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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067992
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】加熱機構および基板加熱方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20230509BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H01L21/306 R
H01L21/304 643A
H01L21/304 651M
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035736
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2019077567の分割
【原出願日】2019-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽
(57)【要約】
【課題】基板の下面周縁部を効率よく加熱すること。
【解決手段】本開示による加熱機構は、基板に対して加熱された流体を供給する。加熱機構は、本体部と、複数のフィンと、熱源と、流体導入部と、流体吐出部とを備える。本体部は、円環形状を有する。複数のフィンは、本体部の外周部の周方向に沿って形成される。熱源は、複数のフィンを加熱する。流体導入部は、複数のフィンに流体を導入する。流体吐出部は、複数のフィンを通過することによって加熱された流体を基板に吐出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して加熱された流体を供給する加熱機構であって、
円環形状を有する本体部と、
前記本体部の外周部の周方向に沿って形成された複数のフィンと、
前記複数のフィンを加熱する熱源と、
前記複数のフィンに前記流体を導入する流体導入部と、
前記複数のフィンを通過することによって加熱された前記流体を前記基板に吐出する流体吐出部と
を備える、加熱機構。
【請求項2】
前記複数のフィンは、
高さ方向に間隔をあけて並べて配置される、請求項1に記載の加熱機構。
【請求項3】
前記複数のフィンは、
前記周方向に間隔をあけて並べて配置される、請求項2に記載の加熱機構。
【請求項4】
前記熱源は、
前記高さ方向に延在する発熱体を有する、請求項2または3に記載の加熱機構。
【請求項5】
前記複数のフィンは、
前記熱源の外方に配置される、請求項2または3に記載の加熱機構。
【請求項6】
前記本体部は、熱伝導性を有する材料で形成され、
前記複数のフィンおよび前記熱源の内方に配置された断熱材
をさらに備える、請求項1に記載の加熱機構。
【請求項7】
前記流体吐出部は、
前記複数のフィンを通過することによって加熱された前記流体が流入する複数の流入口と、
基板保持部に保持された前記基板の下面に向けて開口する複数の吐出口と、
前記流入口と前記吐出口とを連通する流路と
を備える、請求項2または3に記載の加熱機構。
【請求項8】
制御部
をさらに備え、
前記制御部は、
前記熱源を制御して前記本体部を加熱し、
その後、前記流体導入部を制御して前記複数のフィンに前記流体を導入して、前記本体部に形成された前記複数のフィンにより前記流体を加熱する、請求項1に記載の加熱機構。
【請求項9】
請求項1に記載の加熱機構を用いて基板を加熱する基板加熱方法であって、
前記熱源により前記本体部を加熱し、
その後、前記流体導入部により前記複数のフィンに前記流体を導入して、前記本体部に形成された前記複数のフィンにより前記流体を加熱し、
加熱された前記流体を前記流体吐出部から前記基板に向けて吐出することにより、前記基板を加熱する、基板加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱機構および基板加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、半導体ウェハやガラス基板等の基板に対して薬液を用いたウェットエッチングが行われている。
【0003】
