IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ビーム抜き取り装置および方法 図1
  • 特開-ビーム抜き取り装置および方法 図2
  • 特開-ビーム抜き取り装置および方法 図3
  • 特開-ビーム抜き取り装置および方法 図4
  • 特開-ビーム抜き取り装置および方法 図5
  • 特開-ビーム抜き取り装置および方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006761
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ビーム抜き取り装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/06 20060101AFI20230111BHJP
   B65G 47/74 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C25C7/06 301Z
B65G47/74 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109521
(22)【出願日】2021-06-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 英和
【テーマコード(参考)】
3F070
4K058
【Fターム(参考)】
3F070AA28
4K058AA13
4K058BA21
4K058BB01
4K058FA02
4K058FA14
(57)【要約】
【課題】リボンとビームとの係合を確実に解除させて、ビームの抜き取り不良を抑止することができる、ビーム抜き取り装置および方法を提供する。
【解決手段】上下動可能に配置されたビーム支持用フレーム部材27と、ビーム支持用フレーム部材27の下端に取り付けられ、かつ、カソード1の進行方向に伸長する押えローラ29とを有する、ビーム支持装置26と、傾転装置12の幅方向一方側の外側に配置され、複数のカソード1のビーム3を同時に押し出す、押し出しシリンダ16と、傾転装置12の幅方向他方側に配置され、押し出しシリンダ16により押し出されたビーム3を引き抜く、抜き取りローラ18と、ビーム支持装置26のうちの、カソード1の進行方向の一方側の端部に配置され、傾転装置12に載置されたカソード1側を向き、かつ、上方に向かうほどカソード1側に向かう方向に傾斜した傾斜面を有する、調整ガイド部材30と、を備える、
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾転装置上に所定の進行方向に移送および載置され、垂直な積層状態で集約された複数のカソードからビームを同時に抜き取るためのビーム抜き取り装置であって、
前記ビーム抜き取り装置は、上下動可能に配置されたビーム支持用フレーム部材と、該ビーム支持用フレーム部材の下端に取り付けられ、かつ、前記カソードの進行方向に伸長する押えローラとを有する、ビーム支持装置と、
前記傾転装置の幅方向一方側の外側に配置され、前記複数のカソードの前記ビームを同時に押し出す、押し出しシリンダと、
前記傾転装置の幅方向他方側に配置され、前記押し出しシリンダにより押し出された前記ビームを引き抜く、抜き取りローラと、
前記ビーム支持装置のうちの、前記カソードの進行方向の一方側の端部に配置され、前記傾転装置に載置された前記カソード側を向き、かつ、上方に向かうほど該カソード側に向かう方向に傾斜した傾斜面を有する、調整ガイド部材と、
を備える、ビーム抜き取り装置。
【請求項2】
前記調整ガイド部材は、前記ビーム支持装置のうちの前記カソードの進行方向後側の端部に取り付けられている、請求項1に記載のビーム抜き取り装置。
【請求項3】
前記調整ガイド部材は、前記ビーム支持装置に対して、前記カソードの進行方向における位置を移動可能に取り付けられている、請求項1または2に記載のビーム抜き取り装置。
【請求項4】
傾転装置に載置され、垂直な積層状態で集約された複数のカソードからビームを同時に抜き取るためのビームに抜き取り方法であって、
請求項1~3のいずれかに記載のビーム抜き取り装置を用いて、
前記傾転装置に載置された前記複数のカソードに向けて、前記ビーム支持装置を降下させて、前記ビームを支持する工程と、
前記ビーム支持装置により支持された前記ビームを、前記押し出しシリンダにより同時に押し出す工程と、
押し出された前記ビームを、前記抜き取りローラにより同時に抜き取る工程と、
を備え、
