(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067099
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ノズル面回復装置、液滴吐出ヘッドおよびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178082
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】根本 雄介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056FA14
2C056JA01
2C056JA06
2C056JA08
2C056JA09
2C056JA13
(57)【要約】
【課題】被ガイド部材の位置調整機構を設けることによってノズル面回復装置の位置決め精度を向上する。
【解決手段】液滴を吐出する複数のノズル104が形成されたノズル面を有する液滴吐出ヘッド100のノズル面に被着するキャップ240と、ガイド部材(ガイドレール280、290)にガイドされる被ガイド部材(第1コロ220、第2コロ230)とを有し、液滴吐出ヘッド100に対してガイド部材に沿って相対的に移動することにより、ノズル面のキャッピング可能位置と退避位置とを採るノズル面回復装置200において、被ガイド部材を、ノズル面とキャップの相対高さを調整可能に移動する第1の位置調整機構(第1調整板221)を有することを特徴とする。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有する液滴吐出ヘッドの前記ノズル面に被着するキャップと、ガイド部材にガイドされる被ガイド部材とを有し、前記液滴吐出ヘッドに対して前記ガイド部材に沿って相対的に移動することにより、前記ノズル面のキャッピング可能位置と退避位置とを採るノズル面回復装置において、
前記被ガイド部材を、前記ノズル面と前記キャップの相対高さを調整可能に移動する第1の位置調整機構を有することを特徴とするノズル面回復装置。
【請求項2】
前記被ガイド部材を、前記ノズル面と平行かつ前記ガイド部材と直角な方向における前記キャップの位置ズレを調整可能に移動する第2の位置調整機構を有することを特徴とする請求項1のノズル面回復装置。
【請求項3】
前記被ガイド部材が、前記ガイド部材に沿って転動する第1コロと第2コロを有し、前記第1コロを前記第1の位置調整機構によって調整することによって前記ノズル面と前記キャップの相対高さが調整可能であり、前記第2コロを前記第2の位置調整機構によって調整することによって前記ノズル面と平行かつ前記ガイド部材と直角な方向における前記キャップの位置ズレが調整可能であることを特徴する請求項2のノズル面回復装置。
【請求項4】
前記第1の位置調整機構が、前記第1コロの回転軸に接続された偏心軸を有し、当該偏心軸の回動により前記ノズル面と前記キャップの相対高さを調整することを特徴する請求項3のノズル面回復装置。
【請求項5】
前記第1の位置調整機構が、前記偏心軸の回動量を示す位置調整用の目盛を有することを特徴する請求項4のノズル面回復装置。
【請求項6】
前記第2の位置調整機構が、前記第2コロの回転軸を支持すると共に前記ノズル面と平行な方向に移動可能な調整板を有することを特徴する請求項3のノズル面回復装置。
【請求項7】
前記調整板が、ノズル面回復装置本体に固定された少なくとも2つのガイドピンと摺接する傾斜辺を有し、前記調整板が当該傾斜辺の方向に移動することで前記第2コロを前記ノズル面と平行かつ前記ガイド部材と直角な方向に移動することを特徴する請求項6のノズル面回復装置。
【請求項8】
前記第2の位置調整機構が、前記調整板の移動量を示す位置調整用の目盛を有することを特徴する請求項7のノズル面回復装置。
【請求項9】
前記ガイド部材が平行二列のガイドレールを有し、前記第1コロがノズル面回復装置本体の前後左右の4箇所に配設されていることを特徴する請求項3から8のいずれか1項のノズル面回復装置。
【請求項10】
前記第2コロがノズル面回復装置本体の前後2個所に配設されて平行二列の前記ガイドレールの一方に沿って転動し、前記ガイドレールの他方とノズル面回復装置本体との間に前記第2コロを前記一方のガイドレールに付勢する弾性部材が配設されていることを特徴する請求項9のノズル面回復装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項のノズル面回復装置を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項11の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とするラインヘッド方式のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
記録媒体を周面に保持して搬送する搬送ドラムを有し、当該搬送ドラムの上部外周に前記液滴吐出ヘッドと前記ノズル面回復装置が放射状に複数配設されていることを特徴とする請求項12のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
放射状に複数配設された前記ノズル面回復装置の重力方向片側に前記第2コロが配設されていることを特徴とする請求項13のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノズル面回復装置、液滴吐出ヘッドおよびインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置としてのインクジェットプリンタは、記録媒体を搬送する搬送ドラムや搬送ベルトに対向して、インクを吐出する液滴吐出ユニット(C,M,Y,K)を複数有する(特許文献1の
