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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066904
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230509BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177761
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】長橋 和人
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 仁
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AG14
2C057AG44
2C057AN05
2C057AP25
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】接合部材同士を適切に接合することを課題とする。
【解決手段】互いに接合されるアクチェータ基板220およびノズル板201を有する液体吐出ヘッド200であって、アクチェータ基板220に凹部10が設けられ、凹部10には、接着剤90が塗布される第1凹部11と、第1凹部11に連通し、外周端220aに延在する第2凹部12とが設けられ、第2凹部12の延在方向が、第1凹部11の、第2凹部12と連通する側と反対側の面である奥側面11Aに対して傾斜していることを特徴とすることを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接合される第1接合部材および第2接合部材を有する液体吐出ヘッドであって、
前記第1接合部材の前記第2接合部材との接合面に凹部が設けられ、
前記凹部には、接着剤が塗布される第1部分と、前記第1部分に連通し、前記第1接合部材の外周端に延在する第2部分とが設けられ、
前記第2部分の延在方向が、前記第1部分の、前記第2部分と連通する側と反対側の面である奥側面に対して傾斜していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
互いに接合される第1接合部材および第2接合部材を有する液体吐出ヘッドであって、
前記第1接合部材の前記第2接合部材との接合面に凹部が設けられ、
前記凹部には、接着剤が塗布される第1部分と、前記第1部分に連通し、前記第1接合部材の外周端に延在する第2部分とが設けられ、
前記第1部分は、前記第2部分の延在方向を延長した線上に配置された奥側面を有し、
前記第2部分の延在方向が、前記奥側面に対して傾斜していることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2部分は、前記外周端側の幅が前記第1部分側の幅よりも小さい請求項1または2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第2部分は、幅方向の一方側に設けられた壁面が、他方側に設けられた壁面よりも前記第1部分側へ長く延在する請求項1から3いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記奥側面が、前記奥側面に対して傾斜した傾斜面を介して、当該傾斜面に連続する連続面に接続され、
前記連続面は前記第2部分に接続する請求項1から4いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2部分の延在方向が、前記第1部分の全ての側面に対して傾斜している請求項1から5いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1部分あるいは前記第2部分の少なくともいずれかの壁面に、凹凸形状を有する請求項1から6いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
【請求項9】
互いに接合される第1接合部材および第2接合部材を有する接合ユニットであって、
前記第1接合部材の前記第2接合部材との接合面に凹部が設けられ、
前記凹部には、接着剤が塗布される第1部分と、前記第1部分に連通し、前記第1接合部材の外周端に延在する第2部分とが設けられ、
前記第2部分の延在方向が、前記第1部分の、前記第2部分と連通する側と反対側の面である奥側面に対して傾斜していることを特徴とする接合ユニット。
【請求項10】
互いに接合される第1接合部材および第2接合部材を有する接合ユニットであって、
前記第1接合部材の前記第2接合部材との接合面に凹部が設けられ、
前記凹部には、接着剤が塗布される第1部分と、前記第1部分に連通し、前記第1接合部材の外周端に延在する第2部分とが設けられ、
前記第1部分は、前記第2部分の延在方向を延長した線上に配置された奥側面を有し、
前記第2部分の延在方向が、前記奥側面に対して傾斜していることを特徴とする接合ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式の画像形成装置に設けられる液体吐出ヘッドは、ノズル板や流路板など、積層した複数の部材が接合されて形成される。
【0003】
