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特開2023-67092積層体、粘着層付き積層体、偏光フィルム、粘着層付き偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067092
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】積層体、粘着層付き積層体、偏光フィルム、粘着層付き偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230509BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20230509BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B32B7/06
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178072
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴道
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149BA02
2H149CA02
2H149CB04
2H149CB06
2H149EA12
2H149FA03W
2H149FA03X
2H149FA04Z
2H149FA05X
2H149FA06X
2H149FA12Z
2H149FA51X
2H149FA53X
2H149FA54X
2H149FB01
2H149FD05
2H149FD08
2H149FD18
2H149FD35
2H149FD47
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK02A
4F100AK07C
4F100AK11B
4F100AK11J
4F100AK21E
4F100AK28B
4F100AK28J
4F100AK42C
4F100AL02B
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA04B
4F100CA07A
4F100CA07B
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EJ38C
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4F100EJ86A
4F100EJ86B
4F100EJ91
4F100GB48
4F100JD04A
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4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK07C
4F100JL13D
4F100JL14C
4F100JN10E
4F100JN30A
4F100JN30B
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】剥離可能な基材フィルムから樹脂層を剥離した際の、基材フィルムの凹凸構造に起因する樹脂層の表面凹凸の発生が緩和された積層体、これを用いた粘着層付き積層体、偏光フィルム、粘着層付き偏光フィルム、及び偏光フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】第一樹脂層、第二樹脂層及び剥離可能な基材フィルムをこの順で備え、前記第一樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含み、前記第二樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含む、積層体を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一樹脂層、第二樹脂層及び剥離可能な基材フィルムをこの順で備え、
前記第一樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含み、
前記第二樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含む、積層体。
【請求項2】
前記第一樹脂層の厚みが、0μmより大きく12μm以下であり、前記第二樹脂層の厚みが0μmより大きく12μm以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第一樹脂層の厚みと第二樹脂層の厚みとの合計が12μm以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第一樹脂、及び前記第二樹脂は、それぞれ独立して、厚み100μmのフィルムとして測定される40℃90%RHでの水蒸気透過率が、4g/(m・day)以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第一樹脂層、及び前記第二樹脂層は、それぞれ独立して、面内レターデーションが5nm以下であり、かつ厚み方向のレターデーションの絶対値が5nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記第一樹脂層、及び前記第二樹脂層は、それぞれ独立して、光弾性定数が5×10-13cm/dyn以下である、請求項1~5までのいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第一樹脂、及び前記第二樹脂は、それぞれ独立して、脂環式構造を有する重合体を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記第二樹脂は、前記脂環式構造を有する重合体が、ブロック共重合体水素化物[E]であり、
前記ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物であり、
前記ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と、重合体ブロック[B]又は重合体ブロック[C]とからなるブロック共重合体であり、
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックであり、
重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックであり、
重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層の少なくとも一方が、紫外線吸収剤を含み、前記紫外線吸収剤の含有量が2重量%以上40重量%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記第二樹脂が、可塑剤及び/又は軟化剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
前記可塑剤及び/又は軟化剤が、エステル系可塑剤及び脂肪族炭化水素ポリマーからなる群より選ばれる一種以上である、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記第一樹脂及び前記第二樹脂の少なくとも一方が、有機金属化合物を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項13】
前記剥離可能な基材フィルムの引張弾性率が2000MPa以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項14】
第一樹脂層、第二樹脂層及び粘着層をこの順に備え、
前記第一樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含み、
前記第二樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含み、
前記粘着層の厚みが、2μm以上25μm以下である、粘着層付き積層体。
【請求項15】
偏光子層、第一樹脂層及び第二樹脂層をこの順で備え、
前記第一樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含み、
第二樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含む、偏光フィルム。
【請求項16】
前記偏光子層の厚みが、1μmより大きく12μm以下である、請求項15に記載の偏光フィルム。
【請求項17】
請求項14に記載の粘着層付き積層体と、前記粘着層付き積層体の前記第一樹脂層上に設けられた偏光子層とを有する、粘着層付き偏光フィルム。
【請求項18】
請求項15または16に記載の偏光フィルムの製造方法であって、
剥離可能な基材フィルム上に、前記第二樹脂を含む第二樹脂液を塗布し乾燥させて第二樹脂層を形成する工程と、
前記第二樹脂層上に、前記第一樹脂を含む第一樹脂液を塗布し乾燥させて第一樹脂層を形成する工程と、
偏光子層と前記第一樹脂層とを貼合する工程と、
前記第二樹脂層から前記剥離可能な基材フィルムを剥離する工程と、をこの順に含む偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、粘着層付き積層体、偏光フィルム、粘着層付き偏光フィルム及び偏光フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの表示装置においては、様々な目的の為、偏光フィルムが配置される場合がある。偏光フィルムは、一般的に、偏光子層と、偏光子層の表面に設けられた樹脂層とを有する。樹脂層は、偏光子層の保護層として機能できる。偏光子フィルムにおいては、転写法により偏光子層に対して樹脂層を配置する技術の開発が進められている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/087806号
【特許文献2】特開2014-130298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光フィルムにおいて、偏光子層の保護が不十分である場合、例えば、温度変化により偏光子層にクラックが生じる場合があることから、保護層として用いられる樹脂層には偏光子層のクラックを抑制しうることが求められる。
【0005】
また、偏光子層の保護層を転写法を用いて形成する際に用いられる剥離可能な基材フィルムは、その表面に微細な凹凸構造を有する場合がある。凹凸構造の一例としては、フィッシュアイと呼ばれる微小な凹凸構造が挙げられる。このような基材フィルムに対し、樹脂を含む樹脂液を塗布し乾燥させて樹脂層を形成した場合、樹脂層に基材フィルムの凹凸構造が転写されてしまう場合がある。このような樹脂層を偏光フィルムの保護層として用いた場合、基材フィルムの凹凸構造に起因する表面凹凸が保護層に生じてしまい、これを用いた表示装置の表示品位を低下させてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたものであって、偏光フィルムの偏光子層のクラックを抑制しうる樹脂層(保護層)として用いることができ、剥離可能な基材フィルムから樹脂層を剥離した際に、基材フィルムの凹凸構造に起因する樹脂層の表面凹凸の発生を緩和できる積層体、これを用いた粘着層付き積層体、偏光フィルム、粘着層付き偏光フィルム、及び偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、第一樹脂層、第二樹脂層及び剥離可能な基材フィルムをこの順に備える積層体において、第一樹脂層及び第二樹脂層に含まれる樹脂の貯蔵弾性率をそれぞれ調整することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のものを含む。
【0008】
〔1〕 第一樹脂層、第二樹脂層及び剥離可能な基材フィルムをこの順で備え、前記第一樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含み、前記第二樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含む、積層体。
〔2〕 前記第一樹脂層の厚みが、0μmより大きく12μm以下であり、前記第二樹脂層の厚みが0μmより大きく12μm以下である、〔1〕に記載の積層体。
〔3〕 前記第一樹脂層の厚みと第二樹脂層の厚みとの合計が12μm以下である、〔1〕または〔2〕に記載の積層体。
〔4〕 前記第一樹脂、及び前記第二樹脂は、それぞれ独立して、厚み100μmのフィルムとして測定される40℃90%RHでの水蒸気透過率が、4g/(m・day)以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔5〕 前記第一樹脂層、及び前記第二樹脂層は、それぞれ独立して、面内レターデーションが5nm以下であり、かつ厚み方向のレターデーションの絶対値が5nm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔6〕 前記第一樹脂層、及び前記第二樹脂層は、それぞれ独立して、光弾性定数が5×10-13cm/dyn以下である、〔1〕~〔5〕までのいずれか一項に記載の積層体。
