(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067260
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20230509BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230509BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L23/12 F
H01L21/60 311S
H05K3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178332
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 輝
(72)【発明者】
【氏名】木曽 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】間島 彩
【テーマコード(参考)】
5E314
5F044
【Fターム(参考)】
5E314AA27
5E314AA32
5E314AA33
5E314AA36
5E314BB02
5E314BB07
5E314BB09
5E314CC15
5E314FF05
5E314GG26
5F044KK07
5F044LL01
5F044RR18
5F044RR19
(57)【要約】
【課題】ボイドを抑制できる配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板は、基板上に積層された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された矩形枠状のダム部材と、を有する。前記ダム部材のコーナー部は、前記絶縁層表面と接触する下部において、内側壁面から前記絶縁層表面へと下り傾斜する傾斜部と、前記絶縁層表面から離れた上部において、前記絶縁層表面に対して垂直な垂直部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に積層された絶縁層と、
前記絶縁層上に形成された矩形枠状のダム部材と、
を有し、
前記ダム部材のコーナー部は、
前記絶縁層表面と接触する下部において、内側壁面から前記絶縁層表面へと下り傾斜する傾斜部と、
前記絶縁層表面から離れた上部において、前記絶縁層表面に対して垂直な垂直部と、
を備えることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記ダム部材の直線部の内側壁面に形成され、前記絶縁層表面と接触する前記内側壁面の下部が窪む窪み部を、さらに有することを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記ダム部材のコーナー部の外側壁面に形成され、前記絶縁層表面と接触する前記外側壁面の下部が窪む窪み部を、さらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記傾斜部と前記絶縁層との間の最大の高さ寸法は、
前記ダム部材の上面と前記絶縁層との間の最大の高さ寸法の20%以内であることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の配線基板。
【請求項5】
前記ダム部材は、
前記絶縁層と同一材料で形成されることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載の配線基板。
【請求項6】
配線層を有する基板と、
前記配線層を被覆し、前記基板上に積層された絶縁層と、
前記絶縁層を貫通し、前記配線層上に形成された接続バンプと、
前記接続バンプと電気的に接続するよう載置された電子部品と、
前記電子部品が載置された実装エリアの周囲に配置された矩形枠状のダム部材と、
前記実装エリアに充填されるアンダーフィルと、を有し、
前記ダム部材のコーナー部は、
前記絶縁層表面と接触する下部において、前記内側壁面から前記絶縁層表面へと下り傾斜する傾斜部と、
前記絶縁層表面から離れた上部において、前記絶縁層表面に対して垂直な垂直部と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
基板上に第1のソルダーレジスト層を形成する工程と、
前記第1のソルダーレジスト層上に第2のソルダーレジスト層を形成する工程と、
前記第2のソルダーレジスト層を露光及び現像することで矩形枠状のダム部材を形成する工程と、を有し、
前記ダム部材を形成する工程は、
前記ダム部材のコーナー部の内側壁面を第1の露光量で露光し、
