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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067660
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】管路の補強方法及び補強管路
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20230509BHJP
   F16L 21/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
F16L57/00 E
F16L21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021189032
(22)【出願日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2021178305
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】奥津 大
(72)【発明者】
【氏名】板坂 浩二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】片桐 信
(57)【要約】
【課題】低いコストで、耐震性を向上させることができる。
【解決手段】補強方法は、複数の保護管1と、複数の保護管1のうちの隣り合う2つの保護管1の端部同士を接続する継手2とによって構成される管路の補強方法であって、継手2によって互いに接続されている2つの保護管1それぞれの端部を含む一部に、一体として構成されているライニング管3を取り付けるステップを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の保護管と、前記複数の保護管のうちの隣り合う2つの保護管の端部同士を接続する継手とによって構成される管路の補強方法であって、
前記継手によって互いに接続されている前記2つの保護管それぞれの端部を含む、前記保護管の一部に、一体として構成されているライニング管を取り付けるステップを含む、補強方法。
【請求項2】
前記ライニング管を取り付けるステップは、前記2つの保護管のうちの、一方の前記保護管の端部側の内側面から、該一方の前記保護管に、前記端部側で対向する、他方の保護管の端部側の内側面にまで前記ライニング管を取り付けるステップを有する、請求項1に記載の補強方法。
【請求項3】
前記ライニング管は、硬化前においては柔軟であり、所定の作用により硬化される硬化性樹脂によって形成される、請求項1または2記載の補強方法。
【請求項4】
前記硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であり、
前記ライニング管を取り付けるステップは、
硬化前の前記ライニング管を前記保護管の内部に引き込むステップと、
前記硬化前の前記ライニング管を、前記2つの保護管それぞれの端部を含む、前記保護管内の一部に設置するステップと、
前記ライニング管内に配置された加圧用バルーンの内部に温水又は蒸気を充満させることによって、前記加圧用バルーンを膨張させて前記ライニング管の径を拡大させるステップと、
前記温水又は蒸気により前記ライニング管を形成している前記熱硬化性樹脂を硬化させるステップと、
前記加圧用バルーンを前記保護管の内部から取り除くステップと、
を有する、請求項3に記載の補強方法。
【請求項5】
前記硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であり、
前記ライニング管を取り付けるステップは、
硬化前の前記ライニング管を前記保護管の内部に引き込むステップと、
前記硬化前の前記ライニング管を、前記2つの保護管それぞれの端部を含む、前記保護管内の一部に設置するステップと、
前記ライニング管内に配置された透明色の加圧用バルーンの内部に空気を充満させることによって、前記加圧用バルーンを膨張させて前記ライニング管の径を拡大させるステップと、
前記加圧用バルーンの内部に設置された紫外線ランプから照射される紫外線により前記ライニング管を形成している前記紫外線硬化性樹脂を硬化させるステップと、
前記加圧用バルーンを前記保護管の内部から取り除くステップと、
を有する、請求項3に記載の補強方法。
【請求項6】
前記硬化前の前記ライニング管を前記保護管の内部に引き込むステップは、連結部材を用いて端部同士が連結された複数のライニング管を、前記保護管の内部に引き込むステップを含むか、あるいは、
前記加圧用バルーンは、前記継手によって接続された前記複数の保護管によって構成される前記管路の全長にわたって設置される、請求項4又は5に記載の補強方法。
【請求項7】
前記ライニング管の端部はテーパ形状に構成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の補強方法。
