(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066750
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】液体吐出装置、成膜装置、電極製造装置および電極製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230509BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230509BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230509BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20230509BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230509BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20230509BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20230509BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230509BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/01 501
B41J2/01 401
B41J2/18
B05C11/10
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05D5/12 B
B05D3/00 D
B05D3/00 B
B05D3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177533
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 綾
(72)【発明者】
【氏名】木田 仁司
(72)【発明者】
【氏名】梶田 倫正
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
【テーマコード(参考)】
2C056
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
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4F042CB08
4F042CB10
4F042CB19
4F042CB20
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】吐出安定性に優れる液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体組成物を貯留する第1貯留部と、前記第1貯留部から供給される前記液体組成物を対象物に吐出する吐出部と、前記第1貯留部を挟んで前記吐出部の反対側に設けられ、前記第1貯留部から前記吐出部に供給される前記液体組成物にかける供給圧力を、前記吐出部による前記液体組成物の吐出周波数に基づいて変化させる第1圧力可変機構と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物を貯留する第1貯留部と、
前記第1貯留部から供給される前記液体組成物を対象物に吐出する吐出部と、
前記第1貯留部を挟んで前記吐出部の反対側に設けられ、前記第1貯留部から前記吐出部に供給される前記液体組成物にかける供給圧力を、前記吐出部による前記液体組成物の吐出周波数に基づいて変化させる第1圧力可変機構と、を有する液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体組成物は、固形成分を含有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記供給圧力は、少なくとも負圧を含む請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記第1圧力可変機構は、前記吐出周波数が高いほど、前記第1圧力可変機構により前記供給圧力を高くする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体組成物の前記供給圧力を生成する圧力生成機構と、
前記圧力生成機構により生成された前記供給圧力を調節する調節機構と、をさらに有し、
前記調節機構は、前記圧力生成機構と、前記第1貯留部と、の間に配置される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1圧力可変機構は、前記液体組成物の前記供給圧力を生成する圧力生成機構を含む請求項1から5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記吐出部と前記第1貯留部とを通る流路を前記液体組成物に循環させる第1循環機構を有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記第1貯留部と前記吐出部との間に設けられ、前記第1圧力可変機構により前記供給圧力を変化させる際の過渡的な圧力変動を低減する第1低減部材を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記供給圧力は、正圧と、負圧と、を含み、
前記供給圧力を正圧または負圧のどちらか一方に切り替える圧力切替機構を有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体組成物を貯留する第2貯留部と、
前記第2貯留部を挟んで前記吐出部とは反対側に設けられ、前記第2貯留部から前記吐出部に供給される前記液体組成物にかける前記供給圧力を、前記吐出部による前記液体組成物の前記吐出周波数に応じて変化させる第2圧力可変機構と、
前記第1貯留部から前記吐出部に前記液体組成物が供給される第1供給路と、前記第2貯留部から前記吐出部に前記液体組成物が供給される第2供給路と、を相互に切り替える供給路切替機構と、
前記第2圧力可変機構による前記供給圧力の変化と、前記供給路切替機構による切替と、を制御する制御部と、をさらに有し、
前記制御部は、
前記第1供給路から供給される前記液体組成物が第1吐出周波数により前記吐出部から吐出されている間に、前記第1吐出周波数とは異なる第2吐出周波数に応じて、前記第2供給路から前記吐出部へ供給される前記液体組成物の前記供給圧力を、前記第2圧力可変機構により予め変化させておき、
前記吐出周波数が前記第1吐出周波数から前記第2吐出周波数に変化する際に、前記吐出部に前記液体組成物が供給される供給路を、前記供給路切替機構によって前記第1供給路から前記第2供給路に切り替える請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記供給路切替機構と前記吐出部との間に設けられ、前記供給路切替機構により前記第1供給路から前記第2供給路に切り替える際の過渡的な圧力変動を低減する第2低減部材を有する請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記吐出部と前記第1貯留部とを通る第1循環路を前記液体組成物に循環させる第1循環機構と、
前記吐出部と前記第2貯留部とを通る第2循環路を前記液体組成物に循環させる第2循環機構と、
前記第1循環路の経路を変更する第1変更機構と、
前記第2循環路の経路を変更する第2変更機構と、を有し、
前記制御部は、前記供給路切替機構による切替に応じて、前記第1変更機構により前記第1循環路の経路を変更させると共に、前記第2変更機構により前記第2循環路の経路を変更させる請求項10または請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の液体吐出装置を有し、
前記液体吐出装置により吐出された前記液体組成物により、前記対象物に機能膜を成膜する成膜装置。
【請求項14】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の液体吐出装置を有し、
前記対象物に電極材料層を形成することにより電極を製造する電極製造装置。
【請求項15】
電極製造装置による電極製造方法であって、前記電極製造装置が、
貯留部により、液体組成物を貯留し、
吐出部により、前記貯留部から供給される前記液体組成物を対象物に吐出し、
前記貯留部を挟んで前記吐出部の反対側に設けられた圧力可変機構により、前記貯留部から前記吐出部に供給される前記液体組成物にかける供給圧力を、前記吐出部による前記液体組成物の吐出周波数に応じて変化させる電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、成膜装置、電極製造装置および電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出部に供給される液体組成物を対象物に吐出する液体吐出装置が知られている。液体吐出装置は、画像形成や成膜等の様々な用途に使用される。
【0003】
液体吐出装置として、吐出部への液体組成物の供給遅れに伴って吐出が不安定になることを抑制するために、吐出部へ液体組成物を供給する供給圧力源と、吐出部と、の間に設けられた制御機構により、吐出周波数に応じて供給圧力を変化させる構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出装置では、優れた吐出安定性が求められる。
【0005】
本発明は、吐出安定性に優れる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体組成物を貯留する第1貯留部と、前記第1貯留部から供給される前記液体組成物を対象物に吐出する吐出部と、前記第1貯留部を挟んで前記吐出部の反対側に設けられ、前記第1貯留部から前記吐出部に供給される前記液体組成物にかける供給圧力を、前記吐出部による前記液体組成物の吐出周波数に基づいて変化させる第1圧力可変機構と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出安定性に優れる液体吐出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る液体吐出装置の構成を例示する図である。
【
図2】第1実施形態に係る制御部の機能構成を例示する図である。
【
図3】第1実施形態に係る液体吐出装置の動作を例示するフロー図である。
【
図4】吐出周波数に応じた供給圧力の変化を例示する図である。
【
図5】吐出周波数と供給圧力との対応情報を説明する図である。
【
図6】第2実施形態に係る液体吐出装置の構成を例示する図である。
【
図7】第3実施形態に係る液体吐出装置の構成を例示する図である。
【
図8】第3実施形態に係る制御部の機能構成を例示する図である。
【
図9】第3実施形態に係る液体吐出装置の動作を例示するフロー図である。
【
図10】第4実施形態に係る液体吐出装置の構成を例示する図である。
【
図11】第4実施形態に係る制御部の機能構成を例示する図である。
【
図12】第4実施形態に係る第1および第2循環路を例示する第1図である。
【
図13】第4実施形態に係る第1および第2循環路を例示する第2図である。
【
図14】第4実施形態に係る液体吐出装置の動作を例示するフロー図である。
【
図15】第5実施形態に係る電極製造装置の構成を例示する図である。
【
図16】第5実施形態に係る吐出部を吐出方向側から視た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面において、同一の構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための液体吐出装置、成膜装置、電極製造装置および電極製造方法を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