図1、特許文献2の
図7)。これら液滴吐出ユニットはラインヘッドを構成する複数の液滴吐出ヘッドを備え、各液滴吐出ヘッドのノズル面は、経時で目詰まり等が生じないように、ノズル面回復装置によってノズル面を常に良好な状態に保つようにしている。
【0003】
図10は、特許文献2に開示されたノズル面回復装置Cが退避位置にある状態を示す。このノズル面回復装置Cは、通常は
図10のように搬送ベルトBの手前側に退避している。ノズル面を回復処理するとき、液滴吐出ユニットHをA1方向に上昇させた後、ノズル面回復装置CをA2方向にスライド移動して液滴吐出ユニットHの下方(キャッピング可能位置)に位置決めする。この状態で、液滴吐出ユニットHを少し下降させて液滴吐出ユニットHのノズル面をノズル面回復装置Cのキャップに押し当て回復処理(クリーニング)を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液滴吐出ユニットHのノズル面は高精度に位置決めされている。これに対して回復処理時のノズル面回復装置Cの位置決め精度が低いと、ノズル面のキャッピングが不完全になって回復処理に支障が出る。従来、ノズル面回復装置Cのスライド移動は、ガイドプレートに設けたガイド溝(特許文献2の
図11)によってノズル面回復装置Cの側面に突設した被ガイド部材としてのピンPnをガイドすることで行っていた。このため、部品間の寸法誤差によってノズル面回復装置Cの位置決め精度を出すことが困難であった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたもので、被ガイド部材の位置調整機構を設けることによってノズル面回復装置の位置決め精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のノズル面回復装置は、液滴を吐出する複数のノズルが形成されたノズル面を有する液滴吐出ヘッドの前記ノズル面に被着するキャップと、ガイド部材にガイドされる被ガイド部材とを有し、前記液滴吐出ヘッドに対して前記ガイド部材に沿って相対的に移動することにより、前記ノズル面のキャッピング可能位置と退避位置とを採るノズル面回復装置において、前記被ガイド部材を、前記ノズル面と前記キャップの相対高さを調整可能に移動する第1の位置調整機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノズル面回復装置の位置決め精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るインクジェットプリンタの概略図である。
【
図2】液滴吐出ユニットをノズル面と反対側から見た平面図である。
【
図3】液滴吐出ユニットをノズル面側から見た平面図である。
【
図5B】ノズル面回復装置の単純化した平面図である。
【
図5C】ノズル面回復装置の単純化した正面図である。
【
図6A】液滴吐出ユニットの下方にノズル面回復装置を移動した状態の斜視図である。
【
図6B】液滴吐出ユニットの下方にノズル面回復装置を移動した状態の正面図である。
【
図7A】ノズル面回復装置に使用するコロの第1の位置調整機構の斜視図である。
【
図7B】ノズル面回復装置に使用するコロの第1の位置調整機構の分解斜視図である。
【
図8A】ノズル面回復装置に使用するコロの第2の位置調整機構の斜視図である。
【
図8B】ノズル面回復装置に使用するコロの第2の位置調整機構の平面図である。
【
図9A】下降位置の液滴吐出ユニットと退避位置のノズル面回復装置の(a)斜視図と(b)正面図である。
【
図9B】上昇位置の液滴吐出ユニットと退避位置のノズル面回復装置の(a)斜視図と(b)正面図である。
【
図9C】上昇位置の液滴吐出ユニットとキャッピング位置のノズル面回復装置の(a)斜視図と(b)正面図である。
【
図9D】第1調整板の回転角度と第1コロの変位量の関係を示す図である。
【
図10】従来の液滴吐出ユニットとノズル面回復装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(●インクジェットプリンタ)
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は液体を吐出する装置としてのラインヘッド方式のインクジェットプリンタ1の概略図である。インクジェットプリンタ1は、液体を付与する付与対象(記録媒体)としてのシート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、搬出部50と、反転機構部60を備えている。
【0010】
