(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066364
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230508BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/14 501
B41J2/14 605
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121491
(22)【出願日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2021176427
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】三輪 圭史
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA04
2C056FA10
2C056FA13
2C056HA05
2C056HA23
2C057AF68
2C057AF93
2C057AG29
2C057AN01
2C057AN05
2C057AP25
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズル保護部材の剥離を抑制する。
【解決手段】吐出対象物に対して液体を吐出するノズルが設けられたノズル板31と、ノズル板31の液体吐出方向Zを向くノズル面31aのうち、ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材23と、ノズル保護部材23と接合される周壁部22bを有するノズル保護部材保持部材22を備える液体吐出ヘッド20であって、ノズル保護部材23のノズル保護部材保持部材と接合される側の側面230と、周壁部22bの液体吐出方向Zを向く面220との間に、樹脂部材70が設けられている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出対象物に対して液体を吐出するノズルが設けられたノズル板と、
前記ノズル板の液体吐出方向を向くノズル面のうち、前記ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材と、
前記ノズル保護部材と接合される周壁部を有するノズル保護部材保持部材を備える液体吐出ヘッドであって、
前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面と、前記周壁部の液体吐出方向を向く面との間に、樹脂部材が設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
吐出対象物に対して液体を吐出するノズルが設けられたノズル板と、
前記ノズル板の液体吐出方向を向くノズル面のうち、前記ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材と、
前記ノズル保護部材と接合される周壁部を有するノズル保護部材保持部材を備える液体吐出ヘッドであって、
前記周壁部の少なくとも一部を構成する樹脂部材が、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記樹脂部材は、前記ノズル保護部材と前記ノズル保護部材保持部材とを接合する接着剤によって構成される請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズル板に接合され、前記ノズルへ供給される液体の流路を形成する流路形成部材と、
前記流路形成部材の前記ノズル板と接合される面とは反対の面側に接合されるフレーム部材を備える液体吐出ヘッドであって、
前記フレーム部材は、前記ノズル保護部材保持部材である請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル板に接合され、前記ノズルへ供給する液体が流れる流路を形成する流路形成部材と、
前記流路形成部材の前記ノズル板と接合される面とは反対の面側に接合されるフレーム部材と、
前記フレーム部材を保持するベース部材を備える液体吐出ヘッドであって、
前記ベース部材は、前記ノズル保護部材保持部材である請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記樹脂部材は、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面へ向かうにつれて液体吐出方向へ突出するように傾斜する傾斜面を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記周壁部は、前記樹脂部材と隣接する部分に、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面液体吐出方向へ突出するように傾斜する傾斜面を有する請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
液体吐出方向に対する前記樹脂部材の傾斜面の傾斜角度は、液体吐出方向に対する前記周壁部の傾斜面の傾斜角度よりも大きい請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記樹脂部材は、ヤング率が3GPa以上である請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出装置として、紙などのシートにインクを吐出して画像を形成するインクジェット式の画像形成装置が知られている。
