(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067364
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】熱遮蔽部材及びその部品セット並びに熱遮蔽部材を用いた単結晶製造装置及び単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 15/14 20060101AFI20230509BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C30B15/14
C30B29/06 502C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178519
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】細田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】平岡 敬也
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EA02
4G077EG19
4G077EG20
4G077EG25
4G077HA12
4G077PA10
4G077PE22
(57)【要約】
【課題】同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる単結晶を育成することが可能な熱遮蔽部材及びこれを用いた単結晶製造装置並びに単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による熱遮蔽部材20は、CZ法による単結晶の引き上げに用いられ、ルツボ内の融液から引き上げられた単結晶を包囲する部材であって、略円筒状の断熱部材30と、断熱部材30の露出面を覆う壁部材40とを備えている。壁部材40は、断熱部材30の少なくとも外周面を覆う外壁部41と、断熱部材30の内周面を覆う内壁部42と、断熱部材30の下端面を覆う底壁部43とを備えている。断熱部材30は、略円筒状の第1断熱部31と、第1断熱部31の内側に設けられた略円筒状の第2断熱部32を含み、第2断熱部32は第1断熱部31から着脱自在に構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CZ法による単結晶の引き上げに用いられ、ルツボ内の融液から引き上げられた前記単結晶を包囲する熱遮蔽部材であって、
略円筒状の断熱部材と、
前記断熱部材の露出面を覆う壁部材とを備え、
前記壁部材は、
前記断熱部材の少なくとも外周面を覆う外壁部と、
前記断熱部材の内周面を覆う内壁部と、
前記断熱部材の下端面を覆う底壁部とを備え、
前記断熱部材は、
略円筒状の第1断熱部と、
前記第1断熱部の内側に設けられた略円筒状の第2断熱部を含み、
前記第2断熱部は前記第1断熱部から着脱自在に構成されていることを特徴とする熱遮蔽部材。
【請求項2】
前記第1断熱部の外周面は前記外壁部に覆われており、
前記第2断熱部の内周面は前記内壁部に覆われており、
前記第2断熱部の外周面は前記第1断熱部の内周面に密着している、請求項1に記載の熱遮蔽部材。
【請求項3】
前記底壁部は前記外壁部から着脱自在に構成されており、
前記内壁部は前記底壁部及び前記外壁部から着脱自在に構成されている、請求項1又は2に記載の熱遮蔽部材。
【請求項4】
前記内壁部の下端部に接続される前記底壁部の内周端部の上面には径方向の外側に向かって傾斜したテーパー面が設けられており、前記内壁部の下端部は前記テーパー面に当接している、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱遮蔽部材。
【請求項5】
前記底壁部の外周端部に接続される前記外壁部の下端部には径方向の外側に向かって傾斜したテーパー面が設けられており、前記底壁部の外周端部は前記テーパー面に当接している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱遮蔽部材。
【請求項6】
前記外壁部の下端部には突起部が設けられており、前記底壁部の外周端部には前記突起部に係合するフック部が設けられている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱遮蔽部材。
【請求項7】
前記第1断熱部を単独で使用したときの熱遮蔽部材の開口径と前記第1断熱部と前記第2断熱部を組み合わせて使用したときの熱遮蔽部材の開口径との差が50mm以上である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱遮蔽部材。
【請求項8】
CZ法による単結晶の引き上げに用いられ、ルツボ内の融液から引き上げられた前記単結晶を包囲する熱遮蔽部材の部品セットであって、
略円筒状の第1断熱部と、
前記第1断熱部の内側に着脱自在に設けられる略円筒状の第2断熱部と、
前記第1断熱部の外周面を覆う外壁部と、
前記第1断熱部の内周面を覆う第1内壁部と、
前記第2断熱部の内周面を覆う第2内壁部とを備え、
第1の熱遮蔽部材は、前記第1断熱部、前記外壁部及び前記第1内壁部により構成され、
前記第1の熱遮蔽部材よりも小さな開口径を有する第2の熱遮蔽部材は、前記第1断熱部、前記第2断熱部、前記外壁部及び前記第2内壁部により構成されることを特徴とする熱遮蔽部材の部品セット。
【請求項9】
少なくも前記第2断熱部の下端面を覆う底壁部をさらに備え、
前記第2の熱遮蔽部材は前記底壁部をさらに含む、請求項8に記載の熱遮蔽部材の部品セット。
【請求項10】
前記第1断熱部の下端面を覆う第1底壁部と、
前記第1及び第2断熱部の下端面を覆う第2底壁部とをさらに備え、
前記第1の熱遮蔽部材は前記第1底壁部をさらに含み、
前記第2の熱遮蔽部材は前記第2底壁部をさらに含む、請求項8に記載の熱遮蔽部材の部品セット。
【請求項11】
前記第1内壁部の開口径と前記第2内壁部の開口径との差が50mm以上である、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の熱遮蔽部材の部品セット。
【請求項12】
チャンバーと、前記チャンバー内で前記融液を支持するルツボと、前記融液を加熱するヒーターと、前記ルツボを回転及び昇降させるルツボ駆動機構と、前記融液から前記単結晶を引き上げる結晶引き上げ機構と、前記融液の上方に設置され、前記融液から引き上げられた前記単結晶を包囲して前記ヒーターからの輻射熱を遮蔽する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱遮蔽部材とを備えることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項13】
