IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧 ▶ NTTエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光信号処理装置 図1
  • 特開-光信号処理装置 図2
  • 特開-光信号処理装置 図3
  • 特開-光信号処理装置 図4
  • 特開-光信号処理装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067090
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】光信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/27 20130101AFI20230509BHJP
【FI】
H04B10/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178069
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】山口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】葉玉 恒一
(72)【発明者】
【氏名】福徳 光師
(72)【発明者】
【氏名】山田 智之
(72)【発明者】
【氏名】小川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹下 諒
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA11
5K102AD01
5K102KA15
5K102KA42
5K102MB11
5K102NA02
5K102PC11
5K102PD14
5K102PD17
5K102PH11
5K102PH13
5K102PH49
5K102PH50
5K102RB11
5K102RB12
(57)【要約】
【課題】入力から出力に至るまでの経路における信号損失が小さく、しかも低コストのトランスポンダ集約機能を提供することが可能な光信号処理装置を提供する。
【解決手段】N個のトランスポンダ41のポートPと、M個のクロスコネクトポート48と、を有するTPA4は、N個のうちのK個のポートPと接続されるK個の光スイッチ42と、N個のうちの(N-K)個と接続されるL個の光スイッチ52と、光スイッチ42とメッシュ状に接続されるM個の光合流分岐器43と、L個の光スイッチ52の各々とメッシュ状に接続されるL個の光合流分岐器44と、光合流分岐器44と接続されたマトリックススイッチ46と、光合流分岐器43、マトリックススイッチ46及びクロスコネクトポート48と接続されたM個の光合流分岐器47と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N個の第1ポートと、M個の第2ポートと、を有する光信号処理装置であって、
N個のうちのK個の前記第1ポートと接続されたK個の第1光スイッチと、
N個のうちの(N-K)個と接続されたL個の第2光スイッチと、
K個の前記第1光スイッチの各々とメッシュ状に接続されたM個の第1光合流分岐器と、
L個の前記第2光スイッチの各々とメッシュ状に接続されたL個の第2光合流分岐器と、
前記第2光合流分岐器と接続されたマトリックススイッチと、
前記第1光合流分岐器、前記マトリックススイッチ、及び前記第2ポートと接続されたM個の第3光合流分岐器と、
を備えた、光信号処理装置。
【請求項2】
前記第1光スイッチが1×Mの光スイッチであり、前記第2光スイッチが1×Lの光スイッチであり、前記第1光合流分岐器がK×1の光合流分配器であり、前記第2光合流分岐器が(N-K)×1の光合流分配器であり、前記マトリックススイッチがL×Mのマトリックススイッチである、請求項1に記載の光信号処理装置。
【請求項3】
前記第1光スイッチがM×1の光スイッチであり、前記第2光スイッチがL×1の光スイッチであり、前記第1光合流分岐器が1×Kの光合流分配器であり、前記第2光合流分岐器が1×(N-K)の光合流分配器であり、前記マトリックススイッチがM×Lのマトリックススイッチである、請求項1に記載の光信号処理装置。
【請求項4】
前記Lは、前記Nから前記Kを差し引いた数に等しい、請求項1から3のいずれか一項に記載の光信号処理装置。
【請求項5】
拡張ポートをさらに備え、
前記マトリックススイッチと前記第2光合流分岐器は、前記拡張ポートを介して接続されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の光信号処理装置。
【請求項6】
