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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067056
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】下腹脂肪低減剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/17 20060101AFI20230509BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/238 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/284 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/346 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/534 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/538 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/634 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/708 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/744 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/18 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/481 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/59 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/725 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/906 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/233 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 36/8888 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K36/17
A61P3/04
A61K36/232
A61K36/238
A61K36/284
A61K36/346
A61K36/484
A61K36/534
A61K36/538
A61K36/539
A61K36/634
A61K36/65
A61K36/708
A61K36/744
A61K36/9068
A61K36/18
A61K36/481
A61K36/59
A61K36/725
A61K36/906
A61K36/233
A61K36/752
A61K36/8888
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178001
(22)【出願日】2021-10-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼販売店舗:杏林堂薬局(静岡山崎店、静岡小鹿店、藤枝田沼店、藤枝清里店、芳川店、新津店、西貝塚店、高丘東店、静岡大坪店、笠井店、志都呂店、上島駅前店、瀬名川店、内野店、和田店、ピーワンプラザ天王店、掛川花鳥園前店、袋井旭町店、上岡田店、城北店、静岡千代田店、焼津与惣次店、名塚店、姫街道店、和合店) 販売開始日:令和3年7月10日 ▲2▼ウェブサイトのアドレス:https://lohaco.yahoo.co.jp/ https://lohaco.yahoo.co.jp/search?p=%E3%83%93%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88%E9%98%B2%E9%A2%A8%E9%80%9A%E8%81%96%E6%95%A3 ウェブサイトの掲載開始日:令和3年7月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】山口 朋子
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB04
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB26
4C088AB30
4C088AB38
4C088AB40
4C088AB41
4C088AB43
4C088AB58
4C088AB59
4C088AB60
4C088AB62
4C088AB64
4C088AB80
4C088AB81
4C088AC01
4C088AC04
4C088AC11
4C088AC13
4C088AD03
4C088BA09
4C088CA05
4C088MA07
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA70
4C088ZC51
(57)【要約】
【課題】本発明は、腹部領域の中でも、へそより下の領域に高分布する脂肪の低減という新たな用途に用いられる脂肪低減剤を提供することを目的とする。
【解決手段】防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス及び/又は防已黄耆湯エキスは、下腹脂肪低減剤の有効成分として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス及び/又は防已黄耆湯エキスを含有する、下腹脂肪低減剤。
【請求項2】
更年期以降の女性に適用される、請求項1に記載の下腹脂肪低減剤。
【請求項3】