ルツボ内の融液から単結晶を引き上げるCZ法による単結晶の製造方法であって、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱遮蔽部材を用いて融液から引き上げられた単結晶を包囲することを特徴とする単結晶の製造方法。
【請求項14】
前記第1断熱部を単独で用いて構成された前記熱遮蔽部材を使用して第1の結晶直径を有する第1の単結晶を引き上げ、
前記第1断熱部及び前記第2断熱部を組み合わせて構成された前記熱遮蔽部材を使用して前記第1の結晶直径よりも小さな第2の結晶直径を有する第2の単結晶を引き上げる、請求項13に記載の単結晶の製造方法。
【請求項15】
前記第1の結晶直径と前記第2の結晶直径との差が50mm以上である、請求項14に記載の単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(CZ法)による単結晶の引き上げに用いられる熱遮蔽部材及びその部品セットに関する。また本発明は、そのような熱遮蔽部材を用いた単結晶製造装置及び単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板材料となるシリコン単結晶の多くはCZ法により製造されている。CZ法では石英ルツボ内に収容されたシリコン融液に種結晶を浸漬し、種結晶及び石英ルツボを回転させながら種結晶を徐々に引き上げることにより、種結晶の下端に大きな単結晶を成長させる。CZ法によれば、高品質のシリコン単結晶インゴットを高い歩留まりで製造することが可能である。
【0003】
シリコン単結晶の結晶品質の向上のため、CZ法では、シリコン融液から引き上げられたシリコン単結晶を包囲してヒーターからの輻射熱を遮蔽する熱遮蔽部材が用いられている。熱遮蔽部材に関し、例えば特許文献1には、熱遮蔽体の円板状の底板部を2分割にすることで、切欠部への熱応力の集中を防止する方法が記載されている。また特許文献2には、膨出部底部のみを交換可能な熱遮蔽部材が記載されている。
【0004】
特許文献3には、熱遮蔽部材を取替えることなく、直胴径の異なるシリコン単結晶棒を引上げるため、放射状に移動可能に構成された複数の熱輻射体のシリコン単結晶棒の周面に対する距離を変更することが記載されている。シリコン単結晶棒の肩部の形成時には、複数の熱輻射体を肩部から離した位置に移動し、シリコン単結晶棒の直胴部の形成時には複数の熱輻射体を直胴部近傍に移動する。
【0005】
シリコン単結晶は、半導体デバイスの基板材料だけでなく、例えばプラズマエッチング装置の電極材料としても使用されている。特許文献4には、プラズマエッチング装置の電極板としてシリコン単結晶を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-323322号公報
【特許文献2】特開2004-352581号公報
【特許文献3】特開2000-7488号公報
【特許文献4】特開2003-51491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電極材料用のシリコン単結晶は、半導体向けシリコン単結晶のように結晶直径が規格化されておらず、要求される結晶直径が装置設計に応じて異なる。そのため、電極材料用のシリコン単結晶の製造では、直胴部の直径(以下、単に結晶直径という)が異なるシリコン単結晶をその受注量に合わせて効率よく生産することが求められている。このような要求に対して、従来は、引き上げようとする結晶直径ごとに専用の熱遮蔽部材を用意していた。しかしながら、結晶直径ごとに専用の熱遮蔽部材を用意すると、保有パーツの種類の増加によるコストの増加の問題があり、また保管スペースの確保も問題となる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる単結晶を効率よく引き上げることが可能な熱遮蔽部材及びその部品セット並びに熱遮蔽部材を用いた単結晶製造装置及び単結晶の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による熱遮蔽部材は、CZ法による単結晶の引き上げに用いられ、ルツボ内の融液から引き上げられた前記単結晶を包囲する部材であって、略円筒状の断熱部材と、前記断熱部材の露出面を覆う壁部材とを備え、前記壁部材は、前記断熱部材の少なくとも外周面を覆う外壁部と、前記断熱部材の内周面を覆う内壁部と、前記断熱部材の下端面を覆う底壁部とを備え、前記断熱部材は、略円筒状の第1断熱部と、前記第1断熱部の内側に設けられた略円筒状の第2断熱部を含み、前記第2断熱部は前記第1断熱部から着脱自在に構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、結晶直径が異なる複数種類の単結晶を引き上げる場合に、断熱部材の第1断熱部及び壁部材の外壁部を共通部品とし、第2断熱部や内壁部といった第1断熱部よりも内側の部品を省略又は交換することにより開口サイズを変えることができる。したがって、同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる複数種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【0011】
本発明において、前記第1断熱部の外周面は前記外壁部に覆われており、前記第2断熱部の内周面は前記内壁部に覆われており、前記第2断熱部の外周面は前記第1断熱部の内周面に密着していることが好ましい。これにより、第1及び第2断熱部を一つの断熱部材として取り扱うことができ、第1及び第2断熱部を組み合わせることで小口径の単結晶の引き上げに好適な熱遮蔽部材を提供することができる。また、第2断熱部を取り外すことで大口径の単結晶の引き上げに好適な熱遮蔽部材を提供することができる。
【0012】
本発明において、前記底壁部は前記外壁部から着脱自在に構成されており、前記内壁部は前記底壁部及び前記外壁部から着脱自在に構成されている、前記第2底壁部は前記第1底壁部から着脱自在に構成されていることが好ましい。これにより、小口径の単結晶と大口径の単結晶の両方に対応することができる。
【0013】
本発明において、前記内壁部の下端部に接続される前記底壁部の内周端部の上面には径方向の外側に向かって傾斜したテーパー面が設けられており、前記内壁部の下端部は前記テーパー面に当接していることが好ましい。これにより内壁部と底壁部との接続位置における両者の密着性を高めることができ、壁部材による断熱部材の封止状態を維持することができる。したがって、断熱部材が劣化して粉状になったとしても、断熱部材の微粉が外側に漏れ出すことによる単結晶の歩留まりの悪化を防止することができる。
【0014】
