(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068241
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】銅張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/00 20060101AFI20230510BHJP
B26D 1/24 20060101ALI20230510BHJP
B26D 1/40 20060101ALI20230510BHJP
B23D 19/06 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H05K3/00 R
B26D1/24 E
H05K3/00 L
B26D1/40 502Z
B23D19/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179137
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島村 富雄
【テーマコード(参考)】
3C027
3C039
【Fターム(参考)】
3C027WW12
3C027WW15
3C039CA01
3C039CA13
3C039CB33
(57)【要約】
【課題】フレアが小さい銅張積層板が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】銅張積層板の製造方法は、ギャングカット方式のカッターユニットで、銅張積層板の原反を第1切断加工品と中抜部と第2切断加工品とに切断する。中抜部の引き出し角度は-20°~0°が好ましい。第1切断加工品の巻取張力は30~60Nが好ましい。第1切断加工品の引き出し角度は0°~6°が好ましい。銅張積層板をギャングカット方式のカッターユニットで切断するので、フレアが小さい銅張積層板が得られる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギャングカット方式のカッターユニットで、銅張積層板の原反を第1切断加工品と中抜部と第2切断加工品とに切断する
ことを特徴とする銅張積層板の製造方法。
【請求項2】
前記第1切断加工品の引き出し方向を基準とした前記中抜部の引き出し角度は-20°~0°である
ことを特徴とする請求項1記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項3】
前記第1切断加工品の巻取張力は30~60Nである
ことを特徴とする請求項1または2記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項4】
前記原反の搬送方向の延長線を基準とした前記第1切断加工品の引き出し角度は0°~6°である
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
【請求項5】
前記第1切断加工品は、厚さが10~15μmであり、幅が240~260mmである
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の銅張積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅張積層板の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、幅広の銅張積層板を切断して所望の幅を有する銅張積層板を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話などの電子機器には、樹脂フィルムの表面に配線パターンが形成されたフレキシブルプリント配線板が用いられる。フレキシブルプリント配線板は、セミアディティブ法、サブトラクティブ法などにより、銅張積層板に配線パターンを形成することで得られる。
【0003】
銅張積層板は幅広の状態で製造された後、配線加工しやすいようにスリッターで切断して幅狭の状態とする。この際、切断後の銅張積層板の縁が波状に変形する(フレアともいう)ことがある(特許文献1、2)。特に、銅張積層板が薄く、伸びやすい場合には、切断によりフレアが生じやすい。
【0004】
フレアの発生は切断された端面に生じるバリが一つの原因である。バリが生じたまま銅張積層板をロール状に巻き取ると、端部のバリが積層してハイエッジとなる。これにより、長尺ロールではシワが生じることがある。また、ロールの搬送性が悪くなり、生産効率が低下することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-64527号公報
【特許文献2】特開2013-10718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、フレアが小さい銅張積層板が得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の銅張積層板の製造方法は、ギャングカット方式のカッターユニットで、銅張積層板の原反を第1切断加工品と中抜部と第2切断加工品とに切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、銅張積層板をギャングカット方式のカッターユニットで切断するので、フレアが小さい銅張積層板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】第1切断加工品の引き出し角度および中抜部の引き出し角度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、銅張積層板1は、ベースフィルム10と、ベースフィルム10の表面に形成された銅層20とからなる。
