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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068028
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】三次元測定機
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/00 20060101AFI20230509BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G01B5/00 L
G01B21/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038632
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2018198889の分割
【原出願日】2018-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】清谷 進吾
(72)【発明者】
【氏名】大山 良和
(72)【発明者】
【氏名】大根田 隆男
(57)【要約】
【課題】Zスピンドルの上昇時と下降時とでZスピンドルの姿勢が変化しにくく、ヒステリシスによる測定誤差が低減する移動機構を提供する。
【解決手段】移動機構は、Z軸移動機構と、Z軸移動機構を水平方向に移動させるX軸移動機構と、を有する。Z軸移動機構は、鉛直方向に長さを有するZスピンドルと、Zスピンドルを鉛直方向に移動させるZ軸駆動部を有する。Z軸駆動部は、上端がZスピンドルの上端寄りに固定され、かつ、下端がZスピンドルの下端寄りに固定されたオープンベルトと、オープンベルトが掛け回されてオープンベルトを上下に送り駆動する駆動プーリと、オープンベルトをZスピンドルの側に押す上側テンションローラと、オープンベルトをZスピンドルの側に押す下側テンションローラと、を備える。X軸移動機構のフレーム部は、Zスピンドルを間にしてX軸ガイド部と向い合う位置にZ軸駆動部を保持している。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に長さを有する長尺スライダと、
前記長尺スライダを鉛直方向に移動させる鉛直駆動部と、を備える移動機構であって、
前記鉛直駆動部は、
上端が前記長尺スライダの上端寄りに固定され、かつ、下端が前記長尺スライダの下端寄りに固定されたオープンベルトと、
前記オープンベルトと前記長尺スライダとの間に配設され、前記オープンベルトが掛け回されて前記オープンベルトを上下に送り駆動する駆動プーリと、
前記駆動プーリよりも上方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す上側テンションローラと、
前記駆動プーリよりも下方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す下側テンションローラと、を備え、
前記長尺スライダが最下点まで下げられた状態において、前記オープンベルトの上端部と前記上側のテンションローラとの高さ方向での距離を上側余裕寸法Luとし、
前記長尺スライダが最上点まで引き上げられた状態において、前記オープンベルトの下端部と前記下側のテンションローラとの高さ方向での距離を下側余裕寸法Ldとするとき、
Lu>Ldである
ことを特徴とする移動機構。
【請求項2】
鉛直方向に長さを有する長尺スライダ、および、前記長尺スライダを鉛直方向に移動させる鉛直駆動部を有する鉛直移動機構と、
前記鉛直移動機構を水平方向に移動させる水平移動機構と、を有する移動機構であって、
前記鉛直駆動部は、
上端が前記長尺スライダの上端寄りに固定され、かつ、下端が前記長尺スライダの下端寄りに固定されたオープンベルトと、
前記オープンベルトと前記長尺スライダとの間に配設され、前記オープンベルトが掛け回されて前記オープンベルトを上下に送り駆動する駆動プーリと、
前記駆動プーリよりも上方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す上側テンションローラと、
前記駆動プーリよりも下方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す下側テンションローラと、を備え、
