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特開2023-67217熱電変換素子および熱電変換モジュール、並びに、それらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067217
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】熱電変換素子および熱電変換モジュール、並びに、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20230509BHJP
   H10N 10/855 20230101ALI20230509BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20230509BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L35/32 Z
H01L35/22
H01L35/34
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178256
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】内田 秀樹
(57)【要約】
【課題】電気抵抗を低減した熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】電気的に直列接続された長尺状の熱電変換素子を複数備え、長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなる熱電変換素子(a1)、長手方向に延びて一端が熱電変換構造体内で終端し他端が開口するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体と、熱電変換構造体のスリットが開口している側の端部をスリットの開口を跨いで電気的に接続する接合部とを備える熱電変換素子(a2)、並びに、長手方向に直交する方向に隙間をあけて並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体と、熱電変換構造体の長手方向両端のそれぞれにおいて端部同士を電気的に接続する第一および第二接合部とを備える熱電変換素子(a3)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子(A)を含む、熱電変換モジュール。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の端部を介して電気的に直列接続された長尺状の熱電変換素子を複数備える熱電変換モジュールであって、
電気的に直列接続された複数の熱電変換素子は、熱電変換素子(a1)~(a3)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子(A)を1つ以上含み、
前記熱電変換素子(a1)は、長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなり、
前記熱電変換素子(a2)は、長手方向に延びて一端が熱電変換構造体内で終端し他端が開口するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体と、前記熱電変換構造体の前記スリットが開口している側の端部を前記スリットの開口を跨いで電気的に接続する接合部とを備え、
前記熱電変換素子(a3)は、長手方向に直交する方向に隙間をあけて並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体と、前記熱電変換構造体の長手方向一端側の端部同士を電気的に接続する第一接合部と、前記熱電変換構造体の長手方向他端側の端部同士を電気的に接続する第二接合部とを備える、
ことを特徴とする、熱電変換モジュール。
【請求項2】
前記熱電変換素子(A)が、下記関係式(1):
S < W/n ・・・(1)
〔式(1)中、nは、スリットまたは隙間の数であり、Sは、スリットまたは隙間の幅寸法の合計値であり、Wは、熱電変換素子(A)の幅寸法である。〕
を満たす、請求項1に記載の熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記熱電変換素子(a1)および前記熱電変換素子(a2)は、スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法が全て同一であり、
前記熱電変換素子(a3)は、並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体の幅寸法が全て同一であり、
前記熱電変換素子(A)が、下記関係式(2):
R < Rn/n ・・・(2)
〔式(2)中、nは、スリットまたは隙間の数であり、Rは、熱電変換素子(A)と同一の幅、長さおよび厚みを有し、スリットまたは隙間を有さない長尺状の熱電変換構造体からなる仮想の熱電変換素子の電気抵抗であり、Rnは、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a1)または熱電変換素子(a2)の場合は、スリットの幅方向両側に位置する部分の電気抵抗であり、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a3)の場合は、長尺状の熱電変換構造体の電気抵抗である。〕
を満たす、請求項2に記載の熱電変換モジュール。
【請求項4】
前記熱電変換素子(A)は、前記スリットまたは前記隙間を2つ以上有し、
前記スリットまたは前記隙間の形状が全て同一形状である、請求項1~3の何れかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項5】
前記長尺状の熱電変換構造体は、導電性材料が非配向な状態に配置されてなる、請求項1~4の何れかに記載の熱電変換モジュール。
【請求項6】
前記導電性材料が繊維状炭素材料である、請求項5に記載の熱電変換モジュール。
【請求項7】
前記繊維状炭素材料がカーボンナノチューブである、請求項6に記載の熱電変換モジュール。
【請求項8】
スリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなり、
前記スリットは、前記熱電変換構造体の長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端する、熱電変換素子。
【請求項9】
スリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体を備え、
前記スリットは、前記熱電変換構造体の長手方向に延びて、一端が熱電変換構造体内で終端すると共に他端が開口し、
前記熱電変換構造体の前記スリットが開口している側の端部を前記スリットの開口を跨いで電気的に接続する接合部を更に備える、熱電変換素子。
【請求項10】
長手方向の端部を介して電気的に並列接続された長尺状の熱電変換素子を複数備える熱電変換モジュールであって、
電気的に並列接続された複数の熱電変換素子は、請求項8または9に記載の熱電変換素子を1つ以上含む、熱電変換モジュール。
【請求項11】
請求項8または9に記載の熱電変換素子の製造方法であって、長尺状の熱電変換原料構造体にスリットを形成する工程を含む、熱電変換素子の製造方法。
【請求項12】
前記熱電変換素子は、スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法が全て同一であり、
前記熱電変換素子が、下記関係式(1)および(2)’:
S < W/n ・・・(1)
R’ < Rn/n ・・・(2)’
〔式(1)中、nは、スリットの数であり、Sは、スリットの幅寸法の合計値であり、Wは、熱電変換素子の幅寸法である。
式(2)’中、nは、スリットの数であり、R’は、熱電変換原料構造体の電気抵抗であり、Rnは、熱電変換素子のスリットの幅方向両側に位置する部分の電気抵抗である。〕
を満たす、請求項11に記載の熱電変換素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1~7の何れかに記載の熱電変換モジュールの製造方法であって、
