IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-67788光電変換素子、および光電変換素子モジュール
<>
  • 特開-光電変換素子、および光電変換素子モジュール 図1
  • 特開-光電変換素子、および光電変換素子モジュール 図2
  • 特開-光電変換素子、および光電変換素子モジュール 図3
  • 特開-光電変換素子、および光電変換素子モジュール 図4
  • 特開-光電変換素子、および光電変換素子モジュール 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067788
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】光電変換素子、および光電変換素子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H10K 39/10 20230101AFI20230509BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L31/04 120
H01L31/04 112C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022167661
(22)【出願日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021177553
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】田元 望
(72)【発明者】
【氏名】兼為 直道
【テーマコード(参考)】
5F151
【Fターム(参考)】
5F151AA11
5F151FA04
5F151FA06
5F151GA03
5F151JA02
(57)【要約】
【課題】生産性と初期出力性能と耐久性の良好な光電変換素子を提供する。
【解決手段】第1基板、第1電極、光電変換層、第2電極、および第2基板を順に積層する光電変換素子であって、前記光電変換層を少なくとも囲む粘着層を有し、平面視で、前記粘着層の外縁と前記第1基板の外縁との間に、前記粘着層の外縁を囲むクリアランスが形成されている、光電変換素子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板、第1電極、光電変換層、第2電極、および第2基板を順に積層する光電変換素子であって、
前記光電変換層を少なくとも囲む粘着層を有し、
平面視で、前記粘着層の外縁と前記第1基板の外縁との間に、前記粘着層の外縁を囲むクリアランスが形成されている、
光電変換素子。
【請求項2】
平面視で、前記クリアランスの前記粘着層の外縁と前記第1基板の外縁との間隔が0.01mm以上である、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記粘着層の周方向の厚みが0.2mm以上である、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記第2基板は、前記粘着層の一部で構成され、
前記第2基板のエッジ部分が曲面加工されている、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記粘着層が感圧粘着剤で形成されている、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記粘着層が吸湿剤を含有する、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記第2電極と前記第2基板との間に電極保護層を有する、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記電極保護層が、シラン構造を有するフッ素化合物を含有する、
請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記光電変換層は、光増感化合物を有する電子輸送層と、ホール輸送層と、を有する、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記第2基板は金属フィルムで形成されている、
請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の光電変換素子を含む、
光電変換素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、および光電変換素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の代替エネルギーとして、また地球温暖化対策として、太陽電池やフォトダイオードの重要性が高まっている。太陽電池やフォトダイオードは、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる光電変換素子を応用したものである。
【0003】
最近では、太陽光(直射光での照度:約100,000 lux)に限らず、LED(light emitting diode:発光ダイオード)や蛍光灯など、低照度の光(照度:20 lux以上1,000 lux以下)でも高い発電性能を有する室内向けの光電変換素子が注目を集めている。
【0004】
例えば、基材およびガスバリア層を有するガスバリア性フィルムと、封止基材と、ガスバリア性フィルムと封止基材との間に位置する電子素子本体と、溶接促進剤と、を含む、電子デバイスが提案されている。この電子デバイスでは、ガスバリア性フィルムと封止基材とが溶接促進剤を介して接合されることにより、電子素子本体が封止されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止部材を有する従来の光電変換素子では、封止部材(粘着層)が基板外にはみ出すことで、ユーザがデバイスに触れた際に粘着部分に触れてしまい、生産性と初期出力性能が低下する可能性がある。また、はみ出した粘着層や基板にユーザが触れることで封止部が破れ、デバイスの耐久性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明の課題は、生産性と初期出力性能と耐久性の良好な光電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、第1基板、第1電極、光電変換層、第2電極、および第2基板を順に積層する光電変換素子であって、前記光電変換層を少なくとも囲む粘着層を有し、平面視で、前記粘着層の外縁と前記第1基板の外縁との間に、前記粘着層の外縁を囲むクリアランスが形成されている、光電変換素子を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生産性と初期出力性能と耐久性の良好な光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】光電変換素子の一例を示す概略図である。
図2】光電変換素子の一例を示す平面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】光電変換素子の従来例を示す平面図である。
図5図4のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本実施形態の光電変換素子の一例について説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、下記構成部材の数、位置、形状等について、本実施の形態に記載されていないものについても、本発明の範疇に含まれる。以下、本発明の実施の形態について、説明する。
【0011】
(光電変換素子)
本実施形態の光電変換素子101は、図1に示すように、第1基板1と、第1電極2と、ホールブロッキング層3と、光増感化合物5を有する電子輸送層4と、ホール輸送層6と、第2電極7と、第2基板9と、を有する。光電変換素子101は、さらに該光電変換層(電子輸送層4およびホール輸送層6)を少なくとも囲む封止部材8を有する。
【0012】
本明細書において、「少なくとも囲む」とは、封止部材が光電変換層の側面のみを囲む場合、封止部材が光電変換層の側面および上面の全体を囲む(覆う)場合、のいずれでもよいことを示す。
【0013】
光電変換素子101において、第1基板1、ホールブロッキング層3、第2基板9は、任意に設けられる。電子輸送層4およびホール輸送層6は、光電変換層を構成する。また、封止部材8は、電子輸送層4、ホール輸送層6、および第2電極7を、光電変換素子の外部環境から遮蔽する封止部材を構成する。本実施形態では、封止部材8の一部が第2基板9で構成されている。
【0014】
本明細書において、光電変換素子は、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる素子であり、例えば、太陽電池やフォトダイオードなどに応用される。
【0015】
<<第1基板>>
第1基板1は、光電変換素子101の第1電極2側の最外部に配置されている。第1基板1の形状、構造、大きさは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0016】
第1基板1の材質としては、透光性および絶縁性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。これらの中でも、後述するように電子輸送層4を形成する際に焼成する工程を含む場合は、焼成温度に対して耐熱性を有する基板が好ましい。また、第1基板1としては、可撓性を有するものがより好ましい。
【0017】
<第1電極>
第1電極2は、第1基板1上に形成されている。第1電極2の形状、大きさは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
第1電極2の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層構造であってもよいし、複数の材料を積層する構造であってもよい。
【0019】
第1電極2の材質としては、可視光に対する透明性および導電性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、透明導電性金属酸化物、カーボン、金属などが挙げられる。
【0020】
透明導電性金属酸化物としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、「ITO」と称する)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、「FTO」と称する)、アンチモンドープ酸化スズ(以下、「ATO」と称する)、ニオブドープ酸化スズ(以下、「NTO」と称する)、アルミドープ酸化亜鉛、インジウム・亜鉛酸化物、ニオブ・チタン酸化物などが挙げられる。
【0021】
カーボンとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。
【0022】
金属としては、例えば、金、銀、アルミニウム、ニッケル、インジウム、タンタル、チタンなどが挙げられる。
【0023】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、透明性が高い透明導電性金属酸化物が好ましく、ITO、FTO、ATO、NTOがより好ましい。
【0024】
第1電極2の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上100μm以下が好ましく、50nm以上10μm以下がより好ましい。なお、第1電極2の材質がカーボンや金属の場合には、第1電極2の平均厚みとしては、透光性を得られる程度の平均厚みにすることが好ましい。
【0025】
第1電極2は、スパッタ法、蒸着法、スプレー法等の公知の方法などにより形成することができる。
【0026】
なお、第1電極2は、予め第1基板1上に第1電極2が形成されている一体化された市販品を用いることができる。
【0027】
一体化された市販品としては、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチックフィルム、ITOコート透明プラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0028】
他の一体化された市販品としては、例えば、酸化スズ若しくは酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、またはメッシュ状やストライプ状等の光が透過できる構造にした金属電極を設けたガラス基板などが挙げられる。
【0029】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して混合または積層したものでもよい。また、電気的抵抗値を下げる目的で、金属リード線などを併用してもよい。
【0030】
金属リード線の材質としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケルなどが挙げられる。
【0031】
金属リード線は、例えば、蒸着、スパッタリング、圧着などで基板に形成し、その上にITOやFTOの層を設けることにより併用することができる。
【0032】
なお、図示を省略しているが、第1電極2は、電極取出し端子まで導通する経路を有する。
【0033】
<<ホールブロッキング層>>
ホールブロッキング層3は、光電変換素子101において、電子とホールの再結合を防止することができる。出力の向上並びにその持続性の向上に寄与する。ホールブロッキング層3は、第1電極2と電子輸送層4との間に形成されている。言い換えると、ホールブロッキング層3は、第1電極2と光電変換層との間に設けられている。
【0034】
ホールブロッキング層3は、例えば、光増感化合物5で生成され、電子輸送層4に輸送された電子を第1電極2に輸送し、かつホール輸送層6との接触を防ぐことができる。これにより、ホールブロッキング層3は、第1電極2へホールを流入しにくくし、電子とホールの再結合による出力低下を抑制することができる。
【0035】
なお、ホール輸送層6を設けた固体型の光電変換素子101では、電解液を用いた湿式型に比べて、ホール輸送材料中のホールと電極表面の電子の再結合速度が速いことから、ホールブロッキング層3の形成による効果は非常に大きい。
【0036】
ホールブロッキング層3の材質としては、可視光に対して透明であり、かつ電子輸送性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、シリコン、ゲルマニウム等の単体半導体、金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物などが挙げられる。
【0037】
金属のカルコゲニドとしては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。
【0038】
他の化合物半導体としては、例えば、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物などが挙げられる。
【0039】
ペロブスカイト構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどが挙げられる。
【0040】
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化スズなどがより好ましく、酸化チタンがさらに好ましい。
【0041】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、単層としても積層してもよい。また、これらの半導体の結晶型は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でもよいし、多結晶でもよいし、または非晶質でもよい。
【0042】
ホールブロッキング層3の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空中で薄膜を形成する方法(真空製膜法)、湿式製膜法などが挙げられる。
【0043】
真空製膜法としては、例えば、スパッタリング法、パルスレーザーデポジッション法(PLD法)、イオンビームスパッタ法、イオンアシスト法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、アトミックレイヤーデポジッション法(ALD法)、化学気相成長法(CVD法)などが挙げられる。
【0044】
湿式製膜法としては、例えば、ゾル-ゲル法が挙げられる。ゾル-ゲル法は、溶液から、加水分解や重合、縮合などの化学反応を経てゲルを作製し、その後、加熱処理によって緻密化を促進させる方法である。
【0045】
ゾル-ゲル法を用いた場合、ゾル溶液の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などが挙げられる。
【0046】
また、ゾル溶液を塗布した後の加熱処理の際の温度としては、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0047】
ホールブロッキング層3の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であるが、5nm以上1μm以下が好ましく、湿式製膜では500nm以上700nm以下がより好ましく、乾式製膜では5nm以上30nm以下がより好ましい。
【0048】
<光電変換層>
光電変換層は、光電変換素子101に照射された光を電気に変換する層である。具体的には、光電変換層は、光照射された光を吸収し、発生した電子およびホールを第1電極2または第2電極7に輸送することで光電変換する。
【0049】
