(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067868
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】試験測定装置及び逆回復測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20230509BHJP
【FI】
G01R31/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175837
(22)【出願日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】202121050042
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】17/976,644
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴェック・シヴァラム
(72)【発明者】
【氏名】ニランジャン・アール・ヘグデ
(72)【発明者】
【氏名】パルジャンヤ・アディガ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ・エヌ・エイチ・スリ
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 強
(72)【発明者】
【氏名】ヨゲシュ・エム・パイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカトラジ・メリーナメイン
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA01
2G003AB07
2G003AB09
2G003AE06
2G003AF03
2G003AG03
2G003AH01
2G003AH04
(57)【要約】
【課題】WBGパワー・デバイスのDPT測定を簡単に行えるようにする。
【解決手段】被試験デバイス(DUT)に対してダブル・パルス試験を行い、試験測定装置26は、DUTに接続されるのプローブから電圧及び電流を受けて波形データを生成する。特に電流の波形データ中のQ1のフリー・ホイール・ダイオードFWD
1の逆回復電流の領域を特定し、様々な分析して、その部分を拡大表示すると共に、注釈を付けて表示できる。逆回復時間を求める際、逆回復電流波形の立ち上がり波形に対して描く補助線が通過すべき立ち上がり波形上のA点及びB点を、ユーザは任意に設定できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ・インタフェースと、
被試験デバイス(DUT)に接続される1つ以上のプローブと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、該1つ以上のプロセッサが、
電源から電力を供給すると共に信号供給装置からの少なくとも第1及び第2パルスを印加することによって上記DUTを動作させた後に、上記DUTから信号を受けて波形データを生成する処理と、
上記波形データ内の1つ以上の逆回復領域を見つける処理と、
上記逆回復領域から上記DUTの逆回復時間を求める処理と、
上記1つ以上の逆回復領域の逆回復プロットを上記ユーザ・インタフェースに表示する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成され、
上記逆回復プロットが、1つ以上の逆回復領域を表示するように自動的に設定されると共に上記1つ以上の逆回復領域に関する少なくとも1つの特性を含み、該特性には上記逆回復プロット上で注釈が付加される試験測定装置。
【請求項2】
上記1つ以上のプロセッサは、逆回復時間を求めるための設定を指定するユーザ入力を受けるように更に構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記ユーザ入力が、逆回復電流波形に追加する補助線が通過する点の逆回復電流のレベルの自動設定であるか、又は、上記補助線が通過する点の上記逆回復電流のレベルをユーザが指定する設定のいずれかである請求項2の試験測定装置。
【請求項4】
上記逆回復プロットを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記自動設定に起因する上記補助線及びユーザが指定する設定に起因する上記補助線のうちの少なくとも1つを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項3の試験測定装置。
【請求項5】
上記1つ以上のプロセッサが、上記1つ以上の逆回復領域からの逆回復電荷量を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項6】
上記逆回復電荷量を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、最大逆回復電流の所定のパーセンテージを使用する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項5の試験測定装置。
【請求項7】
上記逆回復プロットを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、複数の逆回復領域を表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む請求項1の試験測定装置。
【請求項8】
被試験デバイス(DUT)の逆回復測定を行う方法であって、
電源から電力を供給すると共に信号供給装置から第1及び第2パルスを印加することによって上記DUTを動作させた後に、上記DUTからプローブを通して信号を受けて波形データを生成する処理と、
上記波形データ中の1つ以上の逆回復領域の位置を特定する処理と、
上記1つ以上の逆回復領域に関して上記DUTの逆回復時間を求める処理と、
上記1つ以上の逆回復領域の逆回復プロットをユーザ・インタフェース上に表示する処理と
を具え、上記逆回復プロットは、上記1つ以上の逆回復領域を表示するように自動的に設定されると共に上記1つ以上の逆回復領域の少なくとも1つの特性を含み、該特性には上記逆回復プロット上で注釈が付加されている逆回復測定方法。