前記ダム部材のコーナー部の外側壁面を前記第1の露光量に比較して小さい第2の露光量で露光することで、
前記ダム部材のコーナー部の内側壁面から前記第1のソルダーレジスト層表面に下り傾斜する傾斜部を形成する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では、例えば、配線基板の実装エリアにSiインターポーザやダイ等の電子部品を実装することで形成する。電子部品と実装エリアとの間の中間部には、例えば、アンダーフィルと呼ばれる接続信頼性を高めるために使われる封止樹脂を流し込み、電子部品と実装エリアとの間を電気的に接続する接続端子部を保護することになる。しかしながら、中間部にアンダーフィルを流し込む際、中間部から不要な部分へアンダーフィルが流れ出すブリードアウトが起こる場合がある。そこで、アンダーフィルのブリードアウトを回避するために、実装エリアの周囲を絶縁層で囲むように、ソルダーレジスト層の表面上に形成するダム部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-010073号公報
【特許文献2】特開2017-157701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のダム部材では、例えば、ダム部材の各コーナー部の内側壁面の設置角度がソルダーレジスト層表面から見て直角若しくは鋭角の場合に、実装エリアに流し込むアンダーフィルが十分にコーナー部に行き渡らず、アンダーフィル内にボイドが生じる。また、前述したダム部材の形状の影響により、アンダーフィル内にボイドが滞留しやすい。更に、発生したボイドが熱膨張することにより、ソルダーレジスト層や樹脂材料で形成したダム部材等の近傍にクラックが生じることも考えられる。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、ボイドを抑制できる配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願が開示する配線基板は、1つの態様において、基板上に積層された絶縁層と、前記絶縁層上に形成された矩形枠状のダム部材と、を有する。前記ダム部材のコーナー部は、前記絶縁層表面と接触する下部において、内側壁面から前記絶縁層表面へと下り傾斜する傾斜部と、前記絶縁層表面から離れた上部において、前記絶縁層表面に対して垂直な垂直部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本願が開示する配線基板の1つの態様によれば、例えば、実装エリアに流し込むアンダーフィルが傾斜部に沿ってコーナー部に行き渡るため、ボイドの発生が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施例の半導体装置の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、配線基板内のダム部材の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、ダム部材の一例を示す平面模式図である。
【
図4】
図4は、ダム部材のコーナー部の一例を示すA-A線断面模式図である。
【
図5】
図5は、ダム部材の直線部の一例を示すB-B線断面模式図である。
【
図6】
図6は、半導体装置の製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、配線層形成工程の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、第1のSR形成工程の一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、開口形成工程の一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、第2のSR形成工程の一例を示す説明図である。
【
図12】
図12は、バリア層形成工程の一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、バンプ形成工程の一例を示す説明図である。
【
図16】
図16は、比較例の半導体装置の一例を示す説明図である。
【
図17】
図17は、比較例の半導体装置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願が開示する配線基板、半導体装置及び配線基板の製造方法の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【実施例0010】