前記第1ポート、前記第2ポート、前記第1光スイッチ、前記第2光スイッチ、前記第1光合流分岐器、前記第2光合流分岐器、前記第3光合流分岐器、前記マトリックススイッチ及び前記拡張ポートの少なくとも一部は、共通の光導波路基板上に形成されている、請求項5に記載の光信号処理装置。
【請求項7】
前記第3光合流分岐器と前記第2光合流分岐器との間に、光アンプをさらに備えた、請求項1から6のいずれか一項に記載の光信号処理装置。
【請求項8】
前記第3光合流分岐器は、合流分岐比を変更する機能を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の光信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネット等のデータ通信ネットワークの広がりにより、光通信ネットワークにはいっそうの大容量化が望まれている。このようなネットワーク需要の拡大に対応するため、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)通信が実用化されている。また、近年は、光信号を電気信号に変換することなく、光信号のノードを波長ごとに切り替える波長選択スイッチ(WSS: Wavelength Selective Switch)の需要も高まりつつある。波長選択スイッチを用いるノードの構成をROADM(Reconfigurable optical add/drop multiplexing)システムという。非特許文献1には、複数のノードからの光信号を処理するマルチディグリーROADMと呼ばれる構成のノードが開示されている。また、非特許文献2には、このようなシステムにおいて、任意のノードからの光信号を任意の送受信器(トランスポンダ)に接続するトランスポンダーアグリゲーター(TPA:Transponder Aggregator)として機能する、マルチキャストスイッチ(MCS:Multicast Switch)を使う構成が開示されている。
【0003】
図1は、非特許文献2に開示されたMCSを説明するための模式的な機能ブロック図であって、マルチディグリーの光ノードの構成を示している。図1に示すように、マルチディグリーの光ノードは、SPL(スプリッタ)とWSSとを組み合わせたマルチキャストスイッチ102と、WSS103とから構成されるクロスコネクト部(WXC:Wavelength Cross Connect)101を含んでいる。光ノードには、M個の入力ファイバ111から11MからWDM信号が入力される。また、入力された信号のうちの光ノードでアド・ドロップされるべき信号はドロップTPAであるTPA104aに送られ、TPA104aからN個のトランスポンダ131から13Nのいずれかに送信される。同様に、トランスポンダ131から13Nにおいて発生した光信号は、アドTPAであるTPA104b及びクロスコネクト部101のWSS103を介して、出力ファイバ121から12Mのいずれかに出力される。なお、本明細書において、注目素子を基準にし、光信号が入力(受信)、または出力(送信)されるノードを指して、以降「方路」とも記す。
【0004】
図2は、図1に示したTPAのうち、ドロップTPAであるTPA104aを説明するための機能ブロック図である。ただし、アドTPAであるTPA104bは、TPA104aと同様の構成を有するため、本明細書では、TPA104aの説明をTPA104bの説明に代えるものとする。図2に示すように、TPA104aは、各入力ファイバ111から11Mに対応した入力を備えるM個の1入力N出力(以下、1×Nとも記す)スプリッタ201から20Mと、1×Nスプリッタ201から20Mの各々から光信号を受信して出力するM×1スイッチ211と、M×1スイッチ211の出力を入力し、フィルタリングするN個の光フィルタ221から22Nと、を含む。光フィルタ221から22Nは、各々フィルタリングした信号を、図1に示すトランスポンダ131から131Nに出力する。
【0005】
ただし、MCSは、入力された光信号の分岐を伴うため、原理的に光信号の損失を伴う。すなわち、MCSでは、1×Nスプリッタ201から20Mによって光信号はN個に分岐されるため、光信号の強度は1/Nに減少する。例えば、8個のトランスポンダが接続される場合に9dBの原理損失が、16個のトランスポンダが接続される場合に12dBの原理損失が発生する。一般に、トランスポンダは、最小受信感度(信号を受信できる最小の光パワー)以上の光パワーの入力を必要とするため、分岐できる数Mには上限が存在する。この上限による規制を緩和するため、図1に示すマルチキャストスイッチ102とTPAとの間にEDFA(Erbium-doped Fiber Amplifier)等の光アンプが挿入される場合がある。
【0006】