【0003】
インクジェット式の画像形成装置には、インクを吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドが搭載されている。シートが液体吐出ヘッドに対向する位置に搬送されると、ノズルからインクが吐出され、シートに画像が形成される。このとき、シートがノズルに接触すると、ノズルが損傷し、安定したインクの吐出ができなくなる虞がある。そのため、インクジェット式の画像形成装置においては、ノズルを保護するノズル保護部材が設けられているものがある(例えば、特許文献1:特開2011-56922号公報参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズル保護部材は、例えば、ノズルが設けられたノズル板の周縁部のほか、フレーム部材などに接合されるが、搬送されるシートがノズル保護部材の端面などに当たると、その衝撃によってノズル保護部材が剥離する虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、吐出対象物に対して液体を吐出するノズルが設けられたノズル板と、前記ノズル板の液体吐出方向を向くノズル面のうち、前記ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材と、前記ノズル保護部材と接合される周壁部を有するノズル保護部材保持部材を備える液体吐出ヘッドであって、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面と、前記周壁部の液体吐出方向を向く面との間に、樹脂部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ノズル保護部材の剥離を抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【
図3】液体吐出ヘッドの構成の一例を示す分解斜視図である。
【
図4】
図3に示される液体吐出ヘッドの短手方向の断面図である。
【
図5】ライン型のヘッドユニットの構成の一例を示す平面図である。
【
図6】シリアル型のヘッドユニットの構成の一例を示す平面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの平面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【
図12】比較例に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材及び構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
まず、
図1及び
図2に基づき、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の構成について説明する。
図1は、インクジェット式画像形成装置の全体構成を示す図、
図2は、インクジェット画像形成装置の制御システムを示す図である。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態に係る画像形成装置100は、画像形成用のシートSを供給するシート供給部1と、シートSに画像を形成する画像形成部2と、画像形成部2にシートSを搬送する搬送部3と、シートSを乾燥させる乾燥部4と、画像が形成されたシートSを回収するシート回収部5を備えている。また、本実施形態に係る画像形成装置100は、シート供給部1、画像形成部2、搬送部3、乾燥部4、シート回収部5を制御するための制御部6(
図2参照)を備えている。
【0011】
シート供給部1は、長尺のシートSがロール状に巻回された供給ローラ11と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構12を有している。供給ローラ11は、
図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、供給ローラ11が回転することにより、シートSが繰り出される。張力調整機構12は、シートSを掛け渡して張力を付与する複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、シートSが供給ローラ11から一定の張力で繰り出される。
【0012】
画像形成部2は、シートSに対して液体のインクを吐出する液体吐出ユニットであるヘッドユニット13と、搬送されるシートSを支持するシート支持部材としてのプラテン14を有している。ヘッドユニット13は、複数の液体吐出ヘッドを有している。制御部6によって生成された画像データに基づいて各液体吐出ヘッドからシートSにインクが吐出されることにより、シートS上に画像が形成される。ここで、インクは、色材と溶剤、溶剤に分散された結晶性樹脂粒子を含む液体である。結晶性樹脂は、所定の融点以上に熱せられると相変化を起こし結晶状態から液体に融解する樹脂である。プラテン14は、ヘッドユニット13と対向するように配置されており、シート供給部1から供給されたシートSの下面を支持する。また、プラテン14は、ヘッドユニット13とシートSとの距離を一定に保てるように、ヘッドユニット13に対して接近離間可能に構成されている。
【0013】
搬送部3は、複数の搬送ローラ15を有している。各搬送ローラ15の間にシートSが掛け渡された状態で、各搬送ローラ15が回転することにより、シートSが画像形成部2へ搬送される。なお、搬送部3は、搬送ベルトなどの他の搬送手段を有するものであってもよい。
【0014】
