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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068274
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】乾燥装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20230510BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230510BHJP
   F26B 23/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
F26B13/10 D
B41J2/01 125
B41J2/01 305
F26B23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179193
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】大貫 甫
【テーマコード(参考)】
2C056
3L113
【Fターム(参考)】
2C056EA25
2C056HA29
2C056HA41
2C056HA44
2C056HA46
2C056HA47
3L113AA08
3L113AB03
3L113AC07
3L113AC31
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC48
3L113AC49
3L113AC63
3L113AC67
3L113BA30
3L113BA32
3L113CA08
3L113CB04
3L113DA03
(57)【要約】
【課題】乾燥装置の消費エネルギーを抑制する。
【解決手段】既定の温度に保たれた気体で被乾燥媒体Mdの乾燥を行う乾燥室81を具備しており、吸気孔46bと吸引室46cとを備えた吸引保持部46で被乾燥媒体Mdを吸引して保持するときに吸引した気体で前記乾燥室81の乾燥を行うことを特徴としており、吸引保持部46が吸引した高温の気体を乾燥室81に取り込むことによって、乾燥装置の消費エネルギーを抑制することができるものである。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既定の温度に保たれた気体で被乾燥媒体の乾燥を行う乾燥室を具備し、
吸気孔と吸引室を備えた吸引保持部で被乾燥媒体を吸引保持するときに吸引した気体で前記乾燥室の乾燥を行うことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥装置において、
前記乾燥室は、前記吸引室から排出された気体を取り込む入口を有することを特徴とする乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乾燥装置において、
前記吸引室から排出された気体を加熱する加熱部を有することを特徴とする乾燥装置。
【請求項4】
請求項3に記載の乾燥装置において、
前記加熱部は、前記乾燥室に取り込まれる前の気体を加熱することを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の乾燥装置において、
前記加熱部は、ガス式、ニクロム線ヒータ又はセラミックヒータを用いて加熱することを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の乾燥装置において、
前記加熱部による加熱後の気体の温度は、60℃以上80℃以下の範囲内であることを特徴とする乾燥装置。
【請求項7】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置と、前記記録媒体の乾燥を行う乾燥室を具備した乾燥装置とを含む画像形成システムであって、
前記乾燥装置として、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の乾燥装置を用いることを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成システムにおいて、
前記乾燥装置における前記乾燥室は、前記画像形成装置が記録媒体に画像を形成する画像形成室から排出される気体を取り込む入口を備え、
前記画像形成室内の温度を検知する第一温度センサと、
前記吸引室内の温度を検知する第二温度センサと、
前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの検知結果に基づき、前記乾燥室へ取り込む気体を、前記画像形成室及び前記吸引室のうちの温度の高い方から排出される気体に切り替える切替手段とを有することを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及び画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像が形成される記録媒体を乾燥室内の昇温気体によって乾燥させる乾燥装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、画像形成装置により画像が印刷された記録媒体を、吸気ファンによって取り込んだ外気をヒータによって加熱して生成される熱風を熱風吹出部から吹き付けることにより乾燥させる乾燥炉(乾燥室)を備えた乾燥装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の乾燥装置では、消費エネルギーが多いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、既定の温度に保たれた気体で被乾燥媒体の乾燥を行う乾燥室を具備し、吸気孔と吸引室を備えた吸引保持部で被乾燥媒体を吸引保持するときに吸引した気体で前記乾燥室の乾燥を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、乾燥装置の消費エネルギーを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の画像形成システムの全体構成を示す説明図。
図2】(a)は、同画像形成システムにおける画像形成部を構成する4つの記録ヘッド部の一例を示す概略平面図。(b)は、ブラック(K)の記録ヘッド部を構成する4つのヘッドユニットのうちの1つを例示した概略平面図。
図3】(a)は、同ヘッドユニットの一部を液室の長手方向に沿って切断したときの概略断面図。(b)は、同ヘッドユニットの一部を、図3(a)のSC1に示す断面、すなわち、液室の長手方向に直交する方向(ノズルの並び方向)に沿って切断したときの概略断面図。
図4】同画像形成システムにおける後処理用乾燥部及び画像形成部の概略構成を示す説明図。
図5】同画像形成部の吸引室から同後処理用乾燥部の乾燥室までの空気の流れと温度変化の概要を示すグラフ。