【請求項8】
複数の保護管と、
前記複数の保護管のうちの隣り合う2つの保護管の端部同士を接続する継手と、
前記継手によって互いに接続されている前記2つの保護管それぞれの端部を含む、前記保護管の一部に取り付けられている、一体として構成されているライニング管と、
を備える補強管路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の補強方法及び補強管路に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された管路は、継手によって接続された、それぞれ数mの長さを有する、複数の管によって構成される。継手は、例えば、ねじ、接着、溶接、差込等の形式によって形成される。管路を構成する、複数の管を接続する継手には、大地震によって、離脱、屈曲、押し込み等が発生することが知られている。また、継手には、施工性、水密性、気密性、温度伸縮、振動吸収等の観点から様々な機能を有することが要求され、該要求に対応して様々な形状及び構造の継手が開発され、導入されている。例えば、ねじ、接着の形式によって形成された継手は、伸縮性及び可撓性が低い。このため、該形式による継手が用いられている管路の損傷率は、他の形式による継手が用いられている管路に比べて、相対的に損傷率が高いことが分かっている。
【0003】
また、上水道、ガスのような供給系設備における管路が地震により損傷すると、管路内を通過する水、ガス等が漏洩することがある。また、電力、通信、CATV(Community Antenna TeleVision)等を提供するサービスで用いられるケーブルを収容設備における管路が地震により損傷すると、ケーブルが損傷して、サービスに影響が及ぼされることがある。そこで、上水道、ガスのような供給系設備では、管及び継手を、耐震性の高いそれぞれ管及び継手に更改することが進められている。また、ケーブル収容設備における管路では、劣化した管の内側面に非開削で新しい管を構築することにより、管路の品質を維持するとともに耐震性を向上させることを図っている(例えば、特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-178816号公報
【特許文献2】特開2010-74914号公報
【特許文献3】特開2011-101583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した、管及び継手を更改する技術によれば、高い耐震性を得ることができるという効果を奏するものの、掘削工事を伴うため高い施工費を要することがある。また、管及び継手を更改する方法によれば、撤去設備、掘削残土等の廃棄物が発生するため環境に負荷がかかる。また、管及び継手を備える設備の数が膨大であるため、すべての設備が備える管及び継手を更改するには膨大な時間を要する。さらに、多くの場合において、管及び継手の更改は路上工事を伴うため、交通渋滞による社会及び経済に対して影響が及ぼされるという課題もある。
【0006】
また、特許文献1~3に記載した技術においては、管路が全長にわたって補修されるため、管路の内側面に構築される新しい管の材料及び器材が大量に必要となり、これに伴い、施工費が高くなる。また、管路に連通して設けられるマンホール付近の路上には、工事用の車両、資機材等を置くスペースが必要である。このため、開削工事ほどではないが路上における交通の妨げになることがある。さらに、管路の一部のみが劣化している場合においても、管路の全長に新しい管が構築されるため、費用対効果の点で非効率である。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、低いコストで、耐震性を向上させることができる管路の補強方法及び補強管路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る補強方法は、複数の保護管と、前記複数の保護管のうちの隣り合う2つの保護管の端部同士を接続する継手とによって構成される管路の補強方法であって、前記継手によって互いに接続されている前記2つの保護管それぞれの端部を含む、前記保護管の一部に、一体として構成されているライニング管を取り付けるステップを含む。
【0009】
一実施形態に係る補強管路は、複数の保護管と、前記複数の保護管のうちの隣り合う2つの保護管の端部同士を接続する継手と、前記継手によって互いに接続されている前記2つの保護管それぞれの端部を含む、前記保護管の一部に、取り付けられている、一体として構成されているライニング管と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低いコストで、耐震性を向上させることができる管路の補強方法及び補強管路を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本実施形態に係る補強管路の一例を示す断面図である。
図1B図1Aに示す補強管路のAA線での断面図である。
