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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006660
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H01L21/302 105Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109375
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中込 洋平
(72)【発明者】
【氏名】桑嶋 亮
(72)【発明者】
【氏名】緑川 洋平
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004AA16
5F004BB18
5F004BB19
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB29
5F004BB32
5F004BC01
5F004BC03
5F004BC06
5F004BC08
5F004CA02
5F004DA22
5F004DA23
5F004DA25
5F004DB00
5F004FA01
(57)【要約】
【課題】処理ガスを用いて基板を処理する場合において、種々の処理ガスに対応可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板を処理する基板処理装置であって、基板を載置する載置台と、前記載置台を囲む隔壁と、前記隔壁の外側に設けられた内側チャンバと、前記内側チャンバの外側に設けられた外側チャンバと、前記載置台に載置された基板に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、を有し、前記内側チャンバは、前記外側チャンバに対して着脱自在に構成され、前記外側チャンバは、前記内側チャンバの内部に供給された前記処理ガスに接触しないように設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する基板処理装置であって、
基板を載置する載置台と、
前記載置台を囲む隔壁と、
前記隔壁の外側に設けられた内側チャンバと、
前記内側チャンバの外側に設けられた外側チャンバと、
前記載置台に載置された基板に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、を有し、
前記内側チャンバは、前記外側チャンバに対して着脱自在に構成され、
前記外側チャンバは、前記内側チャンバの内部に供給された前記処理ガスに接触しないように設けられている、基板処理装置。
【請求項2】
前記隔壁を昇降させる昇降機構と、
前記処理ガス供給部のシャワーヘッドの下面に設けられたシール部材と、を有し、
前記隔壁が上昇した状態で、当該隔壁の上面と前記シール部材が当接する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記昇降機構は、
前記隔壁を昇降させる駆動軸と、
前記駆動軸に設けられた軸シール部と、を有する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記隔壁を加熱する隔壁ヒータと、
前記内側チャンバを加熱する内側ヒータと、
前記外側チャンバを加熱する外側ヒータと、を有し、
前記内側ヒータの温度は、前記外側ヒータの温度よりも高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記隔壁ヒータの温度は、前記内側ヒータの温度よりも高い、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記隔壁の接ガス面と前記内側チャンバの接ガス面には、前記処理ガスに対して耐腐食性を有するコーティングが施されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記隔壁の内部と前記内側チャンバの内部を排気する排気管を有し、
前記排気管は、前記内側チャンバの内側であって前記隔壁の外側に1箇所に設けられている、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記内側チャンバと前記外側チャンバの間には、密閉された空間が形成され、
前記基板処理装置は、
前記空間を真空引きする減圧部と、
前記空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給部と、を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記減圧部によって前記空間を真空引きして、当該空間を真空断熱層として機能させる制御を行う制御部を有する、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記不活性ガス供給部によって前記空間に不活性ガスを供給し、当該空間の圧力を調整する制御を行う、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板処理装置を用いて基板を処理する基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、
基板を載置する載置台と、
前記載置台を囲む隔壁と、
前記隔壁の外側に設けられた内側チャンバと、
前記内側チャンバの外側に設けられた外側チャンバと、
前記載置台に載置された基板に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、を有し、
前記基板処理方法は、
前記内側チャンバの内部に基板を収容する工程と、
前記隔壁と前記処理ガス供給部で処理空間を形成する工程と、
前記処理空間に処理ガスを供給しつつ、当該処理ガスが前記外側チャンバに接触しない状態で、基板を処理する工程と、を有する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板をチャンバ内に収納して処理する基板処理装置が開示されている。チャンバは、通常、Al(アルミニウム)によって形成され、チャンバの内面には表面酸化処理が施されている。また、チャンバ内にフッ化水素ガスを供給する場合、当該チャンバの内面の一部又は全部は、表面酸化処理が施されていないAl又はAl合金によって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/072708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、処理ガスを用いて基板を処理する場合において、種々の処理ガスに対応可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を処理する基板処理装置であって、基板を載置する載置台と、前記載置台を囲む隔壁と、前記隔壁の外側に設けられた内側チャンバと、前記内側チャンバの外側に設けられた外側チャンバと、前記載置台に載置された基板に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、を有し、前記内側チャンバは、前記外側チャンバに対して着脱自在に構成され、前記外側チャンバは、前記内側チャンバの内部に供給された前記処理ガスに接触しないように設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理ガスを用いて基板を処理する場合において、種々の処理ガスに対応可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ウェハ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2】ウェハ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図3】ウェハ処理装置におけるガス系統を示す説明図である。
