(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066381
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230508BHJP
A61P 1/10 20060101ALI20230508BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230508BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230508BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/8994 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/68 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/40 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/22 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/894 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/9068 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/752 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/9066 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/725 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/484 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/734 20060101ALI20230508BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20230508BHJP
A61K 35/618 20150101ALI20230508BHJP
A61K 36/815 20060101ALI20230508BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P1/10
A61P1/12
A61P13/02
A61P1/08
A61K36/8994
A61K36/68
A61K36/185
A61K36/40
A61K36/22
A61K36/894
A61K36/9068
A61K36/752
A61K36/899
A61K36/9066
A61K36/725
A61K36/484
A61K36/734
A61K36/73
A61K35/618
A61K36/815
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161019
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021176686
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100140888
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 欣乃
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克典
(72)【発明者】
【氏名】平野 惠子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 貴光
【テーマコード(参考)】
4B018
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018MD49
4B018MD52
4B018MD53
4B018MD59
4B018MD61
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4B018MD73
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4C087ZA73
4C087ZA81
4C087ZC75
4C088AB12
4C088AB21
4C088AB22
4C088AB48
4C088AB51
4C088AB60
4C088AB62
4C088AB73
4C088AB77
4C088AB78
4C088AB81
4C088AB84
4C088AC02
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC11
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA07
4C088MA52
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA71
4C088ZA72
4C088ZA73
4C088ZA81
4C088ZC51
4C088ZC75
(57)【要約】
【課題】本発明は、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和のための、生薬成分を含む組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の組成物は、有効成分として、下記の成分(1)、成分(2)及び成分(3)を含む:
成分(1):ヨクイニン、車前子、車前草及び地膚子からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬;
成分(2):蓮子、山茱萸、烏梅、五倍子及び烏賊骨からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬;
成分(3):山薬、生姜、玉米鬚、陳皮、青皮、枳実、姜黄、大棗、甘草、炙甘草、粳米、膠飴、小麦、欝金、山査子及び枸杞子からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、下記の成分(1)、成分(2)及び成分(3)を含む、組成物。
