(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067973
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】交換レンズ
(51)【国際特許分類】
G03B 17/14 20210101AFI20230509BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20230509BHJP
【FI】
G03B17/14
H04N23/66
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023033776
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2018141601の分割
【原出願日】2018-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村田 司
(57)【要約】
【課題】カメラボディに倍率色収差に関する情報を送信する交換レンズを提供する。
【解決手段】交換レンズは、カメラボディに装着可能な交換レンズであって、撮影距離及び焦点距離の少なくとも一方を用いて近似された、光学系の倍率色収差を表す関数の係数に関する情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記係数に関する情報を前記カメラボディに送信する送信部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラボディに装着可能な交換レンズであって、
撮影距離及び焦点距離の少なくとも一方を用いて近似された、光学系の倍率色収差を表す関数の係数に関する情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記係数に関する情報を前記カメラボディに送信する送信部と、
を備える交換レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
画像データから倍率色収差による色ずれを検出して、色ずれを補正する撮像装置が知られている(特許文献1)。しかし、絵柄によって画像データから色ずれを検出できない場合や誤検出が生じて補正が正しく行われず、画像の画質が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によると、交換レンズは、カメラボディに装着可能な交換レンズであって、撮影距離及び焦点距離の少なくとも一方を用いて近似された、光学系の倍率色収差を表す関数の係数に関する情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記係数に関する情報を前記カメラボディに送信する送信部と、を備える交換レンズ。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】倍率色収差によって生じる色ずれ量の一例を示す図である。
【
図3】倍率色収差を表す関数の一例を示す図である。
【
図4】倍率色収差を表す関数の係数を示す表である。
【
図5】倍率色収差を表す関数の係数を示す表である。
【
図6】倍率色収差を表す関数の係数を近似する曲面を模式的に示す図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る撮像装置の動作例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置の一例であるカメラ1の構成例を示す図である。カメラ1は、カメラボディ2と取り付け可能なアクセサリである交換レンズ3とにより構成される。
【0007】
カメラボディ2には、交換レンズ3が取り付けられるボディ側マウント部201が設けられる。交換レンズ3には、カメラボディ2に取り付けられるレンズ側マウント部301が設けられる。レンズ側マウント部301及びボディ側マウント部201には、それぞれレンズ側接続部302、ボディ側接続部202が設けられる。レンズ側接続部302及びボディ側接続部202には、それぞれクロック信号用の端子やデータ信号用の端子、電源供給用の端子等の複数の端子が設けられている。交換レンズ3は、レンズ側マウント部301により、カメラボディ2のボディ側マウント部201に着脱可能に装着される。なお、カメラ1は、カメラボディ2とレンズ部3とが一体的に構成されたカメラ(レンズ固定式カメラ)であってもよい。
【0008】
カメラボディ2に交換レンズ3が装着されると、ボディ側接続部202に設けられた端子とレンズ側接続部302に設けられた端子とが電気的に接続される。これにより、カメラボディ2から交換レンズ3への電力供給や、カメラボディ2及び交換レンズ3間の通信が可能となる。