図4】隔壁及び昇降機構の構成の概略を示す斜視図である。
図5】隔壁及びその周囲の構成の概略を示す縦断面図である。
図6】隔壁及びその周囲の構成の概略を示す横断面図である。
図7】チャンバ及びその周囲の構成の概略を示す縦断面図である。
図8】チャンバの構成の概略を示す斜視図である。
図9】チャンバの構成の概略を示す斜視図である。
図10】内側チャンバの構成の概略を示す斜視図である。
図11】内側チャンバの構成の概略を示す平面図である。
図12】外側チャンバの構成の概略を示す斜視図である。
図13】外側チャンバの構成の概略を示す平面図である。
図14】内側チャンバの搬入出口における密閉空間のシール構造を示す説明図である。
図15】内側チャンバの搬入出口における密閉空間のシール構造を示す説明図である。
図16】内側チャンバの搬入出口における密閉空間のシール構造を示す説明図である。
図17】内側チャンバのフランジ部と外側チャンバの側壁の一部構成の概略を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(基板;以下、「ウェハ」という。)に対して、例えば真空雰囲気下(減圧雰囲気下)で処理ガスを用いてエッチング等の各種処理が行われる。
【0009】
エッチングは、従来、種々の方法で行われている。特に近年、半導体デバイスの微細化に伴い、プラズマエッチングやウェットエッチングといった従来のエッチング技術に代えて、化学的酸化物除去(COR:Chemical Oxide Removal)処理と呼ばれる、より微細化エッチングが可能な手法が用いられている。
【0010】
COR処理は、真空雰囲気に保持されたチャンバ内において、ウェハに対して処理ガスを供給し、当該処理ガスと例えばウェハ上に形成された膜とを反応させて生成物を生成する処理である。COR処理によりウェハ表面に生成された生成物は、次工程で加熱処理を行うことで昇華し、これによりウェハ表面の膜が除去される。
【0011】
COR処理では今後、腐食性の高い処理ガスを使用する頻度が高まってきている。基板処理装置(ウェハ処理装置)においてチャンバの内面には、処理ガスに対して耐食性を有する処理が必要になる。さらには、種々の処理ガスに対応するため、チャンバの内面に異なる処理が必要とされる場合もある。例えば、特許文献1に開示された基板処理装置(COR処理装置)のように、通常はチャンバの内面に表面酸化処理が施されるところ、フッ化水素ガスを用いる場合、当該チャンバの内面は、表面酸化処理が施されていないAl又はAl合金によって形成される。
【0012】
しかしながら、例えば特許文献1に開示された従来の基板処理装置ではチャンバは1つであるため、処理ガスが変更される度に、チャンバを交換する必要がある。このチャンバ交換は、基板処理装置が搭載されたシステムの全停止、基板処理装置のアンドック、ガス供給ラインや電力供給ライン、水供給ライン等の引き直しなど、多くの負荷を伴う作業となる。
【0013】
また、基板処理装置には、いわゆる隔壁が設けられている。隔壁は、ウェハの載置台を囲うように設けられ、当該載置台に載置されたウェハに対してエッチング処理を行うための処理空間を形成する。かかる隔壁構造により、チャンバの内部を排気する排気管が当該チャンバに対して1箇所に設けられている場合であっても、エッチング処理時に、処理空間から排気管への排気路のコントロールを行うことができる。また、エッチング処理時に、処理空間の気密性を確保しつつ、当該処理空間における処理ガスの流れを均一にすることも可能となる。
【0014】
しかしながら、例えば特許文献1に開示された従来の基板処理装置では、上記隔壁について考慮されていない。したがって、従来の基板処理装置、特に隔壁を含むチャンバ構成には改善の余地がある。
【0015】
本開示にかかる技術は、処理ガスを用いて基板を処理する場合において、種々の処理ガスに対応可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供する。以下、本実施形態にかかる基板処理装置としてのウェハ処理装置、及び基板処理方法としてのウェハ処理方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<ウェハ処理装置の構成>
先ず、本実施形態にかかるウェハ処理装置の構成について説明する。図1及び図2はそれぞれ、ウェハ処理装置1の構成の概略を示す縦断面図である。なお、本実施形態においては、ウェハ処理装置1が、ウェハWに対してCOR処理を行うCOR処理装置である場合を例にして説明する。
【0017】
本実施形態は、後述するようにチャンバ10が2重構造を有し、さらにチャンバ10の内部に隔壁40を設けることでウェハ処理装置1が3重構造を有することを特徴としている。この3重構造により、種々の処理ガスに対応可能なウェハ処理装置1が実現される。したがって、ウェハ処理装置1のその他の構造は任意に設計できる。例えば、図1に示すように後述するウェハWの載置台20は1台設けられていてもよいし、図2に示すように載置台20は2台設けられていてもよい。
【0018】
なお、図1に示すようにウェハ処理装置1において載置台20が1台の場合であっても、隔壁40、インナーウォール50、及び昇降機構70は設けられる。かかる場合、後述するように載置台20、隔壁40、及びシャワーヘッド30で囲まれた処理空間Sが形成され、処理空間Sにおける処理ガスの流れを均一にすることができ、また処理空間Sからの排気路のコントロールもできる。また、チャンバ10の形状がどのような形状であっても、隔壁40によって略円形の平面形状を有する処理空間Sが形成され、当該処理空間Sで安定したエッチング処理を行うことができる。さらに、チャンバ10の内部空間に比べて処理空間Sの容積が小さくなるので、処理ガスの供給量を低減させることもできる。
【0019】
以下、図2に示すウェハ処理装置1の構成について説明するが、当該図2に示すウェハ処理装置1の構成部材の符号と、図1に示すウェハ処理装置1の構成部材の符号は対応している。
【0020】
図2に示すようにウェハ処理装置1は、チャンバ10を有している。チャンバ10は2重構造を有し、内側チャンバ(インナーチャンバ)11と外側チャンバ(アウターチャンバ)12を備えている。内側チャンバ11と外側チャンバ12の間には、密閉された空間T(以下、「密閉空間T」という。)が形成されている。内側チャンバ11の上面には、当該内側チャンバ11を加熱するヒータリング13が設けられている。さらにヒータリング13の上面には、当該ヒータリング13の上面を気密に覆い、内側チャンバ11の内部を密閉可能な蓋体14が設けられている。外側チャンバ12には、当該外側チャンバ12を加熱する後述の外側ヒータ391が設けられている。外側ヒータ391は、任意の位置に設けられるが、例えば外側チャンバ12の底板の四隅にそれぞれ設けられている。なお、このチャンバ10及びその周囲の詳細な構成については後述する。