成分(1):ヨクイニン、車前子、車前草及び地膚子からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(2):蓮子、山茱萸、烏梅、五倍子及び烏賊骨からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(3):山薬、生姜、玉米鬚、陳皮、青皮、枳実、姜黄、大棗、甘草、炙甘草、粳米、膠飴、小麦、欝金、山査子及び枸杞子からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
【請求項2】
下記成分(4)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
成分(4):荷葉、茶葉、魚腥草、小茴香及び馬鞭草からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬。
【請求項3】
痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
痰湿に関連する症状が、下痢、便秘、尿の不足、頭の重さ・締め付け感、身体の重だるさ、吐き気・めまいからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
食品組成物又は医薬組成物である、請求項3に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的な伝統医学体系である中国医学及びそれに端を発する漢方医学においては、体調・体質及び摂取する食品・医薬品が及ぼす影響を解釈する基本概念として「気血水」論が体系化されている。これは、身体を構成する要素として気・血・水の三要素を挙げ、それらの不足、流れの滞り等のバランスの乱れの結果として体調・体質を分類する考え方である。
【0003】
このうち、「水」は、血液以外の体液一般を指し、各臓器・組織の体液(血液を除く)及び分泌物を含む。「水」の異常があると様々な病変・身体の不調が起こるとされ、この「水」の異常により体液の環流分布の状態が異常になった状態は「痰湿」と呼び、「水毒」、「痰飲」、「湿邪」ともいう。また、こうした異常な状態の「水」そのもの、すなわち滞った体液や老廃物そのものを指す際にも、痰湿、痰飲、水毒、湿邪、又は単に痰、湿、飲いった用語が用いられる。すなわち、「痰湿」とは、中国医学体系においては、「水」の流れの異常、すなわち、各臓器・組織の体液及び分泌物の代謝障害に起因する、異常体液等の老廃物が蓄積した状態を意味し、種々の健康異常と関連付けて理解されている(非特許文献1~3)。
【0004】
中国医学体系において、痰湿、水毒、痰飲、湿邪等と関連して述べられる「水」の異常に伴う不調症状としては、むくみ、下痢、大便不爽すなわち便通の不調、小便不利すなわち尿の不足、痰、代謝異常、頭の重さや痛さ、身体の重たさやだるさ、吐き気、膨満感、食欲不振・胸やけ、精神不安、湿疹などが挙げられる(非特許文献4)。
【0005】
漢方医学において、弁証論治、すなわち、病気の原因を見分け、それに対応した処方を投与することを原則としている(非特許文献1)。痰湿に関連する症状に対して、各種漢方薬(混合生薬)が提案されている。例えば、茯桂朮甘湯、防己黄耆湯、半夏白朮天麻湯、温胆湯、二陳湯などが挙げられている。これらの漢方薬は、複数の医薬品成分を含むものであり、医師の処方に従って服用するものであることに加えて、安全性上の観点からも食品形態で日常的に摂取して健康増進に役立てることはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】長瀬千秋、「1.漢方医のめまい病因論と大まかな漢方治療方針」、日本東洋医学雑誌、第48巻第6号(1998)、p33
【非特許文献2】新版 漢方医学(1990年1月31日 第1版第1刷発行)、p31
【非特許文献3】小高修司、「3.中国医学の証について」、耳鼻臨床、補89(1996)、p43-44
【非特許文献4】辰巳洋、実用中医学:一冊でわかる基礎から応用(2009)、源草社、p68-70、p82-84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和のための、生薬成分を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の効能分類、帰経及び含有成分の生薬群を選定して配合することによって、痰湿に関連する諸症状を改善又は緩和できることを見出した。本発明は、本知見に基づき、さらに検討を重ねて完成されたものであり、生薬成分を含む新規な組成物を提供するものである。
【0009】
すなわち、本発明は、例えば以下のとおりである。
[1]
有効成分として、下記の成分(1)、成分(2)及び成分(3)を含む、組成物。
成分(1):ヨクイニン、車前子、車前草及び地膚子からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(2):蓮子、山茱萸、烏梅、五倍子及び烏賊骨からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
成分(3):山薬、生姜、玉米鬚、陳皮、青皮、枳実、姜黄、大棗、甘草、炙甘草、粳米、膠飴、小麦、欝金、山査子及び枸杞子からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬
[2]
下記成分(4)をさらに含む、[1]に記載の組成物。
成分(4):荷葉、茶葉、魚腥草、小茴香及び馬鞭草からなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬。
[3]
痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]
痰湿に関連する症状が、下痢、便秘、尿の不足、頭の重さ・締め付け感、身体の重だるさ、吐き気・めまいからなる群より選択される少なくとも1つである、[3]に記載の組成物。
[5]
食品組成物又は医薬組成物である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の組成物を、これを必要とする対象に与える工程を含む、痰湿に関連する症状を予防、改善又は緩和する方法。
[7]
痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[8]
痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物の製造における、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物の使用。
[9]
痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和における、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、特定の効能分類、帰経及び含有成分の生薬を含むことで、各生薬の相乗作用により、痰湿に関連する様々な症状を予防、改善又は緩和することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
痰湿とは、中国医学の「気血水」論において、「水」の流れの異常、すなわち、各臓器・組織の体液(血液を除く)及び分泌物の代謝障害に起因する、異常体液等の老廃物が蓄積した状態を意味し、痰飲、水毒、湿邪ともいう(非特許文献1~3)。また、痰湿、痰飲、水毒、湿邪、又は単に痰、湿、飲は、異常な状態の「水」そのもの、すなわち滞った体液や老廃物そのものも指す。なお、痰は濃厚な水液、飲は希薄な水液を指す。本明細書において特に明記しない限り、痰湿は痰湿状態又痰湿状態の「水」そのものの両方を指す。
【0012】
痰湿(痰飲)の滞る場所により下記のような様々な症状が出現する。
(1)気血の流れを阻害する。すなわち、気の巡り、血の流れにより運ばれた痰飲が気血の流れを阻滞し、臓腑機能を乱す。
(2)水液代謝を阻滞する。すなわち、水液代謝障害により生じた病的な物質である痰飲は、臓腑機能を阻滞し、水液代謝をさらに悪くする。
(3)清竅を塞ぐ。心は神志を司り、意識・思惟・精神活動を支配するために、いつも清浄な状態を保っている。気血の流れにより痰飲が心竅に詰まると、心の働きを乱す。ここで竅とは、身体にある孔のこと(七竅:顔面の両目・両耳・両鼻の孔・口;九竅:七竅に尿道と肛門を合わせたもの)を指す。
【0013】
痰湿(痰飲)に関連する症状としては、主に下記の表1に示す症状が挙げられる。
【表1】
【0014】
本明細書において、痰湿に関連する症状は、痰湿、すなわち、「水」の代謝異常に関連する病変又は身体の不調を指す。より具体的には、むくみ・水太り、下痢、便秘、尿の量又は回数が少ない、手足の冷え、代謝が悪い、太り気味、慢性的な疲労、頭が重い・頭が締め付けられる(頭痛)、身体が重い・だるい、足がつる、吐き気・めまい、腹部膨満感・お腹の張り、食欲がない・胸やけ、精神的不安定、イライラ・不快感、にきび・吹き出物などが挙げられる。好ましくは、むくみ・水太り、下痢、便秘、尿の量又は回数が少ない、手足の冷え、代謝が悪い、慢性的な疲労、頭が重い・頭が締め付けられる(頭痛)、身体が重い・だるい、足がつる、吐き気・めまい、腹部膨満感・お腹の張り、食欲がない・胸やけ、にきび・吹き出物などが挙げられる。特に好ましくは、下痢、便秘、尿の不足、頭の重さ・締め付け感、身体の重だるさ、吐き気・めまいが挙げられる。
【0015】
痰湿に関連する諸症状は、痰湿以外の他の原因によって引き起こされる場合もある。例えば、多量の水分摂取若しくは水分摂取不足、細菌性・毒物・薬物等による下痢若しくは便秘、一過性の筋肉痛・疲労、栄養不足、過食等によっても、上記の症状が現れることがある。しかしこのような場合、これら特定の原因がなくなれば、通常症状が回復する。一方、痰湿は、「水」の代謝異常に関連するものであるため、慢性症状であることが多く、また、特定な明白な原因が思い当たらない場合が多い。また、体質とされることもある(痰湿体質)。したがって、上記挙げられた痰湿に関連する諸症状のうち少なくとも1つは、1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上の期間にわたって継続する場合は、痰湿である可能性が高く、さらに、それらの症状に思い当たる直接的な原因がない場合、痰湿である可能性がより高い。より確実には、中国医学に基づいて、痰湿であるかどうか診断できる。
【0016】
本実施形態の組成物は、有効成分として、成分(1)、成分(2)及び成分(3)を含み、また、成分(4)をさらに含んでもよい。成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)は、それぞれ特定の分類、帰経及び含有成分を有する一群の生薬を含む。各生薬の帰経、性味及び効能は後述のとおりである。また、各生薬は一般的に知られている由来及び部位を用いられてよく、詳細は後述のとおりである。
【0017】
ここで、帰経とは、中国医学(中医学)で用いられる概念の1つであり、生薬が人体のどの部分に作用するかを指し、薬効が現れる作用部位を示す。帰経はいわゆる「五臓」、すなわち、「肝・心・脾・肺・腎」で構成されるが、中国医学の五臓は解剖学的臓器とは一致せず、より人体の「機能」を意味する。肝は、自律経、情緒、運動神経、婦人科系、肝臓に関係し、血液を貯蔵し、気血がスムーズに流れるようにコントロールする。心は、脳、心臓を含む循環器系に関係し、血を全身にめぐらせ、滋養させる働きがある。脾は、消化器系、アレルギー、水分代謝の一部に関係し、飲食物を消化吸収し、体の基本となる「気血水」を作る。肺は、呼吸器系、皮膚、水分代謝の一部、アレルギーと関係し、脾と協力して「気」をつくり、全身に散布し、水のめぐりを調節し、身体を外邪から守る、免疫力と関係が深い臓器である。腎は、生殖器系、泌尿器系、内分泌系、老化や発育に関係し、生命エネルギーの源を蓄え、全身の水の代謝を司り、尿を生成し、再吸収する。中国医薬では、五臓は共同で人体の精気の生成や貯蔵を行い、精神活動もコントロールするとされている。
【0018】