[第1実施形態]
<液体吐出装置100の構成例>
図1は、第1実施形態に係る液体吐出装置100の構成の一例を示す図である。液体吐出装置100は、ヘッド1と、第1タンク2と、第1圧力可変機構10と、を有する。
【0012】
液体吐出装置100は、第1タンク2から液体組成物Qをヘッド1に供給し、ヘッド1から対象物Tに液体組成物Qを例えば液滴Rとして吐出する装置である。液体吐出装置100は、吐出された液体組成物Qによって対象物Tにおいて文字、図形等の有意な画像を形成して可視化するものの他、それ自体意味を持たないパターンや機能層といった膜等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。なお、実施形態では、「ヘッド1から液滴Rを吐出する」という場合があるが、液滴Rは液体組成物Qが滴化したものであるため、「ヘッド1から液体組成物Qを吐出すること」に含まれる。
【0013】
対象物Tは、ヘッド1から吐出された液体組成物Qが少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体組成物Qが付着する全てのものが含まれる。対象物Tの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体組成物Qが一時的でも付着可能であればよい。
【0014】
液体組成物Qは、画像または膜等の目的とする機能を実現する液体である。液体組成物Qは、ヘッド1が吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が100[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料、顔料、活物質等の電極材料、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等である。これらは例えば、印刷用液体、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターン等の各種デバイスの形成用液等の用途で用いることができる。
【0015】
第1タンク2は、液体組成物Qを貯留する第1貯留部の一例であり、貯留部の一例である。第1タンク2の材質に特段の制限はないが、金属または樹脂等を適用できる。
【0016】
ヘッド1は、第1タンク2から供給される液体組成物Qを対象物Tに吐出する吐出部の一例である。ヘッド1は、第1タンク2の液面と水平か、やや上方に配置されることが好ましい。第1タンク2からヘッド1までの圧力は制御されるため、制御を停止した際に第1タンク2とヘッド1の圧力差を小さくすることで、液体組成物Qがヘッド1から漏れ出すことと、液体組成物Qがヘッド1から第1タンク2へ逆流することを防止できる。
【0017】
ヘッド1において液体組成物Qに刺激を印加して液体組成物Qを吐出させる手段は、目的に応じて適宜選択でき、例えば、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライト等を使用できる。具体的には、液体組成物Qを吐出させる手段は、圧電素子等の圧電アクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータ等である。
【0018】
上記の中でも、特にヘッド1内において液体組成物Qが流れる流路内にある圧力室(液室等とも称する)と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加するものが好ましい。このヘッド1は、電圧の印加により圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小することで圧力室中の液体組成物Qを加圧し、ヘッド1に設けられたノズルから液体組成物Qを吐出する。本実施形態では、ヘッド1は複数のノズルを備え、複数のノズルから選択的に液体組成物Qを吐出する。但し、ノズル数に特段の制限はなく、ヘッド1は1つのノズルを備え、1つのノズルから液体組成物Qを吐出するものであってもよい。
【0019】
ヘッド1は、ヘッドユニットを備えてもよい。ヘッドユニットとは、ヘッド1からの液体組成物Qの吐出に関連する機能部品および機構の集合体である。ヘッドユニットは、供給機構、維持回復機構、ヘッド1の移動機構の構成の少なくとも一つをヘッド1と組み合わせたもの等を含む。
【0020】
第1圧力可変機構10は、第1タンク2を挟んでヘッド1の反対側に設けられ、第1タンク2からヘッド1に供給される液体組成物Qにかける供給圧力Pを、ヘッド1による液体組成物Qの吐出周波数に応じて変化させる圧力可変機構の一例である。吐出周波数は、ヘッド1により単位時間当たりに液体組成物Qが吐出される回数を意味する。本実施形態では、第1圧力可変機構10は、空気を用いて第1タンク2内の液体組成物Qにかける圧力を変化させることにより、供給圧力Pを変化させる。
【0021】
液体組成物Qは、ヘッド1から液体組成物Qが吐出され、ヘッド1内の液体組成物Qが減少することに応じて、ヘッド1内の液体組成物Qを補給するように第1タンク2からヘッド1に供給される。このような構成では、例えば吐出周波数が高くなると、ヘッド1内の液体組成物Qが減少する速さが速くなるため、ヘッド1への液体組成物Qの供給が遅れる場合がある。
【0022】
ヘッド1への液体組成物Qの供給が遅れると、ヘッド1内に空気が混入し、ヘッド1内の液体組成物Qに、吐出のための圧力が適切に伝達されなくなる。その結果、ヘッド1から液滴Rが吐出されなかったり、吐出された液滴Rの体積が小さくなったり、ヘッド1から吐出される液滴Rの吐出速度が遅くなったり、液滴Rの吐出方向が所望の方向に対してずれたりして吐出不良が発生する。特に、液体組成物Qが固形成分を含有し、この固形成分の比重が液体組成物Qにおける固形成分以外の成分の比重よりも大きい場合等に、第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qが送液されにくく、吐出不良が発生しやすい。
【0023】
液体吐出装置100は、第1圧力可変機構10によって、液体組成物Qの吐出周波数に応じて供給圧力Pを変化させることにより、第1タンク2からヘッド1への液体組成物Qの供給速度を変化させる。これにより、ヘッド1への液体組成物Qの供給が遅れることを抑制し、吐出不良の発生を抑制する。
【0024】
また本実施形態では、供給圧力Pは負圧を含む。負圧は、ヘッド1から第1タンク2側に液体組成物Qを吸引する方向に作用する圧力である。供給圧力Pを負圧にすることにより、ヘッド1のノズルから液体組成物Qが漏れ出す、例えば液垂れすることを防止しつつ、ヘッド1から液体組成物Qを吐出できる。
【0025】
供給圧力Pが負圧であっても、ヘッド1からの液体組成物Qの吐出に伴ってヘッド1内の液体組成物Qが減少するに従い、液体組成物Qは、ヘッド1内の液体組成物Qを補給するように第1タンク2からヘッド1に供給される。
【0026】
第1圧力可変機構10は、第1タンク2内の液体組成物Qにかける負圧を変化させることにより供給圧力Pを変化させることができる。例えば、第1圧力可変機構10は、第1タンク2からヘッド1への液体組成物Qの供給が遅れる場合には、第1タンク2内の液体組成物Qにかける負圧を小さくすることにより、第1タンク2からヘッド1への液体組成物Qの供給速度を速くすることができる。
【0027】
また第1圧力可変機構10は、第1タンク2内の液体組成物Qに正圧をかける場合には、正圧を大きくすることにより、第1タンク2からヘッド1への液体組成物Qの供給速度を速くすることができる。
【0028】
第1圧力可変機構10は、第1減圧弁3と、第1加圧ポンプ4と、第1真空ポンプ5と、第1圧力調節弁6と、第1圧力切替機構7と、第1圧力計8と、を有する。第1加圧ポンプ4および第1減圧弁3は第1正圧機構11を構成する。第1真空ポンプ5および第1圧力調節弁6は第1負圧機構12を構成する。
【0029】
第1圧力可変機構10は、第1圧力切替機構7を用いて、液体組成物Qが流通可能に第1タンク2に接続にする構成部を、第1正圧機構11または第1負圧機構12のどちらか一方に切り替えることができる。
【0030】
第1加圧ポンプ4は、液体組成物Qの供給圧力Pを生成する圧力生成機構の一例である。第1加圧ポンプ4は、第1タンク2に貯留されている液体組成物Qを送り出す正圧の供給圧力Pを生成する。第1加圧ポンプ4は、正圧の供給圧力Pを生成可能であれば、その構成に特段の制限はなく、ピストンポンプまたはロータリポンプ等の各種の加圧ポンプを適用可能である。
【0031】
第1減圧弁3は、第1加圧ポンプ4により生成された供給圧力Pを調節する調節機構の一例である。第1減圧弁3は、第1加圧ポンプ4と第1タンク2との間に配置される。
【0032】
第1減圧弁3は、第1加圧ポンプ4により生成された正圧の供給圧力Pを調節する弁体である。第1減圧弁3は、供給圧力Pを調節可能であれば、その構成に特段の制限はない。本実施形態では、第1減圧弁3は、制御部20からの制御信号に応じて弁体の開閉状態が制御される電磁弁である。
【0033】
第1真空ポンプ5は、液体組成物Qの供給圧力Pを生成する圧力生成機構の一例である。第1真空ポンプ5は、第1タンク2に貯留されている液体組成物Qを第1真空ポンプ5側に吸引する負圧の供給圧力Pを生成する。第1真空ポンプ5は、負圧の供給圧力Pを生成可能であれば、その構成に特段の制限はなく、ピストンポンプまたはロータリポンプ等の各種の真空ポンプを適用可能である。
【0034】
第1圧力調節弁6は、第1真空ポンプ5により生成された供給圧力Pを調節する調節機構の一例である。第1圧力調節弁6は、第1真空ポンプ5と、第1タンク2と、の間に配置される。第1圧力調節弁6は、負圧の供給圧力Pの大きさを調節するための弁体である。第1圧力調節弁6は、圧力を調節可能であれば、その構成に特段の制限はない。本実施形態では、第1圧力調節弁6は、制御部20からの制御信号に応じて弁体の開閉状態が制御される電磁弁である。
【0035】
第1圧力切替機構7は、供給圧力Pを正圧または負圧のどちらか一方に切り替える圧力切替機構の一例である。第1圧力切替機構7は、流体の出入口を三方向に有し、流体が流れる方向を切替可能な弁体である三方弁等である。
【0036】
液体吐出装置100は、第1圧力切替機構7による切替により、第1正圧機構11と第1タンク2との間を液体組成物Qが流通可能な状態、または第1負圧機構12と第1タンク2との間を液体組成物Qが流通可能な状態のどちらか一方の状態にすることができる。第1圧力切替機構7は、液体組成物Qが流れる方向を切替可能であれば、その構成に特段の制限はない。本実施形態では、第1圧力切替機構7は、制御部20からの制御信号に応じて切替動作が制御される電磁弁である。
【0037】
第1圧力計8は、第1圧力可変機構10から第1タンク2への供給圧力Pを検出し、制御部20に出力するセンサである。第1圧力計8による圧力検出方式には特段の制限はなく、液柱方式、重錘ピストン方式または弾性素子方式等の各種方式のものを適用可能である。
【0038】
第1圧力バッファ9は、第1タンク2とヘッド1との間に設けられ、第1圧力可変機構10によって供給圧力Pを変化させる際の過渡的な圧力変動量を低減する第1低減部材の一例である。
【0039】
第1圧力バッファ9は、例えば液体組成物Qが流れる送液チューブ等からなる流路のうち、流路の断面積を部分的に大きくすることによって液体組成物Qの流量が部分的に多くなる部位を含んで構成される。但し、この構成に限定されるものではない。液体吐出装置100は、第1圧力バッファ9によって、第1圧力切替機構7による切替時における供給圧力Pの過渡的な変動を低減できる。
【0040】
制御部20は、液体吐出装置100の動作を制御する。制御部20は、ヘッド1等の制御対象と有線または無線により電気的に接続している。制御部20は、配置位置に特段の制限はなく、遠隔配置されてもよい。
