(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067406
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178604
(22)【出願日】2021-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】大内田 聡
(72)【発明者】
【氏名】向山 広記
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 昴
(72)【発明者】
【氏名】木原 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】戸村 幕樹
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA01
5F004CA04
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA03
5F004DA12
5F004DA15
5F004DA16
5F004DA20
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004EA02
5F004EA03
5F004EA06
5F004EA07
5F004EA28
5F004EB01
5F004EB04
(57)【要約】
【課題】エッチングレートを向上させる技術を提供する。
【解決手段】
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法が提供される。この方法は(a)シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)HFガスと、C
xF
yガス(x及びyは1以上の整数である)及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを含む処理ガスからプラズマを生成し、積層膜をエッチングする工程と、を含み、(b)の工程において、基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、
(a)シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)HFガスと、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを含む処理ガスからプラズマを生成し、前記積層膜をエッチングする工程と、を含み、
前記(b)の工程において、前記基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給される、プラズマ処理方法。
【請求項2】
前記基板は、前記積層膜上に少なくとも一つの開口を規定する炭素含有膜を有する、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記炭素含有膜は、フォトレジスト膜、スピンオンカーボン膜又はアモルファスカーボン膜である、請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記CxFyガスは、C3F6ガス、C4F8ガス、C4F6ガス及びC3F8ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記リン含有ガスは、ハロゲン化リンガスである、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化リンガスは、フッ化リンガスである、請求項5に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記リン含有ガスは、PF3ガス、PF5ガス、POF3ガス、HPF6ガス、PCl3ガス、PCl5ガス、POCl3ガス、PBr3ガス、PBr5ガス、POBr3ガス、PI3ガス、P4O10ガス、P4O8ガス、P4O6ガス、PH3ガス、Ca3P2ガス、H3PO4ガス及びNa3PO4ガスからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記処理ガスは、酸素含有ガスをさらに含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記酸素含有ガスは、O2、CO、CO2、H2O及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスである、請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記処理ガスはCuHvFwガス(u及びvは1以上の整数であり、wは0以上の整数である)をさらに含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記CuHvFwガスは、CH2F2ガス、CHF3ガス、CH3Fガス、C4H2F6ガス、C3H2F4ガス及びCH4ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスである、請求項10に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記バイアスDC信号は、電圧レベルが異なる2つの期間を交互に含む電圧パルスである、請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
前記(b)の工程は、
(b1)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを第1の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して前記積層膜をエッチングする工程と、