図1に示すようにベースフィルム10の片面のみに銅層20が形成されてもよいし、ベースフィルム10の両面に銅層20が形成されてもよい。
【0011】
ベースフィルム10としてポリイミドフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。銅層20は、スパッタリングなどの乾式成膜法により成膜される金属層21と、電解めっきにより成膜される銅めっき被膜22とからなる。金属層21と銅めっき被膜22とはベースフィルム10の表面にこの順に積層されている。
【0012】
金属層21は下地金属層21aと銅薄膜層21bとからなる。下地金属層21aと銅薄膜層21bとはベースフィルム10の表面にこの順に積層されている。一般に、下地金属層21aはニッケル、クロム、またはニッケルクロム合金からなる。下地金属層21aはなくてもよい。銅薄膜層21bはベースフィルム10の表面に下地金属層21aを介して成膜されてもよいし、下地金属層21aを介さずベースフィルム10の表面に直接成膜されてもよい。
【0013】
特に限定されないが、ベースフィルム10の厚さは10~40μmが一般的である。下地金属層21aの厚さは5~50nmが一般的であり、銅薄膜層21bの厚さは50~400nmが一般的である。銅めっき被膜22の厚さは、サブトラクティブ法により加工される銅張積層板1の場合8~12μmが一般的であり、セミアディティブ法により加工される銅張積層板1の場合0.1~5μmが一般的である。
【0014】
ロールツーロール方式のスパッタリング装置およびめっき装置を用いれば、長尺帯状のベースフィルム10の表面に銅層20を形成できる。これにより、長尺帯状の銅張積層板1が得られる。長尺帯状の銅張積層板1は所望の幅寸法となるよう切断装置により長手方向に切断される。銅張積層板1を切断すると、切断後の縁が波状に変形する(フレアが発生する)ことがある。特に、銅張積層板が薄く(例えば、厚さ10~15μm)、伸びやすい場合には、切断によりフレアが生じやすい。
【0015】
つぎに、切断装置AAを説明する。
図2に示すように、切断装置AAは供給装置31を有する。供給装置31には銅張積層板の原反ロールが取り付けられている。原反ロールは切断前の幅広の銅張積層板(以下、原反1Wという。)をロール状に巻回したものである。供給装置31は原反ロールから原反1Wを繰り出す。原反1Wは各種のローラで定められた搬送経路に沿って搬送されカッターユニット40に供給される。
【0016】
カッターユニット40により、原反1Wは、第1切断加工品1A、中抜部1Mおよび第2切断加工品1Bの3条に切断される。なお、原反1Wの両縁部を切断してもよい。すなわち、原反1Wを5条に切断してもよい。第1切断加工品1A、中抜部1Mおよび第2切断加工品1Bは、いずれも、切断後の幅狭の銅張積層板である。中抜部1Mは第1切断加工品1Aと第2切断加工品1Bとの間の部分である。第1切断加工品1Aおよび第2切断加工品1Bの幅は、特に限定されないが、240~260mmである。中抜部1Mの幅は、特に限定されないが、3~10mmである。例えば、幅570mmの原反1Wを切断して、幅250mmの第1切断加工品1A、幅5mmの中抜部1M、および幅250mmの第2切断加工品1Bを得る。
【0017】
カッターユニット40の直後には、第1切断加工品1Aが巻回される第1ローラ32、中抜部1Mが巻回される中抜ローラ33、および第2切断加工品1Bが巻回される第2ローラ34が配置されている。これらのローラ32、33、34により、第1切断加工品1A、中抜部1Mおよび第2切断加工品1Bのカッターユニット40からの引き出し角度が定められている。逆にいえば、これらの引き出し角度はローラ32、33、34の配置により調整できる。
【0018】
図3に示すように、本明細書では、原反1Wの搬送方向の延長線(通常は水平線)を基準線とし、カッターユニット40から引き出された第1切断加工品1Aの引き出し方向と基準線とのなす角を第1切断加工品1Aの引き出し角度αとする。また、第1切断加工品1Aの引き出し方向を基準線とし、カッターユニット40から引き出された中抜部1Mの引き出し方向と基準線とのなす角を中抜部1Mの引き出し角度βとする。なお、角度α、βは、いずれも、引き出し方向が基準線より下がる場合(
図3における時計回り)を正、基準線より上がる場合(
図3における反時計回り)を負とする。
【0019】
図2に示すように、第1切断加工品1Aは第1ローラ32に巻回された後、各種のローラで定められた搬送経路に沿って搬送され第1巻取部35に供給される。第1巻取部35は第1切断加工品1Aをロール状に巻き取る。同様に、第2切断加工品1Bは第2ローラ34に巻回された後、各種のローラで定められた搬送経路に沿って搬送され第2巻取部36に供給される。第2巻取部36は第2切断加工品1Bをロール状に巻き取る。
【0020】
中抜ローラ33の下流は駆動ローラ37および従動ローラ38が配置されている。中抜部1Mは駆動ローラ37と従動ローラ38との間に挟まれて、駆動ローラ37の駆動により搬送される。中抜部1Mは回収タンクなどに回収される。
【0021】
カッターユニット40の切断方式はギャングカット方式である。
図4に示すように、上回転軸(不図示)には少なくとも2つの上刃41、41が設けられている。また、下回転軸(不図示)には少なくとも2つの下刃42、42が設けられている。2つの上刃41、41は所定間隔を開けて配置されている。2つの下刃42、42は2つの上刃41、41の直ぐ外側に配置されている。上刃41と下刃42とが接する2位置において原反1Wが切断される。具体的には、原反1Wは中央の中抜部1Mと、左右の第1切断加工品1Aおよび第2切断加工品1Bに切断される。
【0022】