そのため、光電変換層には、電子を輸送するための電子輸送層4、光を吸収し電荷を発生する光増感化合物5、及びホールを輸送するためのホール輸送層6等を含むことができる。
【0050】
本実施形態の光電変換層は、後述のホール輸送層6を有し、さらに、後述の電子輸送層4を有することが好ましく、必要に応じてその他の層を含んでいてもよい。
【0051】
<<電子輸送層>>
電子輸送層4は、ホールブロッキング層3を介して第1電極2上に形成されている。電子輸送層4は、例えば、光増感化合物5で生成された電子を第1電極2またはホールブロッキング層3まで輸送するための層である。このため、電子輸送層4は、第1電極2またはホールブロッキング層3に隣接して配置されることが好ましい。また、用いる材料によっては、電子輸送層4と光増感化合物5とを兼ねることも可能である。
【0052】
電子輸送層4の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子101において、電子輸送層4どうしが互いに延設されずに分割されていることが好ましい。
【0053】
電子輸送層4どうしが分割されていれば、電子拡散が抑制されてリーク電流が低下するため、光耐久性が向上する点で有利である。また、電子輸送層4の構造としては、単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。
【0054】
電子輸送層4は、電子輸送性材料を含み、必要に応じてその他の材料を含む。
【0055】
電子輸送性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、半導体材料が好ましい。
【0056】
半導体材料は、微粒子状の形状を有し、これらが接合することによって、多孔質状の膜に形成されることが好ましい。多孔質状の電子輸送層4を構成する半導体粒子では、その表面に、光増感化合物5が化学的または物理的に吸着することができる。電子輸送層4を多孔質状にすることで、表面に吸着する光増感化合物5の量を飛躍的に増加させることが可能になり、高出力化が可能になる。
【0057】
このように、本実施形態においては、光電変換層が、電子輸送層4を有し、電子輸送層4が、半導体材料を含む。
【0058】
半導体材料としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、単体半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物などが挙げられる。
【0059】
単体半導体としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどが挙げられる。
【0060】
化合物半導体としては、例えば、金属のカルコゲニド、具体的には、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウム等のテルル化物などが挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム砒素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物などが挙げられる。
【0061】
ペロブスカイト構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどが挙げられる。
【0062】
これらの中でも、酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズおよび酸化ニオブがより好ましい。電子輸送層4の電子輸送性材料が酸化チタンであると、導電帯(Conduction Band)が高く、高い開放電圧が得られる。また、屈折率が高く、光閉じ込め効果により高い短絡電流が得られる。さらに、誘電率が高く、移動度が高くなることで、高い曲線因子が得られる点で有利である。
【0063】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、半導体材料の結晶型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単結晶でも多結晶でもよく、非晶質でもよい。
【0064】
半導体材料の一次粒子の個数平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上50nm以下がより好ましい。また、個数平均粒径よりも大きい半導体材料を混合または積層させてもよく、入射光を散乱させる効果により、変換効率を向上できる場合がある。この場合の個数平均粒径は、50nm以上500nm以下が好ましい。
【0065】
電子輸送層4の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上100μm以下が好ましく、100nm以上50μm以下がより好ましく、120nm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0066】
電子輸送層4の平均厚みが好ましい範囲内であると、単位投影面積当たりの光増感化合物5の量を十分に確保でき、光の捕獲率を高く維持できるとともに、注入された電子の拡散距離も増加しにくく、電荷の再結合によるロスを少なくできる点で有利である。
【0067】
電子輸送層4の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタリング等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストの観点から、湿式製膜法が好ましく、半導体材料の粉末またはゾルを分散したペーストを調製し、電子集電電極基板としての第1電極2の上、またはホールブロッキング層3の上に塗布する方法がより好ましい。
【0068】
湿式製膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などが挙げられる。
【0069】
湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの様々な方法を用いることができる。
【0070】
半導体材料の分散液を作製する方法としては、例えば、公知のミリング装置等を用いて機械的に粉砕する方法が挙げられる。この方法により、粒子状の半導体材料を単独で、または半導体材料と樹脂の混合物を、水または溶媒に分散することにより半導体材料の分散液を作製できる。
【0071】
樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
【0073】
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、α-テルピネオールなどが挙げられる。
【0074】
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0075】
エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
【0076】
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
【0077】
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0078】
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
【0079】
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
【0080】
これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
半導体材料を含む分散液、またはゾル-ゲル法等によって得られた半導体材料を含むペーストには、粒子の再凝集を防ぐため、酸、界面活性剤、キレート化剤などを添加してもよい。
【0082】
酸としては、例えば、塩酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。
【0083】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0084】
キレート化剤としては、例えば、アセチルアセトン、2-アミノエタノール、エチレンジアミンなどが挙げられる。
【0085】
また、製膜性を向上させる目的で、増粘剤を添加してもよい。
【0086】
増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどが挙げられる。
【0087】
半導体材料を塗布した後に、半導体材料の粒子間を電子的に接触させ、膜強度や基板との密着性を向上させるために焼成したり、マイクロ波や電子線を照射したり、またはレーザー光を照射することができる。これらの処理は、1種単独で行ってもよく、2種類以上組み合わせて行ってもよい。
【0088】
半導体材料から形成された電子輸送層4を焼成する場合、焼成温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、焼成温度が高すぎると基板の抵抗が高くなったり、溶融したりすることから、焼成温度としては、30℃以上700℃以下が好ましく、100℃以上600℃以下がより好ましい。また、焼成時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10分間以上10時間以下が好ましい。
【0089】
半導体材料から形成された電子輸送層4をマイクロ波照射する場合には、照射時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。この場合、電子輸送層4が形成されている面側から照射してもよく、電子輸送層4が形成されていない面側から照射してもよい。
【0090】
半導体材料からなる電子輸送層4を焼成した後、電子輸送層4の表面積の増大や、後述する光増感化合物5から半導体材料への電子注入効率を高める目的で、化学メッキや電気化学的メッキ処理を行ってもよい。化学メッキには、例えば、四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いられる。また、電気化学的メッキ処理には、例えば、三塩化チタン水溶液が用いられる。
【0091】
直径が数十nmの半導体材料を焼結し得られた膜は、多孔質状を形成することができる。このようなナノ多孔質構造は、非常に高い表面積を有し、その表面積はラフネスファクターを用いて表わすことができる。
【0092】
ラフネスファクターは、第1基板1に塗布した半導体粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表わす数値である。したがって、ラフネスファクターとしては、大きいほど好ましいが、電子輸送層4の平均厚みとの関係から、20以上が好ましい。
【0093】
また、電子輸送性材料の粒子には、リチウム化合物をドーピングしてもよい。例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)化合物の溶液を、スピンコートなどを用いて電子輸送性材料の粒子の上に堆積させ、その後焼成処理する方法である。
【0094】
リチウム化合物は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。リチウム化合物としては、例えば、前述のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)のほか、リチウムビス(フルオロメタンスルホンイミド)、リチウムビス(フルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムなどが挙げられる。
【0095】
<<光増感化合物>>
本実施形態においては、電子輸送層4が光増感化合物5を有する。具体的には、光電変換素子101における変換効率の向上のため、光増感化合物5を電子輸送層4の電子輸送性材料(例えば、半導体材料)の表面に吸着させる。
【0096】
光増感化合物5は、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光増感化合物としては、例えば、特表平7-500630号公報、特開平10-233238号公報、特開2000-26487号公報、特開2000-323191号公報、特開2001-59062号公報等に記載の金属錯体化合物;特開平10-93118号公報、特開2002-164089号公報、特開2004-95450号公報、J.Phys.Chem.C,7224,Vol.111(2007)等に記載のクマリン化合物;特開2004-95450号公報、Chem.Commun.,4887(2007)等に記載のポリエン化合物;特開2003-264010号公報、特開2004-63274号公報、特開2004-115636号公報、特開2004-200068号公報、特開2004-235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)、Angew.Chem.Int.Ed.,1923,Vol.47(2008)等に記載のインドリン化合物;J.Am.Chem.Soc.,16701,Vol.128(2006)、J.Am.Chem.Soc.,14256,Vol.128(2006)等に記載のチオフェン化合物;特開平11-86916号公報、特開平11-214730号公報、特開2000-106224号公報、特開2001-76773号公報、特開2003-7359号公報等に記載のシアニン色素;特開平11-214731号公報、特開平11-238905号公報、特開2001-52766号公報、特開2001-76775号公報、特開2003-7360号公報等に記載のメロシアニン色素;特開平10-92477号公報、特開平11-273754号公報、特開平11-273755号公報、特開2003-31273号公報等に記載の9-アリールキサンテン化合物;特開平10-93118号公報、特開2003-31273号公報等に記載のトリアリールメタン化合物;特開平9-199744号公報、特開平10-233238号公報、特開平11-204821号公報、特開平11-265738号公報、J.Phys.Chem.,2342,Vol.91(1987)、J.Phys.Chem.B,6272,Vol.97(1993)、Electroanal.Chem.,31,Vol.537(2002)、特開2006-032260号公報、J.Porphyrins Phthalocyanines,230,Vol.3(1999)、Angew.Chem.Int.Ed.,373,Vol.46(2007)、Langmuir,5436,Vol.24(2008)等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物などが挙げられる。
【0097】
これらの中でも、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物、チオフェン化合物が好ましく、例えば、下記構造式(1)、下記構造式(2)、下記構造式(3)の化合物(以上、三菱製紙社製)が好ましく用いられる。
【0098】
【化1】
【0099】
【化2】
【0100】
【化3】
【0101】
さらに好ましく用いられる光増感化合物として、下記一般式(1)を含む化合物が挙げられる。
【0102】
【化4】
【0103】
上記一般式(1)式中、X11、およびX12は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、またはセレン原子を表す。
【0104】
11は置換基を有していてもよいメチン基を表す。その置換基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基、チエニル基、フリル基などのヘテロ環が挙げられる。
【0105】
12は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、2-プロピル基、2-エチルヘキシル基等、アリール基およびヘテロ環基としては、前述のものが挙げられる。
【0106】
13はカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、フェノール類などの酸性基を表す。R13は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0107】
、およびZは、それぞれ独立して、環状構造を形成する置換基を表し、Zは、ベンゼン環、ナフタレン環などの縮合炭化水素系化合物、チオフェン環、フラン環などのヘテロ環が挙げられ、それぞれ置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、前述のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、2-イソプロポキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。Zはそれぞれ下記に示す(A-1)~(A-22)が挙げられる。
【0108】
なお、mは0から2の整数を表す。
【0109】
【化5】
【0110】
上記化合物の中でも、下記一般式(2)で表される化合物が、より好ましく用いられる。
【0111】
【化6】
【0112】
ただし、一般式(2)中、nは0または1の整数を表す。Rは、置換基を有していてもよいアリール基、または次の3つの構造式で表されるいずれかの置換基を表す。
【0113】
【化7】
【0114】
上記一般式(1)および一般式(2)を含む光増感化合物の具体例としては、以下に示す(B-1)~(B-41)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0115】
【化8】
【0116】
【化9】
【0117】
【化10】
【0118】
【化11】
【0119】
【化12】
【0120】
【化13】