【0021】
外側チャンバ12には、密閉空間Tに不活性ガスを供給するガス供給管15と、密閉空間Tを真空引きする吸気管16とが設けられている。これらガス供給管15と吸気管16はそれぞれ、外側チャンバ12における任意の位置、例えば底板に設けられる。なお、ガス供給管15を介して密閉空間Tに不活性ガスを供給する給気系統と、吸気管16を介して密閉空間Tを真空引きする減圧系統(排気系統)の詳細については後述する。
【0022】
内側チャンバ11の内部には、ウェハWを載置する複数、本実施形態では2台の載置台20、20が設けられている。載置台20は略円筒形状に形成されており、ウェハWを載置する載置面を備えた上部台21と、外側チャンバ12の底板に固定され、上部台21を支持する下部台22とを有している。上部台21は、例えば静電チャックを含み、ウェハWを吸着保持する。上部台21には、ウェハWの温度を調整する温度調整機構23が内蔵されている。温度調整機構23は、例えば水などの冷媒を循環させることにより載置台20の温度を調整し、載置台20上のウェハWの温度を制御する。
【0023】
なお、本実施形態において載置台20は固定されているが、昇降機構(図示せず)によって昇降するように構成されていてもよい。
【0024】
外側チャンバ12の底板における載置台20の下方の位置には、支持ピンユニット(図示せず)が設けられている。この支持ピンユニットによって上下駆動される支持ピン(図示せず)と、ウェハ処理装置1の外部に設けられた搬送機構(図示せず)との間でウェハWを受け渡し可能に構成されている。
【0025】
蓋体14の下面には、載置台20に載置されたウェハWに処理ガスを供給するシャワーヘッド30が設けられている。シャワーヘッド30は、載置台20、20の上方において個別に設けられている。
【0026】
シャワーヘッド30は、例えば下面が開口し、蓋体14の下面に支持された略円筒形の枠体31と、当該枠体31の内側面に嵌め込まれた略円板状のシャワープレート32とを有している。シャワープレート32は、枠体31の天井部と所望の距離を離して設けられている。これにより、枠体31の天井部とシャワープレート32の上面の間には空間30aが形成されている。また、シャワープレート32には、当該シャワープレート32を厚み方向に貫通する開口32aが複数設けられている。枠体31の天井部とシャワープレート32の間の空間30aには、ガス供給管33が接続されている。なお、シャワーヘッド30及びガス供給管33を介して、載置台20に載置されたウェハWに向けて処理ガスを供給する給気系統の詳細については後述する。
【0027】
シャワーヘッド30の下面、詳細には枠体31の下面には、シール部材34が設けられている。シール部材34には、例えば樹脂製のリップシールが用いられる。このシール部材34は、後述するように昇降機構70により隔壁40を上昇させることで当該隔壁40のヒータプレート42と枠体31が当接した際、ヒータプレート42と枠体31との間を気密に塞ぐ。シール部材34は、各載置台20に対応して設けられている。
【0028】
載置台20、20の外周には、昇降自在に構成された隔壁40が設けられている。隔壁40は、2つの載置台20、20をそれぞれ個別に囲む2つの仕切壁41、41と、仕切壁41、41の上面に設けられたヒータプレート42とを有している。仕切壁41の内径は、載置台20の外側面よりも大きく設定されており、仕切壁41と載置台20の間に隙間が形成されるようになっている。なお、隔壁40の詳細な構成については後述する。
【0029】
上述したように枠体31に設けられたシール部材34によって、当該枠体31とヒータプレート42とが当接した際、枠体31とヒータプレート42との間が気密に塞がれる。また、後述するインナーウォール50の突出部52には、当該突出部52と仕切壁41(後述する下フランジ部202)とが当接した際に、仕切壁41との間を気密に塞ぐ、例えば樹脂製のOリング等のシール部材43が、各載置台20に対応して設けられている。そして、隔壁40を上昇させて、ヒータプレート42とシール部材34とを当接させ、さらに下フランジ部202とシール部材43とを当接させることで、載置台20、隔壁40、及びシャワーヘッド30で囲まれた処理空間Sが形成される。
【0030】
載置台20、20の外周には、外側チャンバ12の底板に固定されたインナーウォール50、50が設けられている。インナーウォール50は、略円筒形状の本体部51と、本体部51の上端に設けられ、当該インナーウォール50の外側に向けて突出する突出部52とを有している。インナーウォール50、50は、載置台20、20の下部台22、22をそれぞれ個別に囲むように配置されている。インナーウォール50の本体部51の内径は、下部台22の外径よりも大きく設定されており、インナーウォール50と下部台22の間にそれぞれ排気空間Vが形成される。なお、本実施形態において排気空間Vは、隔壁40と上部台21の間の空間も含む。そして、図2に示すようにインナーウォール50の高さは、後述する昇降機構70により隔壁40をウェハ処理位置まで上昇させたときに、突出部52に設けられたシール部材43と仕切壁41の下フランジ部202とが当接するように設定されている。これにより、インナーウォール50と隔壁40とが気密に接触する。
【0031】
インナーウォール50の下端には、複数のスリット53が形成されている。スリット53は、処理ガスが排出される排気口である。本実施形態では、スリット53は、インナーウォール50の周方向に沿って、略等間隔に形成されている。
【0032】
なお、インナーウォール50は、外側チャンバ12の底板に固定されている。そして外側チャンバ12は、後述する外側ヒータ391によって加熱されるように構成されており、この外側ヒータ391によって、インナーウォール50も加熱される。インナーウォール50は所望の温度に加熱され、処理ガス中に含まれる異物がインナーウォール50に付着しないようになっている。
【0033】
外側チャンバ12には、隔壁40の内部と内側チャンバ11の内部を排気する排気管60が設けられている。排気管60は、外側チャンバ12の底板において、内側チャンバ11の内側であって、隔壁40及びインナーウォール50の外側に設けられている。排気管60は、2つのインナーウォール50、50に共通に設けられている。すなわち、2つの排気空間V、Vからの処理ガスは、共通の排気管60から排出される。なお、排気管60を介して内側チャンバ11の内部を排気する排気系統の詳細については後述する。
【0034】
ウェハ処理装置1は、上述したように隔壁40を昇降させる昇降機構70を有している。昇降機構70は、チャンバ10の外部に配置されたアクチュエータ71と、アクチュエータ71に接続され、内側チャンバ11及び外側チャンバ12の底板を貫通して内側チャンバ11内を鉛直上方に延伸する駆動軸72と、先端が隔壁40に接続され、他方の基端が外側チャンバ12の外部まで延伸する複数、例えば2本のガイド軸73とを有している。ガイド軸73は、駆動軸72により隔壁40を昇降させる際に隔壁40が傾いたりすることを防止するものである。なお、昇降機構70の詳細な構成については後述する。