(b2)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを、前記第1の流量比と異なる第2の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して、前記積層膜をエッチングする工程と、を含む、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項14】
前記(b)の工程において、前記(b1)の工程と前記(b2)の工程とを交互に繰り返す、請求項13に記載のプラズマ処理方法。
【請求項15】
前記(b)の工程は、
(b3)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを、前記第1の流量比及び前記第2の流量比と異なる第3の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して前記積層膜をエッチングする工程をさらに含む、請求項13に記載のプラズマ処理方法。
【請求項16】
前記(b)の工程は、
(b4)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを第4の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して、前記積層膜をエッチングする工程と、
(b5)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを前記第4の流量比と異なる第5の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して、前記積層膜をエッチングする工程と、を含む、請求項10乃至請求項12のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項17】
前記(b)の工程において、前記(b4)の工程と前記(b5)の工程とを交互に繰り返す、請求項16に記載のプラズマ処理方法。
【請求項18】
前記(b)の工程は、
(b6)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを、前記第4の流量比及び前記第5の流量比と異なる第6の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して前記積層膜をエッチングする工程をさらに含む、請求項16に記載のプラズマ処理方法。
【請求項19】
チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、
(a)前記チャンバ内に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、
(b)前記チャンバ内でプラズマを生成する工程と、
(c)前記プラズマに含まれるHF種と、CxFy種(x及びyは1以上の整数である)及びリン活性種により、前記積層膜をエッチングする工程と、を含み、
前記(b)の工程において、前記基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給される、プラズマ処理方法。
【請求項20】
チャンバ、前記チャンバ内に設けられた基板支持部、電源、及び、制御部を備え、
前記制御部は、
(a)シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板を前記基板支持部上に提供する制御と、
(b)前記電源からの電力により、HFガスと、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)及びリン含有ガスの少なくともいずれかのガスとを含む処理ガスからプラズマを生成して、前記積層膜をエッチングする制御とを実行し、
前記(b)の制御において、前記基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、前記電源から、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給される、プラズマ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理方法及びプラズマ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに異なる誘電率を有する多層膜をエッチングする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、エッチングレートを向上させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、(a)シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)HFガスと、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを含む処理ガスからプラズマを生成し、前記積層膜をエッチングする工程と、を含み、前記(b)の工程において、前記基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給される、プラズマ処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、エッチングレートを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】例示的なプラズマ処理システムを概略的に示す図である。
【
図2】本処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】基板Wの断面構造の一例を模式的に示す図である。
【
