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特開2023-66665キャップ部材及び当該キャップ部材を用いたプラズマ処理装置
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  • 特開-キャップ部材及び当該キャップ部材を用いたプラズマ処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066665
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】キャップ部材及び当該キャップ部材を用いたプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230509BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20230509BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
H01L21/31 F
C23C16/458
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177386
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 寛
(72)【発明者】
【氏名】大塚 友幸
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB07
2G084CC12
2G084CC33
2G084FF06
2G084FF07
2G084FF31
4K030FA01
4K030GA02
4K030KA23
4K030KA45
4K030KA46
4K030KA47
4K030LA15
5F045AA08
5F045AB32
5F045AC05
5F045AC11
5F045AD01
5F045AE01
5F045BB20
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EC05
5F045EF03
5F045EM09
(57)【要約】
【課題】真空容器内の部品を固定する固定具へのアクセス性を維持しつつ、固定具による異常放電を抑制するキャップ部材を提供する。
【解決手段】本発明のキャップ部材は、筒状のアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる側部と、前記側部の一方の開口を閉塞するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる天蓋部と、を有し、前記側部の他方の開口側の端面が略平坦面であり、表面に陽極酸化されたアルマイト層が形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる側部と、
前記側部の一方の開口を閉塞するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる天蓋部と、を有し、
前記側部の他方の開口側の端面が略平坦面であり、
表面に陽極酸化されたアルマイト層が形成されていることを特徴とするキャップ部材。
【請求項2】
筒状のアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる側部と、
前記側部の一方の開口を閉塞するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる天蓋部と、を有し、
前記側部の他方の開口側の端面が略平坦面であり、
前記側部の他方の開口側の端面には、前記側部の内側面から外側面に至る半円柱形状の切欠き部が形成され、
表面には、陽極酸化されたアルマイト層が形成されていることを特徴とするキャップ部材。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記側部の他方の開口側の端面の外縁の中心点に対して対称となる位置に複数個形成されていることを特徴とする請求項2に記載のキャップ部材。
【請求項4】
前記側部の他方の開口側の端面が粗面になっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のキャップ部材。
【請求項5】
前記キャップ部材の各々の角部は、面取り加工されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のキャップ部材。
【請求項6】
前記キャップ部材は、プラズマ処理装置の真空容器内で部品を固定しかつ少なくとも一部が前記真空容器内に露出した露出部分を有する固定具の前記露出部分を覆うキャップ部材であり、前記側部及び前記天蓋部によって形成された空間に前記固定具が収容されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のキャップ部材。
【請求項7】
真空容器と、
前記真空容器内に備えられたステージ上に設置された加熱部と、
前記加熱部上に設置されたトッププレートと、
前記真空容器内で前記トッププレートと前記加熱部とを固定しかつ少なくとも一部が前記真空容器内に露出した露出部分を有する金属からなる固定具と、
筒状の側部及び前記側部の一方の開口を閉塞する天蓋部を有するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなるキャップ部材と、を有し、
前記キャップ部材の前記側部の他方の開口側の端面が略平坦面に形成され、