乾燥部4は、シートS上のインクの乾燥を促進させるためにシートSを加熱する加熱ドラム16を有している。加熱ドラム16は、外周面にシートSが巻きつけられながら回転する円筒状の部材であり、内部にハロゲンヒータなどの加熱源が配置されている。また、シートSを加熱する加熱手段としては、加熱ドラム16などの接触式の加熱手段以外に、シートSに温風を吹き付ける温風発生装置などの非接触式の加熱手段を用いることもできる。
【0015】
シート回収部5は、シートSを巻き取って回収する回収ローラ17と、シートSに付与される張力を調整する張力調整機構18を有している。回収ローラ17は、
図1に示される矢印方向に回転可能に構成されており、回収ローラ17が回転することにより、シートSがロール状に巻き取られて回収される。張力調整機構18は、シート供給部1の張力調整機構12と同じように、複数のローラを有している。これらのローラのうちの一部のローラが移動することにより、シートSの張力が調整され、回収ローラ17によってシートSが一定の張力で巻き取られる。
【0016】
制御部6は、PC(Personal Computer)などの情報処理装置によって構成される。制御部6は、シートSに形成される画像データを生成するほか、シート供給部1、画像形成部2、搬送部3、乾燥部4、シート回収部5の各種動作を制御する。例えば、制御部6は、供給ローラ11、回収ローラ17及び各搬送ローラ15の回転速度のほか、加熱ドラム16を加熱する加熱源の温度などを制御する。
【0017】
次に、
図3及び
図4に基づき、液体吐出ヘッドの構成の一例について説明する。
【0018】
図3は、液体吐出ヘッドの分解斜視図。
図4は、
図3に示される液体吐出ヘッドの短手方向(
図3における矢印Y方向)の断面図である。
【0019】
図3に示されるように、液体吐出ヘッド20は、複数のヘッド本体21と、ベース部材22と、カバー部材23と、放熱部材24と、マニホールド25と、プリント基板(PCB)26と、モジュールケース27を備えている。
【0020】
複数のヘッド本体21は、保持部材としてのベース部材22に保持される。ヘッド本体21をベース部材22に取り付けるには、まず、ベース部材22に設けられた開口部22c(
図4参照)にヘッド本体21を挿入する。次いで、ベース部材22に接合されたカバー部材23に、ヘッド本体21を接合する。カバー部材23は、各ヘッド本体21に対応した孔部23a(
図3参照)が形成されており、この孔部23aの縁にヘッド本体21の周縁部が接合される。そして、ヘッド本体21がベース部材22に対してねじで締結して固定される。詳しくは、ヘッド本体21の長手方向(
図4の紙面直交方向)の手前側と奥側に共通流路部材35(
図4参照)のフランジ部が設けられており、このフランジ部がベース部材22にねじで締結される。これより、共通流路部材35がベース部材22に保持され、ヘッド本体21が固定される。なお、ヘッド本体21とベース部材22の取付構造はこれに限定されるものではなく、接着、カシメなどによりヘッド本体21が取り付けられてもよい。
【0021】
図4に示されるように、ヘッド本体21は、ノズル30が設けられたノズル板31と、ノズル30に通じる個別液室41などが形成される流路基板32と、圧電素子40を含む振動板33と、振動板33に積層された保持基板34と、保持基板34に積層されたフレーム部材としての共通流路部材35などを備えている。
【0022】
流路基板32には、個別液室41のほか、個別液室41に通じる供給側個別流路42と、個別液室41に通じる回収側個別流路43が形成されている。保持基板34には、供給側個別流路42に振動板33の開口33aを介して通じる供給側中間個別流路44と、回収側個別流路43に振動板33の開口33bを介して通じる回収側中間個別流路45とが形成されている。
【0023】
共通流路部材(フレーム部材)35には、供給側中間個別流路44に通じる供給側共通流路46と、回収側中間個別流路45に通じる回収側共通流路47が形成されている。供給側共通流路46は、マニホールド25の流路51を介して供給ポート48に通じている。一方、回収側共通流路47は、マニホールド25の別の流路52を介して回収ポート49に通じている。
【0024】
プリント基板26とヘッド本体21の圧電素子40とは、フレキシブル配線部材50を介して接続されている。また、フレキシブル配線部材50には、ドライバIC(駆動回路)53が実装されている。
【0025】
ベース部材22は、線膨張係数が小さい材料によって構成されることが好ましい。 線膨張係数が小さい材料としては、例えば、鉄にニッケルを添加した42alloy(アロイ)又はインバー材などが挙げられる。ベース部材22がこのような材料により構成される場合は、ベース部材22が液体吐出ヘッド20の発熱により温度上昇しても、ベース部材22の膨張量が少ないため、ノズルの位置ずれが生じにくくなり、インク吐出位置のずれを抑制できる。また、ノズル板31及び振動板33を、シリコン単結晶基板により構成し、ベース部材22の線膨張係数とほぼ同じにすることにより、熱膨張によるノズルの位置ずれをより一層低減できるようになる。
【0026】
図5は、ヘッドユニットの構成の一例を示す平面図である。
【0027】
図5に示される例においては、ヘッドユニット13が、2つの液体吐出ヘッド20を備えている。各液体吐出ヘッド20は、それぞれの短手方向(矢印Y方向)がシート搬送方向Aを向き、それぞれの長手方向(矢印X方向)がシート搬送方向Aと直交する方向を向くように配置されている。ここで、液体吐出ヘッド20の「長手方向」とは、
図5に示されるように、液体吐出ヘッド20を、上記ノズル30(