図8】本処理方法の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、(a)シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)HFガスと、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを含む処理ガスからプラズマを生成し、積層膜をエッチングする工程と、を含み、(b)の工程において、基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給されるプラズマ処理方法が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、基板は、積層膜上に少なくとも一つの開口を規定する炭素含有膜を有する。
【0011】
一つの例示的実施形態において炭素含有膜は、フォトレジスト膜、スピンオンカーボン膜又はアモルファスカーボン膜である。
【0012】
一つの例示的実施形態において、CxFyガスは、C3F6ガス、C4F8ガス、C4F6ガス及びC3F8ガスからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0013】
一つの例示的実施形態において、リン含有ガスは、ハロゲン化リンガスである。
【0014】
一つの例示的実施形態において、ハロゲン化リンガスは、フッ化リンガスである。
【0015】
一つの例示的実施形態において、リン含有ガスは、PF3ガス、PF5ガス、POF3ガス、HPF6ガス、PCl3ガス、PCl5ガス、POCl3ガス、PBr3ガス、PBr5ガス、POBr3ガス、PI3ガス、P4O10ガス、P4O8ガス、P4O6ガス、PH3ガス、Ca3P2ガス、H3PO4ガス及びNa3PO4ガスからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0016】
一つの例示的実施形態において、処理ガスは、酸素含有ガスをさらに含む。
【0017】
一つの例示的実施形態において、酸素含有ガスは、O2、CO、CO2、H2O及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスである。
【0018】
一つの例示的実施形態において、処理ガスはCuHvFwガス(u及びvは1以上の整数であり、wは0以上の整数である)をさらに含む。
【0019】
一つの例示的実施形態において、CuHvFwガスは、CH2F2ガス、CHF3ガス、CH3Fガス、C4H2F6ガス、C3H2F4ガス及びCH4ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスである。
【0020】
一つの例示的実施形態において、バイアスDC信号は、電圧レベルが異なる2つの期間を交互に含む電圧パルスである。
【0021】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程は、(b1)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを第1の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して積層膜をエッチングする工程と、(b2)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを、第1の流量比と異なる第2の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して、積層膜をエッチングする工程と、を含む。
【0022】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程において、(b1)の工程と(b2)の工程とを交互に繰り返す。
【0023】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程は、(b3)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを、第1の流量比及び第2の流量比と異なる第3の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して積層膜をエッチングする工程をさらに含む。
【0024】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程は、(b4)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを第4の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して、積層膜をエッチングする工程と、(b5)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを第4の流量比と異なる第5の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して、積層膜をエッチングする工程と、を含む。
【0025】
一つの例示的実施形態において、(b4)の工程と(b5)の工程とを交互に繰り返す。
【0026】
一つの例示的実施形態において、(b)の工程は、(b6)HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを、第4の流量比及び第5の流量比と異なる第6の流量比で含む処理ガスからプラズマを生成して積層膜をエッチングする工程をさらに含む。
【0027】
一つの例示的実施形態において、チャンバを有するプラズマ処理装置において実行されるプラズマ処理方法であって、(a)チャンバ内に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板をチャンバ内の基板支持部上に提供する工程と、(b)チャンバ内でプラズマを生成する工程と、(c)プラズマに含まれるHF種と、CxFy種(x及びyは1以上の整数である)及びリン活性種により、積層膜をエッチングする工程と、を含み、(b)の工程において、基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給されるプラズマ処理方法が提供される。