長尺状の熱電変換原料構造体にスリットを形成して熱電変換素子(a1)または熱電変換素子(a2)を作製する工程、および/または、長尺状の熱電変換原料構造体を長手方向に切断して熱電変換素子(a3)を作製する工程を含む、熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項14】
前記熱電変換素子(a1)および前記熱電変換素子(a2)は、スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法が全て同一であり、
前記熱電変換素子(a3)は、並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体の幅寸法が全て同一であり、
前記熱電変換素子(A)が、下記関係式(1)および(2)’:
S < W/n ・・・(1)
R’ < Rn/n ・・・(2)’
〔式(1)中、nは、スリットまたは隙間の数であり、Sは、スリットまたは隙間の幅寸法の合計値であり、Wは、熱電変換素子(A)の幅寸法である。
式(2)’中、nは、スリットまたは隙間の数であり、R’は、熱電変換原料構造体の電気抵抗であり、Rnは、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a1)または熱電変換素子(a2)の場合は、スリットの幅方向両側に位置する部分の電気抵抗であり、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a3)の場合は、長尺状の熱電変換構造体の電気抵抗である。〕
を満たす、請求項13に記載の熱電変換モジュールの製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の熱電変換モジュールの製造方法であって、
請求項11または12に記載の熱電変換素子の製造方法を用いて熱電変換素子を作製する工程を含む、熱電変換モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換素子およびその製造方法、並びに、熱電変換モジュールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱と電力を変換する熱電素子の一種として、両端部間の温度差を利用して熱を電力に変換する熱電変換素子が知られている。
【0003】
そして、熱電変換素子は、例えば、複数の熱電変換素子を直列または並列に接続した熱電変換モジュールとして発電に用いられている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/121133号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】独立行政法人 産業技術総合研究所、“熱電変換性能の高い導電性高分子薄膜を開発”、産総研プレスリリース、[online]、2012年8月31日、[2020年8月17日検索]、インターネット<https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2012/pr20120831/pr20120831.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、より効率的に発電を行う観点からは、熱電変換モジュールに用いられる熱電変換素子の電気抵抗を低減することが求められている。
【0007】
そのため、同じ寸法で比較した際に電気抵抗がより小さい熱電変換素子、および、当該熱電変換素子を用いた熱電変換モジュールが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、長尺状の熱電変換素子について、長手方向に切断して長手方向に延びる隙間を形成、或いは、長手方向に延びて少なくとも一端が熱電変換素子内で終端するスリットを形成し、熱電変換素子の幅よりも狭幅の電流経路を複数有する熱電変換素子とすれば、スリットや隙間を有さない同じ幅の熱電変換素子と比較して電気抵抗が低減することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換モジュールは、長手方向の端部を介して電気的に直列接続された長尺状の熱電変換素子を複数備える熱電変換モジュール(以下、「直列接続型熱電変換モジュール」と称することがある。)であって、電気的に直列接続された複数の熱電変換素子は、熱電変換素子(a1)~(a3)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子(A)を1つ以上含み、前記熱電変換素子(a1)は、長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなり、前記熱電変換素子(a2)は、長手方向に延びて一端が熱電変換構造体内で終端し他端が開口するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体と、前記熱電変換構造体の前記スリットが開口している側の端部を前記スリットの開口を跨いで電気的に接続する接合部とを備え、前記熱電変換素子(a3)は、長手方向に直交する方向に隙間をあけて並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体と、前記熱電変換構造体の長手方向一端側の端部同士を電気的に接続する第一接合部と、前記熱電変換構造体の長手方向他端側の端部同士を電気的に接続する第二接合部とを備えることを特徴とする。
このように、熱電変換素子(a1)~(a3)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子(A)を有していれば、電気抵抗を低減し、熱電変換モジュールの発電効率を高めることができる。
【0010】
ここで、本発明の熱電変換モジュールは、前記熱電変換素子(A)が、下記関係式(1):
S < W/n ・・・(1)
〔式(1)中、nは、スリットまたは隙間の数であり、Sは、スリットまたは隙間の幅寸法の合計値であり、Wは、熱電変換素子(A)の幅寸法である。〕
を満たすことが好ましい。関係式(1)は、スリットや隙間の加工可能性を決める指標であり、熱電変換素子(A)の作製時に実際に行うパターンニングプロセスで形成可能なスリットまたは隙間の幅に合わせてWもしくはnを設定できる。
【0011】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記熱電変換素子(a1)および前記熱電変換素子(a2)は、スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法が全て同一であり、前記熱電変換素子(a3)は、並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体の幅寸法が全て同一であり、前記熱電変換素子(A)が、上述した関係式(1)に加え、下記関係式(2):
R < Rn/n ・・・(2)
〔式(2)中、nは、スリットまたは隙間の数であり、Rは、熱電変換素子(A)と同一の幅、長さおよび厚みを有し、スリットまたは隙間を有さない長尺状の熱電変換構造体からなる仮想の熱電変換素子の電気抵抗であり、Rnは、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a1)または熱電変換素子(a2)の場合は、スリットの幅方向両側に位置する部分の電気抵抗であり、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a3)の場合は、長尺状の熱電変換構造体の電気抵抗である。〕
を満たすことが好ましい。関係式(2)を満たす熱電変換素子(A)を用いれば、熱電変換モジュールの電気抵抗を更に低減させることができる。
【0012】
更に、本発明の熱電変換モジュールは、前記熱電変換素子(A)が、前記スリットまたは前記隙間を2つ以上有し、前記スリットまたは前記隙間の形状が全て同一形状であることが好ましい。スリットまたは隙間の形状が全て同一形状であれば、作製が容易であると共に、熱電変換素子の均一性を高めることができる。