【請求項9】
上記逆回復時間を求めるために必要な選択を指定するユーザ入力を受ける処理を更に具える請求項8の逆回復測定方法。
【請求項10】
上記選択が、補助線に使用される外挿レベルの自動設定又はユーザ指定設定のうちの1つを含む請求項9の逆回復測定方法。
【請求項11】
上記1つ以上の逆回復領域から逆回復電荷量を求める処理を更に具える請求項8の逆回復測定方法。
【請求項12】
上記逆回復プロットを表示する処理が、複数の逆回復領域及びユーザ操作手段を表示する処理を含み、上記ユーザ操作手段は、ユーザが複数の逆回復領域内の選択された回復領域に焦点を当てて拡大(ズーム)する処理を可能にすると共に、ユーザが複数の逆回復領域から選択された他の回復領域へと進んで選択した逆回復領域の強調表示と注釈の付加を可能にする請求項8の逆回復測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体パワー・デバイスの逆回復の測定に適した試験測定装置と逆回復測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー・エレクトロニクスに使用される半導体材料は、シリコンから、炭化ケイ素(silicon carbide:SiC)及び窒化ガリウム(GaN)などのワイド・バンド・ギャップ(WBG:Wide Band Gap)半導体に移行しつつある。これは、自動車及び産業用途におけるより高い電力レベルでの優れた性能がその理由である。
【0003】
GaN及びSiC技術によれば、より小さく、より速く、より効率的な設計が可能になる。SiC又はGaNベースのWBGデバイスを完全に検証するには、静的測定と動的測定の両方が必要である。MOSFET又はIGBTのスイッチング及びダイオード逆パラメータを測定するための好ましい試験方法は、概してダブル・パルス試験(DPT:Double Pulse Test)法を使用して行われる。
【0004】
WBGシステム検証では、DPT実験中、広範囲の電圧値及び熱値での動作条件について広い範囲にわたって、リアルタイム波形を比較することによって行われる。
【0005】
DPTは、スイッチング・パラメータを測定し、パワー・デバイスの動的(ダイナミック)な挙動を評価するための明確に定義された方法である。
【0006】
国際電気標準会議(IEC)及び半導体技術協会(JEDEC)の規格は、WBGパワー・デバイスの動的試験を定義している。DPTは、スイッチング・パラメータ、ダイオード逆回復エネルギー及び時間、ゲート電荷及び容量分析の測定によって、スイッチング・デバイスの主要な性能パラメータを決定するのに有益である。
【0007】
顧客は、ワークフローの早い段階で、外部からの刺激なしに、DUT基板を、電子部品が実装された状態(インサーキット:in-circuit)で動作させ、ディスクリート(個別)のMOSFET/IGBT部品の特性を評価する。このインサーキット試験は、DUT動作の実際にあり得る展開を良く表し、システム検証と呼ばれることもある。システム検証段階でDUTを試験するための標準的な測定や試験手順はない。
【0008】
従来のDPTセットアップを利用するのは、試験パラメータを何回か入れ替えて、これらの試験を手作業で実施し、その後、実験データを手動で分析するために、時間がかかり、エラーが発生しやすいプロセスである。
【0009】
現在、顧客は、波形データ(単に「波形」とも呼ぶ)を手作業で保存し、ExcelやLabVIEWなどのツールにエクスポートし、独自の技術を実行して試験レポートを文書化し、複数のDUT(10数個から20数個)にわたって反復処理することによって、WBGデバイスを試験している。プロジェクトの遅れは、競合他社に対して、市場投入までの時間が遅れ、主要な顧客を失うことにもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「テクトロニクス社のファンクション・ジェネレータ」の紹介サイト、AFGシリーズを紹介、テクトロニクス、[online]、[2022年10月28日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/signal-generators/arbitrary-function-generator>
【非特許文献2】「テクトロニクス社のオシロスコープ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2022年10月28日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes>
【非特許文献3】「テクトロニクス社のIsoVu絶縁プローブ」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2022年10月28日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes/probes/isovu-isolated-probes>
【非特許文献4】「テクトロニクス社の電流プローブ(カレント・プローブ)」の紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2022年10月28日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/products/oscilloscopes/probes/current-probes>
【非特許文献5】「トリガ入門」、テクトロニクス、2010年6月発行、[online]、[2022年11月1日検索]、インターネット<https://www.tek.com/ja/documents/primer/triggering-fundamentals-pinpoint-triggering-and-event-search-mark-dpo7000-0>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