図2A図1Aに示すライニング管の斜視図である。
図2B図3Aに示すライニング管の端部を拡大した拡大図である。
図2C】ライニング管の変形例の端部を拡大した拡大図である。
図3図1Aに示す補強管路において継手が離脱した状態を示す断面図である。
図4】本実施形態に係る管路を補強する方法の一例を示すフローチャートである。
図5A】硬化前のライニング管を保護管内に設置した状態を示す図である。
図5B図5Aに示す補強管路のBB線での断面図である。
図6A】加圧用バルーンを膨張させた状態を示す図である。
図6B図6Aに示す補強管路のCC線での断面図である。
図7】加圧用バルーンを膨張させ、ライニング管を硬化させている状態を示す図である。
図8】本実施形態に係る管路を補強する方法の第1の変形例を説明するための図である。
図9】本実施形態に係る管路を補強する方法の第2の変形例を説明するための図である。
図10】従来技術により全長をライニングされた補強管路の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<補強管路の構成>
本発明の実施形態に係る補強管路100の構成の一例を説明する。
【0014】
図1A及び図1Bに示すように、補強管路100は、複数の保護管1と、継手2と、ライニング管3とを備える。
【0015】
保護管1は、鋼、塩化ビニル等の材料により形成された、円筒形状の部材である。保護管1は、地下に埋設されており、該保護管1の内部には、電気、通信、CATV等において用いられるケーブルが収容するために建設される。
【0016】
継手2は、複数の保護管1のうちの隣り合う2つの保護管1の端部同士を接続する。具体的には、継手2は、複数の保護管1の延在方向(保護管1を形成する円筒の軸方向)における端部同士を接続する。継手2が複数の保護管1を接続することにより、複数の保護管1は、1つの保護管1より長いケーブルを収容することができる。
【0017】
ライニング管3は、硬化前においては柔軟であり、所定の作用により硬化される硬化性樹脂によって形成される。硬化性樹脂は、加熱されることによって硬化する熱硬化性樹脂、紫外線が照射されることによって硬化する紫外線硬化性樹脂等とすることができる。すなわち、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、所定の作用は加熱であり、硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合、所定の作用は紫外線の照射である。
【0018】
ライニング管3は、継手2によって互いに接続されている2つの保護管1それぞれの端部を含む、保護管1の一部に取り付けられ、一体として構成されている。「一体として構成されている」とは、ライニング管3が、保護管1に対して継手2の反対側にて分断されておらず、連続していることを意味する。ライニング管3は、保護管1の内側面の一部のみに設けられている。言い換えれば、ライニング管3は、保護管1の延在方向における全体にわたっては設けられていない。
【0019】
図2Aに示すように、ライニング管3は、円筒形状を有している。ライニング管3の端部は、テーパ形状に構成されていてもよい。例えば、図2Aの破線で囲まれた領域を拡大した図2Bに示すように、ライニング管3の内径が、端部に近づくほど、線形的に長くなるようなテーパ形状に構成されていてもよい。また、例えば、図2Cに示すように、ライニング管3の内径が端部に近づくほど、指数関数的に長くなるようなテーパ形状に構成されていてもよい。このように、ライニング管3の端部がテーパ形状に構成されることによって、内側面にライニング管3が設けられた保護管1内にケーブルを引き込むとき、及び保護管1内からケーブルを取り除くときに、ケーブルが、保護管1内におけるライニング管3の端部近傍を滑らかに通過することができる。これに伴い、作業者は、ケーブルを容易に引き込んだり、取り除いたりすることができる。
【0020】
ライニング管3の長さは,地震の発生に伴って継手2が離脱しても、保護管1とライニング管3とによって構成される管路の連続性が維持されるように設計することができる。一例として、ライニング管3の長さは、下記の文献に記載された方法により設計することができる。
「水道施設耐震工法指針・解説2009年版I総論」、日本水道協会、pp.87-92、pp.195-197、2009
【0021】
具体的には、沖積平野の軟弱地盤における表層地盤の厚さH=30mとし、表層地盤のせん断弾性波速度Vs=100m/sとする。このような例において、表層地盤の固有周期Tは式(1)により算出される。
【0022】
【数1】
【0023】
さらに、上記の文献によれば、固有周期T=1.2sの地盤のL2地震動の単位震度当たりの設計応答スペクトルSは、70~100cm/sである。また、応答変位法に用いられるL2設計地震動の水平方向の変位振幅U(X)は、地表面からの深さXを用いて、式(2)により算出される。式(2)により、変位振幅U(X)が最大となるx=0では、変位振幅U(X)は17.0~24.3cmと算出される。