図4参照)が露出するノズル面31aと直交する方向から見て、一方向へ延在する液体吐出ヘッド20の長手方向(矢印X方向)を意味する。また、液体吐出ヘッド20の「短手方向」とは、液体吐出ヘッド20を、ノズル面31aと直交する方向から見て、液体吐出ヘッド20の長手方向と直交する方向(矢印Y方向)を意味する。また、以下の説明において記載される液体吐出ヘッド20の「長手方向」及び「短手方向」も同じ意味である。
【0028】
図5に示されるヘッドユニット13は、いわゆるライン型のヘッドユニットであり、シートSがヘッドユニット13に対向する位置に搬送されると、搬送されるシートSに対してヘッドユニット13が移動することなく、各ヘッド本体21のノズルからインクが吐出されることによりシートSに画像が形成される。
【0029】
また、ヘッドユニットには、このようなライン型のヘッドユニットのほか、液体吐出ヘッドを主走査方向(シート幅方向)に移動させながらインクを吐出する、いわゆるシリアル型のヘッドユニットもある。
【0030】
図6は、シリアル型のヘッドユニット60の構成の一例を示す図であり、
図6に示されるように、シリアル型のヘッドユニット60は、液体吐出ヘッド61を搭載するキャリッジ62と、キャリッジ62をシート幅方向Bである主走査方向へ案内するためのガイド部材(ガイドロッド)63と、キャリッジ62を移動させる駆動装置64を備えている。
【0031】
駆動装置64は、例えば、駆動源であるモータ65と、駆動プーリ66及び従動プーリ67に掛け回されたタイミングベルト68を備えている。モータ65が駆動し、駆動プーリ66が回転すると、タイミングベルト68が周回運動することにより、キャリッジ62がガイド部材63に沿って主走査方向へ移動する。また、モータ65の回転方向が一方向とその逆方向とに切り換えられることにより、キャリッジ62は主走査方向へ往復移動できる。
【0032】
このようなシリアル型のヘッドユニット60においては、キャリッジ62が主走査方向へ移動しながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド61からインクが吐出されることにより、停止しているシートSに対して1行分の画像が形成される。そして、シートSが
図6中の矢印A方向に所定量ずつ移動しながら、キャリッジ62の往復移動とインクの吐出が繰り返し行われることにより、シートS上に順次画像が形成される。
【0033】
ところで、上記のようなヘッドユニット(液体吐出ヘッド)においては、
図3に示されるように、ヘッド本体21の周囲にカバー部材23が設けられているため、シートがヘッド本体21のノズル面に接近した状態で搬送されても、シートがカバー部材23に当たることにより、ノズル面に対するシートの接触を回避できる。これにより、ノズルの損傷を防止でき、安定したインクの吐出を維持できる。
【0034】
しかしながら、搬送されるシートがカバー部材23の端面などに当たると、このときカバー部材23が受ける衝撃によりカバー部材23がノズル板31又はベース部材22(
図4参照)などから剥離する虞がある。特に、布などの繊維状の搬送対象物が搬送された場合は、搬送対象物の毛羽だった繊維がカバー部材23の角又はバリなどに引っ掛かることにより、カバー部材23の剥離が生じやすくなる。そして、カバー部材23の剥離が生じた場合に、万が一、インクなどの異物がカバー部材23の剥離箇所からヘッド本体21内に侵入すると、それが故障又は動作不良の原因となる。例えば、カバー部材23の剥離箇所からインクが内部に侵入し、ヘッド本体21内のフレキシブル配線部材50(
図4参照)などの通電部にインクが付着した場合は、漏電による故障が発生する虞がある。また、内部へ侵入したインクがヘッド本体21内の圧電素子40(
図4参照)に付着した場合は、その後固化したインクによって圧電素子40の良好な駆動が行えなくなり、インクの吐出不良が発生する虞がある。
【0035】
このように、カバー部材23の剥離は、動作不良又は故障などの種々の問題の原因となる。そのため、本発明の実施形態においては、次のような対策を講じている。
【0036】
図7は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。なお、本実施形態に係る液体吐出ヘッドの基本構造は、上記
図3及び
図4に示される液体吐出ヘッドとほぼ同じであるため、すでに説明した部分については適宜説明を省略する。
【0037】
図7に示されるように、本実施形態に係る液体吐出ヘッド20は、ノズル30(
図4参照)が設けられたノズル板31と、ノズル30を保護するノズル保護部材としてのカバー部材23と、供給側個別流路42(
図4参照)及び回収側個別流路43(
図4参照)などが形成される流路形成部材としての流路基板32と、フレーム部材としての共通流路部材35と、共通流路部材35などを保持する保持部材としてのベース部材22などを備えている。
【0038】
なお、
図7において、矢印Z方向は、ノズル板31のノズルから液体(インク)が吐出される液体吐出方向を示す。すなわち、
図7においては、ノズル板31のノズルが露出するノズル面31aが、上方を向いている。
【0039】
カバー部材23は、ノズル面31aのうち、ノズル以外の少なくとも一部を覆っている。本実施形態においては、カバー部材23が、ノズル面31aの縁部及びその近傍部分を覆っている。
【0040】
ここで、ノズル面31aの中央側(
図7における右側)を「内側」とし、これとは反対側(
図7における左側)を「外側」とすると、
図7に示されるように、カバー部材23の外側の部分は、接着剤54を介してベース部材22に接合されている。ベース部材22は、ノズル板31、流路基板32、共通流路部材35の周囲に配置されており、このベース部材22の液体吐出方向Zを向く面220に、カバー部材23の外側の部分が接合されている。