しかし、EDFAは、光信号の強度を高める一方、ASE(Amplified Spontaneous Emission)ノイズを発生するため、OSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio)を劣化させるという欠点がある。これを解消するため、図2に記載のように、トランスポンダとMCSとの間に光フィルタ221から22Nを挿入してASEを除去することが考えられる。しかし、光フィルタの挿入は、部品点数を増やす上、EDFAで補償したはずの信号損失の増加につながる等の欠点がある。
【0007】
特許文献1には、光信号の損失を解消するため、複数の波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)と非波長選択スイッチを組みあわせ、原理損の存在しないTPA機能(M×N WSS)を実現することが記載されている。図3は、特許文献1のこのような構成を説明するための図であって、光導波路と空間光学系を組み合わせたSPOC(Spatial and Planar Optical Circuit)と呼ばれる光学系によるM×N WSSを示している。図3に示す構成は、図2に示すMCSにおけるM個の1×Nスプリッタを、空間光学系で接続されるトランスポンダを選択するための、M個の1×N WSSに置き換えたものと言える。
【0008】
図3において、図1に示したクロスコネクト部101に接続されるIn(WDM側)(図ではa、b、cの3入力)から、WDM信号が入力される。WDM信号は、光導波路に集積されたレンズ機能を有するSBT(Space Beam Transformer)回路を介して、コリメート光に変換されて空間光学系に出力される。この際、入力導波路a、b、cは、光波の出射方向が異ならしめる。空間光学系において、WDM信号は、回折格子Grにより紙面の垂直方向に信号を波長分離した後、複数枚のレンズLSP、LDPを介してスイッチングエレメントである液晶素子LCに波長ごとにy軸方向に異なる位置に入射する。この際、入力される導波路a、b、cに応じて液晶素子LCの位置はx軸方向に異なる位置A、B、Cに入射する。液晶素子LCは2次元状に個別に光位相を変調することができる複数のピクセル素子から構成される。液晶素子LCでは波長ごとに紙面の上下方向(x軸方向)に偏向して反射する。すなわち、紙面垂直方向に分波された光信号はそれぞれが異なる方向に、かつ入力導波路a、b、cごとに独立に偏向反射される。反射された光信号は、SBT11_1~11_4のいずれかに結合して光導波路光学系に入力される。光導波路光学系に入力された光信号は、入力導波路a、b、cに応じて、接続導波路12_1-a~12_1-c、12_2-a~12_3-c、…、12_4-a~12_4-cのいずれかを伝搬し、N個のM×1スイッチ13_1~13_3を通過して出力導波路1~4のいずれかから出力されてトランスポンダに入力される。
【0009】
以上説明したM×N WSSは、分岐に起因する損失を生じない。加えて、空間光学系で構成されるWSS機能が波長フィルタ機能を提供するため、信号波長以外の波長のノイズ成分が除去される。このように、M×N WSS構成は、原理損失が存在せず、波長選択機能が自動的に内包されるという点でMCSに比較して優れた機能、性能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-212128号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】M. Fukutoku, “Next Generation ROADM technology and applications”, paper M3A.4, OFC, 2015
【非特許文献2】T. Watanabe et al., “Silica-based PLC Transponder Aggregators for Colorless, Directionless, and Contention less ROADM”, paper OThD3.1, OFC, 2012
【非特許文献3】Y. Ikuma et al., “Low-loss transponder aggregator using spatial and planar optical circuit”, Journal of Lightwave Technology, Vol.34, No. 1, 2016
【非特許文献4】P. D. Colbourne et al. “Contentionless Twin 8x24 WSS with Low Insertion Loss”, paper Th4A.1, OFC, 2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、M×N WSSにおいては、高価なWSSを接続される方路の数だけ設置する必要があり、この点がスケーラビリティの観点で課題となる。例えば、8方路であれば8台、16方路であれば16台のWSSを包含する必要がある。ひとつの光学系で実現し得るWSSの最大集積数は液晶素子LCの面積Sで制限され、