前記水平移動機構は、
水平方向の一方向に長さを有する水平ガイド部と、
前記水平ガイド部に沿ってスライド移動する水平スライダと、
前記水平スライダに固定されているとともに、前記鉛直駆動部を支持するフレーム部と、を備え、
前記フレーム部は、前記長尺スライダを案内する筒孔を有する略筒形状を有し、かつ、前記長尺スライダを間にして前記水平ガイド部と向い合う位置に前記鉛直駆動部を保持している
ことを特徴とする移動機構。
【請求項3】
請求項2に記載の移動機構において、
前記長尺スライダが最下点まで下げられた状態において、前記オープンベルトの上端部と前記上側のテンションローラとの高さ方向での距離を上側余裕寸法Luとし、
前記長尺スライダが最上点まで引き上げられた状態において、前記オープンベルトの下端部と前記下側のテンションローラとの高さ方向での距離を下側余裕寸法Ldとするとき、
Lu>Ldである
ことを特徴とする移動機構。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の移動機構において、
前記上側テンションローラの高さ位置は、前記水平ガイド部の上端の高さ位置よりも低い
ことを特徴とする移動機構。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の移動機構と、
前記長尺スライダに取り付けられたプローブと、を備える
ことを特徴とする測定機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元測定機に関する。詳しくは、オープンベルトを使用するベルト駆動機構を鉛直方向の駆動機構として採用する三次元測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
オープンベルト型の軸方向移動装置が知られている(特許文献1:特開2016-90052)。そして、オープンベルト型の軸方向移動装置を適用した三次元測定機が本出願人により提案されている(特許文献2:特開2018-80979)。
【0003】
図1は、三次元測定機100の外観を表わす斜視図である。
【0004】
この三次元測定機100は、比較的小型、軽量、低価格でありながらも、相応の精度で測定対象物の形状測定をするものとしてユーザから高い評価を得ている。三次元測定機100は、例えば製造ラインのすぐそばに配置された設置台10の上に設置された状態で使用される。
【0005】
三次元測定機100は、測定対象物を載置する定盤110と、定盤110に立設されたY軸コラム120と、ワークを検出するプローブ130と、プローブ130を互いに直交するXYZ方向に移動させる移動機構200と、を備える。
【0006】
Y軸コラム120は、Y方向に幅広かつX方向に幅狭であって、定盤110の上面においてX方向の一端縁に立設されている。Y軸コラム120は略T型形状であって、Y軸コラム120の上端部は定盤110の一辺よりも長く、Y軸コラム120の下端部は定盤110の一辺よりも短い。
【0007】
プローブ130は、例えば、先端部が球とされた接触式プローブである。これに限定されず、プローブ130は、非接触式プローブであってもよい。
【0008】
移動機構200は、Y軸コラム120上に設置されている。
図2図3を参照して移動機構200の概略構成を説明する。
図2は、三次元測定機100の正面図において、カバーを外してX軸移動機構230を示す図である。
図3は、三次元測定機100の側面図において、カバーを外してX軸移動機構230とZ軸移動機構300とを示す図である。
【0009】
移動機構200は、Y軸移動機構210と、X軸移動機構(水平移動機構)230と、Z軸移動機構300と、を備える。
【0010】
Y軸移動機構210は、Y軸コラム120の上端部で支持されるY軸ガイド部211と、Y軸ガイド部211でY方向に移動可能とされたYスライダ212と、を備える。
【0011】
X軸移動機構230は、Yスライダ212に固定されたX軸ガイド部(水平ガイド部)231と、X軸ガイド部231でX方向に移動可能とされたXスライダ(水平スライダ)234と、を備える。
X軸ガイド部231は、X軸方向に長さを有する長尺であり、一端だけがYスライダ212に固定され、片持ちで支持されている。X軸ガイド部231の左側面(Y方向の負側の面)において、上端縁と下端縁とに一対のガイドレール232が設けられている。