【0013】
また、本発明の熱電変換モジュールは、前記長尺状の熱電変換構造体が、導電性材料が非配向な状態に配置されてなることが好ましい。熱電変換素子(A)を構成する熱電変換構造体として導電性材料が非配向な状態に配置されたものを用いれば、熱電変換素子(A)の電気抵抗を更に良好に低減することができる。
【0014】
ここで、熱電変換素子(A)の電気抵抗を更に低減する観点からは、前記導電性材料は、繊維状炭素材料であることが好ましく、カーボンナノチューブであることがより好ましい。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換素子は、スリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなり、前記スリットは、前記熱電変換構造体の長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端することを特徴とする。
このように、熱電変換構造体の長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端するスリットを備えていれば、スリットを有さない熱電変換構造体からなる熱電変換素子と比較し、電気抵抗が低くなる。
【0016】
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換素子は、スリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体を備え、前記スリットは、前記熱電変換構造体の長手方向に延びて、一端が熱電変換構造体内で終端すると共に他端が開口し、前記熱電変換構造体の前記スリットが開口している側の端部を前記スリットの開口を跨いで電気的に接続する接合部を更に備えることを特徴とする。
このように、熱電変換構造体の長手方向に延びて一端が熱電変換構造体内で終端し、他端が開口するスリットを備えていれば、スリットを有さない熱電変換構造体からなる熱電変換素子と比較し、電気抵抗が低くなる。
【0017】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換モジュールは、長手方向の端部を介して電気的に並列接続された長尺状の熱電変換素子を複数備える熱電変換モジュール(以下、「並列接続型熱電変換モジュール」と称することがある。)であって、電気的に並列接続された複数の熱電変換素子は、上述した本発明の熱電変換素子の何れかを1つ以上含むことを特徴とする。
このように、スリットを有する熱電変換構造体を備える上述した熱電変換素子を用いれば、電気抵抗を低減し、熱電変換モジュールの発電効率を高めることができる。
【0018】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換素子の製造方法は、上述した本発明の熱電変換素子の何れかの製造方法であって、長尺状の熱電変換原料構造体にスリットを形成する工程を含むことを特徴とする。
このように、長尺状の熱電変換原料構造体にスリットを形成すれば、スリットを有する熱電変換構造体を備える上述した熱電変換素子を容易に得ることができる。
【0019】
ここで、本発明の熱電変換素子の製造方法は、前記熱電変換素子が、スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法が全て同一であり、下記関係式(1)および(2)’:
S < W/n ・・・(1)
R’ < Rn/n ・・・(2)’
〔式(1)中、nは、スリットの数であり、Sは、スリットの幅寸法の合計値であり、Wは、熱電変換素子の幅寸法である。
式(2)’中、nは、スリットの数であり、R’は、熱電変換原料構造体の電気抵抗であり、Rnは、熱電変換素子のスリットの幅方向両側に位置する部分の電気抵抗である。〕
を満たすことが好ましい。スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法を全て同一とし、且つ、関係式(1)および(2)’を満たすようにすれば、熱電変換素子の電気抵抗を更に低減することができる。
【0020】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換モジュールの製造方法は、上述した本発明の熱電変換モジュール(直列接続型熱電変換モジュール)の何れかの製造方法であって、長尺状の熱電変換原料構造体にスリットを形成して熱電変換素子(a1)または熱電変換素子(a2)を作製する工程、および/または、長尺状の熱電変換原料構造体を長手方向に切断して熱電変換素子(a3)を作製する工程を含むことを特徴とする。
このように、長尺状の熱電変換原料構造体にスリットを形成、或いは、長尺状の熱電変換原料構造体を長手方向に切断すれば、熱電変換素子(A)を備える上述した熱電変換モジュールを容易に得ることができる。
【0021】
ここで、本発明の熱電変換モジュールの製造方法において、前記熱電変換素子(a1)および前記熱電変換素子(a2)は、スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法が全て同一であり、前記熱電変換素子(a3)は、並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体の幅寸法が全て同一であり、前記熱電変換素子(A)が、下記関係式(1)および(2)’:
S < W/n ・・・(1)
R’ < Rn/n ・・・(2)’
〔式(1)中、nは、スリットまたは隙間の数であり、Sは、スリットまたは隙間の幅寸法の合計値であり、Wは、熱電変換素子(A)の幅寸法である。
式(2)’中、nは、スリットまたは隙間の数であり、R’は、熱電変換原料構造体の電気抵抗であり、Rnは、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a1)または熱電変換素子(a2)の場合は、スリットの幅方向両側に位置する部分の電気抵抗であり、熱電変換素子(A)が熱電変換素子(a3)の場合は、長尺状の熱電変換構造体の電気抵抗である。〕
を満たすことが好ましい。スリットの幅方向両側に位置する部分の幅寸法、或いは、並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体の幅寸法を全て同一とし、且つ、関係式(1)および(2)’を満たすようにすれば、熱電変換素子の電気抵抗を更に低減し、得られる熱電変換モジュールの発電効率を更に高めることができる。
【0022】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱電変換モジュールの製造方法は、上述した本発明の熱電変換モジュール(並列接続型熱電変換モジュール)の製造方法であって、上述した本発明の熱電変換素子の製造方法の何れかを用いて熱電変換素子を作製する工程を含むことを特徴とする。
このように、上述した本発明の熱電変換素子の製造方法を用いれば、上述した熱電変換モジュールを容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電気抵抗がより小さな熱電変換素子を提供することができる。
また、本発明によれば、発電効率に優れる熱電変換モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の直列接続型熱電変換モジュールの一例の概略構成を示す説明図である。
図2】(a)は、熱電変換素子(a1)の一例の平面図であり、(b)は、熱電変換素子(a1)の他の例の平面図である。
図3】(a)は、熱電変換素子(a2)の一例の平面図であり、(b)は、熱電変換素子(a2)の他の例の平面図である。
図4】熱電変換素子(a3)の一例の平面図である。
図5】本発明の直列接続型熱電変換モジュールの他の例の概略構成を示す説明図である。
図6図5の破線で囲んだ部分を拡大して示す拡大図である。
図7】本発明の並列接続型熱電変換モジュールの一例の概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。
なお、各図において、同一または類似の構成要素には、同じ符号を付している。また、各図においては、理解を容易にするため、一部の構成の寸法を拡大または縮小して示している。