前記ビームを支持する工程において、前記ビーム支持装置を降下させる際に、前記調整ガイド部材の前記傾斜面で、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の最も一方側に位置するカソードを押圧して、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の一方側に位置する1枚以上のカソードの傾きを調整する、
ビーム抜き取り方法。
【請求項5】
前記調整ガイド部材により、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の最も後側に位置するカソードを押圧する、請求項4に記載のビーム抜き取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅電解製錬などの非鉄金属製錬の電解工程において精製されたカソードから、電解精製中に使用したビームを抜き取るための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅電解製錬などの非鉄金属製錬の電解工程においては、電解液を満たした電解槽中に、アノード(陽極板)とカソード(陰極板)を交互に配置して、通電することにより、カソードの表面上に高純度の金属を電着させて、最終的に得られたカソードを製品としている。
【0003】
電解精製工程においてカソードに使用する種板は、ステンレスなどの母板をカソードにして上記と同様の電解を行い、目的金属が母板に薄く電着したところで、この電着物を母板から剥ぎ取ったものである。この種板を電解工程で使用するカソードとするために、種板に対し、同じ種板を裁断してループ状に形成して得たリボン(吊り手)を用いて、吊り下げ用の金属製のビームを取り付ける。このビームは、カソードの吊り下げ用のハンガーとして機能するだけでなく、カソードに通電する際の導体としても機能する。
【0004】
電解工程で製造されたカソードは、クレーンによって電解槽から引き揚げられ、洗浄工程に送られ、洗浄装置によって、カソードの表面に残存する電解液の回収および製品の汚染防止のために、酸あるいは水などの洗浄液により洗浄される。洗浄後のカソードは、所定枚数ごとに集約され、ビームを抜き取り、集約されたカソードを傾転させて積層し、結束され、出荷あるいは保管される。
【0005】
たとえば、銅電解製錬では、最終的なカソードとして得られる電気銅は、10枚から20枚に集約され、1日あたり800枚から2650枚程度が搬出される。電気銅からビームを抜き取る工程では、ビーム抜き取り装置を用いて、集約された電気銅からビームを10秒で同時に抜いている。抜かれたビームは、電解工程に送られて、再利用される。
【0006】
このビームの抜き取りに長時間を要してしまうと、電解工程で電解槽へ再通電するまでの時間が遅れることになる。このため、1回の電解工程における通電時間が短くなってしまい、予定通りの電着量を得られない可能性がある。
【0007】
カソードを洗浄してから結束するまで工程は、一連の工程として連続して行われる場合が多い。洗浄後および結束前に行われるビーム抜き取り工程は、チェーンコンベアあるいは移載装置により搬送されてきた複数のカソードを傾転装置に保持した状態で、ビーム抜き取り装置を用いて行われる。
【0008】
図4に、実公昭53-8011号公報に記載された、ビーム抜き取り工程に用いられるカソードの移載装置とビームの抜き取り装置の概略図を示す。カソード1は、リボン2と、リボン2を介してカソード1に取り付けられたビーム3とを備える。集約コンベア(図示せず)にほぼ垂直な積層状態で集約されたカソード1は、所定枚数(10枚から20枚)ごとに移載装置4により進行方向に移送される。
【0009】
移載装置4の左右部には、シリンダ5により上下動可能な1対の摺動ロッド6がそれぞれ設けられており、それぞれの摺動ロッド6の下端部には、ビーム3と係合可能なフック部材7が取り付けられている。図4の装置では、移載装置4は、シリンダ8にて上下動可能な支持板9を備え、支持板9の前後方向両端部の左右両端部に爪部材10が備えられており、支持板9の左端部には、進行方向に伸長するガイドローラ11が回転可能に取り付けられている。
【0010】
移載装置4により、集約されたカソード1は、傾転装置12の上まで移送される。傾転装置12は、水平状態にある底板13と、垂直状態にある受け板14と、傾転装置12の両端部かつ上端部側に、進行方向に伸長するように配置された1対の受けローラ15とを備える。移送されたカソード1は、傾転装置12上で、フック部材7をシリンダ5により降下させ、傾転装置12の底板13上に載置されると同時に、移載装置4の支持板9がシリンダ8により降下し、それぞれのビーム3は、ガイドローラ11と受けローラ15により挟持される。これにより、それぞれのビーム3は、1対の受けローラ15により支承される。このため、カソード1のリボン2に挿通および係合されているビーム3は、その係合が緩められる。この際、支持板9に設けられた爪部材10により、集約されたカソード1の前後方向の倒れが制御される。