【0041】
<制御部20の機能構成例>
図2は、液体吐出装置100が有する制御部20の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部20は、液体吐出装置100全体の動作を制御する。
【0042】
図2に示すように、制御部20は、入出力部21と、周波数決定部22と、圧力決定部23と、格納部24と、吐出制御部25と、圧力切替制御部26と、圧力制御部27と、を有する。なお、制御部20が備える機能の少なくとも一部を、ヘッド1等の制御部20以外の構成部が備えてもよい。
【0043】
制御部20は、上記各構成部のうち、入出力部21、周波数決定部22、圧力決定部23、吐出制御部25、圧力切替制御部26および圧力制御部27の各機能を電気回路により実現する他、これらの機能の一部をソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)によって実現することもできる。制御部20は、複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能を実現してもよい。また制御部20は、格納部24の機能を、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の記憶装置によって実現できる。
【0044】
入出力部21は、制御部20と外部機器との入出力を制御するインターフェース機能を有する。本実施形態では、入出力部21は、クライアントPC(Personal Computer)等の外部装置、あるいは印刷条件データImを予め格納した格納部24等から吐印刷条件データImを入力する。印刷条件データImは、対象物Tに画像やパターンを形成するための元となる情報である。印刷条件データImは、複数の画素を含み、吐出の有無あるいは吐出する液滴Rの体積等の情報を画素ごとに有する画像データであってもよく、吐出の有無や液滴Rの体積等を例えばテーブル状等に示したようなデータであってもよい。
【0045】
周波数決定部22は、入出力部21を介して入力した印刷条件データImに基づき、ヘッド1による液滴Rの吐出周波数fを決定する。例えば周波数決定部22は、印刷条件データImにおける高解像度領域では吐出周波数fを高く決定し、低解像度領域では吐出周波数fを低く決定する。また、液体組成物Qにより形成される膜を高密度とする領域では吐出周波数fを高く決定し、低密度とする領域では吐出周波数を低く決定してもよい。このように決定された吐出周波数fにより液滴Rを吐出することによって、液体吐出装置100は、印刷条件データImにおける領域ごとでの解像度や膜密度の相違によらず、略一定速度で対象物Tに画像等を形成できる。なお、周波数決定部22は、印刷条件データImに基づき予め定められた吐出周波数fの情報を外部装置または格納部24等から取得することにより、吐出周波数fを決定してもよい。
【0046】
圧力決定部23は、周波数決定部22により決定された吐出周波数fに基づき、格納部24に格納された対応情報241を参照して、第1圧力可変機構10による供給圧力Pを決定する。格納部24に格納された対応情報241は、吐出周波数fと供給圧力Pとの対応関係を示す情報、または吐出周波数fと供給圧力Pとの対応関係に関連する情報等である。対応情報241はテーブルまたは数式等の情報を含むが、これらに限らず他の形式の情報を含んでもよい。
【0047】
本実施形態では、吐出周波数fと供給圧力Pとの対応情報241は、液体組成物Qに対する液体吐出装置100内の流路抵抗および液体組成物Qの物性等に応じて異なる。
【0048】
例えば、液体組成物Qの粘度が高かったり、流路抵抗が大きかったりすると、液体吐出装置100内の流路を液体組成物Qが流れにくくなる。このため、吐出周波数fが高くなると、ヘッド1への液体組成物Qの補給が追いつかないことにより、ヘッド1内に空気が混入して吐出不良が生じる場合がある。
【0049】
従って、液体組成物Qの粘度が高い場合または流路抵抗が大きい場合には、液体組成物Qの粘度が低い場合または流路抵抗が小さい場合と比較して、吐出周波数fに応じた供給圧力Pを大きくする必要がある。例えば、吐出周波数fと供給圧力Pとが略比例関係にある場合には、この略比例関係における比例係数を大きくする必要がある。このことから、格納部24は、吐出周波数fと供給圧力Pとの対応情報241として、液体組成物Qに対する液体吐出装置100内の流路抵抗および液体組成物Qの物性等に応じて異なる複数の対応情報241を格納できる。圧力決定部23は、液体組成物Qに対する液体吐出装置100内の流路抵抗および液体組成物Qの物性等に応じて異なる複数の対応情報241を参照できる。
【0050】
吐出制御部25は、入出力部21を介して入力した印刷条件データImおよび吐出周波数fに基づいて、ヘッド1による液体組成物Qの吐出を制御する。本実施形態では、吐出制御部25は、予め定められた電圧波形を有する駆動電圧をヘッド1に印加することにより、ヘッド1から液滴Rを吐出させる。
【0051】
圧力切替制御部26は、第1圧力可変機構10の第1圧力切替機構7による切替を制御する。例えば圧力切替制御部26は、圧力決定部23により決定された供給圧力P等に基づき、第1圧力切替機構7による切替を制御できる。
【0052】
圧力制御部27は、第1圧力調節弁6および第1減圧弁3のそれぞれによる調節を制御する。例えば圧力制御部27は、圧力決定部23により決定された供給圧力P等に基づき、第1圧力調節弁6および第1減圧弁3のそれぞれによる調節を制御できる。
【0053】
<液体吐出装置100の動作>
図1および
図2を参照して、液体吐出装置100の動作のうち、ヘッド1へ液体組成物Qの充填する動作、およびヘッド1から液体組成物Qの液滴Rを吐出する動作を説明する。
【0054】
液体吐出装置100は、ヘッド1に液体組成物Qを充填する際には、圧力切替制御部26により第1圧力切替機構7を切り替え、第1正圧機構11と第1タンク2との間を液体組成物Qが流通可能な状態にする。その後、液体吐出装置100は、圧力制御部27により第1減圧弁3による調節を制御することによって、正圧の供給圧力Pを第1タンク2に供給し、第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qを送液して、ヘッド1に液体組成物Qを充填する。
【0055】
液体吐出装置100は、ヘッド1から液体組成物Qの液滴Rを吐出する前には、圧力切替制御部26により第1圧力切替機構7を切り替え、第1負圧機構12と第1タンク2との間を液体組成物Qが流通可能な状態にする。その後、液体吐出装置100は、圧力制御部27により第1圧力調節弁6による調節を制御することによって、第1負圧機構12と第1タンク2との間の流路内を減圧し、ヘッド1および第1タンク2内の液体組成物Qに負圧がかかる状態にする。但し、負圧状態では液体組成物Qの供給が遅れる場合等、供給圧力Pとして正圧が必要になる場合には、液体吐出装置100は、圧力切替制御部26により第1圧力切替機構7を切り替え、第1正圧機構11と第1タンク2との間を液体組成物Qが流通可能な状態にする。
【0056】
液体吐出装置100は、ヘッド1から液体組成物Qの液滴Rを吐出する際には、周波数決定部22により決定される吐出周波数fに応じて、圧力制御部27により第1負圧機構12または第1正圧機構11と、第1タンク2と、の間の流路内の圧力を変化させて供給圧力Pを制御する。液体吐出装置100は、ヘッド1および第1タンク2内の液体組成物Qに所望の供給圧力Pをかけた状態において、吐出制御部25によりヘッド1に駆動電圧を印加し、ヘッド1から液滴Rを吐出する。
【0057】
図3は、液体吐出装置100による動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図3では、液体組成物Qが第1正圧機構11と第1タンク2との間を流通可能な状態を「第1正圧機構側を開」と表し、液体組成物Qが第1負圧機構12と第1タンク2との間を流通可能な状態を「第1負圧機構側を開」と表している。
【0058】
液体吐出装置100は、液体吐出装置100への印刷条件データImの入力、あるいは液体吐出装置100の操作部を介した画像形成開始の操作入力に応じて
図3の動作を開始する。
【0059】
まず、ステップS31において、液体吐出装置100は、制御部20により、液体組成物Qをヘッド1に充填するか否かを判定する。例えば制御部20は、ヘッド1における残量センサの出力結果等に応じて液体組成物Qを充填するか否かを判定できる。
【0060】
ステップS31において、充填しないと判定された場合には(ステップS31、No)、液体吐出装置100は、動作をステップS34に移行する。一方、充填すると判定された場合には(ステップS31、Yes)、ステップS32において、液体吐出装置100は、圧力切替制御部26により第1圧力切替機構7を切り替え、第1正圧機構11側を開とする。
【0061】
続いて、ステップS33において、液体吐出装置100は、圧力制御部27により第1減圧弁3による調節を制御することによって、正圧の供給圧力Pを第1タンク2に供給し、第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qを送液して、ヘッド1に液体組成物Qを充填する。
【0062】
続いて、ステップS34において、液体吐出装置100は、圧力切替制御部26により第1圧力切替機構7を切り替え、第1負圧機構12側を開とする。
【0063】
続いて、ステップS35において、液体吐出装置100は、圧力制御部27により第1圧力調節弁6による調節を制御することによって、第1負圧機構12と第1タンク2との間の流路内を減圧し、第1タンク2内およびヘッド1内の液体組成物Qに負圧がかかる状態にする。
【0064】
続いて、ステップS36において、液体吐出装置100は、吐出制御部25により、ヘッド1に駆動電圧を印加し、ヘッド1から液滴Rを吐出開始させる。
【0065】
続いて、ステップS37において、液体吐出装置100は、周波数決定部22により、入出力部21を介して入力した印刷条件データImに基づき、ヘッド1による液滴Rの吐出周波数fを決定する。
【0066】
続いて、ステップS38において、液体吐出装置100は、圧力決定部23により、周波数決定部22によって決定された吐出周波数fに基づき、格納部24に格納された対応情報241を参照して、第1圧力可変機構10による供給圧力Pを決定する。
【0067】
続いて、ステップS39において、液体吐出装置100は、制御部20により、第1圧力計8によって検出されたその時点における第1タンク2への供給圧力Pが不足するか否かを判定する。
【0068】
ステップS39において、不足しないと判定された場合には(ステップS39、No)、液体吐出装置100は、ステップS45に動作を移行する。一方、不足すると判定された場合には(ステップS39、Yes)、ステップS40において、液体吐出装置100は、圧力制御部27を介して第1圧力調節弁6により負圧が小さくなるように調節し、第1タンク2への供給圧力Pが、圧力決定部23により決定された供給圧力Pと略等しくなるようにする。
【0069】
続いて、ステップS41において、液体吐出装置100は、制御部20により、第1圧力計8によって検出されたその時点における第1タンク2への供給圧力Pが、圧力決定部23により決定された供給圧力Pに対して不足するか否かを判定する。
【0070】
ステップS41において、不足しないと判定された場合には(ステップS41、No)、液体吐出装置100は、ステップS45に動作を移行する。一方、不足すると判定された場合には(ステップS41、Yes)、ステップS42において、液体吐出装置100は、制御部20により、第1圧力調節弁6により負圧を調節できるか否かを判定する。例えば制御部20は、第1圧力調節弁6による負圧を小さくするための調節が限界に達しているか否かを検知することにより、負圧を調節できるか否かを判定できる。
【0071】