【0026】
ここで、本発明の熱電変換モジュールは、両端部間の温度差を利用して熱を電力に変換する熱電変換素子を複数備えるものであり、例えば高温部と低温部との間に配置して発電する際に用いられる。そして、本発明の熱電変換モジュールの熱電変換素子としては、特に限定されることなく、本発明の熱電変換素子を用いることができる。
【0027】
以下、本発明の熱電変換モジュールについて、複数の熱電変換素子を電気的に直列接続した直列接続型熱電変換モジュールと、複数の熱電変換素子を電気的に並列接続した並列接続型熱電変換モジュールとに分けて説明する。
なお、以下では、シート基板の一方の表面に熱電変換素子を配置し、熱電変換素子同士を接続する配線をシート基板の他方の表面に配置した熱電変換モジュールを例に挙げて説明するが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。具体的には、熱電変換素子は、シート基板の両面に設けられていてもよく、配線はシート基板内に設けてもよい。また、熱電変換素子を配置する基材は、シート基板に限定されるものではない。更に、熱電変換素子の素子構成は特に限定されず、熱電変換素子は、全てがp型であってもよいし、全てがn型であってもよいし、p型とn型とで構成されていてもよい。ここで、熱電変換素子を形成するための熱電変換材料がカーボンナノチューブ等の有機材料である場合、大気中の酸素および水分等によって熱電変換材料が酸化することが熱電変換素子の特性劣化の主要因となる場合がある。この場合、n型熱電変換素子の方がp型熱電変換素子よりも大気中の酸素および水分等による酸化の影響を受けやすいため、熱電変換モジュールの耐久性の観点からは、熱電変換素子としてはp型熱電変換素子のみを用いることが好ましい。
【0028】
(直列接続型熱電変換モジュール)
本発明の直列接続型熱電変換モジュールは、長手方向の端部を介して電気的に直列接続された長尺状の熱電変換素子を複数備える。そして、本発明の直列接続型熱電変換モジュールにおいて、電気的に直列接続された複数の熱電変換素子は、
(1)長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなる熱電変換素子(a1)、
(2)長手方向に延びて一端が熱電変換構造体内で終端し他端が開口するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体と、熱電変換構造体のスリットが開口している側の端部をスリットの開口を跨いで電気的に接続する接合部とを備える熱電変換素子(a2)、並びに、
(3)長手方向に直交する方向に隙間をあけて並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体と、熱電変換構造体の長手方向一端側の端部同士を電気的に接続する第一接合部と、熱電変換構造体の長手方向他端側の端部同士を電気的に接続する第二接合部とを備える熱電変換素子(a3)、
からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子(A)を1つ以上含む。
【0029】
このように、電気的に直列接続された熱電変換素子として熱電変換素子(a1)~(a3)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子(A)を1つ以上含有させれば、直列接続型熱電変換モジュールの電気抵抗を低減し、発電効率を高めることができる。
なお、熱電変換素子としては、熱電変換素子(A)と、熱電変換素子(A)以外の任意の熱電変換素子とを組み合わせて用いてもよいが、直列接続型熱電変換モジュールの電気抵抗の低減および発電効率の向上の観点からは、電気的に直列接続された熱電変換素子は、全てが熱電変換素子(A)であることが好ましい。
【0030】
具体的には、本発明の直列接続型熱電変換モジュールの一例は、平面視の概略構成を図1に示すように、熱源が位置する高温側(図1では上側)と、熱源から離れた低温側(図1では下側)との間に配置して用いることができる。そして、図1に示す直列接続型熱電変換モジュール100は、シート基板1と、シート基板1の一方の表面に設けられた複数(図示例では4つ)の熱電変換素子2と、長尺状の熱電変換素子2の長手方向(図1では上下方向)両端のそれぞれに接合部材3を介して電気的に接続された電極4と、シート基板1の他方の表面に設けられて互いに隣接する熱電変換素子2同士を電極4を介して電気的に直列接続する配線5とを備えている。そして、配線5は、隣り合う2つの熱電変換素子2について、一方の熱電変換素子2の長手方向一端側(図1では上側)に位置する電極4と、他方の熱電変換素子2の長手方向他端側(図1では下側)に位置する電極4とを電気的に接続している。
なお、直列接続型熱電変換モジュール100では、熱電変換素子2の長手方向両端のそれぞれに接合部材3および電極4を設けたが、本発明の直列接続型熱電変換モジュールでは、熱電変換素子2同士を電気的に直列接続できれば、接合部材3および/または電極4を設けなくてもよい。また、直列接続型熱電変換モジュール100では、全ての熱電変換素子2を図1の上下方向における位置が同じになるように(換言すれば、全ての熱電変換素子2について、長手方向一方の端縁が図1では左右方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置し、長手方向他方の端縁も図1では左右方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置するように)配置したが、熱電変換素子2は任意の位置に配置することができる。更に、熱電変換素子2の配置間隔は、隣り合う2つの熱電変換素子2の間の絶縁を確保できれば、任意であってよい。
【0031】
シート基板1は、絶縁性を有する基板であり、図1に示す例では平面視矩形状である。また、シート基板1は、可撓性を有していてもよい。そして、シート基板1を形成するための材料としては、特に限定されることなく、任意の絶縁材料を用いることができる。
【0032】
なお、シート基板1は、多層構造を有していてもよい。具体的には、シート基板1は、絶縁性を有し、任意に可撓性を有していてもよい基板と、基板の、熱電変換素子2が配置される側に配置された絶縁層とを備えていてもよい。ここで、基板を形成するための材料としては、特に限定されることなく、ポリイミドまたはエポキシガラス等の任意の材料を用いることができる。また、絶縁層を形成するための材料としては、特に限定されることなく、任意の絶縁性材料を用いることができる。
【0033】
熱電変換素子2は、長手方向の寸法が幅方向(図1では左右方向)の寸法よりも大きい長尺状の熱電変換素子である。そして、図1に示す直列接続型熱電変換モジュール100の熱電変換素子2は全て、長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなる熱電変換素子(a1)である。
【0034】
具体的には、熱電変換素子2は、平面視形状を図2(a)に示すように、長手方向(図2では上下方向)の寸法Dが幅方向(図2では左右方向)の寸法Wよりも大きい長尺状であり、長手方向に延びて両端21a,21bが熱電変換構造体20内で終端するスリット21を少なくとも1つ(図示例では3つ)形成した長尺状の熱電変換構造体20からなる。
【0035】
ここで、熱電変換構造体20としては、熱電変換材料からなる薄膜などの熱電変換材料で形成された任意の構造体を用いることができる。そして、熱電変換構造体20を形成するための熱電変換材料としては、特に限定されることなく、ビスマステルル系化合物、アンチモン系化合物、シリコン系化合物、金属酸化物系化合物、ホイスラー合金系化合物、導電性高分子化合物、導電性繊維、および、これらの複合材料等を用いることができる。
【0036】