WBG基準設計のシステム検証中に顧客が直面する重要な課題の1つは、試験時間を改善することである。複数回にわたって、リアルタイム波形データをキャプチャし、分析すると、それだけ長い時間がかかる。たった1つのパワー・デバイスを検証及び試験するのにも数日かかる。その主要な要因は、複数の測定を行うことであり、複数のDUTを試験することであって、手作業での試験、分析及びレポート作成は、遅延の原因となる。
【0013】
もう一つの重要な課題は、試験結果に対する信頼性の欠如である。DPT試験には、動的(ダイナミック)試験において、自動測定と、DUT基板、任意ファンクション・ジェネレータ(AFG)や測定システム(オシロスコープ)などの試験測定装置の自動的な制御が必要である。なぜなら、試験エンジニアが、分析に独自のプログラム(コード)やツールを使用すると、試験セットアップの制御が効果的でなくなったり、プローブが必要な帯域幅、ダイナミック・レンジ、コモン・モード除去比を満たしていなかったり、オシロスコープに、スキューを除去できるマルチ・チャンネルと、高ダイナミック・レンジが必要であったりするためである。
【0014】
この分野では、自作の測定手法が支配的であり、これは、会社ごとに異なるカスタマイズされたセットアップである。これは、必要な測定について、かなりの部分をカバーしてはいるが、システムの観点からは、技術と実装が会社ごとに、そしてセットアップごとに異なることがあり、標準的なものがない。このために、試験セットアップの信頼性が低下し、結果の相関関係に課題が生じる。DUTのインサーキット動作を検証するための標準的で一般に広く認められた測定手法(ソリューション)がない。
【0015】
試験測定装置の供給メーカーが提供する既存の試験方法には、システム検証のためのオシロスコープ・ベースの専用の測定手法がない。そこで、効率的な試験ソリューションが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の様々な実施形態は、インサーキット動作中のワイド・バンド・ギャップ(WBG)パワー・デバイスのシステム検証のための、逆回復プロットを使った自動ダブル・パルス試験(DPT:double Pulse Test)測定を提供する。
【0017】
逆回復特性の測定は、データ取り込みの精度に大きく依存する。テクトロニクス社が供給するIsoVu(登録商標)プローブや電流プローブなど、テクトロニクスが開発した最先端のプローブを使用することで、システムはデバイスの実際の特性に近い逆回復特性を測定できる。IsoVuプローブは、光アイソレーション技術を利用しており、例えば、高電圧をアイソレーションしたフローティング測定が行えるので、パワー・デバイスの測定に適している。
【0018】
本願の実施形態にはいくつかの利点がある。こうした利点としては、業界標準(規格)を満たしたワークフローを定義できることや、新しく設計したものを業界標準に従ってデバッグすることなどが含まれる。その他の利点としては、検証とフィードバックを備えた自動化測定や、信号供給装置、試験測定装置及び被試験デバイス(DUT)の自動化、逆回復特性の測定においてカスタマイズした基準レベルを使って積分する区間を設定変更可能であるという柔軟性もある。更なる利点としては、逆回復特性を表示するための新しい形式のプロットがあり、これには、波形データを時間で区切って重ねて表示(オーバーレイ)する機能、測定サイクル毎に注釈付きで分析結果を表示する機能、単一及び複数のパルスの結果及び統計値の制御がある。
【0019】
本開示技術の実施形態の測定手法に基づくWBG試験測定装置は、ワークフローに柔軟性を提供し、複雑な測定を実行できる。こうした測定に含まれる規格としては、限定するものではないが、例えば、半導体技術協会(JEDEC)や国際電気標準会議(IEC)などの様々な標準化団体によって定められたものが含まれる。この測定手法(WBG-DPT)は、設計者と検証チームにとって非常に便利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、DPT電源回路中の寄生要素の回路図を示す。
【
図2】
図2は、基板検証フローの概略フロー図を示す。
【
図3】
図3は、ワークフローの概略フロー図の実施形態を示す。
【
図4】
図4は、DPTフローの測定項目のグルーピングの実施形態を示す。
【
図5】
図5は、スイッチング・パラメータを測定するための試験ポイントを示す概略回路図の実施形態を示す。
【
図6】
図6は、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)におけるターン・オンとターン・オフの遷移の実施形態を示す。
【
図7】
図7は、WBG-DPT測定手法の一実施形態についてのターン・オン損失E
onの環境設定と、測定値バッジのスクリーン画像の例を示す。
【
図8】
図8は、波形ナビゲーション機能を備えたオシロスコープにおいて、WBG測定手法の実施形態を用いて、注釈を付けてE
on領域を表示する例を示す。
【
図9】
図9は、逆回復電流の測定の一実施形態において、テクトロニクスの電流プローブを用いてオシロスコープで捕捉された逆回復電流の波形を示す。
【
図10】
図10は、ダイオードの逆回復特性を測定するための試験ポイントを示す概略回路図の実施形態を示す。
【
図11】
図11は、WBG-DPT測定手法の一実施形態に関する逆回復時間(T
rr)の設定メニュー及び測定値バッジを示す。
【
図12】
図12は、WBG-DPT測定手法の一実施形態を用いて波形に注釈を付けた逆回復領域を示す。
【
図13】
図13は、逆回復電荷領域をズームし、注釈を付けた実施形態を示す。
【
図14】
図14は、複数のパルスを重ねて表示した逆回復プロットの一実施形態を示す。
【
図15】
図15は、逆回復プロットについて、複数のパルスと逆回復電荷領域を重ねた表示の一実施形態を示す。
【
図16】
図16は、逆回復試験を行う一実施形態によって得られる単一の逆回復プロットとこれに対応する波形を示す。
【
図17】
図17は、逆回復試験を行う一実施形態によって得られる複数の逆回復プロット、これに対応する波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