図1は、本実施例の半導体装置1Aの一例を示す説明図である。
図1に示す半導体装置1Aは、配線基板1と、電子部品5とを有する。配線基板1は、例えば、ビルドアップ基板である。配線基板1は、樹脂基板2と、配線層3と、第1のソルダーレジスト(SR)層4と、ダム部材6とを有する。そして、以下においては、
図1に示すように、樹脂基板2が最下層であり、第1のSR層4が最上層であるものとして説明するが、配線基板1は、例えば、上下反転して用いられても良く、任意の姿勢で用いられて良い。尚、配線層3は、樹脂基板2上の所定位置に保持されるものである。樹脂基板2及び配線層3は、第1のSR層4によって被覆される。
【0011】
第1のSR層4は、樹脂基板2の表面に配置された配線層3を被覆し、配線層3を保護する層である。尚、第1のSR層4は、絶縁層の一種である。電子部品5が搭載される実装エリア4Bには、第1のSR層4に開口部4Aが設けられ、開口部4A内の接続バンプ8で配線層3と電子部品5との間を電気的に接続する。電子部品5は、Siインターポーザ5Aと、Siインターポーザ5A上に搭載した半導体チップ等のダイ5Bとを有する。
【0012】
図2は、配線基板1内のダム部材6の一例を示す説明図、
図3は、ダム部材6の一例を示す平面模式図である。ダム部材6は、第1のSR層4の電子部品5を実装する矩形状の実装エリア4Bの周囲を囲み、電子部品5の実装時に実装エリア4Bに充填されるアンダーフィル7を堰き止める矩形枠状のダム部材である。ダム部材6は、実装エリア4B側のダム本体の壁面である内側壁面6Aと、実装エリア4Bと反対側のダム本体の壁面である外側壁面6Bと、ダム本体の上面6Cとを有する。ダム部材6は、矩形枠状であるため、4辺の直線部6Eと、4角のコーナー部6Dとを有する。
【0013】
図4は、ダム部材6のコーナー部6Dの一例を示すA-A線断面模式図である。
図4に示す各コーナー部6Dの内側壁面6Aには、第1のSR層4の表面から離れた上部において、第1のSR層4の表面に対して垂直な垂直部14と、第1のSR層4の表面と接触する下部において、実装エリア4Bに向かって内側壁面6Aから第1のSR層4の表面へ下り傾斜する裾引き形状の傾斜部11とを有する。傾斜部11は、内側壁面6Aの一端から実装エリア4Bに向かって下り傾斜であるため、コーナー部6Dの角にも充填されるアンダーフィル7が行き渡ることになる。傾斜部11と第1のSR層4の表面との間の最大の高さ寸法Bは、上面6Cと第1のSR層4の表面との間の最大の高さ寸法Aの20%以内とする。第1のSR層4の表面に対する傾斜部11の設置角度は、例えば、20度以内である。垂直部14の高さ寸法は、例えば、(高さ寸法A-高さ寸法B)の差分である。コーナー部6Dの外側壁面6Bには、第1のSR層4の表面と接触する外側壁面6Bの下部に形成されたアンダーカット形状の窪み部12を有する。窪み部12は、外側壁面6Bの内側に窪むため、例えば、配線基板1を封止する際に充填される封止樹脂が窪み部12内に流れ込むことにより、十分なアンカー効果が得られる。
【0014】
図5は、ダム部材6の直線部6Eの一例を示すB-B線断面模式図である。
図5に示す直線部6Eの内側壁面6Aには、第1のSR層4の表面と接触する内側壁面6Aの下部に形成されたアンダーカット形状の窪み部13を有する。窪み部13は、内側壁面6Aの内側に窪むため、充填されるアンダーフィル7が窪み部13内に流れ込むことにより、十分なアンカー効果が得られる。
【0015】
次に半導体装置1Aの製造工程について説明する。
図6は、半導体装置1Aの製造工程の手順の一例を示すフローチャートである。
図6において配線基板1の製造工程としては、樹脂基板2上に配線層3を形成する配線層形成工程を実行する(ステップS11)。製造工程としては、配線層形成工程を実行した後、樹脂基板2及び配線層3上に第1のSR層4を形成する第1のSR形成工程を実行する(ステップS12)。
【0016】
更に、製造工程としては、第1のSR形成工程を実行した後、第1のSR層4上の実装エリア4Bに開口部4Aを形成する開口形成工程を実行する(ステップS13)。尚、開口部4Aは、例えば、配線層3と接続するためのビアを形成するための開口部である。製造工程としては、開口形成工程を実行した後、第1のSR層4上に第2のSR層21を形成する第2のSR層形成工程を実行する(ステップS14)。
【0017】
更に、製造工程としては、第2のSR層形成工程を実行した後、第1のSR層4上の実装エリア4Bの周囲に第2のSR層21でダム部材6を形成するためのダム形成工程を実行する(ステップS15)。製造工程としては、ダム形成工程を実行した後、第1のSR層4の開口部4Aから露出した配線層3にバリア層3Aを形成するバリア層形成工程を実行する(ステップS16)。