中でも、熱電変換構造体20としては、導電性材料が非配向な状態に配置されてなる構造体が好ましく、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する)などの導電性を有する繊維状炭素材料が非配向な状態に配置されてなる構造体がより好ましく、CNT膜を用いることが更に好ましい。導電性材料が非配向な状態に配置されてなる熱電変換構造体20は、スリット21の長手方向に延びる端縁に沿って導電経路が形成されるためと推察されるが、スリットを有さない以外は形状、寸法および材料が同一の熱電変換構造体と比較して電気抵抗が低減されるからである。また、CNTを用いれば、直列接続型熱電変換モジュール100の機械的強度を向上させると共に、軽量化することができるからである。
なお、CNTとしては、特に限定されることなく、単層CNTおよび/または多層CNTを用いることができるが、CNTは、単層CNTであることが好ましい。単層CNTの方が、熱電特性(ゼーベック係数)が優位であるからである。
【0037】
図2(a)に示すように、スリット21は、幅寸法がSの平面視矩形状であり、長手方向一方(図2(a)では上側)の端縁21aおよび長手方向他方(図2(a)では下側)の端縁21bは、熱電変換構造体20の長手方向両側に位置する端縁2a,2bに開口することなく、熱電変換構造体20内で終端している。
【0038】
従って、熱電変換構造体20は、長手方向両端部に位置して熱電変換素子2と同一の幅寸法Wを有する広幅部23a,23bの間に、長手方向に延びて幅寸法が広幅部23a,23bよりも狭い複数の(図示例では4つの)狭幅部22を備える形状を有している。
【0039】
そして、熱電変換構造体20からなる熱電変換素子2は、素子内に複数の狭幅部22を有していることに起因すると推察されるが、スリットを有さない以外は形状、寸法および材料が同一の熱電変換構造体からなる熱電変換素子と比較し、電気抵抗が低減される。そのため、熱電変換素子2を備える直列接続型熱電変換モジュール100は、優れた発電効率を発揮し得る。
なお、熱電変換素子2において、スリット21は、端縁21a,21bの長手方向における位置が同じになるように(換言すれば、全てのスリット21ついて、長手方向一方の端縁21aが熱電変換素子2の幅方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置し、長手方向他方の端縁21bも熱電変換素子2の幅方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置するように)形成されていることが好ましいが、スリット21は熱電変換構造体20内の任意の位置に配置することができる。
【0040】
熱電変換素子2の長手方向端部と電極4とを電気的に接続する接合部材3としては、特に限定されることなく、はんだ又は銀ペースト等の任意の導電性部材を用いることができる。
【0041】
また、電極4および配線5は、同じ導電性材料で形成されてもよいし、互いに異なる導電性材料で形成されてもよい。導電性材料としては、特に限定されることなく、銅またはアルミニウム等の任意の金属を用いることができる。
なお、電極4は、特に限定されるものではないが、一方の表面がシート基板1の熱電変換素子2が配置されている側の表面に露出し、他方の表面がシート基板1の他方の表面側で配線5と接続されている構成とすることができる。また、複数の電極4の何れかには、直列接続型熱電変換モジュール100が発電した電力を取り出すための取り出し配線が電気的に接続されていてもよい。
【0042】
そして、直列接続型熱電変換モジュール100では、各熱電変換素子2において、長手方向一方側に位置する端部(高温側に位置する端部)の温度が長手方向他方側に位置する端部(低温側に位置する端部)の温度よりも高くなり、熱電変換素子2内で温度勾配が生じる。その結果、熱電変換素子2では温度勾配に起因するゼーベック効果によって起電力が生じ、直列接続型熱電変換モジュール100は、発電し得る。この際、直列接続型熱電変換モジュール100では電気抵抗の小さな熱電変換素子2を用いているので、発電効率を向上させることができる。
【0043】
なお、上記一例では直列接続型熱電変換モジュールに含まれる熱電変換素子(A)として図2(a)に示されるような構造を有する熱電変換素子(a1)を用いた場合について説明したが、本発明の直列接続型熱電変換モジュールに用いる熱電変換素子(A)は、図2(a)に示す構造に限定されるものではない。
【0044】
具体的には、熱電変換素子(A)としては、図2(b)に示されるような構造を有する熱電変換素子(a1)を用いてもよい。ここで、図2(b)に示す熱電変換素子2Aは、長手方向に延びて両端21a,21bが熱電変換構造体20内で終端するスリット21の平面視形状が楕円状である以外は図2(a)に示す熱電変換素子2と同様の構成を有している。このような構造の熱電変換素子2Aであっても、素子内に複数の狭幅部22を有しているので、スリットを有さない以外は形状、寸法および材料が同一の熱電変換構造体からなる熱電変換素子と比較し、電気抵抗が低減され得る。
【0045】
なお、本発明において、熱電変換素子(a1)のスリットの平面視形状は、矩形状や楕円状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。また、熱電変換素子(a1)のスリットの延在方向は、熱電変換素子(a1)の長手方向と平行な方向に限定されるものではなく、熱電変換素子(a1)の側縁に開口しなければ長手方向に対して傾斜した方向であってもよい。そして、スリットは、電極との接続部ではスリットを小さくした方が接続し易いなどのプロセス上の利便性や実際の抵抗値を最適にするように設計することができる。
【0046】
また、熱電変換素子(A)としては、例えば図3(a),(b)に示されるような構造を有する熱電変換素子(a2)を用いてもよい。
【0047】
ここで、図3(a)に示す熱電変換素子2Bは、スリット21が、長手方向に延びて一端21aが熱電変換構造体20内で終端し、他端21bが熱電変換構造体20の長手方向他方(図3(a)では下側)の端縁2bに開口している点、長手方向他方の端部に広幅部23bを有さない点、および、長手方向他方の端部をスリット21の開口を跨いで電気的に接続する接合部24を有している点以外は図2(a)に示す熱電変換素子2と同様の構成を有している。
【0048】
接合部24は、熱電変換構造体20の長手方向他方の端部、具体的には開口を挟んで並列して位置する複数(図示例では4つ)の狭幅部22の長手方向他方側の端部を電気的に接続するものである。そして、接合部24としては、特に限定されることなく、はんだ又は銀ペースト等の任意の導電性部材を用いることができる。
なお、直列接続型熱電変換モジュールにおいて、接合部は、熱電変換素子の長手方向端部と電極とを電気的に接続する接合部材として機能させてもよい。
【0049】
そして、熱電変換素子2Bは、素子内に複数の狭幅部22を有していることに起因すると推察されるが、スリットを有さない以外は形状、寸法および材料が同一の熱電変換構造体を備える熱電変換素子と比較し、電気抵抗が低減される。そのため、熱電変換素子2Bを備える直列接続型熱電変換モジュールは、優れた発電効率を発揮し得る。
なお、熱電変換素子2Bにおいて、スリット21は、端縁21aの長手方向における位置が同じになるように(換言すれば、全てのスリット21ついて、長手方向一方の端縁21aが熱電変換素子2の幅方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置するように)形成されていることが好ましいが、スリット21は熱電変換構造体20内の任意の位置に配置することができる。
【0050】
また、図3(b)に示す熱電変換素子2Cは、長手方向に延びて一端21aが熱電変換構造体20内で終端し、他端21bが熱電変換構造体20の長手方向他方(図3(b)では下側)の端縁2bに開口するスリット21の平面視形状が略楕円状(具体的には、長軸方向の一端を長軸に直交する方向に切断除去した形状)である以外は図3(a)に示す熱電変換素子2Bと同様の構成を有している。このような構造の熱電変換素子2Cであっても、素子内に複数の狭幅部22を有しているので、スリットを有さない以外は形状、寸法および材料が同一の熱電変換構造体からなる熱電変換素子と比較し、電気抵抗が低減され得る。
【0051】