M×N∝S
の関係がある。
【0013】
最大集積数と液晶素子LCの面積Sとの関係は、例えば、非特許文献3や、非特許文献4に記載されている。非特許文献3、非特許文献4においては、M=8、N=24の場合、すなわちM×N=192程度の性能指数の例が示されている。これは、液晶素子LCの制限によるものであり、これ以上の規模の拡大は困難である。このような制限を受ける場合、例えば、M=16の16方路のTPAを実現しようとすると、WSSを16方路分用意しなければならないにも関わらず、接続可能な出力側のNの数が12に限定されることになる。
【0014】
さらに、M×NのTPAのWSSは、空間光学系と導波路光学系を一体で形成する必要があるため、製造が難しい。特に、特許文献1に記載の熱光学効果を利用するM×1スイッチは、発生する熱によって光学系のアライメントが変化するため、信頼性の観点で課題を有する。
【0015】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、入力から出力に至るまでの経路における信号損失が小さく、しかも低コストのトランスポンダ集約機能を提供する光信号処理装置を提供することに係る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明の一形態の光信号処理装置は、N個の第1ポートと、M個の第2ポートと、を有する光信号処理装置であって、N個のうちのK個の前記第1ポートと接続されたK個の第1光スイッチと、N個のうちの(N-K)個と接続されたL個の第2光スイッチと、K個の前記第1光スイッチの各々とメッシュ状に接続されたM個の第1光合流分岐器と、L個の前記第2光スイッチの各々とメッシュ状に接続されたL個の第2光合流分岐器と、前記第2光合流分岐器と接続されたマトリックススイッチと、前記第1光合流分岐器、前記マトリックススイッチ、及び前記第2ポートと接続されたM個の第3光合流分岐器と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
以上の形態によれば、入力から出力に至るまでの経路における信号損失が小さく、しかも低コストのトランスポンダ集約機能を提供する光信号処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】非特許文献2に開示されたMCSを説明するための模式的な機能ブロック図である。
図2図1に示したTPAのうち、ドロップTPAを説明するための機能ブロック図である。
図3】特許文献1に記載の、複数の波長選択スイッチと非波長選択スイッチを組みあわせた構成を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態の光信号処理装置を説明するための図である。
図5図4に示す実施形態の光信号処理装置を使った実施例の結果の表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[TPAの構成]
図4は、本発明の一実施形態の光信号処理装置であるTPA4の概略を示す図である。本TPA4は、外部との間で光信号を出力または入力する第1ポートと第2ポートとを有している。本実施形態は、N個のトランスポンダ411から41Nと接続されるポートPが第1ポートに対応し、外部の図示しないクロスコネクト部と接続されるクロスコネクトポート481から48Mが第2ポートに対応する。また、TPA4は、N個のうちのK個のトランスポンダ411から41Kと接続されるK個の第1光スイッチである光スイッチ421から42Kと、N個のうちの(N-K)個のトランスポンダ41(K+1)から41Nと接続されるL個の第2光スイッチである光スイッチ52(K+1)から52Nと、を備えている。また、TPA4は、光スイッチ421から42Kとメッシュ状に接続されるM個の第1光合流分岐器である光合流分岐器(光スプリッタ)431から43Mと、L個の光スイッチ52(K+1)から52Nとメッシュ状に接続されるL個の光合流分岐器441から44Lと、を備えている。さらに、TPA4は、光合流分岐器441から44Lと接続されたマトリックススイッチ46と、光合流分岐器(光スプリッタ)431から43M、マトリックススイッチ46及び光合流分岐器441から44Lと接続されるM個の光合流分岐器471から47Mと、を備えている。光合流分岐器471から47Mは、光合流分岐器431から43Mとクロスコネクトポート48との間を通る光信号を分岐してマトリックススイッチ46へ出力する、またはマトリックススイッチ46から出力された光信号を光合流分岐器431から43Mとクロスコネクトポート48との間を通る光信号に合流させる