〔7〕 前記第一樹脂、及び前記第二樹脂は、それぞれ独立して、脂環式構造を有する重合体を含む、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔8〕 前記第二樹脂は、前記脂環式構造を有する重合体が、ブロック共重合体水素化物[E]であり、前記ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物であり、前記ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と、重合体ブロック[B]又は重合体ブロック[C]とからなるブロック共重合体であり、重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックであり、重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックであり、重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである、〔7〕に記載の積層体。
〔9〕 前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層の少なくとも一方が、紫外線吸収剤を含み、前記紫外線吸収剤の含有量が2重量%以上40重量%以下である、〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔10〕 前記第二樹脂が、可塑剤及び/又は軟化剤を含む、〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔11〕 前記可塑剤及び/又は軟化剤が、エステル系可塑剤及び脂肪族炭化水素ポリマーからなる群より選ばれる一種以上である、〔10〕に記載の積層体。
〔12〕 前記第一樹脂及び前記第二樹脂の少なくとも一方が、有機金属化合物を含む、〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔13〕 前記剥離可能な基材フィルムの引張弾性率が2000MPa以上である、〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の積層体。
〔14〕 第一樹脂層、第二樹脂層及び粘着層をこの順に備え、前記第一樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含み、前記第二樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含み、前記粘着層の厚みが、2μm以上25μm以下である、粘着層付き積層体。
〔15〕 偏光子層、第一樹脂層及び第二樹脂層をこの順で備え、前記第一樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含み、第二樹脂層は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含む、偏光フィルム。
〔16〕 前記偏光子層の厚みが、1μmより大きく12μm以下である、〔15〕に記載の偏光フィルム。
〔17〕 〔14〕に記載の粘着層付き積層体と、前記粘着層付き積層体の前記第一樹脂層上に設けられた偏光子層とを有する、粘着層付き偏光フィルム。
〔18〕 〔15〕または〔16〕に記載の偏光フィルムの製造方法であって、剥離可能な基材フィルム上に、前記第二樹脂を含む第二樹脂液を塗布し乾燥させて第二樹脂層を形成する工程と、前記第二樹脂層上に、前記第一樹脂を含む第一樹脂液を塗布し乾燥させて第一樹脂層を形成する工程と、偏光子層と前記第一樹脂層とを貼合する工程と、前記第二樹脂層から前記剥離可能な基材フィルムを剥離する工程と、をこの順に含む偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、偏光フィルムの偏光子層のクラックを抑制しうる樹脂層として用いることができ、剥離可能な基材フィルムから樹脂層を剥離した際に、基材フィルムの凹凸構造に起因する樹脂層の表面凹凸の発生を緩和できる積層体、これを用いた粘着層付き積層体、偏光フィルム、粘着層付き偏光フィルム、及び偏光フィルムの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る粘着層付き積層体を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る偏光フィルムを模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る粘着層付き偏光フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、通常5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有する形状をいう。幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば10万倍以下でありうる。
【0013】
以下の説明において、接着剤と粘着剤とは、別に断らない限り、剪断貯蔵弾性率によって区別される。具体的には、別に断らない限り、接着剤とは、エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後に、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである材料を示す。また、別に断らない限り、粘着剤とは、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である材料を示す。
【0014】
以下の説明において、ある層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。また、ある層の厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]×dで表される値である。ここで、nxは、前記層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記層の面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、層の厚み方向の屈折率を表す。dは、前記層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0015】
以下の説明において、(メタ)アクリル樹脂とは、別に断らない限り、アクリル樹脂、メタクリル樹脂及びこれらの組み合わせを包含する。また、(メタ)アクリル酸とは、別に断らない限り、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの組み合わせを包含する。
【0016】
以下の説明において、「板」、「層」及び「フィルム」とは、別に断らない限り、剛直な部材であってもよく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材であってもよい。
【0017】
〔1.積層体〕
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体100を模式的に示す断面図である。図1に示すように、積層体100は、第一樹脂層101、第二樹脂層102及び剥離可能な基材フィルム20を、厚み方向においてこの順に備える。
【0018】
積層体100においては、通常、基材フィルム20上に第二樹脂層102が直に設けられている。また、積層体100においては、通常、第二樹脂層102上に第一樹脂層101が直に設けられている。ここで、ある層に対して別の層が「直に」設けられているとは、ある層と別の層とが接しており、ある層と別の層との間に他の層が無いことを示す。
【0019】
第一樹脂層101は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPa以下である第一樹脂を含む。第二樹脂層102は、厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第二樹脂を含む。以下の説明において、特に言及しない限り、「厚み1mmのフィルムとして測定された貯蔵弾性率」を単に「貯蔵弾性率」と表現して説明する場合がある。
【0020】
本発明によれば、第二樹脂層が、10MPa以上650MPa未満といった貯蔵弾性率を有する第二樹脂を含むことにより、第二樹脂層に柔軟性を付与しうる。そのため、基材フィルムから第二樹脂層を剥離した直後に、基材フィルムの凹凸構造に起因する表面凹凸が生じている場合も、第二樹脂層が柔軟性を有することにより時間経過とともに表面凹凸の高低差を小さくしうることから、第二樹脂層の表面凹凸を緩和しうる。
【0021】
また、第一樹脂層が650MPa以上1700MPa以下といった貯蔵弾性率を有する第一樹脂を含むことにより、第一樹脂層に対して剛性を付与しうる。そのため、第一樹脂層及び第二樹脂層の積層部を偏光フィルムにおける偏光子層の保護層として用いた場合に、温度変化による偏光子層のクラックを抑制しうる。
【0022】
〔1.1.第一樹脂層〕
第一樹脂層は、貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPaである第一樹脂を含む層である。
【0023】
〔1.1.1.第一樹脂〕
第一樹脂は、1mmとフィルムとして測定された貯蔵弾性率が650MPa以上1700MPaである樹脂である。
【0024】
第一樹脂の貯蔵弾性率は、通常650MPa以上、好ましくは700MPa以上、より好ましくは750MPa以上であり、通常1700MPa以下、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは900MPa以下である。第一樹脂の貯蔵弾性率が前記下限値以上であることにより、第一樹脂層及び第二樹脂層の積層部を偏光フィルムにおける保護層として用いた場合に、温度変化による偏光子層のクラックを抑制することができ、第一樹脂層の貯蔵弾性率が前記上限値以下であることにより、偏光フィルムの保護層として用いた場合に偏光子層のクラックを抑制しつつ、偏光フィルムに良好な屈曲性を付与しうるからである。
【0025】
第一樹脂の前記の貯蔵弾性率は、下記の測定方法によって測定できる。
第一樹脂を成形して、厚み1mmの測定用フィルムを用意する。成形方法としては、熱溶融プレス法を用いることができる。その後、用意した測定用フィルムについて、動的粘弾性測定装置を用いて貯蔵弾性率を測定する。この測定は、-100℃から+250℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分の条件で行う。測定された結果から、23℃での貯蔵弾性率を読み取りうる。
【0026】
第一樹脂は、厚み100μmのフィルムとして測定される40℃90%RHでの水蒸気透過率が、所定の範囲にあることが好ましい。具体的には、第一樹脂の前記の水蒸気透過率は、好ましくは4.0g/(m・day)以下、より好ましくは3.0g/(m・day)以下、特に好ましくは2.0g/(m・day)以下である。下限値は、理想的には0g/(m・day)であり、0.1g/(m・day)以上であってもよい。前記範囲の水蒸気透過率を有する第一樹脂によって第一樹脂層が形成されていることにより、これを用いた偏光フィルムの加湿信頼性を特に良好にできる。具体的には、第一樹脂層の透湿性を十分に低くできるので、偏光子層にまで水蒸気が到達することを抑制して、水蒸気による偏光度の低下を効果的に抑制できる。
【0027】
第一樹脂の前記の水蒸気透過率は、下記の測定方法によって測定できる。
第一樹脂を成形して、厚み100μmの測定用フィルムを用意する。成形方法としては熱溶融プレス法を用いることができる。その後、用意した測定用フィルムについて、温度40℃、湿度90%RHの条件での水蒸気透過率を測定する。この測定は、水蒸気透過度測定装置を用いて、JIS K 7129 B法に従って行う。
【0028】
第一樹脂は、通常、重合体を含む。また、第一樹脂に含まれる重合体は、通常、熱可塑性を有する。前記の重合体が熱可塑性を有することにより、第一樹脂も熱可塑性を有しうる。
【0029】
第一樹脂が含む重合体としては、例えば、ポリエステル、アクリル重合体、脂環式構造を含有する重合体などが挙げられる。これらの重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、第一樹脂層の水蒸気透過率を低くする観点から、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0030】
脂環式構造を含有する重合体は、その重合体の繰り返し単位が脂環式構造を含有する。脂環式構造を含有する重合体は、通常、水蒸気透過率が低い。そのため、脂環式構造を含有する重合体を含む第一樹脂で第一樹脂層を形成した場合、偏光子層まで水蒸気が到達することを効果的に抑制できる。
【0031】