特許文献1には、基板の周縁部を加熱しながらウェットエッチングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-54932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板の下面周縁部を効率よく加熱することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による加熱機構は、基板に対して加熱された流体を供給する。加熱機構は、本体部と、複数のフィンと、熱源と、流体導入部と、流体吐出部とを備える。本体部は、円環形状を有する。複数のフィンは、本体部の外周部の周方向に沿って形成される。熱源は、複数のフィンを加熱する。流体導入部は、複数のフィンに流体を導入する。流体吐出部は、複数のフィンを通過することによって加熱された流体を基板に吐出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の下面周縁部を効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
図3図3は、実施形態に係る加熱機構の模式断面図である。
図4図4は、実施形態に係る加熱機構の模式斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る加熱機構の模式側面図である。
図6図6は、実施形態に係る加熱機構の模式平面図である。
図7図7は、実施形態に係る加熱機構の模式底面図である。
図8図8は、第1変形例に係る加熱機構の模式断面図である。
図9図9は、第2変形例に係る加熱機構の模式平断面図である。
図10図10は、第2変形例に係る加熱機構が備えるフィンの模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示による加熱機構および基板加熱方法を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示による加熱機構および基板加熱方法が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。また、以下の各実施形態において同一の部位には同一の符号を付し、重複する説明は省略される。
【0010】
また、以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す場合がある。また、鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向と呼ぶ場合がある。
【0011】
<基板処理装置の全体構成>
まず、実施形態に係る基板処理装置の構成について図1および図2を参照して説明する。図1および図2は、実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
【0012】
図1および図2に示すように、実施形態に係る基板処理装置1は、処理容器10と、保持部20と、加熱機構30と、下面供給部40と、下方カップ50と、外方カップ60と、上面供給部70とを備える。
【0013】
処理容器10は、保持部20、加熱機構30、下面供給部40、下方カップ50、外方カップ60および上面供給部70を収容する。
【0014】
保持部20は、ウェハWを回転可能に保持する。具体的には、保持部20は、バキュームチャック21と、軸部22と、駆動部23とを備える。バキュームチャック21は、ウェハWを真空引きにより吸着保持する。バキュームチャック21は、ウェハWよりも小径であり、ウェハWの下面中央部を吸着保持する。軸部22は、先端部においてバキュームチャック21を水平に支持する。駆動部23は、軸部22の基端部に接続され、軸部22を鉛直軸まわりに回転させる。
【0015】
加熱機構30は、ウェハWの下方かつ保持部20の外方に配置される。具体的には、加熱機構30は、保持部20と下方カップ50との間に配置される。
【0016】
加熱機構30は、保持部20に保持されたウェハWの下面に対し、加熱された流体を供給することによりウェハWの下面周縁部を加熱する。具体的には、加熱機構30は、ウェハWの周方向に並べて配置された複数の吐出口35bを備えており、これら複数の吐出口35bからウェハWの下面に対して加熱された流体を供給する。
【0017】
なお、ウェハWの下面周縁部は、ウェハWの端面からたとえば幅1~5mm程度の環状の領域のことである。
【0018】
下面供給部40は、ウェハWの下面周縁部に対して薬液を供給することにより、ウェハWの下面周縁部をエッチングする。これにより、たとえばウェハWの下面周縁部に形成された膜を除去したり、ウェハWの下面周縁部を洗浄したりすることができる。
【0019】
図2に示すように、下面供給部40は、下面ノズル41と、配管42と、バルブ43と、流量調整器44と、薬液供給源45とを備える。下面ノズル41は、ウェハWの下方に配置され、ウェハWの下面周縁部に向けて薬液を上向きに吐出する。配管42は、下面ノズル41と薬液供給源45とを接続する。バルブ43は、配管42の中途部に設けられ、配管42を開閉する。流量調整器44は、配管42の中途部に設けられ、配管42を流れる薬液の流量を調整する。薬液供給源45は、たとえば薬液を貯留するタンクである。
