(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006777
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230111BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109548
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永松 彰
(72)【発明者】
【氏名】藤原 朋子
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA09
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】使用の際に手が汚れず、マスク全体が水に濡れて装着時にユーザに不快感を与えるおそれがないうえ、ユーザが十分な量の蒸気を感じられるマスクを提供する。
【解決手段】マスク1は、ユーザの顔に少なくとも口を覆うように装着されるマスク本体2と、水を主成分とした液体を封入する水袋9を内部に収納した蒸気発生体3であって、マスク本体2に装備される蒸気発生体3と、を含み、水袋9は、押圧力を受けることで開封して前記液体を流出可能であり、蒸気発生体3は、内部に流出した前記液体の含水分の蒸発により生じる蒸気が透過可能であり、蒸気発生体3を透過する蒸気の透過量が0.5g/h以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの顔に少なくとも口を覆うように装着されるマスク本体と、
水を主成分とした液体を封入する水袋を内部に収納した蒸気発生体であって、前記マスク本体に装備される蒸気発生体と、
を含み、
前記水袋は、押圧力を受けることで開封して前記液体を流出可能であり、
前記蒸気発生体は、内部に流出した前記液体の含水分の蒸発により生じる蒸気が透過可能であり、
前記蒸気発生体を透過する蒸気の透過量が0.5g/h以上である、ことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記蒸気発生体の透湿度が8500g/m2・day以上である、ことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記液体の粘度が40mPa・s以上4000mPa・s以下である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記蒸気発生体を加熱するために前記マスク本体に装備される発熱体をさらに含み、
前記蒸気発生体は内部に流出した前記液体が前記発熱体により加熱される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体は、第一シート、第二シート及び第三シートの少なくとも三枚のシートの積層体により構成されており、第一シート及び第二シートの間に第一収容部が形成されており、第二シート及び第三シートの間に第二収容部が形成されており、
前記蒸気発生体及び前記発熱体は、前記第一収容部及び前記第二収容部に別々に収容される、ことを特徴とする請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記蒸気発生体及び前記発熱体は、ユーザの顔側から前記蒸気発生体、前記発熱体の順に位置するように、前記マスク本体に装備される、ことを特徴とする請求項4又は5に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿機能を有するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、花粉や黄砂等の微粉塵に対する防御対策として、また、ウイルスや細菌等の感染対策として、マスクが汎用されている。また最近では、マスクの機能が多様化し、様々なマスクが提案されている。
【0003】
例えば睡眠中は、飲食物や唾液等の嚥下がないため、口や喉が乾燥しやすい。また、冬期は空気が乾燥しており、さらに冬期以外でもエアコンの稼働により空気が乾燥するため、口や喉が乾燥しやすい。口や喉の乾燥を防止するため、例えば特許文献1には、加湿機能を有するマスクが開示されている。特許文献1のマスクは、水を保有したフィルターを装備しており、呼吸によりフィルターの含水分が蒸気となって口や喉に供給されることで、口や喉の乾燥を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のマスクは、口や喉を加湿できるが、使用の際にユーザが濡れたフィルターをマスクに装備する必要があるため、手間がかかる。そのうえ、フィルターは水だけでなく、保湿剤や防腐剤等の種々の薬剤を含んでいることから、ユーザが手で触ることで手が汚れるという課題がある。加えて、フィルターへの防腐剤の吸着が原因で、使用前の保管時にカビやすいという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、使用の際に手が汚れる等のおそれがなく、マスク全体が水に濡れて装着時にユーザに不快感を与えるおそれのないマスクを提供することを目的とする。また本発明は、ユーザが装着後に十分な量の蒸気を感じることができるマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、加湿機能を有するマスクに関する。本発明のマスクは、ユーザの顔に少なくとも口を覆うように装着されるマスク本体と、水を主成分とする液体を封入する水袋を内部に収納した蒸気発生体であって、前記マスク本体に装備される蒸気発生体と、を含み、前記水袋は、押圧力を受けることで開封して前記液体を流出可能であり、前記蒸気発生体は、内部に流出した前記液体の含水分の蒸発により生じる蒸気が透過可能であり、前記蒸気発生体を透過する蒸気の透過量が0.5g/h以上である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明のマスクにおいて好ましくは、前記蒸気発生体の透湿度が8500g/m2・day以上である、ことを特徴とするように構成することができる。
【0009】
また、本発明のマスクにおいて好ましくは、前記液体の粘度が40mPa・s以上4000mPa・s以下である、ことを特徴とするように構成することができる。
【0010】
また、本発明のマスクにおいて好ましくは、前記蒸気発生体を加熱するために前記マスク本体に装備される発熱体をさらに含み、前記蒸気発生体は内部に流出した前記液体が前記発熱体により加熱される、ことを特徴とするように構成することができる。
【0011】
また、本発明のマスクにおいて好ましくは、前記マスク本体は、第一シート、第二シート及び第三シートの少なくとも三枚のシートを積層して構成されていて、第一シート及び第二シートの間に第一収容部が形成されており、第二シート及び第三シートの間に第二収容部が形成されており、前記蒸気発生体及び前記発熱体は、前記第一収容部及び前記第二収容部に別々に収容される、ことを特徴とするように構成することができる。
【0012】
また、本発明のマスクにおいて好ましくは、前記蒸気発生体及び前記発熱体は、ユーザの顔側から前記蒸気発生体、前記発熱体の順に位置するように、前記マスク本体に装備される、ことを特徴とするように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマスクによれば、使用の際に手が汚れる等のおそれがなく、マスク全体が水に濡れて装着時にユーザに不快感を与えることを抑制することができる。また、ユーザは装着後に十分な量の蒸気を感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】
図4(A)はマスクを幅中央線を折り目として二つ折りにした状態を示し、
図4(B)は
図4(A)の一部を破断した図である。
【
図5】
図5(A)は蒸気発生体の正面図を示し、
図5(B)は
図5(A)のA-A断面図である。
【
図6】
図6(A)は発熱体の正面図を示し、
図6(B)は
図6(A)のB-B断面図である。
【
図7】
図7(A)~(C)はマスク本体に装備される物品の下部の形状の変形例を示す。
【
図8】
図8(A)~(C)はマスク本体に装備される物品の上部の形状の変形例を示す。
【
図9】
図9はマスクの使用方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
マスクの全体構成の説明
以下、本発明のマスクの一実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1から
図4は、本実施形態のマスク1の外観を示している。マスク1は、ユーザの顔に装着されるマスク本体2と、ユーザの口や喉に蒸気を供給する蒸気発生体3と、蒸気発生体3が保有する水を含んだ液体を加熱する発熱体4と、ユーザの左右の耳に掛けられてマスク本体1を顔に保持する一対の耳掛け部5と、を含む。一対の耳掛け部5は、マスク本体2の左右の端部に設けられる。
【0016】
本実施形態のマスク1は、加湿機能を有するものであり、水を含んだ液体を保有した蒸気発生体3及び発熱可能な発熱体4が物品としてマスク本体2に装備されている。マスク1の装着時に、発熱体4の加熱により蒸気発生体3の液体の含水分が蒸気となってユーザの口や喉に供給されることで、口や喉の乾燥を抑制する。
【0017】
なお、本開示において、「左右」の方向は、マスク1の装着するユーザ側を基準とした方向を意味する。また左右方向に直交する方向(