脂環式構造を含有する重合体は、主鎖に脂環式構造を含有していてもよく、側鎖に脂環式構造を含有していてもよく、主鎖及び側鎖の双方に脂環式構造を含有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点からは、少なくとも主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0032】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0033】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にある場合に、第一樹脂の機械的強度、耐熱性及び成形性が高度にバランスされる。
【0034】
脂環式構造を含有する重合体において、脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を含有する重合体における脂環式構造を含有する繰り返し単位の割合がこの範囲にあると、第一樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0035】
脂環式構造を含有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びその水素化物は、透明性と成形性が良好であり、所望の貯蔵弾性率に調整しやすいことから好ましい。
【0036】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体の付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。
【0037】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0038】
第一樹脂が含む重合体の重量平均分子量Mwは、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、第一樹脂の機械的強度及び成形性が高度にバランスされる。
【0039】
第一樹脂が含む重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布が前記範囲の下限値以上である場合、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、分子量分布が前記範囲の上限値以下である場合、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、第一樹脂層の安定性を高めることができる。
【0040】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。GPCで用いる溶媒としては、シクロヘキサン、トルエン、テトラヒドロフランが挙げられる。GPCを用いた場合、重量平均分子量は、例えばポリイソプレン換算またはポリスチレン換算の相対分子量として測定しうる。
【0041】
第一樹脂に含まれる重合体のガラス転移温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは150℃以下である。重合体のガラス転移温度が前記範囲にある場合、高温環境下における偏光フィルムの耐久性を高めることができる。ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して測定しうる。
【0042】
第一樹脂に含まれる重合体の量は、第一樹脂100重量%に対して、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは85重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは96重量%以下、より好ましくは93重量%以下である。第一樹脂に含まれる重合体の量が前記範囲にある場合、温度変化による偏光子層のクラックの発生を効果的に抑制できる。
【0043】
第一樹脂は、上述した重合体に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、吸湿剤;分散剤;有機金属化合物;酸化防止剤、光安定剤などの安定剤;滑剤などの樹脂改質剤;染料、顔料などの着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。任意の成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0044】
第一樹脂は、重合体に組み合わせて、有機金属化合物を更に含むことが好ましい。有機金属化合物を含むことにより、第一樹脂層と後述する偏光子層との密着力を高めることができる。
【0045】
有機金属化合物は、金属と炭素との化学結合及び金属と酸素との化学結合の少なくとも一方を含む化合物であり、有機基を有する金属化合物である。有機金属化合物としては、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらのうち、有機ケイ素化合物、有機チタン化合物及び有機ジルコニウム化合物が好ましく、偏光子層に含まれるポリビニルアルコール等の成分との反応性に優れることから有機ケイ素化合物がより好ましい。有機金属化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0046】
有機金属化合物としては、例えば、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
Si(OR4-a (1)
(式(1)において、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10の炭化水素基、エポキシ基、アミノ基、チオール基、イソシアネート基及び、炭素原子数1~10の有機基からなる群より選ばれる基を表し、aは、0~4の整数を表す。)
【0047】
式(1)において、Rとして好ましい例を挙げると、エポキシ基、アミノ基、チオール基、イソシアネート基、ビニル基、アクリル基、炭素原子数1~8のアルキル基などが挙げられる。
また、式(1)において、Rとして好ましい例を挙げると、水素原子、ビニル基、アリール基、アクリル基、炭素原子数1~8のアルキル基、-CHOC2n+1(nは1~4の整数を表す。)などが挙げられる。
【0048】
有機ケイ素化合物の例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系有機ケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系有機ケイ素化合物;トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート系有機ケイ素化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系有機ケイ素化合物;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系有機ケイ素化合物;が挙げられる。
【0049】
有機チタン化合物の例としては、テトライソプロピルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアセチルアセトネート等のチタンキレート、チタンイソステアレート等のチタンアシレートが挙げられる。
【0050】
有機ジルコニウム化合物の例としては、ノルマルプロピルジルコネート等のジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等のジルコニウムキレート、ステアリン酸ジルコニウム等のジルコニウムアシレートが挙げられる。
【0051】
有機アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムセカンダリーブトキシド等のアルミニウムアルコキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等のアルミニウムキレートが挙げられる。
【0052】
第一樹脂に含まれる重合体100重量部に対して、有機金属化合物の量は、好ましくは0.005重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.03重量部以上であり、好ましくは1.0重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。有機金属化合物の割合が前記範囲にある場合、第一樹脂層と偏光子層との密着力を高めることができる。
【0053】
〔1.1.2.紫外線吸収剤〕
本実施形態においては、第一樹脂層及び第二樹脂層の少なくとも一方が、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。第一樹脂層及び第二樹脂層を偏光フィルムにおける保護層として用いた場合に、偏光子層の紫外線による劣化を抑制することができるからである。第二樹脂層が紫外線吸収剤を含まない場合は、第一樹脂層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
【0054】
この紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びアクリロニトリル系紫外線吸収剤などが挙げられる。好ましい紫外線吸収剤の例としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4、6-ビス(1―メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2´-ヒドロキシ-3´-t-ブチル―5´-メリルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
第一樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0056】
〔1.1.3.第一樹脂層の物性〕
積層体における第一樹脂層の厚みは、通常0μmより大きく、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上であり、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、さらにことましくは7μm以下である。第一樹脂層の厚みが上記範囲内にあることにより、偏光子層に対し厚みの薄い樹脂層を保護層として配置することができる。
【0057】
第一樹脂層は、面内方向及び厚み方向の両方において光学異方性が小さいことが好ましく、光学等方性を有することが好ましい。
したがって、第一樹脂層の面内レターデーションは、小さいことが好ましい。具体的には、第一樹脂層の測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
また、第一樹脂層の厚み方向のレターデーションは、ゼロ又はゼロに近いことが好ましい。具体的には、第一樹脂層の測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションは、好ましくは-5nm以上、より好ましくは-4nm以上、更に好ましくは-3nm以上、特に好ましくは-2nm以上であり、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nnm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
【0058】
第一樹脂層の光弾性定数は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、第一樹脂層の光弾性定数は、小さいほど好ましく、好ましくは10×10-13cm/dyn以下、より好ましくは5×10-13cm/dyn以下、特に好ましくは2×10-13cm/dyn以下である。理想的には0.0×10-13cm/dynである。第一樹脂層の光弾性定数が前記範囲にある場合、膨張又は収縮の応力によるレターデーションの変化を小さくできる。第一樹脂層の光弾性定数は、第一樹脂層に応力を加えた場合に生じる複屈折から、計算により求めうる。具体的な測定方法は、実施例に記載の方法を採用しうる。
【0059】
第一樹脂層は、光学フィルムとしての偏光板保護フィルム層として機能する観点から、透明であることが好ましい。よって、第一樹脂層の全光線透過率は、高いことが好ましい。第一樹脂層の具体的な全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm~700nmの範囲で測定しうる。
【0060】
第一樹脂層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ヘイズは、JIS K7361-1997に準拠して、ヘイズメーターを用いて測定できる。
【0061】
〔1.2.第二樹脂層〕
第二樹脂層は、貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である第一樹脂を含む層である。
【0062】
〔1.2.1.第二樹脂〕
第二樹脂は、1mmとフィルムとして測定された貯蔵弾性率が10MPa以上650MPa未満である樹脂である。
【0063】