断面コ字状の移動ブロック233がガイドレール232に跨がるように設けられており、この移動ブロック233にXスライダ234が取り付けられている。
【0012】
細かく説明しないが、Yスライダ212およびXスライダ234を移動させる機構としては、ボールネジ機構やベルトドライブ機構を採用できる。ここでは、X軸移動機構230を例にすると、エンドレスベルト235をモータ236の動力で送り駆動している。
【0013】
Z軸移動機構(鉛直移動機構)300は、Xスライダ234によって支持されている。
【0014】
Z軸移動機構300は、Z方向(鉛直方向)に移動可能に支持されたZスピンドル(長尺スライダ)310と、Xスライダ234に固定され、Z軸移動機構300を支えるフレーム部330と、フレーム部330によって支持され、Zスピンドル310をZ方向に移動させるZ軸駆動部(鉛直駆動部)350と、を備える。
【0015】
Zスピンドル(長尺スライダ)310は、鉛直方向であるZ方向に移動し、その下端部でプローブ130を支持している。Zスピンドル310の両側面(X軸方向の正側の面と負側の面)には、1対のガイドレール311が対向するように設けられている。(なお、Zスピンドル310は回転するわけではなく、スライド移動なのであるが、この技術分野の慣用的名称としてスピンドルと称する。)
【0016】
フレーム部330は、Xスライダ234においてY軸方向の負側の面に配設されている。
フレーム部330には断面コ字状で前記ガイドレール311に跨がるように設けられた移動ブロックが配設され、これによりZスピンドル310はZ方向に案内される。
【0017】
Z軸駆動部350は、Xスライダ234に固定されたフレーム部330によって支持されている。このとき、Z軸駆動部350は、図3に示されるように、X軸ガイド部231の直上に位置しており、すなわち、フレーム部330においてX軸移動機構230と同じ側にくるように配置されている。
Z軸駆動部350をX軸ガイド部231の直上に位置するようにしているのは、Z軸駆動部350の出っ張りがX軸ガイド部231と同じ側にある方がスペース効率がよいためである。
(出っ張りの方向が揃うので、図3のように、Zスピンドル310においてY軸方向の負側の面には大きな出っ張りがなくなる。)
また、Z軸駆動部350をX軸ガイドの直下ではなく直上に位置するようにしているのは、ワークを配置するスペースの邪魔にならないことはもちろん、Z軸駆動部350の熱をできる限りワークから遠ざけるようにして、できる限り上方に熱を逃がすためである。
【0018】
図4は、Z軸駆動部350の拡大図である。
また、図5は、Z回転駆動源351と、第1駆動プーリ352Aと、第2駆動プーリ352Bと、エンドレスベルト353と、を抜き出して拡大した図である。
Z軸駆動部350は、Z回転駆動源351と、Z回転駆動源351の軸に取り付けられた第1駆動プーリ352Aと、第1駆動プーリ352Aに従動して回転する第2駆動プーリ352Bと、第2駆動プーリ352Aと第2駆動プーリ352Bとを連結するエンドレスベルト353と、第2駆動プーリ352Bの回転をZスピンドル310の上下動に変換するオープンベルト360と、オープンベルト360のテンションを調整するテンションローラ371,372と、を備える。
ここで、第1駆動プーリ352Aの直径は、第2駆動プーリ352Bの直径よりも小さい。これにより、Z回転駆動源351の発生トルクは増大される。
【0019】
Z回転駆動源351の回転出力はエンドレスベルト353によって伝達されて、第2駆動プーリ352Bが回転駆動される。第2駆動プーリ352Bの軸心Pに出力軸が設けられている。
【0020】
オープンベルト360の両端はZスピンドル310の側面に固定されている。
図3に表れるように、オープンベルト360の上端は上端取付部321でZスピンドル310の上端に取り付けられ、オープンベルト360の下端は下端取付部322によりZスピンドル310の下側寄りに取り付けられている。さらに、オープンベルト360は第2駆動プーリ352Bの出力軸に掛け回されており、すなわち、Zスピンドル310とオープンベルト360との間に出力軸がくる。
【0021】
テンションローラ371,372は、Y軸方向において第2駆動プーリ352Bの軸心よりもZスピンドル310の近傍に配置されている。
