等で粉砕して得ることができる。
本発明において使用されるα化穀粉及び/又はα化澱粉のα化度は60%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上である。α化穀粉及び/又はα化澱粉のα化度は、β-アミラーゼ・プルラナーゼ法、ジアスターゼ法、グルコアミラーゼ第2法等で測定することができる。
【0013】
<澱粉質原料>
本発明における澱粉質原料とは、穀粉類及び/又は澱粉類からなる。「穀粉類」とは、普通小麦、デュラム小麦、米、ライ麦、大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などであり、好ましくは小麦粉を主体とし、任意に小麦粉以外の穀粉や塊茎粉あるいは塊根粉を含むものを使用する。「澱粉類」とは、穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらのワキシー澱粉並びにハイアミロース澱粉)、及び、前記澱粉をエーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化処理、熱処理、酵素処理等並びにそれらの組合せを行った変性澱粉などをいう。小麦粉を主体とする場合、その小麦粉を薄力小麦粉であることが好ましい。一般に、薄力小麦粉の粒子径は細かく、体積基準のD50(積算平均粒径)が25~55μmの範囲であり、多くの場合35~45μmである。
なお、本発明において、前記澱粉質原料にα化穀粉及び/又はα化澱粉が含まれることを意図しない。意図に反して前記澱粉質原料にα化穀粉及び/又はα化澱粉含まれる場合には、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量を算出するに当たり、下記に説明するビスケット類用割れ防止剤の有効成分であるα化穀粉及び/又はα化澱粉として算入する。
前記澱粉質原料は、穀粉類からなってもよく、澱粉類からなってもよく、穀粉類と澱粉類との混合物であってもよく、製造するビスケット類の種類あるいは食感改良や経時耐性等の付与したい機能に応じて適宜選択し、その配合割合を適宜調節することができる。好ましくは小麦粉を主体とし、求めるビスケット類の品質に応じて適宜小麦粉以外の他の澱粉質原料を使用することができる。
【0014】
<ビスケット類の割れ防止方法>
本発明のビスケット類の割れ防止方法は、ビスケット類用の生地に、所定量のα化穀粉及び/又はα化澱粉を含有させることを特徴とする。
ビスケット類用の生地にα化穀粉及び/又はα化澱粉を含有させる方法としては、公知の方法においてビスケット類の他の澱粉質原料と同時に配合する、α化穀粉及び/又はα化澱粉を含有する澱粉質原料組成物を澱粉質原料として使用する、α化穀粉及び/又はα化澱粉を含有するプレミックスを使用する等、特に限定されない。
α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量は、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。α化穀粉及び/又はα化澱粉の下限は特にないが、本発明の効果を十分に発揮するためには、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。
【0015】
<ビスケット類用割れ防止剤>
本発明のビスケット類用割れ防止剤は、前記α化穀粉及び/又はα化澱粉を含有する。
本発明のビスケット類用割れ防止剤として、前記α化穀粉及び/又はα化澱粉をそのまま使用しても良いが、本発明の効果を損なわない限り、任意にビスケット類の製造に使用される一般的な原料を含有してもよい。ビスケット類の製造に使用される任意の原料としては、前記澱粉質原料;小麦ふすま、米ぬか等の糠類;イーストフード;イースト;セルロース、難消化性澱粉等の水不溶性食物繊維;ポリデキストロース、大麦βグルカン、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;デキストリン、サイクロデキストリン等の澱粉分解物及びその誘導体;ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、イヌリン等の増粘多糖類;メチルセルロース類等のセルロース誘導体;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;グルテン、大豆蛋白、小麦蛋白、えんどう豆蛋白等のタンパク質類;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、オリーブ油、ダイズ油等の固形状あるいは液状の油脂類;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;色素;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤などが挙げられる。これら任意の原料が含まれている場合、ビスケット類用割れ防止剤の全質量に対するα化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量は特に制限されるものではないが、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