これらの部材を接合する接着剤として、熱硬化型の接着剤が用いられる。例えば特許文献1(特開2009-101645号公報)では、液体吐出ヘッドの記録素子基板と支持部材とが接着剤により接合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接合部材同士を適切に接合することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は、互いに接合される第1接合部材および第2接合部材を有する液体吐出ヘッドであって、前記第1接合部材の前記第2接合部材との接合面に凹部が設けられ、前記凹部には、接着剤が塗布される第1部分と、前記第1部分に連通し、前記第1接合部材の外周端に延在する第2部分とが設けられ、前記第2部分の延在方向が、前記第1部分の、前記第2部分と連通する側と反対側の面である奥側面に対して傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、接合部材同士を適切に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドの分解斜視図である。
図2】上記液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面図である。
図3図2の要部拡大図である。
図4】上記液体吐出ヘッドのノズル配列方向に沿う断面図である。
図5】保持基板にノズル板を接合する様子を示す平面図である。
図6】保持基板に設けられた凹部を示す平面図である。
図7図6のA-A断面図である。
図8】本発明と異なる比較例1の凹部を示す平面図である。
図9】本発明と異なる比較例2の凹部を示す平面図である。
図10】異なる実施形態の凹部を示す平面図である。
図11】異なる実施形態の凹部を示す平面図である。
図12】異なる実施形態の凹部を示す平面図である。
図13】異なる実施形態の凹部を示す平面図である。
図14】本発明の一実施形態に係るヘッドモジュールの分解斜視図である。
図15】上記ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視図である。
図16】上記ヘッドモジュールのヘッド、ベース部材およびカバー部材を示す分解斜視図である。
図17】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の概略図である。
図18】上記液体吐出装置に設けられたヘッドを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る液体吐出ヘッドについて、図1から図4を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。図1は同液体吐出ヘッドの分解斜視説明図、図2は同じくノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、図3図2の要部拡大断面説明図、図4は同じくノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
【0009】
図1および図2に示すように、液体吐出ヘッド200は、ノズル板201と、流路板202と、振動板203と、圧力発生手段である圧電素子211と、保持基板250と、共通液室部材を兼ねるフレーム部材270とを備えている。以下、液体吐出ヘッド200を単にヘッド200とも称する。
【0010】
本実施形態では、流路板202、振動板203及び圧電素子211、および、圧電素子211を保持する保持基板250で構成される部分を、本発明に係るアクチュエータ部材としての「アクチュエータ基板220」とする。ただし、アクチュエータ基板220として独立の部材が形成された後にノズル板201や保持基板250、フレーム部材270と接合されることまで意味するものではない。
【0011】
ノズル板201には、液体を吐出する複数のノズル204が形成されている。ここでは、複数のノズル204を配列したノズル列を2列配置した構成としている。
【0012】
流路板202は、ノズル板201及び振動板203とともに、個別液室206、流体抵抗部207、通路である液導入部208を画成している。個別液室206はノズル204に通じる。流体抵抗部207は個別液室206に通じる。液導入部208は流体抵抗部207に通じる。
【0013】
液導入部208は通路209と流路210Aを介して、フレーム部材270で形成される共通液室210に通じている。なお、共通液室210には供給口部272を介して外部から液体が供給される。通路209は、振動板203に設けられた液体の供給口である。流路210Aは保持基板250の共通液室の一部である。
【0014】
図3および図4に示すように、振動板203は、個別液室206の壁面の一部をなす変形可能な振動領域230を形成している。そして、振動領域230の個別液室206と反対側の面には、振動領域230と一体的に圧電素子211が設けられる。振動領域230と圧電素子211とによって圧電アクチュエータを構成している。
【0015】
圧電素子211は、振動領域230側から下部電極213、圧電層(圧電体)212及び上部電極214が順次積層された構成をしている。圧電素子211上には絶縁膜221が形成されている。
【0016】
複数の圧電素子211の共通電極となる下部電極213は、共通電極配線215を介して共通電極電源配線パターン223に接続されている。
【0017】
また、圧電素子211の個別電極となる上部電極214は、個別電極配線216を介して駆動IC(ドライバIC)240に接続されている。
【0018】
ドライバIC240は、圧電素子列の列間の領域を覆うようにアクチュエータ基板220にフリップチップボンディングにより実装されている。
【0019】
アクチュエータ基板220に搭載されたドライバIC240のI/O(入出力端子)、電源端子、駆動波形(駆動信号)の入力端子などからは、図1に示すように、接続端子群218まで配線が引き出されている。