前記キャップ部材の表面には、陽極酸化されたアルマイト層が形成されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記トッププレートは、前記加熱部と対向する下面と反対の面である上面に前記キャップ部材を収容可能な形状の凹部及び前記凹部の底部から前記加熱部と対向する面まで貫通する貫通穴を有し、
前記固定具は、前記トッププレートの前記貫通穴に挿入されかつ前記加熱部と係合して、前記トッププレートを前記加熱部に固定し、
前記キャップ部材は、前記側部及び前記天蓋部によって形成された空間に前記固定具の前記露出部分が収容されるように前記凹部内に配されている
ことを特徴とする請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記キャップ部材の上面と前記トッププレートの上面とが同一の面内に配されるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキャップ部材、特に、半導体等の製造に利用されるプラズマ処理装置に用いられるキャップ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造において、真空容器内で高周波放電によってプラズマを生成し、シリコンウェハ等の被処理基板上に所望の薄膜を成膜するプラズマ化学気相成長法(以下、プラズマCVD法と称する)や、被処理基板上の薄膜をエッチングするプラズマエッチング等の加工を行うプラズマ処理装置が多く用いられている。
【0003】
上記のプラズマ処理装置では、被処理基板の加工面内でプラズマ処理が均一になるようにプラズマを生成することが好ましい。
【0004】
例えば、特許文献1には、インナーチャンバー内の基板よりも真空排気手段に近い側に配され、複数の貫通する丸穴を有しかつ当該丸穴のエッジ部にR加工が施され、表面に硬質アルマイト処理が施されたアルミニウム合金からなるシールド板を有するプラズマ処理装置が開示されている。引用文献1のプラズマ処理装置によれば、プラズマ処理時にインナーチャンバー内で異常放電が起こりにくく、安定したプラズマ処理を行うことが可能となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-68724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示すようなプラズマ処理装置では、真空容器内でステージ等の部品を固定するためにねじ等の固定具が用いられている。このような固定具は、メンテナンス時のアクセス性向上等の理由で、真空容器内で露出していることが多い。また、このような固定具は、固定具に求められる物性故に金属等の導電体であることが多く、固定具が異常放電の原因となり得る。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、真空容器内の部品を固定する固定具へのアクセス性を維持しつつ、固定具による異常放電を抑制するキャップ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るキャップ部材は、筒状のアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる側部と、前記側部の一方の開口を閉塞するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる天蓋部と、を有し、前記側部の他方の開口側の端面が略平坦面であり、表面に陽極酸化されたアルマイト層が形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係るキャップ部材は、筒状のアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる側部と、前記側部の一方の開口を閉塞するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる天蓋部と、を有し、前記側部の他方の開口側の端面が略平坦面であり、前記側部の他方の開口側の端面には、前記側部の内側面から外側面に至る半円柱形状の切欠き部が形成され、表面には、陽極酸化されたアルマイト層が形成されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るプラズマ処理装置は、真空容器と、前記真空容器内に備えられたステージ上に設置された加熱部と、前記加熱部上に設置されたトッププレートと、前記真空容器内で前記トッププレートと前記加熱部とを固定しかつ少なくとも一部が前記真空容器内に露出した露出部分を有する金属からなる固定具と、筒状の側部及び前記側部の一方の開放部を閉塞する天蓋部を有するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなるキャップ部材と、を有し、前記キャップ部材の前記側部の他方の開放部の端面が略平坦面に形成され、前記キャップ部材の表面には、陽極酸化されたアルマイト層が形成されていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願の実施例1に係るプラズマ処理装置の構成を示す断面図である。
図2】本願の実施例1に係るキャップ部材の取り付け時の状態を示す拡大斜視図である。
図3】本願の実施例1に係るキャップ部材の取り付け時の状態を示す拡大断面図である。
図4】本願の実施例2に係るキャップ部材の取り付け時の状態を示す拡大斜視図である。
図5】本願の実施例2に係るキャップ部材の取り付け時の状態を示す拡大断面図である。
図6】本願の実施例3に係るキャップ部材の取り付け時の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0013】
図1は、本願の実施例1に係るキャップ部材を用いたプラズマ処理装置としてのプラズマ励起化学気相成膜装置(以下、プラズマCVD装置と称する)100の構成を示す断面図である。