パワー・エレクトロニクス・システムには、電流の流れを制御するために制御信号を印加することによって、パワー半導体デバイス(PSD:power semiconductor device)をスイッチングする機能がある。PSDの動的な性能は、電力変換装置(power converter:変電装置)などのパワー・エレクトロニクス・システムの効率と出力密度(power density:単位体積あたりの電力量)に大きな影響がある。
【0022】
図1は、DPT電力段における2つの一次寄生ループ、電力ループ10及び制御ループ12を示す。L
S及びL
Dは、メイン電力ループ内の浮遊誘導性成分である。L
Gはゲート・ループに関連する寄生インダクタンスである。MOSFETの寄生容量C
GS、C
GD及びC
DSは、スイッチングの低速化に寄与し、スイッチング損失を増加させる。L
D及びL
Gは、寄生によるリンギングの主な要因であるが、高速スイッチングによるリンギングは、L
Dに対して、より敏感である。その結果、システムを検証するインサーキット試験は、設計者にとって重要であり、そうしないと、特性を評価しているときに、PCB影響を見落としてしまう。
【0023】
DUTは、目的のアプリケーションに基づいてカスタマイズされている。PCB基板は、小型に設計することで、パッケージされた基板の動的な性能に影響を与える回路の寄生成分とそのループの影響を最小限に抑えるように設計される。高速スイッチングWBGは、回路の寄生成分に対して感度が高いため、システム検証の一環として、インサーキット動作中に、DPTスイッチング及びダイオード回復パラメータを測定することが重要である。DPT分析から得られた情報は、基板の熱電気性能(thermo-electric performance)の予測に役立ち、目的のアプリケーション設計の検証に非常に有益である。
【0024】
図2は、参考設計から最終製品までのバリデーションのワークフローの実施形態を示す。被試験デバイス(DUT)は、ディスクリート部品を試験回路に組み込み(集積し)、プロービング・ポイントを用意する。システムは、通常、電源からの電力の印加によって動作を開始する。試験ソフトウェア(SW)は、DUTに印加するパルスを設定する。これには、任意ファンクション・ジェネレータ(AFG:Arbitrary Function Generator)や任意波形発生装置(AWG:Arbitrary Waveform Generator)などの信号供給(Source)装置又は他の波形信号供給装置が含まれる場合がある。こうした信号供給装置は、所定の関数に基づく波形データや、ユーザが編集等により生成した任意の波形データをデジタル・アナログ変換し、アナログ信号として出力できる。その後、DUTは、所望の結果や規格に準拠していること(コンプライアンス)を確認するために、試験と分析を受ける。結果の分析と後処理により、試験が終了する。
【0025】
図3は、実施形態を用いたワークフローを示す。実施形態は、ユーザの介入を最小限とした自動化プロセスを提供する。特性が測定された部品20は、パッケージ化されて、集積回路基板/PCB22に実装される。電源24がオンになると電力を供給すし、任意ファンクション・ジェネレータ(AFG)などの信号供給装置28が、試験に使用されるパルスを提供する。試験測定装置26は、ディエンベッドされた寄生インダクタンスSパラメータ・ファイルをサポートし、業界標準(規格)に従った完全な測定セットを有している。
【0026】
この説明では、信号供給装置としてAFGに、試験測定装置としてオシロスコープ(スコープとも呼ぶ)に焦点を当てているが、これらを使用しているのは、説明の理解を容易にするためであって、形はどうであれ、これらの要素を、これら特定の例に限定することを意図するものではない。
【0027】
本願の実施形態は、WBGデバイスに対する多数の測定が可能である。
図4は、こうした複数の測定をグループ化するためのユーザ・インタフェースを示す。図からわかるように、この実施形態における試験測定インタフェースによって提示されるユーザ・インタフェースは、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)又は絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)のいずれかのデバイス形式を選択でき、これら2つともに、ワイド・バンド・ギャップ・デバイスの例である。試験測定装置は、複数のパワー・デバイスをサポートしており、これらとしては、限定するものではないが、炭化ケイ素(SiC:シリコン・カーバイド)、窒化ガリウム(GaN)MOSFET、シリコン・デバイス、GaN-HEMT(high electron mobility transistor:高電子移動度トランジスタ、「ヘムト」とも呼ばれる)デバイスなどがある。ユーザは、電圧源及び電流源チャンネルと、ゲート電圧チャンネルを選択できる。ユーザは、試験セットアップを使用して、いくつかの試験の中のいずれかを選択することもできる。これらとしては、例えば、スイッチング・パラメータ分析、スイッチング・タイミング分析、ダイオード逆回復分析、容量分析などがある。
図4に図示した例では、特に「WBG-DPT」測定において、スイッチング・パラメータ分析の中のターン・オン損失E
on(Turn-On Energy)の測定が選択されているが、同様に種々の測定が選択できる。
【0028】
図5は、スイッチング・パラメータを測定するシナリオの一実施形態を示す。下側の位置(Q2)にある半導体のDUTは、上側の位置(Q1)のフリー・ホイール・ダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)と共に、試験対象のスイッチング・セルを形成する。
【0029】
試験測定装置(例えば、オシロスコープ)26からの複数のプローブは、Q2のゲート電圧と共に、スイッチング電圧及び電流を捕捉する。
図5に示す試験測定装置26へのプローブ接続の構成は、単に一例を構成するにすぎない。プローブは、ポート32を介して試験測定装置26に接続され、入力される信号がアナログ・デジタル・コンバータ31によって波形データへ変換されてメモリ33に取り込まれる。ポート32は、例えば、オシロスコープの複数の入力チャンネル(Ch)であっても良い。次いで、取り込まれた波形データは、プロセッサ30へ転送されて必要な処理が行われる。ユーザ・インタフェース34上には、