インクジェットプリンタ1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)する。その後、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0011】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備える。搬入部10からシート材Pを前処理部20に供給する。前処理部20は、例えばインクの色材を凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0012】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転体)である搬送ドラム31と、搬送ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液滴吐出部32を備えている。また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取って搬送ドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、搬送ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って乾燥部40に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0013】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、搬送ドラム31との対向位置で搬送ドラム31へ受け渡される。
【0014】
搬送ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。搬送ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によって搬送ドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。そして、渡し胴34から搬送ドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によって搬送ドラム31上に吸着担持され、搬送ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0015】
液滴吐出部32は、液滴を吐出する4つの液滴吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。これら液滴吐出ユニット33(33A~33D)は、搬送ドラム31の上側外周に沿って放射状、等間隔かつ
図1で左右対称に配設されている。
【0016】
液滴吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、液滴吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、液滴吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、液滴吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出することができる。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う液滴吐出ユニットを使用することもできる。
【0017】
液滴吐出部32の各液滴吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。搬送ドラム31に担持されたシート材Pが液滴吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0018】
液滴吐出部32で液体が付与されたシート材Pは搬送ドラム31から受け渡し胴35に渡され、受け渡し胴35が受け取ったシート材Pは搬送機構部41に渡されて、乾燥部(加熱部)40に移送される。乾燥部40は、印刷部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0019】
反転機構部60は、乾燥部40を通過したシート材Pに対して両面印刷を行うときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構である。反転されたシート材Pは印刷部30の搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0020】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51と、シート搬送装置502とを備えている。反転機構部60を通じて搬送されてくるシート材Pは、スタック部501上に順次積み重ねられて保持される。
【0021】
(●液滴吐出ユニット)
次に、前述した液滴吐出ユニット33について更に説明する。
図2は液滴吐出ユニット33をノズル面側から見た平面図、
図3は液滴吐出ユニット33をノズル面と反対側から見た平面図、
図4は搬送ドラム31の外周に液滴吐出ユニット33を複数ユニット配設した図である。
【0022】
液滴吐出ユニット33は、液体を吐出する複数のヘッド100を千鳥状にヘッド取付部材302に並べて配置したものである(ラインヘッド方式)。千鳥配置されたヘッド100の列の一方の列をヘッド列100Aとし、他方の列をヘッド列100Bとする。なお、ヘッド取付部材302に千鳥状でなく1つのヘッド列を備える場合でも本発明を適用可能である。
【0023】
ヘッド100は、液体を吐出する複数のノズル104が配列されたノズル列を複数列(ここでは2列で説明するが2列に限定されない。)有している。ここで「液体を吐出するヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。
【0024】