【0014】
以下の実施例において、プラズマCVD装置100は、真空容器10を有する。また、以下の実施例において、プラズマCVD装置100は、真空容器10に連接された真空排気装置20と、ガス供給装置30と、高周波電源装置40と、シャッタ50と、を有する。
【0015】
また、以下の実施例において、プラズマCVD装置100は、真空容器10の内部にガス供給装置30と接続されたガス供給管31と、高周波電源装置40と接続された電極41と、ステージ60と、ステージ60上に設けられたヒータ61と、ヒータ61上に載置されたトッププレート62と、リフトピン63と、を有する。プラズマCVD装置100においては、処理されるシリコンウェハ等の被処理ウェハ(以下、ウェハとも称する)Wが、トッププレート62の上面に載置された状態で、ウェハWへの薄膜の形成処理が行われる。
【0016】
また、プラズマCVD装置100は、トッププレート62をヒータ61に固定する固定具70と、当該固定具70を覆うキャップ部材80と、を有する。
【0017】
真空排気装置20は、真空容器10内を減圧する減圧装置である。真空排気装置20は、例えば、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ、ロータリーポンプ及び真空計を含み、真空容器10内を所定の圧力まで減圧する。
【0018】
ガス供給装置30は、ウェハWに所望の薄膜を成膜するための原料ガスを混合し、ガス供給管31を介して真空容器10内に供給する。ガス供給装置30は、例えば、マスフローコントローラ、バルブ及びガスミキサーを含み、所定のガス流量で真空容器10内に原料ガスを供給する。
【0019】
原料ガスは、例えば、酸化シリコン(SiO)膜を成膜する場合、シリコンを含むジクロロシラン(SiHCl)等のガスと酸素(O)等のガスとを混合したものが挙げられる。また、例えば、窒化シリコン(SiN)膜を成膜する場合、シリコンを含むジクロロシラン(SiHCl)等のガスとアンモニア(NH)等のガスとを混合したものが挙げられる。
【0020】
高周波電源装置40は、真空容器10内に設けられた電極41に高周波電圧を印加し、真空容器10内にプラズマを生成する。高周波電源装置40は、例えば、RF(Radio Frequency)帯の13.56MHzの周波数を有する電圧又はLF(Low Frequency)帯の400kHzの周波数を有する電圧を電極41に印加する。
【0021】
プラズマCVD装置100においては、真空容器10内に原料ガスが供給されている状態で電極41に高周波電圧が印加されることにより、当該真空容器10内に供給された原料ガスの分子が励起されて原料ガスがプラズマ状態となる。プラズマCVD装置100は、原料ガスをプラズマ状態とすることで、トッププレート62上に載置されたウェハW上に酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)膜として堆積させることが可能である。
【0022】
シャッタ50は、ウェハWを外部から真空容器10内に搬出入する搬入出口を開閉するシャッタである。なお、シャッタ50の外部には、図示されない予備真空室が設けられており、当該予備真空室内に備えられたアーム等によってウェハWが搬送される。
【0023】
加熱部としてのヒータ61は、真空容器10内に設けられたステージ60上に設けられたセラミックヒータ等の加熱器である。ヒータ61には、例えば、図示されない電源装置及び熱電対が接続されており、プラズマCVD装置100による成膜処理時にウェハWを所定の温度に加熱する。
【0024】
ヒータ61は、例えば、円板状の形状を有する。また、ヒータ61上面である、ステージ60と対向する面と反対の側の面の外縁部に沿った領域には、内側面が雌ねじ加工されている円柱形状の複数の凹部61Dが形成されている。また、複数の凹部61Dは、例えば、ヒータ61の上面の外縁部に沿った領域に周方向において互いに等間隔となるように形成される。本実施例においては、複数の凹部61Dは、上面視において、ヒータ61の上面の中心点に対して互いに60°の点対称位置にそれぞれ形成されている。また、ヒータ61の凹部61D内には、上記した内側面に雌ねじ加工されたねじ山によって固定されたヘリサート(図1では図示されない)が設けられている。
【0025】
また、ヒータ61の中央の領域には、リフトピン63用の複数の貫通穴61Lが形成されている。
【0026】
トッププレート62は、ヒータ61上に載置された、ウェハWを載置するための載置部である。トッププレート62は、例えば、円板状の形状を有する。ウェハWは、トッププレート62の上面である、ヒータ61に対向する面と反対の面の中央の領域に載置される。すなわち、トッププレート62の上面がウェハ載置面となる。
【0027】
トッププレート62は、例えば、アルミニウム(Al)又はアルミニウムを含む合金からなる。また、トッププレート62の表面は、陽極酸化処理されたアルマイト層が形成されており、表面が絶縁されている。
【0028】
また、トッププレート62のウェハ載置面の外縁部に沿った領域には、複数の円柱状の凹部62D及び当該各々の凹部62Dの底部からヒータ61に対向する面まで貫通する円柱状の複数の貫通穴62Hが形成されている。複数の貫通穴62Hは、固定具70を挿入するための貫通穴である。トッププレート62の複数の貫通穴62H及び凹部62Dは、ヒータ61の凹部61Dと対応した位置に形成されている。すなわち、トッププレート62の複数の貫通穴62Hとヒータ61の凹部61Dとは、ヒータ61とトッププレート62とが所定の位置関係にある際に、互いに連通するように配されている。
【0029】