図4に示されるようなメニューが表示され、ユーザは、試験プロセスをインタラクティブに行える。ここでのユーザ・インタフェースは、タッチスクリーンの実施形態を含むが、ディスプレイと、ノブやボタンなどの操作装置との任意の組み合わせから構成されても良い。プロセッサは、1つ以上のプロセッサから構成されても良く、実施形態の方法を1つ以上のプロセッサに実行させるプログラム(コード)を実行する。
【0030】
DUTを動作状態にするには、本願の場合では、電源からの電力をDUTに供給し、次に信号供給装置28からパルスをDUTに印加する。図に見られるように、信号供給装置28と試験測定装置26との間には、これらを同期させるためのオプションの接続が存在する。これは、信号供給装置28に同期のためのトリガ信号を発生させ、これを試験測定装置26の第4チャンネル(Ch4)又はAUX(補助)チャンネルで受けることで行われても良い。
【0031】
このシステムによれば、DPTプロセスの自動化が可能になるが、種々の変更も可能である。例えば、システムは、多くの業界標準(規格)のうちの1つに従って、パルス領域を第2パルスに自動的に設定できる。しかし、ユーザには、ユーザのDUTの動作に基づいて、パルス領域を変更する柔軟性がある。ユーザは、「自動」を選択すれば、測定の環境設定について、何らのセットアップも行う必要はない。自動設定は、波形データについて、検証と測定の両方を実行する。
【0032】
ユーザが選択可能な設定に関しては、
図7が、これらに関するメニューの一実施形態の例を示しており、ユーザが第2パルス領域の入力を忘れると測定が失敗することがある。この場合、ユーザは、測定に失敗し、その結果を示すバッジ(通知機能による表示)の形式でフィードバックを受ける。例えば、第2パルス領域が存在しない場合、ユーザは、「有効なE
on領域が第2パルスに存在しない...」というように通知を受ける。なお、
図7では、測定値バッチ70上に測定値が通知される例を図示している。
【0033】
図6に示すように、IGBTを例として用いて、第1パルスの立下りエッジと第2パルスの立ち上がりエッジとを調べることによって、ターン・オン及びターン・オフのパラメータを計算できる。スイッチング・パラメータ分析では、単一のコレクタ電流パルスのターン・オン中にIGBT内で消散(散逸)されるエネルギー(Turn-On Energy、即ち、ターン・オン損失)を測定するが、これは、次の数式1で記述される。
【0034】
【0035】
ターン・オフ損失(Turn-Off Energy)は、単一のコレクタ電流パルスのターン・オフ時間にテール(tail)時間を加えた時間の間にIGBT内で消散されるエネルギーであり、次の数式2で記述される。
【0036】
【0037】
図8は、得られる波形の実施形態を示し、E
onの領域には注釈が付けられており、ユーザは、スクロール及びズームによって波形を操作して、表示される波形データの詳細を見ることができる。
【0038】
試験測定装置内の1つ以上のプロセッサは、入力波形データに対して信号調整(signal conditioning)を行うことによって、測定の精度を高める能力を提供する。DUTに由来する入力データは、通常、アナログ信号データであり、分析する前にアナログ・デジタル変換が行われる。信号調整としては、電圧又は電流の制限、アンチ・エイリアシング・フィルタの適用、増幅、フィルタ処理などがある。信号調整は、通常、ノイズの影響を軽減し、信号調整を受けない場合よりも測定の精度が高くなる。他のノイズ制御技術としては、フィルタの使用や、信号のエッジ検出に使用するトリガの閾値にヒステリシス・バンド又はノイズ・ガード・バンド(例えば、特許文献1の
図3参照)を設定することなどがあっても良い。
【0039】
加えて、上記の説明は、DUTによって実行される分析を特定するユーザ入力を、ユーザが入力するものとして言及しているが、このユーザ入力は、自動化されたやり方で試験や分析を実行するために、プログラマチック・インタフェースを使用して、ユーザが自動化スクリプトその他の形態のプログラミングを提供することであっても良い。これは、以下で説明する逆回復を含め、DPT試験の全ての態様に当てはまる。
【0040】
ダブル・パルス試験の第2パルスを開始する時に、順方向導通モードになるであろうフリー・ホイーリング・ダイオードは、逆方向ブロッキング・モードに切り替わる。このとき、ダイオード中の電流は、
図9に示すように、ゼロ以下に落ち込み、そして、0アンペアに回復する。そのシステムにおいて、0アンペアまで回復するのに要する時間(逆回復時間T
rrと呼ばれる)と、結果として生じる逆回復電荷量Q
rrは、システムについて分析するべき特に重要な逆特性である。この実施形態を用いて、ユーザは、単一の電流波形を用いてT
rr測定を行うことができ、ゲート・ソース電圧をエッジ修飾子として使用できる。
図10は、試験セットアップの一実施形態を示す。
【0041】
逆回復時間は、次の数式3を用いて求めることができる。
[数式3]
Trr=ta+tb
ここで、taは、第2パルス中に逆回復電流が0アンペアから落ちて最大逆回復電流に達するまでにかかる時間であり、tbは、0アンペアに向かう逆回復電流の立ち上がりに接して引かれた補助線がゼロ電流軸と交差する時間である。
【0042】
ユーザが測定に適切な入力を提供した後、taは、トリガの閾値に関する特定のヒステリシス・バンド(hysteresis band)内にゼロ・アンペアのエッジを有する波形についての強力なエッジ検出技術(エッジ・トリガなど)を用いて決定される。tbについては、逆回復電流が最大逆回復電流からゼロ電流軸に向かって回復する際に逆回復時間分析のために補助線が描かれる。一部の規格では、この補助線は、最大逆回復電流(Irrm)の90%ポイント(A点)と25%ポイント(B点)を通過する必要がある。経験の浅いユーザのために、本願の測定手法は、業界標準(規格)に従って、オシロスコープによって設定される複数の自動化レベルを提供する。
【0043】