【0121】
さらに、好ましく用いられる光増感化合物として、下記一般式(3)を含む化合物も挙げられる。
【0122】
【化14】
【0123】
ただし、一般式(3)中、ArおよびArは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。RおよびRは、炭素数4~10の直鎖または分岐状のアルキル基を表す。Xは、次の4つの構造式で表されるいずれかの置換基を表す。
【0124】
【化15】
【0125】
上記一般式(3)で表される光増感化合物の中でも、下記一般式(4)で表される化合物は、より好ましく用いられる。
【0126】
【化16】
【0127】
ただし、一般式(4)中、ArおよびArは、置換基を有してもよいフェニル基、または置換基を有してもよいナフチル基を表す。Arは、置換基を有してもよいフェニル基、または置換基を有してもよいチオフェン基を表す。
【0128】
以下に、上記一般式(3)および上記一般式(4)で示される光増感化合物の具体例として下記の(B-42)~(B-58)を示すが、本実施形態における光増感化合物5はこれらに限定されるものではない。
【0129】
【化17】
【0130】
【化18】
【0131】
【化19】
【0132】
【化20】
【0133】
【化21】
【0134】
これらの光増感化合物は、1種を含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
【0135】
LED光源は暖色、寒色、白色などの色味が異なるものが用いられ、色味によってスペクトルが異なる。例えば、色温度が3,000Kのときは、相対的に600nmの領域が強くなり、赤味を帯びた電球色になる。また、色温度が5,000Kのときは、全体的にバランスが取れた昼白色になる。さらに、色温度が6,500Kを超えると、450nmの領域が相対的に強くなり、青みがかった昼光色になる。
【0136】
光電変換素子では、このように使用するLEDの色温度が異なっても、高い出力を維持できることが望ましい。そのため、色温度による出力差を低減する観点から、異なる光増感化合物を混合することが好ましい。
【0137】
電子輸送層4の半導体材料の表面に、光増感化合物5を吸着させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、光増感化合物5の溶液中または光増感化合物5の分散液中に半導体材料を含む電子輸送層4を浸漬する方法、光増感化合物5の溶液または光増感化合物5の分散液を電子輸送層4に塗布して吸着させる方法などが挙げられる。
【0138】
光増感化合物5の溶液中または光増感化合物5の分散液中に半導体材料を含む電子輸送層4を浸漬する方法の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などを用いることができる。
【0139】
光増感化合物5の溶液または光増感化合物5の分散液を電子輸送層4に塗布して吸着させる方法の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法などを用いることができる。また、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で吸着させることも可能である。
【0140】
光増感化合物を半導体材料に吸着させる際には、縮合剤を併用してもよい。
【0141】
縮合剤としては、半導体材料の表面に物理的もしくは化学的に、光増感化合物を結合させるような触媒的作用をするもの、または化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるもののいずれであってもよい。さらに、縮合助剤として、チオールやヒドロキシ化合物などを添加してもよい。
【0142】
光増感化合物を溶解または分散する溶媒としては、例えば、水、アルコール溶媒、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
【0143】
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
【0144】
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0145】
エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
【0146】
エーテル溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
【0147】
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0148】
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
【0149】
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
【0150】
これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0151】
光増感化合物は、その種類によっては化合物間の凝集を抑制した方がより効果的に働くものが存在するため、凝集解離剤を併用してもよい。凝集解離剤としては、コール酸、ケノデオキシコール酸などのステロイド化合物、長鎖アルキルカルボン酸または長鎖アルキルホスホン酸が挙げられる。
【0152】
凝集解離剤の含有量としては、光増感化合物1モル部に対して0.5モル部以上100モル部以下が好ましく、10モル部以上50モル部以下がより好ましい。
【0153】
電子輸送層4を構成する半導体材料の表面に、光増感化合物5または光増感化合物5、および凝集解離剤を吸着させる際の温度としては、-50℃以上200℃以下が好ましい。吸着時間としては、5秒間以上1,000時間以下が好ましく、10秒間以上500時間以下がより好ましく、1分間以上150時間以下がさらに好ましい。
【0154】
吸着させる工程は、暗所で行うことが好ましい。また、吸着させる工程は、静置して行ってもよく、撹拌しながら行ってもよい。
【0155】
撹拌する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、超音波分散等を用いた方法などが挙げられる。
【0156】
また、本実施形態においては、ペロブスカイト層を設けることも可能である。ペロブスカイト層とは、ペロブスカイト化合物を含み、光を吸収して電子輸送層4を増感する層を意味する。そのため、ペロブスカイト層は、電子輸送層4に隣接して配置されることが好ましい。
【0157】
ペロブスカイト化合物は、有機化合物と無機化合物の複合物質であり、以下の一般式(5)で表わされる。
XαYβMγ ・・・一般式(5)
【0158】
上記の一般式(5)において、α:β:γの比率は3:1:1であり、βおよびγは1より大きい整数を表す。また、例えば、Xはハロゲンイオン、Yはアルキルアミン化合物イオン、Mは金属イオンなどとすることができる。
【0159】
上記の一般式(5)におけるXとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンイオンが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0160】
上記の一般式(5)におけるYとしては、メチルアミン、エチルアミン、n-ブチルアミン、ホルムアミジンなどのアルキルアミン化合物イオンや、セシウム、カリウム、ルビジウムなどが挙げられる。
【0161】
また、ハロゲン化鉛-メチルアンモニウムのペロブスカイト化合物の場合、ハロゲンイオンがClのときは、光吸収スペクトルのピークλmaxは約350nm、Brのときは約410nm、Iのときは約540nmと、順に長波長側にシフトするため、利用できるスペクトル幅(バンド域)は異なる。
【0162】
上記の一般式(5)におけるMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、銅、ビスマス等の金属などが挙げられる。
【0163】
また、ペロブスカイト層は、ハロゲン化金属からなる層と有機カチオン分子が並んだ層が、交互に積層した層状ペロブスカイト構造を示すことが好ましい。
【0164】
ペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲン化金属およびハロゲン化アルキルアミンを、溶解または分散させた溶液を塗布した後に乾燥する方法などが挙げられる。
【0165】
また、ペロブスカイト層を形成するその他の方法としては、例えば、ハロゲン化金属を溶解または分散させた溶液を塗布、乾燥した後、ハロゲン化アルキルアミンを溶解させた溶液中に浸して、ペロブスカイト化合物を形成する二段階析出法などが挙げられる。
【0166】
さらに、ペロブスカイト層を形成するさらにその他の方法としては、例えば、ハロゲン化金属およびハロゲン化アルキルアミンを溶解または分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒(溶解度が小さい溶媒)を加えて結晶を析出させる方法などが挙げられる。
【0167】
加えて、ペロブスカイト層を形成する方法としては、例えば、メチルアミンなどが充満したガス中において、ハロゲン化金属を蒸着する方法などが挙げられる。
【0168】
これらの中でも、ハロゲン化金属およびハロゲン化アルキルアミンを溶解または分散した溶液を塗布しながら、ペロブスカイト化合物にとっての貧溶媒を加えて結晶を析出させる方法が好ましい。
【0169】
溶液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが挙げられる。また、溶液を塗布する方法としては、例えば、二酸化炭素などを用いた超臨界流体中で析出させる方法であってもよい。
【0170】
また、ペロブスカイト層は、光増感化合物を含んでもよい。増感色素としては、使用される励起光により光励起される化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の光増感化合物が挙げられる。
【0171】
増感色素を含んだペロブスカイト層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ペロブスカイト化合物と光増感化合物5を混合する方法、ペロブスカイト層を形成した後で、光増感化合物5を吸着させる方法などが挙げられる。
【0172】
<<ホール輸送層>>
ホール輸送層6は、ホールを輸送する機能を有する層であり、ホール輸送材と、下記一般式(6)および上記一般式(7)の少なくともいずれかで表されるピリジン化合物と、後述の一般式(8)で表されるリチウム塩とを含んでいれば、そのほかの材料については公知の材料を用いることができる。
【0173】
公知の材料としては、例えば、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、無機ホール輸送材料、有機ホール輸送材料などが挙げられる。これらの中でも、固体電解質が好ましく、有機ホール輸送材料がより好ましい。
【0174】
また、後述の一般式(8)で表されるリチウム塩におけるリチウムカチオンは電子輸送層4にマイグレートした状態であってもよく、例えば、リチウムカチオンの半分以上が電子輸送層4に含まれる状態であってもよい。
【0175】
ホール輸送層6は、電子輸送層4の上部及び内部に形成されている。本実施形態では、ホール輸送層6が電子輸送層4の内部に充填されることで、光電変換素子101の出力がさらに向上できる。この場合、電子輸送層4内に充填されたホール輸送層6もホール輸送層として扱われる。
【0176】
光電変換層におけるピリジン化合物としては、下記一般式(6)および下記一般式(7)の少なくともいずれか表されるピリジン化合物が挙げられる。
【0177】
【化22】
【0178】
【化23】
【0179】
ただし、一般式(6)および一般式(7)中、ArおよびArは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0180】
アリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0181】
以下に、上記一般式(6)で示されるピリジン化合物の具体例として下記の(H-1)~(H-8)を示すが、本実施形態におけるピリジン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0182】
【化24】
【0183】
ホール輸送層6における上記のピリジン化合物の含有量としては、ホール輸送材料に対して、20モル%以上65モル%以下が好ましく、35モル%以上50モル%以下がより好ましい。ピリジン化合物の含有量が好ましい範囲であることにより、高い開放電圧を維持でき、高い出力が得られ、かつ様々な環境(特に低温環境)で長期使用しても高い安定性と耐久性が得られる。
【0184】
本実施形態において、光電変換層におけるホール輸送層6には、下記一般式(8)で表されるリチウム塩が含有される。
【0185】
【化25】
【0186】
ただし、一般式(8)中、AおよびBは、F、CF、C、C、およびCのいずれかの置換基を表し、Aの置換基とBの置換基は互いに異なる。
【0187】
これらのリチウム塩としては、例えば、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-FTFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-FPFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド(Li-FNFSI)、リチウム(ノナフルオロブタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-NFTFSI)、リチウム(ペンタフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-PFTFSI)などが挙げられる。これらの中でも、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-FTFSI)が特に好ましい。
【0188】
上記のリチウム塩の具体例の構造式は、以下の通りである。
【0189】
【化26】
【0190】
ここで、例えば、リチウム塩を含有したホール輸送層形成用塗布液を用いて塗布した場合、形成した膜において、上記のリチウム塩は、アニオンとカチオンが結合した塩の状態で含有している必要はなく、リチウムカチオンとアニオンに分離した状態であってもよい。
【0191】
具体的には、リチウム塩は、例えば、ホール輸送層形成用塗布液に含有した状態でホール輸送層6を形成すると、リチウムカチオンは電子輸送層4にマイグレートし、ホール輸送層6よりも電子輸送層4に多く含有されることを本発明者らは知見した。一方、アニオンについては、例えば、電子輸送層4に一部マイグレートされるものの、電子輸送層4よりもホール輸送層6に多く含有されることを本発明者らは知見した。
【0192】
本実施形態においては、リチウム塩のカチオンとアニオンが分離し、それぞれが異なる分布状態を形成することが好ましい。リチウム塩がカチオンとアニオンに分離して光電変換層内に含有されていることで、低温環境においても、低照度の光に対して高い出力が得られ、かつ出力の持続性に優れるという効果をさらに向上させることができる。
【0193】
光電変換層におけるホール輸送層6には、上記一般式(8)で表されるリチウム塩に加えて、別の構造を有するリチウム塩を含有させることもできる。
【0194】
これらのリチウム塩としては、前述のリチウム塩の他に、アニオン種が対称のものでもよい。
【0195】
アニオン種が対称のリチウム塩としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li-FSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-TFSI)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li-BETI)、リチウムビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミド等が挙げられる。また、リチウム(シクロヘキサフルオロプロパン)(ジスルホン)イミドのような環状イミドも挙げられる。
【0196】
ただし、これらのリチウム塩は、アニオンが対称型であるため相溶性が低く、添加量を増加することが難しくなるため、添加するとしても少量が好ましい。
【0197】
上記一般式(8)で表されるリチウム塩の含有量としては、ホール輸送材料に対して、5モル%以上50モル%以下であることが好ましく、20モル%以上35モル%以下がより好ましい。含有量が上記範囲内であることにより、低照度光に対する出力が高く、かつ出力の維持率が向上し、高耐久化との両立が可能になる。
【0198】
特に、光電変換層において、ピリジン化合物のモル量をaとし、リチウム塩のモル量をbとしたとき、ピリジン化合物とリチウム塩のモル比であるa/bは、2.0未満であることが好ましく、1.8以下がより好ましく、1.7以下がさらに好ましい。
【0199】
モル比a/bが2.0未満であると、低温環境で低照度光を照射したときの高い出力をさらに長期間維持することが可能になり、光電変換素子の耐久性をさらに向上できるという利点がある。
【0200】
ホール輸送層6には、ホールを輸送する機能を得るために、例えば、ホール輸送材料またはp型半導体材料が含有される。ホール輸送材料またはp型半導体材料としては、公知の有機ホール輸送性化合物を用いることができる。
【0201】
その具体例としては、オキサジアゾール化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、ヒドラゾン化合物、オキサジアゾール化合物、テトラアリールベンジジン化合物、スチルベン化合物、スピロ型化合物等を挙げることができる。