ステップS42において、負圧を調節できると判定された場合には(ステップS42、Yes)、液体吐出装置100は、ステップS40以降の動作を再度行う。一方、負圧を調節できないと判定された場合には(ステップS42、No)、ステップS43において、液体吐出装置100は、圧力切替制御部26により第1圧力切替機構7を切り替え、第1正圧機構11側を開とする。
【0072】
続いて、ステップS44において、液体吐出装置100は、圧力制御部27を介して第1減圧弁3により正圧が大きくなるように調節し、第1タンク2への供給圧力Pが、圧力決定部23により決定された供給圧力Pと略等しくなるようにする。
【0073】
続いて、ステップS45において、液体吐出装置100は、制御部20により、画像形成を終了するか否かを判定する。例えば制御部20は、印刷条件データImに含まれる全ての画素に応じた液体組成物Qの吐出を完了したか否か、あるいは液体吐出装置100の操作部を介した画像形成終了の操作入力に応じて、画像形成を終了するか否かを判定できる。
【0074】
ステップS45において、終了すると判定された場合には(ステップS45、Yes)、液体吐出装置100は動作を終了する。一方、終了しないと判定された場合には(ステップS45、No)、液体吐出装置100は、ステップS31以降の動作を再度行う。
【0075】
以上のようにして、液体吐出装置100は、対象物Tに画像を形成できる。なお、
図3では、吐出周波数fが高くなって供給圧力Pが不足する場合における動作を例示したが、吐出周波数fが低くなって供給圧力Pが超過する場合にも、
図3の動作を適用可能である。但し、供給圧力Pが超過する場合には、液体吐出装置100は、ステップS39およびステップS41において、第1圧力計8によって検出されたその時点における第1タンク2への供給圧力Pが、圧力決定部23により決定された供給圧力Pに対して超過するか否かを判定する。そして、超過する場合には、ステップS40において負圧が大きくなるように調節し、あるいはステップS44において正圧が小さくなるように調節する。
【0076】
<吐出周波数fと供給圧力Pとの関係例>
図4および
図5を参照して、吐出周波数fと供給圧力Pとの関係について説明する。
図4は、吐出周波数fに応じた供給圧力Pの変化を例示する図である。
図5は、吐出周波数fと供給圧力Pとの対応情報241を説明する図である。
【0077】
図4および
図5において、横軸は吐出周波数f[kHz]を表し、縦軸は供給圧力P[kPa]を表している。なお、
図4における供給圧力Pは、第1タンク2に貯留された液体組成物Qにかかる圧力を意味し、ヘッド1内の液体組成物Qにかかる圧力を意味するものではない。
【0078】
図4は、供給圧力Pを、-0.10[kPa]、-0.70[kPa]および-1.00[kPa]の3通りに設定した場合のそれぞれにおいて、吐出周波数fを変化させながら供給圧力Pを実測した結果を示している。
図4の例では、吐出周波数fが低い状態から高い状態へ、吐出不良が発生するまで吐出周波数fを変化させた。
【0079】
実線のグラフ71は、供給圧力Pが-0.10[kPa]の場合を示し、破線のグラフ72は、供給圧力Pが-0.70[kPa]の場合を示し、一点鎖線のグラフ73は、供給圧力Pが-1.00[kPa]の場合を示している。
【0080】
図4において、-0.10[kPa]、-0.70[kPa]および-1.00[kPa]のいずれの供給圧力Pにおいても、吐出周波数fを高くするに従って、ヘッド1内の液体組成物Qが減少する速さが速くなり、第1タンク2にかかる供給圧力実測値が低下した。そして、供給圧力Pが-1.0[kPa]の場合には、吐出周波数fを略13.0[kHz]としたときに吐出不良が発生した。供給圧力Pが-0.70[kPa]の場合には、吐出周波数fが略15.0[kHz]となった時に吐出不良が発生した。供給圧力Pが-0.10[kPa]の場合には、吐出周波数fが略18.0[kHz]となった時に吐出不良が発生した。
【0081】
供給圧力Pが-0.10[kPa]、-0.70[kPa]および-1.00[kPa]のそれぞれである場合に、吐出不良が生じた時の吐出周波数fをプロットすると、
図5のようになる。
【0082】
図5において、プロット81は供給圧力Pが-0.10[kHz]の場合(
図4のグラフ71に対応)、プロット82は供給圧力Pが-0.70[kHz]の場合(
図4のグラフ72に対応)、プロット83は供給圧力Pが-1.0[kHz]の場合(
図4のグラフ73に対応)である。
【0083】
図5において、破線で示した近似直線84は、プロット81、82および83を直線近似した近似直線である。
図5に示すように、供給圧力Pとヘッド1に吐出不良が発生した吐出周波数fとの間には相関があり、両者は略比例することが分かった。
【0084】
本実施形態では、所定の供給圧力Pにより第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qを供給している際に、吐出不良が発生する吐出周波数fになった場合に、液体組成物Qを供給しやすくなるように供給圧力Pを変化させる。例えば負圧を供給している場合には負圧が小さく(弱く)なるように供給圧力Pを変化させ、正圧を供給している場合には正圧が大きく(強く)なるように、供給圧力Pを変化させる。具体的には、例えば供給圧力-1.0kPaで第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qを供給しているときに、吐出不良が生じる吐出周波数となった場合に、供給圧力を-1.0kPaから-0.8kPaに変化させる。本実施形態では、この「供給しやすくなる供給圧力」と、吐出不良が発生する吐出周波数fと、を対応付けて対応情報241として予め定めておき、液体吐出装置100は、吐出不良が発生する吐出周波数fになった場合に、予め定めた「供給しやすくなる供給圧力」に供給圧力Pを変化させる。
【0085】
格納部24は、対応情報241として、複数の吐出周波数fの値と、吐出周波数fと対をなす複数の供給圧力Pの値と、を対応付けたテーブル、または近似直線84の近似直線を表す数式等を格納できる。圧力決定部23は、周波数決定部22により決定された吐出周波数fに基づき、格納部24に格納されたテーブルまたは数式等を参照して、供給圧力Pを決定できる。なお、
図5に例示した対応情報241は一例であり、対応情報241は、液体組成物Qに対する液体吐出装置100内の流路抵抗および液体組成物Qの物性等に応じて異なるものとなる。格納部24は、液体組成物Qに対する液体吐出装置100内の流路抵抗および液体組成物Qの物性等に応じて異なる複数の対応情報241を格納できる。
【0086】
<液体吐出装置100の作用効果>
液体吐出装置100の作用効果について説明する。
【0087】
液体吐出装置では、例えばヘッドによる液体組成物の吐出周波数が高くなると、吐出部内の液体組成物が減少する速さが速くなるため、ヘッドへの液体組成物の供給が遅れ、吐出不良が発生する場合がある。
【0088】
上記の吐出不良を抑制するために、例えば、ヘッド1等の吐出部へ液体組成物を供給する供給圧力源と、吐出部と、の間に設けられた制御機構により、吐出周波数に応じて供給圧力を変化させることも考えられる。しかしながら、このようにすると、供給圧力源と吐出部との間に制御機構を配置する分、供給圧力源と吐出部との間の距離が長くなる。この結果、吐出周波数が高くなった場合等に、ヘッドへの液体組成物Qの供給が遅れやすくなり、吐出不良が発生しやすくなる。
特に、液体組成物が固形成分を含有し、この固形成分の比重が液体組成物における固形成分以外の成分の比重よりも大きいと、供給圧力源と吐出部との間における液体組成物の流路に固形成分が沈降または凝集しやすい。固形成分には、例えば金属粒子等が挙げられる。固形成分が沈降または凝集により液体組成物Qの流路の少なくとも一部が閉塞すると、液体組成物Qの吐出不良が発生しやすくなる。
【0089】
本実施形態に係る液体吐出装置100は、液体組成物Qを貯留する第1タンク2(貯留部)と、第1タンク2から供給される液体組成物Qを対象物Tに吐出するヘッド1(吐出部)と、を有する。また液体吐出装置100は、第1タンク2を挟んでヘッド1の反対側に設けられ、第1タンク2からヘッド1に供給される液体組成物Qにかける供給圧力Pを、ヘッド1による液体組成物Qの吐出周波数fに応じて変化させる第1圧力可変機構10(圧力可変機構)を有する。
【0090】
液体吐出装置100は、第1圧力可変機構10によって、液体組成物Qの吐出周波数に応じて供給圧力Pを変化させることにより、第1タンク2からヘッド1への液体組成物Qの供給速度を変化させる。また第1圧力可変機構10は、第1タンク2を挟んでヘッド1の反対側に設けられているため、供給圧力源と吐出部との間に制御機構を配置する構成と比較して、第1タンク2とヘッド1との間の距離が短くすることができる。このため、液体吐出装置100は、液体組成物Qの吐出周波数fが高くなった場合等においても、ヘッド1への液体組成物Qの供給が遅れることを抑制し、吐出不良の発生を抑制できる。換言すると、液体組成物Qを安定して吐出可能な液体吐出装置100を提供できる。
【0091】
特に、液体組成物Qが固形成分を含有し、この固形成分の比重が液体組成物Qにおける固形成分以外の成分の比重よりも大きい場合に、液体吐出装置100は、固形成分の沈降または凝集を抑制でき、上記の固形成分を含有する液体組成物Qを安定して吐出できるため、特に顕著な効果を得ることができる。但し、液体吐出装置100が吐出する液体組成物Qは、固形成分を含有するものに限定されない。液体吐出装置100は、固形成分を含有しない液体組成物Qの吐出においても、第1タンク2とヘッド1との距離が短く、液体組成物Qの流路長が短いことにより、液体組成物Qを安定して吐出することができる。
【0092】
ここで例えば、供給圧力源から吐出部へ正圧の供給圧力のみを用いて液体組成物を供給すると、吐出部が備えるノズルから液体組成物が液垂れし、対象物を汚染する場合がある。また液体組成物の液垂れを防ぐために、吐出部内の液体組成物に負圧をかけると、液体組成物が吐出部から逆流し、液体組成物を安定して吐出できない場合がある。逆流を防止するために、液体吐出装置に逆流防止弁等の構成部を設けると、該構成部の配置によって供給圧力源と吐出部との間の距離が長くなり、吐出不良が発生しやすくなる。
【0093】
本実施形態では、供給圧力Pは、少なくとも負圧を含み、ヘッド1は、第1タンク2の液面と水平か、やや上方に配置されることが好ましい。第1タンク2からヘッド1までの圧力は制御されるため、制御を停止した際に第1タンク2とヘッド1の圧力差を小さくすることで、液体組成物Qがヘッド1から漏れ出すことと、液体組成物Qがヘッド1から第1タンク2へ逆流することを防止できる。なお、本実施形態では、供給圧力Pが負圧を含む構成を例示したが、供給圧力Pが正圧のみの構成であっても、液体組成物Qを安定して吐出できる効果が得られる。
【0094】
また本実施形態では、液体吐出装置100は、液体組成物Qの供給圧力Pを生成する第1加圧ポンプ4および第1真空ポンプ5(圧力生成機構)と、第1加圧ポンプ4および第1真空ポンプ5により生成された供給圧力Pを調節する第1減圧弁3および第1圧力調節弁6(調節機構)と、を有する。第1減圧弁3は第1加圧ポンプ4と第1タンク2との間に配置され、第1圧力調節弁6は第1真空ポンプ5と第1タンク2との間に配置される。この構成により、液体吐出装置100は、吐出周波数fに応じて供給圧力Pを変化させることができる。
【0095】
また本実施形態では、第1圧力可変機構10は、液体組成物Qの供給圧力Pを生成する第1加圧ポンプ4および第1真空ポンプ5を含む。この構成により、第1圧力可変機構10は、吐出周波数fに応じて供給圧力Pを変化させることができる。なお、第1圧力可変機構10は、第1減圧弁3および第1圧力調節弁6等の調節機構を含まず、第1加圧ポンプ4または第1真空ポンプ5のどちらかによる供給圧力Pの生成を制御することにより、供給圧力Pを変化させてもよい。例えば第1加圧ポンプ4および第1真空ポンプ5がロータリポンプである場合には、ロータリポンプ内の羽の回転速度を制御することにより、供給圧力Pの生成を制御できる。また例えば第1加圧ポンプ4および第1真空ポンプ5がピストンポンプである場合には、ピストンポンプ内のピストンの移動を制御することにより、供給圧力Pの生成を制御できる。