本発明において、前記底壁部の外周端部に接続される前記外壁部の下端部には径方向の外側に向かって傾斜したテーパー面が設けられており、前記底壁部の外周端部は前記テーパー面に当接していることが好ましい。これにより底壁部と外壁部との接続位置における両者の密着性を高めることができ、壁部材による断熱部材の封止状態を維持することができる。したがって、断熱部材が劣化して粉状になったとしても、断熱部材の微粉が外側に漏れ出すことによる単結晶の歩留まりの悪化を防止することができる。
【0015】
本発明において、前記外壁部の下端部には突起部が設けられており、前記底壁部の外周端部には前記突起部に係合するフック部が設けられていることが好ましい。この場合も、底壁部と外壁部との接続位置における両者の密着性を高めることができ、壁部材による断熱部材の封止状態を維持することができる。
【0016】
本発明において、前記第1断熱部を単独で使用したときの熱遮蔽部材の開口径と前記第1断熱部と前記第2断熱部を組み合わせて使用したときの熱遮蔽部材の開口径との差は50mm(約2インチ)以上であることが好ましい。これにより、同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる複数種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【0017】
本発明において、前記内壁部は、前記第1断熱部の内周面を覆う略円筒状の第1内壁部又は前記第2断熱部の内周面を覆う略円筒状の第2内壁部であることが好ましい。第1内壁部を第1断熱部と組み合わせて使用することにより、開口サイズが大きな熱遮蔽部材を実現できる。また、第2内壁部を第1及び第2断熱部と組み合わせることにより、開口サイズが小さな熱遮蔽部材を実現できる。
【0018】
本発明において、前記第1内壁部の開口径と前記第2内壁部の開口径との差は50mm以上であることが好ましい。これにより、直径差が50mm以上ある2種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【0019】
本発明による熱遮蔽部材は、第1の単結晶を引き上げる場合に、前記第2断熱部を省略して前記第1断熱部が単独で使用されると共に、前記底壁部を省略して前記第1内壁部が前記外壁部と組み合わせて使用され、前記第1の単結晶よりも小さな直径を有する第2の単結晶を引き上げる場合に、前記第2断熱部が前記第1断熱部と組み合わせて使用されると共に、前記第2内壁部及び前記底壁部が前記外壁部と組み合わせて使用されることが好ましい。このように、本発明による熱遮蔽部材は、結晶直径が互いに異なる第1及び第2の単結晶のCZ引き上げ工程のどちらにも適用することができる。
【0020】
前記底壁部は、前記第1断熱部の下端面を覆う略円環状の第1底壁部又は前記第1及び第2断熱部の下端面を覆う略円環状の第2底壁部であることが好ましい。第1底壁部を第1断熱部及び第1内壁部と組み合わせて使用することにより、開口サイズが大きな熱遮蔽部材を構成することができる。また、第2底壁部を第1及び第2断熱部及び第2内壁部と組み合わせて使用することにより、開口サイズが小さな熱遮蔽部材を構成することができる。
【0021】
本発明による熱遮蔽部材は、第1の単結晶を引き上げる場合に、前記第2断熱部を省略して前記第1断熱部が単独で使用されると共に、前記第1内壁部及び前記第1底壁部が前記外壁部と組み合わせて使用されることが好ましく、前記第1の単結晶よりも小さな直径を有する第2の単結晶を引き上げる場合に、前記第2断熱部が前記第1断熱部と組み合わせて使用されると共に、前記第2内壁部及び前記第2底壁部が前記外壁部と組み合わせて使用されることが好ましい。このように、本発明による熱遮蔽部材は、結晶直径が互いに異なる第1及び第2の単結晶のCZ引き上げ工程のどちらにも適用することができる。
【0022】
また本発明は、CZ法による単結晶の引き上げに用いられ、ルツボ内の融液から引き上げられた前記単結晶を包囲する熱遮蔽部材の部品セットであって、略円筒状の第1断熱部と、前記第1断熱部の内側に着脱自在に設けられる略円筒状の第2断熱部と、前記第1断熱部の外周面を覆う外壁部と、前記第1断熱部の内周面を覆う第1内壁部と、前記第2断熱部の内周面を覆う第2内壁部とを備え、第1の熱遮蔽部材は、前記第1断熱部、前記外壁部及び前記第1内壁部により構成され、前記第1の熱遮蔽部材よりも小さな開口径を有する第2の熱遮蔽部材は、前記第1断熱部、前記第2断熱部、前記外壁部及び前記第2内壁部により構成されることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、熱遮蔽部材の構成部品の一部を追加又は交換することで熱遮蔽部材の開口径を変更することができ、結晶直径が異なる複数種類の単結晶の引き上げに対応することができる。
【0024】
また、本発明による熱遮蔽部材の部品セットは、少なくも前記第2断熱部の下端面を覆う底壁部をさらに備え、前記第2の熱遮蔽部材は前記底壁部をさらに含むことが好ましい。また、本発明による熱遮蔽部材の部品セットは、前記第1断熱部の下端面を覆う第1底壁部と、前記第1及び第2断熱部の下端面を覆う第2底壁部とをさらに備え、前記第1の熱遮蔽部材は前記第1底壁部をさらに含み、前記第2の熱遮蔽部材は前記第2底壁部をさらに含むものであってもよい。このように、底壁部を追加又は交換することで、結晶直径が異なる複数の単結晶の引き上げに対応可能な熱遮蔽部材を提供することができる。
【0025】
本発明において、前記第1内壁部の開口径と前記第2内壁部の開口径との差は50mm以上であることが好ましい。これにより、同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる複数種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【0026】
また、本発明による単結晶製造装置は、チャンバーと、前記チャンバー内で前記融液を支持するルツボと、前記融液を加熱するヒーターと、前記ルツボを回転及び昇降させるルツボ駆動機構と、前記融液から前記単結晶を引き上げる結晶引き上げ機構と、前記融液の上方に設置され、前記融液から引き上げられた前記単結晶を包囲して前記ヒーターからの輻射熱を遮蔽する上述した本発明による熱遮蔽部材を備えることを特徴とする。本発明によれば、一部のパーツの省略や変更により開口サイズを変えることができる。したがって、同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる複数種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【0027】
また、本発明による単結晶の製造方法は、ルツボ内の融液から単結晶を引き上げるCZ法において、上述した本発明による熱遮蔽部材を用いて融液から引き上げられた単結晶を包囲することを特徴とする。本発明によれば、一部のパーツの省略や変更により開口サイズを変えることができ、結晶直径が異なる複数種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【0028】