第二樹脂の貯蔵弾性率は、通常10MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは150MPa以上であり、通常650MPa未満、好ましくは600MPa以下、より好ましくは550MPa以下である。第二樹脂の貯蔵弾性率が前記範囲にあることにより、基材フィルムから第二樹脂層を剥離する際、基材フィルムに起因する第二樹脂層の表面凹凸を抑制することができるからである。
第二樹脂の前記の貯蔵弾性率の測定方法については、第一樹脂の貯蔵弾性率の測定方法と同様としうる。
【0064】
第二樹脂は、厚み100μmのフィルムとして測定される40℃90%RHでの水蒸気透過率が、所定の範囲にあることが好ましい。具体的には、第一樹脂の前記の水蒸気透過率は、好ましくは4.0g/(m・day)以下、より好ましくは3.0g/(m・day)以下、特に好ましくは2.0g/(m・day)以下である。下限値は、理想的には0g/(m・day)以上であり、0.1g/(m・day)以上であってもよい。第二樹脂の水蒸気透過率の測定方法については、第一樹脂の水蒸気透過率の測定方法と同様としうる。
【0065】
第二樹脂に含まれる重合体は、通常、熱可塑性を有する。前記の重合体が熱可塑性を有することにより、第二樹脂も熱可塑性を有しうる。
【0066】
第二樹脂は、脂環式構造を含有する重合体を含むことが好ましい。
第二樹脂が含みうる脂環式構造を含有する重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物並びにビニル芳香族水素重合体の水素化物が挙げられる。これらの中でも、ビニル芳香族水素重合体の水素化物は、透明性と成形性が良好であり、所望の貯蔵弾性率に調整しやすいことから好ましい。
【0067】
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を含む重合体の水素化物を意味する。芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位とは、芳香族ビニル化合物を重合して得られる構造を有する繰り返し単位を意味する。ただし、当該水素化物及びその構成単位は、その製造方法によっては限定されない。
【0068】
繰り返し単位[I]に対応する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類;4-クロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4-メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルコキシ基を有するスチレン類;4-フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、吸湿性を低くできることから、スチレン、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的入手のし易さから、スチレンが特に好ましい。
【0069】
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を含む重合体の水素化物は、特定のブロック共重合体水素化物[E]であることが好ましい。ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[D]の水素化物である。ブロック共重合体[D]は、重合体ブロック[A]と、重合体ブロック[B]又は重合体ブロック[C]と、からなる重合体ブロックである。重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである。重合体ブロック[C]は、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする重合体ブロックである。ここで、「主成分」とは、重合体ブロック中で、50重量%以上である成分をいう。鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位とは、鎖状共役ジエン化合物を重合して得られる構造を有する繰り返し単位を意味する。
【0070】
繰り返し単位[II]に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。鎖状共役ジエン化合物は、直鎖状であっても、分岐状であってもよい。
【0071】
ビニル芳香族炭化水素重合体の水素化物は、ビニル芳香族炭化水素重合体が有する不飽和結合を水素化して得られる物質である。ここで、水素化されるビニル芳香族炭化水素重合体の不飽和結合には、重合体の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素-炭素不飽和結合の、いずれも含まれる。
【0072】
水素化物は、例えば、ビニル芳香族炭化水素重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素化触媒の存在下で、重合体の不飽和結合を、好ましくは90%以上水素化することによって製造しうる。
【0073】
第二樹脂に含まれる重合体の重量平均分子量Mwは、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、第二樹脂層の機械的強度及び成形性が高度にバランスされる。
【0074】
第二樹脂に含まれる重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなる。その結果、樹脂層の高温曝露時の緩和を抑制して、第二樹脂層の安定性を高めることができる。
【0075】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法については、第一樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法と同様としうる。
【0076】
第二樹脂がブロック共重合体水素化物[E]を含む場合、剥離可能な基材フィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルムと第二樹脂層とを転写時に剥離しやすく、かつ意図しないタイミングでの剥離を生じにくい程度の適度な剥離性を付与することができる。そのため、積層体のウェブハンドリング性を良好にすることができる。また、基材フィルムと第二樹脂層との間の剥離性を良好にすることができることから、例えば、第一樹脂層に含まれる樹脂として、基材フィルムとの密着性が低い樹脂を選択することができる。
【0077】
第二樹脂は、上述した重合体に組み合わせて、更に任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、可塑剤及び/又は軟化剤;有機金属化合物;酸化防止剤、光安定剤などの安定剤;滑剤などの樹脂改質剤;染料、顔料などの着色剤;帯電防止剤;などが挙げられる。これらの成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0078】
また、第二樹脂は、任意の成分として可塑剤及び/又は軟化剤(可塑剤若しくは軟化剤、又はその両方)を含有することが好ましい。可塑剤及び/又は軟化剤を含有することにより、第二樹脂の貯蔵弾性率を調整しやすくすることができる。また、第二樹脂の成形性(例えば伸展性)を良好にできる。
【0079】
可塑剤及び/又は軟化剤としては、第二樹脂に均一に溶解ないし分散できるものを用いうる。可塑剤及び/又は軟化剤の具体例としては、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等のエステル系可塑剤;燐酸エステル系可塑剤;炭水化物エステル系可塑剤;及びその他のポリマー軟化剤が挙げられる。多価アルコールエステル系可塑剤とは、多価アルコールと1価のカルボン酸とからなるエステル系可塑剤を表す。また、多価カルボン酸エステル系可塑剤とは、多価カルボン酸と1価のアルコールとからなるエステル系可塑剤を表す。
【0080】
エステル系可塑剤の原料である多価アルコールの例としては、特に限定されないが、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0081】
多価アルコールエステル系可塑剤の例としては、エチレングリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、及びその他の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
【0082】
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例としては、ジカルボン酸エステル系可塑剤、及びその他の多価カルボン酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0083】
燐酸エステル系可塑剤の例としては、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の燐酸アルキルエステル;トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等の燐酸シクロアルキルエステル;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等の燐酸アリールエステルが挙げられる。
【0084】
炭水化物エステル系可塑剤の例としては、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテートがより好ましい。
【0085】
ポリマー軟化剤の例としては、脂肪族炭化水素ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとメタクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの共重合体、等のアクリル系ポリマー;ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN-ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー;ポリスチレン、ポリ4-ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル;ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。
【0086】
脂肪族炭化水素ポリマーの具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリ-1-オクテン、エチレン・α-オレフィン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン-ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物等が挙げられる。シクロオレフィン樹脂に均一に溶解ないし分散し易い観点から脂肪族炭化水素ポリマーは、数平均分子量300~5,000であることが好ましい。
【0087】
これらポリマー軟化剤は、1種の繰り返し単位からなる単独重合体でもよく、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマー軟化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0088】
可塑剤及び/又は軟化剤としては、第一樹脂に含まれる成分との相溶性に特に優れることから、エステル系可塑剤及び脂肪族炭化水素ポリマーからなる群より選ばれる一種以上が特に好ましい。
【0089】
第二樹脂に含まれる重合体100重量部に対して、可塑剤及び軟化剤の合計量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは20重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは70重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。第二樹脂における可塑剤及び軟化剤の合計の割合が前記の範囲にある場合に、第二樹脂の貯蔵弾性率を所望の範囲に調整しやすくすることができるからである。また、第二樹脂の成形性を良好にすることができるからである。
【0090】
第二樹脂は、任意成分として、有機金属化合物を含有することが好ましい。第二樹脂が有機金属化合物を含有することにより、第二樹脂層と粘着層との密着性を向上させることができるからである。また、第二樹脂層が粘着層を介さず、例えば表示装置のガラス部材に配置する際の密着性を向上させることができるからである。
【0091】
第二樹脂が含みうる有機金属化合物の種類、及びその含有量については、第一樹脂が含みうる有機金属化合物の種類及びその含有量として説明した内容と同様としうる。
【0092】
〔1.2.2.紫外線吸収剤〕
本実施形態においては、第一樹脂層及び第二樹脂層の少なくとも一方が、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。そのため、第一樹脂層が紫外線吸収剤を含有しない場合は、第二樹脂層が紫外線吸収剤を含むことが好ましい。
【0093】