【0096】
また本実施形態では、第1タンク2とヘッド1との間に設けられ、第1圧力可変機構10により供給圧力Pを変化させる際の過渡的な圧力変動を低減する第1圧力バッファ9(第1低減部材)を有していることが好ましい。液体吐出装置100は、第1圧力バッファ9により、第1圧力切替機構7による切替時における供給圧力Pの過渡的な変動を低減できるため、ヘッド1に安定して液体組成物Qを供給すると共に、ヘッド1から安定して液体組成物Qを吐出することができる。
【0097】
また本実施形態では、供給圧力Pは、正圧と、負圧と、を含み、供給圧力Pを正圧または負圧のどちらか一方に切り替える第1圧力切替機構7(圧力切替機構)を有する。この構成により、液体吐出装置100は、第1タンク2内の液体組成物Qに負圧の供給圧力Pを供給してヘッド1からの液体組成物Qの液垂れを抑制しつつ、負圧の調節のみでは所望の供給圧力Pを得られない場合には、第1圧力切替機構7による切替により正圧の供給圧力Pを第1タンク2内の液体組成物Qに供給できる。この結果、第1圧力可変機構10による供給圧力Pの変化可能範囲を拡大できる。
【0098】
また本実施形態では、液体吐出装置100は、第1圧力可変機構10は、ヘッド1による吐出周波数fが高いほど、第1圧力可変機構10により供給圧力Pを高くする。これにより、吐出周波数fが高く、ヘッド1への液体組成物Qの供給が遅れる場合にも、ヘッド1への液体組成物Qの供給速度を速くでき、ヘッド1から安定して液体組成物Qを吐出させることができる。なお、本実施形態では、圧力制御部27を用いて第1圧力可変機構10に供給圧力Pを変化させる構成を例示したが、これに限定されず、例えば第1圧力可変機構10における第1減圧弁3または第1圧力調節弁6を手動により調節して、供給圧力Pを変化させてもよい。
【0099】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る液体吐出装置100aについて説明する。なお、既に説明した実施形態と同一の構成部には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また第1実施形態と同一または同質の機能を有する構成部は、該機能の重複する説明を適宜省略する。この点は、以降に示す他の実施形態においても同様とする。
【0100】
図6は、液体吐出装置100aの構成を例示する図である。液体吐出装置100aは、ヘッド1と第1タンク2とを通る第1循環路31を液体組成物Qに循環させる第1循環機構30を有する。第1循環機構30は、第1循環路31と、第1送液ポンプ32と、第1流量計33と、を有する。
【0101】
第1循環路31は、ヘッド1と第1タンク2とを通る流路であり、具体的には、第1タンク2からヘッド1へ、およびヘッド1から第1タンク2へ、液体組成物Qを送液し、循環させる流路である。第1循環路31は、例えば樹脂を材質とするチューブ等を含んで構成される。
【0102】
第1送液ポンプ32は、液体組成物Qに第1循環路31を循環させるための送液力を生成する機構である。第1送液ポンプ32は、送液力を生成可能であれば、その構成に特段の制限はなく、ピストンポンプまたはロータリポンプ等の各種の送液ポンプを適用可能である。
【0103】
第1流量計33は、第1循環路31を循環して流れる液体組成物Qの流量を検出するセンサである。第1流量計33は、液体組成物Qの流量を検出可能であれば、その構成に特段の制限はなく、体積流量計または質量流量計等の各種方式を用いた流量計を適用可能である。
【0104】
液体吐出装置100aは、制御部20aにより、第1流量計33による検出結果に基づいて第1循環路31を流れる液体組成物Qの流速情報を取得し、この流速情報に基づいて第1送液ポンプ32を制御することによって、略一定の流速により液体組成物Qを循環させることができる。
【0105】
ヘッド1は、第1循環路31を循環する液体組成物Qのうち、第1タンク2からヘッド1に供給されてヘッド1内を通る液体組成物Qをノズルから液滴Rとして吐出する。ヘッド1内を通った際にヘッド1から吐出されなかった液体組成物Qは、ヘッド1から第1タンク2に向けて送液された後、第1タンク2からヘッド1に再度供給される。
【0106】
例えば、液体組成物Qが固形成分を含有し、該固形成分の比重が液体組成物Qにおける該固形成分以外の成分の比重よりも大きい場合には、固形成分が第1タンク2とヘッド1との間の流路において沈降または凝縮し、流路が閉塞する場合がある。
【0107】
液体吐出装置100aは、第1循環機構30によってヘッド1と第1タンク2とを通る第1循環路31を液体組成物Qに循環させることにより、液体組成物Qの沈降および凝縮等を抑制できる、これにより、液体吐出装置100aは、流路の閉塞を抑制し、安定して液体組成物Qを吐出することができる。
【0108】
例えば、液体吐出装置100aは、ヘッド1から液体組成物Qを吐出する時の液滴Rの速度である吐出速度と、液体組成物Qが含有する固形成分の沈降速度と、に対応した流速により液体組成物Qを循環させることによって、安定して液体組成物Qを吐出できる。
【0109】
上記以外の作用効果は、第1実施形態において説明したものと同様である。
【0110】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る液体吐出装置100bについて説明する。
【0111】
<液体吐出装置100bの構成例>
図7は、液体吐出装置100bの構成の一例を示す図である。液体吐出装置100bは、第2タンク14と、第2圧力可変機構10bと、供給路切替機構13と、を有する。第1供給路101は、第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路である。第2供給路102は、第2タンク14からヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路である。
【0112】
液体吐出装置100bは、第1供給路101から供給される液体組成物Qが第1吐出周波数によりヘッド1から吐出されている間に、第1吐出周波数とは異なる第2吐出周波数に応じて、第2供給路102からヘッド1へ供給される液体組成物Qの供給圧力Pを、第2圧力可変機構10bにより予め変化させておく。そして、液体吐出装置100bは、吐出周波数fが第1吐出周波数から第2吐出周波数に変化させる際に、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、供給路切替機構13によって第1供給路101から第2供給路102に切り替える。
【0113】
あるいは、液体吐出装置100bは、第2供給路102から供給される液体組成物Qが第1吐出周波数によりヘッド1から吐出されている間に、第1吐出周波数とは異なる第2吐出周波数に応じて、第1供給路101からヘッド1へ供給される液体組成物Qの供給圧力Pを、第1圧力可変機構10により予め変化させておく。そして、液体吐出装置100bは、吐出周波数fが第1吐出周波数から第2吐出周波数に変化させる際に、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、供給路切替機構13によって第2供給路102から第1供給路101に切り替える。
【0114】
例えば液体吐出装置が1つの供給路のみを有すると、吐出周波数に応じて供給圧力を変化させる際に、所望の供給圧力になるまで時間がかかり、供給圧力の変化が次の吐出に間に合わない場合がある。本実施形態では、第1供給路101と第2供給路102の2つの供給路を有し、吐出に関係しない方の供給路における供給圧力Pを、次の吐出における吐出周波数fに応じて予め変化させておき、供給路の切替によって供給圧力Pを変化させる。これにより、液体吐出装置100bは、供給圧力Pを高速に変化させ、供給圧力Pの変化の遅れを抑制する。
【0115】
第2タンク14は、液体組成物Qを貯留する第2貯留部の一例であり、貯留部の一例である。第2タンク14の材質に特段の制限はないが、金属または樹脂等を適用できる。
【0116】
第2圧力可変機構10bは、第2タンク14を挟んでヘッド1の反対側に設けられ、第2タンク14からヘッド1に供給される液体組成物Qにかける供給圧力Pを、ヘッド1による液体組成物Qの吐出周波数に応じて変化させる圧力可変機構の一例である。本実施形態では、第2圧力可変機構10bは、空気を用いて第2タンク14内の液体組成物Qにかける圧力を変化させることにより、供給圧力Pを変化させる。
【0117】
第2圧力可変機構10bは、第2減圧弁15と、第2加圧ポンプ16と、第2真空ポンプ17と、第2圧力調節弁18と、第2圧力切替機構19と、第2圧力計8bと、を有する。第2加圧ポンプ16および第2減圧弁15は第2正圧機構11bを構成する。第2真空ポンプ17および第2圧力調節弁18は第2負圧機構12bを構成する。第2圧力可変機構10bは、第2圧力切替機構19を用いて、液体組成物Qが流通可能に第2タンク14に接続にする構成部を、第2正圧機構11bまたは第2負圧機構12bのどちらか一方に切り替えることができる。
【0118】
第2加圧ポンプ16は、液体組成物Qの供給圧力Pを生成する圧力生成機構の一例である。第2加圧ポンプ16は、第2タンク14に貯留されている液体組成物Q送り出す正圧の供給圧力Pを生成する。第2加圧ポンプ16は、正圧の供給圧力Pを生成可能であれば、その構成に特段の制限はなく、ピストンポンプまたはロータリポンプ等の各種の加圧ポンプを適用可能である。
【0119】
第2減圧弁15は、第2加圧ポンプ16により生成された供給圧力Pを調節する調節機構の一例である。第2減圧弁15は、第2加圧ポンプ16と第2タンク14との間に配置される。第2減圧弁15は、第2加圧ポンプ16により生成された正圧の供給圧力Pを調節する弁体である。第2減圧弁15は、供給圧力Pを調節可能であれば、その構成に特段の制限はない。本実施形態では、第2減圧弁15は、制御部20bからの制御信号に応じて弁体の開閉状態が制御される電磁弁である。
【0120】
第2真空ポンプ17は、液体組成物Qの供給圧力Pを生成する圧力生成機構の一例である。第2真空ポンプ17は、第2タンク14に貯留されている液体組成物Qを第2真空ポンプ17側に吸引する負圧の供給圧力Pを生成する。第2真空ポンプ17は、負圧の供給圧力Pを生成可能であれば、その構成に特段の制限はなく、ピストンポンプまたはロータリポンプ等の各種の真空ポンプを適用可能である。
【0121】
第2圧力調節弁18は、第2真空ポンプ17により生成された供給圧力Pを調節する調節機構の一例である。第2圧力調節弁18は、第2真空ポンプ17と、第2タンク14と、の間に配置される。第2圧力調節弁18は、負圧の供給圧力Pの大きさを調節するための弁体である。第2圧力調節弁18は、圧力を調節可能であれば、その構成に特段の制限はない。本実施形態では、第2圧力調節弁18は、制御部20bからの制御信号に応じて弁体の開閉状態が制御される電磁弁である。
【0122】
第2圧力切替機構19は、供給圧力Pを正圧または負圧のどちらか一方に切り替える圧力切替機構の一例である。第2圧力切替機構19は例えば三方弁である。液体吐出装置100bは、第2圧力切替機構19による切替により、第2正圧機構11bと第2タンク14との間を液体組成物Qが流通可能な状態、または第2負圧機構12bと第2タンク14との間を液体組成物Qが流通可能な状態のどちらか一方の状態にすることができる。第2圧力切替機構19は、液体組成物Qが流れる方向を切替可能であれば、その構成に特段の制限はない。本実施形態では、第2圧力切替機構19は、制御部20bからの制御信号に応じて切替動作が制御される電磁弁である。
【0123】