【0020】
そして、接続端子群218の各接続端子にはFPCやFFCなどの配線部材260に設けられた配線が、ACF接続、半田接続、ワイヤボンディングなどによって電気的に接続されており、配線部材260の他端側は装置本体側に配置される制御部に接続されている。
【0021】
なお、配線部材260はフレーム部材270に内包されており、引き出し口271からヘッド外部に引き出される。また、接続端子群218の各接続端子はアクチュエータ基板220の端部に平面的に配置されている。
【0022】
そして、アクチュエータ基板220上には保持基板250を設けている。保持基板250は、圧電素子211を収容する凹部(振動室)251を有する。
【0023】
保持基板250は共通液室210の一部である流路210Aも形成している。この保持基板250は、接着剤によってアクチュエータ基板220の振動板203側に接合されている。
【0024】
このように構成した液体吐出ヘッド200においては、ドライバIC240から圧電素子211の上部電極214と下部電極213の間に電圧を与えることで、圧電層212が電極積層方向、すなわち電界方向に伸張し、振動領域230と平行な方向に収縮する。
【0025】
このとき、下部電極213側は振動領域230で拘束されている。このため、振動領域230の下部電極213側に引っ張り応力が発生し、振動領域230が個別液室206側に撓んで内部の液体を加圧することで、ノズル204から液体が吐出される。
【0026】
上記の液体吐出ヘッド200は、ノズル板201、流路板202、振動板203、保持基板250、フレーム部材270などを積層して互いに接合することで形成される。そして、この接合時には、まず光照射型の接着剤にてこれらの部材同士を仮接合した後、本接合用接着剤にてこれらの部材を接合する。
【0027】
以下、上記の接合の一例として、第1接合部材としてのアクチュエータ基板220と第2接合部材としてのノズル板201とを接合する場合を説明する。
【0028】
図5に示すように、アクチュエータ基板220のノズル板201側の面には、ノズル板201の四隅に対応する位置に、仮接合のための凹部10が設けられる。凹部10は、アクチュエータ基板220のノズル板201に対する接合面側に設けられる。この接合面は、流路板202のノズル板201側の面である(図2参照)。また、後述のアクチュエータ基板220の外周端は、この流路板202の面の外周端である。
【0029】
アクチュエータ基板220とノズル板201との接合時には、凹部10の後述する第1凹部に仮接合用接着剤90を塗布するとともに、アクチュエータ基板220のノズル板201を張り付ける箇所、つまり、図5の点線部で囲む箇所で凹部10以外の部分に、本接合用接着剤を塗布する。仮接合用接着剤90は、紫外線などにより硬化する光照射型接着剤である。
【0030】
そして、アクチュエータ基板220とノズル板201とを貼り合わせることで、アクチュエータ基板220とノズル板201との間に仮接合用接着剤90が保持される(後述の図7参照)。この状態で、凹部10に対する入射光によって仮接合用接着剤90が硬化することで、アクチュエータ基板220とノズル板201とが仮接合される。そして、これらの部材を加熱することにより、本接合用接着剤が硬化してアクチュエータ基板220とノズル板201とが接合される。
【0031】
この光照射型の仮接合用接着剤90を用いた仮接合では、凹部10に塗布された仮接合用接着剤90がアクチュエータ基板220の外側へはみ出してしまうという問題がある。また、凹部10の奥側、つまり、アクチュエータ基板220の外周端から遠い側へ十分に光が届かず、仮接合が十分に行われないという問題がある。
【0032】
上記の問題を解決する本実施形態の凹部10の構成について、以下の図6を用いて説明する。なお、本実施形態では四隅に設けられた凹部10は同じ形状であるため、図5の右上の凹部10についてのみ説明する。
【0033】
図6に示すように、凹部10は、第1部分としての第1凹部11および第2部分としての第2凹部12からなる。第1凹部11は、接着剤90を塗布する部分である。第2凹部12は、第1凹部11に連通し、アクチュエータ基板220の外周端220aまで延在する。第2凹部12は、凹部10内にUV光Lを導入するための通路部である。
【0034】
このように、第2凹部12を光の通路として設け、接着剤90を塗布する第1凹部11を第2凹部12よりも外周端220aから遠い側に設ける。これにより、接着剤90が外周端220aから外側へはみ出すことを抑制できる。
【0035】
第2凹部12は、その延在方向が第1凹部11の奥側面11Aに対して傾斜している。つまり、この第2凹部の延在方向が奥側面11Aに対して傾斜している、とは、本実施形態では、第2凹部12の道幅中央を結ぶ中央線B1、B2が、奥側面11Aに対して垂直および平行でない角度をなしていることである。これにより、第2凹部12から入射したUV光Lが第1凹部11内で乱反射し、接着剤90全体に対してより均一に光を当てることができる。従って、第1凹部11内で接着剤90を硬化させ、アクチュエータ基板220とノズル板とを必要な強度で仮接合できる。
【0036】