【0011】
傾転装置12の幅方向一方側の外側には、集約されたカソード1のビーム3を同時に押し出すための押し出しシリンダ16が配置されている。押し出しシリンダ16の先端部にはアタッチメント17が取り付けられている。傾転装置12の幅方向他方側の外側には、シリンダ16により押し出されたビーム3を引き抜くための上下1対の抜き取りローラ18が配置されている。1対の抜き取りローラ18は、カソード1の進行方向に伸長する。上側のローラ18は、その回転軸の上下位置を固定した状態で、該回転軸を中心とする回転を可能に支承されている。下側のローラ18は、図示しない回転駆動装置により回転駆動され、その回転軸はシリンダ16により上下動可能に支承されている。
【0012】
押し出しシリンダ16により押し出されたビーム3は、1対の抜き取りローラ18により幅方向一方側から幅方向他方側に引き抜かれ、さらに1対の補助抜き取りローラ20で確実に引き抜かれたあと、送りローラ21により電解工程に移送される。一方、ビーム3の抜き取り後のカソード1は、傾転装置12を図示しないシリンダにより、受け板14が水平状態となり、底板13が垂直状態になるまで回動することにより、傾転される。傾転後のカソード1は、傾転装置12ごと下降し、水平に積層された状態で、図示しない押し出しシリンダにより搬出コンベア上に送り込まれる。なお、この装置では、移載装置4の支持板9、押し出しシリンダ16、および抜取りローラ18が、ビーム抜取り装置22を基本的に構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実公昭53-8011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、ビーム抜き取り工程では、ビーム抜き取り装置を用いて、集約されたカソード(電気銅)1からビーム3を10秒で同時に抜くことが必要とされる。カソード1からビーム3をこのような短時間で抜くためには、ビーム3がリボン2に挿通および係合した状態のカソード1の傾きを小さくすることが重要である。カソード1の傾きを小さくするために、従来、傾転装置12にカソード1を載置する際に、集約されたカソード1の群をカソード1の進行方向の一方向に軽く傾けることが一般的に行われている。より具体的には、たとえば進行方向前側にカソード1の群を傾けた状態で、ビーム3の抜き取り工程が行われている。
【0015】
しかしながら、ビーム抜き取り工程で、傾転装置12上にカソード1を載置したときに、カソード1のすべてが進行方向の一方向に傾かず、一部のカソード1が進行方向他方向に傾いてしまう場合がある。たとえば、図5に示すように、進行方向後側に配された複数のカソード1が、一方向である進行方向前側(図5の左側)ではなく、他方向である進行方向後側(図5の右側)に傾き、かつ、その傾斜角度が大きくなってしまう場合がある。この状態で、図6に示すように、ビーム支持装置26のビーム支持用フレーム部材27を昇降シリンダ28により降下させて、ビーム支持用フレーム部材27に取り付けられた押えローラ29によりビーム3を押圧支持した状態で、あるいは、図4に示すガイドローラ11によりビーム3を支持した状態で、ビーム抜き取り装置22によりビーム3を抜き取ろうとすると、リボン2とビーム3の係合が十分に解除されないことに起因して、ビーム3の抜き取りができなくなる。
【0016】
カソード1が電気銅である場合、たとえば1枚のカソード1の重さは約180kg程度あるため、ビーム3の抜き取りができなくなった際には、マンパワーでカソード1の傾きを修正したり、あるいは、リボン2を切断してビーム3を引き抜いたりする必要が生ずる。かかる場合に、不具合が生じたカソード1の数やその程度に応ずるが、上記の修正作業や引き抜き作業のために、10分以上にわたって設備を停止させる必要がある。また、このような状況が複数回発生する場合もある。よって、これに起因する設備停止時間が30分から1時間となる場合もある。このような状況は、電解工程の再通電までの時間を延長させることから、電気銅などの製品カソードの生産性に大きな影響を与える。
【0017】
また、図4に示した装置では、支持板9の長さ方向の両端部に配置された爪部材10によりカソード1の群の傾きを防止している。しかしながら、カソード1は、電解条件によってその厚みが変動することから、集約後のカソード1の長さが変動することにより、カソード1の群の全体の長さが変動したり、カソード1の群を構成するカソード1の枚数が変動したりする。カソード1の群の全体の長さが最大長さよりも短い場合、進行方向の後側に配されたカソード1は、進行方向後側に倒れてしまう傾向となるが、進行方向前側に配された爪部材10ではこのような場合のカソード1の傾きには対応できない。