第2圧力計8bは、第2圧力可変機構10bから第2タンク14への供給圧力Pを検出し、制御部20bに出力するセンサである。第2圧力計8bによる圧力検出方式には特段の制限はなく、液柱方式、重錘ピストン方式または弾性素子方式等の各種方式のものを適用可能である。
【0124】
供給路切替機構13は、第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qが供給される第1供給路101と、第2タンク14からヘッド1に液体組成物Qが供給される第2供給路102と、を相互に切り替える、例えば三方弁である。
【0125】
第2圧力バッファ9aは、供給路切替機構13とヘッド1との間に設けられ、供給路切替機構13により第1供給路101から第2供給路102に切り替える際の過渡的な圧力変動を低減する第2低減部材の一例である。
【0126】
液体吐出装置100bは、第2圧力バッファ9aによって、第1供給路101から第2供給路102へ切り替える際の過渡的な圧力変動を低減することにより、ヘッド1へ液体組成物Qを安定して供給でき、ヘッド1から液体組成物Qを安定して吐出できる。
【0127】
<制御部20bの機能構成例>
図8は、制御部20bの機能構成の一例を示すブロック図である。制御部20bは、圧力制御部27bと、供給路切替制御部28と、を有する。制御部20bは、第2圧力可変機構による供給圧力の変化と、供給路切替機構による切替と、を制御する。制御部20bは、これらの各機能を電気回路により実現する他、この機能の一部をソフトウェア(CPU)によって実現することもできる。制御部20bは、複数の回路または複数のソフトウェアによって上記の機能を実現してもよい。
【0128】
圧力制御部27bは、第1供給路101から供給される液体組成物Qが第1吐出周波数f1によりヘッド1から吐出されている間に、第2供給路102からヘッド1へ供給される液体組成物Qの供給圧力Pを、第1吐出周波数f1とは異なる第2吐出周波数f2に応じて第2圧力可変機構10bにより予め変化させる。あるいは、圧力制御部27bは、第2供給路102から供給される液体組成物Qが第1吐出周波数f1によりヘッド1から吐出されている間に、第1供給路101からヘッド1へ供給される液体組成物Qの供給圧力Pを、第1吐出周波数f1とは異なる第2吐出周波数f2に応じて第1圧力可変機構10により予め変化させる。なお、圧力制御部27bは、この機能の他に、第1実施形態で説明した第1圧力可変機構10に対する圧力制御部27の機能を、第1圧力可変機構10および第2圧力可変機構10bの両方に対して有する。
【0129】
供給路切替制御部28は、第1供給路101から供給される液体組成物Qが第1吐出周波数f1によりヘッド1から吐出されている場合には、吐出周波数fが第1吐出周波数f1から第2吐出周波数f2に変化する際に、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、供給路切替機構13によって第1供給路101を第2供給路102に切り替える。あるいは、供給路切替制御部28は、第2供給路102から供給される液体組成物Qが第1吐出周波数f1によりヘッド1から吐出されている場合には、吐出周波数fが第1吐出周波数f1から第2吐出周波数f2に変化する際にヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、供給路切替機構13によって第2供給路102を第1供給路101に切り替える。
【0130】
<液体吐出装置100bの動作例>
図9は、液体吐出装置100bの動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図9では、液体組成物Qが第2正圧機構11bと第2タンク14との間を流通可能な状態を「第2正圧機構側を開」と表している。
【0131】
液体吐出装置100bは、第1供給路101からヘッド1に液体組成物Qを供給し、ヘッド1から液体組成物Qを第1吐出周波数f1により吐出している状態において、印刷条件データImに基づいて、次の吐出における吐出周波数fを変化させる際に、
図9の供給路切替制御の動作を開始する。なお、
図9では、供給圧力Pが正圧状態においてヘッド1から吐出される場合を説明するが、供給圧力Pが負圧状態であっても、供給圧力Pを調節する機構が異なる点を除き、液体吐出装置100bの動作は同様である。
【0132】
まず、ステップS91において、液体吐出装置100bは、周波数決定部22により、入出力部21を介して入力した印刷条件データImに基づき、ヘッド1による液滴Rの吐出周波数fを決定する。
【0133】
続いて、ステップS92において、液体吐出装置100bは、圧力決定部23により、周波数決定部22によって決定された吐出周波数fに基づき、格納部24に格納された対応情報241を参照して、第2圧力可変機構10bによる供給圧力Pを決定する。
【0134】
続いて、ステップS93において、液体吐出装置100bは、圧力制御部27を介して第2減圧弁15により正圧が大きくなるように調節し、第2タンク14への供給圧力Pが、圧力決定部23により決定された供給圧力Pと略等しくなるようにする。
【0135】
続いて、ステップS94において、液体吐出装置100bは、圧力切替制御部26により第2圧力切替機構19を切り替え、第2正圧機構11b側を開とする。これにより、圧力決定部23により決定された供給圧力Pと略等しい供給圧力Pが第2タンク14に供給される。
【0136】
続いて、ステップS95において、液体吐出装置100bは、吐出周波数fを第1吐出周波数f1から第2吐出周波数f2に切り替えるタイミングに略同期して、供給路切替制御部28を介して供給路切替機構13を切り替え、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、第1供給路101から第2供給路102に切り替える。
【0137】
以上のようにして、液体吐出装置100bは、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、第1供給路101から第2供給路102に切り替えることができる。なお、
図9におけるステップS91からステップS94までの期間には、ヘッド1から液体組成物Qが第1吐出周波数f1により継続して吐出されている。そして、ステップS95における切替により、ヘッド1による吐出周波数fが第1吐出周波数f1から第2吐出周波数f2に切り替わる。
【0138】
<液体吐出装置100bの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、液体吐出装置100bは、液体組成物Qを貯留する第2タンク14(第2貯留部)と、第2タンク14を挟んでヘッド1とは反対側に設けられ、第2タンク14からヘッド1に供給される液体組成物Qにかける供給圧力Pを、ヘッド1による液体組成物Qの吐出周波数fに応じて変化させる第2圧力可変機構10bを有する。また液体吐出装置100bは、第1タンク2からヘッド1に液体組成物Qが供給される第1供給路101と、第2タンク14からヘッド1に液体組成物Qが供給される第2供給路102と、を相互に切り替える供給路切替機構13と、第2圧力可変機構10bによる供給圧力Pの変化と、供給路切替機構13による切替と、を制御する制御部20bと、を有する。
【0139】
制御部20bは、第1供給路101から供給される液体組成物Qが第1吐出周波数f1によりヘッド1から吐出されている間に、第1吐出周波数f1とは異なる第2吐出周波数f2に応じて、第2供給路102からヘッド1へ供給される液体組成物Qの供給圧力Pを、第2圧力可変機構10bにより予め変化させておく。そして、制御部20bは、吐出周波数fが第1吐出周波数f1から第2吐出周波数f2に変化する際に、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、供給路切替機構13によって第1供給路101から第2供給路102に切り替える。
【0140】
液体吐出装置100bは、吐出に関係しない方の供給路における供給圧力Pを、次の吐出における吐出周波数fに応じて予め変化させておき、供給路の切替によって供給圧力Pを変化させるため、供給圧力Pを高速に変化させることができる。この結果、液体吐出装置100bは、供給圧力Pの変化の遅れを抑制し、吐出不良の発生を抑制できるため、液体組成物Qを安定して吐出することができる。
【0141】
上記以外の作用効果は、第1実施形態において説明したものと同様である。
【0142】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る液体吐出装置100cについて説明する。
【0143】
<液体吐出装置100cの構成例>
図10は、液体吐出装置100cの構成の一例を示す図である。なお、
図10において、X軸およびY軸を矢印で示すが、X軸の矢印が向く方向を+X、+Xとは反対方向を-X、Y軸の矢印が向く方向+Y、+Yとは反対方向を-Yとする。この点は、後述する
図12および
図13においても同様である。
【0144】
図10に示すように、液体吐出装置100cは、第1循環機構30と、第2循環機構40と、第1変更機構51と、第2変更機構52と、を有する。第1循環機構30は、
図6において説明したものと同様である。
【0145】
第2循環機構40は、第2循環路41と、第2送液ポンプ42と、第2流量計43と、を有する。第2循環機構40は、ヘッド1と第2タンク14とを通る第2循環路41を液体組成物Qに循環させる機構である。
【0146】
第2循環路41は、ヘッド1と第2タンク14とを通る流路であり、具体的には、第2タンク14からヘッド1へ、およびヘッド1から第2タンク14へ、液体組成物Qを送液し、循環させる流路である。第2循環路41は、例えば樹脂を材質とするチューブ等を含んで構成される。
【0147】
第2送液ポンプ42は、液体組成物Qに第2循環路41を循環させるための送液力を生成する機構である。第2送液ポンプ42は、送液力を生成可能であれば、その構成に特段の制限はなく、ピストンポンプまたはロータリポンプ等の各種の送液ポンプを適用可能である。
【0148】
第2流量計43は、第2循環路41を循環して流れる液体組成物Qの流量を検出するセンサである。第2流量計43は、液体組成物Qの流量を検出可能であれば、その構成に特段の制限はなく、体積流量計または質量流量計等の各種方式を用いた流量計を適用可能である。
【0149】
第1変更機構51は、第1切替弁50と、第2切替弁34と、第3切替弁35と、を含む。第1変更機構51は、第1循環路31の経路を変更する機構である。第1循環路31は、第1供給路101から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合の第1吐出時循環路31a、または吐出しない場合の第1非吐出時循環路31bのどちらか一方に変更可能である。
【0150】
第2変更機構52は、第1切替弁50と、第4切替弁44と、第5切替弁45と、を含む。第2変更機構52は、第2循環路41の経路を変更する機構である。第2循環路41は、第2供給路102から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合の第2吐出時循環路41a、または吐出しない場合の第2非吐出時循環路41bのどちらか一方に変更可能である。
【0151】
第1切替弁50、第2切替弁34、第3切替弁35、第4切替弁44および第5切替弁45のそれぞれは、例えば三方弁である。
【0152】
第1変更機構51および第2変更機構52の構成は上記に限定されず、切替弁の個数や配置等を適宜変更可能である。また第1変更機構51と第2変更機構52との間において第1切替弁50が重複するが、必ずしも重複しなくてもよいし、重複する構成部が2以上あってもよい。
【0153】
<制御部20cの機能構成例>