【0020】
薬液としては、たとえば、フッ酸(HF)、希フッ酸(DHF)、フッ硝酸などを用いることができる。フッ硝酸とは、フッ酸(HF)と硝酸(HNO)との混合液である。
【0021】
なお、下面供給部40は、下面ノズル41を水平方向に移動させる移動機構を備えていてもよい。この場合、下面供給部40は、ウェハWの下方における処理位置とウェハW外方における退避位置との間で下面ノズル41を移動させることができる。
【0022】
下方カップ50は、ウェハWの下方において加熱機構30の外方に配置される円環状の部材である。下方カップ50は、たとえばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂等の耐薬品性の高い部材で形成される。
【0023】
外方カップ60は、ウェハWを取り囲むように設けられた環状の部材であり、ウェハWから飛散した薬液等を受け止める。外方カップ60の底部には、排液口61が形成されている。外方カップ60によって受け止められた薬液等は、外方カップ60と下方カップ50とによって形成される空間に貯留された後、排液口61から基板処理装置1の外部に排出される。
【0024】
上面供給部70は、上面ノズル71と、アーム72と、移動機構73とを備える。上面ノズル71は、ウェハWよりも上方において吐出口を下向きにした状態で配置され、ウェハWの上面に薬液またはリンス液を吐出する。リンス液としては、たとえばDIW(脱イオン水)が用いられる。アーム72は、水平方向に延在し、先端部において上面ノズル71を支持する。移動機構73は、アーム72の基端部に接続され、アーム72をたとえば水平方向(ここでは、X軸方向)に沿って移動させる。これにより、ウェハWの上方における処理位置とウェハWの外方における退避位置との間で上面ノズル71を移動させることができる。
【0025】
また、図1に示すように、実施形態に係る基板処理装置1は、制御装置100を備える。制御装置100は、たとえばコンピュータであり、制御部101と、記憶部102とを備える。記憶部102は、たとえば、RAM、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現され、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムを記憶する。制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含み、記憶部102に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理装置1の動作を制御する。
【0026】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置100の記憶部102にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0027】
<加熱機構の構成>
次に、加熱機構30の構成について図3図7を参照して説明する。図3は、実施形態に係る加熱機構30の模式断面図である。また、図4は、実施形態に係る加熱機構30の模式斜視図であり、図5は、実施形態に係る加熱機構30の模式側面図である。また、図6は、実施形態に係る加熱機構30の模式平面図であり、図7は、実施形態に係る加熱機構30の模式底面図である。
【0028】
図3に示すように、加熱機構30は、本体部31と、複数のフィン32と、熱源33と、流体導入部34と、流体吐出部35とを備える。また、加熱機構30は、断熱材36と、複数の第2ラビリンス部材37とを備える。
【0029】
(本体部31)
本体部31は、たとえばアルミニウム等の熱伝導率の高い材料で形成される。本体部31は、円環形状を有しており(図4参照)、保持部20と下方カップ50との間に配置される。
【0030】
本体部31の上部には、本体部31の径方向外方に向かって延在する円環状の第1フランジ部31aが形成される。第1フランジ部31aの上面には、複数の吐出口35bが開口する(図4および図6参照)。また、第1フランジ部31aには、第1フランジ部31aの端部から径方向内方に向かって切り欠かれた切欠部31bが設けられる。切欠部31bには、下面ノズル41が配置される(図1参照)。
【0031】