【0009】
交換レンズ3は、撮影光学系(結像光学系)31と、レンズ制御部32と、レンズメモリ33とを備える。交換レンズ3は、例えばズームレンズである。撮影光学系31は、焦点距離を変更するレンズ(変倍レンズ)31aやフォーカスレンズ(焦点調節レンズ)31bを含む複数のレンズと絞り31cとを含み、撮像素子21の撮像面上に被写体像を結像する。
【0010】
レンズ制御部32は、CPUやFPGA、ASIC等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリによって構成され、制御プログラムに基づいて交換レンズ3の各部を制御する。レンズ制御部32は、カメラボディ2のボディ制御部22からボディ側接続部202とレンズ側接続部302とを介して入力される信号に基づいて、レンズ31a、フォーカスレンズ31b、及び絞り31cを駆動制御する。
【0011】
例えば、レンズ制御部32は、ボディ制御部22からフォーカスレンズ31bの移動方向や移動量、移動速度などを示す信号が入力されると、その信号に基づいてフォーカスレンズ31bを光軸L方向に進退移動させて、撮影光学系31による被写体像の結像位置を変化させる。また、レンズ制御部32は、カメラボディ2のボディ制御部22から出力される信号に基づき、レンズ31aの位置や絞り31cの開口径を制御する。
【0012】
レンズメモリ33は、例えば、不揮発性の記憶媒体等により構成される。レンズメモリ33には、交換レンズ3に関連する情報が記憶される。本実施の形態では、レンズメモリ33には、撮影光学系31の倍率色収差を表す関数の係数に関する情報が、倍率色収差情報として記憶される。レンズメモリ33へのデータの書き込みや、レンズメモリ33からのデータの読み出しは、レンズ制御部32によって制御される。なお、倍率色収差情報は、レンズ制御部32の内部のメモリに記憶するようにしてもよいし、後述するボディメモリ23(又はボディ制御部22の内部のメモリ)に記憶してもよい。
【0013】
カメラボディ2に交換レンズ3が装着された後、レンズ制御部32は、レンズ側接続部302及びボディ側接続部202を介して、倍率色収差情報をボディ制御部22に送信する。即ち、レンズ制御部32は、撮影光学系31の倍率色収差に関する情報をカメラボディ2に送信する送信部として機能し、ボディ制御部22は、撮影光学系31の倍率色収差に関する情報を交換レンズ3から受信する受信部として機能する。また、レンズ制御部32は、制御したレンズ31aの位置情報(焦点距離情報)や、制御したフォーカスレンズ31bの位置情報や、制御した絞り31cの絞り値(F値)の情報などをボディ制御部22に送信する。
【0014】
次に、カメラボディ2の構成について説明する。カメラボディ2は、撮像素子21と、ボディ制御部22と、ボディメモリ23と、表示部24と、操作部25と、を備える。
【0015】
撮像素子21は、例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサである。撮像素子21は、撮影光学系31を通過した光束を受光して、被写体像を撮像する。撮像素子21には、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(例えば行方向及び列方向)に配置される。光電変換部は、例えばフォトダイオード(PD)によって構成される。撮像素子21は、受光した光を光電変換して信号を生成する。撮像素子21により生成された信号は、画像データ(画像信号)として、撮像素子21からボディ制御部22に出力される。
【0016】
ボディメモリ23は、例えば、不揮発性の記憶媒体等により構成される。ボディメモリ23には、画像データ等が記録される。ボディメモリ23へのデータの書き込みや、ボディメモリ23からのデータの読み出しは、ボディ制御部22によって制御される。表示部24は、画像データに基づく画像、シャッター速度や絞り値等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。操作部25は、レリーズボタン、電源スイッチ、各種モードを切り替えるためのスイッチなどの各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に応じた操作信号をボディ制御部22へ出力する。
【0017】
ボディ制御部22は、CPUやFPGAなどのプロセッサ、ROMやRAM等のメモリによって構成され、制御プログラムに基づいてカメラ1の各部を制御する。ボディ制御部22は、レンズ31aやフォーカスレンズ31b、絞り31cの駆動を制御する信号を生成し、生成した信号をレンズ制御部32に出力する。また、ボディ制御部22は、撮像素子21から出力された画像データに対して画像処理を施す。画像処理には、例えば、階調変換処理、色補間処理、輪郭強調処理等の公知の画像処理が含まれる。