【0018】
したがって、本発明は、カソード1を傾転装置12に載置させる際に、カソード1が所定以上に傾いてしまった場合でも、リボン2とビーム3との係合を解除させて、ビーム3の抜き取り不良を抑止することができる、ビーム抜き取り装置およびビーム抜き取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のビーム抜き取り装置は、傾転装置上に所定の進行方向に移送および載置され、垂直な積層状態で集約された複数のカソードからビームを同時に抜き取るための装置である。
【0020】
具体的には、本発明の一態様のビーム抜き取り装置は、上下動可能に配置されたビーム支持用フレーム部材と、該ビーム支持用フレーム部材の下端に取り付けられ、かつ、前記カソードの進行方向に伸長する押えローラとを有する、ビーム支持装置と、
前記傾転装置の幅方向一方側の外側に配置され、前記複数のカソードの前記ビームを同時に押し出す、押し出しシリンダと、
前記傾転装置の幅方向他方側に配置され、前記押し出しシリンダにより押し出された前記ビームを引き抜く、抜き取りローラと、
を備える。
【0021】
特に、本発明のビーム抜き取り装置では、前記ビーム支持装置のうちの、前記カソードの進行方向の一方側の端部に配置され、前記傾転装置に載置された前記カソード側を向き、かつ、上方に向かうほど該カソード側に向かう方向に傾斜した傾斜面を有する、調整ガイド部材を備える。
【0022】
前記調整ガイド部材は、前記ビーム支持装置のうちの前記カソードの進行方向後側の端部に取り付けられることができる。
【0023】
前記調整ガイド部材は、前記ビーム支持装置に対して、前記カソードの進行方向における位置を移動可能に取り付けられることができる。
【0024】
本発明のビーム抜き取り方法は、傾転装置に載置され、垂直な積層状態で集約された複数のカソードからビームを同時に抜き取る方法に関する。特に、本発明のビーム抜き取り方法は、本発明のビーム抜き取り装置を用いる。
【0025】
本発明のビーム抜き取り方法は、前記傾転装置に載置された前記複数のカソードに向けて、前記ビーム支持装置を降下させて、前記ビームを支持する工程、前記ビーム支持装置により支持された前記ビームを、前記押し出しシリンダにより同時に押し出す工程、押し出された前記ビームを、前記抜き取りローラにより同時に抜き取る工程を備える。
【0026】
特に、本発明のビーム抜き取り方法では、前記ビームを支持する工程において、前記ビーム支持装置を降下させる際に、前記調整ガイド部材の前記傾斜面で、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の最も一方側に位置するカソードを押圧して、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の一方側に位置する1枚以上カソードの傾きを調整することを特徴とする。
【0027】
前記調整ガイド部材により、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の最も後側に位置するカソードを押圧することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明のビーム抜き取り装置および方法により、傾転装置に載置され、垂直な積層状態で集約されたカソードの傾きを調整することにより、すべてのカソードについて、リボンとビームの係合を十分に解除して、速やかにビーム抜き取り工程を完了させることができる。このため、従来、リボンとビームとが引っかかることに対する処置に費やしていた時間を省略することができる。これにより、ビームを滞りなく電解工程に移送させることができ、電解工程において、予定していた電着量を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施の形態の1例のビーム抜き取り装置および傾転装置についての、支持部材によりビームを抑える前の状態を示す模式的な側面図である。
図2図2は、図1に示した装置についての、支持部材によりビームを抑えた状態を示す模式的な側面図である。
図3図3は、図1に示した装置の模式的な概略平面図である。
図4図4は、従来の移載装置、ビーム抜き取り装置、および傾転装置を示す概略正面図である。
図5図5は、従来のビーム抜き取り装置および傾転装置についての、図1と同様の図である。
図6図6は、従来のビーム抜き取り装置および傾転装置についての、図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態に係るビーム抜き取り装置および方法の1例について、関連する移載装置および傾転装置の1例とともに、図1図3を用いて説明する。