性味(「気味」ともいう)とは、生薬の性質を示す分類体系の一類型であり、それぞれの味は五臓に関係し、また味自体にそれぞれ役割がある。最も一般的には、「寒・涼・平・温・熱」の五性により人体を冷やしたり、温めたりする性質を示し、また、「辛・甘・酸・苦・鹹」の五味により摂取時の味を示すとともに効能の指標ともなっている。五味にはさらに「淡・渋」が加えられることもある。「熱」及び「温」は寒さを退けて身体を温かくし、興奮させ、活発にする働きがあり、一方、「寒」及び「涼」は体の熱を冷まし、解毒し、気持ちを落ち着かせる働きがあり、「平」は、温めもせず冷やしもしない性質をいう。「寒」は程度によって「大寒」、「寒」、「微寒」にさらに分けることもある。「辛」は肺に関係し、発汗させ、気を巡らし、散らす作用がある。「甘」は脾に関係し、補う又は緩和する作用がある。「酸」は肝に関係し、ひきしめる作用がある。「苦」は心に関係し、熱を冷まし、湿を乾かし、下す作用がある。「鹹」は腎に関係し、堅いものを柔らかくし、潤して下す作用がある。性味は程度によって「大寒」、「微苦」等のように細分化されることもある。
【0019】
帰経及び性味は、ほぼ全ての生薬に設定されており、帰経及び/又は性味の一致する生薬はその効能も同様となる傾向が強く、膨大な生薬の効能・処方設計の体系化を助ける技術思想の代表的なものである。
【0020】
また、生薬の分類として、解表薬、催吐薬、瀉下薬、利水滲湿薬、きょ風湿薬、きょ寒薬、清熱薬、鎮咳去痰薬、理気薬、理血薬、補養薬、芳香開孔薬、鎮静鎮痙薬、収渋薬、消化薬、駆虫薬、及び外用薬等が挙げられる。
【0021】
<成分(1)>
成分(1)は、帰経が「腎」であり、かつ「利水滲湿薬」に分類される生薬を含む。利水滲湿薬は、利尿作用により体内に滞った余分な水分を取り除く働きがある。成分(1)としては、具体的には、ヨクイニン、車前子、車前草及び地膚子からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの生薬のうち、少ない原料生薬量で効果を奏する観点から、車前子及び車前草からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、製品化加工の容易性の観点から、車前草であることが特に好ましい。成分(1)としては、1種の生薬、2種の生薬、3種の生薬、又は4種の生薬であってよい。
【0022】
ヨクイニンは、ハトムギ(Coix lacryma-jobi var. ma-yuen (Rom.Caill.) Stapf)の種皮を除いた種子を乾燥したものであり、性味は微寒、甘・淡であり、帰経は脾・胃・肺であり、効能は清利湿熱、きょ湿舒除痺、排膿消腫及び健脾止瀉である。主成分が、澱粉、タンパク質である。
【0023】
車前子(シャゼンシ)は、オオバコ(Plantago asiatica L.)の種子を乾燥したものであり、性味は寒、甘・淡であり、帰経は肝・腎・肺・小腸であり、効能は清熱利水、滲湿止瀉、清肝明目及び化痰止咳である。主成分が、増粘性多糖類、イリドイド配糖体である。
【0024】
車前草(シャゼンソウ)は、オオバコ(Plantago asiatica L.)の花期の全草を乾燥したものであり、性味は寒、甘・淡であり、帰経は肝・腎・肺・小腸であり、効能は清熱利水、滲湿止瀉、清肝明目及び化痰止咳である。主成分が、イリドイド配糖体、フラボノイドである。
【0025】
地膚子(ジフシ)は、ホウキギ(Kochia scoparia(L.)Schrad.、)の成熟果実を乾燥したものであり、性味は寒、辛・苦であり、帰経は腎・膀胱であり、効能は清湿熱・利小便、怯風止痒である。主成分が、トリテルペノイドサポニンである。
【0026】
<成分(2)>
成分(2)は、帰経が「肝」又は「腎」であり、かつ「収渋薬」に分類される生薬を含む。収渋薬は、体内からもれ出るものを止める働きがあり、一般に、多汗、頻尿、下痢、遺精、帯下(おりもの)、不正出血等への効能を期待して配合される。成分(2)としては、具体的には、蓮子、山茱萸、烏梅、五倍子及び烏賊骨からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの生薬のうち、入手しやすさ(供給安定性)の観点から、蓮子、山茱萸及び烏梅からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、効能の観点から、蓮子及び烏梅からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。成分(2)としては、1種の生薬、2種の生薬、3種の生薬、又は4種以上の生薬であってよい。
【0027】
蓮子(レンシ)は、ハス(Nelumbo nucifera Gaertn.)の成熟種子を乾燥したものであり、性味は平、甘・渋であり、帰経は脾・腎・心であり、効能は健脾止瀉、養心安神、益腎固精である。主成分が、澱粉である。
【0028】
山茱萸(サンシュユ、)は、サンシュユ(Cornus officinalis Siebold et Zucc.)の偽果の果肉を乾燥したものであり、性味は微温、酸・渋であり、帰経は肝・腎であり、効能は補益肝腎、渋精縮尿、固経止血、斂汗固脱である。主成分が、イリドイド配糖体、有機酸、タンニンである。
【0029】
烏梅(ウバイ)は、ウメ(Prunus mume Siebold et Zucc.)の未熟果実をくん製又は蒸してさらしたものであり、性味は平、酸・渋であり、帰経は肝・脾・肺・大腸であり、効能は斂肺止咳、渋腸止瀉、和胃安蛔、固崩止血、生津止瀉である。主成分が、有機酸、トリテルペン類である。
【0030】
五倍子(ゴバイシ)は、ヌルデ(Rhus chinensis Mill.)、Rhus potaninii Maxim.、又はRhus punjabensis Stew. var. sinica(Diels) Rehd. et Wilsの葉の虫えいを乾燥したものであり、性味は寒、酸・鹹であり、帰経は肺・大腸・腎であり、効能は斂肺降火、渋腸止瀉、渋精縮尿、斂汗生津、固渋止血である。ここで虫えいとは、ヌルデに、ヌルデシロアブラムシの幼虫などが寄生するときつけた傷及び樹幹内で生育する幼虫の運動などの刺激により、それを取り囲む樹木の組織が肥大し、変質することで形成した虫こぶを指す。主成分が、タンニン酸である。
【0031】
烏賊骨(ウゾクコツ)は、コウイカ(Sepiella maindroni de Rochebrune)、又はシリヤケイカ(Sepia esculenta Hoyle)の内殻を乾燥したものであり、性味は微温、鹹・渋であり、帰経は肝・腎、収斂止血、固精止帯、生肌きょ湿である。主成分が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムである。
【0032】
<成分(3)>