図11は、制御部20cの機能構成の一例を示すブロック図である。制御部20cは、循環路切替制御部29を有する。制御部20cは、これらの循環路切替制御部29を電気回路により実現する他、ソフトウェア(CPU)によって実現することもできる。制御部20cは、複数の回路または複数のソフトウェアによって循環路切替制御部29の機能を実現してもよい。
【0154】
循環路切替制御部29は、供給路切替機構13による切替に応じて、第1変更機構51により第1循環路31の経路を変更させると共に、第2変更機構52により第2循環路41の経路を変更させる。
【0155】
循環路切替制御部29は、例えば第1供給路101から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合には、第1循環路31が第1吐出時循環路31aになり、第2循環路41が第2非吐出時循環路41bになるように、第1循環路31および第2循環路41をそれぞれ変更する。一方、循環路切替制御部29は、例えば第2供給路102から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合には、第1循環路31が第1非吐出時循環路31bになり、第2循環路41が第2吐出時循環路41aになるように、第1循環路31および第2循環路41をそれぞれ変更する。
【0156】
<液体吐出装置100cの動作例>
図12および
図13は、第1循環路31および第2循環路41を例示する図であり、
図12は第1図、
図13は第2図である。
【0157】
図12は、第1供給路101から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合における第1循環路31および第2循環路41の状態を示している。この状態では、第1循環路31は、循環経路内にヘッド1を含む第1吐出時循環路31aとなる。液体吐出装置100cは、液体組成物Qに第1吐出時循環路31aを循環させることにより、液体組成物Qの沈降および凝集等を抑制し、液体組成物Qをヘッド1から安定して吐出することができる。
【0158】
一方、第2循環路41は、循環経路内にヘッド1を含まない第2非吐出時循環路41bとなる。液体吐出装置100cは、液体組成物Qに第2非吐出時循環路41bを循環させることにより、ヘッド1から吐出しない場合における液体組成物Qの沈降および凝集等を抑制し、次に第2供給路102から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合における吐出不良を抑制することができる。
【0159】
図13は、第2供給路102から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合の第1循環路31および第2循環路41の状態を示している。この状態では、第1循環路31は、循環経路内にヘッド1を含まない第1非吐出時循環路31bとなる。液体吐出装置100cは、液体組成物Qに第1非吐出時循環路31bを循環させることにより、ヘッド1から吐出しない場合における液体組成物Qの沈降および凝集等を抑制し、次に第2供給路102から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合における吐出不良を抑制することができる。
【0160】
一方、第2循環路41は、循環経路内にヘッド1を含む第2吐出時循環路41aとなる。液体吐出装置100cは、液体組成物Qに第2吐出時循環路41aを循環させることにより、液体組成物Qの沈降および凝集等を抑制し、液体組成物Qをヘッド1から安定して吐出することができる。
【0161】
以下に示す表1および表2は、第1圧力切替機構7、供給路切替機構13、第2圧力切替機構19、第1切替弁50、第2切替弁34、第3切替弁35、第4切替弁44および第5切替弁45のそれぞれの状態を例示する表である。表1は、第1供給路101から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合(
図11に対応)における上記の各構成部の状態を示している。表2は、第2供給路102から供給される液体組成物Qをヘッド1から吐出する場合(
図12に対応)における上記の各構成部の状態を示している。表1および表2において、「符号」は各構成部の符号を表し、「開方向」は各構成部から液体組成物Qを送液する方向を表している。
【0162】
【0163】
【0164】
図14は、液体吐出装置100cの動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図14では、液体組成物Qが第2正圧機構11bと第2タンク14との間を流通可能な状態を「第2正圧機構側を開」と表している。
【0165】
液体吐出装置100cは、第1供給路101からヘッド1に液体組成物Qを供給し、ヘッド1から液体組成物Qを第1吐出周波数f1により吐出している状態において、印刷条件データImに基づいて、次の吐出において吐出周波数fを変化させる際に、
図14の供給路切替制御の動作を開始する。
【0166】
図14の動作開始時には、第1圧力切替機構7、供給路切替機構13、第2圧力切替機構19、第1切替弁50、第2切替弁34、第3切替弁35、第4切替弁44および第5切替弁45は、上述した表1に示す状態になっている。なお、
図14では、供給圧力Pが正圧状態においてヘッド1から吐出される場合を説明するが、供給圧力Pが負圧状態であっても、供給圧力Pを調節する機構が異なる点を除き、液体吐出装置100cの動作は同様である。
【0167】
まず、ステップS141において、液体吐出装置100cは、周波数決定部22により、入出力部21を介して入力した印刷条件データImに基づき、ヘッド1による液滴Rの吐出周波数fを決定する。
【0168】
続いて、ステップS142において、液体吐出装置100cは、圧力決定部23により、周波数決定部22によって決定された吐出周波数fに基づき、格納部24に格納された対応情報241を参照して、第2圧力可変機構10bによる供給圧力Pを決定する。
【0169】
続いて、ステップS143において、液体吐出装置100cは、圧力制御部27を介して第2減圧弁15により正圧が大きくなるように調節し、第2タンク14への供給圧力Pが、圧力決定部23により決定された供給圧力Pと略等しくなるようにする。
【0170】
続いて、ステップS144において、液体吐出装置100cは、圧力切替制御部26により第2圧力切替機構19を切り替え、第2正圧機構11b側を開とする。これにより、圧力決定部23により決定された供給圧力Pと略等しい供給圧力Pが第2タンク14に供給される。
【0171】
続いて、ステップS145において、液体吐出装置100cは、吐出周波数fを第1吐出周波数f1から第2吐出周波数f2に切り替えるタイミングにおいて、供給路切替制御部28を介して供給路切替機構13を切り替え、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、第1供給路101から第2供給路102に切り替える。
【0172】
続いて、ステップS146において、液体吐出装置100cは、供給路切替機構13による切替に応じて、循環路切替制御部29を介して第1変更機構51により第1循環路31の経路を変更すると共に、第2変更機構52により第2循環路41の経路を変更する。この変更によって、第1圧力切替機構7、供給路切替機構13、第2圧力切替機構19、第1切替弁50、第2切替弁34、第3切替弁35、第4切替弁44および第5切替弁45は、上述した表2に示す状態になる。
【0173】
以上のようにして、液体吐出装置100cは、ヘッド1に液体組成物Qが供給される供給路を、第1供給路101から第2供給路102に切り替え、この切替に応じて、第1循環路31および第2循環路41のそれぞれの循環路を変更することができる。なお、ステップS145とステップS146の動作は、順番を入れ替えてもよいし、両者が並行に行われてもよい。また、
図14におけるステップS141からステップS144までの期間には、ヘッド1から液体組成物Qが第1吐出周波数f1により継続して吐出されている。そして、ステップS145における切替により、ヘッド1による吐出周波数fが第1吐出周波数f1から第2吐出周波数f2に切り替わる。
【0174】
<液体吐出装置100cの作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、液体吐出装置100cは、ヘッド1と第1タンク第1貯留部とを通る第1循環路31を液体組成物Qに循環させる第1循環機構30と、ヘッド1と第2タンク14とを通る第2循環路41を液体組成物Qに循環させる第2循環機構40と、を有する。また液体吐出装置100cは、第1循環路31の経路を変更する第1変更機構51と、第2循環路41の経路を変更する第2変更機構52と、を有する。制御部20cは、供給路切替機構13による切替に応じて、第1変更機構51により第1循環路31の経路を変更させると共に、第2変更機構52により第2循環路の経路を変更させる。
【0175】
液体吐出装置100cは、吐出に関係しない供給路においても液体組成物Qを循環させることにより、吐出しない期間における液体組成物Qの沈降および凝集等を抑制し、吐出する際における吐出不良を抑制することができる。これにより、液体吐出装置100cは、液体組成物Qを安定して吐出することができる。
【0176】
上記以外の作用効果は、第1実施形態において説明したものと同様である。
【0177】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態に係る電極製造装置200について説明する。電極製造装置200は、液体吐出装置100を有し、集電体を形成するための導電材料や、活物質、集電体上に設けられた活物質に対して例えば絶縁機能を付与するための機能材料等といった電極材料を含有する液体組成物Qを吐出して電極基体Ta上に電極材料層を形成することにより、電気化学素子に用いられる電極を製造するものである。
【0178】
「液体吐出装置100」を有するとは、液体吐出装置100が有する構成部と同一または同質の構成部を少なくとも有することを意味する。本実施形態では、液体吐出装置100を有する電極製造装置200を説明するが、電極製造装置200は、液体吐出装置100に代えて、あるいは液体吐出装置100に加えて、液体吐出装置100a、100bおよび100cの少なくとも1つを有してもよい。
【0179】
電極製造装置200は、電極基体Ta上に膜を成膜して電極を製造するため、液体吐出装置100により吐出された液体組成物Qにより、電極基体Taに機能膜を成膜する成膜装置の一例でもある。
【0180】
電極基体Taは、例えば、電池やキャパシタ等の蓄電デバイス、燃料電池等の発電デバイス、太陽光発電デバイス等に用いられる集電体である。電極製造装置200は、粉体状の活性物質や触媒組成物をはじめとする各種材料を液体中に分散した液体を電極基体Ta上に吐出し、固定および乾燥させることにより、電極基体Ta上に電極材料層を形成する。
【0181】
<電極製造装置200の全体構成例>
図15は、電極製造装置200の全体構成の一例を説明する図である。
図15は、電極基体Taの搬送方向220と直交する方向から透視した電極製造装置200の内部を示している。
【0182】
図15に示すように、電極製造装置200は、巻出部201と、塗布部203と、照射部204と、加熱部205と、巻取部206と、を有する。塗布部203は、複数の液体吐出部230a、230b、230cおよび230dを有する。
【0183】
電極製造装置200は、巻出部201および巻取部206により電極基体Taを搬送方向220に沿って搬送しながら、塗布部203が含む液体吐出部230a、230b、230cおよび230dのそれぞれが吐出した液体組成物Qを電極基体Ta上に塗布する。電極基体Taは、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dのそれぞれによって液体組成物Qを吐出される対象物の一例である。
【0184】