また、トッププレート62の中央のウェハWが載置される領域内には、リフトピン63用の複数の貫通穴62Lが形成されている。トッププレート62の複数の貫通穴62Lは、ヒータ61の複数の貫通穴61Lと対応した位置に形成されている。すなわち、トッププレート62の複数の貫通穴62Lとヒータ61の複数の貫通穴61Lとは、ヒータ61とトッププレート62とが所定の位置関係にある際に1の貫通孔を形成するように配されている。
【0030】
リフトピン63は、トッププレート62の載置面上に載置されたウェハWを押し上げる突き上げピンである。リフトピン63は、リフトピン63を昇降させる図示しない昇降機構と接続されている。リフトピン63は、昇降機構の動作に応じてヒータ61の貫通穴61L及びトッププレート62の貫通穴61Lに収納されている位置と、リフトピン63の先端がトッププレート62のウェハ載置面から所定の高さまで突出する位置との間で昇降する。また、ウェハWは、リフトピン63がトッププレート62の載置面から突出する際においてこれに支持される。ウェハWをトッププレート62の載置面への載置する際及びトッププレート62の載置面からの搬送を行う際にリフトピン63を突出させることで、ウェハWと載置面との間にウェハWの搬送に用いられるアームのエンドエフェクタが入る隙間をもたらすことができる。
【0031】
固定具70は、例えば、ナベ型、トラス型又はバインド型の形状のヘッド部を有する、例えば、ニッケル等の金属からなるスクリュである。固定具70は、ねじ部又は胴部(以下、単に胴部とも称する)の外径がトッププレート62の貫通穴62Hの径よりも小さい寸法を有し、ヘッド部の外径がトッププレート62の貫通穴62Hの径よりも大きい寸法を有する。固定具70の胴部は、トッププレート62の貫通穴62H及びヒータ61の凹部61Dに挿入され、ヒータ61の凹部61Dに設けられたヘリサートと係合している。固定具70のヘッド部は、その底面がトッププレート62の凹部62Dの底部の貫通穴62Hの周辺部に接触し、トッププレート62をヒータ61の方向に押し付ける。これにより、トッププレート62は、固定具70によってヒータ61に固定される。
【0032】
固定具70は、トッププレート62の凹部62D内において、ヘッド部が真空容器内に露出している。言い換えれば、プラズマCVD装置100は、真空容器10内でトッププレート62とヒータ61とを固定しかつ少なくとも一部が真空容器10内に露出した露出部分を有する金属からなる固定具70を有する。
【0033】
キャップ部材80は、トッププレート62の凹部62D内に露出した固定具70の露出部分を覆うキャップである。
【0034】
キャップ部材80は、例えば、円筒状の側部及び当該側部の一方の開口を閉塞する天蓋部からなる桶状の形状を有する。
【0035】
キャップ部材80は、開口部を介して固定具70のヘッド部がキャップ部材80内に収容されるようにトッププレート62の凹部62D内に配されている。すなわち、キャップ部材80は、トッププレート62の凹部62D内において、固定具70の露出部分であるヘッド部を覆うように配されている。
【0036】
また、キャップ部材80は、例えば、アルミニウム(Al)又はアルミニウムを含む合金からなる。また、キャップ部材80の表面は、陽極酸化処理されたアルマイト層が形成されており、表面が絶縁されている。
【0037】
図2は、本願の実施例1に係るキャップ部材80が凹部62D内に収まりかつ固定具70を覆っている状態を示す拡大斜視図である。図2においては、凹部62D及び固定具70を一点鎖線で示している。
【0038】
キャップ部材80は、上述のように、円筒状の側部80Sと、当該側部80Sの一方の開口を閉塞する天蓋部80Lとが一体的に形成された形状を有する。
【0039】
以下、キャップ部材80の天蓋部80L側を上側、側部80Sの開口された側を下側として説明する。また、キャップ部材80の天蓋部80Lによって閉塞されている側の面を上面80Tと称し、側部80Sの開口の周縁にある面を下面80Bとして説明する。
【0040】
キャップ部材80は、上述のように、アルミニウム(Al)又はアルミニウムを含む合金からなる。言い換えれば、キャップ部材80は、筒状のアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる側部80Sと、側部80Sの一方の開口を閉塞するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる天蓋部80Lと、を有する。また、言い換えれば、プラズマCVD装置100は、筒状の側部80S及び側部80Sの一方の開口を閉塞する天蓋部80Lを有するアルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなるキャップ部材80を有する。なお、キャップ部材80は、アルミニウム又はアルミニウム合金以外の金属で形成されていてもよい。
【0041】
側部80Sの開口された側の端面である下面80Bは、略平坦な面に形成されている。すなわち、キャップ部材80は、側部80Sの上方の側の面が天蓋部80Lで閉塞された桶状の形状を有する。言い換えれば、キャップ部材80は、側部80Sの天蓋部80Lで閉塞されていない側の開口側の端面である下面80Bが略平坦面である。
【0042】
また、上述のようにキャップ部材80の表面は、陽極酸化処理されたアルマイト層が形成されており、表面が絶縁されている。
【0043】
キャップ部材80は、下面80Bがトッププレート62の凹部62Dの底部と対向するように、トッププレート62の凹部62D内に配されている。なお、キャップ部材80の下面80Bの開口の内径、すなわち、円筒状の側部80Sの内径は、固定具70のヘッド部70Hの外径よりも大きい。すなわち、固定具70のヘッド部70Hは、キャップ部材80の側部80S及び天蓋部80Lに囲まれた収容空間CSに収容される。
【0044】