【0041】
一方、カバー部材23の内側の部分は、接着剤55を介してノズル板31及び流路基板32に接合されている。流路基板32は、ノズル板31のノズル面31aとは反対の面側(
図7におけるノズル板31の下面側)に接合され、その一部がノズル板31の縁部から外側へ突出しており、この外側へ突出する流路基板32の部分と、ノズル板31の縁部周辺に対して、カバー部材23が接合されている。
【0042】
このように、カバー部材23の内側と外側の両側の部分が、それぞれ接着剤54,55を介して各部材に接合され、各部材とカバー部材23との間が接着剤54,55によって封止されていることにより、これらの間から内部へのインク及びその他の異物の侵入が防止される。また、カバー部材23は、接着剤54,55を介して各部材に接合されているため、搬送されるシートがカバー部材23に当たっても、カバー部材23が外れて脱落することは基本的にない。
【0043】
しかしながら、
図7における左側からシートが搬送された際に、シートがカバー部材23の外側(ノズル面中央側とは反対側)を向く端面230に繰り返し当たったり、その端面230の縁(角)又は縁に形成されたバリなどに繊維状のシートが引っ掛かったりすると、カバー部材23の剥離が生じる虞がある。
【0044】
そこで、
図7に示される本実施形態においては、カバー部材23の外側を向く端面230、言い換えれば、カバー部材23のベース部材22と接合される側の側面230(以下、便宜的に「外端面」という。)を覆うように、高剛性の樹脂部材70が設けられている。樹脂部材70は、カバー部材23の外端面230とベース部材22の液体吐出方向Zを向く面220との間に設けられ、
図8に示されるように、カバー部材23の外端面230全体(図のハッチング部)に渡って配置されている。
【0045】
このように、本実施形態においては、高剛性の樹脂部材70がカバー部材23の外端面230全体に渡って設けられているため、樹脂部材70によってカバー部材23の外端面230に対するシートの当接及び引っ掛かりを回避できる。また、カバー部材23の外端面230に対する直接的なシートの当接を回避できるため、カバー部材23への衝撃も軽減できる。これにより、カバー部材23の剥離が生じにくくなるため、剥離箇所からのインクなどの異物の侵入を抑制できるようになる。その結果、動作不良及び故障の虞が低減され、信頼性が向上する。
【0046】
また、
図7に示されるように、本実施形態においては、樹脂部材70が、カバー部材23の外端面230よりも液体吐出方向Zへ突出しておらず、かつ、ベース部材22の液体吐出方向Zを向く面220よりも外側(ノズル面中央側とは反対側)へも突出していない。このため、樹脂部材70に対するシートの引っ掛かりも回避できる。さらに、樹脂部材70は、内側(ノズル面中央側又はカバー部材23の外端面230側)に向かって徐々に液体吐出方向Zに突出するように傾斜する傾斜面70aを有している。このため、シートが樹脂部材70に接触した場合は、シートが傾斜面70aに沿って案内される。このように、本実施形態においては、シートが樹脂部材70に接触しても、シートが引っ掛からずに案内されるため、シートの安定的かつ円滑な搬送を確保できる。また、樹脂部材70が傾斜面70aを有していることにより、シートが樹脂部材70(傾斜面70a)に当たった際の衝撃も軽減される。このため、カバー部材23へ及ぶ衝撃の影響も軽減でき、カバー部材23の剥離がより一層生じにくくなる。
【0047】
また、本実施形態においては、
図7に示されるように、ベース部材22も、傾斜面22aを有している。この傾斜面22aは、ベース部材22における樹脂部材70と隣接する部分(
図7における上部)に設けられ、樹脂部材70の傾斜面70aと連続するように形成されている。また、ベース部材22の傾斜面22aは、樹脂部材70の傾斜面70aと同じように、内側に向かって徐々に液体吐出方向Zに突出するように傾斜している。ただし、本実施形態においては、液体吐出方向Zに対するベース部材22と樹脂部材70のそれぞれの傾斜面22a,70aの傾斜角度θ1,θ2が異なっている。具体的には、樹脂部材70の傾斜面70aの傾斜角度θ1が、ベース部材22の傾斜面22aの傾斜角度θ2よりも大きく設定されている。これにより、シートがベース部材22の傾斜面22aに接触した場合は、シートがベース部材22の傾斜面22aから樹脂部材70の傾斜面70aへ円滑に案内されるため、シートの安定的かつ円滑な搬送を実現できる。
【0048】
また、樹脂部材70の液体吐出方向Zの高さt(
図7参照)は、カバー部材23の
図7における上面と同じ高さであることが好ましいが、カバー部材23の下面よりも高ければ、カバー部材23の上面よりも低くて構わない。すなわち、カバー部材23の外端面230の少なくとも一部が、樹脂部材70によって覆われていればよい。カバー部材23の外端面230のうち、その一部が樹脂部材70によって覆われている場合でも、外端面230に対するシートの当接を抑制できるので、カバー部材23の剥離の虞を低減できるようになる。
【0049】
高剛性の樹脂部材70としては、接着力及び強度の観点から、ヤング率が1GPa以上のものが好ましい。さらに、樹脂部材70のヤング率は、3GPa以上であることがより好ましい。ヤング率は、縦弾性率とも呼ばれ、下記式(1)を用いて求められる引張試験時の応力に対する傾きである。なお、式(1)中のσは引張応力、Eはヤング率(縦弾性率)、εはひずみである。
【0050】
(数1)
σ=E×ε・・・(1)
【0051】