電流の回復は、システムによって、非常に急激にも、比較的緩やかにも起こり得るので、これらのパーセント・レベルを設定する機能は有益である。本願のWBG測定手法の実施形態では、ユーザは、この補助線が通過するIrrの第1パーセンテージ・レベル(A点)と第2パーセンテージ・レベル(B点)を様々に設定できる。時点t1及びt2において、それぞれIrrmのA%ポイント及びB%ポイントを通過する補助線の式は、次の数式4で求められる。
【0044】
【0045】
この補助線がゼロ電流軸と交差する時点(交差時点又は切片時点)は、次の数式5で求められる。
【数5】
【0046】
逆回復時間の内のtbは、この交差時点tintを用いて、数式6に示すように、tintから最大逆回復電流Irrmに達する時点を引き算することで求められる。
[数式6]
tb=tint-trrm
【0047】
数式5が示すように、t
intは、I
rrmに依存していない(独立である)。補助線が通過する第1ポイント(A点)と第2ポイント(B点)の設定が変更されれば、合計の逆回復時間(T
rr)も変化する。この斬新な設定機能は、視覚的フィードバックとオシロスコープ測定フィードバックに基づいて、非線形の逆回復領域を分析するための強力なツールを提供する。本願のWBG測定手法の実施形態では、この補助線が通過すべきこれらポイントを、I
rrmに関連した絶対値として又はパーセンテージとして与えることができる。これらの設定は、エンジニアが電流の回復特性を判断し、測定結果を使って電流回復特性を定量化するのに有益である。
図11は、こうした設定に対応したユーザ・インタフェースの一実施形態を示し、これによると、ユーザがカスタムを選択した場合(左側のメニュー)には、第1及び第2パルスの電流について外挿(extrapolation:既知のデータから、これらデータの範囲外を推定)レベルをユーザが選択又は入力可能となり、ユーザが自動を選択した場合(右側のメニュー)には、自動的に設定される値が使用される(ユーザは、任意に選択又は入力できない)。また、
図11は、T
rrの測定値の測定値バッジ(通知機能による測定値の表示)110も示している。
【0048】
更に、逆回復時間パラメータには、時間で変化しやすい情報があるので、開示する測定手法では、アプリケーションにおいて、「逆回復プロット」と呼ぶ新しいプロットを提供する。
図12は、捕捉した波形を示す。このプロセスは、波形の逆回復領域を自動的に検出して、その部分を焦点を当てて拡大(ズーム・イン)し、図に示すように、関連する逆回復特性パラメータの注釈を付ける。この実施形態では、エッジ検出技術及び測定設定の助けを借りて、捕捉された波形上の逆回復領域を見つける。逆回復領域を含む波形部分を拡大したものをプロットした後、オシスコープは、重要な領域を破線でマークし、適切な逆回復特性の注釈を付ける。
【0049】
従来の測定手法では、逆回復領域に自動的にズーム・イン(焦点を当てて拡大)し、最大逆回復電流値Irrm、Irrmに達するのに要した時間(ta)、Irrmから補助線の時間軸との交点又は切片までの時間(tb)、合計逆回復時間(trr)及び逆回復時間を決定するその他の関連パラメータのようなパラメータで、逆回復領域に注釈を付ける機能はない。
【0050】
逆回復電荷量Qrrは、ダイオードの逆回復電流が消滅するまでに要する電荷量であり、システムの逆回復特性を決定する重要なパラメータである。逆回復電荷量Qrrは、時間に対する逆回復電流曲線の電流軸のゼロより下の部分の面積で近似できる。この電荷は、回路のパワー・スイッチング側において、逆電圧で消散しなければならないエネルギーを表す。ユーザは、この測定のための入力として、逆回復電流波形を提供する必要があり、そのため、オプションとして、ゲート電圧をエッジを特定するための信号として利用しても良い。これは、ゲート電圧は、ICから直接供給を受けるので、通常、きれいな信号であるためである。
【0051】
逆回復電荷量Q
rrは、
図13に示すように、ダブル・パルス試験の第2パルスの間にダイオードを通って流れる逆回復電流i
rrの積分として定義され、次の数式7で求められる。
【0052】
【数7】
ここで、t0は、第2パルス中に逆回復電流が電流軸のゼロ以下に低下する時間であり、tiは、積分時間であり、この時間まで逆回復電荷が見いだされる。
【0053】
逆回復電荷が見いだされる積分時間は、Irrmに依存することになる。この積分時間は、ゼロ電流軸に向かう電流の立ち上がりの間に、電流がIrrmの一定の割合に達するまで電流波形を掃引することによって求められる。一部の業界標準では、この割合を、ゼロ電流軸へと回復中のIrrmの2%に設定している。
【0054】
パワー・デバイスの各システムは、逆回復電荷に対して、それぞれ独自の許容誤差を有するので、この測定手法は、最大逆回復電流値(Irrm)のパーセンテージ(割合)を与えることによって、積分時間(ti)を設定する機能を有する。この斬新な設定機能は、非線形の逆回復領域の分析に必要な要求を満たすことができる。本願のWBG測定手法の実施形態では、積分時間を、Irrmに関連するある絶対値又はパーセンテージとして与えることができる。この測定の関する新しい逆回復プロットでは、捕捉された波形から逆回復領域を特定し、次いで、数式7の積分時間であり、電荷領域全体を占める時間の注釈を付ける。
【0055】
この新しい逆回復プロットのアプローチでユニークな点は、ダブル・パルスの複数のセットを考慮し、各セットについて、視覚的に波形及び測定結果を与える機能である。ユーザは、WBG測定手法において測定を設定して、ダブル・パルスの複数のセットの第1パルス若しくは第2パルスの夫々、又は、全てのパルスについて、結果を確認できる。複数のパルスの場合、測定に与えられるエッジ検出用波形(edge qualifier waveform)が、パルス位置を見つけるための基準として使用される。
【0056】
図14は、複数の逆回復プロット及び複数の逆回復領域の表示の一例を示す。凡例に示すように、これらプロットは、パルス1とパルス2のみを示しているが、最大N個のパルスが存在する可能性があることに注意されたい。測定値バッジ又は凡例には、電流パルスの結果と、全てのパルスの平均値の結果が表示される。
図14の逆回復プロットにおいて、電流の注釈を示す(iが付いている)時間に関する注釈は、実線のパルス1に関するものである。
図15は、複数のプロットと逆回復領域を示している。
【0057】
図16及び