なお、本発明において、熱電変換素子(a2)のスリットの平面視形状は、図3(a),(b)に示される形状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。また、熱電変換素子(a2)のスリットの延在方向は、熱電変換素子(a2)の長手方向と平行な方向に限定されるものではなく、長手方向一端が熱電変換素子(a2)の側縁に開口しなければ長手方向に対して傾斜した方向であってもよい。そして、スリットは、電極との接続部ではスリットを小さくした方が接続し易いなどのプロセス上の利便性や実際の抵抗値を最適にするように設計することができる。
【0052】
更に、熱電変換素子(A)としては、例えば図4に示されるような構造を有する熱電変換素子(a3)を用いてもよい。
【0053】
ここで、図4に示す熱電変換素子2Dは、長手方向(図4では上下方向)に直交する方向(図4では左右方向)に幅寸法Sの隙間25をあけて並列配置された複数(図示例では2つ)の長尺状の熱電変換構造体20と、熱電変換構造体20の長手方向一端側(図4では上側)の端部20a同士を電気的に接続する第一接合部24aと、熱電変換構造体20の長手方向他端側(図4では下側)の端部20b同士を電気的に接続する第二接合部24bとを備えている。
【0054】
接合部24a,24bは、隙間25を挟んで並列して位置する複数(図示例では2つ)の熱電変換構造体20の長手方向端部を隙間25を跨いで電気的に接続するものである。そして、接合部24a,24bとしては、特に限定されることなく、はんだ又は銀ペースト等の任意の導電性部材を用いることができる。
なお、直列接続型熱電変換モジュールにおいて、接合部は、熱電変換素子の長手方向端部と電極とを電気的に接続する接合部材として機能させてもよい。
【0055】
そして、熱電変換素子2Dは、素子内に複数の狭幅の導電経路(端部同士が電気的に接続された複数の熱電変換構造体20)を有していることに起因すると推察されるが、隙間25を有さない以外は形状、寸法および材料が同一の熱電変換素子(換言すれば、幅をWにした熱電変換構造体20からなる熱電変換素子)と比較し、電気抵抗が低減される。そのため、熱電変換素子2Dを備える直列接続型熱電変換モジュールは、優れた発電効率を発揮し得る。
なお、熱電変換素子2Dにおいて、熱電変換構造体20は、端縁20a,20bの長手方向における位置が同じになるように(換言すれば、全ての熱電変換構造体20ついて、長手方向一方の端縁20aが熱電変換素子2Dの幅方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置し、長手方向他方の端縁20bも熱電変換素子2Dの幅方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置するように)配置されていることが好ましいが、熱電変換構造体20は長手方向の位置をずらして配置することもできる。
【0056】
なお、本発明において、熱電変換素子(a3)の熱電変換構造体および隙間の平面視形状は、図4に示される形状(矩形状)に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。また、熱電変換素子(a3)の隙間の延在方向は、熱電変換素子(a3)の長手方向と平行な方向に限定されるものではなく、長手方向に対して傾斜した方向であってもよい。また、熱電変換素子(a3)に含まれる複数の熱電変換構造体は、互いに異なる材料で形成されていてもよいが、同一の材料で形成されていることが好ましい。更に、熱電変換素子(a3)に含まれる複数の熱電変換構造体は、互いに異なる形状を有していてもよいが、同一の形状であることが好ましい。
【0057】
そして、上述した熱電変換素子(a1)~(a3)は、以下の形態を有していることが好ましい。
【0058】
具体的には、熱電変換素子(a1)および熱電変換素子(a2)が2つ以上のスリットを有している場合には、熱電変換素子の均一性の向上および製造容易性の観点から、スリットの形状は全て同一であることが好ましい。
また、熱電変換素子(a3)が2つ以上の隙間を有している場合には、熱電変換素子の均一性の向上および製造容易性の観点から、隙間の形状は全て同一であることが好ましい。
【0059】
更に、熱電変換素子(a1)~(a3)は、下記関係式(1):
S < W/n ・・・(1)
を満たすことが好ましい。ここで、熱電変換素子(a1),(a2)については、式(1)中、nはスリットの数であり、Sはスリットの幅寸法の合計値であり、Wは熱電変換素子の幅寸法である。また、熱電変換素子(a3)については、式(1)中、nは隙間の数であり、Sは隙間の幅寸法の合計値であり、Wは熱電変換素子の幅寸法である。
なお、関係式(1)は、スリットや隙間の加工可能性を決める指標であり、熱電変換素子(a1)~(a3)の作製時に実際に行うパターンニングプロセスで形成可能なスリットまたは隙間の幅に合わせてWもしくはnを設定できる。
【0060】
加えて、直列接続型熱電変換モジュールの電気抵抗を更に低減させる観点からは、熱電変換素子(a1)および熱電変換素子(a2)は、スリットの幅方向両側に位置する部分(狭幅部)の幅寸法が全て同一であり、且つ、上記関係式(1)および下記関係式(2)を満たすことが好ましく、熱電変換素子(a3)は、並列配置された複数の長尺状の熱電変換構造体の幅寸法が全て同一であり、且つ、上記関係式(1)および下記関係式(2)を満たすことが好ましい。
R < Rn/n ・・・(2)
ここで、熱電変換素子(a1),(a2)については、式(2)中、nはスリットの数であり、Rは、熱電変換素子(a1),(a2)と同一の幅、長さおよび厚みを有し、スリットを有さない長尺状の熱電変換構造体からなる仮想の熱電変換素子の電気抵抗であり、Rnは、スリットの幅方向両側に位置する部分(狭幅部)の電気抵抗である。また、熱電変換素子(a3)については、式(2)中、nは隙間の数であり、Rは、熱電変換素子(a3)と同一の幅、長さおよび厚みを有し、隙間を有さない長尺状の熱電変換構造体からなる仮想の熱電変換素子の電気抵抗であり、Rnは、長尺状の熱電変換構造体の電気抵抗である。
【0061】
以上、一例として直列接続型熱電変換モジュール100を用いて本発明の直列接続型熱電変換モジュールおよび直列接続型熱電変換モジュールに用いられる熱電変換素子について説明したが、本発明の直列接続型熱電変換モジュールおよび熱電変換素子は上述した内容に限定されるものではない。
【0062】
例えば、本発明の直列接続型熱電変換モジュールは、図5に平面視形状を示すような形状(「扇面形状」と称されることもある、半径の異なる2つの円弧の両端を半径方向に連結した形状)とすることができる。
【0063】
ここで、図5に示す直列接続型熱電変換モジュール200は、特に限定されることなく、例えば高温の流体が流れる配管の周りに配置し、外気と配管との温度差を利用して発電する際に用いることができる。扇面形状の熱電変換モジュールは、配管の形にフィットさせて設置できるため、温度差がより均一化され、結果的には発電効率を向上させることができる。
【0064】
そして、直列接続型熱電変換モジュール200は、図5の破線で囲んだ部分を拡大して図6に示すように、両端が略台形状の熱電変換構造体20内で終端するスリット21を有する熱電変換素子2Eを直列接続して形成されている。
【0065】
(並列接続型熱電変換モジュール)
本発明の並列接続型熱電変換モジュールは、長手方向の端部を介して電気的に並列接続された長尺状の熱電変換素子を複数備える。そして、本発明の並列接続型熱電変換モジュールにおいて、電気的に並列接続された複数の熱電変換素子は、
(1)長手方向に延びて両端が熱電変換構造体内で終端するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体からなる熱電変換素子(a1)、並びに、
(2)長手方向に延びて一端が熱電変換構造体内で終端し他端が開口するスリットを少なくとも1つ形成した長尺状の熱電変換構造体と、熱電変換構造体のスリットが開口している側の端部をスリットの開口を跨いで電気的に接続する接合部とを備える熱電変換素子(a2)、
の少なくとも一方を1つ以上含む。
【0066】
このように、電気的に並列接続された熱電変換素子として熱電変換素子(a1)および熱電変換素子(a2)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子を1つ以上含有させれば、並列接続型熱電変換モジュールの電気抵抗を低減し、発電効率を高めることができる。