奥側面11Aは、第1凹部11を形成する側面のうち、第1凹部11の、第2凹部12と連通する側と反対側の面で、本実施形態では第2凹部12と連通する部分から最も遠い面である。あるいは、第2凹部12の中央線、特に、最も第1凹部11と連通する側の中央線である幅方向中央線B1を延長した線上に配置された面11Bを奥側面とし、この面11Bに対して線B1あるいは線B2が傾斜していてもよい。つまり、第1凹部11の、第2凹部12連通する側とは反対側の面11A、あるいは、線B1を延長して突き当たる面11Bの少なくともいずれか一方の面に対して、第2凹部12の延在方向である線B1あるいは線B2が傾斜していればよい。以下、この第2凹部12の道幅中央を結ぶ中央線B1、B2の方向を第2凹部の延在方向とも呼ぶ。なお、奥側面11Aは、アクチュエータ基板220の外周端220aと平行な方向に延在する。また本実施形態では、第2凹部の延在方向B1、B2は外周端220aに対して傾斜している。なお、第2凹部12の延在方向や第2凹部12の幅方向、とは、アクチュエータ基板220のノズル板に対する接合面に沿う方向のことである。
【0037】
以上のように本実施形態の凹部10によれば、接着剤90のはみ出しを抑制するとともに、第1凹部11に塗布された接着剤90を十分に硬化させることができる。これにより、図7に示すように、第1接合部材であるアクチュエータ基板220と第2接合部材であるノズル板201とを仮接合した接合ユニット300を形成できる。
【0038】
また本実施形態では、第2凹部12は、アクチュエータ基板220の外周端220a側の幅が第1凹部11側よりも小さく設けられる。つまり、第2凹部12は、その一方側の面12Aの傾斜角度が、変曲点12aを境にして変化することで、第2凹部12の外周端220a側の幅が第1凹部11側の幅に対して小さくなっている。このように、第2凹部12の外周端220a側の幅を小さくすることで、接着剤90のはみ出しをより抑制することができる。また、第2凹部12の第1凹部11側の幅を大きくすることで、第2凹部12に入射した光を凹部10内でより拡散させることができ、接着剤90を十分に硬化させることができる。
【0039】
また第2凹部12の幅方向の一方側に設けられた壁面12Aは、他方側に設けられた壁面12Bよりも第1凹部11の側へ入り込んでいる。つまり、壁面12Aの方が壁面12Bよりもその長さが長く、その分だけ第1凹部11側へ長く延在している。このように、一方側の壁面12Aだけを長く設けることで、第2凹部12から入射した光を壁面12Aに沿って第1凹部11へ導入しやすくなり、第1凹部11内の接着剤90をより硬化しやすくすることができる。
【0040】
奥側面11Aは、奥側面11Aに対して傾斜した傾斜面11Cを介して、この傾斜面11Cに連続する連続面11Bに接続されている。言い方を変えると、第1凹部11は、第1凹部11の奥側面11A側の角部に相当する箇所に面取りがなされた形状をしている。このように傾斜面11Cを形成することで、第1凹部11内でUV光Lをより拡散できる。なお、上記の説明では奥側面11Aの面11B側について説明したが、反対側でも、傾斜面を介して連続面11Dに接続されている。連続面11B,11Dは、第2凹部12に接続する面である。
【0041】
また、第1凹部11の全ての側面である、面11A、11B,11Dに対して、第2凹部12の延在方向B1あるいは延在方向B2が傾斜していることが好ましい。これにより、第1凹部11内でUV光を乱反射させ、第1凹部11内の接着剤90を硬化させることができる。なお、ここで言う第1凹部11の全ての側面には、前述の傾斜面11Cのように、第1凹部11の角部に相当する箇所に形成された面取り部などの、幅の小さい微小面は含まない。ただし、第2凹部12の延在方向B1あるいは延在方向B2がこの傾斜面11Cなどに対して傾斜していてもよい。また、第1凹部11の側面とは、第1接合部材と第2接合部材とが接合される方向で、図6の紙面に垂直な方向に延在する面のことである。ただし、厳密に垂直である必要はない。
【0042】
次に、本実施形態の凹部10による接着剤のはみ出し抑制の効果や、接着剤を硬化させる効果を示す実験結果について説明する。実験では、本実施形態の図6に示す形態の凹部である「実施例」と、本実施形態とは異なる構成の凹部である「比較例1」、「比較例2」についてその効果を比較する。比較例1の凹部10’は、図8に示すように、第2凹部を有しておらず、接着剤を塗布する部分がアクチュエータ基板220の外周端に対して2面側で開口している。比較例2の凹部10’は、図9に示すように、本実施形態の第2凹部に相当する部分の延在方向が、アクチュエータ基板220の外周端220aから最も遠い奥側面11A’に対して垂直な方向である。
【0043】
以上の実施例、比較例1、比較例2について、それぞれの第1凹部にUV接着剤を塗布してアクチュエータ基板220とノズル板とを貼り合わせ、UV接着剤を硬化させるための時間をおいた。そして、塗布した「UV接着剤の平均硬化率」と「UV接着剤のはみ出し発生率」について計測した。実施例、比較例1、比較例2のそれぞれについて、N数は24である。
【0044】
また、実験は下記のように行われる。
まず、実施例、比較例1、比較例2のそれぞれのアクチュエータ基板に対して、UV接着剤を図6などのように上から見て円形に塗布する。実施例、比較例1、比較例2のそれぞれについて、UV接着剤の量やその径が同程度となるように塗布する。
【0045】
そして、アクチュエータ基板とノズル板を接合し、時間をおいて接着剤を硬化させる。この状態で、ノズル板側から接合部を目視で観察し、接着剤がはみ出しているか否かを確認する。そして、24回のうち何回はみ出しが発生したかにより、「UV接着剤のはみ出し発生率」を算出する。
【0046】
その後、アクチュエータ基板とノズル板との接合部を剥離させる。そして、アクチュエータ基板の接着剤が塗布された部分を洗浄し、未硬化のUV接着剤を除去する。そして、アクチュエータ基板をノズル板の接合される方向で、図6などの紙面垂直方向から撮像する等して、接着剤の形状を測定する。そして、円形状を100%とした場合の、残った接着剤の面積割合を算出する。この割合を24回で平均し、「UV接着剤の平均硬化率」を算出する。