【0028】
一つの例示的実施形態において、チャンバ、チャンバ内に設けられた基板支持部、電源、及び、制御部を備え、制御部は、(a)シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを含む積層膜を有する基板を基板支持部上に提供する制御と、(b)電源からの電力により、HFガスと、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)及びリン含有ガスの少なくともいずれかのガスとを含む処理ガスからプラズマを生成して、積層膜をエッチングする制御とを実行し、(b)の制御において、基板支持部は、0℃以上70℃以下の温度に制御されるとともに、電源から、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給されるプラズマ処理システムが提供される。
【0029】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
<プラズマ処理システムの構成例>
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。
図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0031】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0032】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、エッジリングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0033】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、RF又はDC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよく、この場合、RF又はDC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号又はDC信号がRF又はDC電極に接続される場合、RF又はDC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材とRF又はDC電極との両方が2つの下部電極として機能してもよい。
【0034】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0035】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0036】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0037】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0038】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0039】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0040】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0041】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0042】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0043】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0044】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0045】
<プラズマ処理方法の一例>
図2は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理方法(以下「本処理方法」ともいう。)を示すフローチャートである。
図2に示すように、本処理方法は、基板を提供する工程ST1と、基板上の積層膜をエッチングする工程ST2とを含む。各工程における処理は、
図1に示すプラズマ処理システムで実行されてよい。以下では、制御部2がプラズマ処理装置1の各部を制御して、基板Wに対して本処理方法を実行する場合を例に説明する。
【0046】
(工程ST1:基板の提供)
工程ST1において、基板Wは、プラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に提供される。基板Wは、基板支持部11の上面に、上部電極と対向するように配置され、静電チャック1111により基板支持部11に保持される。
【0047】
図3は、工程ST1で提供される基板Wの断面構造の一例を示す図である。基板Wは、下地膜UF上に、積層膜LF及びマスク膜MFがこの順で形成されている。基板Wは、例えば、DRAM、3D-NANDフラッシュメモリ等の半導体メモリデバイスを含む半導体デバイスの製造に用いられてよい。
【0048】
下地膜UFは、例えば、シリコンウェハやシリコンウェハ上に形成された有機膜、誘電体膜、金属膜、半導体膜等でよい。下地膜UFは、複数の膜が積層されて構成されてよい。
【0049】
積層膜LFは、シリコン酸化膜(SiOx膜)LF1とシリコン窒化膜LF2とを含む。積層膜LFは、シリコン酸化膜LF1とシリコン窒化膜LF2とが交互に複数積層されて構成された多層膜であってよい。積層膜LFは、本処理方法によりエッチングがされる被エッチング膜である。
【0050】
下地膜UF及び/又は積層膜LFは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。下地膜UF及び/又は積層膜LFは、平坦な膜であってよく、また、凹凸を有する膜であってもよい。
【0051】