上回転軸には第1上支持リング43A、中央上支持リング43Mおよび第2上支持リング43Bが設けられている。中央上支持リング43Mは2つの上刃41、41の間に配置されている。中央上支持リング43Mの直径は上刃41と略同一である。第1上支持リング43Aおよび第2上支持リング43Bは2つの上刃41、41の左右に配置されている。第1上支持リング43Aおよび第2上支持リング43Bは上刃41より小径である。
【0023】
下回転軸には第1下支持リング44A、中央下支持リング44Mおよび第2下支持リング44Bが設けられている。中央下支持リング44Mは2つの下刃42、42の間に配置されている。中央下支持リング44Mは下刃42より小径である。第1下支持リング44Aおよび第2下支持リング44Bは2つの下刃42、42の左右配置されている。第1下支持リング44Aおよび第2下支持リング44Bの直径は上刃41と略同一である。
【0024】
第1切断加工品1Aは第1上支持リング43Aと第1下支持リング44Aとの間に挟まれた状態で切断される。中抜部1Mは中央上支持リング43Mと中央下支持リング44Mとの間に挟まれた状態で切断される。第2切断加工品1Bは第2上支持リング43Bと第2下支持リング44Bとの間に挟まれた状態で切断される。
【0025】
カッターユニット40がこのような構成であるから、切断後の両端面の切断条件がほぼ同じになる。そのため、フレアが小さい銅張積層板1A、1Bが得られる。
【0026】
フレアが小さい切断加工品1A、1Bを得るためには、中抜部1Mの引き出し角度βを-20°~0°とすることが好ましい。また、切断加工品1A、1Bの巻取張力を30~60Nとすることが好ましく、30~40Nとすることがより好ましい。さらに、切断加工品1A、1Bの引き出し角度αを0°~6°とすることが好ましく、0°~4°とすることがより好ましい。
【0027】
以上の構成を有する切断装置AAを用いて幅広の銅張積層板1Wを切断することで、幅狭の銅張積層板1A、1Bを得ることができる。得られた銅張積層板1A、1Bはフレアが抑制されている。
【実施例0028】
(共通の条件)
ベースフィルムとして厚さ12.5μmのポリイミドフィルムを用意した。ベースフィルムは幅570mmの長尺帯状である。ベースフィルムの両面に銅層を成膜して銅張積層板を得た。銅層は銅薄膜層および銅めっき被膜からなる。銅薄膜層はマグネトロンスパッタリング装置で成膜した。銅めっき被膜はロールツーロール方式のめっき装置で成膜した。銅薄膜層は厚さ100nm、銅めっき被膜の厚さは0.4μmである。したがって、銅張積層板の厚さは13.5μmである。
【0029】
図2に示す構成の切断装置を用いて幅570mmの銅張積層板を、幅250mmの第1切断加工品、幅5mmの中抜部、および幅250mmの第2切断加工品に切断した。ここで、原反の搬送速度を10m/分、送り出し張力を100Nとした。
【0030】
(中抜部の引き出し角度)
中抜部の引き出し角度βを-20°~+20°の範囲で変化させた。なお、第1切断加工品および第2切断加工品の巻取張力は30Nとした。また、第1切断加工品の引き出し角度αは2°とした。
【0031】
得られた第1切断加工品の中抜部側の縁を目視観察してフレアの有無を判定した。その結果を表1に示す。表1中、○はフレア無し(フレア高さ100μm未満に相当)、×はフレア有り(フレア高さ100μm以上に相当)を意味する。
【表1】
【0032】
中抜部の引き出し方向を基準線(第1切断加工品の引き出し方向)と同一かそれより上げるとフレアを抑制できることが分かった。中抜部を引き下げるように切断すると中抜部が下刃の間に入り込みフレアを助長すると考えられる。中抜部を引き上げるように切断することでこれを抑制できる。フレアを抑制するには中抜部の引き出し角度βを-20°~0°とすることが好ましいことが確認された。
【0033】
(第1切断加工品の巻取張力)
第1切断加工品および第2切断加工品の巻取張力を30~100Nの範囲で変化させた。なお、中抜部の引き出し角度βは-10°とした。また、第1切断加工品の引き出し角度αは2°とした。
【0034】
得られた第1切断加工品の中抜部側の縁を目視観察してフレアの有無を判定した。その結果を表2に示す。表2中、○はフレア無し(フレア高さ100μm未満に相当)、△は許容範囲のフレア有り(フレア高さ100μm以上、300μm未満に相当)、×は許容範囲を超えるフレア有り(フレア高さ300μm以上に相当)を意味する。
【表2】
【0035】
第1切断加工品の巻取張力が低いほどフレアを抑制できる傾向がある。巻取張力を低くすると切断加工品の端部に生じる応力が小さくなり、フレアを抑制できると推測される。フレアを抑制するには巻取張力を30~60Nとすることが好ましく、30~40Nとすることがより好ましいことが確認された。
【0036】
(第1切断加工品の引き出し角度)
第1切断加工品の引き出し角度αを0°~+10°の範囲で変化させた。なお、第1切断加工品および第2切断加工品の巻取張力は30Nとした。また、中抜部の引き出し角度βは-10°とした。
【0037】
得られた第1切断加工品から長さ300mm、幅156mmの試験片を得た。そして、つぎの手順で、第1切断加工品の中抜部側の縁のフレア高さを求めた。試験片を平板上に載置し、試験片の縁の高さをZ軸方向の測長機能付き光学顕微鏡で測定した。ここで、試験片の縁(長さ300mm)の中間の200mmを測定範囲とし、平板の表面を基準とした縁の高さを5mm間隔で40点測定した。40点の測定結果のうちの最大値を表3に示す。また、フレア高さ100μm未満をフレア無し「○」、フレア高さ100μm以上、300μm未満を許容範囲のフレア有り「△」、フレア高さ300μm以上を許容範囲を超えるフレア有り「×」とする。
【0038】
【0039】
第1切断加工品の引き出し角度αが浅いほどフレアを抑制できる傾向がある。フレアを抑制するには引き出し角度αを0°~6°とすることが好ましく、0°~4°とすることがより好ましいことが確認された。