成分(3)は帰経が「肝」又は「脾」であり、かつ糖を含む生薬である。ここで、糖とは、多価アルコールの最初の酸化生成物であり、ホルミル基又はカルボニル基を1つ持つ化合物であり、単糖、二糖、オリゴ糖(単糖2~20分子程度)、及び多糖を含み、例えば、ショ糖、果糖、麦芽糖、澱粉等を含む。具体的には、山薬、生姜、玉米鬚、陳皮、青皮、枳実、姜黄、大棗、甘草、炙甘草、粳米、膠飴、小麦、欝金、山査子及び枸杞子からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの生薬のうち、入手しやすさ(供給安定性)の観点から、山薬、生姜、陳皮、青皮、枳実、姜黄、大棗、甘草、炙甘草、粳米、膠飴、欝金、山査子及び枸杞子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、効能の観点から、山薬、陳皮、青皮、枳実、大棗、甘草、炙甘草、粳米及び枸杞子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、製品化加工の容易性の観点から、山薬、陳皮、青皮、大棗、甘草、炙甘草及び枸杞子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましく、山薬、陳皮及び青皮からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。成分(3)としては、1種の生薬、2種の生薬、3種の生薬、又は4種以上の生薬であってよい。
【0033】
山薬(サンヤク)は、ヤマノイモ(Dioscorea japonica Thunb.)又はナガイモ(Dioscorea batatas Decne.)の周皮を除いた根茎(担根体)を乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は脾・肺・腎であり、効能は補脾止瀉、養陰扶脾、養肺益陰・止咳、補腎固精・縮尿・止帯である。主成分が、澱粉、糖タンパク質である。
【0034】
生姜(ショウキョウ)は、ショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の根茎を乾燥したものであり、性味は微温、辛であり、帰経は肺・脾・胃であり、効能は散寒解表、温胃止嘔、化痰行水、解毒である。主成分が、精油、ショーガオール等の辛み成分、澱粉である。
【0035】
玉米鬚(ギョクベイジュ)は、トウモロコシ(Zea mays L.)の花柱を乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は肝・腎・膀胱・心・小腸であり、効能は利水消腫、退黄である。主成分が、サポニン、フラボノイドである。また、糖として単糖、二糖、オリゴ糖、及び/又は多糖類を含む。
【0036】
陳皮(チンピ)、ウンシュウミカン(Citrus unshiu (Swingle) Marcow.)又はCitrus reticulata Blancoの成熟果皮を乾燥したものであり、性味は温、辛・苦であり、帰経は脾・肺であり、効能は理気健脾、燥湿化痰である。主成分が、精油、フラボノイド配糖体である。また、糖として単糖、二糖、及び/又は多糖類を含む。
【0037】
青皮(セイヒ)は、ウンシュウミカン(Citrus unshiu (Swingle) Marcow.)又はCitrus reticulata Blancoの未熟果皮または未熟果実を乾燥したものであり、性味は温、苦・辛であり、帰経は肝・胆・脾・胃であり、効能は疏肝破気、消積化滞である。主成分が、精油、フラボノイド配糖体である。また、糖として単糖、二糖、及び/又は多糖類を含む。
【0038】
枳実(キジツ)は、ダイダイ(Citrus aurantium L. var. daidai Makino)、Citrus aurantium L.、又はナツミカン(Citrus natsudaidai(Yu.Tanaka) Hayata)の未熟果実を乾燥したものであり、性味は微寒、苦であり、帰経は脾・胃・大腸であり、効能は破棄消積、化痰消痞である。主成分が、精油、フラボノイド配糖体である。また、糖として単糖、二糖、及び/又は多糖類を含む。
【0039】
姜黄(キョウオウ)は、ウコン(Curcuma longa L.)の根茎をそのまま又はコルク層を除いたものを通例湯通しし乾燥したものであり、性味は温、苦・辛であり、帰経は脾・肝であり、効能は破血行気・通経止痛、きょ風勝湿である。主成分が、精油、ポリフェノール、澱粉である。
【0040】
大棗(タイソウ)は、ナツメ(Zizyphus jujuba Mill. var. inermis (Bunge) Rehder)の果実を乾燥したものであり、性味は微温、甘であり、帰経は脾・胃・心・肝であり、効能は補脾和胃、養営安神、緩和薬性である。主成分が、果糖、ブドウ糖である。
【0041】
甘草(カンゾウ)は、Glycyrrhiza uralensis Fisch.又はGlycyrrhiza glabra L.の根及びストロンを乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は十二経であり、効能は補中益気、潤肺・きょ痰止咳、緩急止痛、清熱解毒、調和薬性である。主成分が、トリテルペン配糖体、フラバノン配糖体である。また、糖として単糖、二糖、オリゴ糖、及び/又は多糖類を含む。
【0042】
炙甘草(シャカンゾウ)は、Glycyrrhiza uralensis Fisch.又はGlycyrrhiza glabra L.の根及びストロンの乾燥したものをそのまま又はハチミツをまぶして煎ったものであり、性味は平、甘であり、帰経は十二経であり、効能は補中益気、潤肺・きょ痰止咳、緩急止痛、清熱解毒、調和薬性である。主成分が、トリテルペン配糖体、フラバノン配糖体である。また、糖として単糖、二糖、オリゴ糖、及び/又は多糖類を含む。
【0043】
粳米(コウベイ)は、イネ(Oryza sativa L.)の果実を乾燥したものであり、性味は涼、甘であり、帰経は脾、胃であり、効能は健脾和胃、補中益気、除煩止渇、寧心安神である。主成分が、澱粉である。
【0044】
膠飴(コウイ)は、トウモロコシ(Zea mays L.)、キャッサバ(Manihot esculenta Crantz)、ジャガイモ(Solanum tuberosum L.)、サツマイモ(Ipomoea batatas (L.) Poir.)、又はイネ(Oryza sativa L.)のデンプン又はイネの種皮を除いた種子を加水分解し、糖化したものであり、性味は微温、甘であり、帰経は脾・胃・肺であり、効能は補虚建中・緩急止痛、潤肺止咳である。主成分が、麦芽糖である。