【0202】
これらの中でもスピロ型化合物がより好ましい。
【0203】
スピロ型化合物としては、下記一般式(9)を含む化合物が好ましい。
【0204】
【化27】
【0205】
ただし、一般式(4)中、R31~R34は、それぞれ独立して、ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチル-4-トリルアミノ基等の置換アミノ基を表す。
【0206】
スピロ型化合物の具体例としては、以下に示す(D-1)~(D-20)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0207】
【化28】
【0208】
【化29】
【0209】
【化30】
【0210】
【化31】
【0211】
【化32】
【0212】
【化33】
【0213】
【化34】
【0214】
また、ホール輸送材料としてのスピロ型化合物としては、下記一般式(10)で表される化合物をより好適に用いることができる。
【化35】
【0215】
ただし、一般式(10)中、Rは、水素原子またはアルキル基を表す。
【0216】
例えば、上記の(D-1)~(D-20)の内、上記一般式(10)で表されるものは、上記の(D-7)および(D-10)である。
【0217】
これらのスピロ型化合物は、高いホール移動度を有している他に、2つのベンジジン骨格分子が捻れて結合しているため、球状に近い電子雲を形成しており、分子間におけるホッピング伝導性が良好であることにより優れた光電変換特性を示す。
【0218】
また、これらのスピロ型化合物は、溶解性も高いため各種有機溶媒に溶解し、アモルファス(結晶構造をもたない無定形物質)であるため、多孔質状の電子輸送層4に密に充填されやすい。さらに、450nm以上の光吸収特性を有さないために、光増感化合物5に効率的に光吸収をさせることができ、固体型色素増感型太陽電池にとってより好ましい。
【0219】
ホール輸送層6には、ホール輸送材料やリチウム塩以外に、酸化剤を添加することが好ましい。酸化剤を含有させることにより、ホール輸送性が向上し、出力特性やその耐久性または安定性を高めることが可能になる。
【0220】
酸化剤としては、例えば、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4-ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート、硝酸銀、金属錯体、超原子価ヨウ素化合物などが挙げられるが、これらの中でも金属錯体および超原子価ヨウ素化合物が好適に用いられる。
【0221】
酸化剤が金属錯体や超原子価ヨウ素化合物であると、有機溶媒に対する溶解度が高いことで、多く添加することが可能になり、その結果ホール輸送性が向上し、かつその効果の持続性に優れる。
【0222】
金属錯体は、金属カチオン、配位子、アニオンから構成される。
【0223】
金属カチオンとしては、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、金、白金等のカチオンを挙げることができる。これらの中でも、コバルト、鉄、ニッケル、銅のカチオンが好ましく、コバルト錯体がより好ましい。
【0224】
配位子としては、少なくとも一つの窒素を含有する5員複素環および/または6員複素環を含むものが好ましく、置換基を有していてもよい。配位子の具体例としては、下記の(E-1)~(E-33)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0225】
【化36】
【0226】
【化37】
【0227】
アニオンとしては、例えば、水素化物イオン(H)、フッ化物イオン(F)、塩化物イオン(Cl)、臭化物イオン(Br)、ヨウ化物イオン(I)、水酸化物イオン(OH)、シアン化物イオン(CN)、硝酸イオン(NO )、亜硝酸イオン(NO )、次亜塩素酸イオン(ClO)、亜塩素酸イオン(ClO )、塩素酸イオン(ClO )、過塩素酸イオン(ClO )、過マンガン酸イオン(MnO )、酢酸イオン(CHCOO)、炭酸水素イオン(HCO )、リン酸二水素イオン(HPO )、硫酸水素イオン(HSO )、硫化水素イオン(HS)、チオシアン酸イオン(SCN)、テトラフロオロホウ素酸イオン(BF )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )、テトラシアノホウ素酸イオン(B(CN) )、ジシアノアミンイオン(N(CN) )、p-トルエンスルホン酸イオン(TsO)、トリフルオロメチルスルホン酸イオン(CFSO2-)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミンイオン(N(SOCF2-)、テトラヒドロキソアルミン酸イオン([Al(OH)、または[Al(OH)(HO))、ジシアノ銀(I)酸イオン([Ag(CN))、テトラヒドロキソクロム(III)酸イオン([Cr(OH))、テトラクロロ金(III)酸イオン([AuCl)、酸化物イオン(O )、硫化物イオン(S )、過酸化物イオン(O 2-)、硫酸イオン(SO 2-)、亜硫酸イオン(SO 2-)、チオ硫酸イオン(S 2-)、炭酸イオン(CO 2-)、クロム酸イオン(CrO 2-)、二クロム酸イオン(Cr 2-)、リン酸一水素イオン(HPO 2-)、テトラヒドロキソ亜鉛(II)酸イオン([Zn(OH)2-)、テトラシアノ亜鉛(II)酸イオン([Zn(CN)2-)、テトラクロロ銅(II)酸イオン([CuCl2-)、リン酸イオン(PO 3-)、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン([Fe(CN)3-)、ビス(チオスルファト)銀(I)酸イオン([Ag(S3-)、ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン([Fe(CN)4-)などが挙げられる。
【0228】
これらのアニオンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、テトラフロオロホウ素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラシアノホウ素酸イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミンイオン、過塩素酸イオンが好ましい。
【0229】
これらの金属錯体の中でも、3価のコバルト錯体を添加することがより好ましい。酸化剤として3価のコバルト錯体を添加すると、ホール輸送材料を酸化させ、安定化することが可能になり、ホール輸送性を高めることができる。
【0230】
本実施形態においては、例えば、ホール輸送層形成用塗布液に添加するコバルト錯体には3価を用いることが好ましいが、ホール輸送層形成用塗布液を用いて得られた光電変換素子101のホール輸送層6には2価のコバルト錯体が含有されていることが好ましい。
【0231】
これは、3価のコバルト錯体がホール輸送材料と混合することで、ホール輸送材料が酸化され、コバルト錯体が2価になるためである。言い換えると、本実施形態においては、光電変換層が、2価のコバルト錯体をさらに含むことが好ましい。
【0232】
さらに、光電変換素子101のホール輸送層6には3価のコバルト錯体は殆ど残存せず、ほぼすべてのコバルト錯体が2価になっていることがより好ましい。これにより、ホール輸送性が向上し、かつ安定化し、高出力化並びにその持続性が向上できるだけでなく、低温環境でもその効果をさらに発揮することが可能になる。
【0233】
ホール輸送層6に含有されるコバルト錯体の価数については、例えば、XAFS分析を行うことにより明確化できる。XAFS分析は、X-ray Absorption Fine Structureの略であり、X線吸収微細構造解析と称される。例えば、試料にX線を照射し、その吸収量を計測することにより、XAFSスペクトルを得ることができる。
【0234】
XAFSスペクトル中、吸収端近傍構造は、XANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)と称され、吸収端より約100eV以上高エネルギー側に現れる広域X線吸収微細構造は、EXAFS(Extended X-ray Absorption Fine Structure)と称される。なお、着目する原子の価数や構造に関する情報は、主として前者のXANESより得ることができる。
【0235】
この場合、例えば、2価および3価のコバルト錯体粉末のXAFSスペクトルを別途測定し、ホール輸送層6に含有するコバルト錯体のXAFSスペクトルと比較することによって、ホール輸送層6に含有されるコバルト錯体の価数を明らかにすることができる。
【0236】
ホール輸送層形成用塗布液に添加する3価のコバルト錯体は、下記構造式(4)および(5)で示されるコバルト錯体が好ましく用いることができる。
【0237】
【化38】
【0238】
【化39】
【0239】
ただし、構造式(4)および(5)中、RからR10は、水素原子、メチル基、エチル基、ターシャルブチル基、またはトリフルオロメチル基を示す。Xは、下記構造式(6)~(9)のいずれかを示す。
【0240】
【化40】
【0241】
Xについては、構造式(6)~(9)の中でも、構造式(8)がより好ましい。構造式(8)を用いることにより、ホール輸送材料が酸化された状態で安定に維持され得る。
【0242】
これらのコバルト錯体の具体例としては、以下に示す(F-1)~(F-24)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0243】
【化41】
【0244】
【化42】
【0245】
【化43】
【0246】
酸化剤の含有量としては、ホール輸送材料に対して、1モル%以上30モル%以下であることが好ましく、5モル%以上20モル%がより好ましい。酸化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用することで、ホール輸送層6が結晶化しにくくなり、高い耐熱性が得られる場合がある。
【0247】
ホール輸送層6は、単一材料からなる単層構造でもよく、複数の化合物を含む積層構造であってもよい。ホール輸送層6が積層構造の場合には、第2電極7に近いホール輸送層6に高分子材料を用いることが好ましい。製膜性に優れる高分子材料を用いると、多孔質状の電子輸送層4の表面をより平滑化することができ、光電変換特性を向上することができる点で有利である。
【0248】
また、高分子材料は、多孔質状の電子輸送層4内部へ浸透しにくいことから、多孔質状の電子輸送層4表面の被覆性に優れ、電極を設ける際の短絡防止の効果が得られる場合がある。
【0249】
ホール輸送層6に用いられる高分子材料としては、公知のホール輸送性高分子材料が挙げられる。
【0250】
ホール輸送性高分子材料としては、例えば、ポリチオフェン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリフルオレン化合物、ポリフェニレン化合物、ポリアリールアミン化合物、ポリチアジアゾール化合物などが挙げられる。
【0251】
ポリチオフェン化合物としては、例えば、ポリ(3-n-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-n-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(9,9'-ジオクチル-フルオレン-コ-ビチオフェン)、ポリ(3,3'''-ジドデシル-クォーターチオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(2,5-ビス(3-デシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チエノ[3,2-b]チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-チオフェン)、ポリ(3,6-ジオクチルチエノ[3,2-b]チオフェン-コ-ビチオフェン)などが挙げられる。
【0252】
ポリフェニレンビニレン化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[2-メトキシ-5-(3,7-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(2-エチルフェキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)-コ-(4,4'-ビフェニレン-ビニレン)]などが挙げられる。
【0253】
ポリフルオレン化合物としては、例えば、ポリ(9,9'-ジドデシルフルオレニル-2,7-ジイル)、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(9,10-アントラセン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(4,4'-ビフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレン)-alt-コ-(2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチル-2,7-ジイル)-コ-(1,4-(2,5-ジヘキシルオキシ)ベンゼン)]などが挙げられる。
【0254】
ポリフェニレン化合物としては、例えば、ポリ[2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレン]、ポリ[2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ-1,4-フェニレン]などが挙げられる。
【0255】
ポリアリールアミン化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N'-ジフェニル)-N,N'-ジ(p-ヘキシルフェニル)-1,4-ジアミノベンゼン]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(N,N'-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N'-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N'-ビス(4-オクチルオキシフェニル)ベンジジン-N,N'-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[(N,N'-ビス(4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニル)ベンジジン-N,N'-(1,4-ジフェニレン)]、ポリ[フェニルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジオクチルオキシ-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[p-トリルイミノ-1,4-フェニレンビニレン-2,5-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン-1,4-フェニレン]、ポリ[4-(2-エチルヘキシルオキシ)フェニルイミノ-1,4-ビフェニレン]などが挙げられる。
【0256】
ポリチアジアゾール化合物としては、例えば、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-alt-コ-(1,4-ベンゾ(2,1',3)チアジアゾール]、ポリ(3,4-ジデシルチオフェン-コ-(1,4-ベンゾ(2,1',3)チアジアゾール)などが挙げられる。
【0257】
これらの中でも、キャリア移動度やイオン化ポテンシャルの観点から、ポリチオフェン化合物およびポリアリールアミン化合物が好ましい。
【0258】
ホール輸送層6の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ホール輸送層6は、多孔質状の電子輸送層4の細孔に入り込んだ構造を有することが好ましい。ホール輸送層6の平均厚みとしては、ホール輸送層6の平均厚みは、電子輸送層4上に0.01μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましく、0.2μm以上2μm以下がさらに好ましい。
【0259】
ホール輸送層6は、光増感化合物5が吸着された電子輸送層4の上に直接形成することができる。ホール輸送層6の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法、湿式製膜法などが挙げられる。これらの中でも、製造コストなどの点で、より湿式製膜法が好ましく、電子輸送層4上に塗布する方法が好ましい。
【0260】
湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができる。塗布方法としては、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、スリットダイコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法を用いることができる。また、湿式印刷方法としては、例えば、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等の種々の様々な方法を用いることができる。
【0261】