また、テンションローラ371,372は、Z軸方向において出力軸を挟むようにフレーム部330に回転可能に配置されている。
テンションローラ371,372のY軸方向の位置はそれぞれボルト373で調整され、Y軸方向で負側にくるオープンベルト360をZスピンドル310に押しつけるように調整される。
【0022】
また、テンションローラ371,372は、オープンベルト360を出力軸の外周により長い距離で当接させている。すなわち、フレーム部330には、テンションローラ371,372の軸をZ軸方向に沿って押すための調整ねじ374を螺入できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2016-90052
【特許文献2】特開2018-80979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上記で説明したように、Z軸駆動部350は一対のテンションローラ371,372を有しており、テンションローラ371,372の位置を調整することによってオープンベルト360をZスピンドル310の側面に押し当てるようにしている。これにより、オープンベルト360の端部からZスピンドル310に掛かる力ができる限りZ方向に平行な力となるようにし、Zスピンドル310を湾曲させたり、Zスピンドル310を傾かせたりする力がZスピンドル310に掛からないようにしている。
しかしながら、Zスピンドル310を上方に引き上げるときと、Zスピンドル310を下方に下ろすときと、ではオープンベルト360からZスピンドル310に作用する力がある程度異なってくるのはやむを得ないことである。
【0025】
Zスピンドル310を上方に引き上げるときにオープンベルト360(の端部)からZスピンドル310に作用する力(の大きさ)Fbは、Zスピンドル310を(上方向に)加速させる力(の大きさ)Fzaccと、Zスピンドル310の重さを支える力(の大きさ)Fzgと、の和(Fzacc+Fzg)である。
Zスピンドル310を下方に下ろすときにオープンベルト360(の端部)からZスピンドル310に作用する力(の大きさ)Fbは、Zスピンドル310を(下方向に)加速させる力(の大きさ)Fzaccと、Zスピンドル310の重さを支える力(の大きさ)Fzgと、の差(-Fzacc+Fzg)である。
このように、Zスピンドル310を上方に引き上げるときと、Zスピンドル310を下方に下ろすときと、でオープンベルト360からZスピンドル310に掛かる力がある程度異なってくるのは、物をZ方向(鉛直方向)に移動させる場合にはある程度やむを得ないことではある。
【0026】
しかしながら、本発明者らは、三次元測定機100の測定精度の検証を繰り返し行なうなかでZスピンドル310の上昇時と下降時とで測定誤差の差(ヒステリシス)が大きくなる領域があることに気付いた。
その理由として、本発明者らは次のように考察した。
上記に説明のように、Z軸駆動部350はX軸ガイド部231の直上に位置するように配置されているので、Zスピンドル310を最下点まで下げたとき、図6に模式的に例示するように、オープンベルト360の上端取付部321と上側のテンションローラ371とがかなり接近してしまうことになる。
図7は、図6の部分拡大図である。
オープンベルト360の上端取付部321と上側のテンションローラ371との距離が接近すると、上端取付部321の付近においてオープンベルト360が鉛直線から傾斜する角度θbが大きくなる。
【0027】
ここで、上述のようにテンションローラ371、372の位置は製品組み立て時に調整できるのであるが、一度組み上げてしまうと、テンションローラ371、372の位置を再調整することは難しく、製品出荷後にオープンベルト360のテンションやテンションローラ371、372の位置を調整することはかなり大がかりな作業となってしまう。
Zスピンドル310を最下点まで下げた状態からZスピンドル310を上方に持ち上げようするとき、オープンベルト360には大きな力Fb(=Fzacc+Fzg)が掛かる。
オープンベルト360が鉛直線から傾斜する角度θbが大きいと、図7に示すように、Fbのy方向成分(オープンベルト360の上端取付部321をY軸の正の方向(つまりZ軸駆動部350の側)に引っ張る力)Fbyが大きくなる。すると、Zスピンドル310に湾曲や傾斜が生じることとなる。