【0024】
【数2】
【0025】
過去の研究、観測等によれば、地震に伴って発生する慣性力の、地中に埋設された保護管1への影響は無視することができ、保護管1の挙動は、地盤変位に支配されることが知られている。また、地盤変位がある大きさを超えると管路と地盤との間で滑りが生じることが知られている。管路に対して無視できない程度の影響を与えうる地盤変位が発生することによって、図3に示すように、保護管1同士を接続していた継手2が、保護管1から離脱することがある。この場合、継手2の中心位置と保護管1の端部との間隔Laは最大243mmとなる。したがって、継手2が離脱しても、管路がケーブル等の収容物を全体にわたって保護するためには、ライニング管3における、継手2の中心位置に対応する位置から一方の端部までの長さLbは、少なくとも243mmとする必要がある。一例として、さらに、施工誤差等を考慮して一桁目を切り上げ、安全率を例えば2とすると、ライニング管3の一方の端部から他方の端部までの長さ、すなわちライニング管3の全長Lb×2は、250mm×2=500mmとすることができる。なお、安全率は、補強管路を所有する事業者等によって適宜設計されてよい。
【0026】
<管路の補強方法>
ここで、本実施形態に係る管路を補強するステップについて、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る管路を補強するステップの一例を示すフローチャートである。図4を参照して説明する管路を補強するステップは、本実施形態に係る管路の補強方法の一例に相当する。本補強方法は、保護管1が既に地中に埋設されており、継手2が保護管1同士を接続している状態から開始される。
【0027】
本実施形態に係る補強方法は、継手2によって互いに接続されている2つの保護管1それぞれの端部を含む、保護管1の一部に、一体として構成されているライニング管3を取り付けるステップを含む。具体的には、ライニング管3を取り付けるステップは、2つの保護管1のうちの、一方の保護管1の端部側の内側面から、該一方の保護管1に対向する、他方の保護管1の端部側の内側面にまでライニング管3を取り付けるステップを有する。以降において、その詳細を説明する。
【0028】
ステップS1において、ウォータージェット等を用いることによって保護管1の内部を洗浄する。
【0029】
ステップS2において、図5A及び図5Bに示すように、硬化前のライニング管3を、継手2によって接続されている2つの保護管1それぞれの端部を含む、保護管1内の一部に設置する。このとき、図5Aに示すように、保護管1の内部に、パイプカメラ等の撮像装置11を引き込んでおいてもよい。このような構成では、撮像装置11によって撮像されたライニング管3の像を含む撮像画像により、ライニング管3の位置を把握しながら、牽引装置にライニング管3を牽引させることによって、ライニング管3を所定の位置に設置してもよい。
【0030】
ステップS3において、ステップS2で所定の位置に設置した、硬化前の硬化性樹脂により形成されたライニング管3の内部に加圧用バルーン12を引き込む。なお、ステップS2より前に、ライニング管3の内部に加圧用バルーン12を引き込んでおき、ステップS2において、加圧用バルーン12が内部に引き込まれたライニング管3を所定の位置に設置してもよい。
【0031】
ステップS4において、図6A及び図6Bに示すように、加圧用バルーン12に圧力供給ホース13によって気体を供給して、加圧用バルーン12を膨張させることにより、ライニング管3の径を拡大させる。これにより、径が拡大したライニング管3は、保護管1の内側面に押し付けられる。
【0032】
ステップS5において、ライニング管3を形成している硬化性樹脂を硬化させる。
【0033】
ステップS4及びS5の一例として、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である構成においては、加圧用バルーン12の内部に温水又は蒸気を充満させることによって、該加圧用バルーン12を膨張させてライニング管3の径を拡大させる。このとき、加圧用バルーン12の内部に充満された温水又は蒸気で加熱することにより、ライニング管3を形成している熱硬化性樹脂を硬化させる。ライニング管3を形成している熱硬化性樹脂は、所定の時間、加熱されることにより、硬化する。本例では、ステップS4とステップS5とが同じタイミングで実行される。
【0034】