第二樹脂層中の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。第二樹脂層に含まれる紫外線吸収剤の種類については、〔1.1.第一樹脂層〕の〔1.1.2.紫外線吸収剤〕の項目で説明した内容と同様としうる。
【0094】
〔1.2.3.第二樹脂層の物性〕
積層体における第二樹脂層の厚みは、通常0μmより大きく、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上であり、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下である。第二樹脂層の厚みが上記範囲内にあることにより、偏光子層に対し厚みの薄い樹脂層を保護層として配置することができる。
【0095】
第二樹脂層は、面内方向及び厚み方向の両方において光学異方性が小さいことが好ましく、光学等方性を有することが好ましい。
したがって、第二樹脂層の面内レターデーションは、小さいことが好ましい。具体的には、第二樹脂層の測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
また、第二樹脂層の厚み方向のレターデーションは、ゼロ又はゼロに近いことが好ましい。具体的には、第二樹脂層の測定波長550nmにおける厚み方向のレターデーションは、好ましくは-5nm以上、より好ましくは-4nm以上、更に好ましくは-3nm以上、特に好ましくは-2nm以上であり、好ましくは5nm以下、より好ましくは4nnm以下、更に好ましくは3nm以下、特に好ましくは2nm以下である。
【0096】
第二樹脂層の光弾性定数は、特定の範囲にあることが好ましい。具体的には、第二樹脂層の光弾性定数は、小さいほど好ましく、好ましくは10×10-13cm/dyn以下、より好ましくは5×10-13cm/dyn以下、特に好ましくは2×10-13cm/dyn以下である。理想的には0.0×10-13cm/dynである。第二樹脂層の光弾性定数が前記範囲にある場合、膨張又は収縮の応力によるレターデーションの変化を小さくできる。
【0097】
第二樹脂層は、光学フィルムとしての偏光板保護フィルム層として機能する観点から、透明であることが好ましい。よって、第二樹脂層の全光線透過率は、高いことが好ましい。第二樹脂層の具体的な全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0098】
第二樹脂層のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。
【0099】
第二樹脂層の光弾性定数、全光線透過率、及びヘイズの測定方法については、〔1.1.3.第一樹脂層の物性〕において説明した各物性値の測定方法と同様としうる。
【0100】
〔1.3.第一樹脂層及び第二樹脂層の積層部〕
本発明に係る積層体は、第一樹脂層及び第二樹脂層がそれぞれ所定の貯蔵弾性率を有する樹脂を含むことにより、第一樹脂層及び第二樹脂層の積層部を偏光フィルムの偏光子層のクラックを抑制しうる樹脂層として用いることができ、剥離可能な基材フィルムから樹脂層を剥離した際に、基材フィルムの凹凸構造に起因する樹脂層の表面凹凸の発生を緩和できる。本実施形態においては、第一樹脂層の第一樹脂の貯蔵弾性率及び第二樹脂層の第二樹脂の貯蔵弾性率の差が所定の範囲であることが好ましい。具体的な第一樹脂の貯蔵弾性率及び第二樹脂の貯蔵弾性率の差は、好ましくは、200MPa以上であり、より好ましくは250MPa以上であり、さらに好ましくは300MPa以上であり、好ましくは1000MPa以下、好ましくは800MPa以下であり、さらに好ましくは700MP以下である。第一樹脂及び第二樹脂の貯蔵弾性率を上記範囲とすることにより、上述した偏光子クラックの抑制及び第二樹脂層の表面凹凸の緩和といった効果を発揮しやすいからである。
【0101】
積層体における第一樹脂層及び第二樹脂層の積層部は、偏光フィルムにおける偏光子層の保護層として機能しうる。第一樹脂層及び第二樹脂層の厚みの合計は、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下である。まだ、第一樹脂層及び第二樹脂層の厚みの合計の下限値は、例えば、4μmでありえる。
【0102】
〔1.4.剥離可能な基材フィルム〕
剥離可能な基材フィルムは、積層体において、第一樹脂層及び第二樹脂層を支持するために用いられる。「剥離可能」とは、基材フィルムの面上に配置された第二樹脂層を剥離しうることを指す。
【0103】
基材フィルムの引張弾性率は、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、基材フィルムの引張弾性率は、好ましくは2000MPa以上、より好ましくは2500MPa以上、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは4500MPa以下である。基材フィルムの引張弾性率が上記下限値以上であることにより、基材フィルム及び第二樹脂層の間の密着性を良好にすることができ、引張弾性率が上記上限以下であることにより、基材フィルム及び第二樹脂層の間の剥離を抑制しつつ、積層体の端部におけるカールの発生を抑制することができる。
引張弾性率は、JIS K7127に基づき、引張試験機(インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製、商品名「電気機械式万能材料試験機(5564)」)を用いて、測定しうる。
【0104】
基材フィルムとしては、通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂で形成された樹脂フィルムを用いる。偏光子層と第一樹脂層とを貼合させる際に紫外線硬化型接着剤を用いる場合は、UV-Bの吸収が小さい樹脂フィルムが好ましい。「UV-B」とは、別に断らない限り、280nm以上315nm以下の波長の光を表す。この基材フィルムの表面には、第二樹脂層の剥離を容易にするため、離型処理が施されていてもよい。
【0105】
離型処理としては、例えば、基材フィルムの表面に離型剤の層を形成する処理が挙げられる。離型剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系離型剤、フッ化アルキルなどのフッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤などが用いられる。その中でも、離型性及び加工性が良好である理由で、シリコーン系離型剤が好ましい。
【0106】
〔1.5.積層体の用途〕
本発明の積層体は、偏光フィルムの製造方法において、転写法により偏光子層上に保護層としての樹脂層を形成する際の転写用積層体として用いうる。
【0107】
〔2.粘着層付き積層体〕
図2は、本発明の一実施形態に係る粘着層付き積層体200を模式的に示す断面図である。図2に示すように、粘着層付き積層体200は、第一樹脂層201、第二樹脂層202及び粘着層203を、厚み方向においてこの順に備える。また、粘着層付き積層体200は、2μm以上25μm以下の厚みを有する。
【0108】
第一樹脂層及び第二樹脂層については、上述した〔1.積層体〕の項目で説明した内容と同様としうる。
【0109】
粘着層は、第二樹脂層上に設けられる層である。粘着層203は、通常、図2に示すように、第二樹脂層202上に直に設けられる。
【0110】
粘着層は、その粘着力を利用して、第一樹脂層及び第二樹脂層の積層部を他の光学部材と貼り合わせることができる。そのため、例えば、偏光子層を第一樹脂層上に配置させて偏光フィルムとした際、偏光フィルムを、他の光学部材と貼り合わせることができる。また、例えば、液晶セル及び有機EL素子等の表示素子を備える表示装置に偏光フィルムを組み込む場合、その偏光フィルムの粘着層を表示素子に貼り合わせる。
【0111】
粘着層の材料としての粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系、ポリオレフィン系粘着剤等の粘着剤が挙げられる。中でも、耐熱性及び生産性の観点からアクリル系粘着剤及びポリオレフィン系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤が特に好ましい。また、粘着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0112】
粘着層の厚みは、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上であり、好ましくは25.0μm以下、より好ましくは20.0μm以下、特に好ましくは15.0μm以下である。粘着層の厚みが前記範囲の下限値以上である場合、粘着層の粘着力を高めることができ、貼り合わせ時の気泡の巻き込みを抑制できる。また、粘着層の厚みが前記範囲の上限値以下である場合、偏光フィルムの膨張、収縮挙動を抑え込むことが出来、ベゼルフリー化が可能となる。
【0113】
粘着層付き積層体は、通常、上述した積層体の第二樹脂層から、剥離可能な基材フィルムを剥離し、第二樹脂層上に粘着層を形成することにより得られる。
【0114】
〔3.偏光フィルム〕
図3は本発明の実施形態に係る偏光フィルムを模式的に示す断面図である。図3に示すように、偏光フィルム300は、偏光子層304、第一樹脂層301及び第二樹脂層302を、厚み方向においてこの順に備える。偏光フィルム300は、必要に応じて、偏光子層304及び第一樹脂層301の間に接着層305を備えていてもよい。
【0115】
本発明によれば、偏光フィルムが上述した第一樹脂層及び第二樹脂層を有することから、偏光子層のクラックが抑制され、第二樹脂層の平坦性が良好な偏光フィルムとすることができる。
【0116】
〔3.1.第一樹脂層及び第二樹脂層〕
第一樹脂層及び第二樹脂層については、上述した〔1.積層体〕の項目で説明した内容と同様としうる。
【0117】
〔3.2.偏光子層〕
偏光子層としては、振動方向が直角に交わる二つの直線偏光のうち、一方を透過させ、他方を吸収又は反射できるフィルムを用いることができる。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を表す。このようなフィルムは、通常、偏光透過軸を有し、当該偏光透過軸と平行な振動方向を有する直線偏光を透過でき、偏光透過軸と垂直な振動方向を有する直線偏光を吸収又は反射できる。
【0118】
偏光子層の具体例を挙げると、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体を含む、ポリビニルアルコール樹脂のフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。偏光子層は、ポリビニルアルコール樹脂を含むことが好ましい。
【0119】
偏光子層の厚みは、好ましくは1μmより大きく、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上であり、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは7μm以下である。偏光子層の厚みが前記範囲の下限値より大きい場合、偏光フィルムの光学性能を十分に高めることができる。また、偏光子層の厚みが前記範囲の上限値以下である場合、偏光フィルムの屈曲性を効果的に高めることができる。
【0120】
〔3.3.任意の層〕
偏光フィルムは、偏光子層、第一樹脂層及び第二樹脂層を少なくとも有していればよく、必要に応じて、任意の層を組み合わせていてもよい。
【0121】
〔3.3.1.接着層〕
偏光フィルムは、第一樹脂層と偏光子層との間に、任意の層として、接着層を備えていてもよい。接着層を用いることにより、第一樹脂層と偏光子層とを強力に接着できる。
【0122】
接着層は、第一樹脂層と偏光子層とを接着する接着剤で形成されている。接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、塩化ビニル-酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)系接着剤、エチレン-スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。また、接着剤としては、当該接着剤の硬化を短時間で行うことができるので、紫外線硬化型の接着剤が好ましい。
【0123】
接着層の厚みは、通常0μmより大きく、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である。接着層の厚みが上記範囲にある場合、良好な外観を得ることができ、また、第一樹脂層と偏光子層とを強く接着することができる。
【0124】
〔3.3.2.光学異方層〕
偏光フィルムは、任意の層として、光学異方層を備えていてもよい。例えば、液晶表示装置に適用するための偏光フィルムは、液晶セルが含む液晶の視野角依存性の補償、及び、偏光子層の軸ズレの補償を行うための光学補償フィルム層を、光学異方層として備えていてもよい。さらに、例えば、液晶表示装置に適用するための偏光フィルムは、反射抑制機能を実現するために、光学補償フィルム層に組み合わせて、λ/4層を光学異方層として備えていてもよい。有機EL表示装置は、RGBの発光及び画像の表示のためには通常は偏光フィルムを必要としないが、光学異方層としてのλ/4層を備える偏光フィルムを適用することにより、黒表示特性の品位向上が可能となる。