【0018】
本実施の形態によるボディ制御部22は、上述した倍率色収差情報を用いて撮像素子21から出力された画像データに対して補正処理を行い、倍率色収差による色ずれが低減された画像データを生成する。以下に、倍率色収差による色ずれを補正する際に用いられる倍率色収差情報について説明する。
【0019】
同一被写体からの光であっても、R(赤)、G(緑)、B(青)など異なる波長(帯域)の光は、倍率色収差によって撮像素子21において互いに異なる位置に結像する。被写体からの光が波長に応じて異なる像高に結像するため、R、G、Bの各々の波長の光による被写体像は、各々の像の大きさが異なる、即ち像の倍率が異なることになる。このため、結像光学系31による被写体像を撮像して得られる画像データには、結像光学系31による倍率色収差の影響を受けて色ずれが生じる。
【0020】
図2は、倍率色収差によって生じる色ずれ量の一例を示す図である。
図2において、横軸は像高(単位は、例えばmm)であり、縦軸は基準となる色成分とのずれ量(単位は、例えばmm)である。
図2に示す例では、画像データの各色成分(R成分、G成分、およびB成分)のうちG成分を基準としており、波形41はG成分とR成分とのずれ量を示し、波形42はG成分とB成分とのずれ量を示している。色ずれ量は、例えば
図2に示したように、像高が高いほど大きくなる。
【0021】
結像光学系31の倍率色収差は、結像光学系31の光軸Lからの距離を変数とする関数式で表すことができる。本実施の形態では、倍率色収差の値を、像高の最大像高に対する比である像高比r(=像高/最高像高)を変数とする関数LCR(r)で表す。ここで、最大像高は、撮像素子21の撮像面において最大となる像高を表す。また、画像データにおいて補正対象となる信号の位置に対応する像高比をr0とし、補正対象信号の補正後の位置に対応する像高比をr1とする。像高比r0は、撮像素子21における補正前の画素位置を表し、像高比r1は、撮像素子21における補正後の画素位置を表す。この場合、色ずれの補正前の像高比r0と補正後の像高比r1との関係は、LCR(r)を用いて、以下のように表すことができる。
r0=r1×(1+LCR(r1)) …(1)
【0022】
例えば、画像データの各色成分(R成分、G成分、およびB成分)のうちG成分を基準として、R成分及びB成分の位置補正を行う場合、上記の式(1)の像高比r0は、補正前、つまり撮影されたセンサー(撮像素子21)上のR成分またはB成分の信号の位置に対応する像高を示し、像高比r1は、倍率色収差が補正された後のR成分またはB成分の信号の位置に対応する像高を示す。LCR(r)は、互いに異なる色成分の像の位置の比、例えばG成分の位置とR成分またはB成分の位置との比に関する関数であり、色ずれを補正するための変倍量を表すともいえる。関数LCR(r)は、倍率色収差による色ずれ量の大きさに応じて変化し、同じ焦点距離と撮影距離でもレンズ種類が異なれば異なる値になる。
【0023】
倍率色収差を表す関数LCR(r)は、例えば次式(2)で表すことができる。
LCR(r)=a+br
2+cr
3 …(2)
この式(2)において、係数aは像高比rの0次の項の係数であり、係数bは像高比rの2次の項の係数であり、係数cは像高比rの3次の項の係数である。像高比rを変数とする関数式(2)において、aは定数項となる。関数LCR(r)は、像高比rに応じて変化し、例えば
図3に示すようになる。係数a、b、cは、それぞれ撮影光学系31のレンズ配置に応じて変化する。即ち、倍率色収差による色ずれ量は、光の波長や像高の他に、撮影に使用したレンズのレンズポジション(焦点距離や撮影距離)によっても異なる。ズームレンズの場合は、焦点距離及び撮影距離の両方によって色ずれ量が変化し、単焦点レンズの場合には、撮影距離によって色ずれ量が変化する。
【0024】
焦点距離や撮影距離を変化させた場合の係数a、b、cは変化するが、撮影に使用するレンズの設計データを用いたシミュレーションや実際のレンズを用いた実験等を行うことで、予め求めることができる。本発明者は、シミュレーション等を行った結果、上述した式(1)と(2)を用いて補正する事で、像高比rの0次の項、2次の項、3次の項のという少ない項数の近似式で、倍率色収差に起因する色ずれを精度良く補正することができることを見出した。以下では、一例として、焦点距離f、撮影距離dをそれぞれ5通りずつ変化させ、25通りの係数a、b、cを設計データを用いたシミュレーションで取得した場合について説明する。
【0025】
図4は、第1の実施の形態に係るカメラ1における倍率色収差を表す関数の係数を示す表である。