【0035】
以上のウェハ処理装置1には、制御部80が設けられている。制御部80は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理装置1におけるウェハWの処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体(図示せず)に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部80にインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は、一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。
【0036】
<ガス系統の構成>
次に、上述したウェハ処理装置1におけるガス系統について説明する。図3は、ウェハ処理装置1におけるガス系統を示す説明図である。本実施形態においてウェハ処理装置1は、内側チャンバ11の内部に対するガス系統(給気と排気)と、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間の密閉空間Tに対するガス系統(給気と減圧)とを有している。
【0037】
図3に示すように、内側チャンバ11の内部に処理ガスを供給する処理ガス供給部100は、上述したシャワーヘッド30及びガス供給管33を有している。ガス供給管33は、処理ガスを供給可能に構成された処理ガス供給源101に接続されている。処理ガスは、エッチング対象膜に応じて選択される。また、ガス供給管33には処理ガスの供給量を調節する流量調節機構102が設けられており、各ウェハWに供給する処理ガスの量を個別に制御できるように構成されている。そして処理ガス供給部100では、処理ガス供給源101から供給された処理ガスは、ガス供給管33とシャワーヘッド30を介して、各載置台20上に載置されたウェハWに向かって供給される。
【0038】
密閉空間Tに不活性ガスを供給する不活性ガス供給部110は、上述したガス供給管15を有している。ガス供給管15は、不活性ガスを供給可能に構成された不活性ガス供給源111に接続されている。不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が用いられる。また、ガス供給管15には不活性ガスの供給量を調節する流量調節機構112が設けられており、密閉空間Tに供給する不活性ガスの量を制御できるように構成されている。そして不活性ガス供給部110では、不活性ガス供給源111から供給された不活性ガスは、ガス供給管15を介して、密閉空間Tに供給される。
【0039】
内側チャンバ11の内部を排気する排気部120は、上述した排気管60を有している。排気管60には、圧力調整バルブ121、ターボ分子ポンプ122及びバルブ123が設けられ、さらにドライポンプ124が接続されている。そして排気部120では、ドライポンプ124によって内側チャンバ11の内部圧力を中真空程度まで排気し、ターボ分子ポンプ122によって内側チャンバ11の内部圧力を高真空まで排気する。
【0040】
密閉空間Tを真空引きする減圧部130は、上述した吸気管16を有している。吸気管16には、バルブ131が設けられ、さらにドライポンプ124が接続されている。そして減圧部130では、ドライポンプ124によって密閉空間Tを真空引きして、当該密閉空間Tを所望の真空度まで減圧する。なお、このように密閉空間Tを所望の真空度まで減圧することで、後述するように内側チャンバ11と外側チャンバ12の間で、密閉空間Tを真空断熱層として機能させることができる。
【0041】
本実施形態ではドライポンプ124は、排気部120と減圧部130に共通に設けられている。但し、排気部120はバルブ123を備え、減圧部130はバルブ131を備えているので、排気部120による内側チャンバ11の内部の排気と、減圧部130による密閉空間Tの減圧は個別に制御できる。
【0042】
<隔壁及び昇降機構の構成>
次に、上述した隔壁40及び昇降機構70の構成について説明する。図4は、隔壁40及び昇降機構70の構成の概略を示す斜視図である。図5は、隔壁40及びその周囲の構成の概略を示す縦断面図である。図6は、隔壁40及びその周囲の構成の概略を示す横断面図である。
【0043】
図4図6に示すように隔壁40は上下に分割され、2つの仕切壁41、41と1つのヒータプレート42を有している。
【0044】
2つの仕切壁41、41はそれぞれ、2つの載置台20、20を個別に囲む。各仕切壁41は、円筒部200、上フランジ部201及び下フランジ部202を有している。円筒部200は、載置台20を囲む。上フランジ部201は、円筒部200の上端に設けられ、当該円筒部200から径方向外側に延伸する。下フランジ部202は、円筒部200の下端に設けられ、当該円筒部200から径方向内側に延伸する。
【0045】
ヒータプレート42は、2つの仕切壁41、41に共通に設けられ、平面視において2つのリングが結合された形状を有する。ヒータプレート42は、上フランジ部201、201の上面に設けられている。ヒータプレート42には、例えばシースヒータやカートリッジヒータ等の隔壁ヒータ210が内蔵されている。隔壁ヒータ210は、隔壁40を例えば120℃~140℃に調整する。これにより、例えば処理ガス中に含まれる異物が隔壁40に付着するのを抑制することができる。
【0046】
かかる構成の隔壁40によれば、隔壁40を上昇させて、ヒータプレート42とシール部材34とを当接させ、さらに下フランジ部202とシール部材43とを当接させることで、気密性の高い処理空間Sを形成することができる。また、処理空間Sにおける処理ガスの流れを均一にすることができ、さらに処理空間Sからの排気路のコントロールもできる。
【0047】
また、隔壁40は上下分割構造を有するので、例えば上部のヒータプレート42の仕様を変更せずに、下部の仕切壁41による排気構造のみを変更することができる。例えば、仕切壁41の内部に排気流路を形成し、さらに仕切壁41の内側面において処理空間Sと排気流路を連通させるための複数の開口を形成する。かかる場合、処理空間Sの処理ガスは、複数の開口を介して仕切壁41の内部の排気流路に流入し、排気管60から排出される。
【0048】
さらに、隔壁40は上下分割構造を有するので、例えば仕切壁41とヒータプレート42を個別に加工することができ、加工性及び調達性が向上する。
【0049】
隔壁40の仕切壁41とヒータプレート42はそれぞれ、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属により形成されている。仕切壁41の表面とヒータプレート42の表面、すなわち処理ガスに接触する接ガス面には、処理ガスに対して耐腐食性を有するコーティングが施されている。このコーティングは、処理ガスの種類に応じて決定されるが、例えばニッケルめっき等である。
【0050】