また、超臨界流体または臨界点より低い温度および圧力の亜臨界流体中で製膜してもよい。超臨界流体は、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度および圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態にある流体である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。
【0262】
超臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、アルコール溶媒、炭化水素溶媒、ハロゲン溶媒、エーテル溶媒などが挙げられる。
【0263】
アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノールなどが挙げられる。
【0264】
炭化水素溶媒としては、例えば、エタン、プロパン、2,3-ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどが挙げられる。ハロゲン溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどが挙げられる。
【0265】
エーテル溶媒としては、例えば、ジメチルエーテルなどが挙げられる。
【0266】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0267】
これらの中でも、二酸化炭素が、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易である点で好ましい。
【0268】
亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度および圧力領域において、高圧液体として存在する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。超臨界流体として挙げられる化合物は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
【0269】
超臨界流体の臨界温度および臨界圧力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、-273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下がより好ましい。
【0270】
さらに、超臨界流体および亜臨界流体に加え、有機溶媒やエントレーナーを併用することもできる。有機溶媒およびエントレーナーの添加により、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
【0271】
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、アミド溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、炭化水素溶媒などが挙げられる。
【0272】
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0273】
エステル溶媒としては、例えば、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどが挙げられる。
【0274】
エーテル溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどが挙げられる。
【0275】
アミド溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられる。
【0276】
ハロゲン化炭化水素溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1-クロロナフタレンなどが挙げられる。
【0277】
炭化水素溶媒としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、1,5-ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメンなどが挙げられる。
【0278】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0279】
また、光増感化合物5を吸着させた電子輸送層4上に、ホール輸送材料を積層した後、プレス処理工程を施してもよい。プレス処理を施すことによって、ホール輸送材料がより多孔質電極である電子輸送層4と密着するため、効率が改善できる場合がある。
【0280】
プレス処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、IR錠剤成形器に代表されるような平板を用いたプレス成形法、ローラ等を用いたロールプレス法などを挙げることができる。
【0281】
圧力としては、10kgf/cm以上が好ましく、30kgf/cm以上がより好ましい。
【0282】
プレス処理する時間は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1時間以下が好ましい。また、プレス処理時に熱を加えてもよい。プレス処理の際、プレス機と電極との間に離型剤を挟んでもよい。
【0283】
離型剤としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン、ポリクロロ三フッ化エチレン、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体、ペルフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリフッ化ビニリデン、エチレン四フッ化エチレン共重合体、エチレンクロロ三フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0284】
なお、プレス処理工程を行った後、第2電極7を設ける前に、ホール輸送層6と第2電極7との間に金属酸化物(図示せず)を設けてもよい。
【0285】
金属酸化物としては、例えば、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、酸化モリブデンが好ましい。
【0286】
金属酸化物をホール輸送層6上に設ける方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、スパッタリング、真空蒸着等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法などが挙げられる。湿式製膜法としては、金属酸化物の粉末またはゾルを分散したペーストを調製し、ホール輸送層6上に塗布する方法が好ましい。
【0287】
湿式製膜法を用いた場合の塗布方法としては、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができ、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷などの様々な方法を用いることができる。
【0288】
塗布された金属酸化物の平均厚みとしては、0.1nm以上50nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましい。
【0289】
<<第2電極>>
第2電極7は、ホール輸送層6上に形成されている。なお、ホール輸送層6と第2電極7との間に金属酸化物が形成されている場合は、ホール輸送層6における金属酸化物上に第2電極7を形成することができる。また、第2電極7は、第1電極2と同様のものを用いることができ、強度が十分に保たれる場合には第2基板9は必ずしも必要ではない。
【0290】
第2電極は、透光性を有することが好ましい。透光性を有するとは、第2電極の光透過率が50%以上であることを意味する。ここで、光透過率は一般的な紫外可視分光光度計により測定することができる。
【0291】
第2電極7の材質としては、例えば、金属、炭素化合物、導電性金属酸化物、導電性高分子などが挙げられる。
【0292】
金属としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0293】
第2電極に用いられる金属の形態は、特に制限されず、例えば、ナノワイヤ等であってもよい。ナノワイヤとしては、導電性の点で、銀ナノワイヤが好ましい。
【0294】
第2電極に銀ナノワイヤを用いる場合には、第2電極は、少なくともポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、またはこれらの誘導体の導電性高分子のいずれかをさらに混合されていることがさらに好ましい。これにより、光電変換素子の可撓性を付与し、ホール輸送層との密着力を高めることができる。
【0295】
-銀ナノワイヤ-
銀ナノワイヤとは、断面直径が1μm未満であり、アスペクト比(長軸長/直径)が10以上である、断面直径がナノレベルのワイヤ状の金属構造体である。
【0296】
銀ナノワイヤの直径は、5nm以上250nm以下であることが好ましく、10nm以上150nm以下であることがより好ましい。銀ナノワイヤの直径がこの範囲内であると、第2電極の塗膜としての透明性に優れる。
【0297】
銀ナノワイヤの長軸長は、0.5μm以上500μm以下であることが好ましく、2.5μm以上100μm以下であることがより好ましい。この範囲内であると、銀ナノワイヤの分散性に優れ、また、透明導電膜とした際の導電性や透明性に優れる。
【0298】
銀ナノワイヤは、特に制限はなく、公知の製造方法で得られたものを用いることができる。本発明においては、N置換アクリルアミド含有重合体をワイヤ成長制御剤として、銀化合物をポリオール中において25℃~180℃で反応させる工程を含む製造方法から得られた銀ナノワイヤが好ましい。
【0299】
-導電性高分子-
導電性高分子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリチオフェン又はその誘導体、ポリアニリン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリアセチレン又はその誘導体、ポリカルバゾール又はその誘導体、ポリビニルピリジン又はその誘導体、ポリ(n-ビニルカルバゾール)又はその誘導体、ポリフルオレン又はその誘導体、ポリフェニレン又はその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)又はその誘導体、ポリ(ピリジンビニレン)又はその誘導体、ポリキノキサリン又はその誘導体、ポリキノリン又はその誘導体、ポリオキサジアゾール誘導体、ポリバソフェナントロリン誘導体、ポリトリアゾール誘導体、またはこれらのポリマーを適宜、アミン基、ヒドロキシ基、ニトリル基、カルボニル基等の置換基で置換したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性が高い点から、ポリチオフェン又はその誘導体、ポリアニリン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体が好ましい。
【0300】
銀ナノワイヤを用いた第2電極(以下、銀ナノワイヤ層という)は、ホール輸送層上に銀ナノワイヤ分散液を付与することにより形成される。
【0301】
銀ナノワイヤ分散物は、銀ナノワイヤ、分散媒、及びその他の成分を含有する。
【0302】
分散媒としては、例えば、水、アルコール類が挙げられる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチルプロパノール、1,1-ジメチルエタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0303】
その他の成分としては、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、界面活性剤、重合性化合物、酸化防止剤、硫化防止剤、腐食防止剤、粘度調整剤、防腐剤などを含有することができる。
【0304】
銀ナノワイヤ層は、上記銀ナノワイヤ分散液を用い、公知の塗布方法によって形成することができる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、ブレードコート法、バーコート法、スプレー法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法、ディスペンス法、インクジェット法などが挙げられる。
【0305】
銀ナノワイヤ層については、400から800nmにおける平均透過率が、電気抵抗の観点としては、90%以下が好ましい。また、第2電極側から光照射時に高い発電力を得るためには、50%以上が好ましい。更に、光耐久性の観点においては、60%以上80%以下であることがより好ましい。
【0306】
炭素化合物としては、例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェンなどが挙げられる。
【0307】
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO、FTO、ATOなどが挙げられる。
【0308】
導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリアニリンなどが挙げられる。
【0309】
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0310】
第2電極7の形成については、用いられる材料の種類やホール輸送層6の種類により、適宜ホール輸送層6上に塗布法、ラミネート法、蒸着法、CVD法、貼り合わせ法などの手法により形成可能である。
【0311】
第2電極7の形態は、特に限定されないが、好ましくはフィルム状であり、より好ましくは金属フィルムで形成されている。
【0312】
なお、第2電極7は、電極取出し端子12まで導通する経路を有する。
【0313】
光電変換素子101においては、第1電極2と第2電極7の少なくともいずれかは実質的に透明であることが好ましい。第1電極2側が透明であり、入射光を第1電極2側から入射させる方法が好ましい。この場合、第2電極7側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、または金属薄膜が好ましく用いられる。また、入射光側に反射防止層を設けることも可能である。
【0314】
<<第2基板>>
第2基板9は、第2電極7の上方に形成されている。具体的には、第2基板9は、第2電極7と第2基板9との間に配置された後述の封止部材8上に形成され、第2基板9が封止部材8に固定されている。第2基板9としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができ、例えば、ガラス、プラスチックフィルム、セラミック等の基板が挙げられる。第2基板9と封止部材8との接合部は密着性を上げるため、凹凸部を形成してもよい。
【0315】
凹凸部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。
【0316】
第2基板9と封止部材8との密着性を上げる手段としては、例えば、表面の有機物を除去してもよく、親水性を向上させてもよい。第2基板9の表面の有機物を除去する手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UVオゾン洗浄、酸素プラズマ処理などが挙げられる。
【0317】
<<封止部材>>
封止部材8は、第2基板9を固定しながら第1電極2に接着され、少なくとも光電変換層(電子輸送層4およびホール輸送層6)を囲む。封止部材8は、光電変換層を光電変換素子101の外部環境から遮蔽し得る。封止部材8は、光電変換素子を構成する粘着層の一例である。
【0318】
封止部材8としては、外部環境から封止部材8の内部(以下、封止内部という)への過剰な水分や酸素などの侵入を低減できるものであれば、特に限定されず、公知の部材を使用可能である。また、封止部材8は、外部から押圧されることによる機械的な破壊を防止する効果もあり、これを実現できるものであれば、公知の部材を使用可能である。
【0319】
封止の方式は、光電変換素子101の光電変換層で構成される発電領域の周縁部に封止部材を設け、第2基板9と接着する「枠封止」と、発電領域全面に封止部材を設け、第2基板9と接着する「面封止」に大別できる。
【0320】
前者の「枠封止」は、封止内部に中空部10を形成することができるため、封止内部の水分量や酸素量を適正に調整することが可能である。また、「枠封止」は、第2電極7が封止部材8と接触していないために、電極剥がれの影響を低減できる効果がある。
【0321】
一方、後者の「面封止」は、外部からの過剰な水や酸素の侵入を防止する効果に優れている。また、「面封止」は、封止部材との接着面積が大きいため、封止強度が高く、特に第1基板1にフレキシブル基板を用いた場合に適している。
【0322】
本実施形態では、封止部材8が第1電極2に接着されているが、密閉性を高める観点から、粘着層(封止部材)8は第1電極2ではなく、第1基板1と接着させることも可能である。
【0323】
封止部材の種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能であり、例えば、硬化樹脂や低融点ガラス樹脂、感圧粘着剤などが挙げられる。感圧粘着剤としては、圧力により接着する粘着剤であれば、特に制限なく、目的に応じて適宜選択可能である。
【0324】
感圧粘着剤は、オレフィン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。すなわち、感圧粘着剤として、これらの樹脂を1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0325】