図4は、焦点距離をf1からf5までの5通り変化させ、撮影距離をd1からd5までの5通り変化させた場合の係数a、b、cを示している。例えば、焦点距離がf1、撮影距離がd1の場合には、係数a、b、cは、それぞれa11、b11、c11となる。係数a(a11~a55)、係数b(b11~b55)、及び係数c(c11~c55)のうちの係数aのみを図示すると、
図5に示すようになる。
【0026】
図5において、例えば、撮影距離がd1の場合の係数a11、a12、a13、a14、a15を参照することで、撮影距離がd1の場合の焦点距離fによる係数aの変化を把握することができる。このため、これらの係数a11、a12、a13、a14、a15を用いて演算を行うことで、撮影距離がd1の場合に焦点距離fに応じて変化する係数aを曲線で近似することができる。例えば、焦点距離fに依存して変化する係数aを表す関数a(f)は、次式(3)で表される。
【数1】
・・・(3)
なお、式(3)において、frはレンズに固有の最短焦点距離であり、a(f)は最短焦点距離frの焦点距離fに対する比(fr/f)を変数とする関数となる。(fr/f)は、正規化された値となり、1以下の値を取り得る。
【0027】
また、例えば、焦点距離がf1の場合の係数a11、a21、a31、a41、a51を参照することで、焦点距離がf1のときに撮影距離dを変化させた場合の係数aの変化を把握することができる。このため、これらの係数a11、a21、a31、a41、a51を用いて演算を行うことで、焦点距離がf1の場合に撮影距離dに応じて変化する係数aを曲線で近似することができる。例えば、撮影距離dに依存して変化する係数aを表す関数a(d)は、次式(4)で表される。
【数2】
・・・(4)
なお、式(4)において、drは交換レンズ(ズームレンズ)3の最短撮影距離であり、a(d)は最短撮影距離drの撮影距離dに対する比(dr/d)を変数とする関数となる。(dr/d)は、正規化された値となり、0から1の値を取り得る。
【0028】
更に、上述した方法を拡張すると、
図5に示した係数aの25個のデータ(係数a11~係数a55)を用いて演算することで、焦点距離及び撮影距離のそれぞれに応じて変化する係数aを曲面で近似することができる。例えば、焦点距離f及び撮影距離dに応じて変化する係数aを表す関数a(f,d)は、次式(5)で表される。
【数3】
・・・(5)
【0029】
この式(5)は、上記の式(3)及び式(4)を組み合わせてできる12個の項からなる。式(5)を用いることで、
図6に示す例のように、係数aを曲面で近似することができる。即ち、式(5)は、係数aを推定する近似モデルである。式(5)中の12個の係数(A
00~A
32)は、
図5に示す25個の係数a11~a55に基づいて算出される。具体的には、25個の係数a11~a55との誤差が小さくなるように、式(5)中の係数(A
00~A
32)をフィッティングすることにより、式(5)中の12個の係数A
00~A
32の値が選定される。
【0030】
同様に、焦点距離fに応じて変化する係数bを表す関数b(f)は、例えば、
図4に示す係数b11~b15を用いて演算することによって、次式(6)で表される。
【数4】
・・・(6)
【0031】
また、撮影距離dに応じて変化する係数bを表す関数b(d)は、例えば、係数b11~b51を用いて演算を行うことで、次式(7)で表される。
【数5】
・・・(7)
【0032】
更に、係数bの25個のデータ(係数b11~係数b55)を用いて演算することにより、焦点距離f及び撮影距離dに応じて変化する係数bを表す関数b(f,d)は、次式(8)で表される。
【数6】
・・・(8)
【0033】
また、焦点距離fに応じて変化する係数cを表す関数c(f)は、例えば、
図4に示す係数c11~c15を用いて演算することによって、次式(9)で表される。
【数7】
・・・(9)
【0034】
撮影距離dに応じて変化する係数cを表す関数c(d)は、例えば、係数c11~c51を用いて演算を行うことで、次式(10)で表される。
【数8】
・・・(10)
【0035】
更に、係数cの25個のデータ(係数c11~係数c55)を用いて演算することにより、焦点距離f及び撮影距離dに応じて変化する係数cを表す関数c(f,d)は、次式(11)で表される。
【数9】
・・・(11)
【0036】
上述のように、係数aを近似する12個の係数A00~A32、係数bを近似する12個の係数B00~B32、及び係数cを近似する12個の係数C00~C32の合計36個の係数(近似係数)が算出される。これら近似係数の情報は、上述した倍率色収差情報として、交換レンズ3のレンズメモリ33に記憶される。即ち、レンズメモリ33には、撮影光学系31の倍率色収差を表す関数式(2)の係数a、b、cに関する倍率色収差情報が記憶される。