より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0025】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0026】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0027】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0028】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0029】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0030】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0031】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0032】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0033】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0034】
(●ノズル面回復装置)
次に、本発明の実施形態に係るノズル面回復装置200について
図4~
図9を参照して説明する。ノズル面回復装置200は
図4のように、搬送ドラム31の軸線方向(
図4紙面の前後方向)に移動することで、液滴吐出ユニット33と搬送ドラム31外周面との間の隙間に挿入可能に構成されている。
【0035】
ノズル面回復装置200は
図5A-
図5Cに示すように、細長矩形状の基板210と、液滴吐出ユニット33のノズル面に被着する複数のキャップ240と、液滴吐出ユニット33のノズルを払拭するワイパー250およびウェブ260を有する。
【0036】
複数のキャップ240は液滴吐出ユニット33のノズル面と同数で配設されている。液滴吐出ユニット33のノズル面は、
図3のように各ヘッド100で隣接する2面が二列6箇所に千鳥状に配置され、当該千鳥状配置と同様にキャップ240も2個一組が二列6箇所に千鳥状に配置されている。
【0037】
各キャップ240は廃液ポンプを介して廃液タンクに接続されている。液滴吐出ユニット33のノズル面にキャップ240を被着した状態で、ノズルからキャップ240内にインクを吐出させ、ノズルの目詰まり等のクリーニングを行う。吐出されたインクは廃液ポンプを介して廃液タンクに送られる。
【0038】
ワイパー250は基板210上に垂直に立てた左右一対の弾性板で構成されている。これらワイパー250は二列6箇所のキャップ240の前端側に配設されている。
【0039】
ウェブ260は基板210上に左右一対で配設された吸液性を有する不織布等で構成されている。これらウェブ260はワイパー250の前側に配設されている。
【0040】
基板210の両側(長辺)はL字状に上方に屈曲されて垂直な一対の側板部211を形成している。一方の側板部211は、その長手方向両端の一部が外側に水平に切倒されてブラケット部212を形成している。
【0041】
左右の側板部211の長手方向両端に、ノズル面回復装置200の高さ方向支持用の第1コロ220が軸支されている。また、一方の側板部211の前記ブラケット部212に、ノズル面回復装置200の左右方向支持用の第2コロ230の回転軸231が軸支されている。第1コロ220と第2コロ230は、後述するガイドレール280、290にガイドされる被ガイド部材を構成する。
【0042】
これら第1コロ220と第2コロ230は、
図6A、6Bに示すガイド部材としての左右一対のガイドレール280、290に沿って転動可能に構成されている。ガイドレール280、290は、
図1の印刷部30の機枠に固定されている。ガイドレール280、290の長手方向は、搬送ドラム31の軸線方向(
図4紙面の前後方向)と平行である。ノズル面回復装置200は、左右一対のガイドレール280、290に沿って前後移動可能に構成されている。
【0043】
詳しくは
図5B、
図5Cに示すように、第1コロ220が断面L字状の左右のガイドレール280、290の水平底板部上を転動可能に構成され、第2コロ230が片側のガイドレール290の垂直側板部の内面を転動可能に構成されている。なお、
図5B、
図5Cではワイパー250およびウェブ260を省略している。
【0044】
図5B、
図5Cに示すように、第2コロ230と反対側の側板部211の外面に、必要に応じて、ガイドレール280の垂直側板部の内面281に摺接する板バネ270を取り付けることができる。当該板バネ270の先端部でガイドレール280の垂直側板部の内面281を弾性的に押圧することで、
図4におけるノズル面回復装置200の傾斜方向に関わらず、第2コロ230がガイドレール290から浮き上がるのを防止することができる。
【0045】
なお、
図4のようにノズル面回復装置200の第2コロ230が重力方向の片側に配設されていれば、板バネ270がなくてもノズル面回復装置200の自重で第2コロ230をガイドレール290に押付けることができる。これにより、液滴吐出ユニット33のノズル面と平行かつガイドレール280、290と直角な方向におけるキャップ240の位置ズレを、後述する第2の位置調整機構の第2調整板232により正確に調整することができる。
【0046】
図6A、
図6Bに示すように、ノズル面回復装置200のキャップ240の上端位置と、高さ方向に上昇させた液滴吐出ユニット33のノズル面(下面)の位置は、正確に一致するようにノズル面回復装置200が配設されている。これにより、ノズル面回復装置200を
図6AのA5方向に移動させることで、ノズル面回復装置200のキャップ240を液滴吐出ユニット33のノズル面に隙間なく被着することができるようになっている。キャップ240とノズル面の位置合わせは、後述する第1と第2の位置調整機構により行う。
【0047】
ワイパー250とウェブ260の上端位置は、キャップ240の上端位置よりもやや高い位置に設定されている。これにより、ノズル面回復装置200を後述する