55歳以上の女性に適用される、請求項1又は2に記載の下腹脂肪低減剤。
【請求項4】
上腹囲に対する下腹囲の比率が1.1以上の人に適用され、
前記上腹囲がへそ高さ位置での胴囲であり、前記下腹囲がへそ高さ位置より50mm下位置での胴囲である、請求項1~3のいずれかに記載の下腹脂肪低減剤。
【請求項5】
下腹囲が100cm以上の人に適用される、請求項1~4のいずれかに記載の下腹脂肪低減剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下腹脂肪低減剤に関する。
【背景技術】
【0002】
飽食の現代においては、生活の利便性が高いことも手伝い、人は身体に脂肪をため込みやすくなっている。体への脂肪のつき方は、骨格、姿勢、内臓位置の個人差等の特定しきれない要因により、一様ではない。腹部への脂肪のつき方は特に多様であり、一般的に「腹部」に該当する領域であっても、人によって脂肪厚の分布は大きく異なり、さらに、一般的にウエスト位置より下の部分を指す「下腹部」に該当する領域であっても、人によって脂肪厚の分布は大きく異なる。非特許文献1においても、体脂肪率の増大に伴って身体各部位の皮脂厚がどのような割合で付着しているか、皮脂厚値の分布状態を具体的に検証した結果、特に腹部の皮脂厚値が、他のどの測定部位よりも大きなばらつきが観察されたことが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】民族衞生 62(2), 65-74, 1996-03-31
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
脂肪の低減を求める現代人にとって、脂肪低減剤の服用は、手軽であり継続することもさほど困難ではないため受け入れやすい。しかしながら、これまで、脂肪低減剤において、腹部領域の中でも特定の部位に高分布する脂肪の低減に着眼して検討された例はないため、例えば、腹部領域の中でもへそより下の領域に脂肪が高分布する体型の人に対して、そのような体型でない人と比べて高い有効性を示す脂肪低減剤は未だ知られていない。
【0005】
そこで、本発明は、腹部領域の中でも、へそより下の領域に高分布する脂肪の低減という新たな用途に用いられる脂肪低減剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス及び防已黄耆湯エキスに、へそより下の領域に高分布する脂肪に対して高い低減効果を奏することを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス及び/又は防已黄耆湯エキスを含有する、下腹脂肪低減剤。
項2. 更年期以降の女性に適用される、項1に記載の下腹脂肪低減剤。
項3. 55歳以上の女性に適用される、項1又は2に記載の下腹脂肪低減剤。
項4. 上腹囲に対する下腹囲の比率が1.1以上の人に適用され、
前記上腹囲がへそ高さ位置での胴囲であり、前記下腹囲がへそ高さ位置より50mm下位置での胴囲である、項1~3のいずれかに記載の下腹脂肪低減剤。
項5. 下腹囲が100cm以上の人に適用される、項1~4のいずれかに記載の下腹脂肪低減剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、へそより下の領域に高分布する脂肪の低減という新たな用途に用いられる脂肪低減剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】下腹突出型体型の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による脂肪低減効果を示す。
図2】寸胴型体型の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による脂肪低減効果を示す。
図3】下腹突出型体型の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による下腹脂肪低減効果を示す。
図4】寸胴型体型の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による下腹脂肪低減効果を示す。
図5】55歳以上の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による脂肪低減効果を示す。
図6】40~54歳の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による脂肪低減効果を示す。
図7】55歳以上の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による下腹脂肪低減効果を示す。
図8】40~54歳の女性に対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による下腹脂肪低減効果を示す。
図9】更年期モデルマウスに対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による下腹脂肪低減効果を示す。
図10】更年期モデルマウスに対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による上腹脂肪低減効果を示す。
図11】通常モデルマウスに対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による下腹脂肪低減効果を示す。
図12】通常モデルマウスに対する、防風通聖散(BTS)、大柴胡湯(DST)又は防已黄耆湯(BOT)による上腹脂肪低減効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の下腹脂肪低減剤は、防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス及び/又は防已黄耆湯エキスを有効成分として含有することを特徴とする。
【0011】
有効成分