【0037】
また、色ずれ量は倍率色収差のみに起因するのではなく、球面収差、その他の色収差の影響もある為、絞り31cの絞り値によっても異なる。そこで、上記の36個の近似係数(係数A00~A32、B00~B32、C00~C32)が複数の絞り値について算出されて、レンズメモリ33に記憶される。例えば、レンズメモリ33には、第1の絞り値の場合の36個の近似係数に関する情報と、第2の絞り値の場合の36個の近似係数に関する情報とが記憶される。なお、36個の近似係数を絞り段数分だけ算出して、レンズメモリ33に予め記憶するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、G成分とR成分との色ずれ、及びG成分とB成分との色ずれの各々を補正するために、G成分とR成分との色ずれ量を推定するための近似係数の情報と、G成分とB成分との色ずれ量を推定するための近似係数の情報がレンズメモリ33にそれぞれ記憶される。
【0039】
レンズメモリ33に記憶された倍率色収差情報は、任意のタイミング、例えば交換レンズ3がカメラボディ2に装着された後の初期通信において、交換レンズ3からカメラボディ2に送信される。また、上述した式(1)、(2)の情報は、ボディ制御部22の内部のメモリに記憶されている。
【0040】
ボディ制御部22は、上述した式(2)と交換レンズ3から送信される倍率色収差情報と撮影時のレンズポジション情報に基づいてLCR(r)を算出する。また、ボディ制御部22は、上述した式(1)及び算出したLCR(r)を用いて倍率色収差による色ずれ量を算出し、算出した色ずれ量に基づいて画像データを補正する。具体的には、ボディ制御部22は、倍率色収差がない撮像光学系31で撮像された場合の各画素の画像データとなるように画像データを補正する処理を行う。例えば、ボディ制御部22は、算出した色ずれ量に基づいて、画像データの座標を変換する処理を行う。より具体的には、ボディ制御部22は、G成分とR成分とのずれ量が減少するようにR成分の信号をシフトさせ、G成分とB成分とのずれ量が減少するようにB成分の信号をシフトさせる補正処理を行う。これにより、ボディ制御部22は、倍率色収差による色ずれが低減された画像データを生成することができる。
【0041】
図7は、本実施の形態のカメラ1の動作例を示したフローチャートである。この
図7のフローチャートを参照して、カメラ1の動作例について説明する。
【0042】
ステップS100において、カメラボディ2のボディ制御部22は、例えば電源がオンされた後に、倍率色収差情報の送信を要求する信号を交換レンズ3に送信する。ステップS200において、交換レンズ3のレンズ制御部32は、カメラボディ2から倍率色収差情報の要求信号を受信する。
【0043】
ステップS210において、レンズ制御部32は、レンズメモリ33等に記憶された倍率色収差情報をカメラボディ2に送信する。即ち、レンズ制御部32は、上述したように、複数の絞り値について取得された近似係数(係数A00~A32、B00~B32、C00~C32)の情報を、カメラボディ2に送信する。ステップS110において、ボディ制御部22は、交換レンズ3から近似係数の情報を受信して、ボディ制御部22の内部のメモリ等に記憶させる。
【0044】
ステップS120では、ボディ制御部22は、操作部25によるレリーズ操作が行われると、撮像素子21に被写体像を撮像させて、画像データを出力させる。また、レンズ制御部32は、ステップS220において、レリース時点の撮影光学系31の状態に関する情報(状態情報)をカメラボディ2に送信する。この状態情報には、例えば、焦点距離の情報、撮影距離の情報、絞り値の情報が含まれる。具体的には、レンズ制御部32は、焦点距離及び撮影距離の情報として、それぞれ上述した正規化された値(fr/f)、(dr/d)、絞り段数をカメラボディ2に送信する。この状態情報は、周期的に、又はその値が変化する毎に、繰り返しカメラボディ2に送信されても良い。
【0045】
ステップS130では、ボディ制御部22は、送信された状態情報及び近似係数の情報に基づいて、撮像時の絞り値の場合の近似係数を参照して、上述した式(5)の関数a(f,d)、式(8)の関数b(f,d)、式(11)の関数c(f,d)を把握する。また、ボディ制御部22は、これらの式(5)、(8)、(11)に、撮像時の焦点距離f及び撮影距離dを代入して、係数a、b、cを算出する。また、算出された係数a、b、cが上述した式(2)に代入されて、関数LCR(r)が決定される。
【0046】