【0031】
ビーム抜き取り工程に適用されるカソード1は、電解工程のあとで、複数枚ごと、たとえば、10枚~20枚ごとに集約され、洗浄が行われた後の状態において、ほぼ垂直な積層状態で集約されている。たとえば、カソード1が電気銅である場合、カソード1は、縦幅が約1,050mm、横幅が約1,070mm、厚みが約10mm~20mm程度である。したがって、カソード1の1枚あたりの質量は、約100kg~200kgとなる。電解工程のあとにおける電気銅は、純度が99.99%である。ただし、本発明は、カソード1が電気銅の場合のみならず、ニッケルなどの非鉄金属の電解工程において精製された非鉄金属カソードに対しても適用可能である。カソード1は、リボン2、および、リボン2を挿通および係合することによりカソード1に取り付けられたビーム3を備える。
【0032】
図示しない集約コンベアに上記所定枚数ごとに集約されたカソード1の群は、移載装置4aにより、集約コンベアから傾転装置12まで移送される。この場合の、カソード1の群の移送に関する進行方向は、その積層方向である。
【0033】
本例における移載装置4aは、鉛直方向に配される6本の搬送用フレーム部材23を有する。搬送用フレーム部材23は、幅方向両側に3本ずつ、長さ方向(カソード1の進行方向)に配列される。これらのうちの長さ方向中間に位置する2本の搬送用フレーム部材23には、昇降シリンダ24が備えられており、搬送用フレーム部材23は、全体として鉛直方向に上昇および下降が可能となっている。幅方向両側に配列された3本ずつの搬送用フレーム部材23の下端部には、長さ方向(カソード1の進行方向)に伸長するビーム受け25が備えられている。左右1対のビーム受け25は、垂直な積層状態で集約されている、所定枚数のうちの最大数のカソード1がその幅方向および長さ方向の内側に配置できるように構成されている。すなわち、左右1対のビーム受け25の内側幅は、カソード1の幅よりも大きく、ビーム3の左右長さよりも十分に小さく、カソード1のビーム3の両端部を下方から支持することが可能である。また、左右1対のビーム受け25の長さは、最大数、たとえば20枚集約されたカソード1の群のビーム3の厚さの合計よりも十分に長くなっている。
【0034】
本例の移載装置4aは、たとえば、チェーンコンベア、軌道上を走行可能なモータ付き台車、天井クレーンなどの任意の運搬機構に、搬送用フレーム部材23が、懸架、載置、あるいは取り付けられることにより、カソード1の進行方向に移動することが可能となっている。これらの運搬機構は公知であるため、ここでの説明は省略する。また、搬送用フレーム部材23およびビーム受け25は、鋼などの金属材料製である。さらに、昇降シリンダ24は、搬送用フレーム部材23を昇降可能な公知のシリンダを適用することが可能である。なお、図4に示す態様の台車を用いた従来の移載装置4を適用することも可能である。
【0035】
集約コンベアにて集約されたカソード1の群は、移載装置4aの左右1対のビーム受け25にビーム3の両端部を整列させた状態で、昇降シリンダ24により搬送用フレーム部材23を上昇させて、カソード1の群をビーム3ごと持ち上げる。この状態で、前記運搬機構により、カソード1の群は、カソード1の進行方向に傾転装置12の上方まで移送される。
【0036】
傾転装置12は、水平状態にある底板13と、垂直状態にある受け板14と、垂直状態にある受け板14の両側部かつ上端部側に、進行方向に伸長するように配置された1対の受けローラ15とを備える。具体的には、たとえば、底板13および受け板14は、この状態で、上方と進行方向後側(カソード1の群が進入してくる側)が開口した受け箱により構成されることができる。すなわち、傾転装置12は左右両側に図示しない1対の側板を備えることができ、この1対の側板の上端部に1対の受けローラ15を軸受などにより回転可能に設置することができる。これらの底板13、受け板14、受けローラ15などについても、鋼などの金属材料製である。
【0037】
底板13と受け板14の内側幅は、カソード1の本体の横幅より大きくなっている。受け板14の内側高さは、カソード1の本体の縦幅よりも大きくなっている。このため、傾転装置12において、移載装置4aを降下させて、カソード1を傾転装置12の底板13上に載置した状態では、カソード1の群の本体自体は、底板13および受け板14に囲まれた収容空間(受け箱内)に収容される。この状態において、リボン2とビーム3は、前記収容空間よりも上方に位置する。また、1対の受けローラ15は、カソード1の群が底板13上に載置された状態、あるいは、さらに所定の角度で所定の方向にカソード1の群を傾かせた状態において、ビーム3の両端部が、1対の受けローラ15には接触しない高さに、配置されている。