【0020】
本明細書では、上記の構成において、トランスポンダ411から41Nの各々を区別する必要がない場合は単に「トランスポンダ41」と記す。また、クロスコネクトポート481から48Mの各々を区別する必要がない場合は単に「クロスコネクトポート48」と記す。さらに、光スイッチ421から42Kの各々を区別する必要がない場合には単に「光スイッチ42」と記し、光スイッチ52(K+1)から52Nの各々を区別する必要がない場合には単に「光スイッチ52」と記し、光合流分岐器431から43Mの各々を区別する必要がない場合には単に「光合流分岐器43」と記し、光合流分岐器441から44Lの各々を区別する必要がない場合には単に「光合流分岐器44」と記し、光合流分岐器471から47Mの各々を区別する必要がない場合には単に「光合流分岐器47」と記す。
【0021】
本実施形態は、トランスポンダ41の側を入力とし、クロスコネクトポート48の側を出力として説明する。そして、図4に示すように、入力数Nを「8」、出力数Mを「8」に設定した。そして、入力されるN個の光信号を光スイッチ42と光スイッチ52とに入力するようにしている。N個のうちの光スイッチ42に入力される光信号数の数をK個とすると、光スイッチ42に入力される光信号数の数Lは、NからKを差し引いた数に等しくなる。する。また、光スイッチ42は1入力、M出力(1×8)の光スイッチ、光スイッチ52は1入力、L出力(1×4)の光スイッチ、光合流分岐器43はK入力、1出力(4×1)、光合流分岐器44はL入力、1出力(4×1)である。したがって、本実施形態では、1×8の光スイッチ421から424がトランスポンダ411から414の光信号を入力する。また、1×4の光スイッチ525から528がトランスポンダ415から418の光信号を入力する。ただし、当然のことながら、本実施形態は、N、M、K、Lといった数値を上記の例に限定するものではなく、Kは、Nより小さな整数であれば、どのような数であってもよい。
【0022】
また、TPA4は、トランスポンダ41の側を出力とし、クロスコネクトポート48の側を入力として動作することも可能である。すなわち、TPA4はDEMUX側ドロップ側として動作する。このような場合、当然のことながら、光スイッチ42、52、光合流分岐器43、44、47の入力と出力の関係も反対となる。
【0023】
また、本実施形態は、トランスポンダ41と光スイッチ42及びトランスポンダ41と光スイッチ52との間にK個の光フィルタ511から51K、51(K+1)から51Nがそれぞれ接続されている(各々を区別する必要がない場合、単に「光フィルタ51」と記す)。ただし、本実施形態は、光フィルタ51を備える構成に限定されるものでなく、光信号をフィルタリングする必要がない場合、光フィルタ51をTPA4から除き、部品点数の低減を図ってもよい。
【0024】
各光スイッチ42の8つの出力信号は、8個の光合流分岐器43の各々に対し、メッシュ状に接続される。ここで、「メッシュ状」とは、図4に示すように、1つの光スイッチ42から出力される8つの出力信号が、8つの光合流分岐器43の全てに入力することを指す。メッシュ状の接続によれば、光合流分岐器43の各々に合計4つの光信号が入力される。また、各光スイッチ52の4つの出力信号は、4個の光合流分岐器44の各々に対し、メッシュ状に接続される。このため、光合流分岐器44の各々には合計4つの光信号が入力される。このような光合流分岐器43と光スイッチ42は、4×8のマルチキャストを構成する。また、光合流分岐器44と光スイッチ52は、4×4のマルチキャストスイッチを構成する。
【0025】
光合流分岐器47は、光合流分岐器43とクロスコネクトポート48との間で光信号を分岐し、分岐した光信号をマトリックススイッチ46に接続する。また、光合流分岐器44の出力信号もマトリックススイッチ46に接続される。マトリックススイッチ46と光合流分岐器44との間には光アンプ451から45Lが接続され(以下、各々を区別する必要がない場合、単に「光アンプ45」と記す)、光合流分岐器44からマトリックススイッチ46に向かう光信号を増幅する。光合流分岐器441から44Lと光アンプ451から45Lとを接続する複数のノードを拡張ポート群491と記し、光アンプ451から45Lと、マトリックススイッチ46とを接続する複数のノードを拡張ポート群492と記す。
【0026】
上記構成では、光アンプ45が拡張ノード491、492上に設けられている。ただし、光アンプは、トランスポンダ41(K+1)からトランスポンダ41Nから入力された光信号を増幅するものであればよく、拡張ノード491、492上に設けられることに限定されない。光アンプ45は、光合流分岐器47と光合流分岐器44との間に配置されることが好ましい。
【0027】