本発明による単結晶の製造方法は、前記第1断熱部を単独で用いて構成された前記熱遮蔽部材を使用して第1の結晶直径を有する第1の単結晶を引き上げ、前記第1断熱部及び前記第2断熱部を組み合わせて構成された前記熱遮蔽部材を使用して前記第1の結晶直径よりも小さな第2の結晶直径を有する第2の単結晶を引き上げることが好ましい。これにより、一部のパーツの省略や変更により開口サイズを変えることができ、結晶直径が異なる2種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【0029】
本発明において、前記第1の結晶直径と前記第2の結晶直径との差は50mm(約2インチ)以上であることが好ましい。これにより、同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる2種類の単結晶を効率よく引き上げることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、同じCZ引き上げ炉を用いて結晶直径が異なる単結晶を効率よく引き上げることが可能な熱遮蔽部材及びその部品セット並びに熱遮蔽部材を用いた単結晶製造装置及び単結晶の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す略側面断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態による熱遮蔽部材の完成状態の構成を示す略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態による熱遮蔽部材の分解状態の構成を示す略断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施の形態による熱遮蔽部材の完成状態の構成を示す略断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施の形態による熱遮蔽部材の分解状態の構成を示す略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施の形態による熱遮蔽部材の完成状態の構成を示す略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施の形態による熱遮蔽部材の完成状態の構成を示す略断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施の形態による熱遮蔽部材の分解状態の構成を示す略断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第5の実施の形態による熱遮蔽部材の完成状態の構成を示す略断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第5の実施の形態による熱遮蔽部材の分解状態の構成を示す略断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第6の実施の形態による熱遮蔽部材の完成状態の構成を示す略断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第6の実施の形態による熱遮蔽部材の分解状態の構成を示す略断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第7の実施の形態による熱遮蔽部材の完成状態の構成を示す略断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第7の実施の形態による熱遮蔽部材の分解状態の構成を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶製造装置の構成を示す略側面断面図である。
【0034】
図1に示すように、単結晶製造装置1は、水冷式のチャンバー10と、チャンバー10内においてシリコン融液2を保持する石英ルツボ11と、石英ルツボ11を保持する黒鉛ルツボ12と、黒鉛ルツボ12を支持する回転シャフト13と、回転シャフト13及び黒鉛ルツボ12を介して石英ルツボ11を回転及び昇降駆動するシャフト駆動機構14と、黒鉛ルツボ12の周囲に配置されたヒーター15と、ヒーター15の外側であってチャンバー10の内面に沿って配置された断熱材16と、石英ルツボ11の上方であって回転シャフト13と同軸上に配置された単結晶引き上げ用のワイヤー17と、チャンバー10の上方に配置されたワイヤー巻き取り機構18と、石英ルツボ11の上方に配置された熱遮蔽部材20とを備えている。
【0035】
チャンバー10は、メインチャンバー10aと、メインチャンバー10aの上部開口に連結された細長い円筒状のプルチャンバー10bとで構成されており、石英ルツボ11、黒鉛ルツボ12、ヒーター15及び熱遮蔽部材20はメインチャンバー10a内に設けられている。プルチャンバー10bにはチャンバー10内にアルゴンガス等の不活性ガス(パージガス)やドーパントガスを導入するためのガス導入口10cが設けられており、メインチャンバー10aの下部にはチャンバー10内の雰囲気ガスを排出するためのガス排出口10dが設けられている。また、メインチャンバー10aの上部には覗き窓(不図示)が設けられており、シリコン単結晶3の育成状況を覗き窓から観察可能である。
【0036】
石英ルツボ11は、略円筒状の側壁部と湾曲した底部とを有するシリカガラス製の容器である。黒鉛ルツボ12は、加熱によって軟化した石英ルツボ11の形状を維持するため、石英ルツボ11の外表面に密着して石英ルツボ11を支持する。石英ルツボ11及び黒鉛ルツボ12はチャンバー10内においてシリコン融液を支持する二重構造のルツボを構成している。
【0037】
黒鉛ルツボ12は回転シャフト13の上端部に固定されており、回転シャフト13の下端部はチャンバー10の底部を貫通してチャンバー10の外側に設けられたシャフト駆動機構14に接続されている。回転シャフト13及びシャフト駆動機構14は石英ルツボ11を回転及び昇降駆動するルツボ駆動機構を構成している。
【0038】
ヒーター15は、石英ルツボ11内に充填されたシリコン原料を加熱してシリコン融液2を生成すると共に、シリコン融液2の溶融状態を維持するために用いられる。ヒーター15はカーボン製の抵抗加熱式ヒーターであり、黒鉛ルツボ12内の石英ルツボ11を取り囲むように設けられている。ヒーター15の外側には断熱材16がヒーター15を取り囲むように設けられており、これによりチャンバー10内の保温性が高められている。
【0039】