マスク膜MFは、積層膜LF上に形成されている。マスク膜MFは、積層膜LF上において少なくとも一つの開口OPを規定する。開口OPは、積層膜LF上の空間であって、マスク膜MFの側壁に囲まれている。すなわち、
図3において、積層膜LFの上面は、マスク膜MFによって覆われた領域と、開口OPの底部において露出した領域とを有する。
【0052】
開口OPは、基板Wの平面視、すなわち、基板Wを
図3の上から下に向かう方向に見た場合において、任意の形状を有してよい。当該形状は、例えば、円、楕円、矩形、線やこれらの1種類以上を組み合わせた形状であってよい。マスク膜MFは、複数の側壁を有し、複数の側壁が複数の開口OPを規定してもよい。複数の開口OPは、それぞれ線形状を有し、一定の間隔で並んでライン&スペースのパターンを構成してもよい。また、複数の開口OPは、それぞれ穴形状を有し、アレイパターンを構成してもよい。
【0053】
マスク膜MFは、例えば、炭素含有膜である。炭素含有膜は、一例では、アモルファスカーボン膜、スピンオンカーボン膜、フォトレジスト膜であってよい。マスク膜MFは、1つの層からなる単層マスクでも、2つ以上の層からなる多層マスクであってもよい。マスク膜MFは、CVD法、スピンコート法等により形成されてよい。開口OPは、マスク膜MFをエッチングすることで形成されてよい。マスク膜MFは、リソグラフィによって形成されてもよい。
【0054】
基板Wの各構成を形成するプロセスの少なくとも一部は、プラズマ処理チャンバ10内で行われてよい。一例では、マスク膜MFをエッチングして開口OPを形成する工程は、プラズマ処理チャンバ10で実行されてよい。すなわち、開口OP及び後述する積層膜LFのエッチングは、同一のチャンバ内で連続して実行されてよい。また、基板Wの各構成の全部又は一部がプラズマ処理装置1の外部の装置又はチャンバで形成された後、基板Wがプラズマ処理装置1のプラズマ処理空間10s内に搬入され、基板支持部11の上面に配置されてもよい。
【0055】
(工程ST2:積層膜LFのエッチング)
工程ST2において、積層膜LFがエッチングされる。工程ST2は、基板支持部11の温度を設定する工程ST21と、処理ガスを供給する工程ST22と、プラズマを生成する工程ST23とを含む。
【0056】
工程ST21において、温調モジュールにより、基板支持部11の温度を0℃以上70℃以下の設定温度に調整する。設定温度は、1℃以上、60度以下でよく、また、30度以上60度以下でもよい。基板支持器11の温度は、工程ST2における以降の処理において設定温度に維持される。一例では、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、流路1110aを流れる伝熱流体の温度を設定温度に調整又は維持することを含む。また、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、基板支持部11の温度が設定温度になるように、流路1110aを流れる伝熱流体の温度を設定温度と異なる温度に調整又は維持することを含む。なお、流路1110aに伝熱流体が流れ始めるタイミングは、基板Wが基板支持部11に載置される前でも後でもよく、また同時でもよい。また他の例として、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、基板Wの温度を設定温度に調整又は維持することを含む。また、基板支持部11の温度を調整又は維持することは、基板支持部11の温度が設定温度になるように、基板Wの温度を設定温度とは異なる温度に調整又は維持することを含む。また、温度を「調整」又は「維持」することは、制御部2において当該温度が入力、選択又は記憶されることを含む。
【0057】
工程ST22において、処理ガスがプラズマ処理空間10s内に供給される。処理ガスは、HFガスを含む。HFガスは、処理ガスに対して、例えば、50体積%以上、60体積%以上又は70体積%以上含んでよい。HFガスとしては、高純度のもの、例えば、純度が99.999%以上のものを用いることができる。処理ガスは、HFガスに加えて、CxFyガス(x及びyは1以上の整数である)又はリン含有ガスと含む。処理ガスは、CxFyガスとリン含有ガスとの双方を含んでもよい。CxFyガスは、シリコン酸化膜LF1のエッチングレート向上に寄与し得る。リン含有ガスは、HFガスのシリコン窒化膜又はシリコン酸化膜への吸着を促進し、これらの膜のエッチングレート向上に寄与し得る。
【0058】
HFガスに対するCxFyガス又はリン含有ガスの流量比は、積層膜LFの構成やマスク膜MFの有するパターンに基づいて適宜設定されてよい。例えば、当該流量比は、積層膜LF中のシリコン酸化膜LF1の構成比に基づいて設定されてよい。一例では、積層膜LF中のシリコン酸化膜LF1の構成比が大きくなるほど、HFガスに対するCxFyガス又はリン含有ガスの流量比を大きくしてよい。なお、処理ガスは、HFガスに代えて又はHFガスとともに、チャンバ内でHF種を生成可能なガスを含んでよい。HF種は、フッ化水素のガス、ラジカル及びイオンの少なくともいずれかを含む。HF種を生成可能なガスとしては、例えば、CH2F2ガス、C3H2F4ガス、C3H2F6ガス、C3H3F5ガス、C4H2F6ガス、C4H5F5ガス、C4H2F8ガス、C5H2F6ガス、C5H2F10ガス及びC5H3F7ガスからなる群から選択される少なくとも1種を用いてよい。一例では、HF種を生成可能なガスとして、CH2F2ガス、C3H2F4ガス及びC4H2F6ガスからなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0059】
CxFyガスは、C3F6ガス、C4F6ガス、C4F8ガス及びC3F8ガスからなる群から選択される少なくとも1種でよい。
【0060】