【0016】
ビスケット類用割れ防止剤におけるα化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量に関わらず、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対してα化穀粉及び/又はα化澱粉が所定量となるようにビスケット類用割れ防止剤を使用することでビスケット類を焼成した後の保管時において「クラック」や「割れ」の発生を抑制すると言う本願発明の効果を得ることができる。
α化穀粉及び/又はα化澱粉の量は、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。α化穀粉及び/又はα化澱粉の下限は特にないが、本発明の効果を十分に発揮するためには、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。
なお、任意の原料としてα化されていない穀粉類及び/又はα化されていない澱粉類がビスケット類用割れ防止剤に含まれる場合、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量を算出するに当たり、前記澱粉質原料として算入する。
【0017】
<ビスケット類用澱粉質原料組成物>
本発明のビスケット類用澱粉質原料組成物は、前記ビスケット類用割れ防止剤と、澱粉質原料とからなる。
【0018】
本発明のビスケット類用澱粉質原料組成物において、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量は、澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。α化穀粉及び/又はα化澱粉の下限は特にないが、本発明の効果を十分に発揮するためには、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。前記範囲内であれば、ビスケット類を焼成した後の保管時において「クラック」や「割れ」の発生を抑制することができる。
ただし、ビスケット類用澱粉質原料組成物におけるα化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量を算出するにあたり、前記ビスケット類用割れ防止剤にα化されていない穀粉及び/又はα化されていない澱粉が任意成分として含まれている場合には、それを澱粉質原料として取り扱う。また、澱粉質原料にα化穀粉及び/又はα化澱粉が意図せず含まれている場合には、それをビスケット類用割れ防止剤の有効成分であるα化穀粉及び/又はα化澱粉として取り扱う。例えば、α化小麦粉5質量部と小麦粉5質量部とからなる割れ防止剤10質量部と小麦粉90質量部とからなるビスケット類用澱粉質原料組成物であれば、α化穀粉の含有量は以下式で求める。
式: 割れ防止剤由来のα化小麦粉5質量部÷(割れ防止剤由来のα化小麦粉5質量部+割れ防止剤由来の小麦粉5質量部+小麦粉90質量部)=5質量%
【0019】
<ビスケット類用プレミックス>
本発明のビスケット類用プレミックスは、前記ビスケット類用澱粉質原料組成物と油脂と糖類とを含有する。ここで一般にプレミックスは、その使用用途に応じて、小麦粉等の穀粉、糖類、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、油脂類などを混合したものをいう。
前記ビスケット類用プレミックスに含まれる前記糖類としては、特に限定されるものではなく、通常ビスケット類の製造に使用される糖類であればよい。そのような糖類としては、粉砂糖、グラニュー糖、上白糖、三温糖、白双糖、中双糖、黒砂糖、白下糖、カソナード(赤砂糖)、和三盆、メープルシュガー等のショ糖を主成分とするいわゆる砂糖や、ブドウ糖、麦芽糖、果糖、乳糖、トレハロース、イソマルトース、キシロースなどの単糖及び二糖等が挙げられる。求めるビスケット類の食味に応じて、これらのうち単一の糖類を用いてもよく、2種以上を適当な比率で用いてもよい。本発明のビスケット類用プレミックスにおける糖類の含有量は、特に制限されるものではなく、通常ビスケット類の製造に使用される量であればよく、例えば澱粉質原料100質量部に対して5~70質量部であり、好ましくは10~60質量部であり、より好ましくは15~45質量部である。
【0020】