石英ルツボ11の上方には、シリコン単結晶3の引き上げ軸であるワイヤー17と、ワイヤー17を巻き取るワイヤー巻き取り機構18が設けられている。ワイヤー巻き取り機構18はワイヤー17と共にシリコン単結晶3を回転させながら引き上げる結晶引き上げ機構を構成している。ワイヤー巻き取り機構18はプルチャンバー10bの上方に配置されており、ワイヤー17はワイヤー巻き取り機構18からプルチャンバー10b内を通って下方に延びており、ワイヤー17の先端部はメインチャンバー10aの内部空間まで達している。
図1には、育成途中のシリコン単結晶3がワイヤー17に吊設された状態が示されている。シリコン単結晶3の引き上げ時には石英ルツボ11とシリコン単結晶3とをそれぞれ回転させながらワイヤー17を徐々に引き上げることによりシリコン単結晶3を成長させる。
【0040】
熱遮蔽部材20は、シリコン融液2の温度変動を抑制して結晶成長界面近傍に適切なホットゾーンを形成するとともに、ヒーター15及び石英ルツボ11からの輻射熱によるシリコン単結晶3の加熱を防止するために設けられている。熱遮蔽部材20は略円筒状の黒鉛製の部材であり、シリコン単結晶3の引き上げ経路を除いたシリコン融液2の上方の領域を覆うように設けられている。
【0041】
熱遮蔽部材20の下端の開口20aの直径はシリコン単結晶3の直径よりも大きく、これによりシリコン単結晶3の引き上げ経路が確保されている。また熱遮蔽部材20の下端部の外径は石英ルツボ11の口径よりも小さく、熱遮蔽部材20の下端部は石英ルツボ11の内側に位置するので、石英ルツボ11のリム上端を熱遮蔽部材20の下端よりも上方まで上昇させても熱遮蔽部材20が石英ルツボ11と干渉することはない。
【0042】
シリコン単結晶3の成長と共に石英ルツボ11内の融液量は減少するが、融液面と熱遮蔽部材20との間のギャップが一定になるように石英ルツボ11を上昇させることにより、シリコン融液2の温度変動を抑制すると共に、融液面近傍を流れるガスの流速を一定にしてシリコン融液2からのドーパントの蒸発量を制御することができる。したがって、シリコン単結晶3の引き上げ軸方向の結晶欠陥分布、酸素濃度分布、抵抗率分布等の安定性を向上させることができる。
【0043】
シリコン単結晶3の製造では、まず石英ルツボ11内に多結晶シリコン原料を投入し、ヒーター15で石英ルツボ11内の原料を加熱して溶融し、シリコン融液2を生成する。次に、ワイヤー17の下端に取り付けた種結晶を降下させてシリコン融液2に着液させる。その後、シリコン融液2との接触状態を維持しながら種結晶を徐々に引き上げてシリコン単結晶3を成長させる。結晶引き上げ工程では、直径を徐々に増加させてショルダー部を形成した後、直径を一定に維持して直胴部を形成する。所望の長さの直胴部を形成した後、直径を徐々に減少させてシリコン融液2から切り離す。以上により、シリコン単結晶インゴットが完成する。
【0044】
図2及び
図3は、本発明の第1の実施の形態による熱遮蔽部材の構成を示す略断面図であって、
図2は完成図、
図3は分解図である。
【0045】
図2及び
図3に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20は、略円筒状の断熱部材30と、断熱部材30の露出面を覆う壁部材40とを備えている。断熱部材30としては、カーボン繊維からなるフェルト材を用いることができる。或いは、アルミナ等を断熱部材として用いてもよい。壁部材40の材料は、熱的に安定で高純度な黒鉛或いは表面がSiCコーティングされた黒鉛を用いることができる。或いは、熱的に安定なMo(モリブデン)やW(タングステン)を壁部材として用いてもよい。
【0046】
断熱部材30は、略円筒状の第1断熱部31からなる。第1断熱部31の外周面31aは垂直面であり、断熱部材30の外周面30aを構成している。第1断熱部31の内周面31bは下方に向かって下りのテーパー面を構成している。第1断熱部31の下端面31cは水平面であり、さらに外周側のコーナー部には面取り加工されたテーパー面が設けられている。第1断熱部31の外周面31aは、下方に向かって下りのテーパー面を構成していてもよい。
【0047】
壁部材40は、断熱部材30の外周面30aと下端面30cの外周側領域を覆う外壁部41と、断熱部材30の内周面30bを覆う内壁部42と、断熱部材30の下端面30cの内周側領域を覆う底壁部43とを備えている。
【0048】
外壁部41は略円筒状の部材であり、第1断熱部31の外周面31aと下端面31cの外周側領域を覆っている。外壁部41の内周面は第1断熱部31の外周面31aに密着している。外壁部41の上部開口から内側に第1断熱部31を挿入することにより、第1断熱部31は外壁部41内に収納される。第1断熱部21を上方に持ち上げれば外壁部41から容易に取り出すことができる。本実施形態において、外壁部41の円筒形状は、上端部から下方のテーパー部の位置まではその直径が一定であるが、直径が徐々に小さくなる略逆円錐台形状であってもよい。
【0049】
内壁部42は略円筒状の部材であり、略円筒状の外壁部41の内側に設置されて、第1断熱部31の内周面31bを覆っている。内壁部42としては、第1断熱部31の内周面31bにフィットする形状を有する第1内壁部42Xが使用され、第1内壁部42Xの外周面は第1断熱部31の内周面31bに密着している。第1内壁部42Xの上端部は外壁部41の上端部近傍の内周面に当接しており、断熱部材30の上端面30dを構成する第1断熱部31の上端面31dを覆っている。第1内壁部42Xの下端部は底壁部43の内周端部近傍の上面に当接している。第1内壁部42Xは、上端部から下端部に向かって斜めに真っすぐ傾斜した平坦な形状であるが、途中に段差を有していてもよい。
【0050】
通常、熱遮蔽部材20の開口径は下方に行くほど小さくなり、下端部近傍で最小となる。単結晶の引き上げに大きな影響を与える熱遮蔽部材の開口形状は、固液界面に近い下端部近傍の開口径であるため、内壁部42の開口径とは、下端部近傍における開口径の最小値のことを言う。熱遮蔽部材20及びその他の部品の開口径に関しても同様である。
【0051】
底壁部43は略円環状の部材であり、略円筒状の外壁部41の内側に設置されて、第1断熱部31の下端面31cの内周側領域を覆っている。底壁部43としては、第1断熱部32Xの大きさに合わせた大口径用の第1底壁部43Xが使用される。第1底壁部43Xの上面は、第1断熱部31の下端面31cに密着していることが好ましい。第1底壁部43Xは、外壁部41の内周端部(下端部)の上面に載置されており、円環状の底板を構成している。第1底壁部43Xには段差が設けられており、この段差が外壁部41の内周端部と嵌合することにより、第1底壁部43Xが熱遮蔽部材20の中心に位置決め固定される。
【0052】