リン含有ガスは、リン含有分子を含むガスである。リン含有分子は、十酸化四リン(P4O10)、八酸化四リン(P4O8)、六酸化四リン(P4O6)等の酸化物であってもよい。十酸化四リンは、五酸化二リン(P2O5)と呼ばれることがある。リン含有分子は、三フッ化リン(PF3)、五フッ化リン(PF5)、三塩化リン(PCl3)、五塩化リン(PCl5)、三臭化リン(PBr3)、五臭化リン(PBr5)、ヨウ化リン(PI3)のようなハロゲン化物(ハロゲン化リン)であってもよい。即ち、リン含有分子は、フッ化リン等、ハロゲン元素としてフッ素を含んでもよい。或いは、リン含有分子は、ハロゲン元素としてフッ素以外のハロゲン元素を含んでもよい。リン含有分子は、フッ化ホスホリル(POF3)、塩化ホスホリル(POCl3)、臭化ホスホリル(POBr3)のようなハロゲン化ホスホリルであってよい。リン含有分子は、ホスフィン(PH3)、リン化カルシウム(Ca3P2等)、リン酸(H3PO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)等であってよい。リン含有分子は、フルオロホスフィン類(HgPFh)であってよい。ここで、gとhの和は、3又は5である。フルオロホスフィン類としては、HPF2、H2PF3が例示される。処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、上記のリン含有分子のうち一つ以上のリン含有分子を含み得る。例えば、処理ガスは、少なくとも一つのリン含有分子として、PF3、PCl3、PF5、PCl5、POCl3、PH3、PBr3、又はPBr5の少なくとも一つを含み得る。なお、処理ガスに含まれる各リン含有分子が液体又は固体である場合、各リン含有分子は、加熱等によって気化されてプラズマ処理空間10s内に供給され得る。
【0061】
処理ガスは、酸素含有ガスを更に含んでよい。酸素含有ガスは、エッチングにおけるマスク膜MFの閉塞を抑制し得る。酸素含有ガスとしては、例えば、O2、CO、CO2、H2O及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスを使用してよい。一例では、処理ガスは、H2O以外の酸素含有ガス、すなわち、O2、CO、CO2及びH2O2からなる群から選択される少なくとも1種のガスを含んでよい。酸素含有ガスの流量は、CxFyガスの流量に応じて調整してよい。
【0062】
処理ガスは、CuHvFwガス(u及びvは1以上の整数であり、wは0以上の整数である)を更に含んでよい。CuHvFwガスは、CH2F2ガス、CHF3ガス、CH3Fガス、C4H2F6ガス、C3H2F4ガス及びCH4ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスでよい。
【0063】
処理ガスは、ArやKr等の貴ガスを更に含んでよい。また処理ガスは、NF3ガスを更に含んでよい。
【0064】
工程ST23において、第1のRF生成部31aからソースRF信号(RF電力)が下部電極及び/又は上部電極に供給される。これにより、プラズマ処理空間10s内に供給された処理ガスからプラズマが生成される。また、バイアス信号(電力)として、第2のRF生成部31bから、バイアスRF信号が下部電極に供給される。これにより基板Wにバイアス電位が発生する。生成されたプラズマ中のイオン、ラジカルといった活性種が基板Wに引きよせられ、積層膜LFがエッチングされる。すなわち、マスク膜MFの開口OPに対応する部分が深さ方向(
図3の上から下に向かう方向)にエッチングされ積層膜LFに凹部が形成される。なお、ソースRF信号の供給を開始するタイミングとバイアス信号の供給を開始するタイミングとは、同時でも異なってもよい。
【0065】
バイアス信号(電力)として、バイアスRF信号に代えて、バイアスDC信号を用いてよい。すなわち、DC生成部32aから負極性のバイアスDC信号を下部電極に供給して、基板Wにバイアス電位を発生させてよい。ソースRF信号及びバイアス信号は、双方が連続波であってよく、また一方が連続波で他方がパルス波であってよい。
【0066】
バイアス信号としてバイアスRF信号を用いる場合、当該バイアスRF信号の電力の実効値は、10kW以上である。当該バイアスRF信号の電力の実効値は、30kW以下でよい。バイアス信号として負極性のバイアスDC信号を用いる場合、当該バイアスDC信号の電圧の絶対値(パルス波の場合は電圧の絶対値の実効値)は、4kV以上である。当該バイアスDC信号の電圧の絶対値(パルス波の場合は電圧の絶対値の実効値)は、15kV以下でよい。
【0067】
以下、本処理方法を評価するために行った実験について説明する。本開示は、以下の実験によって何ら限定されるものではない。
【0068】
(実験1)
実験1では、プラズマ処理装置1において、以下の条件で、プラズマを生成してシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、炭素含有膜をそれぞれエッチングし、エッチングレートを測定した。炭素含有膜としてはアモルファスカーボン膜を用いた。
処理ガス:HFガス、Arガス
基板支持部の設定温度:10℃
チャンバ圧力:25mT
ソースRF信号:40MHz/5.5kW
バイアスRF信号:400kHz/15kW
【0069】
図4は、実験1の測定結果を示すグラフである。
図4の縦軸は、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、炭素含有膜の各エッチングレート(ER)[nm/min]を示す。
図4に示すように、シリコン窒化膜のエッチングレートは、炭素含有膜のエッチングレートに比べて十分高かった。これは、本処理方法の設定温度において、エッチャントであるプラズマ中のHF種がシリコン窒化膜に吸着され、反応性イオンエッチングが進行し得ることを示している。これに対し、シリコン酸化膜のエッチングレートは炭素含有膜のエッチングレートと同程度であり低かった。これは、エッチャントであるプラズマ中のHF種がシリコン酸化膜に吸着されず、主としてスパッタリングによるエッチングが生じたためと考えられる。すなわち、本処理方法の設定温度においては、エッチャントであるプラズマ中のHF種がシリコン酸化膜に吸着されにくいことを示している。実験1からは、本処理方法の設定温度において、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜とを含む積層膜のエッチングレートを向上させるためには、上記の処理ガスでは十分ではないことが分かる。