図1及び
図3における縦方向)を上下方向とする。また左右方向の長さを幅とし、上下方向の長さを高さとする。
【0018】
マスク本体の説明
図1から
図4に示すように、マスク本体2は、ユーザの顔の口を少なくとも覆う大きさに形成されている。本実施形態では、マスク本体2は、顔の目の下の領域、特に鼻及び口を覆う大きさに形成されている。マスク本体2は、左右方向の中央に位置する幅中央線Hを軸として左右対称の形状を呈する。幅中央線Hは、幅中央線Hを折り目としてマスク本体2を二つ折りにしたときに(
図4を参照)、一対の耳掛け部5から離れる方向に向けて凸状に湾曲する形状を呈する。これにより、二つ折りのマスク本体2を広げて顔に装着したときに、マスク本体2は立体的な形状を呈し、マスク本体2の左右方向の中央部分において口や鼻孔とマスク本体2との間に空間が形成される。
【0019】
マスク本体2の上縁及び下縁は、左右方向の中央から外側(左側や右側)に向けて上下の幅が徐々に狭くなるように、それぞれ斜め下方、斜め上方に傾斜する。マスク本体2の左右の側縁は、上下方向の中央部分が凹状に湾曲した凹部20をなす形状を呈しており、一対の突部21が間に凹部20を挟むように設けられている。この一対の突部21を結ぶように耳掛け部5が取り付けられている。
【0020】
マスク本体2は、三枚のシート6~8の積層体で構成されている。ユーザの顔から最も離れた最外側に第一シート6が配置され、ユーザの顔に面する最内側に第三シート8が配置され、第一シート6及び第三シート8の間の中間に第二シート7が配置されている。つまり、第一シート6、第二シート7、第三シート8の順に、ユーザの顔から離れて位置している。三枚のシート6~8は、それぞれ上縁ないしは上縁の一部分を除いて外周縁を所定の幅で例えば接着、熱融着、超音波溶着、縫製等の公知の方法を用いて接合するとともに、幅中央線Hに沿って所定の幅で上縁から下縁まで接合することで、マスク本体2が形作られる。
【0021】
マスク本体2には、三枚のシート6~8を重ね合わせることで、隣り合う二枚のシートの間に偏平状の物品を収容可能な袋状の収容部22,23が形成される。具体的には、第一シート6及び第二シート7の間に第一収容部22が形成され、第二シート7及び第三シート8の間に第二収容部23が形成される。本実施形態では、幅中央線Hを間に挟んで左右一対の第一収容部22及び左右一対の第二収容部23がマスク本体2に形成されている。
【0022】
第二シート7及び第三シート8は、同じ形状かつ同じ大きさに形成されており、その輪郭がマスク本体2の輪郭をなしている。これに対して最外側の第一シート6は、第二シート7及び第三シート8と比較して一部分を除いて同じ形状かつ同じ大きさに形成されている。第一シート6は、その上縁の幅中央線Hから一部分において第二シート7及び第三シート8の上縁に沿うものの、残部分において第二シート7及び第三シート8の上縁に沿うことなく当該上縁よりも急勾配で下方に傾斜して、第二シート7及び第三シート8の左右の側縁の高さ方向の略中央部分に当たる点で、第二シート7及び第三シート8と形状が異なっている。
【0023】
第二シート7及び第三シート8は、その上縁が幅中央線Hから一部分において互いに接合されていないことで、この非接合部分に第二開口部25が形成されている。第二収容部23は、第二開口部25からマスク本体2に装備させる物品を出し入れ可能であり、物品は第二開口部25を通して上下方向に第二収容部23に対して出し入れされる。第二収容部23に物品を収容するには、第二開口部25を広げて第二収容部23を開く必要があり、ユーザが指を用いて第二シート7及び第三シート8を互いに擦れさせてその上縁同士を離間させることで、第二開口部25を広げることができる。
【0024】
第一シート6及び第二シート7は、その上縁が互いに接合されていないことで、非接合部分に第一開口部24が形成されている。第一収容部22は、第一開口部24からマスク本体2に装備させる他の物品を出し入れ可能であり、物品は、第一シート6の上縁が急勾配で下方に傾斜していることから、第一開口部24を通して上下方向に対して斜めを向く斜め上下方向に第一収容部22に対して出し入れされる。第一収容部22に物品を収容するには、第一開口部24を広げて第一収容部22を開く必要があり、ユーザが指を用いて第一シート6及び第二シート7を互いに擦れさせてその上縁同士を離間させることで、第一開口部24を広げることができる。なお、本実施形態では、第一シート6の上縁が第二シート7の上縁に沿っておらず、第二シート7の上縁よりも急勾配で下方に傾斜しているため、第一シート6の上縁にユーザは指を引っ掛けやすい。よって、第一シート6の上縁にユーザが指を引っ掛けて第二シート7の上縁から離間させることで、第一開口部24を広げてもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、左右一対の第一収容部22に対応して幅中央線Hを間に挟む左右一対の第一開口部24がマスク本体2に形成され、左右一対の第二収容部23に対応して幅中央線Hを間に挟む左右一対の第二開口部25がマスク本体2に形成されている。
【0026】
第一収容部22には発熱体4が収容される。一方で、第二収容部23には蒸気発生体3が収容される。そのため、本実施形態では、蒸気発生体3及び発熱体4は、マスク本体2の別々の収容部22,23に収容されるとともに、ユーザの顔側から蒸気発生体3、発熱体4の順に位置するように、マスク本体2に装備されている。マスク1の装着時に蒸気発生体3がユーザの顔に近くに位置することで、蒸気発生体3から発散される蒸気をユーザの口や喉に良好に供給することができる。そのうえ、発熱体4はユーザの顔との間に蒸気発生体3が介在するようマスク本体2に装備されるので、マスク1の装着時に発熱体4がユーザの顔に直接当たらず、ユーザが発熱体4により顔をやけどしたり、不快に感じたりすることがない。
【0027】
マスク本体2には、収容部22,23内の蒸気発生体3や発熱体4を所定位置に保持するための接合部26が設けられている。接合部26は、三枚のシート6~8を例えば接着、熱融着、超音波溶着、縫製等の公知の方法を用いて線状に接合することで形成される。接合部26は、特に限定されないが、左右方向に延びる第一部分26Aと、第一部分26Aの外側(幅中央線Hに遠い側)の端において上下方向に延びる第二部分26Bとで構成されている。第一部分26Aは、第二部分26B側の端から一部分を除いて下方に凸に湾曲する曲線状(例えば円弧状)を呈している。第一部分26Aの第二部分26B側の端から一部分と、第二部分26Bとは直線状を呈しており、両者でL字をなしている。この接合部26によって、収容部22,23に収容された蒸気発生体3や発熱体4が収容部22,23内で最初にセットされた位置から動いたり、最初にセットされた姿勢が変わったりするのが規制されている。
【0028】
三枚のシート6~8は、通気性を有する素材を用いて形成されており、マスク本体2は全体として通気性を有している。また第三シート8は、第二収容部23内の蒸気発生体3から発散される蒸気が第三シート8を透過して(言い換えれば通り抜けて)ユーザの口や喉に供給されるように、透湿性を有する素材を用いて形成されている。第三シート8の透湿性は、蒸気発生体3から発散される蒸気が第三シート8を透過することができればよく、第三シート8の透湿度は特に限定されない。なお、通常、通気性を有するシートは透湿性も有している。
【0029】
三枚のシート6~8には、特に限定されないが、例えば織布や不織布等のシート状繊維を用いることができ、その中でも不織布を好ましく用いることができる。織布及び不織布の繊維材料としては、特に限定されないが、紙、コットン等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ナイロン等の合成繊維;これらの混合繊維等を例示することができる。その中でも、生産性の観点からはポリプロピレン、ポリエチレンを好ましく例示することができ、マスク本体2の保形性の観点からはポリプロピレンを好ましく例示することができ、マスク本体2のユーザに対する肌触りの観点からはナイロンを好ましく例示することができる。
【0030】
三枚のシート6~8に不織布を用いる場合には、特に限定されないが、例えばスパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。その中でも、マスク本体2の保形性の観点からはスパンボンド不織布を好ましく用いることができ、マスク本体2のユーザに対する肌触りの観点からはスパンボンド不織布を好ましく用いることができ、マスク本体2の花粉・ウイルス等に対するカット性能の観点からはメルトブロー不織布を好ましく用いることができる。三枚のシート6~8は、それぞれを単層構造又は二層以上の積層構造とすることができる。
【0031】
三枚のシート6~8のうち、最外側の第一シート6は、特に限定されないが、第一収容部22を向く側(隣り合う第二シート7に向き合う側)の面の平均表面摩擦係数(MIU)が0.14以上であり、好ましくは0.15以上である。第一シート6の第一収容部22を向く側の面と反対側の面の平均表面摩擦係数は、特に限定されないが、0.14以上であり、好ましくは0.15以上である。
【0032】
最内側の第三シート8は、特に限定されないが、第二収容部23を向く側(隣り合う第二シート7に向き合う側)の面の平均表面摩擦係数が0.14以上であり、好ましくは0.15以上である。第三シート8の第二収容部23を向く側の面と反対側の面の平均表面摩擦係数は、特に限定されないが、0.14以上であり、好ましくは0.15以上である。