第1内壁部42Xの設置状態において、第1内壁部42Xの下端部は第1底壁部43Xの内周端部に密着していることが好ましい。そのような密着状態を確保するため、第1内壁部42Xの下端面には、その設置状態において、径方向の中心に向かって斜め上方に傾斜したテーパー面42tが形成されていることが好ましい。同様に、第1底壁部43Xの内周端部の上面にも、第1内壁部42Xの下端面とほぼ同じ傾斜角度のテーパー面43tが形成されていることが好ましい。このように、第1内壁部42Xの下端部のテーパー面42tが第1底壁部43Xの内周端部のテーパー面43tに面接触して係合することにより、断熱部材30の収容空間を密封することができる。
【0053】
同様のテーパー面は、外壁部41と第1底壁部43Xとの接続位置にも設けられることが好ましい。すなわち、外壁部41の内周端部の上面にはテーパー面41uが形成されており、第1底壁部43Xの外周端部の底面にはテーパー面41uとほぼ同じ傾斜角度のテーパー面43uが形成されている。そのため、両者の接続を強固にして断熱部材30の収容空間を密封することができる。
【0054】
断熱部材30は徐々に劣化して粉状となるため、壁部材40による断熱部材30の封止状態が不十分では断熱部材30の微粉が外側に漏れ出して単結晶の歩留まりに悪影響を与える。しかし、壁部材40を構成する複数のパーツ間のつなぎ目が密着している場合には、微粉の漏れ出しを防止することができる。
【0055】
図3に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20は、外壁部41の内側に各パーツを所定の順番で設置することで完成する。単に各パーツを外壁部41内に収容すればよく、特別な固定手段は不要である。そのため、各パーツの取り出しや交換が極めて容易である。
【0056】
上記のように、本実施形態による断熱部材30は第1断熱部31のみで構成され、また壁部材40としては、第1断熱部31に対応する第1内壁部42X及び第1底壁部43Xがそれぞれ使用され、これにより相対的に大きな開口サイズを有する熱遮蔽部材20が構成されている。相対的に小さな開口サイズを有する熱遮蔽部材20を構成したい場合には、パーツの追加又は変更が必要である。
【0057】
図4及び
図5は、本発明の第2の実施の形態による熱遮蔽部材の構成を示す略断面図であって、
図4は完成図、
図5は分解図である。
【0058】
図4及び
図5に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20は、
図2及び
図3に示した第1の実施の形態の変形例であって、断熱部材30が第1断熱部31及び第2断熱部32の組み合わせからなる。第1断熱部31は第1の実施の形態で用いたものと同じである。第2断熱部32は、第1断熱部31の内周側に設けられる略円筒状の部材であって、第1断熱部31から着脱自在に構成されている。すなわち、本実施形態による断熱部材30は、第1の実施の形態との共通部品である第1断熱部31に第2断熱部32を追加したものである。
【0059】
第2断熱部32の外周面32aは第1断熱部31の内周面31bにフィットするテーパー面であり、内周面31bに密着している。第2断熱部32の内周面32bは外周面32aに近い傾斜角度を持つテーパー面であり、断熱部材30の内周面30bを構成している。第1断熱部31の上部開口から内側に第2断熱部32を挿入すると、第2断熱部32の外周面32aは第1断熱部31の内周面31bに密着し、両者は一体化する。第2断熱部32を上方に持ち上げれば第1断熱部31から容易に取り出すことができる。
【0060】
本実施形態において、第2断熱部32は、第1断熱部31の上端から下端まで広範囲に延在する比較的大きな部材であるが、第1断熱部31の下端部だけに設けられた比較的小さな部材であってもよい。
【0061】
壁部材40は、断熱部材30の外周面30aと下端面30cの外周側領域を覆う外壁部41と、断熱部材30の内周面30bを覆う内壁部42と、断熱部材30の下端面30cの内周側領域を覆う底壁部43とを備えている。ここで、外壁部41は第1の実施の形態で用いたものと同じであり、第1断熱部31と同様に、第1及び第2の実施の形態に共通の部品である。
【0062】
内壁部42としては、第2断熱部32の内周面32bにフィットする形状を有する第2内壁部42Yが使用され、底壁部43としては、第2断熱部32の使用に合わせた小口径用の第2底壁部43Yが使用される。そのため、第2内壁部42Yの形状は第1内壁部42Xとわずかに異なり、また第2底壁部43Yの形状は第1底壁部43Xの形状とわずかに異なる。
【0063】
第2内壁部42Yの外周面は第2断熱部32の内周面32bに密着しており、第2底壁部43Yの上面は、少なくとも第2断熱部32の下端面32cに密着している。第2内壁部42Yの上端部は外壁部41の上端部近傍の内周面に当接しており、断熱部材30の上端面30dを構成する第1断熱部31の上端面31d及び第2断熱部32の上端面32dを覆っている。第2内壁部42Yの下端部は底壁部43の内周端部近傍の上面に当接している。内壁部42は、上端部から下端部に向かって斜めに真っすぐ傾斜した平坦な形状であるが、途中に段差を有していてもよい。
【0064】
図2及び
図3を用いて説明したように第1断熱部31を単独で使用した場合には、熱遮蔽部材20の開口サイズを大きくすることができ、結晶直径の大きなシリコン単結晶の引き上げに好ましく用いることができる。一方、本実施形態のように第1断熱部31と第2断熱部32を組み合わせた場合には、熱遮蔽部材20の開口サイズ(開口20aの直径)を小さくすることができ、結晶直径の小さなシリコン単結晶の引き上げに好ましく用いることができる。
【0065】
このように、熱遮蔽部材20の内壁部42としては、第1断熱部31の内周面31bの形状に合わせた第1内壁部42Xと、第2断熱部32の内周面32bの形状に合わせた第2内壁部42Yの2種類が用意され、第2断熱部32の使用状態に合わせてどちらか一方が選択的に使用される。同様に、熱遮蔽部材20の底壁部43としては、第1断熱部31を単独で使用したときの底面形状に合わせた第1底壁部43Xと、第1断熱部31と第2断熱部32を組み合わせて使用したときの底面形状に合わせた第2底壁部43Yの2種類が用意され、第2断熱部32の使用状態に合わせてどちらか一方が選択的に使用される。
【0066】
熱遮蔽部材20の開口サイズを大きくした時の開口径R1と開口サイズを小さくした時の開口径R2との差は50mm(約2インチ)以上であることが好ましい。結晶直径が異なる2種類のシリコン単結晶の直径差が50mmよりも小さい場合には、熱遮蔽部材20の開口サイズを変更しなくても、他の結晶引上げ条件を微調整することで、実質的に同じ品質のシリコン単結晶を引き上げることが可能だからである。このように、熱遮蔽部材20の開口サイズを変更しなければならない場合とは、2種類のシリコン単結晶の直径差がある程度大きいため、2種類のシリコン単結晶の品質を実質的に同一にすることが困難な場合であって、2種類のシリコン単結晶の直胴部の直径差が50mm以上の場合である。
【0067】