【0018】
製造工程としては、バリア層形成工程を実行した後、第1のSR層4の開口部4Aのバリア層3Aに接続バンプ8を形成するバンプ形成工程を実行する(ステップS17)。更に、製造工程としては、バンプ形成工程を実行した後、実装エリア4B内の接続バンプ8上に電子部品5を実装し、実装エリア4B内にアンダーフィル7を流し込む。そして、アンダーフィル7を流し込むことで、第1のSR層4の実装エリア4Bに電子部品5を実装する実装工程を実行する(ステップS18)。尚、実装エリア4B内にアンダーフィル7を流し込んだとしても、ダム部材6では、コーナー部6Dの傾斜部11によってコーナー部6Dにアンダーフィル7が行き渡るため、ボイドの発生を抑制しながら、ブリードアウトを防止できる。
【0019】
図7は、配線層形成工程の一例を示す説明図である。ステップS11の配線層形成工程では、
図7に示すように、例えば、樹脂基板2上に配線層3を形成する。具体的には、樹脂基板2上に感光性樹脂層を形成し、露光・現像する。これにより、樹脂基板2上にメッキレジストパターンを形成する。更に、メッキレジストパターン形成後の樹脂基板2上に電解銅メッキ処理を実行することで、メッキレジストパターンから露出する樹脂基板2上に銅メッキ層を形成する。そして、樹脂基板2からメッキレジスタパターンを除去することで、樹脂基板2上に、例えば、配線層3を形成することになる。
【0020】
図8は、第1のSR形成工程の一例を示す説明図である。ステップS12の第1のSR形成工程では、
図8に示すように、配線層3が形成された樹脂基板2上に第1のSR層4を形成する。具体的には、例えば、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁性の感光性樹脂をラミネートして樹脂基板2上に積層することで、樹脂基板2上に第1のSR層4を形成することになる。第1のSR層4の厚み寸法は、例えば、10μm~30μmの範囲内である。尚、第1のSR層4は、絶縁性の感光性樹脂を例示したが、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の非感光性樹脂を用いて形成されても良い。
【0021】
図9は、開口形成工程の一例を示す説明図である。ステップS13の開口形成工程では、
図9に示すように、第1のSR層4に開口部4Aを形成する。具体的には、例えば、アクリル樹脂やポリイミド樹脂の硬化後、第1のSR層4上の所定の位置にレーザ加工又はフォトリソグラフィで開口部4Aを形成することになる。第1のSR層4上に形成された開口部4Aは下層の配線層3の一部を露出することになる。尚、開口部4Aの口径寸法は、例えば、10μm~100μmの範囲内である。
【0022】
図10は、配線基板1の第2のSR形成工程の一例を示す説明図である。ステップS14の第2のSR形成工程では、
図10に示すように、開口部4Aが形成された第1のSR層4上に第2のSR層21を形成する。具体的には、例えば、アクリル樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁性の感光性樹脂をラミネートして第1のSR層4上に積層することで、第1のSR層4上に第2のSR層21を形成することになる。第2のSR層21の厚み寸法は、例えば、10μm~30μmの範囲内である。尚、第2のSR層21は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の非感光性樹脂を用いて形成されても良い。
【0023】
図11は、ダム形成工程の一例を示す説明図である。ステップS15のダム形成工程では、
図11に示すように、第2のSR層21を用いて、第1のSR層4内の実装エリア4Bを囲うように第1のSR層4上にダム部材6を形成することになる。具体的には、例えば、露光、現像、アクリル樹脂等の硬化プロセスを経て第2のSR層21を用いて第1のSR層4上にダム部材6を形成する。ダム部材6のコーナー部6Dの内側壁面6Aの第1の露光量が、直線部6Eの第2の露光量に比較して大きくなるよう調整し、第1の露光量で露光することで、コーナー部6Dの内側壁面6Aに傾斜部11を形成することになる。また、コーナー部6Dの外側壁面6Bの第2の露光量は、第1の露光量に比較して低くなるよう調整し、第2の露光量で露光することで、外側壁面6Bの下部に窪み部12を形成することになる。その結果、ダム部材6の内側壁面6Aには、第1のSR層4の表面に対する傾斜角度が20度以内の下り傾斜の傾斜部11が形成されることになる。尚、ダム部材6の上面6Cの幅寸法は、例えば、100μm~1000μm、傾斜部11の長さ寸法は、例えば、30μm以内、窪み部12の深さ寸法(アンダーカット長)は、例えば、30μm以内である。また、実装エリア4Bの端から傾斜部11までの距離寸法は、例えば、50μm~5mmの範囲内とする。