【0038】
傾転装置12を構成する底板13と受け板14は、図示しない傾転シリンダにより、底板13が水平状態にあり、受け板14が垂直状態にある図示の状態から、底板13が垂直状態となり、受け板14が水平状態となる方向に約90度、傾転することが可能となっている。かかる傾転装置12の構成および機能についても、公知であるため、ここでの説明は省略する。
【0039】
本例のビーム抜き取り装置では、傾転装置12の幅方向一方側の外側には、押し出しシリンダ16(図4参照)が設置されている。また、傾転装置12の幅方向他方側の外側には、抜き取りローラ18(図4参照)が設置されている。これらの抜き取りローラ18および押し出しシリンダ16の構成の機構は、実公昭53-8011号公報に記載のものと同様である。
【0040】
本例のビーム抜き取り装置は、傾転装置12の上方に、ビーム支持装置26を備える。ビーム支持装置26は、上下動可能に配置されたビーム支持用フレーム部材27と、ビーム支持用フレーム部材27の下端に取り付けられ、かつ、カソード1の進行方向に伸長する押えローラ29とを備える。
【0041】
より具体的には、ビーム支持装置26を構成するビーム支持用フレーム部材27は、鉛直方向に配される5本の第1フレーム部材27aを有する。第1フレーム部材27aは、幅方向両側に2本ずつ、長さ方向(カソード1の進行方向)に配列されるとともに、中央部に1本配置される。幅方向両側に2本ずつ配列された第1フレーム部材27aの下端部は、長さ方向(カソード1の進行方向)に配された1対の第2フレーム部材27bに連結されている。また、1対の第2フレーム部材27bの長さ方向両端部および長さ方向中央部は、幅方向に配された3つの第3フレーム部材27cによって幅方向に連結されている。ビーム支持装置26の中央部に配された第1フレーム部材27aの下端部は、長さ方向中央部に配された第3フレーム部材27cに連結されている。
【0042】
ビーム支持装置26の中央部に配置された鉛直方向に伸長する第1フレーム部材27aは、昇降シリンダ28に取り付けられている。本例では、昇降シリンダ28は、所定の不動の部材などに固定されている。これにより、ビーム支持装置26は、傾転装置12の上方において、全体として鉛直方向に上昇および下降が可能となっている。ただし、ビーム支持装置26および昇降シリンダ28は、移載装置4aに取りつけられることも可能である。
【0043】
長さ方向に配された1対の第2フレーム部材27bの下側には、回転軸が長さ方向に伸長する1対の押えローラ29が回転可能に取りつけられている。
【0044】
ビーム支持装置26は、移載装置4aが傾転装置12の上方まで移動した状態において、移載装置4aの幅方向内側および長さ方向内側に位置することができる幅および長さを有する。また、ビーム支持装置26は、傾転装置12の底板13の内側幅と同様もしくはより小さい幅を有する。1対の押えローラ29の幅方向の取り付け位置は、傾転装置12に載置されたカソード1のリボン2の位置から外れる位置となっている。このため、ビーム支持装置26が下降した状態で、1対の押えローラ29は、カソード1のリボン2と干渉することなく、ビーム3に上方から当接して、ビーム3を支承することが可能となっている。
【0045】
本例では、ビーム支持装置26のうちの、長さ方向一方側の端部、すなわち、カソード1の進行方向後側の端部に、調整ガイド部材30が取りつけられている。より具体的には、ビーム支持用フレーム部材27のうちの、カソード1の進行方向後側の端部において、幅方向に伸長する第3フレーム部材27cの中間部の離隔した2箇所に、調整ガイド部材30が、調整ガイド部材用位置調整機構31を介して、取り付けられている。
【0046】
本例では、ビーム支持装置26を構成する、ビーム支持用フレーム部材27、調整ガイド部材30、および調整ガイド部材用位置調整機構31は、鋼などの金属材料製である。また、押えローラ29は、抜き取りローラ18、補助抜き取りローラ20、送りローラ21などと同様の構造を有し、かつ、同様の取り付け手段により、ビーム支持用フレーム部材27に取り付けられることができる。
【0047】
本例では、調整ガイド部材30は、少なくともカソード1の進行方向前側に、傾転装置12に載置されたカソード1の群の側を向き、かつ、上方に向かうほどカソード1のある側に向かう方向に傾斜した傾斜面32を有する。この調整ガイド部材30の傾斜面32により、ビーム支持装置26が下降した際に、この傾斜面32の下方に位置するビーム3は、傾斜面32に沿って進行方向前側に押される。このため、このビーム3が取り付けられたカソード1の上側も、進行方向前側に押されることになる。