図9B→
図9Cのように退避位置からキャッピング可能位置に移動する際に、ウェブ260とワイパー250で液滴吐出ユニット33の複数のノズル面を払拭するようにしている。
【0048】
(●第1の位置調整機構)
図5A、
図5Bのノズル面回復装置200の四隅(前後左右)に配設された第1コロ220は、
図7A、
図7Bに示すように第1の位置調整機構により高さ方向(A3方向)に位置調整可能とされている。詳しくは、基板210の側板部211に形成された軸孔211bに、第1コロ220の回転軸に一体連結された偏心軸220aが嵌合されている。この偏心軸220aの軸線に対して、第1コロ220の回転軸の軸線が所定距離で偏心している。
【0049】
第1コロ220と反対側の偏心軸220aの端部は、扇形の第1調整板221と回り止め結合するためDカットされている。そして、第1調整板221のD形の軸穴221aに、Dカットされた偏心軸220aが挿入・結合されている。
【0050】
扇形の第1調整板221の円弧部には、軸穴221aを中心とする円弧状の長穴221bが形成されている。この長穴221bに挿入した固定ネジ222を側板部211のネジ穴211cにねじ込むことにより、第1調整板221の偏心軸220aを中心とする回動位置を固定することができる。
【0051】
側板部211の内側面には、第1調整板221の円弧部に沿って円弧状の調整目盛211aが刻印または印字によって形成されている。一方、第1調整板221の円弧部には三角マーク221cが設けられており、この三角マーク221cが示す調整目盛211aの位置によって、第1調整板221の回動位置を確認できるようにしている。
【0052】
偏心軸220aは第1コロ220の回転軸(軸心)に対して偏心しているので、偏心軸220aないし第1調整板221を回動することにより、第1コロ220の
図7AでのA3方向高さ位置を確認・調整できるようになっている。すなわち、第1調整板221によって、被ガイド部材としての第1コロ220を、ノズル面とキャップ240の相対高さを調整可能に移動する第1の位置調整機構が構成される。
【0053】
(●第2の位置調整機構)
前述した第2コロ230の回転軸は、
図5Aで説明したようにブラケット部212に直接軸支するほか、
図8A、
図8Bに示すように、第2調整板232を有する第2の位置調整機構により、横方向(A4方向)に位置調整可能に支持することができる。詳しくは、基板210の側板部211のブラケット部212に代えて第2調整板232を設け、この第2調整板232に第2コロ230の回転軸231を軸支する。第2コロ230の外周部の一部は、側板部211に形成した切欠部211dから基板210の外側に突出し、ガイドレール290の垂直側板部の内面に当接している。
【0054】
第2調整板232は一対の長孔232aと直線状の傾斜部232bを有する。一対の長孔232aにネジ234を通して基板210に締付けることで、第2調整板232を基板210に固定することができる。
【0055】
前記傾斜部232bはノズル面回復装置200の移動方向(
図8Bの上下方向)に対して傾斜している。この傾斜の方向は逆であっても構わない。一方、基板210上に一対のガイドピン233が固定的に配設されている。そして、ネジ234を緩めた状態で第2調整板232の傾斜部232bが一対のガイドピン233と摺動することで、第2調整板232が傾斜部232bの方向で移動可能に構成されている。
【0056】
一対のガイドピン233の間の基板210表面に、調整目盛210aが刻印または印字によって形成されている。一方、第2調整板232の傾斜部232bの長手方向中央に三角マーク232cが付されている。
【0057】
この三角マーク232cが示す調整目盛210aの位置によって、第2調整板232のスライド位置ひいては第2コロ230のA4方向位置を確認・調整できるようになっている。すなわち、第2調整板232によって、被ガイド部材としての第2コロ230を、ノズル面と平行かつガイドレール280、290と直角な方向におけるキャップ240の位置ズレを調整可能に移動する第2の位置調整機構が構成される。
【0058】
(●ノズル面の回復処理)
ノズル面回復装置200は以上のように構成され、このノズル面回復装置200を使用して液滴吐出ユニット33のノズル面を回復処理(クリーニング)する。回復処理の手順は以下の通りである。
【0059】
インクジェットプリンタ1の作動中(印字中)は、ノズル面回復装置200を
図9A(a)(b)のようにガイドレール280、290の端の退避位置に移動しておく。この退避位置では、ノズル面回復装置200が液滴吐出ユニット33と搬送ドラム31との間の隙間から搬送ドラム31の軸線方向手前側に離脱している。
【0060】
図9A(a)(b)の状態で、液滴吐出ユニット33のノズルから吐出された液体(インク)を、搬送ドラム31の外周面に保持された記録媒体に向けて吐出して所要の印刷を行う。退避位置にあるノズル面回復装置200と液滴吐出ユニット33との距離は、ガイドレール280、290を最短にしてノズル面回復装置200を小型化するため必要最低限でよい。
【0061】
液滴吐出ユニット33のノズルをクリーニングするときは、搬送ドラム31の回転を停止すると共に、
図9B(a)(b)のように、まず液滴吐出ユニット33を上昇機構によって上方(A6方向)に上昇させる。この上昇操作は、液滴吐出ユニット33と搬送ドラム31外周面との間にノズル面回復装置200を挿入可能なスペースを形成するためである。
【0062】