また、本体部31の内周部には、本体部31の径方向内方(すなわち、保持部20)に向かって延在する円環状の第2フランジ部31cが形成される。第2フランジ部31cの上面には、複数の第2ラビリンス部材37が形成される。
【0032】
また、図3に示すように、本体部31は、外周部に複数のシール部材31dを有しており、複数のシール部材31dを介して下方カップ50と当接する。複数のシール部材31dは、たとえばOリングであり、後述する複数のフィン32よりも上方および下方にそれぞれ1つずつ設けられる。
【0033】
なお、本体部31の少なくとも上面、言い換えれば、少なくともウェハWの下面と対向する面は、たとえば、耐薬品性を有する材料によってコーティングされてもよい。耐薬品性を有する材料としては、たとえば、PTFEやPFA等のフッ素樹脂を用いることができる。このように、薬液が付着するおそれのある箇所を耐薬品性の高い材料でコーティングすることで、加熱効率を高めつつ、薬液による本体部31の腐食等を抑制することができる。
【0034】
(フィン32)
複数のフィン32は、ウェハWの下方かつ保持部20の外方においてウェハWの周方向に沿って配置される。具体的には、複数のフィン32は、本体部31の外周部に形成される。また、複数のフィン32は、ウェハWの周縁部よりも径方向内方に配置される。
【0035】
複数のフィン32の各々は、本体部31の周方向(すなわち、ウェハWの周方向)に沿って延在する(図4および図5参照)。また、複数のフィン32は、高さ方向に間隔をあけて並べて配置される(図3および図5参照)。これにより、高さ方向に隣接するフィン32同士の間には、本体部31の周方向に沿って延在する流路部32aが形成される。また、複数のフィン32は、周方向に互いに間隔をあけて並べて配置される。これにより、周方向に隣接するフィン32同士の間には、鉛直方向に沿って延在する流路部32bが形成される。
【0036】
(熱源33)
熱源33は、複数のフィン32の近傍に配置され、複数のフィン32を加熱する。熱源33は、複数のフィン32の積層方向(Z軸方向)に沿って延在する複数の発熱体33aを有する。発熱体33aは、たとえばニクロム線を金属製のパイプで覆った棒状の部材であり、本体部31の下方から本体部31の内部に挿入される。
【0037】
図3に示すように、本体部31内に挿入された状態において、発熱体33aは、複数のフィン32のうち最上段に配置されたフィン32よりも上方かつ最下段に配置されたフィン32よりも下方に延在する。また、図7に示すように、複数の発熱体33aは、本体部31の周方向に沿って互いに間隔をあけて並べて配置される。
【0038】
このように、複数のフィン32の積層方向に沿って延在する複数の発熱体33aを本体部31の周方向に沿って並べて配置することで、複数のフィン32を均等に加熱することができる。
【0039】
また、複数の発熱体33aは、複数のフィン32よりも本体部31の径方向内方に配置される。言い換えれば、複数のフィン32は、複数の発熱体33aよりも本体部31の径方向外方に配置される。このように、複数のフィン32を本体部31のより外周側に配置することで、複数のフィン32を本体部31の内周側に配置した場合と比べて複数のフィン32の表面積をより大きくすることができる。したがって、たとえば本体部31を大型化させることなく、ウェハWの下面周縁部の加熱効率を向上させることができる。
【0040】
(流体導入部34)
流体導入部34は、複数の導入口34aと、配管34bと、バルブ34cと、流量調整器34dと、流体供給源34eとを備える。
【0041】
図7に示すように、複数の導入口34aは、本体部31の下面に開口されており、本体部31の周方向に沿って互いに間隔をあけて並べて配置される。ここでは、3つの導入口34aが形成される場合の例を示したが、導入口34aの数は3つに限定されない。流体導入部34は、少なくとも1つの導入口34aを有していればよい。
【0042】
配管34bは、複数の導入口34aと流体供給源34eとを接続する。バルブ34cは、配管34bの中途部に設けられ、配管34bを開閉する。流量調整器34dは、配管34bの中途部に設けられ、配管34bを流れる流体の流量を調整する。流体供給源34eは、たとえば流体を貯留するタンクである。実施形態において、流体供給源34eは、常温のN2ガスを貯留する。
【0043】
流体導入部34は、上記のように構成されており、流体供給源34eに貯留された常温のN2ガスは、配管34bを介して複数の導入口34aに供給され、複数の導入口34aから最下段のフィン32の下面に向けて吐出される(図3参照)。
【0044】
(流体吐出部35)
流体吐出部35は、複数の流入口35aと、複数の吐出口35bと、複数の流路35cとを備える。
【0045】