【0048】
本例では、調整ガイド部材30は、ビーム支持装置26のうちのカソード1の進行方向後側の端部に取り付けられている。これは、本例では、カソード1の群を傾転装置12の底板13に載置した際に、カソード1の群を進行方向前側に向けて軽く傾けることを前提として、カソード1の群のうちの進行方向後側に位置する1枚以上のカソード1が、この方向とは逆である進行方向後側に向けて、かつ、大きく傾くことを想定しているためである。よって、カソード1の群を傾転装置12の底板13に載置する際に、カソード1の群を進行方向後側に向けて軽く傾け、カソード1の群のうちの進行方向前側に位置する1枚以上のカソード1が、逆方向である進行方向前側に過度に傾斜すること想定した場合には、調整ガイド部材30は、ビーム支持装置26の進行方向前側の端部に取り付けられることができる。
【0049】
たとえば、実公昭53-8011号公報に記載の装置における爪部材10などでは、カソード1の群を傾転装置12の底板13に載置した際に、カソード1の群を進行方向一方側(通常は前側)に向けて軽く傾けることを前提とした場合、カソード1がこの進行方向一方側に過度に傾斜してしまうことのみを防止するだけである。これに対して、本例では、調整ガイド部材30が、傾斜面32を備えることにより、カソード1の群の一部が進行方向他方側(通常は後側)に向けて傾斜してしまった場合にも、すべてのカソード1が適切な傾きの角度となるまで、あるいは、適切な傾きの方向となるまで、カソード1を所定方向に押圧することが可能となっている。
【0050】
本例では、調整ガイド部材30は、調整ガイド部材用位置調整機構31を介して、ビーム支持装置26に対して、カソード1の進行方向における位置を移動可能に取り付けられている。これにより、傾転装置12に移送されるカソード1の群を構成するカソードの枚数が10枚~20枚の間で随時変化する場合にも、その枚数の変化に対応することが可能となる。
【0051】
本例では、調整ガイド部材用位置調整機構31は、カソード1の進行方向に伸長する、鋼などの金属材料製のフレーム部材により構成されている。調整ガイド部材用位置調整機構31は、長さ方向にわたって所定の間隔で設けられた複数の取り付け孔(図示せず)を有している。調整ガイド部材30の上端面には、上方に伸長するねじボルトが埋設されている。任意の取り付け孔にねじボルトを挿通し、調整ガイド部材用位置調整機構31から上方へ突出したねじボルトにナットを螺合することより、調整ガイド部材30を調整ガイド部材用位置調整機構31に対して固定することが可能となっている。調整ガイド部材30のねじボルトを挿通させる取り付け孔を変更することで、調整ガイド部材30のカソード1の進行方向に関する取付位置を変更することが可能となっている。
【0052】
ただし、調整ガイド部材30の位置調整機構はこのような態様に限定されることはない。たとえば、調整ガイド部材30をカソード1の進行方向に移動させることが可能なシリンダに対して、調整ガイド部材30を取り付け、このシリンダをビーム支持用フレーム部材27に固定することも可能である。この場合、シリンダによる調整ガイド部材30の移動量を制御することにより、カソード1の枚数に応じた適切な位置に、調整ガイド部材30およびその傾斜面32を配置することが可能となる。
【0053】
本例のビーム抜き取り方法は、傾転装置12に載置された複数のカソード1に向けて、ビーム支持装置26を降下させて、カソード1のビーム3を支持する工程、ビーム支持装置26により支持されたビーム3を、押し出しシリンダ16により同時に押し出す工程、押し出されたビーム3を、抜き取りローラ18により同時に抜き取る工程を備える。この点は、それぞれの装置および構成に相違はあるものの、実公昭53-8011号公報に開示の構成と同様である。
【0054】
特に、本例のビーム抜き取り方法では、ビーム支持装置26を降下させる工程において、調整ガイド部材30の傾斜面32で、カソード1の群のうちのカソード1の進行方向の最も一方側(図示の例で最も後側)に位置するカソード1を押圧して、カソード1の群のうちのカソード1の進行方向の一方側(図示の例では後側)に位置する1枚以上のカソード1(図示の例では4枚のカソード1)の傾きを調整する。
【0055】
図示の例では、14枚のカソード1の群を傾転装置12の底板13の上に載置し、かつ、これらのカソード1の群を進行方向前側に傾かせるようにしている。この場合に、たとえば、進行方向後側に存在する4枚のカソードが、底板13の上で揺動すると、進行方向後側に他のカソード1およびカソード1を受ける機構が存在しないため、進行方向後側に所定の傾斜角度を超えて、最も後側に位置するカソード1が受けローラ15により支承されるまで傾く。しかしながら、本例では、ビーム支持装置26を降下させると、調整ガイド部材30が、その傾斜面32が最も後側に位置するカソード1のビーム3に上方から当接する位置に配置されている。このため、傾斜面32が、これら4枚のカソード1が、所定の傾斜角度の範囲内の傾きとなるまで,ビーム3を押圧する。これにより、これら4枚のカソード1においても、リボン2とビーム3の係合が引っかかりなく十分に解除される。