なお、熱電変換素子としては、熱電変換素子(a1)および/または熱電変換素子(a2)と、熱電変換素子(a1)および熱電変換素子(a2)以外の任意の熱電変換素子とを組み合わせて用いてもよいが、並列接続型熱電変換モジュールの電気抵抗の低減および発電効率の向上の観点からは、電気的に並列接続された熱電変換素子は、全てが熱電変換素子(a1)および/または熱電変換素子(a2)であることが好ましい。
【0067】
具体的には、本発明の並列接続型熱電変換モジュールの一例は、平面視の概略構成を図7に示すように、熱源が位置する高温側(図7では上側)と、熱源から離れた低温側(図7では下側)との間に配置して用いることができる。そして、図7に示す並列接続型熱電変換モジュール300は、シート基板1と、シート基板1の一方の表面に設けられた複数(図示例では4つ)の熱電変換素子2と、長尺状の熱電変換素子2の長手方向(図1では上下方向)両端のそれぞれに設けられた接合部材3と、接合部材3を介して熱電変換素子2と電気的に接続され、全ての熱電変換素子2同士を電気的に並列接続する電極4とを備えている。ここで、熱電変換素子2の長手方向一端側と長手方向他端側とにそれぞれ設けられた電極4は、図7では左右方向に延びて接合部材3と電気的に接続されている。
なお、並列接続型熱電変換モジュール300では、熱電変換素子2の長手方向両端のそれぞれに接合部材3を設けたが、本発明の並列接続型熱電変換モジュールでは、熱電変換素子2同士を電気的に並列接続できれば、接合部材3を設けなくてもよい。また、並列接続型熱電変換モジュール300では、電極4を用いて熱電変換素子2同士を電気的に並列接続したが、本発明の並列接続型熱電変換モジュールでは、配線等の電極以外の手段を用いて熱電変換素子同士を電気的に並列接続してもよい。更に、並列接続型熱電変換モジュール300では、全ての熱電変換素子2を図7の上下方向における位置が同じになるように(換言すれば、全ての熱電変換素子2について、長手方向一方の端縁が図7では左右方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置し、長手方向他方の端縁も図7では左右方向に沿って延びる同一の仮想線上に位置するように)配置したが、熱電変換素子2は任意の位置に配置することができる。また、熱電変換素子2の配置間隔は、隣り合う2つの熱電変換素子2の間の絶縁を確保できれば、任意であってよい。
【0068】
ここで、並列接続型熱電変換モジュール300のシート基板1、接合部材3および電極4としては、上述した直列接続型熱電変換モジュール100と同様のものを用いることができるので、以下では説明を省略する。
【0069】
また、並列接続型熱電変換モジュール300の熱電変換素子2は、上述した直列接続型熱電変換モジュール100で用いられている熱電変換素子2と同様の構成を有している。
【0070】
そして、並列接続型熱電変換モジュール300では、各熱電変換素子2において、長手方向一方側に位置する端部(高温側に位置する端部)の温度が長手方向他方側に位置する端部(低温側に位置する端部)の温度よりも高くなり、熱電変換素子2内で温度勾配が生じる。その結果、熱電変換素子2では温度勾配に起因するゼーベック効果によって起電力が生じ、並列接続型熱電変換モジュール300は、発電し得る。この際、並列接続型熱電変換モジュール300では電気抵抗の小さな熱電変換素子2を用いているので、発電効率を向上させることができる。
【0071】
なお、上記一例では並列接続型熱電変換モジュールに含まれる熱電変換素子として図2(a)に示されるような構造を有する熱電変換素子2を用いた場合について説明したが、本発明の並列接続型熱電変換モジュールに用い得る熱電変換素子は、図2(a)に示す構造に限定されるものではない。具体的には、熱電変換素子としては、直列接続型熱電変換モジュールに使用し得る熱電変換素子(a1)および熱電変換素子(a2)として上述したものと同様のものを用いることができ、その好適形態も上述した通りである。
【0072】
以上、一例として並列接続型熱電変換モジュール300を用いて本発明の並列接続型熱電変換モジュールおよび並列接続型熱電変換モジュールに用いられる熱電変換素子について説明したが、本発明の並列接続型熱電変換モジュールおよび熱電変換素子は上述した内容に限定されるものではない。
【0073】
(熱電変換モジュールの製造方法)
本発明の熱電変換モジュールの製造方法は、上述した直列接続型熱電変換モジュールおよび並列接続型熱電変換モジュールを製造する際に用いることができる。そして、本発明の熱電変換モジュールの製造方法は、長尺状の熱電変換原料構造体を加工して熱電変換素子を作製する工程(素子作製工程)を含み、任意に、配線を形成する工程(配線形成工程)、電極を作製する工程(電極作製工程)および接合部材を形成する工程(接合部材形成工程)からなる群より選択される少なくとも一つの工程を更に含み得る。
なお、これらの工程は、任意の順番で実施することができるが、通常、接合部材形成工程は素子作製工程および電極作製工程の後に実施する。
【0074】
<配線形成工程>
配線形成工程では、シート基板などの配線を形成する部材に対し、配線を形成する。
【0075】
ここで、配線を形成する方法としては、特に限定されることなく、熱電変換モジュールの製造に使用し得る任意の手法を用いることができる。具体的には、配線は、例えば、シート基板などの基材の配線を形成する面に、接着剤などを用いて金属箔を設置し、フォトリソグラフィ等の手法を用いて金属箔をパターニングすることにより、形成することができる。
なお、シート基板などの熱電変換素子を配置する部材の内部に配線を形成する場合には、例えば、基材の表面に配線を形成した後、基材の配線が形成されている面の上に絶縁層を形成すればよい。ここで、絶縁層は、絶縁材料の塗布などの公知の手法を用いて形成することができる。
【0076】
<電極作製工程>
電極作製工程では、シート基板などの電極を形成する部材に対し、熱電変換モジュールの製造に使用し得る任意の手法を用いて電極を形成する。
【0077】
ここで、特に限定されることなく、電極の作製は、配線の形成と同時に行うことができる。具体的には、例えば、金属箔をパターニングして配線を形成する際に電極となる部分も同時にパターニングすることにより、電極を形成することができる。
なお、配線を形成する場所が熱電変換素子を配置する部材の内部や熱電変換素子を配置する側とは反対側の場合には、電極は、電極が露出するように絶縁層を形成したり、シート基板などの熱電変換素子を配置する部材に孔を形成したりする等の既知の手法を用いて熱電変換素子を配置する側に露出させることができる。
【0078】
<素子作製工程>
素子作製工程では、シート基板などの熱電変換素子を配置する部材に配置した長尺状の熱電変換原料構造体を加工して熱電変換素子を作製する。具体的には、直列接続型熱電変換モジュールを製造する場合には、素子作製工程では、熱電変換原料構造体を加工し、熱電変換素子(a1)~(a3)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子(A)を作製する。また、並列接続型熱電変換モジュールを製造する場合には、素子作製工程では、熱電変換原料構造体を加工し、熱電変換素子(a1)および(a2)からなる群より選択される少なくとも1種の熱電変換素子を作製する。
【0079】
ここで、熱電変換原料構造体は、加工されて上述した熱電変換素子の熱電変換構造体となるものである。そして、熱電変換原料構造体としては、熱電変換材料からなる薄膜などの熱電変換材料で形成された任意の構造体を用いることができる。なお、熱電変換原料構造体を形成するための熱電変換材としては、熱電変換素子の熱電変換構造体に関して上述したものと同様のものを用いることができる。
【0080】
また、シート基板などの部材への熱電変換原料構造体の配置は、特に限定されることなく、予め調製しておいた熱電変換原料構造体を接着剤などを用いて部材に貼り付ける方法や、例えばカーボンナノチューブ分散液などの熱電変換原料を含む組成物をシート基板などの部材に塗布し、必要に応じて乾燥または硬化させる方法などを用いて行うことができる。