【0045】
小麦(ショウバク)は、コムギ(Triticum aestivum L.)の果実を乾燥したものであり、性味は微寒、甘であり、帰経は心・肝であり、効能は養心安神である。主成分が、澱粉である。
【0046】
欝金(ウコン)は、Curcuma wenyujin Y. H. Chen et C. Ling、ウコン(Curcuma longa L.)、Curcuma kwangsiensis S. G. Lee et C. F. Liang、又は、Curcuma phaeocaulis Valetonの塊根を蒸すか湯通しし乾燥したものであり、性味は寒、辛・苦であり、帰経は心・肺・肝・胆であり、効能は行気破お、清心解鬱、涼血止血、利胆退黄である。主成分が、精油、ポリフェノール、澱粉である。
【0047】
山査子(サンザシ)は、サンザシ(Crataegus cuneata Siebold et Zucc.)、オオミサンザシ(Crataegus pinnatifida Bunge var. major N.E. Br.)の偽果をそのまま又は縦切若しくは横切して乾燥したものであり、性味は微温、酸・甘であり、帰経は脾・胃・肝であり、効能は消食化積、止痢、破気化お、消脹散結である。主成分が、フラボノイド、トリテルペノイドである。また、糖として単糖、二糖、オリゴ糖、及び/又は多糖類を含む。
【0048】
枸杞子(クコシ)は、クコ(Lycium chinense Mill.)、又はナカバクコ(Lycium barbarum L.)の果実を乾燥したものであり、性味は平、甘であり、帰経は肝・腎・肺であり、効能は滋補肝腎・明目、潤肺である。主成分が、ベタイン、ゼアキサンチンである。また、糖として単糖、二糖、及び/又は多糖類を含む。
【0049】
<成分(4)>
本実施形態の組成物は、成分(4)として、代謝・排泄に関連する効果を発現する生薬をさらに含んでもよい。成分(4)は具体的には、荷葉、茶葉、魚腥草、小茴香及び馬鞭草からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの生薬のうち、入手しやすさ(供給安定性)の観点から、荷葉、茶葉、魚腥草及び小茴香からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。成分(4)としては、2種の生薬、3種の生薬、4種の生薬、又は5種の生薬であってよい。
【0050】
荷葉(カヨウ)は、ハス(Nelumbo nucifera Gaertn.)の葉を乾燥したものであり、性味は平、苦であり、帰経は肝・脾・胃であり、効能は清暑闢穢、昇清醒脾、化お止血である。主成分が、アルカロイド、フラボノイドである。
【0051】
茶葉(チャヨウ)は、チャ(Camellia sinensis (L.) Kuntze)のしばしば枝先を伴う葉を乾燥したものであり、性味は微寒、苦・微甘であり、帰経は心・肺・肝・腎・脾・胃であり、効能はきょ風・清爽頭目、清熱降火・解暑、解熱毒・止痢、利水である。主成分が、アルカロイド、フラボノイド、タンニンである。
【0052】
魚腥草(ギョセイソウ)は、ドクダミ(Houttuynia cordata Thunberg)の花期の地上部を乾燥したものであり、性味は微寒、辛であり、帰経は肺・腎・膀胱であり、効能は清熱解毒・消よう排膿、利水通淋である。主成分が、フラボノイドである。
【0053】
小茴香(ショウウイキョウ)は、ウイキョウ(Foeniculum vulgare Mill.)の果実を乾燥したものであり、性味は温、辛であり、帰経は肝・腎・脾・胃であり、効能は散寒止痛、理気和胃である。主成分が、精油である。
【0054】
馬鞭草(バベンソウ)は、クマツヅラ(Verbena officinalis L.)の地上部を乾燥したものであり、性味は微寒、苦であり、帰経は肝・脾であり、効能は活血通経、利水退腫、さい瘧、清熱解毒である。主成分が、モノテルペン配糖体である。
【0055】
本実施形態の組成物に含まれる成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)としての生薬は、生薬のままであってもよく、生薬を細断又は粉砕したものであってもよく、或いは、生薬のエキスであってもよい。本願明細書において、生薬のエキスとは、生薬を製薬上許容される水性溶媒、例えば、水(熱水を含む)、エタノール又は水とエタノールとの混合溶媒によって抽出されたものであることが好ましい。生薬エキスは、公知の抽出方法によって作製されるものであってよく、一般的な軟エキス又はエキス末・エキス顆粒であってよい。
【0056】
本実施形態の組成物に含まれる成分(1)、成分(2)、成分(3)及び成分(4)としての生薬の配合量は、摂取者の体重、年齢、症状等の種々の条件に応じて適宜設定することができ、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和を発揮するのに十分な量であればよく、1日量あたりの生薬の重量(エキスの場合、使用した生薬の重量(生薬換算重量))(g/日)で規定される。
【0057】
各生薬の1日量としては、成分(1)として、ヨクイニン9~30g、車前子3~9g、車前草3~9g、及び地膚子9~15gが挙げられる。成分(2)として、蓮子6~15g、山茱萸6~15g、烏梅3~9g、五倍子1.5~6g及び烏賊骨3~12gが挙げられる。成分(3)として、山薬9~30g、生姜3~9g、玉米鬚15~30g、陳皮3~9g、青皮3~9g、枳実3~9g、姜黄3~9g、大棗3~9g、甘草3~6g、炙甘草3~6g、粳米9~15g、膠飴30~60g、小麦30~60g、欝金3~9g、山査子9~15g及び枸杞子3~9gが挙げられる。成分(4)として、荷葉9~15g、茶葉3~15g、魚腥草9~30g、小茴香3~9g及び馬鞭草6~9gが挙げられる。成分(1)、成分(2)、成分(3)、又は成分(4)として、複数の生薬が用いられる場合、各生薬の1日量は適宜に減量してもよい。
【0058】