ヤング率は、マイクロレンジの微小硬さ試験機(例えば、フィッシャー・インストルメンツ社製のFISCHERSCOPE HM2000等)を用いて、ナノインデンテーション法にて測定することができる。ナノインデンテーション法による硬度及びヤング率の測定は、国際規格ISO14577計装化押し込み試験として標準化されているため、国際規格に準拠した計測を行えばよい。例えば、試験荷重値は1mN~100mN程度、最大押し込み深さはサンプル厚みの1/10以下程度で行う。
【0052】
本実施形態においては、
図8に示されるように、樹脂部材70がカバー部材23の外端面230全体に渡って設けられているが、外端面230に対するシートの接触箇所が限られる場合は、そのシートの接触箇所(外端面230の一部)のみに樹脂部材70が設けられてもよい。例えば、樹脂部材70は、カバー部材23の外端面230全体のうち、液体吐出ヘッド20の長手方向(
図8における矢印X方向)に延在する部分のみに設けられてもよいし、液体吐出ヘッド20の短手方向(
図8における矢印Y方向)に延在する部分のみに設けられてもよい。
【0053】
また、本実施形態の効果を確認するため、
図12に示されるような比較例を作成し、この比較例と本実施形態との評価試験を行った。比較例は、本実施形態と比べて、高剛性の樹脂部材70と、ベース部材22の傾斜面22aが設けられていない以外、同じ構成である。本試験においては、比較例又は本実施形態に係る各液体吐出ヘッドを画像形成装置に搭載してシートを搬送し、カバー部材23の剥離が生じるか否かを確認した。
【0054】
その結果、比較例においては、一部の液体吐出ヘッドのカバー部材23が剥離して故障し、その他の液体吐出ヘッドは故障しないまでもカバー部材23の一部分に剥離が生じた。これに対して、本実施形態においては、カバー部材23の剥離が全く生じなかった。これにより、本実施形態の構成によれば、カバー部材23の剥離を効果的に抑制できることが確認できた。
【0055】
続いて、上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、主に上記実施形態とは異なる部分について説明し、それ以外の部分については基本的に同様の構成であるので適宜説明を省略する。
【0056】
図9は、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【0057】
図9に示される第2実施形態においては、上記ベース部材22(
図7参照)が設けられていない。このため、本実施形態においては、カバー部材23が、ベース部材22に代えて共通流路部材(フレーム部材)35に接合されている。すなわち、本実施形態における供給流路部材35は、カバー部材23と接合され、カバー部材23(ノズル保護部材)を保持するノズル保護部材保持部材として機能する。
図9に示されるように、共通流路部材35は、流路基板32のノズル板31と接合される面とは反対の面側(
図9における流路基板32の下面側)に接合されているが、共通流路部材35の一部に、ノズル板31及び流路基板32よりも外側に配置される周壁部35bを有している。そして、この周壁部35bの液体吐出方向Zを向く面350に、カバー部材23が接着剤56を介して接合されている。なお、上記
図7に示される実施形態(第1実施形態)においては、ベース部材22のうち、特に図の上部が、ノズル板31及び流路基板32の周囲に配置される周壁部22bに相当し、ベース部材22が、カバー部材23を保持するノズル保護部材保持部材に相当する。
【0058】
このように、第2実施形態においては、ベース部材22が設けられておらず、カバー部材23が共通流路部材35の周壁部35bに接合されている点において上記実施形態とは異なるが、このような構成においても、カバー部材23の外端面230にシートが当接するとカバー部材23が剥離する虞がある。そのため、本実施形態においても、上記実施形態と同じように、カバー部材23の剥離を抑制する高剛性の樹脂部材70が設けられている。具体的に、本実施形態においては、樹脂部材70が、カバー部材23の外端面230と、周壁部35bの液体吐出方向Zを向く面350との間に設けられている。これにより、本実施形態においても、カバー部材23の外端面230に対するシートの当接を回避でき、カバー部材23の剥離を抑制できるようになる。なお、樹脂部材70が設けられる範囲は、カバー部材23の外端面230全体であってもよいし、その一部であってもよい。
【0059】
また、本実施形態においても、樹脂部材70と共通流路部材35(周壁部35b)のそれぞれに、傾斜面70a,35aが設けられている。各傾斜面70a,35aは、内側に向かって徐々に液体吐出方向Zに突出するように傾斜しており、これらの液体吐出方向Zに対する傾斜角度θ1,θ3は、上記実施形態における樹脂部材70とベース部材22の各傾斜角度θ1,θ2の関係と同じに設定されている。すなわち、樹脂部材70の傾斜面70aの傾斜角度θ1は、共通流路部材35の傾斜面35aの傾斜角度θ3よりも大きく設定されている。このため、本実施形態においても、シートを共通流路部材35の傾斜面35aから樹脂部材70の傾斜面70aへ円滑に案内でき、シートが当接した際の衝撃の軽減と、シートの安定的かつ円滑な搬送を実現できる。
【0060】
図10は、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【0061】