【0070】
(実験2)
実験2では、プラズマ処理装置1において、以下の3つのパターンの処理ガスを用いて、プラズマを生成し、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、炭素含有膜をそれぞれエッチングし、エッチングレートを測定した。炭素含有膜としてはアモルファスカーボン膜を用いた。その余の条件は、実験1と同一である。パターン2及びパターン3は、本処理方法にかかる処理ガスの一例である。パターン3のHFガスの流量は、パターン2のHFガスの流量の2倍であった。
パターン1:C4F8ガス及びO2ガス
パターン2:C4F8ガス、HFガス及びO2ガス
パターン3:C4F8ガス、HFガス及びO2ガス
【0071】
図5は、実験2の測定結果を示すグラフである。
図5の縦軸は、パターン1乃至3におけるシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、炭素含有膜の各エッチングレート(ER)[nm/min]を示す。
図5に示すとおり、シリコン酸化膜のエッチングレートは、パターン1乃至3のいずれにおいても炭素含有膜に対して十分に高かった。シリコン窒化膜のエッチングレートは、処理ガスとしてHFガスを含まない場合(パターン1)、炭素含有膜よりも低く、HFガスを含む場合、急激に増加し、炭素含有膜よりも十分に高くなった。炭素含有膜のエッチングレートは、HFガスの流量を2倍に増加させても変化は小さく(パターン2及びパターン3)、パターン1乃至3のいずれにおいても低かった。実験2からは、本処理方法の設定温度において、処理ガスとしてHFガスに加えてC
4F
8ガスを用いる場合、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の双方のエッチングレートを高めつつ、炭素含有膜に対する選択比を高め得ることが分かる。
【0072】
(実験3)
実験3では、プラズマ処理装置1において、以下の3つのパターンの処理ガスを用いて、プラズマを生成し、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、炭素含有膜をそれぞれエッチングし、エッチングレートを測定した。炭素含有膜としてはアモルファスカーボン膜を用いた。その余の条件は、実験1と同一である。パターン6は、本処理方法にかかる処理ガスの一例である。
パターン4:C4F8ガス、CH2F2ガスHFガス及びO2ガス
パターン5:C4F8ガス、C3H2F4ガス及びO2ガス
パターン6:C4F8ガス、HFガス及びO2ガス
【0073】
図6は、実験3の測定結果を示すグラフである。
図6の縦軸は、パターン4乃至6におけるシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、炭素含有膜の各エッチングレート(ER)[nm/min]を示す。
図6に示すとおり、処理ガスとしてHFガスを含むパターン6の場合、処理ガスとしてCH
2F
2ガスやC
3H
2F
4ガスを含むパターン4及び5に比べて、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜のエッチングレートが10~20%程度向上した。また炭素含有膜のエッチングレートは、パターン6の場合でも、パターン4及び5と同程度であった。実験3からは、本処理方法の設定温度において処理ガスとしてHFガスを含む場合、CH
2F
2ガス又はC
3H
2F
4ガスを含む場合に比べて、エッチングレートを高めつつも、炭素含有膜に対する高い選択比を維持し得ることが分かる。
【0074】
(実験4)
実験4では、プラズマ処理装置1において、HFガス、リン含有ガスを用いてプラズマを生成し、シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、炭素含有膜をそれぞれエッチングし、エッチングレートを測定した。炭素含有膜としてはアモルファスカーボン膜を用いた。リン含有ガスとしては、PF3ガスを用い、処理ガス全体に対する流量比(体積%)を、0%、2%、7%、11%、20%、26%と変化させてそれぞれエッチングレートを測定した。
た。その余の条件は、実験1と同一である。
【0075】
図7は、実験4の測定結果を示すグラフである。
図7において、横軸は、処理ガス中のリン含有ガスの流量比[体積%]を示す。縦軸は、エッチングレート(ER)[nm/min]を示す。
図7に示すとおり、処理ガスに含まれるリン含有ガスの流量比が増加するに従って、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜のエッチングレートが大幅に増加した。処理ガスにリン含有ガスを26%含む場合のエッチングレートは、リン含有ガスを含まない場合(0体積%)に比べて、シリコン酸化膜で5.6倍、シリコン窒化膜で2.5倍であった。これは、リン含有ガスにより、エッチャントであるHFガスのシリコン窒化膜及びシリコン酸化膜への吸着が促進されたためであると考えられる。また
図7に示すとおり、処理ガスに含まれるリン含有ガスの流量が増加しても炭素含有膜のエッチングレートは増加しなかった。実験4からは、本処理方法の設定温度において処理ガスとしてHFガスに加えてリン含有ガスを用いる場合、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の双方のエッチングレートを高めつつ、炭素含有膜に対する選択比を高め得ることが分かる。
【0076】
<実施例>