Zスピンドル310の最下点付近でZスピンドル310を下降させながらワークを測定したときと、Zスピンドル310を上昇させながら測定したときとでは、Fbの大きさが異なるため、誤差が大きくなってしまう。
【0028】
本発明の目的は、Zスピンドルの上昇時と下降時とでZスピンドルの姿勢が変化しにくく、ヒステリシスによる測定誤差が低減する移動機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の移動機構は、
鉛直方向に長さを有する長尺スライダ、および、前記長尺スライダを鉛直方向に移動させる鉛直駆動部を有する鉛直移動機構と、
前記鉛直移動機構を水平方向に移動させる水平移動機構と、を有する移動機構であって、
前記鉛直駆動部は、
上端が前記長尺スライダの上端寄りに固定され、かつ、下端が前記長尺スライダの下端寄りに固定されたオープンベルトと、
前記オープンベルトと前記長尺スライダとの間に配設され、前記オープンベルトが掛け回されて前記オープンベルトを上下に送り駆動する駆動プーリと、
前記駆動プーリよりも上方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す上側テンションローラと、
前記駆動プーリよりも下方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す下側テンションローラと、を備え、
前記水平移動機構は、
水平方向の一方向に長さを有する水平ガイド部と、
前記水平ガイド部に沿ってスライド移動する水平スライダと、
前記水平スライダに固定されているとともに、前記鉛直駆動部を支持するフレーム部と、を備え、
前記フレーム部は、前記長尺スライダを案内する筒孔を有する略筒形状を有し、かつ、前記長尺スライダを間にして前記水平ガイド部と向い合う位置に前記鉛直駆動部を保持している
ことを特徴とする。
【0030】
本発明の一実施形態では、
前記上側テンションローラの高さ位置は、前記水平ガイド部の上端の高さ位置よりも低い
ことが好ましい。
【0031】
本発明の測定機は、
前記移動機構と、前記長尺スライダに取り付けられたプローブと、を備える
ことを特徴とする。
【0032】
本発明の鉛直移動機構は、
鉛直方向に長さを有する長尺スライダと、
前記長尺スライダを鉛直方向に移動させる鉛直駆動部と、を備える鉛直移動機構であって、
前記鉛直駆動部は、
上端が前記長尺スライダの上端寄りに固定され、かつ、下端が前記長尺スライダの下端寄りに固定されたオープンベルトと、
前記オープンベルトと前記長尺スライダとの間に配設され、前記オープンベルトが掛け回されて前記オープンベルトを上下に送り駆動する駆動プーリと、
前記駆動プーリよりも上方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す上側テンションローラと、
前記駆動プーリよりも下方、かつ、前記オープンベルトを間にして前記長尺スライダとは反対側に配置され、前記オープンベルトを前記長尺スライダの側に押す下側テンションローラと、を備え、
前記長尺スライダが最下点まで下げられた状態において、前記オープンベルトの上端部と前記上側のテンションローラとの高さ方向での距離を上側余裕寸法Luとし、
前記長尺スライダが最上点まで引き上げられた状態において、前記オープンベルトの下端部と前記下側のテンションローラとの高さ方向での距離を下側余裕寸法Ldとするとき、
Lu>Ldである
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】三次元測定機の外観を表わす斜視図である。
図2】三次元測定機の正面図において、カバーを外してX軸移動機構を示す図である。
図3】三次元測定機の側面図において、カバーを外してX軸移動機構とZ軸移動機構とを示す図である。
図4】Z軸駆動部の拡大図である。
図5】Z回転駆動源と、第1駆動プーリと、第2駆動プーリと、エンドレスベルトと、を抜き出して拡大した図である。
図6】オープンベルトの上端取付部と上側のテンションローラとの位置関係を模式的に示す図である。
図7図6の部分拡大図である。
図8】第1実施形態において、Zスピンドルを最下点まで下げた状態を模式的に示す図である。
図9】第1実施形態において、Zスピンドルを最上点まで引き上げた状態を模式的に示す図である。
図10】第2実施形態の三次元測定機100においてカバーを外して内部構成を示す図である。