【0033】
中間の第二シート7は、特に限定されないが、第一収容部22を向く側(隣り合う第一シート6に向き合う側)の面の平均表面摩擦係数が0.14より小さく、好ましくは0.13以下であり、より好ましくは0.12以下である。第二シート7の第二収容部23を向く側(隣り合う第三シート8に向き合う側)の面のいずれも平均表面摩擦係数が0.14より小さく、好ましくは0.13以下であり、より好ましくは0.12以下である。
【0034】
つまり、第一収容部21を形成する第一シート6及び第二シート7について、互いに向かい合う面の平均表面摩擦係数が、第一シート6側が0.14以上であり、第二シート7側が0.14より小さく設定されていることが好ましい。そのうえ、第一シート6は第二シート7と向かい合う面と反対側の面についても平均表面摩擦係数が0.14以上であることが好ましい。また、第二収容部22を形成する第二シート7及び第三シート8について、互いに向かい合う面の平均表面摩擦係数が、第二シート7側が0.14より小さく、第三シート8側が0.14以上に設定されていることが好ましい。そのうえ、第三シート8は第二シート7と向かい合う面と反対側の面についても平均表面摩擦係数が0.14以上であることが好ましい。
【0035】
平均表面摩擦係数はシートの風合いを示す指標であり、その値が小さい程、表面が滑らかであって手触りがサラサラしており、その値が大きい程、表面がでこぼこしていて手触りに抵抗感がある。
【0036】
ここで、平均表面摩擦係数が大きいシート同士を擦れさせると、二枚のシートの互いに向き合う面がでこぼこしているためにシート同士が絡み合ってずれにくく、シート同士を擦れさせても容易に二枚のシートが離間しない。これに対して、本願発明者が見出した知見によると、擦れさせる二枚のシート6,7及び7,8について、それぞれ互いに向かい合う二つの面の平均表面摩擦係数を0.14を境にして、一方の面の平均表面摩擦係数を0.14以上とし、他方の面の平均表面摩擦係数を0.14より小さくすることにより、二枚のシート6,7及び7,8を擦れさせた場合に二枚のシート6,7及び7,8が互いに離間するように容易にずれる。よって、隣り合う二枚のシート6,7及び7,8の間に形成された収容部22,23に物品を挿入するための開口部24,25を容易に広げることができる。
【0037】
また、平均表面摩擦係数が小さいシート同士を擦れさせると、二枚のシートのユーザが指を当てる面(シートの互いに向き合う面と反対側の面)がツルツルしているためにシート同士を擦れさせる際に指が乾燥等していると指が滑りやすく、シート同士を擦れさせて二枚のシートを離間させるのが難しい。これに対して、擦れさせる二枚のシート6,7及び7,8について、一方のシート6,8の両面がともに平均表面摩擦係数が0.14以上であることにより、開口部24,25を広げるためにユーザが指を用いて二枚のシート6,7及び7,8を擦れさせる際に、ユーザの指が一方のシート6,8に対して滑りにくい。そのため、確実に二枚のシート6,7及び7,8を擦れさせて二枚のシート6,7及び7,8が互いに離間するようにずれさせることができる。
【0038】
なお、平均表面摩擦係数はシートの乾燥時のものであり、マスク本体2で蒸気を発生させる前(使用前)の乾燥した状態であるときの各シート6~8の平均表面摩擦係数を指す。
【0039】
平均表面摩擦係数は、以下の方法によって測定することができる。具体的には、各シート6~8の試験片を用意し、カトーテック株式会社製の表面摩擦係数測定器(KES-FB4-AUTO-A)を用いて当該試験片の平均表面摩擦係数を測定する。試験片の大きさは縦30mm及び横270mmとし、測定条件は、標準摩擦子(指紋タイプ)、摩擦時の荷重25gf/cm2、測定感度L(高感度100g/V)とする。摩擦距離、摩擦速度等その他の条件は装置仕様通りとする(摩擦距離30mm、解析距離20mm、試料移動速度1mm/sec)。平均表面摩擦係数は、20mmの解析距離にわたって測定した試験片表面の摩擦係数の平均値である。
【0040】
上述した平均表面摩擦係数を満たすこと、及び、マスク本体2としてそれぞれの機能を果たすために、最外側の第一シート6は保湿の観点からエアスルー不織布を好ましく用いることができ、中間の第二シート7は保形性の観点からはスパンボンド不織布を好ましく用いることができ、最内側の第三シート8は肌触り及びぬれ感の観点からはスパンボンド不織布を好ましく用いることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、マスク本体2は三枚のシート6~8で構成されているが、さらに一又は複数枚のシートを積層させた構造としてもよい。
【0042】
蒸気発生体の全体構成の説明
次に、
図1及び
図3から
図5に示すように、蒸気発生体3は密閉された厚みの薄い偏平状の袋状を呈しており、水袋9を内部に収納している。水袋9は、例えば押圧力を受けることで開封して液体を流出可能である。蒸気発生体3は、水袋9から流出した液体を内部に保持可能であるとともに、内部に保持した液体の含水分の蒸発により生じる蒸気が外部に透過可能である。蒸気発生体3を透過した蒸気はマスク本体2の第三シート8を透過してユーザの口や喉に供給される。
【0043】
水袋の説明
水袋9は、密閉された袋状を呈しており、内部に水を主成分とした液体を封入している。水袋9を形成する素材としては、封入した水等の液体が漏れ出さない、染み出さない素材であれば特に限定されず、従来公知の不透水性かつ非通気性(非透湿性)の袋を用いることができる。なお、不透水性とは、水を透し難い難透水性及び水を透さない非透水性を含む。
【0044】
水袋9内に封入する液体は水のみであってもよいが、水を主成分(例えば重量%で50%以上)にして他の成分を添加することが好ましい。他の成分としてはポリオールを例示することができる。ポリオールとしては、特に限定されないが、好ましくはグリセリンやジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、1,2ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール等が例示され、より好ましくは安全性の点でグリセリンが例示される。これらの他にも、メチルパラベンやフェノキシエタノール等の防腐剤;ヒアルロン酸塩やベタイン等の保湿剤;植物エキス;キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、寒天、グアーガム、カラギーナン等の水溶性増粘剤;ユーカリやミント等の香料;香料を可溶化する界面活性剤(ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤)等を他の成分として水に適宜添加することができる。
【0045】
水袋9内に封入される液体の量は、特に限定されないが、睡眠時等の長時間にわたり十分な量の蒸気をユーザに供給できる量であることが好ましく、例えば2g以上であることが好ましく、4g以上であることがより好ましい。一方で、マスク1の装着時において液体の重量によってマスク1の使用感が低下することを抑制するとの観点からは、液体の量は、例えば7g以下であることが好ましく、5g以下であることがより好ましい。
【0046】
水袋9内に封入される液体の粘度は、特に限定されないが、本願発明者が見出した知見によると、液体の粘度が大きくなると、蒸気発生体3内で液体の含水分の蒸発により生じて蒸気発生体3を透過する蒸気の量(透過量)が増加する傾向にある。そのため、液体の粘度は高くなるほど、十分な量の蒸気をユーザに供給できることから、25℃での粘度が40mPa・s以上であることが好ましく、1000mPa・s以上であることがより好ましく、1500mPa・s以上であることがさらに好ましい。一方で、液体の粘度が高すぎると、水袋9の開封時に水袋9から蒸気発生体3内に液体が流出し難くなるおそれがあるうえ、液体の粘度があるピークを超えると蒸気の透過量が減少する傾向にあることから、液体の粘度は4000mPa・s以下であることが好ましく、2500mPa・s以下であることがより好ましい。
【0047】
液体の粘度を40mPa・s以上4000mPa・s以下、さらには1000mPa・s以上2500mPa・s以下、さらには1500mPa・s以上2000mPa・s以下とすることで、蒸気発生体3を透過する単位時間あたりの蒸気の透過量、つまりは、25℃において蒸気発生体3内の液体の含水分が蒸発して蒸気として蒸気発生体3から発散する単位時間あたりの量(g/h)を十分に大きくして、マスク1の装着時にユーザに多量の蒸気を感じさせることが可能になる。
【0048】
液体の粘度は、1000mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて30rpmの回転速度で測定される。1000mPa・s以上2500mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。2500mPa・s以上10000mPa・s未満の範囲を測定する場合、SPINDLE No.M3のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。10000mPa・s以上20000mPa・s未満の範囲を測定する場合、SPINDLE No.M4のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。
【0049】