本実施形態は、以上の構成が光導波路基板470上に形成され、一体化したものであってもよい。また、以上の構成は、複数の素子が組み合わされて、上記の機能を発揮するものであってもよい。
【0028】
次に、上記構成おける光信号の伝送について説明する。トランスポンダ411から41KによってTPA4に入力された光信号は、それぞれ光フィルタ51を通って4個の光スイッチ42に入力する。光スイッチ42は、光合流分岐器43のうちのいずれか一つを選択して出力信号を出力する。光合流分岐器43は、入力した光信号のうちの最大4つを選択して合流し、光合流分岐器47に出力する。一方、トランスポンダ41(K+1)から41NによってTPA4に入力された光信号は、それぞれ光フィルタ51を通って光スイッチ52に入力する。光スイッチ52は、光合流分岐器44のうちのいずれか一つを選択して出力信号を出力する。光合流分岐器44の出力信号は、光アンプ45により増幅されて、マトリックススイッチ46に接続される。マトリックススイッチ46は、光合流分岐器47に出力信号を出力し、この出力信号は光合流分岐器43の出力信号と光合流分岐器47において合流する。
【0029】
[作用及び効果]
本実施形態のTPA4は、M×Nのマルチキャストスイッチと同様の機能を有するが、損失の観点で有利である。以下、本実施形態の光信号処理装置であるTPA4の作用及び効果について説明する。なお、この説明は、クロスコネクトポート48の側から見た、TPA4のDeMux(DeMultiplexer)としての動作を例にして行う。すなわち、図4に示したM=8、N=8の例では、クロスコネクトポート48から入力された光信号は、8個の光合流分岐器47によって分岐され、一部が光合流分岐器43に入力され、他の一部がマトリックススイッチ46に伝搬される。ここでは、入力された光信号が2分岐される場合を考え、その分岐比をγ:1-γとする。
【0030】
ここで、光合流分岐器47によって光信号を分岐する効果について説明する。TPAにおいては、接続されるトランスポンダの数により信号損失の程度が変化することが知られていて、例えば、8入力(または8出力)、4出力(または4出力)の場合、入力から出力までの信号損失は許容できる程度に小さくなる。本発明の発明者は、この点に注目し、8×8のTPA4において光信号を分岐して、信号損失の少ない8入力、4出力のマルチキャストスイッチ、及び4入力4出力のマルチキャストスイッチに分割して処理する。すなわち、クロスコネクトポート481から48Mとトランスポンダ411から41Kが1つのマルチキャストスイッチを構成し、クロスコネクトポート481から48Mとトランスポンダ41(K+1)から41Nが1つのトランスポンダ集約機能を構成する。このようにすることにより、本実施形態は、トランスポンダ411から41Kとクロスコネクトポート481から48Mとの間の信号損失を最小限に抑えている。
【0031】
上記構成において、光合流分岐器47が光信号を光合流分岐器43とマトリックススイッチ46とから合流する、または振り分ける割合(合流分岐比)γの好ましい値は、TPA4の用途、入出力のポート数、仕様によって異なっている。このような条件に適合するように、本実施形態の光合流分岐器47は、合流分岐比を変更する機能を有していてもよい。さらに、本実施形態は、図4に示すように、マトリックススイッチ46と光合流分岐器44との間に光アンプ45を設け、マトリックススイッチ46に振り分けられた信号の信号損失を補ってもよい。
【0032】
次に、光合流分岐器43にクロスコネクトポート48から入力された光信号は、光合流分岐器43によってパワーが4分割された後、光スイッチ42を介してトランスポンダ411から41Kに入力される。以上の光信号の経路を、ここでは「経路1」とする。経路1におけるクロスコネクトポート48からトランスポンダ41に至るまでの伝搬損失IL1は、以下の式(1)によって表される。
L1=-10×log(γ)-10×log(1/K)・・・式(1)
【0033】
一方、光合流分岐器47によって分岐され、マトリックススイッチ46に伝搬された8個の光信号は、そのうちの4個がマトリックススイッチ46によって選択され、拡張ポート群492に出力される。そして、光アンプ45を介して拡張ポート群491を通り、光合流分岐器441から44Lによって4つに分岐される。分岐された各光信号は、光スイッチ52(K+1)から52Nに入力され、光フィルタ51を通ってトランスポンダ41(K+1)から41Nに到達する。このような経路を、本実施形態では経路2とする。経路2のクロスコネクトポート48からトランスポンダ41に至るまでの伝搬損失IL2は、以下の式(2)によって表される。式(2)において、Gampは、光アンプ45のゲインである。
L2=-10×log(1-γ)-10×log(1/(N-K))-Gamp