【0024】
図12は、バリア層形成工程の一例を示す説明図である。ステップS16のバリア層形成工程では、
図12に示すように、実装エリア4B内の各開口部4Aで露出する配線層3上にバリア層3Aを形成することになる。具体的には、酸化防止のための有機被膜の形成若しくは無電解NiPdAuめっき等でバリア層3Aを形成することになる。
【0025】
図13は、バンプ形成工程の一例を示す説明図である。ステップS17のバンプ形成工程では、バリア層形成工程を実行した後、
図13に示すように、第1のSR層4内の開口部4Aに接続バンプ8を形成する。尚、接続バンプ8は、例えば、配線層3と同様の製造方法で形成するものとする。
【0026】
図14は、実装工程の一例を示す説明図である。
図14に示す配線基板1上に電子部品5を搭載することで半導体装置1Aを構成する。電子部品5下面の電極は、半田等で接続バンプ8に接合されることになる。更に、実装エリア4B内の電子部品5の電極と配線基板1上の接続バンプ8との接合部は、アンダーフィル7によって封止され、配線基板1に電子部品5が実装されることになる。ダム部材6は、実装エリア4B内にアンダーフィル7を流し込んだ場合でもアンダーフィル7を堰き止めることになる。実装エリア4BとSiインターポーザ5Aとの間の中間部にアンダーフィル7を流し込むことで、接続バンプ8を保護できる。この時、ダム部材6のコーナー部6Dに傾斜部11があるために、アンダーフィル7がコーナー部4D隅々まで十分に行き渡るため、ボイドの発生を抑制できる。尚、ここで使用するアンダーフィル材は一般的な液状硬化性樹脂(主剤としてエポキシ樹脂)である。
【0027】
図15は、半導体装置1Aの一例を示す説明図である。
図14に示す半導体装置1Aの下部にある樹脂基板2の下面側のパッドPに、外部接続端子31及び絶縁層32が設けられた構造である。絶縁層32は、第1のSR層4を形成するのと同じタイミングで樹脂基板2の下面側に積層して形成し、樹脂基板2の下面側のパッドPが露出するよう絶縁層32に開口部を設け、はんだボール等を用いて外部接続端子31を形成することで、
図15に示す半導体装置1Aを形成することになる。
【0028】
図16は、比較例の半導体装置100の一例を示す説明図である。尚、比較例の半導体装置100の配線基板と実施例の半導体装置1Aの配線基板1とが異なるところは、例えば、ダム部材111のコーナー部の内側壁面111Aの第1のSR層4の表面に対する設置角度が直角である点である。
図16に示す比較例の半導体装置100の配線基板は、第1のSR層4の表面に対する内側壁面111Aの設置角度が直角であるため、内側壁面111Aのコーナー部にはアンダーフィル7が行き渡らずにボイドが発生する場合が考えられる。これに対して、本実施例の配線基板1では、実装エリア4Bの周囲を囲うダム部材6のコーナー部6Dの内側壁面6Aから第1のSR層4の表面へ下り傾斜する傾斜部11を有する。その結果、内側壁面6Aのコーナー部6Dにアンダーフィル7が十分行き渡るため、ボイド発生を防止できる。
【0029】
図17は、比較例の半導体装置100Aの一例を示す説明図である。尚、比較例の半導体装置100Aの配線基板と実施例の半導体装置1Aの配線基板1とが異なるところは、例えば、ダム部材121のコーナー部の内側壁面121Aの第1のSR層4の表面に対する設置角度が鋭角である点である。
図17に示す比較例の半導体装置100Aの配線基板は、第1のSR層4の表面に対する内側壁面121Aの設置角度が鋭角であるため、内側壁面121Aのコーナー部にはアンダーフィル7が行き渡らずにボイドが発生する場合が考えられる。これに対して、本実施例の配線基板1では、実装エリア4Bの周囲を囲うダム部材6のコーナー部6Dの内側壁面6Aから第1のSR層4の表面へ下り傾斜する傾斜部11を有する。その結果、内側壁面6Aのコーナー部6Dにアンダーフィル7が十分に行き渡るため、ボイド発生を防止できる。
【0030】
また、実装エリアの周囲を囲うダム部材としては、実装エリアから見て内側壁面の設置角度が90度を超えるテーパ形状にした場合でも、ダム部材の内側壁面のコーナー部にはアンダーフィルが行き渡らずにボイドが発生する場合が考えられる。これに対して、本実施例の配線基板1では、実装エリア4Bの周囲を囲うダム部材6のコーナー部6Dの内側壁面6Aから第1のSR層4の表面へ下り傾斜する傾斜部11を有する。その結果、内側壁面6Aのコーナー部6Dにアンダーフィル7が十分に行き渡るため、ボイド発生を防止できる。