防風通聖散としては、「新 一般用漢方処方の手引き」(合田 幸広・袴塚 高志監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方処方が好ましく、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ハッカ、ショウキョウ、ケイガイ、ボウフウ、マオウ、ダイオウ、ボウショウ、ビャクジュツ、キキョウ、オウゴン、カンゾウ、セッコウ、及びカッセキからなる混合生薬が挙げられる。書簡によっては、前記生薬の内、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行)や、オウゴンを含まないもの(例えば「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行)がある。また、防風通聖散の処方によっては、ボウフウの代わりにハマボウフウを含むものや、ビャクジュツの代わりにソウジュツを含むものもある。
【0012】
また、防風通聖散を構成する各生薬の分量としては、トウキ1.2重量部、シャクヤク1.2重量部、センキュウ1.2重量部、サンシシ1.2重量部、レンギョウ1.2重量部、ハッカ1.2重量部、ショウキョウ0.3~1.2重量部、ケイガイ1.2重量部、ボウフウ1.2重量部、マオウ1.2重量部、ダイオウ1.5重量部、ボウショウ1.5~3.0重量部、ビャクジュツ2.0重量部、キキョウ2.0重量部、オウゴン2.0重量部、カンゾウ2.0重量部、セッコウ2~3重量部、カッセキ3~5重量部が挙げられる。
【0013】
大柴胡湯としては、「新 一般用漢方処方の手引き」(合田 幸広・袴塚 高志監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方処方が好ましく、サイコ、ハンゲ、オウゴン、キジツ、シャクヤク、ショウキョウ、タイソウ、ダイオウからなる混合生薬が挙げられる。また、大柴胡湯には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている混合生薬(漢方処方)が包含される。
【0014】
また、大柴胡湯を構成する各生薬の分量としては、サイコが3~12重量部、好ましくは4~9重量部;ハンゲが2~8重量部、好ましくは2.5~6重量部;オウゴンが1.5~6重量部、好ましくは2~4.5重量部;キジツが1~4重量部、好ましくは1.5~3重量部;シャクヤクが1.5~6重量部、好ましくは2~4.5重量部;ショウキョウが0.5~2重量部、好ましくは1~1.5重量部;タイソウが1.5~6重量部、好ましくは2~4.5重量部;ダイオウ0.5~2重量部、好ましくは1~1.5重量部が挙げられる。
【0015】
防已黄耆湯としては、「新 一般用漢方処方の手引き」(合田 幸広・袴塚 高志監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方処方が好ましく、ボウイ、オウギ、ジュツ(ビャクジュツ及び/又はソウジュツ)、ショウキョウ、タイソウ、カンゾウからなる混合生薬が挙げられる。また、防已黄耆湯には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている混合生薬(漢方処方)が包含される。
【0016】
また、防已黄耆湯を構成する各生薬の分量としては、ボウイ4~5重量部、オウギ5重量部、ジュツ3重量部、ショウキョウ1~1.5重量部、タイソウ3~4重量部、カンゾウ1.5~2重量部が挙げられる。
【0017】
本発明における、防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス、及び防已黄耆湯は、それぞれ上記の混合生薬を抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することでエキス液として得てもよいし、エキス液を乾燥処理することでエキス末として得てもよい。
【0018】
防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス及び防已黄耆湯エキスの製造において、抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されないものの、例えば水又は含水エタノールが挙げられる。また、乾燥処理としても、特に限定されず、公知の方法、例えば、スプレードライ法や、エキス液の濃度を高めた軟エキスに対して適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0019】
本発明において用いられる、防風通聖散エキス、大柴胡湯エキス及び防已黄耆湯エキスとしては、前述の方法で調製したエキスを使用してもよいし、市販されるものを使用してもよい。例えば、防風通聖散のエキス末としては、「防風通聖散乾燥エキスA」、「防風通聖散乾燥エキスAM」、「防風通聖散乾燥エキスE」、「防風通聖散乾燥エキスEM」(いずれも日本粉末株式会社製)、及び「防風通聖散料乾燥エキス-C」、「防風通聖散料乾燥エキス-F」(いずれもアルプス薬品工業株式会社製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。大柴胡湯のエキス末としては、大柴胡湯乾燥エキスAM、大柴胡湯乾燥エキスSN、及び大柴胡湯乾燥エキス粉末(いずれも日本粉末株式会社製)、並びに大柴胡湯乾燥エキスF及び大柴胡湯乾燥エキス-F(いずれもアルプス薬品工業製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。防已黄耆湯のエキス末としては、防已黄耆湯乾燥エキスA及び防已黄耆湯乾燥エキスAZ(いずれも日本粉末株式会社製)、並びに防已黄耆湯エキス末及び防已黄耆湯乾燥エキス-F(いずれもアルプス薬品工業株式会社製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。
【0020】