ステップS140では、ボディ制御部22は、関数LCR(r)と像高比rとに基づいて、撮像素子21から出力された画像データに対して、上述したように色ずれの補正処理を行う。このようにして、本実施の形態に係るボディ制御部22は、倍率色収差による色ずれが低減された画像データを生成する。
【0047】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)交換レンズ3は、カメラボディ2に装着可能な交換レンズ3であって、撮影距離及び焦点距離の少なくとも一方を用いて近似された、光学系31の倍率色収差を表す関数LCR(r)の係数に関する情報(近似係数の情報)を記憶する記憶部(例えばレンズメモリ33)と、記憶部に記憶された係数に関する情報をカメラボディ2に送信する送信部(レンズ制御部32)と、を備える。このようにしたので、カメラボディ2は、交換レンズ3から送信された近似係数の情報を参照することで、離散的ではない全てのレンズポジションにおける倍率色収差による色ずれ量を把握し、倍率色収差による色ずれが低減された画像データを生成することができる。この結果、画像の画質低下を抑制することができる。
【0048】
(2)関数LCR(r)は、像高の最大像高に対する比である像高比rを変数とする。本実施の形態では、倍率色収差による色ずれ量が像高比rの関数式LCA(r)を用いて表される。このため、撮像素子21固有の情報である画素ピッチ(画素の間隔)に依存しない情報で色ずれ量を表すことができ、このLCA(r)を用いることによって補正処理を効率的に行うことが可能となる。
【0049】
(3)関数LCR(r)は、像高比rの3次の項と、像高比rの2次の項と、定数項とで、互いに異なる色成分の像の位置の比を表す。記憶部は、係数に関する情報として、3次の項の係数と、2次の項の係数と、定数項の定数とを記憶する。本実施の形態では、関数LCR(r)は、像高比rの3次の項、2次の項、0次の項からなる。このようにしたので、倍率色収差による色ずれ量を少ない項数で高精度に表すことができる。また、レンズメモリ33には、これら3つの項の係数a、b、cを近似する近似係数(係数A00~A32、B00~B32、C00~C32)の情報が記憶される。このため、レンズメモリ33に記憶されるデータ量を削減できる。また、色ずれの補正処理を行う際の演算量を低減することができる。
【0050】
(4)関数LCR(r)の係数a、b、cは、最短焦点距離frの焦点距離fに対する比(fr/f)、及び最短撮影距離drの撮影距離dに対する比(dr/d)を変数とする関数で近似した係数である。本実施の形態では、交換レンズ3は、焦点距離及び撮影距離の情報をカメラボディ2に通知する場合には、正規化された値(fr/f)、(dr/d)をカメラボディ2に送信する。このため、使用するレンズの焦点距離に影響されない固定のビット長のデータによって、補正に必要なレンズポジション(焦点距離情報及び撮影距離情報)をカメラボディ2に通知することができる。この結果、交換レンズ3からカメラボディ2に送信するデータ量を削減することができる。
【0051】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0052】
(変形例1)
上述した実施の形態では、関数LCR(r)を3つの項で表す例について説明した。しかし、0次だけの成分からなる1つの項で表しても良いし、2つの項で表してもよいし、または4以上の項で表すようにしてもよい。また、例えば、LCR(r)を、像高比rの2次の項、1次の項、0次の項の3つの項で表すようにしてもよい。
【0053】
(変形例2)
上述した実施の形態では、関数LCR(r)の係数a、b、cは、焦点距離及び撮影距離を変数とする関数で近似する例について説明した。しかし、係数a、b、cを、焦点距離及び撮影距離のいずれか一方のみを変数とする関数で近似するようにしてもよい。例えば、交換レンズ3が単焦点レンズの場合の場合に、係数a、b、cを、撮影距離を変数とする関数で表すようにしてもよい。
【0054】
(変形例3)
上述した実施の形態では、関数LCR(r)の係数a、b、cを、最短焦点距離frの焦点距離fに対する比(fr/f)、及び最短撮影距離drの撮影距離dに対する比(dr/d)を変数とする関数で近似する例について説明した。しかし、係数a、b、cを、焦点距離fの逆数や撮影距離dの逆数を変数とする関数で近似するようにしてもよい。
【0055】
(変形例4)
上述した実施の形態では、交換レンズ3のレンズ制御部32は、焦点距離及び撮影距離の情報として、それぞれ正規化された値(fr/f)、(dr/d)をカメラボディ2に送信する。レンズ制御部32は、(fr/f)の代わりに、焦点距離の情報として次式(12)で表される整数の情報(finfo)をカメラボディ2に送信してもよい。また、レンズ制御部32は、(dr/d)の代わりに、撮影距離の情報として次式(13)で表される整数の情報(dinfo)をカメラボディ2に送信してもよい。この場合、(fr/f)と(dr/d)をそれぞれnビットの固定長情報として制限しつつ、収差補正に適した情報量にすることができる。なお、(finfo)と(dinfo)のビット深度を変えてもよい。