【0047】
以上の方法により行った実験の結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すように、「UV接着剤の平均硬化率」、「UV接着剤のはみ出し発生率」ともに、実施例の結果が、硬化率100%、はみ出し率0%で最も優れていた。比較例1では硬化率は91%で比較的高かったものの、はみ出し発生率が16.7%で、接着剤のはみ出しが発生していた。これは、凹部が第2凹部を有していないため、凹部内でUV光が広く拡散しやすいものの、はみ出しが発生しやすくなったと考えられる。また、比較例2では接着剤のはみ出しは発生しなかったが、硬化率が70%と低かった。比較例2では、第2凹部に相当する通路部を設けることにより接着剤のはみ出しは生じなかったものの、通路部の延在方向が奥側面に垂直な構成により、第1凹部に相当する部分でUV光が十分に拡散せず、接着剤が硬化しなかったと考えられる。
【0050】
以上のように、本実施形態の構成、具体的には、第2凹部を有し、かつ、第2凹部の延在方向が奥側面に傾斜する構成により、接着剤のはみ出しを防止し、かつ、接着剤を十分に硬化させることができる。
【0051】
また図7に示すように、奥側面11Aは上下方向に波打った凹凸形状を有する。これにより、第1凹部11内でUV光をより拡散できる。ただし、奥側面11Aはその幅方向(図6の上下方向で図7の紙面垂直方向)に凹凸形状を有していてもよいし、第1凹部11や第2凹部12のその他の面に凹凸形状を有していてもよい。これにより、凹部内で光をより拡散できる。
【0052】
次に、凹部10の変形例について説明する。
【0053】
例えば、図10に示す凹部10は、第2凹部12の延在方向Bがアクチュエータ基板220の図10の左右方向の外周端に対して略平行に設けられる。これに対して、第1凹部11はアクチュエータ基板220に対して傾斜して設けられる。これにより、第2凹部12の延在方向Bが第1凹部11の奥側面11Aに対して傾斜している。また第1凹部11は直方体状に限らず、図11に示すように奥側面11A1、11A2がアクチュエータ基板220に対して傾斜した面を有する。これにより、第2凹部12の延在方向Bが奥側面11A1、11A2に対して傾斜している。
【0054】
また図12に示す第2凹部12は、その一方側の面12Aは奥側面11Aに対して傾斜しているが、他方側の面12Bは奥側面11Aに対して略垂直である。この場合でも、第2凹部12の延在方向Bが奥側面11Aに対して傾斜している。
【0055】
以上の実施形態においても、第2凹部の延在方向を奥側面に対して傾斜させることで、第1凹部に塗布された接着剤を十分に硬化させることができる。
【0056】
さらに、第2凹部12の延在方向が一方側から他方側にわたってすべて、奥側面11Aに対して傾斜している必要はない。例えば図13に示す第2凹部12は、その外周端220a側の延在方向B2は奥側面11Aに対して略垂直に設けられるが、第1凹部11側の延在方向B1は奥側面11Aに対して傾斜している。これにより、第1凹部に塗布された接着剤を十分に硬化させることができる。特に、第1凹部11側の延在方向B1を奥側面11Aに対して傾斜させることで、延在方向B2を奥側面11Aに対して傾斜させるよりも、上記の接着剤の硬化に対して有効である。
【0057】
以上の図10図14で示す凹部の構成を組み合わせてもよいことはもちろんである。例えば、図11に示した形状の第1凹部11と図13に示す第2凹部を組み合わせた構成であってもよい。
【0058】
次に、前述の液体吐出ヘッドを備えた、本発明の一実施形態に係るヘッドモジュールついて図14から図16を参照して説明する。図14は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、図15は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図、図16は同ヘッドモジュールのヘッド、ベース部材およびカバー部材を表す分解斜視説明図である。
【0059】
ヘッドモジュール100は、液体吐出ヘッドである複数のヘッド200と、ベース部材102と、カバー部材103と、放熱部材104と、マニホールド105と、プリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。本実施形態では、一例として、ヘッドモジュール100が8つのヘッド200を備えた場合を示しているが、これに限るものではない。
【0060】
プリント基板106とヘッド200の圧電素子とはフレキシブル配線部材260を介して接続される。
【0061】
本実施形態では、複数のヘッド200が間隔を空けてベース部材102に取付けられている。ヘッド200のベース部材102への取付けは、ベース部材102に設けた開口部121にヘッド200を挿入した後、ベース部材102に接合固定したカバー部材103に、ヘッド200のノズル板側の周縁部を接合することにより行われる。また、ヘッド200の外部に設けたフランジ部70aをベース部材102に接合して固定している。
【0062】
なお、ヘッド200とベース部材102に固定構造は限定されるものではなく、接着、カシメ、ねじ固定などで行うことができる。
【0063】
次に、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の一例について図17及び図18を参照して説明する。図17は同装置の概略説明図、図18は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0064】