液滴吐出ユニット33を上昇させたら、液滴吐出ユニット33と搬送ドラム31外周面との間に形成されたスペースに向けて、ノズル面回復装置200をA7方向に前進(スライド移動)させる。このときノズル面回復装置200を前進させる距離は、ノズル面回復装置200のほぼ進行方向長さ分である。ノズル面回復装置200を前進移動させる間に、ウェブ260とワイパー250で液滴吐出ユニット33の複数のノズル面を予備的に払拭することができる。
【0063】
ノズル面回復装置200の前進移動を完了すると、液滴吐出ユニット33を
図9C(a)(b)のようにA8方向に少し下降させる。これにより、液滴吐出ユニット33の各ノズル面にノズル面回復装置200のキャップ240を隙間なく被着することができる。
【0064】
ノズル面とキャップ240の位置合わせは、前述した
図7A、
図7Bの第1の位置調整機構や、
図8A、
図8Bの第2の位置調整機構により予め行っておくとよい。ノズル面回復装置200の四隅に配設された第1コロ220は、第1の位置調整機構によりそれぞれ高さ調整可能なので、ノズル面とキャップ240の高さ方向の位置合わせを正確に行うことができる。また、ノズル面回復装置200の片側に配設された第2コロ230は、第2の位置調整機構によりそれぞれ横移動調整可能なので、ノズル面と平行な方向でキャップ240の位置合わせを正確に行うことができる。
【0065】
第1コロ220を高さ調整する際、
図9Dに示す第1調整板221の回転角度と第1コロ220の変位量の関係を利用すると、高さ調整をスムーズに行うことができる。この回転角度と変位量の関係は、第1コロ220の回転軸の偏心量によって変わる。偏心量が大きくなると
図9Dの曲線の傾斜が増大する。
【0066】
図9Dの曲線の中央部分の直線部分は近似式(変位量=ax回転角度、a:定数)によって表すことができる。したがって、第1コロ220の必要移動量(変位量)に対応する形で調整目盛211aを形成しておくことで、第1コロ220を狙いの移動量に迅速に調整することができる。同様に、第2の位置調整機構の調整目盛210aも、第2コロ230の必要移動量(変位量)に対応する形で形成することができる。
【0067】
図9C(a)(b)のように液滴吐出ユニット33のノズル面にキャップ240を被着した状態で、キャップ240に接続した廃液ポンプを作動させると共に、ノズルからキャップ240内にインクを吐出させる。これにより、ノズル面の余分なインクや異物を吸引してノズル面の回復処理(クリーニング)を行うことができる。吐出されたインクは廃液ポンプを介して廃液タンクに送られる。
【0068】
ノズル面の回復処理が完了したら、前述した手順と逆の手順でノズル面回復装置200を元の退避位置に後退移動させる。そして、液滴吐出ユニット33を
図9Aのように降下させて印字可能状態にセットする。
【0069】
なお、プリンタ1を長時間使用しない場合は、
図9Cのようにノズル面回復装置200をキャッピング可能位置に前進移動させる。そして液滴吐出ユニット33のノズル面にキャップ240を被着してノズル面の乾燥を防止する。
【0070】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば前述のインクジェットプリンタ1では複数のヘッド100を千鳥状に配設したが、傾斜した複数のノズル列を有するヘッドを直線状に複数配設することも可能である。
【0071】
また、前記実施形態では被ガイド部材として第1コロ220と第2コロ230を使用したが、被ガイド部材はコロに限らず、被ガイドピン等を使用してもよい。要するに被ガイド部材は、ガイド部材であるガイドレール280、290と低摩擦で摺動可能な任意の部材で構成することができる。
【0072】
また第1、第2の位置調整機構も、
図7A-
図8Bの実施形態に限定されない。例えば第1コロ220を
図8A、
図8Bのように第2調整板232で支持してもよいし、第2コロ230を
図7A、
図7Bのように偏心軸220aで支持してもよい。このように位置調整機構は同様の機能を有する各種の機構を採用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:インクジェットプリンタ(液体を吐出する装置)
10:搬入部 11:搬入トレイ
11A:下段搬入トレイ 1B:上段搬入トレイ
12(12A、12B):給送装置 20:前処理部
21:塗布部 30:印刷部
31:搬送ドラム 32:液滴吐出部
33(33A~33D:液滴吐出ユニット 34:渡し胴
35:受け渡し胴 40:乾燥部(加熱部)
41:搬送機構部 50:搬出部
51:搬出トレイ 60:反転機構部
61:搬送経路 100:ヘッド
100A、100B:ヘッド列 104:ノズル
200:ノズル面回復装置 210:基板
210a:調整目盛 211:側板部
211a:調整目盛 211b:軸孔
211c:ネジ穴 211d:切欠部
212:ブラケット部 220a:偏心軸
221:第1調整板(第1の位置調整機構) 221a:軸穴
221b:長穴 221c:三角マーク
222:固定ネジ 231:回転軸
232:第2調整板(第2の位置調整機構) 232a:長孔
232b:傾斜部 232c:三角マーク
233:ガイドピン 234:ネジ
240:キャップ 250:ワイパー
260:ウェブ 270:板バネ
280、290:ガイドレール 281:ガイドレール内面
302:ヘッド取付部材 501:スタック部
502:シート搬送装置 P:シート材(記録媒体)
B:搬送ベルト H:液滴吐出ユニット
Pn:ピン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2014-51015号公報
【特許文献2】特許第4790107号公報