また、キャップ部材80の上面80Tの外縁部には、側部80Sの外側面にまで延在する切欠き部NTが形成されている。切欠き部NTは、キャップ部材80の上方から見て線対称の位置に一組形成されている。切欠き部NTによってキャップ部材80と凹部62Dとの間に空間が形成される。メンテナンス時にキャップ部材80をトッププレート62から取り外す際には、この切欠き部NTによって形成される空間にピンセット等の把持具の先端が差し込まれ、キャップ部材80が把持される。
【0045】
また、キャップ部材80は、互いに隣り合う面同士がなす各々の角部がC面加工又はR加工等の面取り加工が施されている。当該各々の角部が面取り加工されていることにより、キャップ部材80の表面のアルマイト層を安定してかつ均一に形成することが可能となる。言い換えれば、キャップ部材80の各々の角部は、面取り加工されている。
【0046】
キャップ部材80は、側部80S及び天蓋部80Lに囲まれた収容空間CSで固定具70を覆うことにより、金属である固定具70の露出部分を隠蔽し異常放電の発生を抑制することが可能となる。
【0047】
図3は、本願の実施例1に係るキャップ部材80がトッププレート62の凹部62Dに配された際のキャップ部材80近傍の拡大断面図である。図3において、キャップ部材80は、図2の3-3面に沿った断面を示している。
【0048】
上述のように、ヒータ61は、固定具70の胴部70Tを挿入するための凹部61Dを有する。また、ヒータ61の凹部61D内には、固定具70と係合するヘリサート61Aが設けられている。
【0049】
また、上述のように、トッププレート62は、固定具70及びキャップ部材80を収容するための円柱状の複数の凹部62D及び当該凹部62Dの底部から当該各々の凹部62Dの底部からヒータ61に対向する面まで貫通する円柱状の複数の貫通穴62Hを有する。また、上述のように、トッププレート62は、貫通穴62Hとヒータ61の凹部61Dが連通する位置に載置される。言い換えれば、プラズマCVD装置100のトッププレート62は、ヒータ61と対向する下面と反対の面である上面にキャップ部材80の側部80Sを収容可能な形状の凹部62D及び凹部62Dの底部からヒータ61と対向する面まで貫通する貫通穴62Hを有する。
【0050】
また、上述のように、トッププレート62は、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる母材62B及び母材62Bの表面に陽極酸化処理によって形成されたアルマイト層62Aからなる。すなわち、トッププレート62は、その上面、下面、側面、貫通穴62Hの内面及び凹部62Dの内面がアルマイト層62Aで覆われている。
【0051】
上述のように、トッププレート62のアルマイト層62Aは、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金の母材62Bの表面に陽極酸化処理によって形成された陽極酸化層である。アルマイト層62Aは、例えば、トッププレート62の母材62Bを硫酸(HSO)又はシュウ酸(C)等の電解液に浸した後、母材62Bを陽極とした電流を流して母材62Bの表面を酸化させることによって得られる。
【0052】
上述のように、固定具70は、ヘッド部70H及び胴部70Tからなる金属製のスクリュである。固定具70の胴部70Tは、雄ねじ加工が施されており、トッププレート62の貫通穴62H及びヒータ61の凹部61Dに挿入される。固定具70は、ヒータ61の凹部61Dに挿入された後、ねじ締め動作させることによってヘリサート61Aと係合してヒータ61に固定される。また、固定具70は、ねじ締め動作させることによってヘッド部70Hの底面がトッププレート62の凹部62Dの底部を押し付け、トッププレート62をヒータ61に固定する。言い換えれば、プラズマCVD装置100の固定具70は、トッププレート62の貫通穴62Hに挿入されかつヒータ61と係合して、トッププレート62をヒータ61に固定する。
【0053】
上述のように、キャップ部材80は、円筒状の側部80S及び当該側部80Sの一方の開口を閉塞する天蓋部80Lが一体的に形成された桶状の形状を有する。また、キャップ部材80は、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金からなる母材としての一体的に形成された側部80S及び天蓋部80Lの表面に陽極酸化処理によって形成されたアルマイト層80Aを有する。
【0054】
キャップ部材80のアルマイト層80Aは、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金を陽極酸化処理によって形成された陽極酸化層である。アルマイト層80Aは、トッププレート62と同様に、一体的に形成された側部80S及び天蓋部80Lを硫酸(HSO)又はシュウ酸(C)等の電解液に浸した後、側部80S及び天蓋部80Lを陽極とした電流を流して側部80S及び天蓋部80Lの表面を酸化させることによって得られる。
【0055】
また、上述のように、キャップ部材80は、互いに隣り合う面同士の各々の角部がC面加工又はR加工等の面取り加工が施されている。当該各々の角部が面取り加工されていることにより、キャップ部材80の表面のアルマイト層80Aを安定してかつ均一に形成することが可能となる。
【0056】
キャップ部材80は、下面80Bが固定具70のヘッド部70Hに対向する向きでトッププレート62の凹部62D内に収容される。キャップ部材80の下面80Bは、トッププレート62の凹部62Dの底部と接触している。すなわち、キャップ部材80は、トッププレート62の凹部62Dの内部において、側部80S及び天蓋部80Lに囲まれた収容空間CSで固定具70の露出部分を覆いかつ、固定具70の露出部分を隠蔽している。