・・・式(2)
【0034】
光アンプ45を有する本実施形態は、経路2を通過する光信号の損失を補償可能であるのに対して、経路1を通過する光信号は、分岐により損失-10×log(γ)及び-10×log(1/K)を受ける。ただし、このような本実施形態は、光合流分岐器47のγやトランスポンダ41のうちの光スイッチ52と接続されるトランスポンダの数(すなわちK)を調整することで経路1の信号損失を充分に低減することができる。そして、経路1における信号損失を低減するのに最適な条件を設定した上で、経路2において生じる信号損失を光アンプ45によって補償することができる。このような構成は、光アンプの数を抑えて素子の部品点数の増加及び大型化を防ぐことに有利である。また、本実施形態は、上記したように、光スイッチ52及び光合流分岐器44の数を、入力数Nから経路1に接続されるトランスポンダの数Kを差し引いた値Lとする。これは、経路2に接続されるトランスポンダの数だけの信号を経路2に伝搬すればよいためである。
【0035】
以上、説明したように、本実施形態の光信号処理装置は、WSSを用いることが無く、トランスポンダ41からクロスコネクトポート48までの光信号を分岐して信号損失の少ない8入力、4出力のマルチキャストスイッチ、及び4入力4出力のマルチキャストスイッチを構成することにより、光信号処理装置における信号損失を低減することができる。このような構成は、方路毎にWSSを設ける公知の構成と比較して部品点数を低減し、素子面積の増大を抑えることができる。また、本実施形態は、分岐した方路に光アンプ45を設ける場合であっても、光アンプ45の数が方路の数NからKを差し引いた数Lでよいため、公知の構成よりも光アンプの数が少ないことが明らかである。さらに本実施形態の光信号処理装置では、方路数Mが12、16等と拡大した場合においてもKの数を適切に設定することによって必要な光アンプの台数が増加することがない、あるいは台数の増加を抑えることができるという効果を有する。このような本実施形態は、トランスポンダ集約機能のコストを抑えながら、高品質の信号を取り出せる光信号処理装置を提供することが可能である。
【実施例0036】
次に、以上説明した実施形態の実施例を、具体的な数値を挙げて説明する。本実施形態例では、トランスポンダの数Nを8、クロスコネクトポート数をM、合流分岐比γを0.9の条件を設定した。また、本実施例は、クロスコネクトポートを入力側、トランスポンダを出力側とする。このような条件によれば、M個のポートから入力した光信号の90%が実施形態で説明した経路1に、10%が経路2に分岐されるとする。本発明者らは、このとき、Kを変化させて各経路1の信号損失と、経路2の信号損失が等しくなるように、光アンプ45(図4)のゲインGamp(光フィルタの信号損失を含む)を設定した。この結果を図5に表として示す。なお、公知のN=8のマルチキャストスイッチの原理損失は9dBである。
【0037】
図5の表において、γは図4の光合流分岐器47の合流分岐比、Kはトランスポンダ411から41Kに接続される光スイッチ42の数、Gampは光アンプ45のゲイン、経路1はトランスポンダ411から41Kとクロスコネクトポート48との間の経路、経路2はトランスポンダ41(K+1)から41Nとクロスコネクトポート48との間の経路、LはN-K、つまりトランスポンダ41(K+1)から41Nに接続される光スイッチ52の数をそれぞれ示している。このようなLは、図4に示すように、図4の光アンプ45の数と一致する。
【0038】
図5の表に示すように、K=2のとき、光アンプの利得Gampを14.3dBに設定する場合は、経路1、2の信号損失はともに3.5dBである。K=4のとき、光アンプの利得Gampを9.5dBに設定する場合は、経路1、2の信号損失はともに6.5dBである。K=6のとき光アンプの利得Gampを4.8dBに設定する場合は、経路1、2の信号損失は8.2dBである。いずれの場合も公知のマルチキャストスイッチよりも小さいことが分かる。また、光合流分岐器47の合流分岐比γは、光導波路上に形成したマッハツェンダ干渉計等を用いて可変とすることができる。このようにすれば、光アンプ45への利得性能要求を緩和することが可能である。図5に示した表に示すように、γ=0.8、K=2の条件においては、γ=0.9の場合に比べて3.5dB程度低い利得の光アンプでもよいことがわかる。また、このような場合でも、TPAとしての信号損失は原理損失9dBに対して、4dBと十分に低減されることがわかる。
【符号の説明】
【0039】
41 トランスポンダ
42,52 光スイッチ
43、44、47 光合流分岐器
45 光アンプ
46 マトリックススイッチ
48 クロスコネクトポート
51 光フィルタ
470 光導波路基板
491,492 拡張ポート群
図1
図2
図3
図4
図5