複数の流入口35aは、ウェハWの周縁部よりも径方向内方に配置され、複数のフィン32を通過することによって加熱された流体が流入する。
【0046】
具体的には、複数の流入口35aは、複数のフィン32のうち最上段に配置されたフィン32と対向する面に開口しており、本体部31の周方向に沿って互いに間隔をあけて並べて配置される。
【0047】
複数の吐出口35bは、本体部31における第1フランジ部31aの上面に形成され、本体部31の周方向に沿って互いに間隔をあけて並べて配置される(図4および図6参照)。流路35cは、流入口35aと吐出口35bとを連通する。
【0048】
図3に示すように、複数の吐出口35bは、複数の導入口34aよりも本体部31の径方向外方に形成される。すなわち、ウェハWの径方向において、複数の吐出口35bは、複数の流入口35aと比較してウェハWの下面周縁部により近い位置に配置される。
【0049】
(断熱材36)
断熱材36は、保持部20よりも外方、且つ、複数のフィン32および熱源33よりも内方に配置される。具体的には、断熱材36は、本体部31の内周面および第2フランジ部31cの下面に設けられる。なお、断熱材36は、第2フランジ部31cの内にも設けられてよい。このように断熱材36を設けることで、熱源33によって加熱された本体部31から発せられる熱が保持部20に伝わることを抑制することができる。
【0050】
(第2ラビリンス部材37)
複数の第2ラビリンス部材37は、円環形状を有しており、互いに間隔をあけて同心円状に配置される(図4および図6参照)。
【0051】
バキュームチャック21の下面には、複数の第1ラビリンス部材25が形成されている。複数の第1ラビリンス部材25は、円環形状を有しており、互いに間隔をあけて同心円状に配置される。
【0052】
複数の第2ラビリンス部材37は、複数の第1ラビリンス部材25と高さ方向においてオーバーラップし、且つ、互い違いに配置される。
【0053】
保持部20およびウェハWが回転すると回転による旋回流により、バキュームチャック21と本体部31との隙間を通ってウェハWと本体部31との隙間に冷たい(加熱されていない)空気が入り込むことで、加熱機構30の加熱効率が低下するおそれがある。
【0054】
これに対し、実施形態に係る基板処理装置1は、保持部20と本体部31との隙間に、複数の第1ラビリンス部材25と複数の第2ラビリンス部材37とによって形成されるラビリンス構造を設けることとしている。かかる位置にラビリンス構造を設けることで、ウェハWと本体部31との隙間に冷たい(加熱されていない)空気が入り込みにくくなるため、加熱機構30の加熱効率が低下することを抑制することができる。
【0055】
(加熱機構30の動作)
図3に示すように、加熱機構30と下方カップ50とは、加熱機構30の外周部に設けられたリング状のシール部材31dを介して当接している。リング状のシール部材31dは、複数のフィン32の上方および下方にそれぞれ設けられている。このため、複数のフィン32は、加熱機構30、下方カップ50および上下のシール部材31dによって囲まれる空間(以下、「加熱空間」と記載する)内に配置された状態となっている。
【0056】
加熱機構30では、まず、熱源33により本体部31が加熱される。本体部31が加熱されることにより、本体部31に形成された複数のフィン32が加熱される。
【0057】
つづいて、複数のフィン32のうち最下段のフィン32の下面に向けて導入口34aから常温のN2ガスが吐出される。このように、加熱機構30では、加熱空間の下方から常温のN2ガスが供給される。
【0058】
加熱空間に供給された常温のN2ガスは、加熱空間に配置された複数のフィン32によって加熱される。このとき、N2ガスは、高さ方向に隣接するフィン32間の隙間である流路部32aと、周方向に隣接するフィン32間の隙間である流路部32bとを通ることによって加熱空間に満遍なく拡散する。このように、N2ガスを加熱空間に満遍なく拡散させることで、複数のフィン32によるN2ガスの加熱を効率よく行うことができる。
【0059】
また、加熱空間の入口である導入口34aは加熱空間の下方に形成され、加熱空間の出口である流入口35aは加熱空間の上方に形成される。このため、加熱空間には、下方から上方へ向かうN2ガスの流れが形成される。これにより、加熱空間に導入されたN2ガスを高さ方向に並べられた複数のフィン32に対してより確実に接触させることができる。これによっても、複数のフィン32によるN2ガスの加熱を効率よく行うことができる。
【0060】