液体吐出装置である印刷装置500は、搬入手段501と、案内搬送手段503と、印刷手段505と、乾燥手段507と、搬出手段509などを備えている。搬入手段501は連帳紙や連続状のシートなどの連続体510を搬入する。案内搬送手段503は搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する。印刷手段505は連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う。乾燥手段507は連続体510を乾燥する。搬出手段509は連続体510を搬出する。
【0065】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から下流側へ送り出される。その後、連続体510は、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0066】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0067】
ここで、ヘッドユニット550には、図18に示すように、本発明に係る二つのヘッドモジュール100A、100Bを共通ベース部材552に備えている。
【0068】
そして、ヘッドモジュール100の搬送方向Dと直交する方向におけるヘッド200の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッド列1A1、1A2、1B1、1B2、1C1,1C2,1D1,1D2がそれぞれヘッド配列方向に二つ設けられる。ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0069】
なお、本発明に係るヘッドモジュールは、機能部品、機構と一体化して液体吐出ユニットを構成することができる。例えば、ヘッドモジュールと、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを組み合わせることができる。
【0070】
ここで、一体化とは、例えば、ヘッドモジュールと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、ヘッドモジュールと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0071】
また、本発明における「液体吐出装置」には、ヘッドモジュール又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0072】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0073】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0074】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0075】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0076】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0077】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0078】
また、「液体吐出装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0079】
吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0080】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0081】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0082】
以上、本発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能で
あることはいうまでもない。
【0083】
以上の実施形態では、液体吐出ヘッドに設けられた第1接合部材および第2接合部材の例として保持基板とノズル板とを示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、流路板や振動板、共通液室部材、フレーム部材、その他、液体吐出ヘッドに設けられる各部材の接合であってもよい。また、本発明は液体吐出ヘッドに設けられた接合部材同士を接合した接合ユニットに限るものではない。
【0084】
以上の実施形態では接合部材の一方側にのみ凹部が設けられる場合を示したが、その両方によって凹部が構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10 凹部
11 第1凹部(第1部分)
11A 第1凹部の奥側面
11C 傾斜面
12 第2凹部(第2部分)
12A、12B 第2凹部の壁面
90 接着剤
100 ヘッドモジュール
200 液体吐出ヘッド
210 ノズル板(第2接合部材)
220 アクチュエータ基板(第1接合部材)
220a アクチュエータ基板の外周端
300 接合ユニット
500 印刷装置(液体吐出装置)
B、B1、B2 第2凹部の延在方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2009-101645号公報
図1
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図4
図5
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