ステップS4及びS5の他の例として、硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である構成においては、加圧用バルーン12は透明色とする。そして、ライニング管内に配置された透明色の加圧用バルーン12の内部に空気を充満させることによって、該加圧用バルーン12を膨張させてライニング管3の径を拡大させる。このとき、図7に示すように、加圧用バルーン12の内部に設置された紫外線ランプ15から照射される紫外線によりライニング管3を形成している紫外線硬化性樹脂を硬化させる。ライニング管3を形成している紫外線硬化性樹脂は、所定の時間、紫外線を照射されることにより、硬化する。なお、紫外線ランプ15は、電力ケーブル16によって電力が供給されることによって紫外線を照射することができる。本例では、ステップS4とステップS5とが同じタイミングで実行されてもよいし、ステップS4の後にステップS5が実行されてもよい。
【0035】
ステップS6において、加圧用バルーン12内の気体を減圧ホース14によって抜き取ることによって、加圧用バルーン12内の圧力を低減させる。
【0036】
ステップS7において、ステップS6での圧力の低減により収縮した加圧用バルーン12を保護管1の内部から取り除く。
【0037】
以上により、継手2によって互いに接続されている2つの保護管1それぞれの端部を含む、保護管1の一部に、一体として構成されているライニング管3が取り付けられる。
【0038】
<管路の補強方法の第1の変形例>
上記ステップS1からステップS7においては、1つの継手2に対応する、管路の内側面の位置にライニング管3を取り付けられる処理が説明されたが、複数の継手2それぞれに同じタイミングにてライニング管3を取り付けてもよい。
【0039】
例えば、図8に示すように、硬化前のライニング管3を保護管1の内部に引き込むステップは、連結部材17を用いて端部同士が連結された複数のライニング管3を、保護管1の内部に引き込むステップを有してもよい。連結部材17は、例えば、紐とすることができる。
【0040】
<管路の補強方法の第2の変形例>
また、図9に示すように、加圧用バルーン18は、継手2で接続された複数の保護管1によって構成される管路の全長にわたって設置されてもよい。このような構成において、加圧用バルーン18を膨張させることにより、複数のライニング管3それぞれの径を拡大させる。これにより、径が拡大した複数のライニング管3それぞれは、保護管1の内側面に押し付けられる。そして、複数のライニング管3それぞれを形成している硬化性樹脂を硬化させる。
【0041】
<管路の補強方法の第3の変形例>
ライニング管3は、保護管1の内側面との間の摩擦力によって、保護管1に取り付けられることが期待される。しかし、ライニング管3が、より強固に、保護管1に取り付けられるように、接着剤により保護管1の内側面に接着されてもよい。例えば、上述したステップS2において、接着剤が収容された、硬化前のライニング管3の外部に、圧力が所定値より高くなると破れる袋が、硬化前のライニング管3の外側に取り付けられていてもよい。これにより、ステップS4にて、袋が破れて、収容されていた接着剤がライニング管3の外側面及び保護管1の内側面に塗布される。したがって、ライニング管3は接着剤により、より強固に保護管1に取り付けられる。なお、圧力が所定値より高くなると破れる袋の代わりに温度が所定値より高くなると破れる袋が用いられてもよい。このような構成では、例えば、ステップS4及びステップS5の第1例で用いられる熱により、袋が破れて、収容されていた接着剤がライニング管3の外側面及び保護管1の内側面に塗布される。
【0042】
<実験結果>
地震の発生に伴う地盤の振動により、仮に、保護管1が延在方向にのみ変位する場合、保護管1の変位によってケーブルに力が加えられることは少ない。そのため、ケーブルを利用して提供されるサービスに影響が及ぼされることは少ない。しかしながら、実際には、地震が発生すると、地盤は3次元の様々な方向に継続的に振動する。このため、継手2が保護管1から離脱して、該継手2と該保護管1とが繰り返し衝突したり、保護管1が延在方向に直交する方向に変位して、該保護管1に収容されているケーブルにせん断力を加えたりすることがある。
【0043】
下記の文献では,2007年中越沖地震に伴い管路が収容するケーブルを利用して提供されるサービスが中断に至った事例を解析及び実験により再現した結果が記載されている。
田中宏司、外5名、「ライニング補強した通信管路の地震時ケーブル防護効果評価方法」、土木学会論文集A1,Vol.68、No.4、I_959-I_968、2012
【0044】
上記文献における実験では,ライニング管3が設けられていない保護管1及び継手2から構成される供試体と、複数種類のライニング管3がそれぞれ設けられている保護管1及び継手2から構成される供試体とが用いられた。これらの供試体の保護管1を強制的に引き抜いて継手2の離脱量に相当する量だけ変位させ、その後、該保護管1を引き抜いた方向と反対方向に押し込み、これを繰り返し実行した。その結果、ライニング管3が設けられていない保護管1及び継手2から構成される供試体では、継手2が離脱した保護管1の端部が、該継手2に繰り返し衝突することによって変形し、内部のケーブルを損傷させることがあった。これに対して、ライニング管3が設けられている保護管1及び継手2から構成される供試体では、ライニング管3の表面に傷がついたり、保護管1がライニング管3にかみこんだりし、さらに、ライニング管3の種類によっては、ライニング管3が破断したりすることがあった。しかし、ライニング管3が設けられている保護管1に収容されているケーブルが損傷することはなかった。これは、継手2が保護管1から離脱しても、保護管1に設けられたライニング管3により管路の中心軸がずれず、保護管1と継手2とが延在方向で対向して衝突することはあっても、延在方向と直交する方向での衝突は抑制されたためであると考えられる。