【0057】
言い換えれば、キャップ部材80は、プラズマCVD装置100の真空容器10内で部品を固定しかつ少なくとも一部が真空容器10内に露出した露出部分を有する固定具70の露出部分であるヘッド部70Hを覆うキャップ部材であり、側部80S及び天蓋部80Lによって形成された収容空間CSに固定具70が収容される。また、言い換えれば、プラズマCVD装置100のキャップ部材80は、側部80S及び天蓋部80Lによって形成された収容空間CSに固定具70の露出部分であるヘッド部70Hが収容されるようにトッププレート62の凹部62D内に配されている。
【0058】
また、キャップ部材80は、キャップ部材80の上面80Tとトッププレート62の上面とが同一高さとなるように形成される。すなわち、キャップ部材80の下面80Bから上面80Tまでの高さと、トッププレート62の凹部62Dの底部からトッププレート62の上面までの高さとが同等の高さとなるように形成されている。言い換えれば、プラズマCVD装置100のキャップ部材80の上面80Tとトッププレート62の上面とが同一の面内に配されるように構成されている。
【0059】
固定具70には、本実施例のプラズマCVD装置100等の真空環境下で用いられる場合、一般的に、割れ又は欠けが生じにくく靭性の高いニッケル等の金属が用いられることが多い。また、セラミック等の材質からなるヒータ61及び表面にアルマイト層62Aが形成されたトッププレート62は、表面が絶縁されている。すなわち、金属製の固定具70は、電気的にフロート状態となっている。
【0060】
この固定具70が真空容器10内に露出していると、プラズマ生成時に固定具70が帯電(チャージアップ)を起こし、真空容器10内に生成されたプラズマが固定具70の露出部分で異常放電を起こす可能性がある。本実施例においては、トッププレート62の載置面の外縁に沿った領域、すなわちウェハW外周部において固定具70が露出していると、ウェハWの外周部の固定具70の露出部分で異常放電が発生し、ウェハWの成膜面内の膜厚の異常分布が発生する可能性がある。
【0061】
キャップ部材80は、この金属製の固定具70の露出部分を覆うように配されている。これにより、プラズマCVD装置100は、真空容器10内のプラズマ生成時に異常放電を抑制することができ、安定したプラズマを生成することが可能となる。
【0062】
また、トッププレート62及びキャップ部材80を双方ともにアルミニウム(Al)又はアルミニウムを含む合金からなることとしつつ、トッププレート62及びキャップ部材80の各々の表面に陽極酸化処理されたアルマイト層を形成している。これにより、プラズマ化した原料ガスのイオンがキャップ部材80に集中することなく、トッププレート62上で均一なプラズマを生成することが可能となる。
【0063】
また、キャップ部材80の上面は、トッププレート62の上面(ウェハ載置面)と略同等な高さとなるようにトッププレート62の凹部62D内に配されている。これにより、トッププレート62の上面上において、キャップ部材80とトッププレート62との段差による凹凸が小さくなり、凹凸のエッジ部での異常放電の発生を抑制することが可能となる。
【実施例0064】
図4は、本願の実施例2に係るキャップ部材83が凹部62D内に収まりかつ固定具70を覆っている状態を示す拡大斜視図である。また、図5は、本願の実施例2に係るキャップ部材83をトッププレート62の凹部62Dに配された際のキャップ部材83近傍の拡大断面図である。図4においては、凹部62D及び固定具70を一点鎖線で示している。図5において、キャップ部材83は、図4の5-5面に沿った断面を示している。
【0065】
キャップ部材83は、実施例1のキャップ部材80と基本的に同様の材質及び構成を有する。キャップ部材83は、下面83Bに複数の切欠き部83Hを有する点でキャップ部材80と異なる。以下においては、複数の切欠き部83Hを除く部分の構成は実施例1のキャップ部材80と同様であるため、説明を割愛する。
【0066】
切欠き部83Hは、例えば、下面83Bにおいて、側部83Sの内側面から外側面に至る複数の領域に半円柱形状に形成されている。言い換えれば、キャップ部材83の側部83Sの天蓋部83Lで閉塞された端面と反対の側の端面である下面83Bには、側部83Sの内側面から外側面に至る半円柱形状の切欠き部83Hが形成されている。
【0067】
また、切欠き部83Hは、例えば、キャップ部材83の下面83Bの外縁の中心点に対して対称となる領域に形成されている。本実施例2においては、キャップ部材83の下面83Bの外縁の中心点に対して90°の点対称となる領域に4の切欠き部83Hが形成されている。言い換えれば、切欠き部83Hは、側部83Sの下面83Bの外縁の中心点に対して対称となる位置に複数個形成されている。
【0068】
なお、切欠き部83Hの数は4に限定されない。具体的には、切欠き部83Hは、2以上の複数の切欠き部83Hがキャップ部材83の下面83Bに形成され、かつそれぞれが上面視においてキャップ部材83の中心点に対して点対称となる領域に形成されていればよい。
【0069】
また、図5に示すように、切欠き部83Hの内面にもアルマイト層83Aが形成されている。言い換えれば、キャップ部材83の表面には、陽極酸化されたアルマイト層83Aが形成されている。
【0070】
また、アルマイト層83Aの形成前において、切欠き部83Hの内面と、下面83B、側部83Sの内側面及び外側面とで形成される各々の角部は、実施例1と同様に、C面加工又はR加工等の面取り加工が施されている。これにより、キャップ部材83の切欠き部83Hの角部においても、アルマイト層83Aを安定してかつ均一に形成することが可能となる。
【0071】