図10に示される第3実施形態においては、カバー部材23の外端面230を覆う樹脂部材70が、カバー部材23とベース部材22を接合する接着剤54によって構成されている。接着剤54の剛性が高い場合(ヤング率が1GPa以上の場合)は、接着剤54をカバー部材23よりも外側へはみ出させ、はみ出した部分によって、カバー部材23の外端面230を覆う樹脂部材70を構成してもよい。接着剤54のはみ出し量は、接着剤塗布位置、接着剤塗布量、カバー部材23を接合する際の加圧力の少なくとも1つを変更することにより調整できる。樹脂材料70に上記と同じような傾斜面70aを形成するには、接着剤54をはみ出させる際に型によってはみ出し部分を成形したり、接着剤54の硬化後に切削したりするなどの方法を採用できる。
【0062】
また、本実施形態の構成は、
図10に示されるようなベース部材22を有する構成に限らず、
図9に示されるようなベース部材22を有しない構成においても適用可能である。すなわち、
図9に示される共通流路部材35とカバー部材23とを接合する接着剤54の一部によって、カバー部材23の外端面230を覆う樹脂部材70を構成してもよい。
【0063】
図11は、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの概略断面図である。
【0064】
図11に示される第4実施形態においては、カバー部材23の外端面230を覆う樹脂部材70が、ベース部材22と一体に構成されている。ベース部材22が高剛性(ヤング率が1GPa以上)の樹脂材料によって構成される場合は、その一部(
図11に示される周壁部22bの少なくとも一部)によってカバー部材23の外端面230を覆うようにしてもよい。本実施形態の場合も、上記各実施形態と同じように、カバー部材23の外端面230に対するシートの当接を抑制できるので、カバー部材23の剥離が生じにくくなる。
【0065】
また、本実施形態の構成は、
図11に示されるようなベース部材22を有する構成に限らず、
図9に示されるようなベース部材22を有しない構成においても適用可能である。すなわち、
図9に示される共通流路部材35(周壁部35)の一部によって、カバー部材23の外端面230を覆う樹脂部材70を構成してもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限らず、発明の内容を逸脱しない範囲において適宜設計変更可能である。
【0067】
本発明において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出又は噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水又は有機溶媒などの溶媒、染料又は顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸又はたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子又は発光素子の構成要素、あるいは電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。液体吐出ヘッドは、上記実施形態のような複数のヘッド本体を備えるもののほか、1つのヘッド本体を備えるものであってもよい。
【0068】
液体を吐出するエネルギー発生源としては、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0069】
また、本発明において、「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0070】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0071】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0072】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0073】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0074】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0075】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0076】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0077】
「液体吐出装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中又は液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0078】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0079】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0080】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0081】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能な吐出対象物であって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などのシート、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0082】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0083】