なお開口径の差の上限は特に限定されない。したがって、例えば、直径約200mmのシリコン単結晶と直径約400mmのシリコン単結晶を同じCZ引き上げ炉で引き上げるため、熱遮蔽部材20の大きな開口径と小さな開口径との差を200mm以上とすることも可能である。
【0068】
断熱部材30を構成する第1断熱部31及び第2断熱部32と、壁部材40を構成する外壁部41、第1内壁部42X、第2内壁部42Y、第1底壁部43X、第2底壁部43Yは、2種類の開口サイズに対応する熱遮蔽部材の部品セットを構成している。第1断熱部31及び外壁部41は大口径及び小口径に共通の基本部品であり、第2断熱部32は小口径にのみ使用される追加部品である。第1内壁部42X及び第1底壁部43Xは大口径にのみ使用される選択部品であり、第2内壁部42Y及び第2底壁部43Yは小口径にのみ使用される選択部品である。
【0069】
上記のように、大口径(例えば395mm)のシリコン単結晶を引き上げる場合、断熱部材30として第1断熱部31が単独で使用され、また内壁部42として第1断熱部31にフィットする第1内壁部42Xが採用され、底壁部43として第1断熱部31の下端面をカバーする第1底壁部43Xが採用される。
【0070】
一方、小口径(例えば320mm)のシリコン単結晶を引き上げる場合、断熱部材30として第1断熱部31と第2断熱部32の両方が使用され、また内壁部42として第2断熱部32にフィットする第2内壁部42Yが採用され、底壁部43として第1断熱部31及び第2断熱部32の下端面をカバーする第2底壁部43Yが採用される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態による熱遮蔽部材20は、その部品の一部を共通で使用しながら、他の一部を交換したり、追加又は省略したりすることで開口サイズを変更可能に構成されているので、結晶直径が異なる2種類のシリコン単結晶の引き上げを同一のCZ引き上げ炉を用いて行うことができ、結晶直径が異なる2種類のシリコン単結晶の品質のばらつきを低減することができる。
【0072】
また、本実施形態による単結晶の製造方法は、結晶直径が大きいシリコン単結晶を引き上げる場合には、第1断熱部31Xを単独で用いて構成された熱遮蔽部材20(第1の熱遮蔽部材)を使用し、結晶直径が小さいシリコン単結晶を引き上げる場合には、第1断熱部31及び第2断熱部32を組み合わせて構成された二重構造の熱遮蔽部材20(第2の熱遮蔽部材)を使用するため、結晶直径が異なる2種類のシリコン単結晶の引き上げを同一のCZ引き上げ炉を用いて行うことができ、結晶直径が異なる2種類のシリコン単結晶の品質のばらつきを低減することができる。
【0073】
図6は、本発明の第3の実施の形態による熱遮蔽部材の構成を示す略断面図である。
【0074】
図6に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20は、
図4及び
図5に示した第2の実施の形態による熱遮蔽部材のさらなる変形例であって、断熱部材30が第1断熱部31、第2断熱部32及び第3断熱部33の組み合わせからなる点にある。第1断熱部31及び第2断熱部32は第2の実施の形態で用いたものと同じである。第3断熱部33は、第2断熱部32の内周側に設けられる略円筒状の部材であって、第2断熱部32から着脱自在に構成されている。すなわち、本実施形態による断熱部材30は、第1の実施の形態との共通部品である第1断熱部31に第2断熱部32及び第3断熱部33を追加したものである。
【0075】
第3断熱部33を使用しない時の開口径R
2(
図4参照)と第3断熱部33を使用して開口サイズを小さくした時の開口径R
3との差は50mm(約2インチ)以上であることが好ましい。結晶直径が異なる2種類のシリコン単結晶の直径差が50mmよりも小さい場合には、熱遮蔽部材20の開口サイズを変更しなくても、他の結晶引上げ条件を微調整することで、実質的に同じ品質のシリコン単結晶を引き上げることが可能だからである。
【0076】
第3断熱部33の外周面33aは第2断熱部32の内周面32bにフィットするテーパー面であり、内周面32bに密着している。第3断熱部33の内周面33bは外周面33aに近い傾斜角度を持つテーパー面であり、断熱部材30の内周面30bを構成している。第2断熱部32の上部開口から内側に第3断熱部33を挿入すると、第3断熱部33の外周面33aは第2断熱部32の内周面32bに密着し、両者は一体化する。第3断熱部33を上方に持ち上げれば第2断熱部32から容易に取り出すことができる。
【0077】
本実施形態において、第3断熱部33は、第1断熱部31及び第2断熱部32の上端から下端まで広範囲に延在する比較的大きな部材であるが、第1断熱部31及び第2断熱部32の下端部だけに設けられた比較的小さな部材であってもよい。
【0078】
壁部材40は、断熱部材30の外周面30aと下端面30cの外周側領域を覆う外壁部41と、断熱部材30の内周面30bを覆う内壁部42と、断熱部材30の下端面30cの内周側領域を覆う底壁部43とを備えている。ここで、外壁部41は第1の実施の形態で用いたものと同じであり、第1断熱部31と同様に、第1~第3の実施の形態に共通の部品である。
【0079】
内壁部42としては、第3断熱部33の内周面33bにフィットする形状を有する第3内壁部42Zが使用され、底壁部43としては、第3断熱部33の使用に合わせた、開口サイズがさらに小さな第3底壁部43Zが使用される。そのため、第3内壁部42Zの形状は第2内壁部42Yとわずかに異なり、また第3底壁部43Zの形状は第2底壁部43Yの形状とわずかに異なる。
【0080】
断熱部材30を構成する第1断熱部31、第2断熱部32及び第3断熱部33と、壁部材40を構成する外壁部41、第1内壁部42X、第2内壁部42Y、第3内壁部42Z、第1底壁部43X、第2底壁部43Y、第3底壁部43Zは、3種類の開口サイズに対応する熱遮蔽部材の部品セットを構成している。第1断熱部31及び外壁部41は大口径、中口径及び小口径に共通の基本部品であり、第2断熱部32及びは中口径及び小口径に共通の追加部品であり、第3断熱部33は小口径にのみ使用される追加部品である。第1内壁部42X及び第1底壁部43Xは大口径にのみ使用される選択部品であり、第2内壁部42Y及び第2底壁部43Yは中口径にのみ使用される選択部品であり、第3内壁部42Z及び第3底壁部43Zは小口径にのみ使用される選択部品である。このように、本実施形態によれば、熱遮蔽部材20の開口サイズの選択肢をさらに広げることができる。
【0081】
図7及び
図8は、本発明の第4の実施の形態による熱遮蔽部材の構成を示す略断面図であって、
図7は完成図、
図8は分解図である。
【0082】
図7及び