ここで、隔壁40からウェハWへの温度影響を考慮すると、隔壁40と載置台20に載置されたウェハWとの距離は大きい方が好ましい。図3に示すように隔壁40とウェハWとの距離Lは、従来より大きく、例えば10mm以上であり、より好ましくは15mm以上である。かかる場合、隔壁40とウェハWとの距離を大きくすることができるので、隔壁40からウェハWへの温度影響が低減する。その結果、プロセス性能を高精度に維持することができる。
【0051】
また、従来、隔壁にシール部材が設けられており、隔壁上部にはシール部材と隔壁ヒータが存在することになるため、隔壁の内径を大きくすると、これらシール部材の隔壁ヒータを両立させたレイアウトが困難であった。この点、本実施形態では、シール部材34はシャワーヘッド30の枠体31に設けられているので、隔壁40とウェハWとの距離を大きくしてヒータプレート42が小さくなっても、当該ヒータプレート42の内部に隔壁ヒータ210を適切にレイアウトすることができる。
【0052】
なお、隔壁40には、当該隔壁40にエアを供給するエア供給部(図示せず)が設けられていてもよい。かかる場合、エアによって隔壁40を冷却することができ、例えばメンテンナンス時における隔壁40の降温時間を短縮することができる。
【0053】
図4図6に示すように昇降機構70は、アクチュエータ71、1本の駆動軸72、及び複数、例えば2本のガイド軸73を有している。アクチュエータ71によって駆動軸72を昇降させて、隔壁40が昇降する。この際、2本のガイド軸73によって、隔壁40が傾くことが防止される。
【0054】
図2に示すように駆動軸72の先端はヒータプレート42に接続され、他方の基端はアクチュエータ71に接続されている。アクチュエータ71は外側チャンバ12の外部に設けられる。駆動軸72は、内側チャンバ11及び外側チャンバ12の底板を貫通して内側チャンバ11内を鉛直上方に延伸する。駆動軸72において、内側チャンバ11及び外側チャンバ12を挿通する部分、すなわち後述するように開口部314、334(駆動軸72の接続部分)には、アダプタ360が設けられる。また、駆動軸72において、アダプタ360には軸シール部220が設けられる。軸シール部220の内部には、例えば樹脂製のOリング等のシール部材221が設けられ、真空雰囲気と大気雰囲気の間を遮断している。
【0055】
ガイド軸73の先端にはヒータプレート42に接続され、他方の基端は外側チャンバ12の外部まで延伸する。ガイド軸73は、内側チャンバ11及び外側チャンバ12の底板を貫通して内側チャンバ11内を鉛直上方に延伸する。ガイド軸73において、内側チャンバ11及び外側チャンバ12を挿通する部分、すなわち後述するように開口部315、335(ガイド軸73の接続部分)には、アダプタ360が設けられる。また、ガイド軸73において、アダプタ360には軸シール部222が設けられる。軸シール部222の内部には、例えば樹脂製のOリング等のシール部材223が設けられ、真空雰囲気と大気雰囲気の間を遮断している。
【0056】
このように駆動軸72とガイド軸73にはそれぞれ、軸シール部220、222が設けられるので、例えば従来のベローズのシール構造に比べて、コストを低減することができる。また、従来のベローズのシール構造の場合、異物付着を抑制するため、ベローズの周囲にヒータを設ける必要があるが、本実施形態のように軸シール構造を用いた場合、かかるヒータは不要になる。
【0057】
<チャンバの構成>
次に、上述したチャンバ10及びその周囲の構成について説明する。図7は、チャンバ10及びその周囲の構成の概略を示す縦断面図である。図8及び図9は、チャンバの構成の概略を示す斜視図である。図10は内側チャンバの構成の概略を示す斜視図であり、図11は内側チャンバの構成の概略を示す平面図である。図12は外側チャンバの構成の概略を示す斜視図であり、図13は外側チャンバの構成の概略を示す平面図である。なお、図7図13においては、チャンバ10の構成の説明を容易にするため、内側チャンバ11の内部構成の図示を省略している。
【0058】
[内側チャンバと外側チャンバの構成]
図7図9に示すようにチャンバ10は2重構造を有し、内側チャンバ11と外側チャンバ12を備えている。内側チャンバ11は、外側チャンバ12に対して着脱自在に構成されている。具体的に内側チャンバ11は、外側チャンバ12の上部において取り付け及び取り外しが可能になっている。内側チャンバ11が外側チャンバ12に取り付けられた際には、当該内側チャンバ11と外側チャンバ12の間には、密閉された密閉空間Tが形成される。また、外側チャンバ12は、内側チャンバ11の内部に露出しないように設けられ、当該内側チャンバ11の内部に供給された処理ガスに接触しないように設けられている。
【0059】
図10及び図11に示す内側チャンバ11は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属により形成されている。内側チャンバ11の内側面、すなわち当該内側チャンバ11の内部の処理ガスに接触する接ガス面には、処理ガスに対して耐腐食性を有するコーティングが施されている。このコーティングは、処理ガスの種類に応じて決定されるが、例えばニッケルめっき等である。
【0060】
内側チャンバ11は、全体として上面が開口した略直方体形状の容器である。内側チャンバ11は、略筒状形状の側壁300と、側壁300の上端から外側に向けて突出するフランジ部301と、側壁300の下端において開口下面を覆うように設けられた底板302とを有している。
【0061】
側壁300の一側面には、ウェハWの搬入出口310が形成されている。また、側壁300の他側面には、複数、例えば3つのポート311が形成されている。ポート311は、例えば内側チャンバ11の内部の部材と外部の機器を接続するためのポートである。
【0062】
フランジ部301は、外側チャンバ12の後述する側壁320の上方において環状に設けられる。フランジ部301の外側面は、ウェハ処理装置1の外部に露出している。
【0063】
底板302には、複数の開口部312~315が形成されている。開口部312は、載置台20及びインナーウォール50を設置するための開口部であり、底板302において2箇所に形成されている。開口部313は、排気管60を挿通させるための開口部である。開口部314は、駆動軸72を挿通させるための開口部である。開口部315は、ガイド軸73を挿通させるための開口部であり、底板302において2箇所に形成されている。
【0064】
図12及び図13に示す外側チャンバ12は、例えばアルミニウム、ステンレス等の金属により形成されている。上述したように外側チャンバ12は、内側チャンバ11の内部に供給された処理ガスに接触しないように設けられているため、当該外側チャンバ12の表面にはコーティングが施されていない。すなわち、外側チャンバ12は金属の無垢材である。
【0065】
外側チャンバ12は、全体として上面が開口した略直方体形状の容器である。外側チャンバ12は、略筒状形状の側壁320と、側壁320の下端において開口下面を覆うように設けられた底板321とを有している。
【0066】
側壁320の一側面には、ウェハWの搬入出口330が上記搬入出口310に対応する位置に形成されている。また、側壁320の他側面には、複数、例えば3つのポート331が上記ポート311に対応する位置に形成されている。
【0067】