また、感圧粘着剤として硬化樹脂を用いる場合は、光や熱によって硬化する樹脂であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択可能である。このような硬化樹脂としては、これらの中でもアクリル樹脂やエポキシ樹脂が好ましく用いられる。
【0326】
アクリル樹脂の硬化物は、分子内にアクリル基を有するモノマーまたはオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
【0327】
エポキシ樹脂の硬化物は、分子内にエポキシ基を有するモノマーまたはオリゴマーが硬化されたものであれば、公知のいずれの材料でも使用することが可能である。
【0328】
エポキシ樹脂としては、例えば、水分散系、無溶剤系、固体系、加熱硬化型、硬化剤混合型、紫外線硬化型などが挙げられる。これらの中でも熱硬化型および紫外線硬化型が好ましく、紫外線硬化型がより好ましい。なお、紫外線硬化型であっても、加熱を行うことは可能であり、紫外線硬化した後であっても加熱を行うことが好ましい。
【0329】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、環状脂肪族型、長鎖脂肪族型、グリシジルアミン型、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0330】
感圧粘着剤には必要に応じて吸水性の乾燥剤を混合することが好ましい。乾燥剤は、吸湿剤とも称され、水分を物理的または化学的に吸着、吸湿する機能を有する材料であり、封止部材に含有させることにより、耐湿性をさらに高めたり、アウトガスの影響を低減することができる。
【0331】
乾燥剤は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、活性炭、シリカゲル、モレキュラーシーブ、ゼオライト(モレキュラーシーブを除く)などの無機吸水材料、有機金属化合物などが挙げられる。これらの中でも、吸湿量が多いゼオライトが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0332】
感圧粘着剤には、必要に応じてその他の添加剤を混合することができる。添加剤としては、例えば、充填材(フィラー)、ギャップ剤、重合開始剤、硬化促進剤、カップリング剤、可とう化剤、着色剤、難燃助剤、酸化防止剤、有機溶剤などが挙げられる。これらの中でも、充填材、ギャップ剤、硬化促進剤が好ましく、充填材および重合開始剤がより好ましい。
【0333】
充填材は、水分や酸素の浸入を抑制することができるほか、硬化時の体積収縮の低減、硬化時または加熱時のアウトガス量の低減、機械的強度の向上、熱伝導性や流動性の制御等の効果を得ることができ、様々な環境でも安定した出力を維持することができる。
【0334】
なお、光電変換素子の出力特性やその耐久性は、単に侵入する水分や酸素の影響だけでなく、封止部材の硬化時または加熱時に発生するアウトガスの影響が無視できない。特に、加熱時に発生するアウトガスの影響は、高温環境保管における出力特性に大きな影響をおよぼす。
【0335】
この場合、封止部材に充填材やギャップ剤を含有させることにより、これら自身が水分や酸素の浸入を抑制できるほか、封止部材の使用量を低減できることにより、アウトガスを低減させる効果を得ることができる。これは、硬化時だけでなく、光電変換素子を高温環境に保存した際にも有効である。
【0336】
充填材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結晶性または不定形のシリカ、タルク、アルミナ、窒化アルミ、窒化珪素、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム等の無機系充填材が好ましく用いられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0337】
充填材の平均一次粒径は、0.1μm以上10μmが好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。添加量が好ましい範囲内であると、水分や酸素の侵入を抑制する効果を十分に得ることができ、粘度が適正となり、基板との密着性や脱泡性の向上、または封止部の幅の制御や作業性の向上に対しても有効である。
【0338】
充填材の含有量としては、封止部材全体が100質量部に対し、10質量部以上90質量部以下が好ましく、20質量部以上70質量部以下がより好ましい。充填材の含有量が上記範囲内であることにより、水分や酸素の浸入抑制効果が十分に得られ、粘度も適正となり、密着性や作業性も良好となる。
【0339】
ギャップ剤は、ギャップ制御剤またはスペーサー剤とも称され、封止部のギャップを制御することが可能になる。例えば、第1基板1もしくは第1電極2の上に、封止部材を付与し、その上に第2基板9を載せて封止を行う場合、感圧粘着剤となるエポキシ樹脂にギャップ剤を混合することにより、封止部のギャップがギャップ剤のサイズに揃うため、容易に封止部のギャップを制御することができる。
【0340】
ギャップ剤としては、粒状でかつ粒径が均一であり、耐溶剤性や耐熱性が高いものであれば、公知の材料を使用できる。ギャップ剤としては、エポキシ樹脂と親和性が高く、粒子形状が球形であるものが好ましい。具体的には、ガラスビーズ、シリカ微粒子、有機樹脂微粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0341】
ギャップ剤の平均粒径としては、設定する封止部のギャップに合わせて選択可能であるが、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましい。
【0342】
重合開始剤は、例えば、熱や光を用いて重合を開始させることを目的として添加される材料である。
【0343】
熱重合開始剤は、加熱によってラジカルやカチオンなどの活性種を発生する化合物で、具体的には2,2'-アゾビスブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物や、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物等が用いられる。熱カチオン重合開始剤としてはベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等が用いられる。
【0344】
一方、光重合開始剤は、エポキシ樹脂の場合光カチオン重合開始剤が好ましく用いられる。エポキシ樹脂に光カチオン重合開始剤を混合し、光照射を行うと光カチオン重合開始剤が分解して、強酸を発生し、酸がエポキシ樹脂の重合を引き起こし、硬化反応が進行する。光カチオン重合開始剤は、硬化時の体積収縮が少なく、酸素阻害を受けず、貯蔵安定性が高いといった効果を有する。
【0345】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタセロン化合物、シラノール・アルミニウム錯体などが挙げられる。
【0346】
また、光を照射することにより酸を発生する機能を有する光酸発生剤も使用できる。光酸発生剤は、カチオン重合を開始する酸として作用し、例えば、カチオン部とアニオン部からなるイオン性のスルホニウム塩系やヨードニウム塩系などのオニウム塩が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0347】
重合開始剤の添加量としては、使用する材料によって異なる場合があるが、封止部材全体が100質量部に対し、0.5質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下がより好ましい。添加量が上記範囲内であることにより、硬化が適正に進み、未硬化物の残存を低減することができ、またアウトガスが過剰になるのを防止できる。
【0348】
硬化促進剤は、硬化触媒とも称され、硬化速度を速めることを目的として用いられ、主に熱硬化型のエポキシ樹脂に用いられる。
【0349】
硬化促進剤としては、例えば、DBU(1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7)やDBN(1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)-ノネン-5)等の三級アミンまたは三級アミン塩、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールや2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール系、トリフェニルホスフィンやテトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のホスフィンまたはホスホニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0350】
カップリング剤は、分子結合力を高める機能を有し、シランカップリング剤が挙げられ、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-(ビニルベンジルアミノ)エチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0351】
さらに、封止部材は、封止材、シール材または接着剤として市販されているゴム系樹脂組成物が知られており、本実施形態においても好適に使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているゴム系樹脂組成物もあり、本実施形態において好適に使用できる。ゴム系樹脂組成物としては、例えば、Tesa61539、Tesa61530(Tesa社製)、S-2191(モレスコ社製)等が挙げられる。
【0352】
一方、低融点ガラス樹脂は、樹脂塗布後に550℃程度の焼成工程により、樹脂成分を分解させた後、赤外線レーザ等により溶融しながら、ガラス基板に密着する。このとき、低融点ガラス成分が金属酸化物層の内部に拡散し、物理的に接合されることで、高い封止性能が得られる。また、樹脂成分は、熱分解により消失して、アクリル樹脂やエポキシ樹脂のようなアウトガスは発生させないため、光電変換素子を劣化させることはない。
【0353】
本実施形態においては、封止部材としてシート状封止材を用いることもできる。シート状封止材とは、例えば、シート上に予めゴム系樹脂層を形成したもので、シートは、ガラスやガスバリア性の高いフィルム等が用いられる。このようなシートは、本実施形態における第2基板9に該当する。
【0354】
シート状封止材は、第2基板9上に貼り付け、その後硬化させることにより、封止部材および第2基板9を一度に形成することができる。シート上に形成するゴム系樹脂層の形成パターンにより、中空部10を設けた構造にすることもできる。
【0355】
このようなシート状封止材は、本実施形態において粘着層の一部が第2基板で構成された粘着層(封止部材)の一例である。また、シート状封止材を構成するシートは、本実施形態において粘着層の一部を構成する第2基板の一例である。
【0356】
なお、シート上に形成するゴム系樹脂層が全面に形成されていれば、「面封止」になるが、樹脂層の形成パターンにより、光電変換素子101の内部(封止内部)に、後述の中空部10を設けるように樹脂層をパターン形成すれば「枠封止」になる。
【0357】
封止部材の形成方法は、特に制限はなく、公知の方法にしたがって行うことができる。封止部材の形成方法としては、例えば、ディスペンス法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、凸版、オフセット、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等の様々な方法を用いることができる。
【0358】
本実施形態では、さらに、封止部材8と第2電極7との間にパッシベーション層11を設けてもよい。パッシベーション層11は、第2電極7と第2基板9との間に配置され、封止部材8が第2電極7に接しないように、電極保護層を構成する。
【0359】
パッシベーション層11としては、封止部材が第2電極7に接しないように配置されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酸化アルミニウム、窒化シリコン、酸化シリコン、フッ素樹脂などが好ましく用いられる。
【0360】
特に、フッ素樹脂は金属部との相性が良く、第2電極7上に成膜することが可能である。またパッシベーション層部分は、例えば面封止における粘着層が張り合わないため、一度全面にパッシベーション層を成膜後に適宜加工することによって自在に封止設計が可能になる。
【0361】
さらに、封止部材は、フッ素系化合物が知られており、本実施形態においても好適に使用することができる。中でも、太陽電池や有機EL素子用途向けに開発、市販されているフッ素系化合物を用いることができる。
【0362】
フッ素系化合物としては、例えば、DS-5935F130(DURASURF社製)、DP-509C(ハーベス社製)、アルミナ(アルドリッチ社製)等が挙げられる。これらの中でも、シラン構造を有するフッ素化合物であるDS-5935F130が好ましい。
【0363】
封止内部の中空部10には酸素を含有させることによって、ホール輸送層6のホール輸送機能を長期にわたって安定に維持することが可能になり、光電変換素子の耐久性向上に対して有効な場合がある。本実施形態において、封止することによって設けられた封止内部の中空部10には酸素を含有することが好ましく、その酸素濃度は10.0体積%以上21.0体積%以下がより好ましい。
【0364】
中空部10の酸素濃度は、酸素濃度を調整したグローブボックス内で封止を行うことにより制御することができる。酸素濃度の調整は、特定の酸素濃度を有するガスボンベを使用する方法や、窒素ガス発生装置を用いる方法によって行うことができる。グローブボックス内の酸素濃度は、市販されている酸素濃度計または酸素モニターを用いて測定できる。
【0365】
封止部材8による封止によって形成された中空部10内の酸素濃度の測定は、例えば、IVA(Internal Vapor Analysis)によって行うことができる。
【0366】
具体的には、光電変換素子を高真空中に装填し孔あけして発生したガスや水分について質量分析を行う方法である。この方法により、光電変換素子の封止内部に含有する酸素濃度を明らかにすることができる。質量分析計としては、四重極型と飛行時間型があり、後者の方がより高感度の測定が可能である。
【0367】
封止内部に含有する酸素以外のガスとしては、不活性ガスが好ましく、窒素やアルゴンなどが好ましい。
【0368】
封止を行う際、グローブボックス内は酸素濃度とともに、露点を制御することが好ましく、出力やその耐久性向上に有効である。露点とは、水蒸気を含む気体を冷却したとき、凝結が開始される温度として定義される。
【0369】
露点としては、特に制限されるものではないが、0℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましい。下限としては、-50℃以上が好ましい。
【0370】
光電変換素子101は、第2電極7と第2基板9の間に中空部10を有する。本実施形態では、第2電極7と第2基板9の間に設けられた封止部材8と第2電極7との間に中空部10が設けられる。光電変換素子101このような中空部10を有することにより、中空部10内の水分量や酸素濃度を制御することが可能になり、これにより発電性能や耐久性を高めることができる。
【0371】
さらに、第2電極7と第2基板9(及び封止部材8)とが接触していないため、第2電極7の剥離や破壊を防止することができる。中空部10内の酸素濃度は、特に制限はなく、自由に制御することが可能であるが、10%以上21%以下が好ましい。
【0372】
本実施形態の光電変換素子101は、中空部10を封止部材8で囲む全面封止が行われている。具体的には、封止部材8を第2電極7上の全面に塗布し、その上に第2基板9を設ける方法や、前述のシート状封止材を用いる方法により形成できる。
【0373】
この場合、第2電極7と封止部材との間にパッシベーション層を設けることが可能であり、第2電極7の剥離防止に有効な場合がある。このように、ほぼ全面を封止部材で囲むことにより、光電変換素子の機械的強度を高めることが可能になる。
【0374】
図2は、図1の光電変換素子の平面図であり、図3図2のA-A断面図である。なお、図2図3では、第1基板1、第1電極2、封止部材(粘着層)8、および第2基板9以外の部材は、図示を省略する。本実施形態では、図1~3に示すように、平面視で、封止部材(粘着層)8の外縁8Aと第1基板1の外縁1Aとの間に、封止部材(粘着層)8の外縁8Aを囲むクリアランスCLが形成されている。
【0375】
本実施形態では、図1図3に示すように、第1基板1の外縁1Aと第1基板1上に形成された第1電極2の外縁とが、厚み方向に面一になっており、封止部材(粘着層)8の外縁8Aと封止部材(粘着層)8上に形成された第2基板9の外縁とが面一になっている。すなわち、本実施形態では、封止部材(粘着層)8の外縁8Aを囲むクリアランスCLが、平面視で第1電極2の外縁と第2基板9の外縁との間に形成されている。
【0376】
発明者らは、図4図5に示すように、従来の光電変換素子102では、封止部材8と第1基板1とが平面視で同じ大きさであるため、光電変換素子102の端部から封止部材(粘着層)がはみ出てしまい、生産性、初期出力性能、および耐久性が十分でないという知見を見出した。
【0377】
本実施形態の光電変換素子101は、このような発明者らの知見に基づくものであり、平面視で、封止部材(粘着層)8の外縁8Aと第1基板1の外縁1Aとの間に、封止部材(粘着層)8の外縁8Aを囲むクリアランスCLを形成する光電変換素子である。このような光電変換素子101では、光電変換素子101の端部から封止部材(粘着層)8がはみ出ることが抑制される。