前記ビスケット類用プレミックスに含まれる前記油脂は、特に限定されるものではなく、通常ビスケット類の製造に使用される油脂であればよい。そのような油脂としては、大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、シソ油、エゴマ油、アマニ油、オリーブ油、ゴマ油、小麦胚芽油、コメヌカ油、ヒマワリ油、落花生油、アボガド油、卵黄油、魚油、鯨油、鶏油、豚脂、牛脂、乳脂、カカオ脂、シア脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油等、並びにこれらに水素添加処理、分別処理及びエステル交換処理等の処理を一又は二以上を施したショートニングやマーガリン等の加工油脂等が挙げられる。求めるビスケット類に応じて、これらのうち1種を用いてもよく、2種以上を適当な比率で用いてもよい。本発明のビスケット類用プレミックスにおける油脂の含有量は、特に制限されるものではなく、通常ビスケット類の製造に使用される量であればよく、例えば澱粉質原料100質量部に対して5~30質量部であり、好ましくは8~25質量部であり、より好ましくは10~20質量部、さらに好ましくは12~18質量部である。
【0021】
本発明のビスケット類用プレミックスにおける油脂及び糖類の合計の含有量は特に制限されるものではないが、ビスケット類用プレミックスの全質量に対して40質量%未満であることが好ましい。油脂及び糖類の使用量が少ないがために保水力がより低いビスケットにあっては、焼成後の保存により「クラック」や「割れ」が発生し易いため、本発明の効果がより発現し易いためである。
本発明のビスケット類用プレミックスは、上記成分に加えて、一般にビスケット類の製造に使用される成分を含有していてもよく、そのような原料として、小麦ふすま、米ぬか等の糠類;イーストフード;イースト;難消化性澱粉等の水不溶性食物繊維;ポリデキストロース、大麦βグルカン、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;デキストリン、サイクロデキストリン等の澱粉分解物及びその誘導体;ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、イヌリン等の増粘多糖類;メチルセルロース類等のセルロース誘導体;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;グルテン、大豆蛋白、小麦蛋白、えんどう豆蛋白等のタンパク質類;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、カゼインナトリウム等の乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;色素;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤などが挙げられる。
【0022】
本発明のビスケット類用プレミックスにおいて、α化穀粉及び/又はα化澱粉の含有量は、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、20質量%以下であり、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、最も好ましくは7質量%以下である。α化穀粉及び/又はα化澱粉の下限は特にないが、本発明の効果を十分に発揮するためには、ビスケット類の製造に用いる澱粉質原料とα化穀粉及び/又はα化澱粉との合計質量に対して、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上である。前記範囲内であれば、ビスケット類を焼成した後の保管時において「クラック」や「割れ」の発生を抑制することができる。
【0023】
<ビスケット類用生地>
一般に、ビスケット類用生地は、シュガーバッター法やフラワーバッター法等、各種公知の方法により製造することができる。例えば、シュガーバッター法であれば、先ず砂糖と油脂をよくすり混ぜ、分離しないように数回に分けて卵を加えながら都度混合した後、小麦粉等の澱粉質原料と、必要に応じてベーキングパウダーを加えて更に混合して元生地を製造する。フラワーバッター法であれば、油脂をクリーム状になるまで練り上げ、小麦粉等の澱粉質原料と、必要に応じてベーキングパウダーを加えて撹拌したところに、予め混ぜておいた卵と砂糖を分離しないように数回に分けて加えながら都度混合して元生地を製造する。また、液体原料以外の原料を混合してプレミックスとし、当該プレミックスと液体原料とを混合して元生地としてもよい。イーストを使用する場合には、適宜、元生地を発酵させる。このようにして得られた未発酵又は発酵済み元生地を、定法によりシーティングし、焼成後のビスケットの形状をイメージしてロール、ワイヤーカット、ルートプレス、ロータリーモルダー、デポジッター、ステンシル等を用いて適当な形状に成型して個々の焼成前生地とすることができる。
【0024】
本発明のビスケット類用生地は、前記ビスケット類用割れ防止剤又は前記ビスケット類用澱粉質原料組成物又は前記ビスケット類用プレミックスを含有する。