【0056】
調整ガイド部材30により補正される、カソード1の進行方向の一方側(図示の例では後側)に位置するカソード1(図示の例では4枚のカソード1)の傾きは、残りのカソード1の傾きと異なっていてもよい。カソード1の進行方向の一方側に位置するカソード1の傾きを補正することで、ビーム3の抜き取りを10秒という速い速度で行っても、ビーム3の抜き取り不良などの事態が防止される。なお、これらの過度に傾いたカソード1の傾きの方向を、他の正常な傾きを有するカソード1と同じとなるまで傾かせることも可能である。ただし、過度に傾いたカソード1を押圧しすぎると、正常な傾きのカソード1を押圧して、正常な傾きのカソード1が所定方向に(進行方向前側)に過度に傾いてしまう可能性がある。このため、所定方向とは逆方向であっても、ビーム3の抜き取りをできる程度までカソード1の傾きを補正すれば十分である。
【0057】
このように、本発明のビーム抜き取り装置および方法では、調整ガイド部材30がカソード1の群の進行方向の一方側の端部(カソード1の群の長さをやや超えた位置)に、調整ガイド部材30の傾斜面がカソード1の群のうちの最も一方側の端部にあるカソード1のビーム3に当接するように配置されている。このため、カソード1が所定の方向とは別の方向に所定の角度を超えて傾いてしまうことが防止される。
【0058】
また、本発明のビーム抜き取り装置および方法では、調整ガイド部材30のカソード1の進行方向における位置を変更することが可能となっている。これにより、電解条件の変動により、集約されたカソード1の厚さが変動してしまうことに起因して、傾転装置12に移送されるカソード1の群の全体の長さが変動した場合でも、カソード1の群の傾きを適切な範囲に維持することができる。
【0059】
したがって、本発明のビーム抜き取り装置および方法では、集約されたカソード1の群の全体の長さの変動に拘わらず、カソード1の群の全体の傾きを適切な範囲に規制できるため、カソード1のリボン2から、ビーム3を同時かつ速やかに抜き取ることが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1 カソード(電気銅)
2 リボン
3 ビーム
4、4a 移載装置
5 シリンダ
6 摺動ロッド
7 フック部材
8 シリンダ
9 支持板
10 爪部材
11 ガイドローラ
12 傾転装置
13 底板
14 受け板
15 受けローラ
16 押し出しシリンダ
17 アタッチメント
18 抜き取りローラ
19 シリンダ
20 補助抜き取りローラ
21 送りローラ
22 ビーム抜き取り装置
23 搬送用フレーム部材
24 昇降シリンダ
25 ビーム受け
26 ビーム支持装置
27 ビーム支持用フレーム部材
27a 第1フレーム部材
27b 第2フレーム部材
27c 第3フレーム部材
28 昇降シリンダ
29 押えローラ
30 調整ガイド部材
31 調整ガイド部材用位置調整機構
32 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
傾転装置上に所定の進行方向に移送および載置され、垂直な積層状態で集約された複数のカソードからビームを同時に抜き取るためのビーム抜き取り装置であって、
前記ビーム抜き取り装置は、上下動可能に配置されたビーム支持用フレーム部材と、該ビーム支持用フレーム部材の下端に取り付けられ、かつ、前記カソードの進行方向に伸長する押えローラとを有する、ビーム支持装置と、
前記傾転装置の幅方向一方側の外側に配置され、前記複数のカソードの前記ビームを同時に押し出す、押し出しシリンダと、
前記傾転装置の幅方向他方側に配置され、前記押し出しシリンダにより押し出された前記ビームを引き抜く、抜き取りローラと、
前記ビーム支持装置のうちの、前記カソードの進行方向の一方側の端部に配置され、前記傾転装置に載置された前記カソード側を向き、かつ、上方に向かうほど該カソード側に向かう方向に傾斜した傾斜面を有し、該傾斜面で、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の最も一方側に位置するカソードを押圧して、前記カソードのうちの該カソードの進行方向の一方側に位置する1枚以上のカソードの傾きを調整することが可能な、調整ガイド部材と、
を備える、ビーム抜き取り装置。