水袋9は、押圧力を受けることで開封して、内部に封入する液体を外部(蒸気発生体3内)に流出可能な構造とされている。ここで、押圧力とは、例えば水袋9を収納した蒸気発生体3をユーザが一方の手又は両方の手で挟んだ状態で蒸気発生体3に圧力を掛けられる程度の力をいう。上述の構造としては、例えば押圧力を受けたときに水袋9の少なくとも一部が破れるよう水袋9に易破断線を設ける、又は、押圧力を受けたときに水袋9の外周縁のシール部90(
図5(B)に示す)の少なくとも一部が液圧で破損するようシール部90にシール強度の弱い部分を設ける、等の従来公知の種々の構造を用いることができる。
【0050】
蒸気発生体の詳細な説明
蒸気発生体3の外形は特に限定されないが、好ましくは左右対称であり、正方形状、長方形状、円形状、楕円形状等の種々の形状とすることができる。蒸気発生体3の大きさは、特に限定されないが、横方向の長さは55mm以上80mm以下とすることができ、縦方向の長さは55mm以上80mm以下とすることができる。
【0051】
蒸気発生体3は、マスク本体2の第二収容部23に第二開口部25を介して挿入される方向で下側、つまりは第二収容部23に収容された状態において下側となる下部が先細るように形成されていることが好ましい。本実施形態では、蒸気発生体3は、
図5(A)に示す縦方向を上下方向にして、第二開口部25を介して第二収容部23に上下方向に沿って挿入されるため、その下縁33側が挿入される方向で下側となる。よって、蒸気発生体3の下縁33の左右の側縁34,35に連なる両端部分33Aが円弧状を呈しており、これにより、蒸気発生体3の下部が先細った形状を呈している。蒸気発生体3の下部の先端部分、つまりは蒸気発生体3の下縁の両端部分33Aの間の部分は水平な直線状を呈している。上述した蒸気発生体3の下縁33の両端部分33Aの円弧状は、例えば曲率半径で18mm以上の大きく湾曲した形状のものであり、単に角の面取りにより多少丸みを帯びた形状とは異なる。
【0052】
蒸気発生体3の下部を先細りとするには、
図5(A)に示す例に限らず、例えば
図7(A)(B)に示すように、蒸気発生体3の下縁33の両端部分33A又は一方の端部分33Aを直線状に傾斜させて、蒸気発生体3の下部を下側に突き出る台形状にすることで実現してもよい。
【0053】
また、
図7(C)に示すように、蒸気発生体3の下縁33を先端部分も含めて全体的に先細りとすることにより、蒸気発生体3の下部を先細りとしてもよい。この場合、例えば
図7(C)に示すように、蒸気発生体3の下縁33を例えばV字状にして蒸気発生体3の下部を下側に突き出る三角形状にしてもよいし、
図7(B)において、蒸気発生体3の下縁33の一方の端部分33Aだけを直線状に傾斜させているのに変えて、下縁33の全体を直線状に傾斜させることで蒸気発生体3の下部を下側に突き出る三角形状にしてもよい。あるいは、蒸気発生体3の下縁33を例えば円弧状や楕円弧状にして蒸気発生体3の下部を下側に突き出る半円状や半楕円状にしてもよい。蒸気発生体3の下部を下側に突き出る三角形状とした場合、例えば
図7(C)に示すように、蒸気発生体3の下部の先端部分を面取りして多少の丸みを帯びさせてもよいし、図示は省略するが、先端部分を面取りしていなくてもよい。
【0054】
蒸気発生体3の下部が先細ることにより、蒸気発生体3を下部からマスク本体2の第二収容部23に挿入する際に蒸気発生体3の下部がマスク本体2に引っ掛かりにくく、蒸気発生体3を第二収容部23に挿入しやすくなる。蒸気発生体3を第二収容部23に挿入しやすくするには、蒸気発生体3の下部の先端部分は、
図5や
図7(C)に示すように角がなくて滑らかであることが好ましい。なお、蒸気発生体3の左右の側縁33,34は、途中に直角や斜め下を向く鋭角を作ることなく上縁36及び下縁33を繋いでいる。
【0055】
蒸気発生体3は、マスク本体2の第二収容部23に上下方向に沿って出し入れされ、第二収容部23に収容された状態では、蒸気発生体3は、その下縁33がほぼ真下を向く縦向きとなり、
図4(A)に示すように、左右対称形状の軸となる軸線P1が上下方向を向く。このとき、マスク本体2の接合部26は第一部分26Aが下方に凸に湾曲する曲線状(例えば円弧状)を呈しているため、
図3及び
図4に示すように、蒸気発生体3の下部は湾曲しながら先細っていることと相まって接合部26の第一部分26Aに嵌まりやすく、蒸気発生体3を第二収容部23に収容した際に、第二収容部23内に縦向きでセットしやすくなる。また、第二収容部23に収容された蒸気発生体3は、マスク本体2の幅中央線Hと接合部26の第二部分26Bとの間で位置決めされるため、最初にセットされた位置から動いたりするのが規制される。
【0056】
マスク本体2の第二収容部23に収容された状態で上側となる蒸気発生体3の上部は、90°以下の角部を少なくとも一つ有することが好ましい。本実施形態では、
図5(A)に示すように、蒸気発生体3の上縁36の両端から左右の側縁34,35が垂下していることで、蒸気発生体3の上部が矩形状を呈しており、蒸気発生体3の上部の左右の隅における角部37,38が直角をなしている。
【0057】
蒸気発生体3の上部は、左右の隅の角部37,38が
図8(A)(B)に示すように鋭角であることで、90°以下の角部を少なくとも一つ有していてもよい。例えば
図8(A)では、蒸気発生体3の上縁が左右方向に水平に延びており、蒸気発生体3の上縁36の両端から左右の側縁34,35が内側に傾斜して延びることで、蒸気発生体3の上部の左右の隅の角部37,38が鋭角をなしている。例えば
図8(B)では、互いに平行な蒸気発生体3の左右の側縁34,35を繋ぐ上縁36が下側に突き出たV字状、円弧状、楕円弧状等をなすことで、蒸気発生体3の上部の左右の隅の角部37,38が鋭角をなしている。
【0058】
蒸気発生体3の上部は、左右の隅の角部37,38が両方ともに直角又は鋭角である必要はなく、
図8(C)に示すように、一方の隅の角部38が直角(又は鋭角)であれば、他方の隅の角部37は鈍角であってもよい。また、図示は省略するが、蒸気発生体3の上部の左右一方の隅の角部が直角であり、他方の隅の角部が鋭角であってもよい。
【0059】
蒸気発生体3の上部は、左右の隅の角部37,38が必ずしも90°以下でなくてもよく、例えば
図8(D)に示すように、蒸気発生体3の上縁36が上側に突き出たV字状をなすことで、蒸気発生体3の上縁36に90°以下の角部39を有していてもよい。
【0060】
蒸気発生体3の上部が90°以下の角部37~39を少なくとも一つ有することにより、例えば
図4では、蒸気発生体3をマスク本体2の第二収容部23に収容した後、蒸気発生体3の上部の角部37,38がマスク本体2に引っ掛かることで、蒸気発生体3が第二収容部23から抜け出しにくくなる。なお、上述した蒸気発生体3の上部の90°以下の角部37~39は、必ずしも先が尖っている必要はなく、先が面取りされて多少丸みを帯びていてもよい。
【0061】
蒸気発生体3は、水袋9から液体が流出した状態で液体が蒸気発生体3から漏れ出すことを抑制又は防止し、かつ、発熱体4からの加熱を受けて当該液体の含水分が蒸発することによって発生する蒸気を外部に透過可能な構造とされている。本実施形態では、
図5(B)に示すように、蒸気発生体3は、不透水性を有するとともに透湿性かつ通気性を有するメインシート30を用いて形成されている。メインシート30は、蒸気発生体3内に流出した液体の透過を防止する機能を有し、かつ、蒸気発生体3内で液体の含水分の蒸発により発生した蒸気を外部に透過させる機能を有するシート(フィルムも含む)である。
【0062】
メインシート30としては、例えば液不透過性の樹脂フィルムや液不透過性の不織布を用いることができる。メインシート30に用いる樹脂フィルムは、液不透過性、透湿性及び通気性が得られれば、微細な孔を多数有する多孔質フィルムであってもよいし、無孔質フィルムであってもよい。多孔質フィルムを用いる場合には、孔の大きさを調整することで透湿性を制御することができる。多孔質フィルムの樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等を例示することができる。なお、樹脂フィルムは、フッ化樹脂膜やポリウレタン膜等からなるものであってもよい。無孔質フィルムの樹脂材料としては、ウレタン系の熱可塑性エラストマー、ポリエチレン系の熱可塑性エラストマー等を例示することができる。上述の樹脂フィルムは、おむつ等の衛生材料のバックシートや高機能防護服の基材等に使用される従来公知の透湿防水シートを用いることができる。
【0063】
メインシート30に用いる不織布は、例えばSMS不織布、SMMS不織布(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の4層構造)、SMMMS不織布(スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/メルトブロー不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布の5層構造)等の液不透過性の不織布の他、スパンボンド不織布もしくはポイントボンド不織布等に樹脂フィルムがラミネートされたものを用いることもできる。不織布を用いる場合には、目の大きさを調整することで透湿性を制御することができる。
【0064】
メインシート30は、上述の樹脂フィルムや不織布を単独で用いてもよいし、2以上積層したものを用いてもよい。
【0065】