【0378】
これにより、本実施形態の光電変換素子101では、ユーザがデバイスに触れた場合でも封止部材(粘着層)8に触れ難くなるため、生産性と初期出力を向上させることができる。また、封止部材(粘着層)8に触れ難くなることで、封止部材(粘着層)8が破れ難くなるため、デバイスの耐久性を向上させることができる。
【0379】
本実施形態では、クリアランスCLの粘着層8の外縁8Aと第1基板1の外縁1Aとの間隔(以下、クリアランスの間隔または内寄せ幅という場合がある)は、0.01mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.05mm以上、さらに好ましくは0.08mm以上である。
【0380】
また、クリアランスCLの粘着層8の外縁8Aと第1基板1の外縁1Aとの間隔は、1.0mm以下、より好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0381】
本実施形態では、一部が第2基板9を構成する封止部材(粘着層)8が第1基板1よりも平面視で小さくなっている。
【0382】
封止部材8は、上述のように、シート状封止材を用いることで、シート状封止材が、例えばレーザーカットすることができるため、加工精度0.1mmで自在にカットすることができる。なお、レーザーカットは第2基板9との封止後にも実施することができるため、封止した第2基板9及び封止部材(粘着層)8をレーザーカットすることで第1基板1よりも0.1mm以上小さくすることができる。
【0383】
本実施形態では、クリアランスCLの粘着層8の外縁8Aと第1基板1の外縁1Aとの間隔を0.01mm以上にすることで、光電変換素子101の端部から封止部材(粘着層)8がはみ出ることが確実に抑制される。そのため、本実施形態によれば、生産性と初期出力性能と耐久性をさらに向上させることができる。
【0384】
なお、クリアランスCLの間隔が大きい程、ユーザが封止部材(粘着層)8に触れ難くなり、耐久性を向上させることができる点で、クリアランスCLの間隔の上限は、限定されない。一方、クリアランスCLの間隔が大きくなりすぎると、有効発電面積が小さくなり、デバイスの出力が低下するおそれがある点で、クリアランスCLの間隔の上限は、5mm以下にすることが好ましい。
【0385】
本実施形態の光電変換素子101では、封止部材(粘着層)8の周方向の厚み(以下、封止部材の厚みまたは封止線幅という場合がある)が0.2mm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以上、さらに好ましくは0.9mm以上である。ここで、封止部材(粘着層)8の周方向の厚みとは、光電変換層(電子輸送層4およびホール輸送層6)の側面を封止部材(粘着層)8が囲む方向における封止部材(粘着層)8の厚みを示す。
【0386】
本実施形態では、封止部材(粘着層)8の周方向の厚みを0.2mm以上にすることで、封止部材(粘着層)の封止幅を広げることができ、高温高湿環境下における光電変換素子の劣化を抑制することができる。そのため、デバイスの出力を向上させることができ、高光電変換素子の耐久性を向上させることができる。
【0387】
なお、封止部材8の厚みは厚い程(封止幅が広い程)、高温高湿環境下における光電変換素子の劣化を抑制することができる点で、封止部材8の厚みの上限は、限定されない。一方、封止部材8の厚みが厚すぎると(封止幅が広すぎると)、有効発電面積が小さくなり、デバイスの出力は低下するおそれがある点で、封止部材8の厚みの上限は、5mm以下にすることが好ましい。
【0388】
そこで、本実施形態では、上述のように、封止部材(粘着層)8の周方向の厚みを0.1mm以上1.5mm以下にすることで、有効発電面積が小さくならないように封止部材(粘着層)の封止幅を広げることができる。これにより、光電変換素子の劣化を抑制しながら、出力を向上させることができる。
【0389】
なお、クリアランスCLの粘着層8の外縁8Aと第1基板1の外縁1Aとの間隔と封止部材(粘着層)8の周方向の厚みとの合計(以下、クリアランスの間隔と封止部材の厚みとの合計という)は、特に限定されないが、0.3mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.4mm以上5mm以下、さらに好ましくは1.0mm以上3mm以下である。
【0390】
クリアランスの間隔と封止部材の厚みとの合計をこのような範囲にすることで、光電変換素子の劣化をさらに抑制しながら、デバイスの出力をさらに向上させることができる。
【0391】
本実施形態の光電変換素子101では、上述のように、第2基板9が封止部材(粘着層)8の一部で構成され、第2基板9のエッジ部分9Aが曲面加工されている。ここで、第2基板9のエッジ部分9Aは、第2基板9の天面と側面との角部を示す。曲面加工は、R加工を示す。
【0392】
本実施形態では、封止部材(粘着層)8の一部で構成された第2基板9のエッジ部分9Aを曲面加工することによって、封止部材(粘着層)8以外の部分(第2基板9)の剥離が容易になり、生産性歩留まりを向上させることができる。
【0393】
本実施形態の光電変換素子101では、上述のように、粘着層8が感圧粘着剤で形成されていることで、高温高湿度環境下において封止幅が狭くても高い封止性能を発揮することができる。
【0394】
また、粘着層8に感圧粘着剤を用いることにより、短い封止幅で耐久性を担保することができる。また、高温高湿環境における保管後においても高い出力を得ることができる。さらに、感圧接着剤を用いた粘着層8は、貼り合わせ時に熱で樹脂を緩くしたのちに、貼り合わせ時に圧をかけることで第2基板9の凹凸にも追従し、封止性能を担保することができる。
【0395】
本実施形態の光電変換素子101では、上述のように、粘着層8が吸湿剤を含有することで、粘着層8の耐湿性が向上し、アウトガスの影響を低減することができる。このような観点からも、本実施形態では、高温高湿度環境下において高い封止性能を発揮することができる。
【0396】
本実施形態の光電変換素子101では、上述のように、第2電極7と第2基板9との間に電極保護層(パッシベーション層)11を有することで、封止部材8が第2電極7の保護層として機能し、粘着層8と第2電極7が接触した際に電極の剥離を抑制することができる。これにより、本実施形態では、デバイスの出力低下をさらに抑制させることができる。
【0397】
本実施形態の光電変換素子101では、上述のように、電極保護層(パッシベーション層)11が、シラン構造を有するフッ素化合物を含有することにより、シラン構造を有するフッ素化合物が金属部との相性が良いことから、電極保護層11の第2電極7上への成膜が容易である。また、パッシベーション層11として、シラン構造を有するフッ素化合物を塗布することにより、より簡易にフィルムの剥離が可能になる。
【0398】
本実施形態の光電変換素子101では、上述のように、光電変換層が、光増感化合物5を有する電子輸送層4とホール輸送層6とを有する。これにより、光照射された光は光増感化合物5に吸収され、さらに発生した電子とホールは電子輸送層4とホール輸送層6によって第1電極2又は第2電極7にそれぞれ輸送されるため、光電変換を効率よく行うことができる。
【0399】
本実施形態の光電変換素子101では、上述のように、第2基板9が金属フィルムで形成されていることで、第2基板9(封止材)と粘着層8との積層構造を構成することができる。これにより、一部が第2基板9(封止材)で構成された粘着層8のカット加工が容易になる。そのため、平面視で、粘着層8の外縁8Aと第1基板1の外縁1Aとの間に、粘着層8の外縁8Aを囲むクリアランスCLの形成が容易になる。
【0400】
(光電変換モジュール)
本実施形態の光電変換モジュールは、上述した本実施形態の光電変換素子を含んで構成される。具体的には、本実施形態の光電変換素子101を複数有し、互いに隣接する光電変換素子101が、直列または並列に電気的に接続されている。
【0401】
本実施形態の光電変換モジュールは、図示を省略しているが、例えば、複数の光電変換素子101が隣接して配置され、かつ直列または並列に接続された光電変換素子101の配置領域を有する。本実施形態の光電変換モジュールでは、さらに、複数の光電変換素子101が、第1電極2と第2電極7との間に、電子輸送層4およびホール輸送層6を含む光電変換層が形成される。
【0402】
本実施形態の光電変換モジュールは、光電変換素子101を、複数有する構成とすることができる。また、複数の光電変換素子101は、直列および/または並列で接続されていてもよいし、接続されておらず独立した光電変換素子101を含んでいてもよい。
【0403】
光電変換モジュールの各層の構成としては、上述の光電変換素子101と同様の構成とすることができる。
【0404】
光電変換モジュールの構造は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光電変換モジュールの構造としては、例えば、第1電極2、電子輸送層4、第2電極7は、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子101において、分割されていることが好ましく、これによりショートのリスクを低減することができる。
【0405】
一方、ホール輸送層6は、互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子101において、分割されていてもよいし、ホール輸送層6どうしが互いに延設された連続層の形態であってもよい。
【0406】
互いに隣接する少なくとも2つの光電変換素子101を有する光電変換モジュールでは、一の光電変換素子101における第1電極2と、他の光電変換素子101における第2電極7とが、光電変換層を貫通した導通部により電気的に接続されていることが好ましい。
【0407】
光電変換モジュールは、一対の基板を有し、かつ直列または並列に接続された光電変換素子101の配置領域を一対の基板の間に有し、封止部材が一対の基板に挟持された構成とすることができる。
【0408】
本実施形態の光電変換素子モジュールの一例は、例えば、複数の光電変換素子101を含み、それらが直列に接続されている。
【0409】
この光電変換素子モジュールでは、ホール輸送層6を形成した後、貫通部(図示せず)を形成し、その後、第2電極7を形成することによって、貫通部の内部に第2電極7材料が導入され、隣接するセルの第1電極2と導通させることができる。なお、第1電極2および第2電極7は、さらに隣接する光電変換素子101の電極、または出力取出し端子まで導通する経路を有する。
【0410】
貫通部は、第1電極2を貫通し、第1基板まで達していてもよいし、第1電極2の内部で加工をやめ、第1基板にまで達していなくてもよい。
【0411】
貫通部の形状を第1電極2を貫通し第1基板まで到達する微細孔とする場合、貫通部の面積に対して微細孔の開口面積合計が大きくなりすぎると、第1電極2の膜断面積が減少することで抵抗値が増大してしまい、光電変換効率の低下を引き起こす場合がある。そのため、貫通部の面積に対する微細孔の開口面積合計の比率としては、5/100以上60/100以下が好ましい。
【0412】
貫通部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サンドブラスト法、ウオーターブラスト法、研磨紙、化学エッチング法、レーザー加工法などが挙げられる。これらの中でも、レーザー加工法が好ましい。これにより、微細な孔をサンドやエッチング、レジスト等を使うことなく形成でき、また、清浄に再現性よく加工することが可能となる。
【0413】
また、貫通部を形成する場合に、ホールブロッキング層、電子輸送層4、ホール輸送層6、第2電極7のうち少なくとも一つをレーザー加工法による衝撃剥離によって除去することが可能になる。これにより、積層時にマスクを設ける必要がなく、また、除去と微細な貫通部の形成を一度に簡易的に行うことができる。
【0414】
また、本実施形態の光電変換素子モジュールの他の一例は、上述した光電変換素子モジュールの一例と異なり、ホール輸送層6が隣接する光電変換素子101と分割されており、それぞれが独立した層構成となっている。これにより、電子拡散が抑制されてリーク電流が低下し、耐久性をさらに向上させることができる。
【0415】
本実施形態の光電変換素子モジュールでは、上述のように、本実施形態の光電変換素子(光電変換素子101)が用いられるため、本実施形態の光電変換素子と同じ効果が得られる。
【0416】
(電子機器)
本実施形態の電子機器は、本実施形態の光電変換素子101、および本実施形態の光電変換モジュールのいずれかと、光電変換素子101または光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置と、を有し、さらに必要に応じてその他の装置を有する。
【0417】
また、本実施形態の電子機器は、本実施形態の光電変換素子101、および本実施形態の光電変換モジュールのいずれかと、光電変換素子101または光電変換モジュールが光電変換することによって発生した電力を蓄電可能な畜電池と、畜電池に蓄電された電力によって動作する装置とを有し、さらに必要に応じてその他の装置を有する。
【0418】
(電源モジュール)
本実施形態の電源モジュールは、本実施形態の光電変換モジュールと、電源回路(IC;Integrated Circuit)とを有し、さらに必要に応じてその他の装置を有する。
【0419】
次に、本実施形態の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の具体的な実施形態について説明する。
【0420】
本実施形態の電子機器の一例としてパソコン用マウス(以下、マウスという場合がある)について説明する。
【0421】
パソコン用マウス(図示せず)では、上述の光電変換モジュールと、電源ICと、さらに蓄電デバイスとを組み合わせ、供給される電力をマウスの制御回路の電源に接続する。これにより、マウスを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でマウスを動作させることができ、配線や電池交換が不要なマウスを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となる。
【0422】
上述のパソコン用マウスでは、光電変換モジュール、電源IC、および蓄電デバイスはマウス内部に実装されるが、光電変換モジュールの光電変換素子101に光が当たるように光電変換素子101の上部は透明の筐体で覆われている。
【0423】
また、マウスの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。光電変換素子101の配置はこれに限られるものではなく、例えばマウスを手で覆っていても光が照射される位置に配置することも可能である。
【0424】
次に、本実施形態の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器の他の実施形態について説明する。
【0425】
本実施形態の電子機器の他の一例としてのパソコン用キーボード(以下、キーボードという場合がある)について説明する。
【0426】
パソコン用キーボード(図示せず)では、上述の光電変換モジュールの光電変換素子101と、電源ICと、蓄電デバイスとを組み合わせ、供給される電力をキーボードの制御回路の電源に接続する。これにより、キーボードを使用していない時に蓄電デバイスに充電し、その電力でキーボードを動作させることができ、配線や電池交換が不要なキーボードを得ることができる。また、電池が不要になることで軽量化も可能となる。
【0427】
上述のキーボードの一例では、光電変換モジュールの光電変換素子101、電源IC、および蓄電デバイスはキーボード内部に実装されるが、光電変換素子101に光が当たるように光電変換素子101の上部は透明の筐体で覆われている。キーボードの筐体すべてを透明な樹脂で成形することも可能である。なお、光電変換素子101の配置はこれに限られるものではない。
【0428】
光電変換素子101を組み込むスペースが小さい小型のキーボードの場合には、キーの一部に小型の光電変換素子101を埋め込むことも可能である。
【0429】
次に、本実施形態の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器のさらに他の実施形態について説明する。
【0430】
本実施形態の電子機器の一例としてのセンサについて説明する。
【0431】
本実施形態のセンサ(図示せず)では、光電変換モジュールの光電変換素子101と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をセンサ回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、センサモジュールを構成することが可能となる。
【0432】
センシング対象としては、温湿度、照度、人感、CO、加速度、UV、騒音、地磁気、気圧など、様々なセンサに応用できる。センサモジュール(図示せず)は、定期的に測定対象をセンシングし、読み取ったデータをPCやスマートフォンなどに無線通信で送信する構成になっている。
【0433】
IoT(Internet of Things)社会の到来により、センサは急増することが予想されている。この無数のセンサの電池を一つ一つ交換するには大きな手間がかかり、現実的ではない。また、センサは、天井や壁など、電池交換しにくい場所にあることも作業性を悪くしている。
【0434】
これらに課題に対して、本実施形態のセンサは、光電変換素子101により電力供給できることで、これらの課題を解消できるメリットがある。また、本実施形態の光電変換モジュールは、低照度でも高い出力を得ることができ、かつ出力の光入射角依存性が小さいことから、設置自由度が高いといったメリットも得られる。