次に、本処理方法の実施例について説明する。本開示は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0077】
(実施例1及び2)
プラズマ処理装置1を用いて本処理方法を適用し、
図3に示す基板Wの積層膜LFをエッチングした。実施例1及び実施例2は、処理ガスとして、HFガス、PF
3ガス及びArガスを用いた。リン含有ガスの処理ガスに対する流量比(体積%)は、実施例1は13%であり、実施例2は20%であった。その他の条件は、実施例1及び実施例2ともに以下のとおりである。
基板支持部の設定温度:10℃
チャンバ圧力:25mT
ソースRF信号:40MHz/5.5kW
バイアスRF信号:400kHz/15kW
【0078】
(参考例1)
参考例では、処理ガスを以下のとおり変更した以外は、実施例と同様の条件で基板Wの積層膜LFをエッチングした。
参考例1:HFガス、Arガス
【0079】
実施例1及び2の積層膜LFのエッチングレートは、それぞれ512[nm/min]、518[nm/min]であった。これに対し、参考例1のエッチングレートは、231[nm/min]であった。すなわち、実施例1及び実施例2ともに、参考例1に比べて積層膜LFのエッチングレートが大幅に向上した。
【0080】
本処理方法では、処理ガスとして、HFガスに加えて、CxFyガス又はリン含有ガスを用いる。これにより、積層膜LFを構成するシリコン酸化膜LF1及びシリコン窒化膜LF2の双方のエッチングレートを向上させ、かつマスク膜MFに対する選択比を向上し得る。
【0081】
また、本処理方法では、エッチングに際してバイアス信号として、10kW以上のバイアスRF信号又は4kV以上のバイアスDC信号が供給される。高パワーのバイアスRF信号を用いることで、積層膜LFのエッチングにより生じる反応副生成物の揮発が促進され得る。例えば、シリコン窒化膜LF2のエッチングにおいて生じるケイフッ化アンモニウム(AFS)を主体とする反応副生成物の揮発が促進され得る。これにより、積層膜LFのエッチングレートを向上させ得る。
【0082】
<本処理方法の変形例>
図8は、本処理方法の変形例を示すフローチャートである。
図8に示すように、本変形例は、工程ST21までは本処理方法と同一であり、工程ST21より後の処理が本処理方法と異なる。本変形例の積層膜LFをエッチングする工程ST2Aは、基板支持部の温度を調整する工程ST21後に、第1の処理ガスを供給する工程ST22a、第1の処理ガスからプラズマを生成する工程ST23a、第2の処理ガスを供給する工程ST22b、第2の処理ガスからプラズマを生成する工程ST23b、及び、エッチングの終了を判定する工程ST24を有する。工程ST2Aでは、工程ST24でエッチングが終了したと判断されるまで、工程ST22a~工程ST23bが繰りかえされる。
【0083】
第1の処理ガス及び第2の処理ガスは、HFガスと、CxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを含む。第1の処理ガス及び第2の処理ガスは、本処理方法と同様にCuHvFwガスや酸素含有ガス等のその他のガスを更に含んでよい。
【0084】
第1の処理ガスと第2の処理ガスとは、処理ガスの構成や流量が異なってよい。一例では、第1の処理ガスは、HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを第1の流量比で含んでよい。そして、第2の処理ガスは、HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを、第1の流量比と異なる第2の流量比で含んでよい。
【0085】
一例では、第1の処理ガスは、HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを第4の流量比で含んでよい。そして、第2の処理ガスは、HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを、第4の流量比とは異なる第5の流量比で含んでよい。
【0086】
本変形例において、工程ST23bと工程ST24との間に、第3の処理ガスを供給する工程及び、第3の処理ガスからプラズマを生成する工程をさらに備えてもよい。第3の処理ガスは、HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとを、第1の流量比及び第2の流量比と異なる第3の流量比で含んでよい。また、第3の処理ガスは、HFガスとCxFyガス及びリン含有ガスの少なくともいずれかとCuHvFwガスとを、第4の流量比及び第5の流量比とは異なる第6の流量比で含んでよい。
【0087】
また、本変形例において、工程ST24を備えず、第1の処理ガス、第2の処理ガス及び第3の処理ガスを用いた上記の工程を一回ずつ行ってもよい。
【0088】
本変形例では、積層膜LFを構成するシリコン酸化膜LF1及びシリコン窒化膜LF2の構成比や積層膜LFのアスペクト比等に応じて処理ガスの構成を最適化し得る。これにより、積層膜LF全体のエッチングレートを向上させ得る。
【0089】
本処理方法は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、本処理方法は、容量結合型のプラズマ処理装置1以外にも、誘導結合型プラズマやマイクロ波プラズマ等、任意のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置を用いて実行してよい。
【符号の説明】
【0090】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、10……プラズマ処理チャンバ、10s……プラズマ処理空間、11……基板支持部、13……シャワーヘッド、20……ガス供給部、31a……第1のRF生成部、31b……第2のRF生成部、32a……第1のDC生成部、MF…マスク膜、OP…開口、LF…積層膜、LF1……シリコン酸化膜、LF2……シリコン窒化膜、UF…下地膜、W…基板