底板321には、複数の開口部332~335が形成されている。これら開口部332~335はそれぞれ、上記開口部312~315に対応する位置に形成されている。
【0068】
[密閉空間の構成]
図7に示すように内側チャンバ11と外側チャンバ12の間には、密閉空間Tが形成されている。密閉空間Tは、側壁300と側壁320の間、フランジ部301と側壁320の間、及び底板302と底板321の間に形成されている。密閉空間Tは、後述する複数のアダプタと複数のシール部材でシールされて密閉される。以下、この密閉空間Tのシール構造について説明する。
【0069】
なお、アダプタは、内側チャンバ11が外側チャンバ12に取り付けられる際、当該内側チャンバ11と内側チャンバ11の外部(例えば外側チャンバ12等)とを接続するものである。また、アダプタは、その取付位置に応じて、内側チャンバ11の内側から取り付けられてもよいし、内側チャンバ11の外側から取り付けられてもよい。アダプタは例えばアルミニウム、ステンレス等の金属により形成され、アダプタの表面、すなわち当該内側チャンバ11の内部の処理ガスに接触する接ガス面には、処理ガスに対して耐腐食性を有するコーティングが施されている。また、シール部材には、例えば樹脂製のOリングが用いられる。
【0070】
先ず、ウェハWの搬入出口310、330における密閉空間Tのシール構造について説明する。内側チャンバ11の搬入出口310にはアダプタ340が設けられている。アダプタ340は、内側チャンバ11の側壁300と外側チャンバ12の側壁320を接続する。アダプタ340は、両端面が開口した略円筒形状の本体部341と、本体部341から外側に向けて突出する係止部342とを有している。本体部341は、搬入出口310、330の内側面に沿って、搬入出口310から搬入出口330まで水平方向に延在する。係止部342は、内側チャンバ11の側壁300に沿って鉛直方向に延在する。
【0071】
図14図16は、内側チャンバ11の搬入出口310における密閉空間Tのシール構造を示す説明図である。なお、図16においては、内側チャンバ11の側壁300の構成を説明するため、アダプタ340の図示を省略している。図14図16に示すように、内側チャンバ11の側壁300とアダプタ340の係止部342は、複数の第1の締結部材343によって締結されている。また、内側チャンバ11の側壁300と外側チャンバ12の側壁320は、複数の第2の締結部材344によって締結されている。これら締結部材343、344には、例えばネジが用いられる。
【0072】
内側チャンバ11の側壁300の内側面とアダプタ340の係止部342の側面の間には、シール部材345が設けられている。シール部材345は、搬入出口310を囲うように環状に設けられている。
【0073】
第1の締結部材343はシール部材345の外側に設けられている。ここで、第1の締結部材343がアダプタ340の係止部342から外側チャンバ12の側壁320まで締結する場合、内側チャンバ11の内部の処理ガスが第1の締結部材343とそのネジ穴との隙間から密閉空間Tに流出してしまう。そこで、このように密閉空間Tに処理ガスが流出して外側チャンバ12の側壁320に接触するのを抑制するため、本実施形態では、内側チャンバ11とアダプタ340を締結する第1の締結部材343をシール部材345の外側に設けている。
【0074】
また、第2の締結部材344はシール部材345の内側に設けられている。ここで、第2の締結部材344がシール部材345の外側に設けられた場合、第2の締結部材344は内側チャンバ11の内部に連通することになるため、内側チャンバ11の内部の処理ガスが第2の締結部材344とそのネジ穴との隙間から密閉空間Tに流出してしまう。そこで、このように密閉空間Tに処理ガスが流出して外側チャンバ12の側壁320に接触するのを抑制するため、本実施形態では第2の締結部材344をシール部材345の内側に設けている。
【0075】
なお、図16の例においては、シール部材345は、第2の締結部材344の近傍において、当該第2の締結部材344との干渉を避けるように湾曲して設けられているが、シール部材345のレイアウトはこれに限定されない。例えば第2の締結部材344が図16の例より内側(搬入出口310に近い位置)に設けられている場合には、シール部材345の湾曲は省略することができる。
【0076】
また、本実施形態ではシール部材345を1重に設けたが、複数設けられていてもよい。例えば搬入出口310を囲うように環状に設けられたシール部材345に加えて、各第2の締結部材344の外周を個別に囲うシール部材(図示せず)が設けられていてもよい。
【0077】
図7に示すように外側チャンバ12の搬入出口330にはアダプタ346が設けられている。このアダプタ346は、例えばネジ等の締結部材(図示せず)によって、外側チャンバ12の側壁320に締結されている。アダプタ346と側壁320の間には、シール部材347が設けられている。また、この外側のアダプタ346と内側のアダプタ340の間にも、シール部材348が設けられている。これらシール部材347、348はそれぞれ、搬入出口330を囲うように環状に設けられている。
【0078】
以上のシール構造により、搬入出口310、330において密閉空間Tはシールされ、内側チャンバ11の内部の処理ガスが密閉空間Tに流出しないようになっている。
【0079】
次に、開口部313、333(排気管60の接続部分)における密閉空間Tのシール構造について説明する。開口部313、333にはアダプタ350が設けられている。アダプタ350は、内側チャンバ11の底板302と外側チャンバ12の底板321を接続する。アダプタ350は、外側チャンバ12の底板321から排気管60まで鉛直方向に延在する。
【0080】
内側チャンバ11の底板302の下面とアダプタ350の上面の間には、シール部材351が設けられている。シール部材351は、開口部313、333を囲うように環状に設けられている。
【0081】
以上のシール構造により、開口部313、333において密閉空間Tはシールされ、内側チャンバ11の内部の処理ガスが密閉空間Tに流出しないようになっている。
【0082】
次に、開口部314、334(駆動軸72の接続部分)における密閉空間Tのシール構造について説明する。開口部314、334にはアダプタ360が設けられている。アダプタ360は、内側チャンバ11の底板302と外側チャンバ12の底板321を接続する。アダプタ360は、外側チャンバ12の底板321から駆動軸72まで鉛直方向に延在する。
【0083】
内側チャンバ11の底板302の下面とアダプタ360の上面の間には、シール部材361が設けられている。シール部材361は、開口部314、334を囲うように環状に設けられている。
【0084】
以上のシール構造により、開口部314、334において密閉空間Tはシールされ、内側チャンバ11の内部の処理ガスが密閉空間Tに流出しないようになっている。なお、開口部315、335(ガイド軸73の接続部分)においても同様にアダプタ360が設けられ、密閉空間Tがシールされる。
【0085】
なお、他の開口部312、332(載置台20及びインナーウォール50の設置部分)における密閉空間Tのシール構造、ポート311、331における密閉空間Tのシール構造のいずれも、上記シール構造と同様である。すなわち、各開口部には、アダプタとシール部材が設けられている。