【0031】
本実施例の配線基板1では、ダム部材6の各コーナー部6Dの内側壁面6Aに、実装エリア4Bに向かって内側壁面6Aから第1のSR層4の表面に下り傾斜する傾斜部11を有する。コーナー部6Dの内側壁面6Aに傾斜部11を形成することで、実装エリア4Bに流し込むアンダーフィル7が傾斜部11に沿って各コーナー部6Dに行き渡る。その結果、ボイドの発生を抑制できる。
【0032】
ダム部材6の直線部6Eの内側壁面6Aには、第1のSR層4の表面と接触する内側壁面6Aの下部に形成された窪み部13を有する。その結果、充填されるアンダーフィル7が窪み部13内に流れ込むため、十分なアンカー効果が得られることになる。しかも、発生する気泡はコーナー部6Dへと流れるためボイドが滞留する懸念も少なくなる。
【0033】
ダム部材6の各コーナー部6Dの外側壁面6Bには、第1のSR層4の表面と接触する外側壁面6Bの下部に形成された窪み部12を有する。その結果、例えば、配線基板1を封止する際に充填される封止樹脂が窪み部12内に流れ込むため、十分なアンカー効果が得られることになる。
【0034】
傾斜部11と第1のSR層4の表面との間の最大の高さ寸法Bは、ダム部材6の上面6Cと第1のSR層4の表面との間の最大の高さ寸法Aの20%以内である。その結果、コーナー部6D内にアンダーフィル7が行き渡るように内側壁面6Aから第1のSR層4の表面への下り傾斜の傾斜部11を形成できる。
【0035】
ダム部材6は、第1のSR層4と同一材料で形成される。その結果、ダム部材6と第1のSR層4との間の結合力を向上させるため、第1のSR層4とダム部材6との間でのクラック発生を抑制できる。
【0036】
ダム部材6の内側壁面6Aの下部分は湾曲状の傾斜部11になっているため、内側壁面6Aがストレートや逆テーパ状の場合に比較して空気が抜けやすくなる。つまり、本願のように第1のSR層4の表面に対するダム部材6の内側壁面6Aの設置角度が小さくすることで、空気が抜けやすくなりボイド抑制の効果が高まる。
【0037】
ダム部材6を形成するダム形成工程では、第2のSR層21を用いて内側壁面6A及び外側壁面6Bを形成する。更に、ダム形成工程では、第2のSR層21を用いて、実装エリア4Bに向かって、ダム部材6の各コーナー部6Dの内側壁面6Aから第1のSR層4表面に下り傾斜する傾斜部11を各コーナー部6Dの内側壁面6Aに形成する。その結果、第1のSR層4と同一の材料の第2のSR層21を用いてダム部材6と第1のSR層4の表面との間の結合力が向上できる。
【0038】
ダム形成工程では、コーナー部6Dの内側壁面6Aに対する第1の露光量で傾斜部11を形成し、外側壁面6Bに対して第1の露光量に比較して小さい第2の露光量で、第1のSR層4と接触する外側壁面6Bの下部に窪み部12を形成する。露光量を変えることで、傾斜部11及び窪み部12を形成できる。
【0039】
電子部品5を搭載する実装エリア4Bの開口部4Aとダム部材6との間にマージンを設ける必要があるが、ダム部材の内側壁面及び外側壁面両方をテーパ形状にした場合に、開口部4Aとダム部材との間のマージンが狭くなってしまいデザインが制約されてしまう。これに対して、本実施例のダム部材6では、コーナー部6Dのみに傾斜部11を設けた構造としたので、開口部4Aとダム部材6との間のマージンを確保でき、デザインの制約が少ない。
【0040】
尚、説明の便宜上、ダム部材6の形成材料は、SR材料で形成する場合を例示したが、例えば、カバーレイ材(接着性のあるフィルム材)や、液状の絶縁材料(粘度の高い材料)等もある。カバーレイ材ではパンチングで開口させた材料を基板上に材料を位置合わせして貼るようにしても良い。液状の絶縁材料では、例えば、数百mm~数mmの幅/高さのダム形状に塗布形成しても良い。尚、SR材料で形成する場合には、傾斜部11の位置合わせの位置精度が良く、ダム部材6の寸法精度が高くなる。
【0041】
また、ダム部材6として各コーナー部6Dの内側壁面6Aに傾斜部11を備える構造を例示したが、必ずしも全てのコーナー部6Dの内側壁面6Aに傾斜部11を備えている必要はない。例えば、アンダーフィル7を注入する方向や流れによっては、少なくとも1つのコーナー部6Dの内側壁面6Aに傾斜部11があることで、アンダーフィル7内のボイドを抑制することも可能である。
【0042】
電子部品5としては、Siインターポーザ5Aとダイ5Bとを有する場合を例示したが、ダイ5Bを実装エリア4Bに実装しても良く、適宜変更可能である。