電極製造装置200は、電極基体Ta上に塗布された液体組成物Qに対し、照射部204により紫外線を照射して硬化させ、また加熱部205により温風を吹き送って加熱して乾燥させることにより、電極基体Ta上に連続した一様な膜を形成する。なお、本実施形態では、照射部204と加熱部205の両方を有する構成について例示するが、どちらか一方を有する構成であってもよい。
【0185】
巻出部201は、電極基体Taが巻かれた状態で回転可能な巻出ロール212を回転させ、ロールに巻かれた電極基体Taを巻き出すことにより、巻出部201から塗布部203に向けて電極基体Taを移動させて搬送する。巻取部206は、回転させた巻取ロール207に電極基体Taを巻き付けて電極基体Taを巻き取ることにより、加熱部205から巻取部206に向けて電極基体Taを移動させて搬送する。
【0186】
電極製造装置200は、巻出部201および巻取部206の他、符号が付されていない搬送ローラ等も電極基体Taを搬送する搬送部として用いている。搬送ローラと巻出部201および巻取部とによって、電極基体Taの搬送部を構成する。
【0187】
電極基体Taは、搬送方向220に沿って連続している。電極製造装置200は、巻出部201と巻取部206との間の搬送経路に沿って電極基体Taを搬送する。また電極基体Taの搬送方向220に沿う長さは、少なくとも巻出部201と巻取部206との間の搬送経路より長い。電極製造装置200は、搬送方向220に沿って連続する電極基体Taに対し、連続して膜形成を行う。
【0188】
塗布部203は、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dそれぞれが吐出した液体組成物Qを電極基体Ta上に塗布する。
【0189】
液体吐出部230a、230b、230cおよび230dは、それぞれ同じ構成であるため、特に区別しない場合には、液体吐出部230と総称表記する。本実施形態では、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dは同じ種類の液体組成物Qを吐出する。種類は、組成または色等の違いを意味する。但し、同じ種類に限定されるものではなく、液体吐出部230は異なる種類の液体組成物Qを吐出してもよい。また液体吐出部230の個数は4個に限定されるものではなく、任意の個数であってもよい。
【0190】
液体吐出部230は、複数のノズルが配列された複数のノズル列を有する。電極製造装置200は、ノズルから吐出される液体組成物Qの吐出方向が電極基体Taに向くように液体吐出部230を有する。
【0191】
電極基体Taは、例えば金属シート等の非浸透性の基材上に粒子を主成分とした層が設けられたものである。非浸透性基材上に設けられた粒子を主成分とした層は、例えばグラファイト層等である。
【0192】
非浸透性の基材は、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、白金等の金属シート、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルムの樹脂フィルム等を含む。
【0193】
払拭装置250a、250b、250cおよび250dは、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dと対をなすように設けられ、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dのそれぞれが有するヘッドの吐出状態を維持する。
【0194】
払拭装置250a、250b、250cおよび250dは、それぞれ同じ構成であるため、特に区別しない場合には払拭装置250と総称表記する。払拭装置250は、液体吐出部230の個数に応じた個数分設けられる。
【0195】
また、払拭装置250は、液体吐出部230の個数以下を備え、1つの払拭装置250により複数の液体吐出部230を払拭する構成であってもよい。
【0196】
払拭装置250の個数は、各液体吐出部230に応じた払拭動作を行える点では、一つの液体吐出部230の個数に応じた個数分設けられる構成が好ましく、また動作効率の点では、一つの払拭装置250により複数の液体吐出部230を払拭する構成が好ましい。
【0197】
照射部204は、光源245aおよび245bを有する。光源245aおよび245bを区別しないときは光源245と総称する。光源245は、電極基体Ta上に塗布された液体組成物Qに紫外線を照射して、液体組成物層を樹脂層に硬化させる硬化機能を有する。
【0198】
光源245は、例えば、低、中、高圧水銀ランプのような水銀ランプ、タングステンランプ、アーク灯、エキシマランプ、エキシマレーザ、半導体レーザ、高出力UV-LED、YAGレーザ、レーザと非線形光学結晶とを組み合わせたレーザシステム、高周波誘起紫外線発生装置、EBキュア等の電子線照射装置、X線照射装置等である。なかでも、システムを簡便化できる観点から、高周波誘起紫外線発生装置、高圧または低圧水銀ランプや半導体レーザ等であることが好ましい。また、光源245は集光用ミラーや掃引光学系を備えてもよい。
【0199】
加熱部205は、ヒータ280a、280bおよび280cを有する。ヒータ280a、280bおよび280cを区別しないときはヒータ280と総称する。ヒータ280は、電極基体Ta上に形成された液体組成物Qを加熱して液体組成物Q中の残溶媒を乾燥させ、液体組成物Qの硬化を促進したり乾燥させたりする。ヒータ280は、硬化または乾燥機構或いは加熱または加熱機構としての機能を有する。
【0200】
ヒータ280は、例えば、赤外ランプ、発熱体を内蔵したローラ(熱ローラ)、温風または熱風を吹き出すブロワ、水蒸気などを用いたボイラー型熱風を導入した炉等である。
【0201】
<液体吐出部230の構成例>
図16は、液体吐出部230の構成を例示する図である。
図16は液体吐出部230a、230b、230cおよび230dを液体の吐出方向側から視た図である。電極基体Taは、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dに向き合った状態で、搬送方向220に沿って搬送される。
【0202】
液体吐出部230は、ライン型の液体吐出部である。「ライン型の液体吐出部」とは、電極基体Taの幅方向(搬送方向220と略直交する方向)の全幅にわたって液体組成物Qを吐出するノズルが配置されたものである。
【0203】
図16に示すように、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dのそれぞれは、搬送方向220と略直交する方向に配置された4つのヘッド1aを有する。ヘッド1aは、第1タンク2から供給される液体組成物Qを電極基体Taに吐出する吐出部の一例である。
【0204】
ヘッド1aは、液体組成物Qを吐出する複数のノズル210が形成されたノズル面211を有する。複数のノズル210は、搬送方向220と略直交する方向に配列している。ヘッド1aは、複数のノズル210それぞれから液体組成物Qを吐出できる。なお、ヘッド1aは、液体吐出部230a、230b、230cおよび230dのそれぞれが有するヘッドの総称表記である。
【0205】
ヘッド1aが搬送方向220と略直交する方向に4つ配置されることにより、電極基体Taの幅方向の全幅にわたって液体組成物Qを吐出できる。ここでは、1つの液体吐出部230が4つのヘッド1aを有する構成を例示するが、液体吐出部230は少なくとも1つのヘッド1aを備えればよい。液体吐出部230の幅は必ずしも電極基体Taの全幅でなくてもよく、適宜決定できる。
【0206】
<電極製造装置200の作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、電極製造装置200は液体吐出装置100を有する。電極製造装置200は、液体組成物Qの吐出周波数fが高くなった場合等においても、ヘッド1aへの液体組成物Qの供給が遅れることを抑制し、吐出不良の発生を抑制できる。換言すると、液体組成物Qを安定して吐出可能な電極製造装置200を提供できる。
【0207】
特に、電極製造装置200は、固形成分の一例としての活物質等の電極材料を含有する液体組成物Qを吐出する。この電極材料の比重は、液体組成物Qにおける電極材料以外の成分の比重よりも大きいため、液体組成物Qの流路へ沈降または凝集しやすい。電極製造装置200は、電極材料が流路に沈降または凝集することを抑制し、活物質等の電極材料を含有する液体組成物Qを安定して吐出でき、電極製造の品質および生産性を向上させることができる。
【0208】
以上、実施形態を説明したが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0209】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0210】
また、実施形態は電極製造方法も含む。例えば電極製造方法は、電極製造装置による電極製造方法であって、前記電極製造装置が、貯留部により、液体組成物を貯留し、吐出部により、前記貯留部から供給される前記液体組成物を対象物に吐出し、前記貯留部を挟んで前記吐出部の反対側に設けられた圧力可変機構により、前記貯留部から前記吐出部に供給される前記液体組成物にかける供給圧力を、前記吐出部による前記液体組成物の吐出周波数に応じて変化させる。このような電極製造方法により、上述した電極製造装置200と同様の効果を得ることができる。
【0211】
上記で説明した実施形態の各機能は、一または複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0212】
1、1a ヘッド(吐出部の一例)
2 第1タンク(第1貯留部の一例、貯留部の一例)
3 第1減圧弁(調節機構の一例)
4 第1加圧ポンプ(圧力生成機構の一例)
5 第1真空ポンプ(圧力生成機構の一例)
6 第1圧力調節弁(調節機構の一例)
7 第1圧力切替機構
8 第1圧力計
8b 第2圧力計
9 第1圧力バッファ(第1低減部材の一例)
9a 第2圧力バッファ(第1低減部材の一例)
10 第1圧力可変機構(圧力可変機構の一例)
10b 第2圧力可変機構
11 第1正圧機構
12 第1負圧機構
13 供給路切替機構
14 第2タンク(第1貯留部の一例)
15 第2減圧弁(調節機構の一例)
16 第2加圧ポンプ(圧力生成機構の一例)
17 第2真空ポンプ(圧力生成機構の一例)
18 第2圧力調節弁(調節機構の一例)
19 第2圧力切替機構
20 制御部
20b 制御部
21 入出力部
22 周波数決定部
23 圧力決定部
24 格納部
241 対応情報
25 吐出制御部
26 圧力切替制御部
27 圧力制御部
28 供給路切替制御部
30 第1循環機構
31 第1循環路
31a 第1吐出時循環路
31b 第1非吐出時循環路
32 第1送液ポンプ
33 第1流量計
34 第2切替弁
35 第3切替弁
40 第2循環機構
41 第2循環路
41a 第2吐出時循環路
41b 第2非吐出時循環路
42 第2送液ポンプ
43 第2流量計
44 第4切替弁
45 第5切替弁
50 第1切替弁
51 第1変更機構
52 第2変更機構
71、72、73 グラフ
81、82、83 プロット
84 近似直線
100、100a、100b、100c 液体吐出装置
101 第1供給路
102 第2供給路
201 巻出部
212 巻出ロール
Ta 電極基体
203 塗布部
230、230a、230b、230c、230d 液体吐出部
204 照射部
205 加熱部
206 巻取部
207 巻取ロール
291 ヘッドベース
210 ノズル
211 ノズル面
220 搬送方向
245 光源
250 払拭装置
280 ヒータ
200 電極製造装置(成膜装置の一例)
f 吐出周波数
f1 第1吐出周波数
f2 第2吐出周波数
Im 印刷条件データ
P 供給圧力
Q 液体組成物
R 液滴
T 対象物
Ta 電極基体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0213】