【0086】
次に、フランジ部301と側壁320の上面の間の密閉空間Tのシール構造について説明する。フランジ部301の下面と側壁320の上面の間には、シール部材370が設けられている。密閉空間Tはシールされ、外部の雰囲気が密閉空間Tに流入しないようになっている。
【0087】
なお、図17に示すように、フランジ部301の下面と側壁320の上面の間には、隙間Gが形成されている。この隙間により、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間での熱伝達を抑制することができる。ここで、上述したように密閉空間Tは減圧部130によって所望の真空度まで減圧され、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間で、密閉空間Tを真空断熱層として機能する。本実施形態では、隙間Gによって内側チャンバ11と外側チャンバ12の間での熱伝達が抑制されるので、密閉空間Tの真空断熱層の機能を維持することができる。
【0088】
以上のとおり、密閉空間Tは後述する複数のアダプタと複数のシール部材でシールされて密閉される。このため、内側チャンバ11の内部の処理ガスは密閉空間Tに流出せず、その結果、外側チャンバ12が処理ガスに曝されることが抑制される。
【0089】
密閉空間Tには、複数のスペーサ380が設けられている。スペーサ380は、内側チャンバ11と外側チャンバ12に接触している。スペーサ380には、例えばステンレスによって形成される。このスペーサ380によって、内側チャンバ11の強度を維持することができる。換言すれば、スペーサ380を設けることによって、内側チャンバ11の厚みを薄くすることも可能となる。なお、スペーサ380の設置位置は任意である。例えば内側チャンバ11の強度が弱い箇所にスペーサ380を設置してもよい。
【0090】
[ヒータの構成]
図7に示すように内側チャンバ11のフランジ部301の上面には、当該内側チャンバ11を加熱するヒータリング13が設けられている。ヒータリング13は、環状に設けられている。ヒータリング13は外部に露出している。また、ヒータリング13の内部は大気圧に維持されており、ヒータリング13には例えばシースヒータやカートリッジヒータ等の内側ヒータ390が内蔵されている。外側チャンバ12には、当該外側チャンバ12を加熱する、例えばシースヒータやカートリッジヒータ等の外側ヒータ391が設けられている。外側ヒータ391は、任意の位置に設けられるが、例えば外側チャンバ12の底板の四隅にそれぞれ設けられている。これら内側ヒータ390と外側ヒータ391は個別に制御され、それぞれ個別の温度に調整可能である。
【0091】
内側ヒータ390(ヒータリング13)は、内側チャンバ11を例えば100℃~120℃に調整する。これにより、例えば処理ガス中に含まれる異物が内側チャンバ11に付着するのを抑制することができる。
【0092】
また、上述したように密閉空間Tは減圧部130によって所望の真空度まで減圧され、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間で真空断熱層として機能する。この真空断熱層である密閉空間Tによって、内側チャンバ11を熱的に独立させることができ、内側チャンバ11の温度調整を効率よく行うことができる。
【0093】
外側ヒータ391は、外側チャンバ12を例えば80℃~100℃に調整する。ここで、内側チャンバ11は真空断熱層である密閉空間Tによって熱的に独立しているが、内側チャンバ11と密閉空間Tの間で若干の熱伝達は存在する。特に外側チャンバ12の容積は大きく、また外側チャンバ12はウェハ処理装置1の外部のウェハ搬送装置等に接続されているため、外側チャンバ12を介して内側チャンバ11の熱が若干逃げる。そこで本実施形態では、外側チャンバ12の温度を調整しておくことで、内側チャンバ11の温度を適切に制御する。すなわち、外側ヒータ391は、内側チャンバ11の温度調整のアシストとして機能する。
【0094】
なお、外側ヒータ391によって調整される外側チャンバ12の温度は任意である。但し、内側チャンバ11の温度の方が、外側チャンバ12の温度よりも高く制御される。例えば特許文献1に開示されたウェハ処理装置のようにチャンバが1重構造を有する場合、当該チャンバの温度は例えば120℃~150℃に調整される。この点、本実施形態のでは、チャンバ10が2重構造を有するため、外側チャンバ12の温度を従来よりも低く抑えることができる。
【0095】
また、上述したように隔壁ヒータ210によって隔壁40は例えば120℃~140℃に調整される。すなわち、隔壁40の温度の方が、内側チャンバ11の温度よりも高く制御される。このように隔壁40と内側チャンバ11の温度差を設けることで、隔壁ヒータ210を制御すれば、隔壁40の温度と内側チャンバ11の温度の制御が容易になる。なお、隔壁40の温度は必ずしも内側チャンバ11の温度より高い必要はなく、例えば同じであってもよい。
【0096】
<ウェハ処理方法>
次に、以上のように構成されたウェハ処理装置1におけるウェハ処理(COR処理)について説明する。
【0097】
先ず、隔壁40が退避位置まで降下した状態で、ウェハ処理装置1の外部に設けられた搬送機構(図示せず)によりチャンバ10(内側チャンバ11)の内部にウェハWが搬送され、各載置台20、20上に載置される。
【0098】
その後、隔壁40をウェハ処理位置まで上昇させる。これにより、隔壁40により処理空間Sが形成される。
【0099】
そして、排気部120によって内側チャンバ11の内部を所望の圧力まで排気すると共に、処理ガス供給部100から処理ガスが内側チャンバ11の内部に供給され、ウェハWに対してCOR処理が行われる。なお、処理空間S内の処理ガスは、排気空間V、各インナーウォール50のスリット53を通り、排気部120から排出される。
【0100】
COR処理中、内側チャンバ11の温度は内側ヒータ390(ヒータリング13)によって例えば120℃~150℃に調整され、外側チャンバ12の温度は外側ヒータ391によって例えば80℃以下に調整さえる。また、密閉空間Tは減圧部130によって所望の真空度まで減圧され、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間で真空断熱層として機能する。その結果、真空断熱層によって内側チャンバ11の温度調整を効率よく行うことができる。
【0101】
また、COR処理中、密閉空間Tの圧力を調整するため、不活性ガス供給部110から密閉空間Tに不活性ガスを供給してもよい。例えば、内側チャンバ11の内部と密閉空間Tに圧力差が生じた場合、この圧力差を調整するために不活性ガス供給部110から密閉空間Tに不活性ガスを供給する。具体的には、密閉空間Tに処理ガスが流入するのを抑制するため、内側チャンバ11の内部が密閉空間Tより高圧にならないように、密閉空間Tの圧力を調整する。あるいは例えば、密閉空間Tの圧力を圧力計(図示せず)で監視しておき、圧力が閾値より低くなった場合に、不活性ガス供給部110から密閉空間Tに不活性ガスを供給する。
【0102】