また、上述したように、加熱空間は、下方カップ50およびシール部材31dによって密閉されているため、加熱されたN2ガスが流入口35a以外の場所から漏れ出ることが抑制される。これによって、複数のフィン32によるN2ガスの加熱を効率よく行うことができる。
【0061】
また、下方カップ50は、フッ素樹脂等の耐薬品性の高い部材で形成されるため、本体部31と比較して熱伝導率は低い。したがって、下方カップ50は、加熱空間の断熱材としても機能する。したがって、断熱材を別途設けることなく、加熱空間からの放熱を抑制することができる。
【0062】
流入口35aに流入した加熱されたN2ガス(以下、「ホットN2ガス」と記載する。)は、流路35cを通って吐出口35bからウェハWの下面に向けて吐出される。これにより、ウェハWの下面周縁部にホットN2ガスが供給されることで、ウェハWの下面周縁部が加熱される。ウェハWの下面周縁部を加熱しつつ、下面ノズル41からウェハWの下面周縁部に薬液を供給することで、薬液によるウェハWの下面周縁部のエッチング処理を短時間で完了することができる。
【0063】
吐出口35bは、流入口35aよりもウェハWの径方向外方に配置される。このように、ウェハWの径方向において流入口35aと比較してウェハWの下面周縁部により近い位置に吐出口35bを配置することで、加熱したN2ガスがウェハWの下面周縁部に到達するまでの熱損失を可及的に低減することができる。したがって、ウェハWの下面周縁部をより効率的に加熱することができる。
【0064】
このように、実施形態に係る加熱機構30によれば、ウェハWの下面周縁部を効率よく加熱することができる。
【0065】
近年、基板の薄型化や大径化に伴い、基板に反りが生じやすくなっており、かかる基板の反りを矯正してフラットな状態にするため、バキュームチャックの大径化が進んでいる。また、近年、基板の下面周縁部をより広い範囲でエッチングしたいという要求があり、これに伴い、下面ノズルが従来よりも基板のより内側に配置される傾向にある。このような状況から、保持部と下面ノズルとの間に配置される加熱機構の設置スペースは、狭小化する傾向にある。
【0066】
これに対し、実施形態に係る加熱機構30によれば、ウェハWの下面周縁部を効率よく加熱することができるため、本体部31を小型化することができ、狭小スペースに対して本体部31を容易に設置することができる。
【0067】
(変形例)
図8は、第1変形例に係る加熱機構の模式断面図である。図8に示すように、第1変形例に係る加熱機構30Aは、本体部31Aを備える。本体部31Aは、上述した実施形態に係る本体部31と同様の形状を有する。
【0068】
第1変形例に係る本体部31Aは、複数のフィン32が形成される第1本体部31A1と、流体吐出部35Aが形成される第2本体部31A2とに分割される。第1本体部31A1は、円筒形状を有しており、外周部に複数のフィン32が形成される。また、第2本体部31A2は、第1本体部31A1よりも大径且つ薄型の円筒形状を有しており、第1本体部31A1の上部に第2本体部31A2が取り付けられることによって本体部31と同一形状の本体部31Aが形成される。
【0069】
第1変形例に係る流体吐出部35Aは、第1本体部31A1に形成された第1流路35c1と、第2本体部31A2に形成された第2流路35c2と有する。第1流路35c1は、鉛直方向に沿って延在する直線状の流路である。第1流路35c1と第2流路35c2とは、第1本体部31A1に第2本体部31A2が組み付けられることによって互いに接続され、上述した実施形態に係る流路35cと同一形状の流路となる。
【0070】
このように、本体部31Aは、複数のフィン32が形成される第1本体部31A1と、流体吐出部35Aが形成される第2本体部31A2とに分割可能に構成される。分割可能に構成することで、たとえば、第1本体部31A1には、第1流路35c1および第2流路35c2のうち直線状の第1流路35c1のみを形成すればよいため、第1本体部31A1の製造が容易となる。
【0071】
また、本体部31Aを第1本体部31A1と第2本体部31A2とに分割可能に構成することで、第1本体部31A1と第2本体部31A2とを異なる材料で形成することが可能となる。
【0072】
たとえば、第1本体部31A1は、第2本体部31A2と比較して熱伝導率の高い材料で形成され、第2本体部31A2は、第1本体部31A1と比較して耐薬品性の高い材料で形成されてもよい。この場合、第1本体部31A1は、たとえばアルミニウム等の金属で形成され、第2本体部31A2は、たとえばPTFEやPFA等のフッ素樹脂で形成される。
【0073】
このように構成することで、たとえば、加熱効率を高めつつ、薬液による本体部31Aの腐食等を抑制することができる。
【0074】