【0045】
以上、説明したように、本実施形態に係る管路の補強方法は、複数の保護管1と、複数の保護管1のうちの隣り合う2つの保護管1の端部同士を接続する継手2とによって構成される管路の補強方法であって、継手2によって互いに接続されている2つの保護管1それぞれの端部を含む、保護管1の一部に、一体として構成されているライニング管3を取り付けるステップを含む。これにより、低いコストで、耐震性を向上させることができるよう管路を補強することができる。具体的には、本実施形態に係る管路の補強方法により、ライニング管3は、一定間隔で取り付けられる。そのため、図10に示すように、ライニング管93が、継手92によって接続された保護管91によって構成される管路900の全長にわたって取り付けられる場合に比べて、施工費を低減することができる。さらに、ライニング管3は、地震の発生に伴って保護管1から離脱しやすい継手2の付近に取り付けられるため、継手2が保護管1から離脱した場合においても、管路の連続性を維持することができる。これにより、保護管1に収容されているケーブル等を用いて提供されるサービスへの影響を抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る管路の補強方法において、ライニング管3を取り付けるステップは、2つの保護管1のうちの、一方の保護管1の端部側の内側面から、該一方の保護管1に、端部側で対向する、他方の保護管1の端部側の内側面にまで連続しているライニング管3を取り付けるステップを有する。これにより、地震の発生に伴って、継手2が保護管1から離脱した場合も、ライニング管3は保護管1から離脱しにくく、そのため、管路の連続性をより確実に維持することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る管路の補強方法において、ライニング管3は、硬化前においては柔軟であり、所定の作用により硬化される硬化性樹脂によって形成される。これにより、ライニング管3を保護管1内に容易に引き込むことができ、かつ、ライニング管3を、保護管1の内側面の形状に合う形状に成形することができる。これにより、ライニング管3を保護管1に確実に取り付けることができ、そのため、管路の連続性をより確実に維持することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る管路の補強方法において、硬化前のライニング管3を保護管1の内部に引き込むステップは、連結部材17を用いて端部同士が連結された複数のライニング管3を、保護管1の内部に引き込むステップを含む。これにより、保護管1の端部同士を接続する複数の継手2それぞれに対応して、1つずつライニング管3を取り付ける場合に比べて、効率的にライニング管3を取り付けることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る管路の補強方法において、加圧用バルーン12は、継手2によって接続された複数の保護管1によって構成される管路の全長にわたって設置される。これにより、複数のライニング管3をそれぞれに対応して、1つずつ加圧用バルーン12を設置する場合に比べて、効率的に複数のライニング管3の径を拡大させることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る補強管路100は、複数の保護管1と、複数の保護管1のうちの隣り合う2つの保護管1の端部同士を接続する継手2と、継手2によって互いに接続されている2つの保護管1それぞれの端部を含む、保護管1の一部に、一体として構成されているライニング管3とを備える。これにより、管路は、低いコストで耐震性を向上させることができる。
【0051】
本発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の処理は、記載にしたがって時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0052】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 保護管
2 継手
3 ライニング管
11 撮像装置
12 加圧用バルーン
13 圧力供給ホース
14 減圧ホース
15 紫外線ランプ
16 電力ケーブル
17 連結部材
18 加圧用バルーン
100 補強管路
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10