また、「シート」は、長尺に形成された連続シート(ロール紙など)のほか、あらかじめ所定のサイズにカットされたシート(カット紙など)であってもよい。さらに、本発明は、シート以外の吐出対象物に液体を吐出する装置にも適用可能である。
【0084】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置(
図6参照)、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置(
図5参照)などが含まれる。
【0085】
また、「液体吐出装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0086】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える液体吐出ヘッド及び液体吐出装置が含まれる。
【0087】
[第1の構成]
第1の構成は、吐出対象物に対して液体を吐出するノズルが設けられたノズル板と、前記ノズル板の液体吐出方向を向くノズル面のうち、前記ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材と、前記ノズル保護部材と接合される周壁部を有するノズル保護部材保持部材を備える液体吐出ヘッドであって、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面と、前記周壁部の液体吐出方向を向く面との間に、樹脂部材が設けられている液体吐出ヘッドである。
【0088】
[第2の構成]
第2の構成は、吐出対象物に対して液体を吐出するノズルが設けられたノズル板と、前記ノズル板の液体吐出方向を向くノズル面のうち、前記ノズル以外の少なくとも一部を覆うノズル保護部材と、前記ノズル保護部材と接合される周壁部を有するノズル保護部材保持部材を備える液体吐出ヘッドであって、前記周壁部の少なくとも一部を構成する樹脂部材が、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面の少なくとも一部を覆う液体吐出ヘッドである。
【0089】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1の構成において、前記樹脂部材は、前記ノズル保護部材と前記ノズル保護部材保持部材とを接合する接着剤によって構成される液体吐出ヘッドである。
【0090】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第1から第3のいずれか1つの構成において、前記ノズル板に接合され、前記ノズルへ供給される液体の流路を形成する流路形成部材と、前記流路形成部材の前記ノズル板と接合される面とは反対の面側に接合されるフレーム部材を備える液体吐出ヘッドであって、前記フレーム部材は、前記ノズル保護部材保持部材である液体吐出ヘッドである。
【0091】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第3のいずれか1つの構成において、前記ノズル板に接合され、前記ノズルへ供給する液体が流れる流路を形成する流路形成部材と、前記流路形成部材の前記ノズル板と接合される面とは反対の面側に接合されるフレーム部材と、前記フレーム部材を保持するベース部材を備える液体吐出ヘッドであって、前記ベース部材は、前記ノズル保護部材保持部材である液体吐出ヘッドである。
【0092】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第1から第5のいずれか1つの構成において、前記樹脂部材は、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面へ向かうにつれて液体吐出方向へ突出するように傾斜する傾斜面を有する液体吐出ヘッドである。
【0093】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第6の構成において、前記周壁部は、前記樹脂部材と隣接する部分に、前記ノズル保護部材の前記ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面液体吐出方向へ突出するように傾斜する傾斜面を有する液体吐出ヘッドである。
【0094】
[第8の構成]
第8の構成は、前記第7の構成において、液体吐出方向に対する前記樹脂部材の傾斜面の傾斜角度は、液体吐出方向に対する前記周壁部の傾斜面の傾斜角度よりも大きい液体吐出ヘッドである。
【0095】
[第9の構成]
第9の構成は、前記第1から第8のいずれか1つの構成において、前記樹脂部材は、ヤング率が3GPa以上の液体吐出ヘッドである。
【0096】
[第10の構成]
第10の構成は、前記第1から第9のいずれか1つの構成の液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0097】
20 液体吐出ヘッド
22 ベース部材(ノズル保護部材保持部材)
22a 傾斜面
22b 周壁部
23 カバー部材(ノズル保護部材)
30 ノズル
31 ノズル板
31a ノズル面
32 流路基板(流路形成部材)
35 共通流路部材(フレーム部材、ノズル保護部材保持部材)
35a 傾斜面
35b 周壁部
70 樹脂部材
70a 傾斜面
100 画像形成装置(液体吐出装置)
220 液体吐出方向を向く面
230 外端面(ノズル保護部材保持部材と接合される側の側面)
θ1 傾斜角度
θ2 傾斜角度
θ3 傾斜角度
S シート(吐出対象物)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0098】