また、第2本体部31A2が第1本体部31A1よりも熱伝導率の低い材料で形成されることで、ホットN2ガスが第1流路35c1を流通する際の熱損失を低減させることができる。したがって、ウェハWの下面周縁部の加熱効率を高めることができる。
【0075】
上述した実施形態では、各フィン32が周方向に沿って延在する形状を有する場合の例について説明したが、各フィン32は、高さ方向に沿って延在していてもよい。
【0076】
図9は、第2変形例に係る加熱機構の模式平面図である。また、図10は、第2変形例に係る加熱機構が備えるフィンの模式斜視図である。
【0077】
図9および図10に示すように、第2変形例に係る加熱機構30Bは、高さ方向に沿って延在する複数のフィン32Bを備える。複数のフィン32Bは、加熱機構30Bの本体部31Bの外周部に形成され、周方向に間隔をあけて並べて配置される。
【0078】
図10に示すように、各フィン32Bには、フィン32Bを外縁部から内側に向かって凹ませた流路部321が高さ方向に間隔をあけて並べて複数配置される。このように、フィン32Bに対して複数の流路部321を形成することで、N2ガスを加熱空間に満遍なく拡散させることができる。
【0079】
上述した実施形態では、基板処理装置1が円環状の本体部31を備え、複数のフィン32が円環状に配置される場合の例について説明した。しかし、本体部31および複数のフィン32は、ウェハWの周方向に沿って配置されていればよく、必ずしも円環状であることを要しない。たとえば、加熱機構の本体部は、平面視において円弧状に形成されてもよく、この場合、複数のフィンは、円弧状の本体部の外周部または内周部に円弧状に配置されてもよい。
【0080】
上述した実施形態では、基板処理装置1が下面ノズル41を備え、下面ノズル41からウェハWの下面周縁部に対して薬液を供給することによってウェハWの下面周縁部をエッチングする場合の例について説明した。これに限らず、基板処理装置1は、たとえば、加熱機構30,30A,30Bを用いてウェハWの下面周縁部を加熱しつつ、上面ノズル71を用いてウェハWの上面周縁部に薬液を供給することにより、ウェハW上面の周縁部をエッチングしてもよい。また、基板処理装置1は、加熱機構30,30A,30Bを用いてウェハWの下面周縁部を加熱しつつ、上面ノズル71を用いてウェハWの上面中央部に薬液を供給してもよい。これにより、ウェハWの外周部における薬液の温度低下を抑制することができるため、エッチング処理の面内均一性の低下を抑制することができる。
【0081】
上述した実施形態では、流体導入部34から常温のN2ガスが供給される場合の例について説明したが、流体導入部34から供給される流体は、N2ガス以外の不活性ガス(たとえば、アルゴンガス)であってもよい。また、流体導入部34から供給される流体は、不活性ガスに限らず、ドライエア等の空気その他の気体であってもよい。また、流体導入部34から供給される流体は、水蒸気等の蒸気であってもよいし、水等の液体であってもよい。
【0082】
上述してきたように、実施形態に係る基板処理装置(一例として、基板処理装置1)は、保持部(一例として、保持部20)と、加熱機構(一例として、加熱機構30,30A,30B)とを備える。保持部は、基板(一例として、ウェハW)の下面中央部を回転可能に保持する。加熱機構は、保持部に保持された基板の下面に対し、加熱された流体(一例として、ホットN2ガス)を供給する。また、加熱機構は、複数のフィン(一例として、複数のフィン32)と、熱源(一例として、熱源33)と、流体導入部(一例として、流体導入部34)と、流体吐出部(一例として、流体吐出部35,35A)とを備える。複数のフィンは、基板の下方かつ保持部の外方において基板の周方向に沿って配置される。熱源は、複数のフィンを加熱する。流体導入部は、複数のフィンに流体(一例として、常温のN2ガス)を導入する。流体吐出部は、複数のフィンを通過することによって加熱された流体を基板の下面に吐出する。
【0083】
基板の下方かつ保持部の外方において基板の周方向に沿って複数のフィンを配置することで、複数のフィンによって加熱された流体を基板の下面周縁部に効率よく供給することができる。したがって、基板の下面周縁部の加熱効率を向上させることができる。また、基板の下面周縁部を効率よく加熱することができるため、加熱機構を小型化することができ、狭小スペースに対して加熱機構を容易に設置することができる。
【0084】
複数のフィンは、高さ方向に間隔をあけて並べて配置されてもよい。これにより、たとえば、複数のフィンを基板の径方向に沿って並べて配置した場合と比較して、基板の径方向における加熱機構の寸法を小さく抑えることができる。したがって、加熱機構の設置スペースが基板の径方向において狭小である場合であっても、かかる狭小スペースに対して加熱機構を容易に設置することができる。