図11図10の部分拡大図であり、特にZ軸駆動部を拡大して示す図である。
図12】Z方向の正側からZ軸駆動部を平面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の三次元測定機100に係る第1実施形態について説明する。
第1実施形態の基本的な構成は背景技術で説明したものと同じである。
ただし、Zスピンドル310を最下点に下げたときのオープンベルト360の上端取付部321と上側テンションローラ371とのZ軸方向での距離に下限値を設けることとする。
いま、図8はZスピンドル310を最下点まで下げた状態を模式的に示す図である。図8において、Zスピンドル310を最下点まで下げた状態において、Z軸方向におけるオープンベルト360の上端取付部321と上側テンションローラ371、372との間の距離を上側余裕寸法Luで表わすとする。オープンベルト360の上端取付部321と下端取付部322との間の距離を有効ベルト長Lsで表わすとする。
また、図9は、Zスピンドル310を最上点まで引き上げた状態を模式的に示す図である。図9において、Zスピンドル310を最上点まで引き上げた状態において、Z軸方向におけるオープンベルト360の下端取付部322と下側テンションローラ372との間の距離を下側余裕寸法Ldで表わすとする。
【0035】
このとき、Lu>Ldとする。好ましくは、Lu>1.2×Ldとし、さらに好ましくは、Lu>1.5×Ldとする。
【0036】
いま、テンションローラ371、372とZスピンドル310の側面とのギャップをGと表わすとする(図8)。
Gは製品組み立て時の調整で決まる一定の値である。
上側余裕寸法Luが長くなれば、Zスピンドル310を最下点まで下げたときの上端取付部321付近でオープンベルト360が鉛直線から傾斜する角度θbはそれだけ小さくなるのは道理である。
通常の設計でいえば、Lu=Ldにするのが素直と言える。さらには、Zスピンドル310のストロークが同じであれば、三次元測定機100のサイズをできる限り小さくするため、Zスピンドル310の上方への突出しを抑えるべく、Lu<Ldにしたい。
【0037】
しかしながら、課題の説明で前述したように、Zスピンドル310を上方に持ち上げようするときにオープンベルト360に掛かる力Fb(=Fzacc+Fzg)は、Zスピンドル310を下降させるときよりも大きい。したがって、Zスピンドル310を最下点まで下げたときにオープンベルト360の上端取付部321付近でオープンベルト360がZスピンドル310の側面から離れて鉛直線と成す角θbが無視できない。
Zスピンドル310を最下点付近において、Zスピンドル310を上昇させながら測定したときと下降させながら測定したときとでヒステリシス誤差が生じないようにするためには、少なくとも、Lu>Ldとすることが必要である。
【0038】
(第2実施形態)
次に、本発明の三次元測定機100に係る第2実施形態を説明する。
第1実施形態では、Lu>Ldとすることを提案した。
しかしながら、第1実施形態の構成では、X軸ガイド部231の上にZ軸駆動部350があり、さらに、その上に少なくともオープンベルト360の上端取付部321までの距離Lu(上側余裕寸法)を確保する必要がある(図8)。
そのため、Zスピンドル310のストロークを十分に確保しようとすると、X軸ガイド部231の上方に長い突き出しスペースを確保しなければならず、三次元測定機100の高さサイズが大きくなってしまう。
また、Zスピンドル310自体も長くする必要があるため、その分Zスピンドル310自体の重量も大きくなってしまう問題がある。
【0039】
第2実施形態を図10図11に示す。
図10は、第2実施形態の三次元測定機100においてカバーを外して内部構成を示す図である。
図11は、図10の部分拡大図であり、特にZ軸駆動部350を拡大して示す図である。
図12は、Z方向の正側からZ軸駆動部350を平面視した図である。
【0040】
第2実施形態では、Zスピンドル310を間にしてZ軸駆動部350をX軸ガイド部231とは反対側に配置している。
いま、X軸方向に長さを有するX軸ガイド部231があり、X軸ガイド部231のY軸方向の負側の面にはガイドレール232が設けられている。そして、ガイドレール232に断面コ字状の移動ブロック233が跨設され、移動ブロック233にXスライダ234が取り付けられている。
Xスライダ234のY軸方向の負側の面にはフレーム部330が設けられている。