ビスケット類用割れ防止剤を使用する場合であれば、前記澱粉質原料と、求めるビスケット類の種別に応じて小麦ふすま、米ぬか等の糠類;イーストフード;イースト;セルロース、難消化性澱粉等の水不溶性食物繊維;ポリデキストロース、大麦βグルカン、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維;デキストリン、サイクロデキストリン等の澱粉分解物及びその誘導体;ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、イヌリン等の増粘多糖類;メチルセルロース類等のセルロース誘導体;ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;グルテン、大豆蛋白、小麦蛋白、えんどう豆蛋白等のタンパク質類;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、オリーブ油、ダイズ油等の固形状あるいは液状の油脂類;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;色素;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤などの副原料を用い、シュガーバッター法やフラワーバッター法等の公知の方法によりビスケット類用生地を製造することができる。
ビスケット類用澱粉質原料組成物を使用する場合であれば、求めるビスケット類の種別に応じて前記副原料を用い、同様に公知の方法によりビスケット類用生地を製造することができる。
ビスケット類用プレミックスを使用する場合であれば、一般にビスケット類の製造に用いられる飲料水や牛乳あるいは鶏卵等の液体原料を加えて混合して元生地とし、シーティング及び成型工程を経て焼成前生地を得ることができる。
【0025】
<ビスケット類の製造方法>
本発明のビスケット類の製造方法は、前記ビスケット類用生地を焼成する工程を含む。焼成手段は特に限定されるものではなく、固定釜、直接加熱オーブン、熱風対流加熱オーブン、輻射加熱オーブン、過熱水蒸気オーブン等の公知の加熱装置を用い、180~230℃に予熱した前記加熱装置内に前記ビスケット類用生地を投入し、10~20分間程度加熱することによりビスケット類を得ることができる。さらに本発明のビスケット類の製造方法において、チョコレート、ナッツ、ごま、果実加工品などを生地に加えたり、さらに飾りとして使用しても良く、また生地に紅茶葉やココアパウダーやインスタントコーヒー、及びこれらを煮出したもの、抹茶やすりゴマやアマニ粉末などの農産品の粉末、濃縮果汁や蜂蜜などを混ぜ込んで製品の特徴づけを行うことも出来る。
【実施例0026】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0027】
<製造例1 α化小麦粉の製造>
(1)小麦粉100質量部を水120質量部に投入し、十分に撹拌してスラリーを調製した。
(2)表面温度150℃のドラムドライヤーに小麦粉スラリーを供給し、α化処理した。
(3)得られた被膜を回収し、ピンミルで粉砕した。
(4)50メッシュの篩を通し、α化小麦粉を得た。
(5)特開平04-262753に記載のジアスターゼ法によりα化度を測定したところ、α化度は95%であった。
【0028】
<製造例2 ビスケットの製造>
(1)小麦粉100質量部、ショートニング15質量部、グラニュー糖25質量部、膨張剤2質量部、塩1質量部をミキサーに投入して混合し、プレミックスを調製した。
(2)プレミックス全量に水30質量部を加え、低速で15分間混合して元生地を得た。
(3)元生地を厚さ6mmに延展し、3つ折りにして延展し、これを再度繰り返し、最終厚みが2mmになるように徐々に延展した。
(4)直径6cmの丸型で生地を抜いて、焼成前ビスケット生地を得た。
(5)天板にビスケット生地を並べ、200℃の固定釜で11分間焼成してビスケットを得た。
【0029】
<試験1 ビスケットの割れを防止するα化小麦粉の影響>
表1記載の製造例1で得られたα化小麦粉とα化されていない小麦粉(ハート、株式会社ニップン)とを、製造例2における小麦粉の代わりに使用した以外は製造例2に従ってビスケットを製造した。粗熱を取った後、試験例毎にビスケット20枚を金属製バットに等間隔になるように並べて樹脂製フィルムで密封し、18時間室温で静置した。静置後、目視によりクラックの有無を確認し、クラックのあるものを割れていると評価した(以下の写真参照)。
その結果、小麦粉とα化小麦粉との合計質量に対して20質量%以下のα化小麦粉を使用した実施例1~6では、α化小麦粉を使用しない比較例1よりもクラックの発生が少なくなっていた。実施例3から6にかけて、α化小麦粉の割合が高くなるにつれて割れた枚数が多くなったのは、α化小麦粉の割合が高くなるにつれてビスケット生地が硬く伸展性が悪くなることに起因すると考えられた。
表1
【0030】
<試験例2 ビスケットの割れを防止するα化澱粉質原料の影響>
製造例1に従って表2に記載の各α化穀粉又はα化澱粉を調製した。製造例2における小麦粉の代わりに表2に記載の小麦粉とα化穀粉又はα化澱粉とを用い、製造例2に従ってビスケットを製造し、試験例1と同様に割れを評価した。
その結果、小麦粉とα化穀粉又はα化澱粉との合計質量に対して3質量%のα化穀粉又はα化澱粉を使用した実施例6~9では、比較例1に比べて、ビスケットの割れが減少した。
表2
図1