キャップ部材83の切欠き部83Hによって、プラズマCVD装置100のメンテナンス後の真空排気装置20による真空脱気時に、キャップ部材83の収容空間CSからの気体の脱気が促進され、一気に勢いよく気体が脱気することが防止できる。キャップ部材83を用いることにより、メンテナンス後の真空排気装置20による真空脱気時において、真空容器内の大きく圧力が下がってから収容空間CSから勢いよく空気が外に排出されてキャップ部材83が跳ねることによる、キャップ部材83の抜け、外れ等の問題を防止しつつ真空容器10内を真空排気させることが可能である。
【0072】
すなわち、キャップ部材83によれば、メンテナンス後の真空脱気プロファイルを緩やかにする等工夫せずともキャップ部材83の外れの問題は生じない。従って、プラズマCVD装置100のメンテナンス後の真空脱気の速度を向上させることができ、メンテナンス後の製造(成膜)稼働までの時間を短時間化することが可能となる。なお、プラズマCVD装置100のメンテナンス後の製造(成膜)稼働時において、ウェハWは、予備真空室を介して真空容器10内に搬入出される。従って、真空容器10内には大きな真空度の変異は発生しないため、キャップ部材80の抜け、外れ等の問題は生じない。
【0073】
なお、切欠き部83Hの形状は、上記の半円柱形状の形状に限定されず、切欠き部83Hの角部が面取り加工されていれば多角柱状等のいずれの形状であってもよい。
【0074】
また、切欠き部83Hは、下面83Bに形成されることに限定されない。例えば、キャップ部材83の側部83Sの外側面から内側面貫通する小径のピンホールであってもよい。
【0075】
また、切欠き部83Hの大きさ(径)は、真空容器10内にプラズマを生成した際に、収容空間CS内にプラズマが侵入しない程度に十分に小さい方が好ましい。切欠き部83Hが、プラズマがキャップ部材83の収容空間CSに容易に侵入するような大きさを有する場合、収容空間CS内に収容された固定具70がチャージアップされて異常放電の要因となる可能性があるためである。切欠き部83Hの大きさ(径)は、真空脱気時に収容空間CS内の気体を促進できる大きさであればよい。
【0076】
このようなキャップ部材83を用いてトッププレート62の凹部62D内で金属製の固定具70を覆うことにより、実施例1と同様に、固定具70による異常放電を抑制し、成膜処理時にウェハWの成膜面内の膜厚の異常分布を抑制することが可能となる。
【実施例0077】
図6は、本願の実施例3に係るキャップ部材85がトッププレート62の凹部62Dに配された際のキャップ部材85近傍の拡大断面図である。図6に示す断面は、図3に示す断面と同様の面における断面である。
【0078】
キャップ部材85は、実施例1のキャップ部材80と基本的に同様の材質及び構成を有する。キャップ部材85は、下面85Bが粗化処理がなされた粗面となっている点でキャップ部材80と異なる。以下においては、粗面である下面85Bを除く部分の構成は実施例1のキャップ部材80と同様であるため、説明を割愛する。
【0079】
本実施例3においては、キャップ部材85の下面85Bの全面が粗化されている。言い換えれば、キャップ部材85の側部85Sの天蓋部85Lで閉塞された端面と反対の側の端面である下面85Bが粗化処理された粗面となっている。
【0080】
なお、キャップ部材85は、下面85Bの全面が粗化されてもよいし、例えば、下面85Bにおいて、側部85Sの内側面から外側面に至る、互いに離間した複数の帯状の領域が粗化されていてもよい。その場合、当該粗化されている領域は、キャップ部材85の中心点に対して点対称となる領域であってもよい。
【0081】
また、図6に示すように、下面85Bにもアルマイト層83Aが形成されている。
【0082】
また、アルマイト層85Aの形成前において、下面85Bと、側部85Sの内側面及び外側面とで形成される各々の角部は、実施例1と同様に、C面加工又はR加工等の面取り加工が施されている。これにより、キャップ部材85の下面85Bの角部においても、アルマイト層85Aを安定してかつ均一に形成することが可能となる。
【0083】
下面85Bの粗化は、陽極酸化処理を行う前にサンドブラスト処理による物理粗化処理又は化学薬品のエッチングによる化学粗化処理によって行う。その後、陽極酸化処理を行うことによって表面が粗化されたアルマイト層85Aを得ることができる。
【0084】
なお、上記の粗化処理は、アルマイト層85Aの形成前にキャップ部材85の表面を粗面に加工した後に陽極酸化処理を行うことが好ましい。陽極酸化処理は、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金の表面を陽極酸化させた後、アルマイト層の表面に形成される孔を塞ぐ封孔処理を行う。そのため、陽極酸化処理によってアルマイト層85Aを形成した後に粗化処理を行うと、形成したアルマイト層85Aの剥離又は欠けによって下地材である下面85Bの金属が露出する可能性があるためである。
【0085】
キャップ部材85の下面85Bによって、プラズマCVD装置100のメンテナンス後の真空排気装置20による真空脱気時に、キャップ部材85の収容空間CSからの気体の脱気が促進され、一気に勢いよく気体が脱気することが防止できる。キャップ部材85を用いることにより、メンテナンス後の真空排気装置20による真空脱気時において、真空容器内の大きく圧力が下がってから収容空間CSから勢いよく空気が外に排出されてキャップ部材85が跳ねることによる、キャップ部材85の抜け、外れ等の問題を防止しつつ真空容器10内を真空排気させることが可能である。
【0086】
すなわち、キャップ部材85によれば、メンテナンス後の真空脱気プロファイルを緩やかにする等工夫せずともキャップ部材85の外れの問題は生じない。従って、プラズマCVD装置100のメンテナンス後の真空脱気の速度を向上させることができ、メンテナンス後の製造(成膜)稼働までの時間を短時間化することが可能となる。