本実施形態では、蒸気発生体3は、さらに透湿性かつ通気性を有する表地シート31及び裏地シート32を用いて形成されている。メインシート30の外側(水袋9と反対側)及び内側(水袋9側)が表地シート31及び裏地シート32により補強されていることで、蒸気発生体3の耐水圧及び強度を向上可能である。
【0066】
表地シート31及び裏地シート32には、例えば織布や不織布等のシート状繊維を用いることができ、その中でも不織布を好ましく用いることができる。織布及び不織布の繊維材料としては、紙、コットン等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の半合成繊維;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ナイロン等の合成繊維;これらの混合繊維等を例示することができる。裏地シート32は、水袋9から流出する液体と接するシートであり、水袋9から液体が流出するときの液体の圧力にメインシート30が耐えられるように比較的硬くて破れにくいことが好ましく、その点でポリプロピレンを素材として用いることが好ましい。一方、表地シート31は、メインシート30を外側から保護するとともに蒸気発生体3の外装をなすシートであり、ユーザに対する肌触りが良好であることが好ましく、その点でナイロンを素材として用いることが好ましい。
【0067】
表地シート31及び裏地シート32に不織布を用いる場合には、例えばスパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。その中でも、裏地シート32には耐水圧性の観点からスパンボンド不織布を好ましく用いることができ、表地シート31には強度の観点からスパンボンド不織布を好ましく用いることができる。
【0068】
蒸気発生体3は、二枚の裏地シート32、それぞれの裏地シート32の外側に配置した二枚のメインシート30、及びそれぞれのメインシート30の外側に配置した二枚の表地シート31の計六枚の同じ形状かつ同じ大きさのシートを重ね合わせ、外周縁を所定の幅で例えば接着、熱融着、超音波溶着、縫製等の公知の方法を用いて接合することにより、袋状に形成される。なお、予め同じ形状かつ同じ大きさの裏地シート32、メインシート30、及び表地シート31を一体化した積層シートを準備し、二枚の積層シートを重ね合わせ、外周縁を所定の幅で例えば接着、熱融着、超音波溶着、縫製等の公知の方法を用いて接合することにより、蒸気発生体3を袋状に形成してもよい。
【0069】
蒸気発生体3の外周縁のシール部39の幅は、特に限定されないが、1mm以上10mm以下である。シール部39のシール強度は、特に限定されないが、水袋9から液体が流出するときの液体の圧力によりシール部39が破損して液体が蒸気発生体3の外部へ漏れ出さないようにシール強度が設定されていることが好ましい。例えば、シール部39のシール強度は、下限が3N/15mm巾以上であり、上限が30N/15mm巾以下であることが好ましい。
【0070】
蒸気発生体3は内部で生じる蒸気を外部に透過させる透湿性を有しており、蒸気発生体3の透湿度は、特に限定されないが、本願発明者が見出した知見によると、蒸気発生体3の透湿度が大きくなると、蒸気発生体3内で液体の含水分の蒸発により生じて蒸気発生体3を透過する蒸気の量(透過量)が増加する傾向にある。そのため、蒸気発生体3の透湿度は高くなるほど、十分な量の蒸気をユーザに供給できることから、7000g/m2・day以上であることが好ましく、8500g/m2・day以上であることがより好ましく、10000g/m2・day以上であることがさらに好ましい。なお、透湿度(水蒸気透過度)の定義は、JIS Z 0208に準拠する。
【0071】
蒸気発生体3の透湿度を7000g/m2・day以上、さらには8500g/m2・day以上、さらには10000g/m2・day以上とすることで、蒸気発生体3を透過する単位時間あたりの蒸気の透過量、つまりは、25℃において蒸気発生体3内の液体の含水分が蒸発して蒸気として蒸気発生体3から発散する単位時間あたりの量(g/h)を十分に大きくして、マスク1の装着時にユーザに多量の蒸気を感じさせることが可能になる。
【0072】
蒸気発生体3を透過する単位時間あたりの蒸気の透過量は、上述した蒸気発生体3の透湿度及び蒸気発生体3内で蒸発する液体の粘度に基づいて決定され、蒸気発生体3の透湿度及び液体の粘度を所定の範囲で適切に設定することにより、蒸気発生体3を透過する蒸気の透過量を0.5g/h以上、好ましくは0.6g/h以上、より好ましくは0.7g/h以上にすることができる。これにより、従来品である液体を保持したフィルターを収容部に収容するタイプのマスク(従来品としては例えば小林製薬株式会社製の「のどぬ~るぬれマスク」を挙げることができる。)のフィルターから発散する単位時間あたりの蒸気量と比較して、本実施形態のマスク1では、1.5倍以上、さらには2倍以上の多量の蒸気を蒸気発生体3から発散してユーザの口や喉に供給することができる。なお、蒸気発生体3を透過する蒸気の透過量は、特に限定されないが、大きすぎるとマスク1の装着時にユーザの顔が蒸気で濡れてしまってユーザが不快に思うおそれがあるため、1.05g/h以下とするのが好ましく、0.8g/h以下とするのがより好ましい。
【0073】
発熱体の全体構成の説明
次に、
図1、
図3、
図4及び
図6に示すように、発熱体4は密閉された厚みの薄い偏平状の袋状を呈しており、内部に発熱材料40を封入している。発熱体4は、発熱材料40が自発的に発熱し、その熱を蒸気発生体3に付与することで、蒸気発生体3における液体の含水分の蒸発を促進する。
【0074】
発熱材料の説明
発熱体4の内部に封入される発熱材料40は、本実施形態では、空気中の酸素と接触することにより発熱する発熱組成物が用いられる。発熱組成物は、酸素との接触により発熱するものであればよく、例えば、被酸化性金属、酸化促進剤、保水剤、水溶性塩類及び水を含む。
【0075】
被酸化性金属粉は、酸化されることによって発熱する金属粉であれば、特に限定されず、鉄粉、亜鉛粉、アルミニウム粉、マグネシウム粉、銅粉等が例示され、好ましくは鉄粉が例示される。また、鉄粉としては、特に限定されないが、還元鉄粉、鋳鉄粉、アトマイズド鉄粉、電解鉄粉等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
酸化促進剤は、空気(酸素)を取り込むことによって被酸化性金属粉への酸素の供給を促進することを目的に用いられる。酸化促進剤としては、特に限定されないが、活性炭、石炭、木炭、竹炭、石墨、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、コーヒーカス炭等が例示され、好ましくは活性炭、カーボンブラック、竹炭、木炭、コーヒーカス炭等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0077】
保水剤は、特に限定されないが、多孔質物質や吸水性樹脂等が例示される。保水剤として、より具体的には、バーミキュライト、パーライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、スメクタイト、マイカ、ベントナイト、炭酸カルシウム、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、二酸化珪素、珪藻土等の天然または合成の無機物、パルプ、木粉(おがくず)、綿、ポリアクリル酸塩系樹脂、ポリスルホン酸塩系樹脂、無水マレイン酸塩系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸塩系樹脂、ポリグルタミン酸塩系樹脂、ポリアルギン酸塩系樹脂、デンプン類、セルロース類等の天然または合成の有機物等が例示される。保水剤として、好ましくはバーミキュライト、パーライト、シリカゲル、珪藻土、酸化アルミニウム、木粉(おがくず)、ポリアクリル酸塩系樹脂等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0078】
水溶性塩類は、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩化物塩や硫化物塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩化物塩や硫化物塩、鉄、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銀、バリウム等の金属の塩化物塩や硫化物塩等が例示される。水溶性塩類として、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
水は、特に限定されないが、蒸留水、水道水、イオン交換水、純水、超純水、工業用水等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
発熱材料40は、必要に応じて任意の他の成分をさらに含有してもよい。上述した発熱材料40としては、従来から使い捨てカイロに用いられている公知の発熱組成物を使用することができる。なお、発熱材料40は、空気との接触により発熱する発熱組成物以外のものを用いてもよく、例えば、電子レンジ等でマイクロ波の照射を受けることで発熱する材料(例えばフェライト等のセラミック粉末)を用いてもよい。
【0081】
発熱体の詳細な説明