本実施形態の組成物は、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための組成物である。本実施形態の組成物は、成分(1)、成分(2)及び成分(3)を含むことにより、脾胃を整え、栄養及び水分吸収が促されて、痰湿が解消されると共に、成分(3)の配合生薬に含まれる糖が脾胃の栄養として脾胃の機能を相乗的に整え、痰湿に関連する様々な症状を予防、改善又は緩和することができる。本実施形態の組成物によれば、いわゆる「デトックス」効果が得られる。さらに、成分(4)を含むことにより、成分(1)~(3)と相乗的に作用し、より直接的に効能を体感できるようになる。
【0059】
痰湿に関連する症状は、むくみ・水太り、下痢、便秘、尿の不足、手足の冷え、代謝異常、太り気味、慢性疲労、頭の重さ、身体の重たさ・だるさ、足がつる、吐き気・めまい、腹部膨満感・お腹の張り、食欲がない・胸やけ、精神的不安定、イライラ・不快感、にきび・吹き出物から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つであり、特に下痢、便秘、尿の不足、頭の重さ・締め付け感、身体の重だるさ、吐き気・めまいからなる群より選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ又は少なくとも5つであることが好ましい。また、上記少なくとも1つの症状は、1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上の期間にわたって継続している症状であることが好ましい。
【0060】
本実施形態の組成物は、食品組成物又は医薬組成物であることが好ましい。本実施形態の組成物に含まれる各生薬は、日本薬局方 生薬等に収録されておらず、使用規制のないものであるため、医療及び食品の両方に用いられる。そのため、本実施形態の組成物は、機能性食品などの食品組成物とすることができる。そのため、医師の処方を必要とせず、気軽に不快の症状や身体の不調を予防、改善又は緩和できるという利点がある。
【0061】
食品組成物は、食品としてあり得る任意の形態であってよい。例えば、乳製品;発酵食品(ヨーグルト、チーズ等);飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、炭酸飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、乳酸菌入り飲料、ヨーグルト飲料、日本酒、果実酒、洋酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、キャンデー、ゼリー、クッキー、ケーキ、チョコレート、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、粥、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム等);調味料類(ドレッシング、旨味調味料、ふりかけ、スープの素等)等が挙げられる。かかる食品組成物は、業務店舗で料理として提供することもでき、また、惣菜、レトルト食品、冷凍食品、その他一般的な食品組成物の包装形態等を取って一般流通形態で提供することもできる。
【0062】
上記各種形態の食品組成物は、有効成分としての成分(1)、成分(2)及び成分(3)、並びに成分(4)の他に、有効成分の作用に影響を与えなければ、食品として許容される成分を含んでもよい。例えば、各種一般食材、デンプン、ゼラチン、植物油脂、動物油脂、加工油脂等、カルボキシメチルセルロース、アラビアガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、カラヤガム、コンニャクグルコマンナン、キサンタンガム、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、カロブビーンガム、アルギン酸、シクロデキストリン等のゲル化剤、調味料、甘味料、香辛料、着色料、保存料、酸化防止剤、水、清涼剤、結合剤、甘味料、崩壊剤、滑沢剤、着色料、香料、安定化剤、防腐剤、徐放調整剤、界面活性剤、溶解剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0063】
本実施形態の食品組成物は、さらに複合的な効果を奏することを目的として、機能性を有する食品材料を適宜任意に配合することができる。例えば、成分(1)、成分(2)及び成分(3)、並びに成分(4)以外の各種生薬、各種プロバイオティクス、各種オリゴ糖、ビタミン、ミネラル等の栄養成分、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、アミノ酸、核酸、必須脂肪酸、その他公知の機能性食品材料を適宜任意に配合することができる。
【0064】
各種形態の食品組成物の製法は特に限定されず、適宜公知の方法に従うことができる。また、生薬の特有の味及び匂いを低減できる成分を添加したり、処理を行ったりしてもよい。
【0065】
本実施形態の食品組成物は、また、保健、健康維持、健康増進等を目的とする食品、例えば、健康食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品又は栄養機能食品等であってよい。本実施形態の食品組成物は、サプリメントである場合、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、液剤、散剤、ドリンク剤、ゼリー等の形態であってもよい。本実施形態の食品組成物はそのまま摂取してもよく、食事、軽食、飲料等に混ぜ込んで摂取してもよい。
【0066】
本実施形態の食品組成物における有効成分としての成分(1)、成分(2)及び成分(3)、並びに成分(4)の含有量は、特に限定されず、また、食品組成物の形態によっても異なる。例えば、食品組成物の形態が、錠剤・カプセル剤・顆粒剤・液剤・散剤・スティックゼリー等のサプリメント形態である場合、食品組成物における各生薬の総重量は典型的には当該食品組成物の0超~100重量%、例えば10重量~80質量%であることを挙げられる。また、食品組成物の形態が、各種飲料・ゼリー、食品類・レトルト食品類等の一般食品形態である場合、食品組成物における各生薬の総重量は、典型的には当該食品組成物の0.05~25質量%であることを挙げられる。味や量を考慮すれば、食品組成物中における有効成分の配合量最小限に抑えることが好ましく、その場合、生薬のままで配合するよりも、生薬エキスを用いることが好ましい。本実施形態の食品組成物に含まれる生薬は、通常食品として用いられる作用が緩和なものであるため、その摂取量は特に限定されない。本実施形態の食品組成物の摂取量が、上述の生薬の1日量を含む量であれば、所望の痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態の医薬組成物は、ドリンク剤、シロップ、ゼリー、凍結乾燥粉末、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等の剤形であってもよく、また、有効成分としての成分(1)、成分(2)及び成分(3)、並びに成分(4)の他に、例えば、薬学的に許容される成分、例えば、賦形剤、結合材、滑沢剤、崩壊剤、乳化剤、界面活性剤、基剤、溶解補助剤、懸濁化剤を含んでいてもよい。