【0125】
λ/4層とは、波長550nmにおいて所定の範囲の面内レターデーションを有する層をいう。具体的には、λ/4層の波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは110nm以上、より好ましくは120nm以上、特に好ましくは125nm以上であり、好ましくは165nm以下、より好ましくは155nm以下、特に好ましくは150nm以下である。
【0126】
視野角特性の面から、λ/4層の三次元屈折率は、nx>ny=nzとなる1軸性を示すことが好ましい。更に、λ/4層の三次元屈折率は、nx>nz>nyであっても好ましく、(nx-nz)/(nx-ny)=0.5の関係を満たすことが理想的である。
【0127】
λ/4層の遅相軸は、偏光子層の偏光透過軸に対して、好ましくは45°±5°(即ち40°~50°)、より好ましくは45°±3°(即ち42°~48°)、特に好ましくは45°±1°(即ち44°~46°)の角度をなす。これにより、偏光子層とλ/4層との組み合わせとして、円偏光板を得ることができる。
【0128】
λ/4層は、逆波長分散特性を有することが好ましい。逆波長分散特性とは、測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)がRe(450)<Re(550)を満たす性質をいう。逆波長分散特性を有するλ/4層は、広い波長範囲においてその光学的機能を発揮できる。
【0129】
λ/4層は、例えば、適切な樹脂で形成された延伸前フィルムを延伸した延伸フィルムとして製造してもよい。また、λ/4層は、例えば、適切な液晶性化合物を含む液晶組成物の層を形成し、液晶性化合物の分子を配向させた後で、その液晶組成物を硬化させた液晶硬化層として製造してもよい。中でも、薄くフレキシブルな偏光フィルムを得る観点では、λ/4層は液晶硬化層であることが好ましい。このような液晶硬化層としてのλ/4層は、例えば、国際公開第2016/121602号に記載の方法によって製造できる。
【0130】
偏光フィルムは、任意の層として、更に、λ/2層を備えていてもよい。λ/2層とは、波長550nmにおいて所定の範囲の面内レターデーションを有する層をいう。具体的には、λ/2層の波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは240nm以上、より好ましくは250nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは280nm以下、特に好ましくは265nm以下である。
【0131】
視野角特性の面から、λ/2層の三次元屈折率は、nx>ny=nzとなる1軸性を示すことが好ましい。更に、λ/2層の三次元屈折率は、nx>nz>nyであっても好ましく、(nx-nz)/(nx-ny)=0.5の関係を満たすことが理想的である。
【0132】
λ/2層の遅相軸は、偏光フィルムに発揮させたい光学的機能に応じて、任意に設定してよい。例えば、偏光フィルムがλ/2層とλ/4層とを組み合わせて備える場合、ある基準方向に対してλ/4層の遅相軸がなす角度θ(λ/4)と、前記基準方向に対してλ/2層がなす角度θ(λ/2)とが、式(X):「θ(λ/4)=2θ(λ/2)+45°」を満たす場合、λ/2層及びλ/4層の組み合わせは、広い波長範囲において当該λ/2層及びλ/4層を通過する正面方向の光にその光の波長の略1/4波長の面内レターデーションを与えうる広帯域λ/4板として機能できる(特開2007-004120号公報参照)。よって、広い波長範囲において円偏光板として機能できる偏光フィルムを得ようとする場合、λ/2層及びλ/4層の遅相軸は、前記の式(X)に近い関係を満たすように設定することが好ましい。例えば、λ/2層及びλ/4層の遅相軸は、下記(X1)~(X3)のいずれかの関係を満たすことが好ましい。
【0133】
(X1)λ/4層及びλ/2層の一方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対してなす角度が、好ましくは75°±5°(即ち70°~80°)、より好ましくは75°±3°(即ち72°~78°)、特に好ましくは75°±1°(即ち74°~76°)であり、且つ、λ/4層及びλ/2層の他方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対してなす角度が、好ましくは15°±5°(即ち10°~20°)、より好ましくは15°±3°(即ち12°~18°)、特に好ましくは15°±1°(即ち14°~16°)である。
【0134】
(X2)λ/4層及びλ/2層の一方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対してなす角度が、好ましくは15°±5°(即ち10°~20°)、より好ましくは15°±3°(即ち12°~18°)、特に好ましくは15°±1°(即ち14°~16°)であり、且つ、λ/4層及びλ/2層の他方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対してなす角度が、好ましくは75°±5°(即ち70°~80°)、より好ましくは75°±3°(即ち72°~78°)、特に好ましくは75°±1°(即ち74°~76°)である。
【0135】
(X3)λ/4層及びλ/2層の一方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対してなす角度が、好ましくは22.5°±5°(即ち17.5°~27.5°)、より好ましくは22.5°±3°(即ち19.5°~25.5°)、特に好ましくは22.5°±1°(即ち21.5°~23.5°)であり、且つ、λ/4層及びλ/2層の他方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対してなす角度が、好ましくは90°±5°(即ち85°~95°)、より好ましくは90°±3°(即ち87°~93°)、特に好ましくは90°±1°(即ち89°~91°)である。
【0136】
ここで、λ/4層及びλ/2層の一方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対して前記の角度をなす向きは、通常、λ/4層及びλ/2層の他方の遅相軸が偏光子層の偏光透過軸に対して前記の角度をなす向きと同じである。
【0137】
λ/2層は、逆波長分散特性を有することが好ましい。逆波長分散特性を有するλ/2層は、広い波長範囲においてその光学的機能を発揮できる。
【0138】
λ/2層は、例えば、延伸フィルムとして製造してもよい。また、λ/2層は、例えば、液晶硬化層として製造してもよい。中でも、薄くフレキシブルな偏光フィルムを得る観点では、λ/2層は液晶硬化層であることが好ましい。このような液晶硬化層としてのλ/2層は、例えば、国際公開第2016/121602号に記載の方法によって製造できる。
【0139】
偏光フィルムは、任意の層として、更に、ポジティブCプレート層を備えていてもよい。特に、偏光フィルムが(nx-nz)/(nx-ny)=0.5の関係を満たす三次元屈折率を有するλ/4層又はλ/2層を備えない場合に、その偏光フィルムはポジティブCプレート層を備えることが好ましい。ポジティブCプレート層とは、ポジティブCプレートとして機能する層である。偏光フィルムが(nx-nz)/(nx-ny)=0.5の関係を満たす三次元屈折率を有するλ/4層又はλ/2層を備えない場合でも、ポジティブCプレート層があることにより、厚み方向の屈折率を適切に調整して、視野角特性を改善することができる。また、ポジティブCプレート層は、上述したλ/2層及びλ/4層等の光学異方層と組み合わせて複数枚用いてもよい。
【0140】
ポジティブCプレート層は、例えば、延伸フィルムとして製造してもよい。また、ポジティブCプレート層は、例えば、液晶硬化層として製造してもよい。中でも、薄くフレキシブルな偏光フィルムを得る観点では、ポジティブCプレート層は液晶硬化層であることが好ましい。このような液晶硬化層としてのポジティブCプレート層は、例えば、特開2015-14712号公報、特開2015-57646号公報などに記載の方法によって製造できる。また、ポジティブCプレート層を製造するための液晶性化合物としては、逆波長分散特性を有するものを用いてもよい。
【0141】
上述した任意の層は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記の層の数は、1層でもよく、2層以上でもよい。さらに、上述した層の位置は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意である。
【0142】
〔3.3.3.その他の任意の層〕
偏光フィルムが備えうる任意の層の更に別の例としては、クリアハードコート層、アンチグレアハードコート層、反射防止層、帯電防止層、防汚層などが挙げられる。上述した任意の層は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、任意の層の数は、1層でもよく、2層以上でもよい。さらに、任意の層の位置は、本発明の効果を著しく損なわない限り、制限されない。
【0143】
〔3.4.偏光フィルムの厚み及び用途〕
本発明によれば、第一樹脂層及び第二樹脂層の積層部から構成される保護層が薄くても偏光子層を効果的に保護できるので、通常は、偏光フィルム全体を薄くすることが可能である。偏光フィルムの厚みは、好ましくは40μm以上、より好ましくは50μm以上、特に好ましくは60μm以上であり、好ましくは110μm以下、より好ましくは90μm以下、特に好ましくは70μm以下である。
【0144】
偏光フィルムは、通常、表示装置の表示体と組み合わせて用い得る。表示体としては、例えば、液晶表示装置用の表示体としての液晶パネル、有機エレクトロルミネッセンス表示装置用の表示体としての有機エレクトロルミネッセンスパネルが挙げられる。通常は、これらの表示体の視認側に、偏光フィルムが設けられる。
【0145】
〔4.粘着層付き偏光フィルム〕
図4は、本発明の一実施形態の粘着層付き偏光フィルムを模式的に示す断面図である。図4に示すように、粘着層付き偏光フィルム400は、偏光子層404、第一樹脂層401、第二樹脂層402及び粘着層403を、厚み方向においてこの順に備える。粘着層付き偏光フィルム400は、必要に応じて、偏光子層404及び第一樹脂層401の間に接着層405を有する。図4に示す粘着層付き積層フィルム400は、第一樹脂層401、第二樹脂層402及び粘着層403を前述の粘着層付き積層体と捉え、粘着層付き積層体の第一樹脂層上に設けられた偏光子層とを有する構成と捉えうる。
【0146】
粘着層付き積層体及び偏光子層については、それぞれ上述した〔2.粘着層付き積層体〕及び〔3.偏光フィルム〕の〔3.2.偏光子層〕の項目で説明した内容と同様としうる。
【0147】
〔5.偏光フィルムの製造方法〕
本発明に係る偏光フィルムの製造方法としては、上述した偏光フィルムが得られる限り、限定されない。例えば、剥離可能な基材フィルム上に、第二樹脂を含む第二樹脂液を塗布し乾燥させて第二樹脂層を形成する工程(A)と、第二樹脂層上に、第一樹脂を含む第一樹脂液を塗布し乾燥させて第一樹脂層を形成する工程(B)と、偏光子層と第一樹脂層とを貼合する工程(C)と、第二樹脂層から基材フィルムを剥離する工程(D)と、をこの順に含む偏光フィルムの製造方法により、偏光フィルムを製造してもよい。
【0148】
〔5.1.工程(A):第二樹脂層の形成〕
工程(A)では、剥離可能な基材フィルム上に、第二樹脂を含む第二樹脂液を塗布し乾燥させて第二樹脂層を形成する。第二樹脂液は、第二樹脂層を形成するための液体材料である。よって、第二樹脂液は、通常、第二樹脂に含まれうる各成分を含む。具体的には、第二樹脂液は、重合体を含み、必要に応じて第二樹脂が含む任意の成分、紫外線吸収剤及び溶媒を含みうる。重合体、任意の成分及び紫外線吸収剤等の不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に溶解していてもよい。また、前記不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に分散していてもよい。
【0149】
溶媒としては、有機溶媒が好ましく、第二樹脂に含まれる重合体を溶解可能な有機溶媒が特に好ましい。溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン等の環状エーテル溶媒;等が挙げられる。溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0150】
第二樹脂液における不揮発成分の濃度は、第二樹脂液が塗布に適した粘度となる範囲で、任意に設定しうる。具体的な濃度範囲は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、特に好ましくは13重量%以上であり、好ましくは35重量%以下、より好ましくは30重量%以下、特に好ましくは25重量%以下である。