図8に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20の特徴は、大口径の熱遮蔽部材の構成部品として底壁部43を省略した点にある。すなわち、壁部材40は、断熱部材30の外周面30aと下端面30cの全体を覆う外壁部41と、断熱部材30の内周面30bを覆う第1内壁部42Xとで構成されている。
【0083】
図9及び
図10は、本発明の第5の実施の形態による熱遮蔽部材の構成を示す略断面図であって、
図9は完成図、
図10は分解図である。
【0084】
図9及び
図10に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20は、
図7及び
図8に示した第4の実施の形態による熱遮蔽部材の変形例であって、断熱部材30が第1断熱部31及び第2断熱部32の組み合わせからなり、壁部材40が外壁部41及び第2内壁部42Yのほか、底壁部43をさらに備えている点にある。
【0085】
このように、熱遮蔽部材20の開口サイズを大きくする場合には底壁部を省略し、熱遮蔽部材20の開口サイズを小さくする場合には底壁部を追加するようにしても良い。この場合、第1断熱部31及び外壁部41は共通部品として使用でき、第2断熱部32及び底壁部43の追加し、内壁部42を交換することで小口径にも対応できる。
【0086】
図11及び
図12は、本発明の第6の実施の形態による熱遮蔽部材の構成を示す略断面図であって、
図11は完成図、
図12は分解図である。
【0087】
図11及び
図12に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20の特徴は、外壁部41と内壁部42との接続を強固にするため、両者の接続位置には鍵状の係合部が設けられている点にある。具体的には、外壁部41の下端部(内周端部)には上方に突出する突起部41vが形成されており、内壁部42の下端部は外壁部41の下端部(内周端部)に設けられた突起部41vに係合して固定される。内壁部42を外壁部41の内側に設置すると、内壁部42の下端部が外壁部41の突起部41vに噛み合い、両者は強固に接続される。
【0088】
壁部材40を構成するパーツの接続箇所は、内部の断熱部材30の劣化による微粉が落ちないように鍵状の端部同士が相互に係合し、これにより壁部材40内の密閉状態が維持されていることが好ましい。断熱部材30は徐々に劣化して粉状となるため、壁部材40による断熱部材30の封止状態が不十分では断熱部材30の微粉が外側に漏れ出して単結晶の歩留まりに悪影響を与える。しかし、壁部材40を構成する複数の部品間のつなぎ目が密着している場合には、微粉の漏れ出しを防止することができる。
【0089】
図13及び
図14は、本発明の第7の実施の形態による熱遮蔽部材の構成を示す略断面図であって、
図13は完成図、
図14は分解図である。
【0090】
図13及び
図14に示すように、本実施形態による熱遮蔽部材20は、
図11及び
図12に示した第6の実施の形態による熱遮蔽部材の変形例であって、断熱部材30が第1断熱部31及び第2断熱部32の組み合わせからなり、壁部材40が外壁部41及び第2内壁部42Yのほか、底壁部43をさらに備えている点にある。また、外壁部41と底壁部43との接続を強固にするため、両者の接続位置には鍵状の係合部が設けられている。具体的には、外壁部41の下端部(内周端部)には上方に突出する突起部41vが形成されており、底壁部43の外周端部には外壁部41の突起部41vに係合するフック部43vが形成されている。底壁部43を外壁部41の内側に設置すると、フック部43vが突起部41vに噛み合い、両者は強固に接続される。
【0091】
壁部材40を構成するパーツの接続箇所は、内部の断熱部材30の劣化による微粉が落ちないように鍵状の端部同士が相互に係合し、これにより壁部材40内の密閉状態が維持されていることが好ましい。断熱部材30は徐々に劣化して粉状となるため、壁部材40による断熱部材30の封止状態が不十分では断熱部材30の微粉が外側に漏れ出して単結晶の歩留まりに悪影響を与える。しかし、壁部材40を構成する複数の部品間のつなぎ目が密着している場合には、微粉の漏れ出しを防止することができる。
【0092】
本実施形態による熱遮蔽部材20も、第1及び第2の実施の形態による熱遮蔽部材と同様の効果を奏することができる。すなわち、構成部品の一部を取り外したり交換したりすることで開口サイズを3段階に変更することができる。したがって、結晶直径が異なる3種類のシリコン単結晶の引き上げを同一のCZ引き上げ炉を用いて行うことができ、結晶直径が異なる3種類のシリコン単結晶の品質のばらつきを低減することができる。
【0093】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0094】
例えば、上記実施形態において、第1断熱部31、第2断熱部32及び第3断熱部33の各々は単一の部品として構成されているが、高さ方向に分割された複数の部品の組み合わせからなるものであってもよい。
【0095】
また熱遮蔽部材20の内周面を構成する内壁部42の内周面は、上端部から下端部に向かって斜めに真っすぐ傾斜した平坦面であるが、途中に段差が設けられていてもよい。例えば、内壁部42の内周面の周方向の一部或いは全周に取っ手として機能する段差を設けることにより、内壁部42の着脱の作業性を向上させることができる。そのような段差は、断熱部材30を構成する第1~第3断熱部31~33に設けられてもよく、壁部材40の外壁部41の内側に収容されるすべての部品に設けることができる。
【0096】
さらに上記実施形態においては、CZ法によるシリコン単結晶の製造に用いられる熱遮蔽部材を例に挙げたが、本発明はシリコン単結晶に限定されるものではなく、種々の単結晶の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 単結晶製造装置
2 シリコン融液
3 シリコン単結晶
10 チャンバー
10a メインチャンバー
10b プルチャンバー
10c ガス導入口
10d ガス排出口
11 石英ルツボ
12 黒鉛ルツボ
13 回転シャフト
14 シャフト駆動機構
15 ヒーター
16 断熱材
17 ワイヤー
18 ワイヤー巻き取り機構
20 熱遮蔽部材
20a 開口
30 断熱部材
30a 断熱部材の外周面
30b 断熱部材の内周面
30c 断熱部材の下端面
30d 断熱部材の上端面
31 第1断熱部
31a 外周面
31b 内周面
31c 下端面
31d 上端面
32 第2断熱部
32a 外周面
32b 内周面
32c 下端面
32d 上端面
33 第3断熱部
33a 外周面
33b 内周面
33c 下端面
33d 上端面
40 壁部材
41 外壁部
41u テーパー面
41v 突起部
42 内壁部
42X 第1内壁部
42Y 第2内壁部
42Z 第3内壁部
42t テーパー面
43 底壁部
43X 第1底壁部
43Y 第2底壁部
43Z 第2底壁部
43t テーパー面
43u テーパー面
43v フック部