本発明の下腹脂肪低減剤において、有効成分の含有量としては、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、有効成分である漢方の乾燥エキス末量換算で、通常5~80重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、更に好ましくは30~50重量%が挙げられる。なお、本発明において、漢方の乾燥エキス末量換算とは、漢方の乾燥エキス末を使用する場合にはそれ自体の量であり漢方の液状のエキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、漢方の乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0021】
他の含有成分
本発明の下腹脂肪低減剤は、前述の有効成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に限定されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0022】
本発明の下腹脂肪低減剤には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や剤型等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0023】
剤型
本発明の下腹脂肪低減剤の剤型については、特に制限されず、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤、フィルム剤、液剤(ドリンク剤)等のいずれであってもよい。これらの剤型の中でも、服用簡易性等の観点から、好ましくは錠剤、顆粒剤、フィルム剤が挙げられる。これらの剤型は、薬学的に許容される基材や添加剤を用いて調製することができ、当該基材や添加剤の種類や配合量についても、製剤技術の分野で公知である。
【0024】
用途
本発明の下腹脂肪低減剤は、腹部(下半身胴部の前部分を意味する。)に分布する脂肪の中でも、へそ高さ位置から50mm下の位置に存在する脂肪を低減する目的で用いられる。つまり、本発明における「下腹脂肪」とは、へそ高さ位置から50mm下の位置に存在する脂肪を意味する。補足すると、本発明における「下腹脂肪」は、腹部に存在する脂肪の中でも、ウエストの脂肪(へそ高さ位置から通常30mm上の位置に存在する脂肪を意味する。)とは区別され、さらに、ウエスト高さ位置より下に存在する脂肪の中でも、腹囲の脂肪(へそ高さ位置に存在する脂肪を意味する。)とは区別される。
【0025】
本発明において、「下腹脂肪」の低減は、下腹囲(へそ高さ位置から50mm下の位置における胴囲を意味する。)の長さが低減していることで確認することができる。
【0026】
本発明の下腹脂肪低減剤は、へそ高さ位置から50mm下の位置における腹の脂肪を低減する効果に優れている。従って、本発明の下腹脂肪低減剤は、好ましくは、腹部領域の中でも、へそ高さ位置から50mm下の位置に、他の部位よりも脂肪が高分布する体型の人に対して適用され;より好ましくは、腹部領域の中でも、へそ高さ位置から50mm下の位置に、へそ高さ位置よりも脂肪が高分布する体型の人に対して好適に適用され;さらに好ましくは、上腹囲(へそ高さ位置での胴囲つまり一般的な腹囲を意味する。)に対する下腹囲(腹囲がへそ高さ位置より50mm下位置での胴囲)の比率が1.1以上の人、好ましくは1.15以上の、下腹脂肪部位の突出が大きい人に適用される。当該比率の範囲の上限としては特に限定されないが、例えば1.3以下、好ましくは1.25以下が挙げられる。
【0027】
また、本発明の下腹脂肪低減剤は、下腹囲が例えば95cm以上、好ましくは100cm以上の人に適用される。当該下腹囲範囲の上限としては特に限定されないが、例えば110cm以下、好ましくは105cm以下が挙げられる。
【0028】
また、本発明の下腹脂肪低減剤は、好ましくは、更年期以降の女性(具体的には45歳以上の女性)に適用され、より好ましくは55歳以上の女性に適用される。
【0029】
用量・用法
本発明の下腹脂肪低減剤は、経口投与によって投与される。本発明の下腹脂肪低減剤の投与量については、低減すべき下腹脂肪の量、年齢等に応じて適宜設定されるが、例えば、1日当たりの摂取量として、漢方エキスの乾燥エキス末量換算で、400~10000mg、好ましくは1300~6000mgが挙げられ、漢方エキスが防風通聖散の場合は、3000~4000mgが特に好ましく、漢方エキスが大柴胡湯エキスの場合は3000~4000mgが特に好ましく、漢方エキスが防已黄耆湯エキスの場合は3000~3500mgが特に好ましい。服用タイミングについては特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、好ましくは食前又は食間が挙げられる。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
エキス末の調製
(1)防風通聖散(BTS)エキス末
原料生薬として、キキョウ1.67(重量部、以下同じ)、ビャクジュツ1.67、カンゾウ1.67、オウゴン1.67、セッコウ1.67、ダイオウ1.25、トウキ1.0、シャクヤク1.0、センキュウ1.0、サンシシ1.0、レンギョウ1.0、ハッカ1.0、ケイガイ1.0、ボウフウ1.0、マオウ1.0、ショウキョウ0.33、カッセキ2.5、ボウショウ1.25の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、防風通聖散エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0032】
(2)大柴胡湯(DST)エキス末
原料生薬として、ショウキョウ0.6(重量部、以下同じ)、タイソウ1.8、サイコ3.6、シャクヤク1.8、キジツ1.2、ハンゲ2.4、オウゴン1.8、ダイオウ0.6の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、大柴胡湯エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0033】
(3)防已黄耆湯(BOT)エキス末