【0151】
剥離可能な基材フィルムの形状は限定されないが、長尺のフィルムであることが好ましい。
【0152】
基材フィルムへの第二樹脂液の塗布方法としては、例えば、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法などが挙げられる。
【0153】
剥離可能な基材フィルムへ第二樹脂液を塗布することにより、剥離可能な基材フィルム上に第二樹脂液の層が形成される。第二樹脂液を塗布後に乾燥させることで、第二樹脂液の層から溶媒等の揮発成分が除去されるので、第二樹脂を含有する第二樹脂層が得られる。
【0154】
具体的な乾燥温度は、重合体、逆可塑剤及び溶媒の種類及び量によって異なりうるが、一般的には、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上であり、好ましくは140℃以下、より好ましくは135℃以下、特に好ましくは130℃以下である。
【0155】
具体的な乾燥時間は、重合体、逆可塑剤及び溶媒の種類及び量によって異なりうるが、一般的には、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、特に好ましくは90秒以上であり、好ましくは5分以下、より好ましくは4分以下、特に好ましくは3分以下である。
【0156】
〔5.2.工程(B):第一樹脂層の形成〕
工程(B)では、前記第二樹脂層上に、前記第一樹脂を含む第一樹脂液を塗布し乾燥させて第一樹脂層を形成する。第一樹脂液は、第一樹脂層を形成するための液体材料である。よって、第一樹脂液は、通常、第一樹脂に含まれうる各成分を含む。具体的には、第一樹脂液は、重合体と、溶媒と、必要に応じて第二樹脂が含む任意の成分及び紫外線吸収剤とを含みうる。重合体、任意の成分及び紫外線吸収剤等の不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に溶解していてもよい。また、前記不揮発成分の一部又は全部は、溶媒に分散していてもよい。
【0157】
第一樹脂液に用いられる溶媒及びその含有量、並びに第一樹脂液の塗布方法及び乾燥方法については、上述した〔5.1.工程(A):第二樹脂層の形成〕の項目で説明した内容と同様としうる。
【0158】
〔5.3.工程(C):第一樹脂層及び偏光子層の貼合〕
工程(C)では、偏光子層と前記第一樹脂層とを貼合する。第一樹脂層と偏光子層との貼合は、必要に応じて、接着剤を介して行ってもよい。長尺の基材フィルム状に第一樹脂層及び第二樹脂層を形成した場合は、通常、長尺の第一樹脂層及び長尺の偏光子層を、必要に応じて接着剤を介して、ピンチローラー等の貼合具を用いて貼合する。
【0159】
〔5.4.工程(D):基材フィルムの剥離〕
工程(D)では、基材フィルムを剥離する。通常、基材フィルムの剥離は、連続的に行われる。この際、剥離速度は、第一樹脂層及び第二樹脂層の破断を抑制できる範囲に適切に設定することが好ましい。基材フィルムの具体的な剥離速度は、好ましくは10m/分以上、より好ましくは15m/分以上、特に好ましくは20m/分以上であり、好ましくは70m/分以下、より好ましくは60m/分以下、特に好ましくは50m/分以下である。
【0160】
〔5.5.その他の工程〕
上述した偏光フィルムの製造方法は、必要に応じて、更に任意の工程を含んでいてもよい。任意の工程としては、例えば、上述した光学異方性層を配置する工程、粘着層を形成する工程を挙げることができる。
【実施例0161】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0162】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0163】
以下の説明において、スチレン由来の繰り返し単位を略称「St」で表し、スチレン由来の繰り返し単位で形成された重合体ブロックを「Stブロック」で表すことがある。
以下の説明において、イソプレン由来の繰り返し単位を略称「IP」で表し、イソプレン由来の繰り返し単位で形成された重合体ブロックを「IPブロック」で表すことがある。
以下の説明において、スチレン由来の繰り返し単位及びイソプレン由来の繰り返し単位で形成されたランダム重合ブロックを「St-IPブロック」で表すことがある。
【0164】
[評価方法]
〔重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法〕
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC8020GPC」)を用いて、ポリスチレン換算値又はポリイソプレン換算値として測定した。標準物質としてポリスチレンを用いる場合、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、標準物質としてポリイソプレンを用いる場合、溶媒としてはシクロヘキサンを用いた。測定時の温度は、38℃であった。
【0165】
〔重合体の水素化率の測定方法〕
重合体の水素化率は、H-NMR測定により、測定した。
【0166】
〔厚みの測定方法〕
フィルムの厚みは、スナップゲージにより測定した。
【0167】
〔貯蔵弾性率の測定方法〕
測定対象の樹脂をクリアランス1mm、温度250℃、圧力30MPaの条件で、熱溶融プレス機を用いて熱溶融して成形することにより、厚み1mmの測定用フィルムを作製し、貯蔵弾性率を測定した。貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置(ティー・エー・インスルメント・ジャパン社製「ARES」)により、条件:-100℃から+250℃の温度範囲で昇温速度5℃/分にて測定した。測定された結果から、23℃での貯蔵弾性率を読み取った。
【0168】
〔水蒸気透過率の測定方法〕
測定対象の樹脂をクリアランス100μm、温度250℃、圧力30MPaの条件で、熱溶融プレス機を用いて熱溶融して成形することにより、厚み100μmの測定用フィルムを作製し、水蒸気透過率を測定した。水蒸気透過率は、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRAN-W」)を用い、JIS K 7129 B法に従って、温度40℃、湿度90%RHの条件にて測定した。
【0169】
〔光弾性定数の測定方法〕
実施例及び比較例における第一樹脂液及び第二樹脂液(樹脂液)、並びに、シリコーンによる剥離処理を表面に施されたPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム;三菱ケミカル製「MRV38」)を用意した。このPETフィルム上に、前記の樹脂液をダイコーターを用いて塗布した。その後、100℃で2分間乾燥することにより、溶媒成分を揮発させて、厚み10μmの樹脂層を得た。PETフィルムから樹脂層を剥離し、測定用樹脂層として用いた。実施例及び比較例における各第一樹脂液を用いた測定用樹脂層、並びに各第二樹脂液を用いた測定用樹脂層を作製し、光弾性定数の測定を行った。
【0170】
フィルム状の測定用樹脂層を切り出し、幅1cmのフィルム片を複数用意した。これらのフィルム片に、重さ50g、100g、150g及び200gの分銅を吊り下げ、測定波長550nmで面内レターデーションを測定した。面内レターデーションの測定は、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて行った。測定された面内レターデーションを樹脂層の厚みで割り算して、複屈折を求めた。得られた複屈折、及び、その複屈折に対応する分銅によって樹脂層に与えられる単位断面積当たりの力の大きさを、力の大きさを横軸、複屈折を縦軸とする座標系にプロットした。得られたプロットから最小二乗法によって近似直線を得た。この近似直線の傾きとして、測定用樹脂層の光弾性定数を求めた。
【0171】
〔レターデーションの測定方法〕
光弾性定数の測定方法における測定用樹脂層の形成方法と同様の方法を用いて、第一樹脂層に相当する厚みの樹脂層、及び第二樹脂層に相当する厚みの樹脂層(2μm~5μm)を測定用樹脂層として得た。得られた測定用樹脂層について、位相差計(AXOMETRICS社製「Axo Scan」)を用いて、測定波長550nmにおける面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthを測定した。
【0172】
〔380nm透過率の測定方法〕
レターデーションの測定方法と同様の測定用樹脂層を作製した。ガラス基板(コーニング社製「イーグルXG」;厚さ0.5mm)を用意した。このガラス基板に、光学用粘着シート(日東電工製「LUCIACS CS9861US」)を介して、測定用樹脂層を貼り合わせ、ガラス基板/光学用粘着シート/測定用樹脂層の層構成を有するサンプルを得た。ガラス基板及び光学用粘着シートが波長380nmにおいて吸収を有さないので、サンプルの光線透過率は、測定用樹脂層の光線透過率に一致する。そこで、分光光度計(日本分光社製「V-7200」)を用いて、波長380nmにおける光線透過率を測定した。
【0173】
〔積層体における第二樹脂層の表面凹凸の緩和性の評価方法〕
第一樹脂層/第二樹脂層/基材フィルムの層構成の積層体から基材フィルムを剥離し、第二樹脂層を露出させた。光学用粘着シート(日東電工製「LUCIACS CS9861US」)の軽剥離ライナーを剥がして、ピンチロールを通過させながら、貼り合わせサンプルを作製し、重剥離ライナーを剥がし、ガラスに貼合後、外観を検査した。以下の評価指標により評価した。
S:基材フィルムの凹凸構造に起因する欠陥が全く見られなかった。使用上極めて良好である。
A:15μm角以上の、基材フィルムの凹凸構造に起因する欠陥は見られなかった。使用上非常に良好である。
B:使用可能ではあるものの、15μm角より大きく20μm角未満の、基材フィルムの凹凸構造に起因する欠陥が確認された。
【0174】
〔偏光フィルムへの転写性〕
第一樹脂層/第二樹脂層/基材フィルムの層構成の積層体の第一樹脂層に接着剤を塗布し、偏光子層と貼合乾燥の後、前記の積層体の第二樹脂層から、基材フィルムを連続的に剥離し、第二樹脂層を露出させた際の基材フィルムの剥離性(偏光フィルムへの転写性)を以下の評価指標により評価した。
A:基材フィルムを第二樹脂層から連続的に剥離可能であった。
B:剥離力が過剰に強く第二樹脂層からの剥離が困難か、剥離力が低すぎて意図しないタイミングでの剥離が生じた。
【0175】
〔積層体のウェブハンドリング性〕
積層体のウェブハンドリング性について以下の点を評価した。第一樹脂層/第二樹脂層/基材フィルムの層構成の積層体を作製する際の基材フィルムに第二樹脂層を塗布する工程において、第二樹脂層及び基材フィルムの間での剥離の有無、ならびに得られた積層体の端部におけるカールの発生の有無を評価した。また、積層体をロール状に巻き取り、ロールから巻き出した際のブロッキングの有無を評価した。ブロッキングが生じる場合は、通常、積層体及び偏光フィルムの安定的な製造が困難となる。また、第二樹脂層及び基材フィルムの間での剥離が見られる場合は、端部のカール及びブロッキングの有無に関わらず、通常、前述の層構成の積層体の安定的な製造が困難となる。
S:第二樹脂層及び基材フィルムの間での剥離、端部のカール、ならびにブロッキングのすべてが生じなかった。
A:第二樹脂層及び基材フィルムの間での剥離及びブロッキングが生じなかった。端部のカールがわずかに確認された。
B:第二樹脂層及び基材フィルムの間での剥離が生じなかった。端部のカールが確認された。また、第二樹脂層と基材フィルムの裏面とのブロッキングが時折見られた。
C:第二樹脂層及び基材フィルムの間での剥離が見られた。
【0176】
〔偏光フィルムの加湿信頼性の評価方法〕
偏光フィルムをガラス板に貼り合わせて、5cm角の評価サンプルを得た。この評価サンプルを、温度60℃、湿度95%RHの環境に500時間静置する加湿試験を行った。試験後の評価サンプルを偏光フィルム端部のヨウ素抜けを評価した。
判定基準
A:端部においてヨウ素抜けの発生がない。
B:端部においてヨウ素抜けが生じた部分が0.1mm未満であった
C:端部においてヨウ素抜けが生じた部分が0.1mm以上であった。
【0177】
〔偏光フィルムの偏光子層のクラックの評価方法〕
偏光フィルムをガラス板に貼り合わせて、5cm角の評価サンプルを得た。
-40℃ 30分と85℃ 30分の冷熱サイクル試験を20サイクル実施し、偏光子層のクラックの長さを顕微鏡観察で計測した。クラックが複数生じている場合は、その平均長さにより評価を行った。
A:0.1mm未満
B:0.1mm以上0.15mm未満
C:0.2mm以上
【0178】
[製造例1:樹脂X1の準備]
第一樹脂に用いる樹脂X1として、ノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ZEONOR」、ガラス転移点Tg:133℃)の樹脂ペレットを準備した。
【0179】
[製造例2:樹脂X2の準備]
第一樹脂に用いる樹脂X2として、ノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ZEONOR」、ガラス転移点Tg:163℃)の樹脂ペレットを準備した。