発熱体4の外形は特に限定されないが、好ましくは左右対称であり、正方形状、長方形状、円形状、楕円形状等の種々の形状とすることができる。発熱体4の大きさは、特に限定されないが、少なくとも発熱部分の大きさが蒸気発生体3の大きさと同じ又は小さいことが好ましい。つまり、発熱体4は、その発熱部分が蒸気発生体3に覆われる大きさであり、平面視において、蒸気発生体3の輪郭の内側に発熱体4の発熱部分の輪郭が収まるようになっていて、発熱体4の発熱部分が蒸気発生体3の周囲にはみ出さないことが好ましい。なお、発熱体4の発熱部分とは、発熱材料40が封入されている部分、つまりは、後述する外側シート41及び内側シート42の外周縁同士が接合されたシール部49を除く部分が発熱部分となる。発熱体4の発熱部分は、蒸気発生体3を加熱する部分であるため、蒸気発生体3と同じ大きさに近いことが好ましく、蒸気発生体3の50%以上100%以下の大きさ(平面視面積)であることが好ましい。なお、発熱体4の発熱部分は、蒸気発生体3よりも多少大きくてもよい。
【0082】
発熱体4は、蒸気発生体3と同様、マスク本体2の第一収容部22に第一開口部24を介して挿入される方向で下側、つまりは第一収容部22に収容された状態において下側となる下部が先細るように形成されていることが好ましい。本実施形態では、発熱体4は、
図6(A)に示す縦方向を斜め上下方向にして、第一開口部24を介して第一収容部22に斜め方向に沿って挿入されるため、その下縁43側が挿入される方向で下側となる。よって、発熱体4の下縁43が円弧状(又は楕円弧状)とされており、これにより、発熱体4の下部が下側に突き出る半円状(半楕円状)を呈することにより、発熱体4の下部が先細った形状を呈している。
【0083】
なお、発熱体4の下部を先細りとするには、
図6(A)に示す例に限らず、例えば
図7(C)に示すように、発熱体4の下縁43をV字状にして発熱体4の下部を下側に突き出る三角形状としてもよい。また、発熱体4の下縁43は、全体的に先細りとしなくても、部分的に先細っていてもよく、例えば
図7(A)に示す形状や
図5(A)の蒸気発生体3の形状のように、発熱体4の下縁43の左右の側縁44,45に連なる両端部分43Aを円弧状や斜めに傾斜する直線状とし、両端部分33Aの間の部分(発熱体4の下部の先端部分)を水平な直線状とすることにより、発熱体4の下部を先細った形状としてもよい。
【0084】
発熱体4の下部が先細ることにより、発熱体4を下部からマスク本体2の第一収容部22に挿入する際に発熱体4の下部がマスク本体2に引っ掛かりにくく、発熱体4を第一収容部22に挿入しやすくなる。発熱体4を第一収容部22に挿入しやすくするには、発熱体4の下部の先端部分は、
図6や
図7(C)に示すように角がなくて滑らかであることが好ましい。なお、発熱体4の左右の側縁43,44は、途中に直角や斜め下を向く鋭角を作ることなく上縁46及び下縁43を繋いでいる。
【0085】
発熱体4は、マスク本体2の第一収容部22に斜め上下方向に沿って出し入れされ、第一収容部22に収容された状態では、発熱体4は、その下縁43が斜め下(マスク本体2の幅中央線Hの下端側)を向く傾斜した状態となり、
図4(A)に示すように、左右対称の軸となる軸線P2が上下方向ではなく斜め上下方向を向く。つまり、軸線P2はマスク本体2の左右方向の端部の耳掛け部5側に倒れるように上下方向に対して傾斜している。このとき、マスク本体2の接合部26は第一部分26Aが下方に凸に湾曲する曲線状(例えば円弧状)を呈しているため、
図1及び
図4に示すように、発熱体4を第一収容部22に収容する際に、発熱体4を斜め下方向の奥まで第一収容部22に挿入しやすくなる。また、発熱体4の下部が湾曲しながら先細っていることから、発熱体4の下部の一部分が接合部26の第一部分26Aに嵌まり込み、第一収容部22に傾斜した状態で収容された発熱体4は、最初にセットされた姿勢が変わったりするのが規制される。さらに、第一収容部22に傾斜した状態で収容された発熱体4は、マスク本体2の側縁(凹部20)及び/又は接合部26の第二部分26Bによって下方から支持されるため、最初にセットされた姿勢が変わったりするのが規制される。
【0086】
蒸気発生体3と同様、マスク本体2の第一収容部22に収容された状態で斜め上側となる発熱体4の上部は、90°以下の角部を少なくとも一つ有することが好ましい。本実施形態では、
図6(A)に示すように、発熱体4の上縁46の両端から左右の側縁44,45が垂下していることで、発熱体4の上部が矩形状を呈しており、発熱体4の上部の左右の隅における角部47,48が直角をなしている。
【0087】
発熱体4の上部は、左右の隅の角部47,48が
図8(A)(B)に示すように鋭角であることで、90°以下の角部を少なくとも一つ有していてもよい。例えば
図8(A)では、発熱体4の上縁が左右方向に水平に延びており、発熱体4の上縁46の両端から左右の側縁44,45が内側に傾斜して延びることで、発熱体4の上部の左右の隅の角部47,48が鋭角をなしている。例えば
図8(B)では、互いに平行な発熱体4の左右の側縁44,45を繋ぐ上縁46が下側に突き出たV字状、円弧状、楕円弧状等をなすことで、発熱体4の上部の左右の隅の角部47,48が鋭角をなしている。
【0088】
発熱体4の上部は、左右の隅の角部47,48が両方ともに直角又は鋭角である必要はなく、
図8(C)に示すように、一方の隅の角部48が直角(又は鋭角)であれば、他方の隅の角部47は鈍角であってもよい。また、図示は省略するが、発熱体4の上部の左右一方の隅の角部が直角であり、他方の隅の角部が鋭角であってもよい。
【0089】
発熱体4の上部は、左右の隅の角部47,48が必ずしも90°以下でなくてもよく、例えば
図8(D)に示すように、発熱体4の上縁46が上側に突き出たV字状をなすことで、発熱体4の上縁46に90°以下の角部49を有していてもよい。
【0090】
なお、上述した発熱体4の上部の90°以下の角部47~49は、必ずしも先が尖っている必要はなく、先が面取りされて多少丸みを帯びていてもよい。発熱体4の上部が90°以下の角部47~49を少なくとも一つ有することにより、例えば
図4では、発熱体4をマスク本体2の第一収容部22に収容した後、発熱体4の上部の角部47,48がマスク本体2に引っ掛かることで、発熱体4が第一収容部22から抜け出しにくくなる。
【0091】
発熱体4は、表裏の主面をなす外側シート41及び内側シート42で構成され、同じ形状かつ同じ大きさの外側シート41及び内側シート42を重ねた状態で外周縁を全周にわたって所定の幅で接合することで袋状に形成されている。外側シート41及び内側シート42を接合する方法としては、接着、熱溶着、超音波溶着、縫合等の方法が例示される。外側シート41及び内側シート42の厚みは、発熱体4として使用できる限りは特に限定されない。発熱体4は、マスク本体2の第一収容部22に対し、外側シート41がマスク本体2の最外側の第一シート6に面するようにして収容される。
【0092】
外側シート41及び内側シート42は、特に限定されないが、樹脂フィルムや、織布及び不織布等のシート状繊維を用いることができる。その中でも、発熱体4の強度や発熱材料40の発熱に対する耐久性等を考慮すると樹脂フィルムを用いることが好ましい。樹脂フィルムに用いられる樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を例示することができるが、その中でもポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体を好ましく例示することができる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
外側シート41及び内側シート42は、樹脂フィルムに通気性を有する織布や不織布を積層させた積層体により構成してもよい。この場合には、発熱材料40側となる内側に樹脂フィルムが、外側に織布や不織布が配置される。また、外側シート41及び内側シート42は、樹脂フィルムを用いることなく、織布や不織布で構成してもよい。
【0094】
織布や不織布の繊維素材としては、コットン、麻、絹、紙等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の半合成繊維;ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート等の合成繊維;これらの繊維の混合繊維等を例示することができる。これらの繊維素材は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。織布や不織布の目付は、発熱材料40が発熱体4の外部に漏れ出すことを抑制できれば特に限定されない。
【0095】
外側シート41は通気性を有する。通気性を有する外側シート41に用いる樹脂フィルムは、通気性を確保するための微細孔を少なくとも一部分に有している。当該微細孔は、空気は通過することができる一方で、発熱材料40が通り抜けて発熱体4の外部に漏れ出すことを抑制できれば、その大きさは特に限定されず、また微細孔の形状や数等も特に限定されない。微細孔を有する樹脂フィルムは、従来公知であり、多数の穿孔が形成された樹脂フィルムや多孔質フィルム等が例示される。微細孔は、樹脂フィルムの全域に存在していてもよく、一部に密集して存在していてもよい。外側シート41は、発熱体4がマスク本体2の第一収容部22に収容される際に、マスク本体2の最外側の第一シート6に面するため、外側シート41が通気性を有することで、発熱体4は空気を内部に効率よく取り込むことができ、発熱材料40を良好に発熱させることができる。
【0096】
発熱体4がマスク本体2の第一収容部22に収容される際に、マスク本体2の中間の第二シート7に面する内側シート42は、通気性を有していてもよいし、非通気性であってもよいが非通気性であることが好ましい。