原料生薬として、ショウキョウ1(重量部、以下同じ)、タイソウ3、ボウイ5、ビャクジュツ3、オウギ5、カンゾウ1.5の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、防已黄耆湯エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0034】
試験例1
服用開始前において、45歳以上の女性について、下腹囲(へそ高さ位置より50mm下位置での胴囲)及び上腹囲(へそ高さ位置での胴囲)を測定し、それらの比率に応じて、下腹突出型の体型を有する群と、寸胴型の体型を有する群とに分けた。下腹突出型は、上腹囲に対する下腹囲の比率が1.1以上とし、実際の当該比率は、1.15~1.25であった。寸胴型は、上腹囲に対する下腹囲の比率が1.1未満とし、実際の当該比率は、0.9~1.05であった。
【0035】
下腹突出型群及び寸胴型群を、それぞれ、BTS投与群、DST投与群、BOT投与群に分けた。1日当たり、防風通聖散エキス量:2.5g、大柴胡湯エキス:2.4g、防已黄耆湯エキス3.2gとなるよう、1日で3回に分けて、食前又は食間に服用させた。なお、試験期間中において、特別な運動負荷は実施せず、食事制限も行わなかった。
【0036】
服用前及び服用開始12週間後において、X線CTで全身を撮影し、内臓脂肪、及び皮下脂肪の面積を算出した結果を、図1(下腹突出型)及び図2(寸胴型)に示す。また、服用前及び服用開始12週間後における、下腹囲(へそ高さ位置より50mm下位置での胴囲)の測定結果を、図3(下腹突出型)及び図4(寸胴型)に示す。
【0037】
図1及び図2の対比から明らかな通り、下腹突出型群及び寸胴型群は、全体の脂肪量は同じであるにも関わらず、脂肪低減量は下腹突出型の方が顕著であった。また、図3及び図4の対比から明らかなとおり、下腹囲の低減効果は、下腹突出群で一層顕著となる傾向が確認できた。つまり、図1図4の結果を総合すると、BTS、DST、及びBOTの各漢方エキスは、下腹脂肪を低減する効果が高く、さらに、下腹突出型の体型の人に対して特に高い下腹脂肪低減効果が奏されることが実証された。
【0038】
試験例2
服用開始前において、45歳~54歳(15名)の女性群と、55歳~67歳(15名)の女性群を対象とし、それぞれの群を、さらに、BTS投与群、DST投与群、BOT投与群に分けた。1日当たり、防風通聖散エキス量:3.1g、大柴胡湯エキス:2.4g、防已黄耆湯エキス3.2gとなるよう、1日で3回に分けて、食前又は食間に服用させた。なお、試験期間中において、特別な運動負荷は実施せず、食事制限も行わなかった。
【0039】
服用前及び服用開始12週間後において、X線CTで全身を撮影し、内臓脂肪、及び皮下脂肪の面積を算出した結果を、図5(55歳以上)及び図6(45~54歳)に示す。また、服用前及び服用開始12週間後における、下腹囲(へそ高さ位置より50mm下位置での胴囲)の測定結果を、図7(55歳以上)及び図8(45~54歳)に示す。
【0040】
図5及び図6の対比から明らかな通り、55歳以上の群と45~54歳の群とは、全体の脂肪量は同じであるにも関わらず、BTS、DST、BOTの各漢方エキスの投与による脂肪低減量は55歳以上の群の方が顕著であった。また、図7及び図8の対比から明らかなとおり、BTS、DST、BOTの各漢方エキスの投与による下腹囲の低減効果は、55歳以上の群で一層顕著となる傾向が確認できた。つまり、図5図8の結果を総合すると、BTS、DST、及びBOTの各漢方エキスは、下腹脂肪を低減する効果が高く、さらに、55歳以上の女性に対して特に高い下腹脂肪低減効果が奏されることが実証された。
【0041】
試験例3
更年期モデルマウスを、雌性C57BL/6Jマウスに6週齢時点で卵巣摘出処置を行い、1週間の回復期間を設けることにより作製した。試験は、卵巣摘出マウスにBTS、DST、BOTをそれぞれ2重量%となるように配合した高脂肪食(HFD32、日本クレア株式会社)を投与する群(BTS投与群、DST投与群、BOT投与群)、高脂肪食のみを投与する群(非投与(CONT)群)を設け、8週間飼育後、X線CTでの撮影を行った。
【0042】
一方、通常マウスについても、更年期マウスモデルと同様に、BTS、DST、BOTをそれぞれ2重量%となるように配合した高脂肪食を投与する群(BTS投与群、DST投与群、BOT投与群)、高脂肪食のみを投与する群(非投与群)を設け、8週間飼育後、X線CTでの撮影を行った。
【0043】
マウスの頭から尾へ向かう方向へのCTスキャンで腹部と認識した領域(すなわち腹部開始位置から腹部終了位置までの領域)のうち、腹部開始位置と腹部終了位置との間の中間位置におけるCT画像から導出した内臓脂肪及び皮下脂肪の合計を「上腹脂肪面積」として導出し、上記中間位置と腹部終了位置との間を3等分したうちの上記中間位置から1/3位置におけるCT画像から導出した内臓脂肪及び皮下脂肪の面積の合計を「下腹脂肪面積」として導出した。
【0044】
更年期モデルマウス及び通常マウスそれぞれについて、下腹脂肪面積及び上腹脂肪面積を、非投与(CONT)群と対比した結果を、図9(更年期モデルマウス、下腹脂肪面積)、図10(更年期モデルマウス、上腹脂肪面積)、図11(通常モデルマウス、下腹脂肪面積)及び図12(通常モデルマウス、上腹脂肪面積)に示す。なお、図9図12いずれも、非投与(CONT)群における下腹脂肪面積又は上腹脂肪面積を1とした相対値で示す。
【0045】
図9及び図10の対比から明らかなとおり、更年期モデルマウスにおいて、BTS、DST、BOTの各漢方エキスの投与により、下腹脂肪面積の顕著な減少効果が認められた。また、図11及び図12の対比から明らかなとおり、通常モデルマウスでもBTS、DST、BOTの各漢方エキスの投与により、下腹脂肪面積の顕著な減少効果が認められたが、図9及び図11の対比から明らかなとおり、更年期モデルマウスの方が高い有意水準で下腹脂肪面積の顕著な減少効果が認められた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12