【0180】
[製造例3:樹脂Y1の準備]
(1.ブロック共重合体の合成)
以下の手順により、第二樹脂に用いる樹脂Y1を製造した。
攪拌装置を備えたステンレス鋼製反応器を十分に乾燥させた後、窒素置換した。
この反応器に、脱水シクロヘキサン320部、スチレンモノマー25.0部、及びジブチルエーテル0.38部を仕込んで、反応溶液を得た。この反応溶液を60℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウム溶液(15%含有ヘキサン溶液)0.36部を添加して、第一段階の重合反応を開始した。
1時間重合反応を行った後、反応溶液に、スチレンモノマー25.0部とイソプレンモノマー25.0部とからなる混合モノマー50.0部を添加し、さらに1時間、第二段階の重合反応を行った。
その後、反応溶液中に、スチレンモノマー25.0部を添加し、さらに1時間、第三段階の重合反応を行った。
その後、反応溶液にイソプロピルアルコール0.2部を添加して、反応を停止させた。これにより、反応溶液中に、スチレンブロック/スチレン-イソプレンランダム共重合ブロック/スチレンブロックの構造を有するブロック共重合体を得た。
【0181】
(2.ブロック共重合体の水素化)
次いで、上記反応溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送した。この耐圧反応器に、水素化触媒としてシリカ-アルミナ担持型ニッケル触媒(日揮化学工業社製「E22U」、ニッケル担持量60%)10部を添加して、混合した。また、反応器内部を水素ガスで置換した。その後、反応溶液を攪拌しながら反応器に水素を供給し、温度160℃、圧力4.5MPaにて8時間、水素化反応を行った。
水素化反応の終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した。その後、反応溶液にシクロヘキサン800部を加えて希釈した。希釈された反応溶液をイソプロパノール3500部に注いで、ブロック共重合体の水素化物を析出させた。前記のイソプロパノールとしては、クラス1000のクリーンルームで、孔径1μmのフィルターにてろ過したものを用いた。
析出したブロック共重合体の水素化物を、ろ過により分離回収し、80℃にて48時間減圧乾燥させた。
【0182】
得られたブロック共重合体の水素化物は、StブロックとSt-IPブロックとStブロックとからなる3元ブロック共重合体の水素化物であり、それぞれのブロックのモル比は、Stブロック/St-IPブロック/Stブロック=25/50(St:IP=25:25)/25であった。この水素化物は、重量平均分子量Mwが85,000、分子量分布Mw/Mnが1.44、主鎖及び芳香環の水素化率はほぼ100%であった。
【0183】
(3.樹脂Y1の調製)
前記のブロック共重合体の水素化物100部に、酸化防止剤としてペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](松原産業社製「Songnox1010」)0.1部を溶融混練して、樹脂Y1を得た。この樹脂Y1は、ペレット状に成型して、回収した。
【0184】
[製造例4:樹脂Y2の準備]
第二樹脂として用いる樹脂Y2を以下の手順により製造した。
製造例1で製造した樹脂Y1を100部と、軟化剤としてポリイソブテン(JX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン HV-300」、数平均分子量1,400)30部とを溶融混練して、樹脂Y2を得た。
【0185】
[製造例5:樹脂Y3の製造及び評価]
第二樹脂として用いる樹脂Y3を以下の手順により製造した。
樹脂Y1の製造における第二段階の重合反応で、スチレンモノマー25.0部及びイソプレンモノマー25.0部の代わりに、イソプレンモノマー50部を仕込んだ点以外は、製造例1と同じ操作により、樹脂Y3を合成した。
【0186】
樹脂Y3に含まれるブロック共重合体の水素化物は、StブロックとIPブロックとStブロックとからなる3元ブロック共重合体の水素化物であり、それぞれのブロックのモル比は、Stブロック/IPブロック/Stブロック=25/50/25であった。この水素化物は、重量平均分子量Mwが68,000、分子量分布Mw/Mnが1.21、主鎖及び芳香環の水素化率はほぼ100%であった。
【0187】
[実施例1]
(1.積層体の作製)
樹脂X1をシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンの混合溶媒に固形分15%で溶解させ、紫外線吸収剤(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;BASF製「Tinuvin(登録商標)329」を添加後、再度攪拌し完全に溶解させた第一樹脂液を調製した。
樹脂Y1をシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンの混合溶媒に固形分15%で溶解させ、紫外線吸収剤(2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール;BASF製「Tinuvin(登録商標)329」を添加後、再度攪拌し完全に溶解させた第二樹脂液を調製した。
シリコーンによる剥離処理を表面に施されたPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム;三菱ケミカル製「MRV38」、引張弾性率4000MPa)を用意した。このPETフィルム上に、第二樹脂液をダイコーターを用いて塗布した。その後、100℃で2分間乾燥後、更に第一樹脂液を塗布し、100℃で2分乾燥し、溶媒成分を揮発させて、基材フィルム上に厚み2μmの第二樹脂層、厚み5μmの第一樹脂層の積層体を形成した。
【0188】
(2.偏光子層の製造)
長尺の原反フィルムとして、厚み20μmの未延伸ポリビニルアルコールフィルム(ビニロンフィルム、平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%)を用意した。ガイドロールを介してこのフィルムを長手方向に連続搬送しながら、当該フィルムに対して、30℃で1分間純水に浸漬する膨潤処理、染色溶液(ヨウ素及びヨウ化カリウムをモル比1:23で含む染色剤溶液、染色剤濃度1.2mmol/L)に32℃で2分間浸漬する染色処理を行い、フィルムにヨウ素を吸着させた。その後、フィルムを35℃で30秒間、ホウ酸3%水溶液で洗浄した。その後、57℃で、ホウ酸3%及びヨウ化カリウム5%を含む水溶液中で、フィルムを6.0倍に延伸した。その後、フィルムに対して、35℃で、ヨウ化カリウム5%及びホウ酸1.0%を含む水溶液中で補色処理を行った。その後、フィルムを60℃で2分間乾燥させて、厚み7μmの偏光子層を得た。この偏光子層の偏光度を紫外可視分光光度計(日本分光社製「V-7200」)で測定したところ、99.996%であった。
【0189】
(3.偏光フィルムの作製)
TACフィルム(コニカミノルタ社製「KC4UY」厚み40μm、ケン化品)を準備し、水系接着剤(三菱ケミカル製 ゴーセネックスZ-200 3wt%水溶液)をインラインコートした。前記積層体の第一樹脂層にインラインコロナ処理を施した後、水系接着剤(三菱ケミカル製 ゴーセネックスZ-200 3wt%水溶液)をインラインコートした。TACフィルムの水系接着剤塗布面と、積層体の第一樹脂層の水系接着剤塗布面との間に、偏光子層を積層しニップロール間を通過させて貼り合わせた直後に85℃5分の乾燥を行い、TACフィルム、偏光子層、第一樹脂層、第二樹脂層及び基材フィルムがこの順で積層された基材フィルム付きの偏光フィルムを得た。
【0190】
(4.粘着層の形成)
基材フィルム付きの偏光フィルムから基材フィルムを剥離し、第二樹脂層にインラインコロナ処理を行った後、光学用粘着シート(日東電工製「LUCIACS CS9861US」:厚み25μm)の軽剥離ライナーを剥がして光学用粘着シートの片面を露出させ、上記積層体とニップロールを通過させ貼り合わせた。得られた積層体について前述の評価を行った。
【0191】
[実施例2]
実施例1における(1.積層体の作製)において、第一樹脂液に紫外線吸収剤を添加しなかった点、及び第二樹脂液に含まれる樹脂として、樹脂Y2を用い、紫外線吸収剤を添加しなかった点、及び第一樹脂層の厚みを2μmとした点以外は、実施例1と同様にして、積層体、偏光フィルム及び粘着層付き偏光フィルムを作製し、得られた積層体及び偏光フィルムについて前述の評価を行った。
【0192】
[実施例3~6]
実施例1における(1.積層体の作製)において、第一樹脂液の樹脂の種類及び紫外線吸収剤の有無、第二樹脂液の樹脂の種類及び紫外線吸収剤を有無、並びに第一樹脂層及び第二樹脂層の各厚みを表1に示す通りとした点以外は、実施例1と同様にして、積層体、偏光フィルム及び粘着層付き偏光フィルムを作製し、得られた積層体及び偏光フィルムについて前述の評価を行った。
【0193】
[実施例7]
剥離可能な基材フィルムとして未処理のOPPフィルム(二軸配向ポリオレフィンフィルム;東レ製「新タイプ トレファンBO 40-2500」、引張弾性率2000MPa)を用いた点以外は実施例3と同様に積層体、偏光フィルム及び粘着層付き偏光フィルムを作製し、得られた積層体及び偏光フィルムについて前述の評価を行った。
【0194】
[比較例1]
実施例1における(1.積層体の作製)において、第一樹脂液に含まれる第一樹脂を樹脂X1とし紫外線吸収剤を添加しなかった点、第一樹脂層の厚みを4μmとした点、及び第二樹脂層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層体、偏光フィルム及び粘着層付き偏光フィルムを作製し、得られた積層体及び偏光フィルムについて前述の評価を行った。
【0195】
[比較例2]
剥離可能な基材フィルムとして未処理のOPPフィルム(二軸配向ポリオレフィンフィルム;東レ製「新タイプ トレファンBO 40-2500」、引張弾性率2000MPa)を用いた点以外は、比較例1と同様にして、積層体、偏光フィルム及び粘着層付き偏光フィルムを作製し、得られた積層体及び偏光フィルムについて前述の評価を行った。
【0196】
[比較例3]
実施例1における(1.積層体の作製)において、第一樹脂層を形成しなかった点、第二樹脂液に含まれる第二樹脂を樹脂Y2とし紫外線吸収剤を添加しなかった点、及び第二樹脂層の厚みを4μmとした点以外は、実施例1と同様にして積層体、偏光フィルム及び粘着層付き偏光フィルムを作製し、得られた積層体及び偏光フィルムについて前述の評価を行った。
【0197】
[比較例4]
剥離可能な基材フィルムとして未処理のOPPフィルム(二軸配向ポリオレフィンフィルム;東レ製「新タイプ トレファンBO 40-2500」、引張弾性率2000MPa)を用いた点以外は、比較例3と同様にして、積層体、偏光フィルム及び粘着層付き偏光フィルムを作製し、得られた積層体及び偏光フィルムについて前述の評価を行った。
【0198】
結果を表1及び表2に示す。下記の表において、略称の意味は、下記の通りである。
UVA:紫外線吸収剤
Re:面内レターデーション
Rth:厚み方向のレターデーション
「Si-PET」:シリコーンによる剥離処理を表面に施されたPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム;三菱ケミカル製「MRV38」
「OPP」:未処理のOPPフィルム(二軸配向ポリオレフィンフィルム;東レ製「新タイプ トレファンBO 40-2500」
【0199】
【表1】
【0200】
【表2】
【0201】
実施例1~7に示すように、所定の貯蔵弾性率を有する第一樹脂を含む第一樹脂層及び所定の貯蔵弾性率を有する第二樹脂を含む第二樹脂層を備える積層体においては、第二樹脂層への表面凹凸を緩和しつつ、偏光フィルムに用いた際、偏光子クラックの発生を抑制できることが確認された。一方、比較例1及び2に示すように、所定の貯蔵弾性率を有する第一樹脂層のみを有する積層体においては、第二樹脂層への表面凹凸の緩和が困難であった。また、比較例1においては基材フィルムと樹脂層との密着性が不十分なため、ウェブハンドリング性及び転写性が低下してしまうことが確認された。
【0202】
また、比較例3及び4に示すように、所定の貯蔵弾性率を有する第二樹脂層のみを有する積層体においては、偏光子クラックの抑制が困難であることが確認された。また、比較例3及び4においては十分な加湿信頼性が得られないことが確認された。これは、第二樹脂層と偏光子層との貼り合わせの際、偏光子層と第二樹脂層との間に貼合不良が生じたことに起因すると推測される。特に、比較例4においては、第二樹脂層と基材背面とのブロッキングにより第二樹脂層表面の平滑性が失われたため、偏光子層と第二樹脂層との間に貼合不良の影響が大きいことが推測される。
【符号の説明】
【0203】
100 積層体
101、201、301及び401 第一樹脂層
102、202、302及び402 第二樹脂層
20 剥離可能な基材フィルム
200 粘着層付き積層体
203、403 粘着層
300 偏光フィルム
304及び404 偏光子層
305及び405 接着層
図1
図2
図3
図4