【0085】
複数のフィンは、周方向に間隔をあけて並べて配置されてもよい。このように配置することで、周方向に隣接するフィン間に高さ方向に沿った流路(一例として、流路部32b)を形成することができる。かかる流路部32bに沿って流体が流れることで、周方向に並べられた複数のフィンに対して流体が満遍なく接触するようになる。このため、流体を効率よく加熱することができ、基板の下面周縁部の加熱効率をさらに向上させることができる。
【0086】
熱源は、高さ方向に延在する発熱体(一例として、発熱体33a)を有していてもよい。これにより、高さ方向に並べられた複数のフィンを均等に加熱することができる。
【0087】
複数のフィンは、熱源よりも外方に配置されてもよい。複数のフィンを熱源よりも外方に配置することで、複数のフィンを熱源よりも内方に配置した場合と比べて複数のフィンの表面積を大きくすることができる。したがって、たとえば加熱機構を大型化させることなく、基板の下面周縁部の加熱効率を向上させることができる。
【0088】
実施形態に係る基板処理装置は、保持部よりも外方、且つ、複数のフィンおよび熱源よりも内方に配置された断熱材(一例として、断熱材36)をさらに備えていてもよい。これにより、加熱機構から発せられる熱が保持部に伝わることを抑制することができる。
【0089】
流体吐出部は、流入口(一例として、流入口35a)と、吐出口(一例として、吐出口35b)と、流路(一例として、流路35c)とを備えていてもよい。流入口は、基板の周縁部よりも内方に配置され、複数のフィンを通過することによって加熱された流体が流入する。吐出口は、流入口よりも外方に配置され、基板の下面に向けて開口する。流路は、流入口と吐出口とを連通する。
【0090】
このように、基板の径方向において流入口と比較して基板の下面周縁部により近い位置に吐出口を配置することで、加熱された流体が基板の下面周縁部に到達するまでの熱損失を可及的に低減することができる。したがって、基板の下面周縁部をより効率的に加熱することができる。
【0091】
加熱機構(一例として、本体部31A)は、複数のフィンが形成される第1本体部(一例として、第1本体部31A1)と、第1本体部と別体であり、流体吐出部(一例として、流体吐出部35A)が形成される第2本体部(一例として、第2本体部31A2)とを備えていてもよい。この場合、第1本体部は、第2本体部と比較して熱伝導率の高い材料で形成されてもよく、第2本体部は、第1本体部と比較して耐薬品性の高い材料で形成されてもよい。これにより、加熱効率を高めつつ、薬液による加熱機構の腐食等を抑制することができる。
【0092】
加熱機構(一例として、本体部31)は、少なくとも基板の下面と対向する面が耐薬品性を有する材料によってコーティングされてもよい。薬液が付着するおそれのある箇所を耐薬品性の高い材料でコーティングすることで、加熱効率を高めつつ、薬液による加熱機能の腐食等を抑制することができる。
【0093】
実施形態に係る基板処理装置は、基板の下面周縁部に薬液を吐出するノズル(一例として、下面ノズル41)を備えていてもよい。基板の下面周縁部を加熱機構により加熱しつつ、ノズルから基板の下面周縁部に薬液を供給することで、薬液による基板の下面周縁部のエッチング処理を短時間で完了することができる。
【0094】
保持部は、周方向に延在し、互いに間隔をあけて配置された複数の第1ラビリンス部材(一例として、第1ラビリンス部材25)を備えていてもよい。この場合、加熱機構は、周方向に延在し、複数の第1ラビリンス部材と互い違いに配置された複数の第2ラビリンス部材(一例として、第2ラビリンス部材37)を備えていてもよい。
【0095】
保持部と加熱機構との隙間にラビリンス構造を設けることで、基板と加熱機構との隙間に冷たい(加熱されていない)空気が入り込みにくくなるため、加熱機構の加熱効率が低下することを抑制することができる。
【0096】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0097】
W ウェハ
1 基板処理装置
10 処理容器
20 保持部
21 バキュームチャック
30 加熱機構
31 本体部
32 フィン
33 熱源
34 流体導入部
35 流体吐出部
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
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図10