図17は、逆回復電流と対応する波形のプロットの実施形態を示し、
図16は、単一のプロットを示し、
図17は、複数のプロットを示す。
【0058】
WBGアプリケーションの実施形態では、1つのプロットで、比較のために、バックグラウンドで他の逆回復領域と共に、逆回復電流(I
rr)に注釈を付けて複数のパルスを描写する。1回で取り込まれた波形データ(アクイジション)には、複数の関心のある領域(関心領域)が存在することがあるため、試験測定装置は、1つの波形データを関心領域ごとに切り分け、これら関心領域を1つのプロットに重ねて描写しても良い。また、試験測定装置は、
図17に示すように、複数のプロットからの複数の領域を重ねて表示する機能を有しても良い。これら複数の領域は、1回で取り込まれた波形データから得られたものでも良いし、複数回で取り込まれた複数の波形データから得られたものでも良い。
【0059】
ユーザ・インタフェースにより、ユーザは、観察する波形を移動したり、波形に対する操作が可能になる(ナビゲーション機能)。関心領域にズーム・インすることに加えて、ユーザは、第1パルス、第2パルス、全ての奇数パルス、全ての偶数パルス、奇数及び偶数以外の特性で指定した複数のパルスなどを選択することによって、結果をフィルタ処理できる。このナビゲーション機能により、ユーザは、次の波形又はパルス、前の波形又はパルス、最小値、最大値などに移動できる。ユーザが、観察するカ所を移動すると、注釈が更新され、ズームされた領域に反映される。ズームされた関心領域の強調表示には、別の色を使用したり、線を太字にしたりすることが含まれても良い。この装置には、関心領域での振動を扱うために、順方向(図では左から右)と逆方向(図では右から左)の両方向で信号を分析する機能もある。
【0060】
オシロスコープにおけるこの新しいプロット形式では、単一の波形から、時間を変えて切り出した複数の波形を重ねて表示できる。このプロットは、これらの領域の夫々を見て回ること(ナビゲーション)ができ、それに応じて、オシロスコープ上の測定結果がアップデートされて表示される機能を提供できる。現在の市場には、逆回復特性に焦点を当てて、複数の逆回復領域を含む単一の波形について、このようなナビゲーション機能を提供できるオシロスコープ用アプリケーションは存在しない。
【0061】
この逆回復プロットの更なる拡張機能としては、設定を柔軟に変更できる視覚的なマスクで範囲を定め、この特定の範囲(視覚的マスク)を突破する全ての逆回復領域を検出するというものがある。オシロスコープが測定を実行して、この特定の範囲(視覚的マスク)を突破(violate:違反)する逆回復領域があれば、それを通知する。プロットについてのこのマスク機能は、システムの理想的な逆回復領域を維持し、最大回復時間、最大逆回復電流などを制限するのに有益である。
【0062】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0063】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0064】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0065】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0066】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0067】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
実施例
【0068】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0069】
実施例1は、試験測定装置であって、ユーザ・インタフェースと、被試験デバイス(DUT)に接続される1つ以上のプローブと、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、電源から電力を供給すると共に信号供給装置からの少なくとも第1及び第2パルスを印加することによって上記DUTを動作させた後に、上記DUTから信号を受けて波形データを生成する処理と、上記波形データ内の1つ以上の逆回復領域を見つける処理と、上記逆回復領域から上記DUTの逆回復時間を求める処理と、上記1つ以上の逆回復領域の逆回復プロットを上記ユーザ・インタフェースに表示する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成され、上記逆回復プロットが、1つ以上の逆回復領域を表示するように自動的に設定されると共に上記1つ以上の逆回復領域に関する少なくとも1つの特性を含み、該特性には上記逆回復プロット上で注釈が付加される。
【0070】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、1つ以上のプロセッサは、逆回復時間を求めるための設定を指定するユーザ入力を受けるように更に構成される。
【0071】
実施例3は、実施例2の試験測定装置であって、上記ユーザ入力が、逆回復電流波形に追加する補助線が通過する点の逆回復電流のレベル(外挿レベル)の自動設定であるか、又は、上記補助線が通過する点の上記逆回復電流のレベル(外挿レベル)をユーザが指定する設定のいずれかである。
【0072】
実施例4は、実施例3の試験測定装置であって、逆回復プロットを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記自動設定に起因する上記補助線及びユーザが指定する設定に起因する上記補助線のうちの少なくとも1つを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0073】
実施例5は、実施例1~4のいずれかの試験測定装置であって、上記逆回復プロットを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、凡例を付けて上記逆回復プロットを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0074】