finfo≡int{2n×(fr/f)} …(12)
dinfo≡int{2n×(dr/d)} …(13)
【0056】
(変形例5)
図7に示したフローチャートでは、ステップS210において、交換レンズ3は、複数の絞り値について取得された近似係数の情報を全て、カメラボディ2に送信した。しかし、この代わりに、交換レンズ3は、撮影時の絞り値に関連する近似係数だけをカメラボディ2に送信するようにしてもよい。
【0057】
(変形例6)
図7に示したフローチャートでは、ステップS210において、交換レンズ3は、近似係数の情報を全てをカメラボディ2に送信した。しかし、この代わりに、交換レンズ3で近似係数とレンズポジションf、d、絞り段数を用いて、撮影時の倍率収差補正係数a、b、cを算出し、補正係数a、b、cをカメラボディ2に送信するようにしても良い。
【0058】
(変形例7)
上述した実施の形態では、倍率色収差による色ずれを補正する例について説明した。本変形例では、光軸中心と比較して周辺において光量が低下することに起因する画像信号(画像データ)の信号値(画素値)の低下を補正する。光量低下(減光)による画素値の低下を補正する際に用いられる値(周辺光量補正量)を表す関数Vig(r)は、例えば次式(14)で表すことができる。
Vig(r)=ar2+br4+cr6 …(14)
Vig(r)は、光軸中心における光量と像高比rの位置における光量との比に関する関数であり、周辺減光による画素値の低下を補正するための補正量を表す。この式(14)において、係数aは像高比rの2次の項の係数であり、係数bは像高比rの4次の項の係数であり、係数cは像高比rの6次の項の係数である。係数a、b、cは、それぞれ撮影光学系31の焦点距離、撮影距離、絞り段数に応じて変化する。
【0059】
上述した実施の形態の場合と同様にして、係数a、b、cをそれぞれ近似する複数の係数(近似係数)が算出される。これら近似係数の情報は、交換レンズ3のレンズメモリ33(又はレンズ制御部32の内部のメモリ)に記憶される。即ち、レンズメモリ33(又はレンズ制御部32の内部のメモリ)には、撮影光学系31の周辺光量補正量を表す関数式(14)の係数a、b、cに関する情報が記憶される。
【0060】
ボディ制御部22は、上述した式(14)と、交換レンズ3から送信される係数a、b、cの情報と、画像データにおいて補正対象となる信号の位置に対応する像高比rとに基づいて、Vig(r)を算出する。ボディ制御部22は、算出したVig(r)を補正対象となる信号に掛けることで、一様な明るさとなるように画像データを補正することができる。これにより、光量低下による画素値の低下が低減された画像データを得ることができる。
【0061】
(変形例8)
上述の実施の形態及び変形例で説明した撮像装置は、カメラ、スマートフォン、タブレット、PCに内蔵のカメラ、車載カメラ、無人航空機(ドローン、ラジコン機等)に搭載されるカメラ等に適用されてもよい。
【0062】
(変形例9)
上述した実施の形態および変形例では、撮像装置で画像データを補正することとしたが、外部機器(コンピュータやタブレット端末、他のカメラ等)で画像データを補正するようにしてもよい。撮像装置と外部機器とから構成されるカメラシステムにおいて、画像データの補正処理を行うようにしてもよい。撮像装置(例えばカメラ1)は、撮影時の係数a、b、cの情報を画像データと共に記憶する。撮影後、外部機器(例えばコンピュータ)は、撮像装置から取得した画像データ及び係数a、b、cの情報を用いて、上述のように補正処理を行う。これにより、カメラシステムは、倍率色収差による色ずれや光量低下による画素値の低下が低減された画像データを生成することができる。なお、撮像装置と外部機器との間のデータ通信は、メモリカード等の記憶媒体を用いて行ってもよいし、無線通信や有線通信によって行ってもよい。
図7に例示したフローチャートに基づく処理を行うプログラムをコンピュータ(プロセッサ)に実行させることにより、画像処理装置を構成してもよい。プログラムは、記憶媒体や通信回線を介する提供など、種々の形態のコンピュータプログラム製品として供給することができる。
【0063】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1…撮像装置、2…カメラボディ、3…交換レンズ、21…撮像素子、22…ボディ制御部、31…撮影光学系、32…レンズ制御部、33…レンズメモリ