【0081】
更に、熱電変換原料構造体を加工する方法としては、熱電変換原料構造体を所望の形状に加工できれば特に限定されないが、ファイバーレーザー、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ、UV(Ultra Violet)レーザ、ナノ秒レーザ、フェムト秒レーザ等のレーザーを用いた加工方法や、カッターナイフなどの切断刃を用いた加工方法などが挙げられる。
【0082】
そして、熱電変換素子(a1)および(a2)は、長尺状の熱電変換原料構造体に所望の形状のスリットを形成することにより、作製することができる。
また、熱電変換素子(a3)は、長尺状の熱電変換原料構造体を所望の位置で長手方向に切断することにより、作製することができる。
なお、熱電変換素子(a2)および(a3)の接合部の形成は、はんだ又は銀ペースト等の任意の導電性部材を用いて行うことができ、後述する接合部材形成工程と同時に行ってもよい。
【0083】
ここで、熱電変換素子(a1)~(a3)の作製においては、得られる熱電変換素子が下記の関係式(1):
S < W/n ・・・(1)
を満たすようにすることが好ましい。ここで、熱電変換素子(a1),(a2)については、式(1)中、nはスリットの数であり、Sはスリットの幅寸法の合計値であり、Wは熱電変換素子の幅寸法である。また、熱電変換素子(a3)については、式(1)中、nは隙間の数であり、Sは隙間の幅寸法の合計値であり、Wは熱電変換素子の幅寸法である。
【0084】
また、熱電変換素子(a1)および(a2)の作製においては、スリットの幅方向両側に位置する部分(狭幅部)の幅寸法が全て同一となるようにスリットを形成することが好ましく、更に下記の関係式(2)’:
R’ < Rn/n ・・・(2)’
を満たすようにすることがより好ましい。ここで、式(2)’中、nは、得られる熱電変換素子のスリットの数(即ち、スリット形成数)であり、R’は、加工前の熱電変換原料構造体の電気抵抗であり、Rnは、得られる熱電変換素子のスリットの幅方向両側に位置する部分(狭幅部)の電気抵抗である。
【0085】
更に、熱電変換素子(a3)の作製においては、切断された熱電変換原料構造体の切断片(熱電変換構造体)の幅寸法が全て同一となるように熱電変換原料構造体を切断することが好ましく、更に下記の関係式(2)’:
R’ < Rn/n ・・・(2)’
を満たすようにすることがより好ましい。ここで、式(2)’中、nは、得られる熱電変換素子の隙間の数(即ち、切断回数)であり、R’は、加工前の熱電変換原料構造体の電気抵抗であり、Rnは、切断された熱電変換原料構造体の切断片(熱電変換構造体)の電気抵抗である。
【0086】
<接合部材形成工程>
接合部材形成工程では、はんだ又は銀ペースト等の任意の導電性部材を使用し、熱電変換素子と電極とを電気的に接合する。これにより、熱電変換素子同士を直列または並列に電気的に接続する。
【0087】
以上、熱電変換モジュールおよび熱電変換モジュールに用いられる熱電変換素子の製造方法について説明したが、本発明の製造方法は上述した内容に限定されるものではない。
【実施例0088】
以下、本発明の効果について実験例に基づき具体的に説明する。
【0089】
(実験例1)
カーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、ZEONANO SG101)のエタノール分散液から作製した、CNTのみからなるCNTシートをガラスエポキシ基板上に配置し、長手方向の長さが20mm、幅が4mm、厚さが0.05mmの平面視矩形状のCNT膜を準備した。得られたCNT膜の電気抵抗を低抵抗 抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ-GX MCP-T700)で測定したところ、2.11Ωであった。
次に、CNT膜に対し、UVレーザーを用いて長手方向の長さが17mm、幅が0.2mmのスリットを3本形成した。具体的には、長手方向両端がCNT膜内で終端するスリットを、スリット間の間隔が0.85mmとなるように等間隔で形成し、長手方向の長さが20mm、幅が4mm、厚さが0.05mmの熱電変換素子を得た。そして、得られた熱電変換素子の電気抵抗を低抵抗 抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ-GX MCP-T700)で測定したところ、1.75Ωであり、スリット形成前よりも電気抵抗が低くなった。
【0090】
(実験例2)
カーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、ZEONANO SG101)のエタノール分散液から作製した、CNTのみからなるCNTシートをガラスエポキシ基板上に配置し、長手方向の長さが20mm、幅が4mm、厚さが0.05mmの平面視矩形状のCNT膜を準備した。得られたCNT膜の電気抵抗を低抵抗 抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ-GX MCP-T700)で測定したところ、2.11Ωであった。
次に、UVレーザーを用いてCNT膜を長手方向に切断し、幅方向中央に幅が0.2mmの隙間を形成してCNT膜を2つのCNT膜片に分割した。その後、CNT膜片の長手方向両端部同士を銀ペーストで接続した。そして、長手方向の長さが20mm、幅が1.9mm、厚さが0.05mmの2つのCNT膜片が隙間を挟んで並列接続された熱電変換素子を得た。そして、得られた熱電変換素子の電気抵抗を低抵抗 抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ-GX MCP-T700)で測定したところ、1.84Ωであり、スリット形成前よりも電気抵抗が低くなった。
【0091】
(実験例3)
カーボンナノチューブ(日本ゼオン社製、ZEONANO SG101)のエタノール分散液から作製した、CNTのみからなるCNTシートをガラスエポキシ基板上に配置し、長手方向の長さが20mm、幅が4mm、厚さが0.05mmの平面視矩形状のCNT膜を準備した。得られたCNT膜の電気抵抗を低抵抗 抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ-GX MCP-T700)で測定したところ、2.11Ωであった。
次に、UVレーザーを用いてCNT膜を長手方向に切断し、幅が0.2mmの隙間を等間隔で3つ形成してCNT膜を4つのCNT膜片に分割した。その後、CNT膜片の長手方向両端部同士を銀ペーストで接続した。そして、長手方向の長さが20mm、幅が0.85mm、厚さが0.05mmの2つのCNT膜片が隙間を挟んで並列接続された熱電変換素子を得た。そして、得られた熱電変換素子の電気抵抗を低抵抗 抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ-GX MCP-T700)で測定したところ、1.65Ωであり、スリット形成前よりも電気抵抗が低くなった。
【0092】
上記実験例1~3より、上述した構造を有する熱電変換素子は同一の外形寸法を有するCNT膜よりも電気抵抗が低くなることが分かる。これより、所定の構造を有する熱電変換素子を用いる本発明の熱電変換モジュールは優れた発電効率を発揮し得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によれば、電気抵抗がより小さな熱電変換素子を提供することができる。
また、本発明によれば、発電効率に優れる熱電変換モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 シート基板
2 熱電変換素子
2A~2E 熱電変換素子
2a,2b 端縁
3 接合部材
4 電極
5 配線
20 熱電変換構造体
20a,20b 端部
21 スリット
21a,21b 端縁
22 狭幅部
23a,23b 広幅部
24 接合部
24a 第一接合部
24b 第二接合部
25 隙間
100,200 直列接続型熱電変換モジュール
300 並列接続型熱電変換モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7