【0097】
内側シート42は、特に限定されないが、少なくともマスク本体2の第二シート7に面する外側面(発熱体4の第一主面)の平均表面摩擦係数が0.14より小さく、好ましくは0.13以下であり、より好ましくは0.12以下である。内側シート42の平均表面摩擦係数が小さいと、マスク本体2に装備される物品である発熱体4を第一収容部22に収容する際に、内側シート42の外側面(発熱体4の第一主面)がサラサラとしていて滑らかであることから、第一収容部22を構成する第二シート7に発熱体4の内側シート42が当接して擦れても、発熱体4が滑りやすいことから、第一収容部22の奥まで発熱体4を容易に挿入することができる。本実施形態では、マスク本体2の第二シート7についても第一収容部22を向く側の面の平均表面摩擦係数が0.14よりも小さく、第二シート7もサラサラとしていて滑らかであるから、発熱体4を第一収容部22の奥までより簡単に挿入することができる。
【0098】
なお、内側シート42を非通気性とすることにより、平均表面摩擦係数を良好に0.14よりも小さくすることができる。非通気性の内側シート42は、樹脂フィルムを用いる場合は樹脂フィルムに微細孔がない又は少なく、不織布等を用いる場合は不織布等にプレスをかけることで目が詰まっているため、通気性を有する場合と比べて表面が滑らかとなるからである。
【0099】
一方、外側シート41について、マスク本体2の第一シート6に面する外側面(発熱体4の第二主面)の平均表面摩擦係数は、特に限定されないが、0.14以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。外側シート41の平均表面摩擦係数が大きいと、外側シート41の外側面(発熱体4の第二主面)がでこぼこしていて滑らかでないことから、第一収容部22を構成する第一シート6に発熱体4の外側シート41が当接して擦れた際に、発熱体4が滑りにくく、第一収容部22に収容された発熱体4が第一収容部22から抜け出ることを抑制することができる。本実施形態では、マスク本体2の第一シート6についても第一収容部22を向く側の面の平均表面摩擦係数が0.14以上であり、第一シート6もでこぼこしていて滑らかでないから、外側シート41と第一シート6が絡み合って動きにくく、発熱体4を第一収容部22からさらに抜け出にくくすることができる。
【0100】
なお、平均表面摩擦係数はシートの乾燥時のものであり、マスク本体2で蒸気を発生させる前(使用前)の乾燥した状態であるときの各シート41,42の平均表面摩擦係数を指す。平均表面摩擦係数は、マスク本体2の各シート6~8の平均表面摩擦係数の測定と同様の方法で測定することができる。
【0101】
発熱体4の発熱特性としては、特に限定されないが、最高温度としては蒸気発生体3内の液体の含水分を効率よく蒸発させるとともにマスク本体2内側のユーザの顔との間の空間を好適な温度にしつつユーザのやけどを抑制する観点から、30℃以上70℃以下が好ましく、40℃以上55℃以下がより好ましい。また、蒸気発生体3内の液体の含水分を持続的に十分に蒸発させるとともにマスク本体2内側のユーザの顔との間の空間の温度を持続的に好適な温度に保つために、発熱温度が40℃以上を超える発熱持続時間としては30分以上が好ましく、80分以上がより好ましい。
【0102】
二つの物品の位置関係の説明
マスク本体2に装備される二つの物品、すなわち、蒸気発生体3及び発熱体4は、
図4に示すように、マスク本体2の第一収容部22及び第二収容部23にそれぞれ収容された状態では、いずれも一部分が他方の物品の周囲にはみ出すとともに、いずれか一方の物品の図心(重心位置)が他方の物品の図心(重心位置)よりも耳掛け部5の方に位置ずれしていることが好ましい。
【0103】
具体的に、まず、第二収容部23内の蒸気発生体3及び第一収容部22内の発熱体4は互いに完全に重なることなく(一方が他方を完全に覆うことなく)、発熱体4の一部分が蒸気発生体3の周囲にはみ出すとともに、蒸気発生体3の一部分が発熱体4の周囲にはみ出している。第二収容部23内の蒸気発生体3及び第一収容部22内の発熱体4が完全に重なっていると、マスク本体2は蒸気発生体3及び発熱体4が重なる広い部分で厚みが増して嵩張り、マスク1を装着したユーザの顔に圧迫感を与えるおそれがある。これに対して、第二収容部23内の蒸気発生体3及び第一収容部22内の発熱体4が位置ずれしていて完全に重なっていないことで、マスク本体2は蒸気発生体3及び発熱体4が重なって厚みが増した部分の面積が減る。そのため、マスク1を装着したユーザの顔に圧迫感を与えるのを抑制することができる。
【0104】
また、第二収容部23内の蒸気発生体3の図心O1及び第一収容部22内の発熱体4の図心O2が上下方向に平行な同一の直線上に位置しておらず、左右方向において位置ずれしており、本実施形態では蒸気発生体3の図心O1が発熱体4の図心O2よりも耳掛け部5の方に位置ずれしている。第二収容部23内の蒸気発生体3の図心O1及び第一収容部22内の発熱体4の図心O2が左右方向で位置ずれしていないと、マスク本体2に装備された二つの物品(蒸気発生体3及び発熱体4)の図心O1,O2が偏って、マスク本体2に物品の荷重が局所的にかかり、耳掛け部5が引っ張られて、マスク1を装着したユーザの耳に痛みを生じさせるおそれがある。これに対して、第二収容部23内の蒸気発生体3の図心O1及び第一収容部22内の発熱体4の図心O2が左右方向において位置ずれしていて一方の図心が、耳掛け部5の方に寄っていることで、マスク本体2の一部分に物品の荷重が偏ってかかるのを抑制できる。そのため、マスク1を装着したユーザの耳に痛みを生じさせるのを抑制することができる。
【0105】
本実施形態では、上述した通り、蒸気発生体3を軸線P1が上下方向を向くように縦向きで第一収容部22に収容させるようにする一方、発熱体4を軸線P2が上下方向(軸線P1)から傾斜した斜め向きで第二収容部23に収容させるようにし、蒸気発生体4を蒸気発生体3に対して周方向に位置ずれさせるとともに、第二収容部23内の蒸気発生体3及び第一収容部22内の発熱体4について最初にセットされた位置や姿勢が変わったりするのをマスク本体2の接合部26等によって規制することにより、上述した蒸気発生体3及び発熱体4の位置関係を実現している。
【0106】
耳掛け部の説明
次に、
図1から
図4に示すように、一対の耳掛け部5は、マスク本体2をユーザの顔に保持するためのものであり、ユーザの左右の耳に引っ掛けることができる。耳掛け部5は、紐状や帯状を呈しており、例えば接着、熱融着、超音波溶着、縫製等の公知の方法を用いてマスク本体2に取り付けることができる。耳掛け部5は、特に限定されないが、例えばポリエステル等の伸縮性のある素材で形成されることが好ましい。なお、マスク本体2をユーザの顔に保持する手段としては、耳掛け部5以外の他の種々の手段を用いてもよく、例えば、マスク本体2の左右の端部に粘着剤層を設けて当該粘着剤層を介してマスク本体2の左右の端部をユーザの顔に貼り付けるようにしてもよいし、マスク本体2の左右の端部に耳が入る孔を形成して当該孔を介してマスク本体2の左右の端部をユーザの左右の耳に引っ掛けるようにしてもよい。
【0107】
マスクの使用方法
上述した本実施形態のマスク1は、
図9に示すように、マスク本体2の第二収容部23に蒸気発生体3を収容するとともに第一収容部22に発熱体4を収容した状態で、ユーザが手でマスク本体2の上から蒸気発生体3を押圧することで、蒸気発生体3内の水袋9を開封して水袋9から蒸気発生体3内に液体を流出させる。そして、ユーザがマスク1を顔に装着すると、蒸気発生体3内の液体は発熱体4により加熱されることで効率的に含水分が蒸発し、ユーザの呼吸に伴い発生した蒸気が蒸気発生体3を透過して、ユーザの口や喉に供給される。これにより、ユーザの口や喉を局部的に加湿して口や喉の乾燥を防止することが可能である。
【0108】
マスクの作用・効果
上述した本実施形態のマスク1によれば、使用の際に、従来品のようにユーザは濡れたフィルターを収容部に収容する必要がなく、蒸気発生体3を押圧するだけでよいため、手間がかからないうえ、ユーザの手が水等で汚れる可能性が低下する。さらに、液体は水袋9内に封入されているため、マスク1を使用する前の保管時に蒸気発生体3にカビが生じるのを防止することができる。
【0109】
また本実施形態のマスク1によれば、蒸気発生体3が不透水性のメインシート30を用いて形成されているため、水袋9から流出した液体が外部に漏れ出して、マスク本体2が濡れるのを抑制することができる。よって、ユーザがマスク1を顔に装着した状態でユーザに不快感を与えるおそれがない。
【0110】
また本実施形態のマスク1によれば、蒸気発生体3を透過する蒸気の透過量が0.5g/h以上、好ましくは0.6g/h以上、より好ましくは0.7g/h以上であるので、従来品よりも多量の蒸気をユーザの口や喉に供給して効果的に加湿することができるうえ、ユーザに十分な量の蒸気を感じてもらうことでユーザは満足感を得ることができる。
【0111】
また本実施形態のマスク1によれば、蒸気発生体3の透湿度が好ましくは7000g/m2・day以上、より好ましくは8500g/m2・day以上、さらに好ましくは10000g/m2・day以上である、及び/又は、水袋9内の液体の粘度が好ましくは40mPa・s以上4000mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以上2500mPa・s以下、さらに好ましくは1500mPa・s以上2000mPa・s以下であるので、蒸気発生体3を透過する蒸気の透過量を十分に大きくすることができる。