実施例6は、実施例1~5のいずれかの試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記1つ以上の逆回復領域からの逆回復電荷量を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するように更に構成される。
【0075】
実施例7は、実施例6の試験測定装置であって、上記逆回復プロットを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記1つ以上の逆回復領域に関する逆回復電荷領域として逆回復電荷を表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0076】
実施例8は、実施例6の試験測定装置であって、上記逆回復電荷量を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、最大逆回復電流の所定のパーセンテージを使用する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0077】
実施例9は、実施例6の試験測定装置であって、上記逆回復電荷量を求める処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、ユーザが最大逆回復電流の所望のパーセンテージを入力するための表示を上記ユーザ・インタフェース上に提示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0078】
実施例10は、実施例1~9のいずれかの試験測定装置であって、上記逆回復プロットを表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、複数の逆回復領域を表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含む。
【0079】
実施例11は、実施例10の試験測定装置であって、複数の逆回復領域を表示する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムが、上記複数の逆回復領域をオーバーレイ表示(重ねて表示)する処理を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを含み、上記オーバーレイ表示が、夫々が拡大及び強調されて補助線と共に注釈が付された複数の逆回復領域のオーバーレイ表示、上記DUTの波形データの1回の取り込みデータから得られた複数の逆回復領域のオーバーレイ表示、又は、上記DUTの波形データの複数回の取り込みデータから得られた複数の逆回復領域のオーバーレイ表示のいずれかである。
【0080】
実施例12は、被試験デバイス(DUT)の逆回復測定を行う方法であって、電源から電力を供給すると共に信号供給装置から第1及び第2パルスを印加することによって上記DUTを動作させた後に、上記DUTからプローブを通して信号を受けて波形データを生成する処理と、上記波形データ中の1つ以上の逆回復領域の位置を特定する処理と、上記1つ以上の逆回復領域に関して上記DUTの逆回復時間を求める処理と、上記1つ以上の逆回復領域の逆回復プロットをユーザ・インタフェース上に表示する処理とを具え、上記逆回復プロットは、上記1つ以上の逆回復領域を表示するように自動的に設定されると共に上記1つ以上の逆回復領域の少なくとも1つの特性を含み、該特性には上記逆回復プロット上で注釈が付けられている。
【0081】
実施例13は、実施例12の方法であって、上記逆回復時間を求めるために必要な選択を指定するユーザ入力を受ける処理を更に具えている。
【0082】
実施例14は、実施例13の方法であって、上記選択が、補助線に使用される外挿レベルの自動設定又はユーザ指定設定のうちの1つを含む。
【0083】
実施例15は、実施例14の方法であって、上記逆回復プロットを表示する処理が、上記自動設定から生じる補助線及びユーザ指定設定から生じる補助線のうちの少なくとも一方を表示する処理を更に含む。
【0084】
実施例16は、実施例12の方法であって、上記1つ以上の逆回復領域から逆回復電荷量を求める処理を更に具えている。
【0085】
実施例17は、実施例12~16のいずれかの方法であって、上記逆回復プロットを表示する処理が、逆回復電荷を逆回復電荷領域として表示する処理を含む。
【0086】
実施例18は、実施例12~17のいずれかの方法であって、上記逆回復プロットを表示する処理が、複数の逆回復領域を表示する処理を含む。
【0087】
実施例19は、実施例18の方法であって、上記複数の逆回復領域を表示する処理が、複数の逆回復領域及び対応する複数の逆回復電荷領域を表示する処理を含む。
【0088】
実施例20は、実施例12から18のいずれかの方法であって、上記逆回復プロットを表示する処理が、複数の逆回復領域及びユーザ操作手段を表示する処理を含み、上記ユーザ操作手段は、ユーザが複数の逆回復領域内の選択された回復領域に焦点を当てて拡大(ズーム)する処理を可能にすると共に、ユーザが複数の逆回復領域から選択された他の回復領域へと進んで選択した逆回復領域の強調表示と注釈の付加を可能にする。
【0089】
明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される全ての機能、並びに開示される任意の方法又はプロセスにおける全てのステップは、そのような機能やステップの少なくとも一部が相互に排他的な組み合わせである場合を除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。明細書、要約書、特許請求の範囲及び図面に開示される機能の夫々は、特に明記されない限り、同じ、等価、又は類似の目的を果たす代替の機能によって置き換えることができる。
【0090】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0091】
20 部品
22 集積回路基板
24 電源
26 試験測定装置
28 信号供給装置
30 プロセッサ
31 アナログ・デジタル・コンバータ
32 ポート(入力チャンネル)
33 メモリ
34 ユーザ・インタフェース
70 測定値バッジ
110 測定値バッジ