フレーム部330は、Zスピンドル310が内側を挿通する筒孔を有する形状である。そして、フレーム部330がZスピンドル310を取り囲むように形成されているところ、フレーム部330のY軸方向の負側の面にZ軸駆動部350は配置されている。
【0041】
このとき、Z軸駆動部350のZ軸方向の高さ位置としては、X軸ガイド部231の真正面とし、すなわち、X軸ガイド部231と同じ高さにすることが好ましい。
上側余裕寸法Luのことを考えると、上側のテンションローラ371は、X軸ガイド部231の上端の高さ位置よりも低くしておくとよい。例えば、上側のテンションローラ371の回転軸の位置をX軸ガイド部231の上端の高さ位置よりも低くしておくとよい。もう少し厳しめにいうと、上側のテンションローラ371の一番高いところがX軸ガイド部231の上端の高さ位置よりも低くなっているとよい。
【0042】
なお、第2駆動プーリ352BよりもZ回転駆動源351を上方に配置する方がよい。これは、Z回転駆動源351からの熱を上方に逃がすためである。
これを踏まえて、好ましくは、Z回転駆動源351の一番高いところがX軸ガイド部231の上端の高さ位置よりも低くなっているとよい。
【0043】
なお、下側のテンションローラ372については、下側のテンションローラ372がX軸ガイド部231の下端の高さ位置よりも高くなっているとよい。
【0044】
Zスピンドル310を間にしてZ軸駆動部350をX軸ガイド部231とは反対側に配置したので、Zスピンドル310においてオープンベルト360が取り付けられる側面もX軸ガイド部231とは反対側の側面になるのはもちろんのことである。
【0045】
第2実施形態によれば、上側余裕寸法Luを長めに確保したとしても、Zスピンドル310がX軸ガイド部231の上に突き出る部分の長さを短くでき、三次元測定機100の高さサイズの増加を抑えることができる。
あるいは、上側余裕寸法Luを確保したとしても従来技術よりも高さ寸法を低くできる可能性がある。
【0046】
また、Z軸駆動部350の位置が低くなるのでZ軸移動機構300の重心が低くなる。すると、Z軸移動機構300とX軸移動機構230とを合わせて考えたとき、X軸移動機構230の可動部分(Xスライダ234)の重心の高さをX軸移動機構230の駆動機構(ここではエンドレスベルト235)の高さに近づけることができる。これにより、X軸移動機構230のXスライダ234の移動精度(例えば移動の真直度)が向上する。
【0047】
また、Z軸駆動部350の設置高さが従来技術よりも低くなるので、三次元測定機100の重心が低くなり、設置台に三次元測定機100を設置したときの安定度が増す。
【0048】
なお、第2実施形態でもLu>Ldとしてもよいが、必ずしも限定されない。
上側余裕寸法Luの下限値は下側余裕寸法Ldとの関係だけで決定されるわけではなく、θbが十分に小さくなればよい。
Z軸駆動部350をX軸ガイド部231の直上に配置するとなるとLuを意識的に長くする設計思想(例えばLu>Ldなど)を導入する必要があるが、第2実施形態のようにZ軸駆動部350をX軸ガイド部231の正面に配置するようにすれば、Luは自ずと余裕をもって確保される(例えば50mm以上)ので、Lu>Ldのように特段限定する必要はないと考えられる。
【0049】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
10…設置台、
100…三次元測定機、
110…定盤、
120…Y軸コラム、
130…プローブ、
200…移動機構、
210…Y軸移動機構、
211…Y軸ガイド部、212…Yスライダ、
230…X軸移動機構、
231…X軸ガイド部、232…ガイドレール、233…移動ブロック、234…Xスライダ、235…エンドレスベルト、236…モータ、
300…Z軸移動機構、
310…Zスピンドル、311…ガイドレール、321…上端取付部、322…下端取付部、330…フレーム部、
350…Z軸駆動部、
351…Z回転駆動源、352A…第1駆動プーリ、352B…第2駆動プーリ、353…エンドレスベルト、360…オープンベルト、371…上側テンションローラ、372…下側テンションローラ、372…テンションローラ、
373…ボルト、374…調整ねじ。
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