【0087】
また、下面85Bの表面粗さは、真空容器10内にプラズマを生成した際に、収容空間CS内にプラズマが侵入しない程度に小さい方が好ましい。下面85Bの粗さが、プラズマがキャップ部材85の収容空間CSに容易に侵入するような大きさを有する場合、収容空間CS内に収容された固定具70がチャージアップされて異常放電の要因となる可能性があるためである。
【0088】
また、下面85Bの表面粗さは、下面85Bのアルマイト層85Aが容易に剥離、欠けを生じない程度に小さい方が好ましい。下面85Bのアルマイト層85Aに剥離又は欠けが生じると、下地材である下面85Bの金属が露出する又は剥離したアルマイト層85Aが真空容器10内で異物として飛散し、ウェハWへの成膜処理時に不具合が生じる可能性があるためである。
【0089】
なお、粗化処理される面は、キャップ部材85の下面85Bのみに限定されない。例えば、側部85Sの下面85Bに沿った領域の一部に形成されていてもよい。
【0090】
粗化処理された面の粗面の表面粗さは、真空脱気時に収容空間CS内の気体を促進できる粗さであればよく、粗面の形成領域は、真空脱気時に収容空間CS内の気体を促進できる範囲であればよい。
【0091】
このようなキャップ部材85を用いてトッププレート62の凹部62D内で金属製の固定具70を覆うことにより、実施例1と同様に、固定具70による異常放電を抑制し、成膜処理時にウェハWの成膜面内の膜厚の異常分布を抑制することが可能となる。
【0092】
なお、上述の実施例1乃至3の各々は、一例に過ぎない。
【0093】
例えば、実施例2と実施例3とを組み合わせてもよい。具体的には、実施例2のキャップ部材83の下面83B、切欠き部83Hの内面又は側部83Sの外側面の一部等を粗面としてもよい。
【0094】
また、実施例1乃至3においては、キャップ部材80、83及び85の側部80S、83S、85Sがそれぞれ円筒状の形状を有する場合について説明した。しかし、各々の側部は円筒状の形状に限定されず、筒状に開口された多角柱の形状を有していてもよい。
【0095】
各々のキャップ部材80、83及び85は、部材筒状の側部の一方の端面が天蓋部によって閉塞されていればよい。また、各々の側部及びトッププレート62の凹部62Dは、それぞれが対応した形状を有し、各々のキャップ部材がトッププレート62の凹部62Dに収容できるように形成されていればよい。また、各々のキャップ部材は、筒状の側部と天蓋部とによって形成された収容空間CS内に固定具70の露出部分を収容可能なように形成されていればよい。
【0096】
また、実施例1乃至3においては、各々のキャップ部材の各々の収容空間CSの内面及び各々の下面を含む表面すべてにアルマイト層を形成する場合について説明した。しかし、各々のアルマイト層を形成する面はこれに限定されない。各々のキャップ部材は、真空容器10内で生成したプラズマが各々の収容空間CSに侵入しないようであれば、各々の収容空間CSの内面及び各々の下面に形成されてなくともよい。言い換えれば、各々のキャップ部材の各々のアルマイト層は、各々の側部の外側面、各々の側部の各々の天蓋部で閉塞された側の端面及び各々の天蓋部の各々の側部の閉塞された側の端面に沿った面である上面に形成されている。
【0097】
また、実施例1乃至3においては、各々のキャップ部材がトッププレート62を固定する金属製の固定具70を覆う場合について説明した。しかし、各々のキャップ部材が覆う固定具70は、トッププレート62に用いられる場合に限定されない。例えば、各々のキャップ部材は、真空排気装置20の連結部又はガス供給管31の固定部等に金属製の固定具70が用いられていた場合、これを覆うように設けられていてもよい。すなわち、固定具70とそれを覆う各々のキャップ部材は、真空容器10内のいずれの場所に配されていてもよい。
【0098】
また、実施例1乃至3においては、各々のキャップ部材がトッププレート62の凹部62Dに収容され、当該凹部62D内で固定具70の露出部分を収容空間CSに収容することで当該固定具70の露出部分を覆う場合について説明した。しかし、各々のキャップ部材の固定具70の露出部分を覆う方法はこれに限定されない。例えば、固定具70のヘッド部70Hと各々の側部の内側面が互いに係合する形状を有し、各々のキャップ部材が固定具70のヘッド部70Hと係合することで固定されるようになされていてもよい。
【0099】
また、実施例1乃至3においては、各々のキャップ部材がプラズマCVD装置100の真空容器10内で用いられる場合について説明した。しかし、各々のキャップ部材が用いられる装置はプラズマCVD装置に限定されない。例えば、プラズマ洗浄装置、プラズマエッチング装置又はプラズマスパッタ装置等のプラズマ処理装置の真空容器内で用いられていてもよい。各々のキャップ部材は、いずれの装置に用いられた場合においても、真空容器内に生成されたプラズマの安定、均一化をなすことができ、プラズマの異常放電を抑制することが可能となる。
【0100】
また、各々のキャップ部材は、電子ビーム描画装置又は電子顕微鏡等の電子ビームを利用した装置の真空容器内で用いられていてもよい。この場合においても、真空容器内の固定具のチャージアップを抑制し、真空容器内に射出した電子ビームの安定性を向上させることも可能となる。
【符号の説明】
【0101】
100 プラズマCVD装置
10 真空容器
20 真空排気装置
30 ガス供給装置
31 ガス供給管
40 高周波電源装置
41 電極
50 シャッタ
60 ステージ
61 ヒータ
62 トッププレート
63 リフトピン
70 固定具
80、83、85 キャップ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6