【0435】
次に、本実施形態の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器のさらに他の実施形態について説明する。
【0436】
本実施形態の電子機器の一例としてのターンテーブルについて説明する。
【0437】
本実施形態のターンテーブル(図示せず)では、光電変換素子101と電源IC、蓄電デバイスを組み合わせ、供給される電力をターンテーブル回路の電源に接続する。これにより、外部電源に接続する必要がなく、また電池交換を行う必要もなく、ターンテーブルを構成することが可能となる。
【0438】
ターンテーブルは、例えば商品を陳列するショーケースなどに用いられるが、電源の配線は見栄えが悪く、また電池交換の際には陳列物を撤去しなければならず、大きな手間がかかっていた。本実施形態の光電変換モジュールを用いることで、そのような不具合を解消することができる。
【0439】
以上、本実施形態の光電変換モジュールと、これらが発電することによって得られた電力により動作する装置を有する電子機器、および電源モジュールについて説明したが、これらはごく一部であり、本実施形態の光電変換モジュールが、これらの用途に限定されるものではない。
【0440】
<用途>
本実施形態の光電変換モジュールは、自立型電源として機能させることができ、光電変換によって発生した電力を用いて、装置を動作させることが可能である。
【0441】
本実施形態の光電変換モジュールは、光が照射されることにより発電することが可能であるため、電子機器を電源に接続したり、または電池交換したりする必要がない。そのため、電源設備がない場所でも電子機器を動作させたり、身に着けて持ち歩いたり、電池交換が困難な場所でも電池を交換することなく、電子機器を動作させたりすることが可能である。
【0442】
また、乾電池を用いる場合は、その分、電子機器が重くなったり、サイズが大きくなったりするため、壁や天井への設置、または持ち運びに支障を来すことがあるが、本実施形態の光電変換モジュールは、軽量で薄いため、設置自由度が高く、身に着けたり、持ち歩く上でもメリットが大きい。
【0443】
このように、本実施形態の光電変換モジュールは、自立型電源として使用でき、様々な電子機器に組み合わせることができる。例えば、電子卓上計算機、腕時計、携帯電話、電子手帳、電子ペーパーなどの表示機器、マウスやキーボードなどのパソコンの付属機器、温湿度センサや人感センサなどの各種センサ機器、ビーコンやGPSなどの発信機、補助灯、リモコン等数多くの電子機器と組み合わせて使用することができる。
【0444】
本実施形態の光電変換モジュールは、特に低照度の光でも発電できるため、室内でも、さらに薄暗い影のところでも発電することが可能であるため、適用範囲が広い。また、乾電池のように液漏れがなく、ボタン電池のように誤飲することもなく安全性が高い。さらに、充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることができる。
【0445】
このように、本実施形態の光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせることで、軽量で使い勝手がよく、設置自由度が高く、交換が不要で、安全性に優れ、かつ環境負荷低減にも有効な電子機器に生まれ変わることができる。
【0446】
本実施形態の光電変換モジュールと、それが光電変換することによって発生した電力によって動作する装置とを組み合わせた電子機器(図示せず)について説明する。これは、光電変換素子101に光が照射されると発電し、電力を取り出すことができる。機器の回路は、その電力によって動作することが可能になる。
【0447】
しかし、光電変換モジュールの光電変換素子101は周囲の照度によって出力が変化するため、本実施形態に係る電子機器は安定に動作することができない場合がある。この場合、回路側に安定した電圧を供給するために、光電変換素子101と機器の回路の間に光電変換素子101用の電源ICを組み込むことが可能である。
【0448】
しかし、光電変換モジュールの光電変換素子101は十分な照度の光が照射されていれば発電できるが、発電するだけの照度が足りなくなると、所望の電力が得られなくなり、これが光電変換素子101の欠点でもある。
【0449】
この場合には、キャパシタ等の蓄電デバイスを電源ICと機器回路の間に搭載することによって、光電変換素子101からの余剰電力を蓄電デバイスに充電することが可能となり、照度が低すぎる場合や、光電変換素子101に光が当たらない場合でも、蓄電デバイスに蓄えられた電力を機器回路に供給することが可能になり、安定に動作させることが可能となる。
【0450】
このように、本実施形態の光電変換モジュールと、機器回路とを組み合わせた電子機器において、電源ICや蓄電デバイスを組み合わせることで、電源のない環境でも動作可能であり、また電池交換が不要で、安定に駆動させることが可能になる。これにより、本実施形態の光電変換モジュールでは、光電変換素子101のメリットを最大限に活かすことができる。
【0451】
一方、本実施形態の光電変換モジュールは、電源モジュールとしても使用することが可能であり、有用である。例えば、本実施形態の光電変換モジュールと、光電変換素子101用の電源ICを接続すると、光電変換モジュールの光電変換素子101が光電変換することによって発生した電力を電源ICにて一定の電圧レベルで供給することが可能な直流電源モジュールを構成することができる。
【0452】
さらに、電源ICに蓄電デバイスを追加することにより、光電変換モジュールの光電変換素子101が発生させた電力を蓄電デバイスに充電することが可能になる。そのため、照度が低すぎる場合や、光電変換素子101に光が当たらない状態になっても、電力を供給することが可能な電源モジュールを構成することができる。
【0453】
本実施形態の電源モジュールは、従来の一次電池のように電池交換をすることなく、電源モジュールとして使用することが可能である。
【実施例0454】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0455】
(実施例1)
<光電変換モジュールの作製>
第1基板としてのガラス基板上に、第1電極としてのインジウムドープ酸化錫(ITO:平均厚み25mm)とニオブドープ酸化錫(NTO:平均厚み150nm)を順次スパッタ製膜した。次いで、ホールブロッキング層として酸化チタンからなる緻密な層(平均厚み20nm)を酸素ガスによる反応性スパッタにより形成した。形成した第1基板をスクライバーで、300mm角に切り出しを行う。
【0456】
次に、切り出した300mm角の基板に酸化チタン(日揮触媒化成社製、PST-18NR)ペーストを、ホールブロッキング層上に平均厚みが約0.8μmになるようにスクリーン印刷により塗布した。120℃で乾燥後、空気中、550℃で30分間焼成し、多孔質状の電子輸送層を形成した。その後、レーザー加工によって、ITO/NTO層、ホールブロッキング層および電子輸送層を8つのセルに分割した。
【0457】
電子輸送層を形成したガラス基板を、上記B-5で表される光増感化合物(0.2mM)にアセトニトリル/t-ブタノール(体積比1:1)混合液を加え撹拌した溶液に浸漬し、1時間暗所で静置して、電子輸送層の表面に光増感化合物を吸着させた。
【0458】
次に、クロロベンゼン溶液に、リチウム塩bとしてリチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li-FTFSI)(キシダ化学社製)65.1mM、上記H-1で表されるピリジン化合物aを146.5mM、上記D-7で表される有機ホール輸送材料(HTM)(SHT-263、メルク社製)162.8mM、および上記F-11で表されるコバルト錯体(Greatcell solar materials社製)12.7mMを加えて溶解し、ホール輸送層塗布液を調製した。なお、ピリジン化合物aとリチウム塩bのモル比a/bは、2.25であった。
【0459】
次に、光増感化合物を吸着させた電子輸送層上に、ホール輸送層塗布液を用い、ダイコートにより約600nmのホール輸送層を形成した。さらに、レーザー加工によりセル間を直列に接続するための貫通孔を形成した。
【0460】
次にガラス基板の端部およびセル間にマスクを装着した後、銀を真空蒸着し、約70nmの第2電極を形成した。
【0461】
次に第2電極上に電極保護層としてシラン構造を有するフッ素化合物(DURASURF社製、DS-5935F130)をダイコートで10nm成膜した。
【0462】
その後、封止部材が設けられるガラス基板の端部1.0mmおよびセル間をレーザー加工によりエッチング処理し、さらにレーザー加工により端子取り出し部となるITO/NTO層に接続するための貫通孔をガラス基板の端部3.0mmに形成し、加えてレーザー加工により、セル間を直列に接続するための貫通孔を形成した。
【0463】
ガラス基板全面に粘着層、封止基材、及び第2基板が一体となったアルミペットシート(Tesa社製、61539)を真空貼り合わせ装置(常陽光学社製、エアーバック式真空ラミネーター)を用いて貼り合わせた。貼り合わせた基板を加熱ラミネーターで70℃で加温しながら、圧着した。以上のように、発電領域の封止を行った。
【0464】
封止したフィルムをレーザー加工により製品外形よりも0.1mm内寄せになるようにカットし、封止部分以外を剥離した(クリアランスの粘着層の外縁と第1基板の外縁との間隔を0.1mmにした)。その後、受光面にUVカットフィルム(リンテック社製、PET50HD UV400 PET25)を貼り付けた。最後にガラススクライブを用いて、サンプルを切り出すことで、光電変換モジュール1を作製した。
【0465】
(実施例2)
実施例1において、封止したフィルムをレーザー加工により製品外形よりも0.5mm内寄せになるようにカットした(クリアランスの間隔を0.5mmにした)以外は、実施例1と同様にして光電変換モジュール2を作製した。
【0466】
(実施例3)
実施例1において、電極保護層の成膜後のレーザーエッジング処理の幅を端部から0.5mmに変更した(クリアランスの間隔を0.5mmにした)以外は、実施例1と同様にして光電変換モジュール3を作製した。
【0467】
(実施例4)
実施例1において、電極保護層の成膜後のレーザーエッジング処理の幅を端部から0.9mmに変更した(クリアランスの間隔を0.9mmにした)以外は、実施例1と同様にして光電変換モジュール4を作製した。
【0468】
(実施例5)
実施例4において、封止フィルムのエッジのレーザー加工パターンをRに変更する以外は実施例1と同様にして光電変換モジュール5を作製した。
【0469】
(実施例6)
実施例3における真空蒸着からなる銀層である第2電極を、直径60nm、長さ10μmの銀ナノワイヤが純水中に分散した銀ナノワイヤ分散液(アルドリッチ社製)をホール輸送層上にダイコートすることにより70nm製膜し、120℃で5分間加熱乾燥して得た。それ以外は、実施例1と同様に光電変換モジュール6を作製した。
【0470】
(比較例1)
実施例1において、封止したフィルムをレーザー加工により製品外形(電極保護層の成膜後のレーザーエッジング処理の幅を端部から0.2mm)になるようにカットした以外は、実施例1と同様にして光電変換モジュール7を作製した。
【0471】
(比較例2)
実施例6において、封止したフィルムをレーザー加工により製品外形になるようにカットした以外は、実施例1と同様にして光電変換モジュール8を作製した。
【0472】
次に、作製した各光電変換モジュールについて、以下のようにして、粘着層のはみ出し量を評価した。結果を表1に示した。
【0473】
<粘着層(樹脂)のはみ出し量評価>
光学顕微鏡(日立ハイテクサイエンス社製、VS1550)を用いて、作製した光電変換モジュールの外形からの粘着層のはみ出し幅を確認した。結果を表1に示す。
【0474】
<生産性歩留まり評価>
300mm角の基板の中からの封止フィルムの剥がれの数を計算し、生産性歩留まりを確認した。評価基準は、以下のとおりである。なお、評価がA~Cの場合は良好、Dの場合は不良と評価した。
【0475】
[評価基準]
A:歩留まり99%以上
B:歩留まり95%以上99%未満
C:歩留まり90%以上95%未満
D:歩留まり90%未満
【0476】
<封止性能評価>
得られた光電変換モジュールを、太陽電池評価システム(エヌエフ回路設計ブロック社製、As-510-PV03)を用いて、25℃におけるIV特性を測定し、初期の最大出力電力Pmax1(μW/cm)を求めた。その後、60℃90%環境の恒温槽内で約500時間放置した後、再度IV特性を測定し、最大出力電力Pmax2(μW/cm)を測定し、Pmax維持率[(Pmax2/Pmax1)×100](%)を求めた。
【0477】
封止性能の評価基準は、以下のとおりである。なお、評価がA~Cの場合は良好、Dの場合は不良と評価した。封止性能が良好であるほど、耐久性が良好である。
【0478】
[封止性能の評価基準]
A:Pmax維持率:95%以上
B:Pmax維持率:90%以上95%未満
C:Pmax維持率:80%以上90%未満
D:Pmax維持率:80%未満
【0479】
<有効発電面積率評価>
300mm角の基板から横28mm、縦32mmの長方形に切り出した太陽電池を作成し、有効発電面積率を評価した。評価基準は、以下のとおりである。なお、評価がA~Cの場合は良好、Dの場合は不良と評価した。有効発電面積率評価が良好であるほど、初期出力特性が良好である。
【0480】
[有効発電面積率の評価基準]
A:有効発電面積率:70%以上
B:有効発電面積率:60%以上70%未満
C:有効発電面積率:50%以上60%未満
D:有効発電面積率:50%未満
【0481】
【表1】
【0482】
表1の結果から、実施例1~6の光電変換モジュールでは、基板ガラスに対して0.1mm以上内寄せした場所に封止を行う(クリアランスの間隔を0.1mm以上にした)ことによって、粘着層のはみ出しを抑止することができていることが分かった。
【0483】
一方、基板ガラスと同様の大きさで封止フィルムをレーザーカットした(クリアランスの間隔を0mmにした)光電変換モジュールでは、真空貼り合わせ時に粘着層が広がるために、粘着層のはみ出しが確認された(比較例1)。
【0484】
なお、はみ出した粘着層および封止フィルムは生産工程内で剥がれやすくなり、封止破壊の要因となる。また、一般的に封止線幅を太くすることや、封止フィルムを内寄せすることによって、光電変換層の有効発電面積率が減少してしまう。そこで、実施例3~6の光電変換モジュールは、封止フィルムを内寄せした量分だけ、封止線幅を減少させる対策を行った。
【0485】
具体的には、実施例3~6の光電変換モジュールでは、封止線幅(封止部材の周方向の厚み)を0.6mm~1.5mmとしたことで、有効発電面積率は良好であった。一方、封止線幅(封止部材の周方向の厚み)を0.2mmにした光電変換モジュールでは、生産性歩留まりは不良であった(比較例1)。
【0486】
また、封止フィルムのエッジ部をR加工することによって封止フィルムの封止部以外の剥離が容易になり、生産性歩留まりが大幅に向上した(実施例5)。
【0487】
比較例2における第2電極である銀ナノワイヤは、水透過性が高いために、樹脂のはみ出しによる水分浸透影響を受けやすく、封止性能低下が大きかった。
【0488】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
第1基板、第1電極、光電変換層、第2電極、および第2基板を順に積層する光電変換素子であって、
前記光電変換層を少なくとも囲む粘着層を有し、
平面視で、前記粘着層の外縁と前記第1基板の外縁との間に、前記粘着層の外縁を囲むクリアランスが形成されている、
光電変換素子。
<2>
平面視で、前記クリアランスの前記粘着層の外縁と前記第1基板の外縁との間隔が0.01mm以上である、
前記<1>に記載の光電変換素子。
<3>
前記粘着層の周方向の厚みが0.2mm以上である、
前記<1>又は<2>に記載の光電変換素子。
<4>
前記第2基板は、前記粘着層の一部で構成され、
前記第2基板のエッジ部分が曲面加工されている、
前記<1>乃至<3>のいずれかに記載の光電変換素子。
<5>
前記粘着層が感圧粘着剤で形成されている、
前記<1>乃至<4>のいずれかに記載の光電変換素子。
<6>
前記粘着層が吸湿剤を含有する、
前記<1>乃至<5>のいずれかに記載の光電変換素子。
<7>
前記第2電極と前記第2基板との間に電極保護層を有する、
前記<1>乃至<6>のいずれかに記載の光電変換素子。
<8>
前記電極保護層が、シラン構造を有するフッ素化合物を含有する、
前記<7>に記載の光電変換素子。
<9>
前記光電変換層は、光増感化合物を有する電子輸送層と、ホール輸送層と、を有する、
前記<1>乃至<8>のいずれかに記載の光電変換素子。
<10>
前記第2基板は金属フィルムで形成されている、
前記<1>乃至<9>のいずれかに記載の光電変換素子。
<11>
前記<1>乃至<10>のいずれかに記載の光電変換素子を含む、
光電変換素子モジュール。
【0489】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0490】
101 光電変換素子
1 第1基板
1A 外縁
2 第1電極
3 ホールブロッキング層
4 電子輸送層
5 光増感化合物
6 ホール輸送層
7 第2電極
8 封止部材(粘着層)
8A 外縁
9 第2基板
10 中空部
11 パッシベーション層(電極保護層)
12 端子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0491】
【特許文献1】特開2013-232320号公報
図1
図2
図3
図4
図5