【0068】
本実施形態の組成物は、他の組成物と併用することもできる。例えば、本実施形態の組成物を、痰湿に関連する症状の対処に用いる市販薬、例えば、血流改善薬や膀胱機能調節薬など、利尿を期待する市販薬と併用することで、最低限の市販薬の使用により不快症状をなくすことができる。
【0069】
組成物の摂取は1日1回であってもよく、複数回、例えば2回、3回又は4回に分けて摂取してもよい。複数回摂取する場合は、1日の合計量が1日量となるように摂取すればよい。本実施形態の組成物の摂取タイミングはとくに限定されず、1日1回の摂取の場合、起床後、食前、食間、食後、就寝前等任意の時間で摂取してもよく、1日複数回の摂取の場合、起床後、食前、食間、食後、就寝前のうちの2つ、3つ又は4つ以上のタイミングで摂取してもよい。また、食事と同時に摂取してもよい。
【0070】
本実施形態の組成物は1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上の期間にわたって継続して摂取してもよい。本実施形態の組成物が安全な生薬成分であるため、長期にわたって摂取しても安全であり、かつ、長期服用することで、徐々に体質を改善し、痰湿に関連する症状を徐々に緩和又は改善できる。
【0071】
一実施形態の方法は、上記本実施形態の組成物を、これを必要とする対象に与える工程を含む、痰湿に関連する症状を予防、改善又は緩和する方法である。ここで、対象は、痰湿に関連する症状の自覚を有するか、中国医学に基づいて痰湿であると診断された対象である。組成物は、上述の1日量で対象に与える(例えば、投与する)。投与期間は、特に限定されないが、1週間以上、2週間以上、4週間以上、3ヶ月以上、6か月以上又は1年以上であってもよい。
【0072】
一実施形態の組成物は、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和に用いるための組成物であり、該組成物は上記本実施形態の組成物であってよい。ここで、使用方法(摂取量、摂取期間)は上述のとおりである。
【0073】
一実施形態の使用は、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和のための組成物の製造における、上記本実施形態の組成物の使用である。また、別の実施形態の使用は、痰湿に関連する症状の予防、改善又は緩和における、上記本実施形態の組成物の使用である。ここで、使用方法(摂取量、摂取期間)は上述のとおりである。組成物が食品組成物又は医薬組成物であってよく、該組成物は、有効量の成分(1)、成分(2)及び成分(3)、並びに成分(4)の生薬又は生薬エキスを含むように、通常の方法にしたがって製造することができ、必要があれば上述の他の成分を含ませてもよい。
【0074】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等に何ら限定されるものではない。
【実施例0075】
<試験例1 痰湿に関連する身体の不調に与える影響の評価試験>
痰湿に関連する日常的な身体の不調を自覚する20歳以上の日本人男女19名(実施例1)、17名(実施例2)、14名(実施例3)又は15名(比較例1)を対象とした単盲検前後比較試験を実施し、本発明の組成物の効果を検討した。
【0076】
(組成物)
実施例1、実施例2及び比較例1の生薬組成及び1回分の使用量は表2に示す。原料生薬として表2に記載の生薬の1回分量の比例にしたがって、原料生薬を配合し、常水にて沸騰抽出し、ろ過、濃縮、殺菌を行い、デキストリンを適量添加した後スプレードライヤーにて乾燥し、混合植物エキス末を得た。得られたエキスのうち、原料生薬として表2に記載の生薬量に相当する実施例1のエキス末2.0g、実施例2のエキス末2.0g、実施例3のエキス末2.4g又は比較例1のエキス末1.6gを1日分の食品組成物とした。
【表2】
【0077】
(評価方法)
被験者に実施例1、2、3又は比較例1のエキス末1日量を、1日1回朝食前に、約150ccのお湯に溶かして2週間(14日間)連続で摂取させた。摂取前及び2週間の摂取完了時に、全被験者を対象とした不快症状のアンケートを実施し、症状の改善度を評価した。摂取前の不快症状アンケートは、表3に記載の症状群それぞれにつき、「とても気になる(1)」、「少し気になる(2)」、「気にならない(3)」の3段階のスコアを設定し、各症状の自覚の有無を評価した。摂取完了時の不快症状アンケートは、表3に記載の症状群それぞれにつき、「とても良くなった(1)」、「良くなった(2)」、「変わらない(3)」、「悪くなった(4)」、「とても悪くなった(5)」の5段階のスコアを設定し、各症状の改善の有無を評価した。摂取前アンケートのスコアが1又は2であった被験者に占める、摂取完了時アンケートのスコアが1又は2であった被験者の割合を改善率とし、改善率10%以上の不快症状を当該エキスの改善効果あり、改善率25%以上の不快症状を当該エキスの顕著な改善効果ありと判定した。
【0078】
(結果)
結果を表3に示す。表3から、成分(1)及び成分(2)を含むが成分(3)を含まない比較例1のエキス摂取によっては、成分(1)及び成分(2)自体の効能に基づきむくみ・水太りなどの一部の不快症状に改善効果を示すものの痰湿に関連する症状の全般において予防、改善又は緩和効果を確認できなかった。一方、成分(3)を含む本発明の組成物である実施例1、実施例2又は実施例3の摂取により、成分(3)の相乗作用に基づき痰湿に関連する症状の全般において予防、改善又は緩和効果が確認できた。
【表3】