COR処理が終了すると、隔壁40が退避位置に降下し、ウェハ搬送機構(図示せず)より各載置台20、20上のウェハWがウェハ処理装置1の外部に搬出される。その後、ウェハ処理装置1の外部に設けられた加熱装置によりウェハWが加熱され、COR処理によって生じた反応生成物が気化して除去される。これにより、一連のCOR処理が終了する。
【0103】
<ウェハ処理装置のメンテナンス>
次に、ウェハ処理装置1のメンテナンスについて説明する。このメンテナンスでは、例えば内側チャンバ11を交換する。内側チャンバ11の交換には、例えば処理ガスを変更する場合において、内側チャンバ11の耐腐食性コーティングを変更するために行う場合が含まれる。あるいは、例えば複数のウェハWに対してCOR処理を行った後、経時劣化した内側チャンバ11を交換する場合もある。
【0104】
先ず、減圧部130による密閉空間Tの真空引きを停止し、不活性ガス供給部110から密閉空間Tに不活性ガスを供給する。不活性ガスの供給は、密閉空間Tの内部が大気圧になるまで行われる。
【0105】
その後、蓋体14を取り外して内側チャンバ11の内部を大気開放した後、隔壁40を取り外してから、内側チャンバ11を交換する。そして、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間に密閉空間Tを形成した後、減圧部130によって密閉空間Tを所望の真空度まで減圧する。こうして、COR処理に対する準備が完了する。
【0106】
<本実施形態の効果>
以上の実施形態によれば、隔壁40、内側チャンバ11及び外側チャンバ12の3重構造を有しているので、後述するチャンバ10の2重構造の効果を享受しつつ、処理空間Sの処理ガスの流れを均一にすることができ、また処理空間Sからの排気も適切に制御することができる。
【0107】
また、従来のウェハ処理装置ではチャンバは1つであるため、隔壁の熱はチャンバ側に抜熱する構成になっていた。この点、本実施形態によれば、隔壁40と外側チャンバ12との間に内側チャンバ11が設けられているので、隔壁40が外部熱(外側チャンバ12の熱)の影響を受けにくくなり、当該隔壁40の温度均一性が向上する。
【0108】
また、本実施形態によれば、隔壁40とウェハWとの距離を大きくすることができ、隔壁40からウェハWへの温度影響が低減する。その結果、プロセス性能を高精度に維持することができる。
【0109】
また、本実施形態によれば、チャンバ10が2重構造を有しているので、処理ガスのガス種が変わってチャンバ表面のコーティングを変更する必要がある場合でも、内側チャンバ11を交換するのみで対応することができる。換言すれば、外側チャンバ12を交換する必要がない。このため、従来のウェハ処理装置のように、ウェハ処理装置が搭載されたシステムの全停止、ウェハ処理装置のアンドック、ガス供給ラインや電力供給ライン、水供給ライン等の引き直しなど、チャンバ交換時の負荷を低減することができる。このようにウェハ処理装置1は、種々の処理ガス(種々のガス処理)に簡易な方法で対応可能に構成されている。
【0110】
また、本実施形態によれば、外側チャンバ12は内側チャンバ11の内部に供給された処理ガスに接触しない。このため、外側チャンバ12の表面に耐腐食性のコーティングを施す必要がなく、外側チャンバ12には金属の無垢材を用いることができる。
【0111】
また、本実施形態によれば、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間には密閉空間Tが形成され、この密閉空間Tは複数のアダプタと複数のシール部材でシールされて密閉されている。特にウェハWの搬入出口310、330では、内側チャンバ11とアダプタ340を締結する第1の締結部材343をシール部材345の外側に設け、内側チャンバ11と外側チャンバ12を締結する第2の締結部材344をシール部材345の内側に設けている。このため、第1の締結部材343と第2の締結部材344のネジ穴から密閉空間Tに処理ガスが流入するのを抑制し、密閉空間Tを確実にシールすることができる。以上のように簡易な構造で、密閉空間Tのシール性を確保することができる。
【0112】
また、本実施形態によれば、密閉空間Tは減圧部130によって所望の真空度まで減圧され、内側チャンバ11と外側チャンバ12の間で真空断熱層として機能する。さらに、内側チャンバ11のフランジ部301の下面と外側チャンバ12の側壁320の上面に隙間Gが形成されており、他の箇所においても内側チャンバ11と外側チャンバ12は接触しておらず、密閉空間Tの真空断熱層の機能を維持することができる。このため、内側チャンバ11を熱的に独立させることができるので、当該内側チャンバ11の温度調整を効率よく行うことができる。またその結果、内側ヒータ390の負荷を低減することができる。
【0113】
また、本実施形態によれば、不活性ガス供給部110によって密閉空間Tの圧力を調整することができる。このため、ウェハ処理中、内側チャンバ11の内部と密閉空間Tの圧力差を抑え、密閉空間Tに処理ガスが流入するのを抑制することができる。さらに、内側チャンバ11の交換時にも、不活性ガス供給部110から密閉空間Tに不活性ガスを供給して、密閉空間Tの内部を大気圧にすることができ、内側チャンバ11の交換を円滑に行うことができる。
【0114】
また、本実施形態によれば、排気部120による内側チャンバ11の内部の排気と、減圧部130による密閉空間Tの減圧は個別に制御できる。このため、内側チャンバ11の内部の圧力と、密閉空間Tの圧力をそれぞれ適切に調整することができる。
【0115】
また、本実施形態によれば、内側ヒータ390(ヒータリング13)による内側チャンバ11の温度と、外側ヒータ391による外側チャンバ12の温度は個別に制御できる。このため、内側チャンバ11の温度と外側チャンバ12の温度を適切に調整することができる。
【0116】
特に、本実施形態では、チャンバ10が密閉空間Tを備えた2重構造を有するので、外側チャンバ12の温度を内側チャンバ11の温度より低く抑えることができる。このため、外側ヒータ391の負荷を低減することができる。また、例えばウェハ処理装置1をヒートアウトしてからメンテナンスを行うまでの時間を短縮することができ、さらにメンテンナンス後、ウェハ処理装置1を復帰させるまでの時間も短縮することができる。
【0117】
なお、以上の実施形態では、図2に示すように載置台20が2台設けられたウェハ処理装置1について説明したが、図1に示すように載置台20が1台設けられたウェハ処理装置1に対しても、上記効果を享受することができる。
【0118】
また例えば、以上の実施形態では、1台又は2台の載置台20を設けた例に即して説明したが、載置台20の設置数はこれらに限定されない。例えば載置台20は、3台以上であってもよい。
【0119】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0120】
また例えば、以上の実施形態では、ウェハWにCOR処理を行う場合を例にして説明したが、本開示の技術は処理ガスを用いる他のウェハ処理装置、例えばプラズマ処理装置等にも適用できる。
【符号の説明】
【0121】
1 ウェハ処理装置
11 内側チャンバ
12 外側チャンバ
20 載置台
40 隔壁
100 処理ガス供給部
W ウェハ
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