【0112】
また本実施形態のマスク1によれば、蒸気発生体3内の液体を発熱体4により加熱して蒸発させるので、効率的に多くの蒸気を発生させてユーザの口や喉に供給することができる。そのうえ、発熱体4により蒸気発生体3内の液体を加熱し続けるので、多くの蒸気を長時間にわたり発生させてユーザの口や喉に供給することができ、口や喉の乾燥を長時間にわたり抑制することができる。
【0113】
また本実施形態のマスク1によれば、発熱体4からの熱でマスク本体2内側のユーザの顔との間の空間が心地よく加温された状態となる。よって、マスク1を装着したユーザにリラックス効果を付与することができるため、例えば就寝の際にマスク1を装着することにより、スーッと気持ちよく眠ることができ、快適な睡眠を誘導することができる。
【0114】
また本実施形態のマスク1によれば、発熱体4とユーザの顔との間に蒸気発生体3が介在するため、マスク1の装着時に発熱体4がユーザの顔に直接当たらない。よって、ユーザが顔をやけどしたり、不快に感じたりすることを防止できる。
【0115】
変形例の説明
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0116】
例えば上記実施形態では、マスク本体2が少なくとも三枚のシート6~8を重ね合わせて形成されていて、マスク本体2は隣り合う二枚のシートの間に形成される収容部22,23を少なくとも二つ有し、蒸気発生体3及び発熱体4がマスク本体2の別々の収容部22,23に収容されている。例えば一変形例として、マスク本体2を同じ収容部に一緒に収容してもよい。この変形例では、マスク本体2を二枚のシートを重ね合わせて形成し、この二枚のシートの間の袋状の収容部に蒸気発生体3及び発熱体4を一緒に収容することができる。
【0117】
また他の変形例として、マスク本体2のユーザの顔側にポケット(図示せず)を取り付け、蒸気発生体3及び発熱体4をポケット内に一緒に収容してもよいし、蒸気発生体3だけをポケット内に収容しかつ発熱体4をポケットの例えばマスク本体2と面する側の面に粘着層等を用いて貼り付けてもよい。
【0118】
その他、上記実施形態では、蒸気発生体3内の液体を発熱体4により加熱して含水分を蒸発させているが、蒸気発生体3内の液体を加熱する方法は特に限定されず、種々の方法を用いることができる。例えば一変形例として、水袋9を開封して内部に液体を流出させた状態の蒸気発生体3を例えば電子レンジ等のマイクロ波を照射する装置により加熱してもよい。そして加熱された状態の蒸気発生体3を備えたマスク1を装着することで、装着後に即座に多量の蒸気が蒸気発生体3から発散されるようにしてもよい。この変形例では、蒸気が発生するまでに時間を要しないため、マスク1の装着直後から多量の蒸気をユーザの口や喉の供給することができるうえ、蒸気発生体3の熱によりマスク本体2内側の顔との間の空間を加温できる。
【0119】
また他の変形例として、蒸気発生体3は加熱以外の方法で多量の蒸気を発散するように構成してもよい。さらに蒸気発生体3は何らの手段を施すことなく自然に(ユーザの呼吸で)内部の液体の含水分が蒸発することで蒸気を発散するようにしてもよい。
【0120】
その他、上記実施形態では、蒸気発生体3は軸線P1が上下方向を向くようにマスク本体2に装備されるのに対し、発熱体4は軸線P2が斜め上下方向に傾斜するようにマスク本体2に装備されており、これにより、蒸気発生体3及び発熱体4を互いに位置ずれさせて蒸気発生体3及び発熱体4が完全に重ならないうえに一方の図心O1,O2が耳掛け部5の方に位置ずれするようにしている。例えば他の変形例として、発熱体4についても蒸気発生体3と同様に軸線P2が上下方向を向くようにマスク本体2に装備し、発熱体4を蒸気発生体3に対して上下方向に位置ずれさせる、又は左右方向に位置ずれさせる等して、蒸気発生体3及び発熱体4を互いに位置ずれさせて蒸気発生体3及び発熱体4が完全に重ならないうえに蒸気発生体3及び発熱体4の一方の図心O1,O2が耳掛け部5の方に位置ずれするようにしてもよい。なお、蒸気発生体3及び発熱体4は完全に重なるようにマスク本体2に装備してもよい。
【0121】
その他、上記実施形態では、マスク本体2はユーザの顔への装着時に鼻孔及び口との間に大きな空間を形成する立体構造のものである。しかし、マスク本体2の構造は特に限定されず、例えば使用前には平坦状をなしており、使用時には1つ又は複数のプリーツ等を広げることによって上下方向に伸長させてユーザの顔に装着させる構造(立体構造よりも顔の表面により密着する構造)のものであってもよい。
【実施例0122】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定される
ものではない。
【0123】
まず、蒸気発生体を透過する蒸気の透過量と、マスクを装着したユーザが感じる蒸気量との関係について試験を行った。具体的に、上述の液不透過性の樹脂フィルム及び/又は不織布等を用いて形成された、不透水性を有するとともに透湿度の異なる袋状の蒸気発生体を複数種用意し、それぞれの蒸気発生体に以下の表1に示す液体を4.5g封入した。蒸気発生体は、全てが横55mm及び縦78mmのサイズを有する矩形状であり、その外周縁は熱融着により接合されてシール部とされており、当該シール部の幅は5mmである。各試験例の蒸気発生体の透湿度及び蒸気発生体に封入された液体の粘度は以下の表2に示す通りである。各試験例の蒸気発生体について、初めに重量を測定した後、温度25℃及び湿度55%の環境下で、40℃のホットプレート上で1時間静置させ、1時間経過後の重量を測定し、重量変化を計測した。得られた重量変化より、各試験例の蒸気発生体について蒸気の透過量を算出した。その結果を表2に示す。
【0124】
また、各試験例の蒸気発生体を、
図1から
図4に示す構造のマスク本体の第二収容部に収容するとともに、使い捨てカイロ(発熱温度:約40℃)をマスク本体の第一収容部に収容したマスクを、使い捨てカイロを発熱させながら、温度25℃及び湿度55%の環境下で6名の被験者に60分間装着してもらい、マスクによる加湿効果について官能評価を行った。評価にはVAS(Visual Analogue Scale)法を用いた。具体的には、10cmの線の左端(0点)を「加湿効果を感じない」とし、右端(10点)を「加湿効果を非常に感じる」として評点化し、各マスクを装着しているときに感じた蒸気量の程度が直線上のどの位置にあてはまるかを印で表示してもらった。全ての被験者の評点結果を平均し、小数点第一位を四捨五入することにより、評価結果をまとめた。その結果を表2に示す。
【0125】
【0126】
【0127】
表2によると、蒸気発生体を透過する蒸気の透過量が0.5g/h以上であると、多量の蒸気をユーザの口や喉に供給して効果的に加湿しており、ユーザに十分な量の蒸気を感じてもらえてユーザが満足感を得ることが分かる。
【0128】
次に、蒸気発生体の内部の液体の粘度と、蒸気発生体を透過する蒸気の透過量との関係について試験を行った。具体的に、上述した試験例と同じように、不透水性を有するとともに透湿度が同じ袋状の蒸気発生体を複数用意し、それぞれの蒸気発生体に粘度が異なる液体(成分は表1に示す)を4.5g封入した。各試験例の蒸気発生体の透湿度及び蒸気発生体に封入された液体の粘度は以下の表3に示す通りである。各試験例について、初めに重量を測定した後、温度25℃及び湿度55%の環境下で、40℃のホットプレート上で1時間静置させ、1時間経過後の重量を測定し、重量変化を計測した。得られた重量変化より、各試験例の蒸気発生体について蒸気の透過量を算出した。その結果を表3に示す。
【0129】
【0130】
表3によると、蒸気発生体内の液体の粘度が大きくなると蒸気発生体を透過する蒸気の透過量が大きくなり、液体の粘度が2000mPa・sを超えると蒸気発生体を透過する蒸気の透過量が低下しはじめ、液体の粘度が2500mPa・sを超えると透過量の低下度合いが大きくなることが確認された。よって、液体の粘度を2500mPa・s以下、さらには2000mPa・s以下とすることで、蒸気発生体3を透過する蒸気の透過量を大きくできることが分かる。また、蒸気発生体の透湿度が8500g/m2・day以上であると、液体の粘度が大きくても小さくても、蒸気発生体を透過する蒸気の透過量を0.5g/h以上とすることができ、多量の蒸気をユーザの口や喉に供給できることが分かる。
【0131】
次に、蒸気発生体の透湿度と、蒸気発生体を透過する蒸気の透過量との関係について試験を行った。具体的に、上述した試験例と同じように、不透水性を有するとともに透湿度が異なる袋状の蒸気発生体を複数用意し、それぞれの蒸気発生体に粘度が同じ液体(成分は表1に示す)を4.5g封入した。各試験例の蒸気発生体の透湿度及び蒸気発生体に封入された液体の粘度は以下の表4に示す通りである。各試験例について、初めに重量を測定した後、温度25℃及び湿度55%の環境下で、40℃のホットプレート上で1時間静置させ、1時間経過後の重量を測定し、重量変化を計測した。得られた重量変化より、各試験例の蒸気発生体について蒸気の透過量を算出した。その結果を表4に示す。
【0132】
【0133】
表4によると、蒸気発生体の透湿度が大きくなると蒸気発生体を透過する蒸気の透過量が大きくなり、蒸気発生体の透湿度が8500g/m2・dayよりも10000g/m2・day以上である方が蒸気発生体を透過する蒸気の透過量を大きくすることができ、より多量の蒸気をユーザの口や喉に供給できることが分かる。