図6】実施形態2の画像形成システムの外観を示す斜視図。
図7】同画像形成システムにおけるキャリッジ走査機構の平面図。
図8】同画像形成システムの内部構成を示す概略説明図。
図9】変形例1における画像形成システムの後処理用乾燥部及び画像形成部の概略構成を示す説明図。
図10】変形例2における画像形成システムの後処理用乾燥部及び画像形成部の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る乾燥装置を含む画像形成システムの一例(以下、本例を「実施形態1」という。)について、図面を参照して説明する。
本実施形態1では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)という4色のインクを吐出する記録ヘッド部を備え、記録媒体上にインクからなる画像を形成する画像形成システムを例に挙げる。ただし、本発明を適用できる画像形成システムはこれに限定されない。例えば、グリーン(G)、レッド(R)、ライトシアン(LC)及び/又はその他の色のインクに対応する記録ヘッド部を更に備えるもの、又は、ブラック(K)のインクに対応する記録ヘッド部のみを備えるものなどが挙げられる。なお、以後の説明において、K、C、M、Yの添え字を付与された記号は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの夫々に対応するものとする。また、電子写真方式などの他の画像形成方式の画像形成システムであってもよい。
【0009】
本実施形態1では、記録媒体として、ロール状に巻かれた連続紙(以下「ロール紙Md」という。)を用いるが、本発明に係る画像形成システムが画像を形成することのできる記録媒体は、ロール紙に限定されない。すなわち、本発明に係る画像形成システムが画像を形成することのできる記録媒体は、カット紙でもよい。また、本発明に係る画像形成システムを用いて画像を形成することのできる記録媒体には、普通紙、上質紙、薄紙、厚紙、記録紙及びロール紙、並びに、OHPシート、合成樹脂フィルム、金属薄膜及びその他表面にインクやトナー等で画像を形成することができるものを含む。ここで、ロール紙とは、切断可能なミシン目が所定間隔で形成された連続紙(連帳紙、連続帳票)である。また、ロール紙におけるページ(頁)とは、例えば所定間隔のミシン目で挟まれる領域とする。
【0010】
図1に示すように、本実施形態1の画像形成システム100は、ロール紙Mdを搬入する搬入部10と、搬入されたロール紙Mdを前処理する前処理部20とを有する。また、画像形成システム100は、ロール紙Mdの表面に画像を形成する画像形成装置である画像形成部40と、画像が形成されたロール紙Mdを後処理する後処理部50と、後処理されたロール紙Mdを搬出する搬出部60とを有する。また、画像形成システム100は、前処理されたロール紙Mdを乾燥させる前処理用乾燥部30や、後処理されたロール紙Mdを乾燥させる乾燥装置である後処理用乾燥部80も備えている。また、画像形成システム100は、画像形成システム100の動作を制御する制御部70を有する。
【0011】
本実施形態1に係る画像形成システム100は、搬入部10によってロール紙Mdを搬入し、前処理部20及び前処理用乾燥部30によってロール紙Mdの表面を前処理及び乾燥する。また、画像形成システム100は、画像形成部40によって、前処理及び乾燥した後のロール紙Mdの表面に画像を形成する。更に、画像形成システム100は、本実施形態1では、後処理部50及び後処理用乾燥部80によって、画像が形成されたロール紙Mdを後処理及び乾燥する。その後、画像形成システム100は、搬出部60によって、ロール紙Mdを巻き取る。
【0012】
次に、本実施形態1に係る画像形成システム100の各構成を具体的に説明する。
なお、本発明を用いることのできる画像形成システムは、画像が形成される記録媒体の種類に応じて、後述する前処理部20等のいずれか一つ又は複数を含まない構成とすることができる。
【0013】
搬入部10は、記録媒体を前処理部20等に搬送する。搬入部10は、本実施形態1では、給紙部11及び複数の搬送ローラ12等で構成される。搬入部10は、搬送ローラ12等を用いて、給紙部11の給紙ロールに巻き付けて保持されたロール紙Mdを搬入し、後述する前処理部20等へ搬送する。
【0014】
前処理部20は、画像が形成される前の記録媒体を処理する。前処理部20は、本実施形態1では、搬入部10によって搬入されたロール紙Mdの表面を、前処理液で前処理する。本実施形態1の前処理は、ロール紙Md(記録媒体)表面に、インクを凝集させる機能を有する後述の前処理液を均一に塗布する処理である。これにより、画像形成システム100は、インクジェット方式の専用紙又は専用紙以外の記録媒体に画像を形成する場合において、記録媒体に画像を形成する前に、前処理部20を用いてインクを凝集させる機能を有する前処理液を記録媒体表面に付着させることができる。これにより、画像形成システム100は、形成される画像の滲み、濃度、色調及び裏写りなどの品質問題、並びに、耐水性、耐候性及びその他画像堅牢性に関する問題が発生することを低減することができる。したがって、その後形成される画像の品質を向上させることができる。
【0015】
図1に示すように、前処理部20は、ロールコート法を用い、搬入部10によって前処理部20内へ搬入されたロール紙Mdの表面に、貯留している前処理液20Lを塗布する。具体的には、前処理部20は、まず、攪拌ローラ21及び薄膜化ローラ22によって、前処理液20Lを塗布ローラ23の表面に薄膜状に転移させる。塗布ローラ23は、回転するプラテンローラ24に押し付けられながら回転し、塗布ローラ23とプラテンローラ24との間隙にロール紙Mdを搬送することで、ロール紙Mdの表面に前処理液20Lを塗布する。
【0016】
前処理部20は、圧力調整装置25を用いて、前処理液20Lを塗布するときのニップ圧(塗布ローラ23とプラテンローラ24とが接触する位置に作用する圧力)を制御する。また、前処理部20は、塗布ローラ23及びプラテンローラ24の回転速度を制御してもよい。これにより、前処理部20は、塗布ローラ23等の回転速度を変えることができ、圧力調整装置25を用いてニップ圧を変えることと併せて、前処理液20Lの塗布量(膜厚、液量、付着量、乾燥付着量など)を、より高精度に制御することができる。したがって、その後の画像形成及び後処理に適した塗布量で、ロール紙Md(記録媒体)の表面に前処理液20Lを塗布することが可能となる。
【0017】
前処理用乾燥部30は、記録媒体を加熱等により乾燥させる。具体的には、本実施形態1の前処理用乾燥部30は、ヒートローラ31hを例えば40~100℃に加熱し、前処理液を塗布されたロール紙Mdをヒートローラ31hに接触等させながら搬送する。これにより、前処理用乾燥部30は、ロール紙Mdに付着する前処理液の水分を蒸発させ、ロール紙Md(の前処理液)を乾燥させることができる。
【0018】
本実施形態1の前処理用乾燥部30は、乾燥効果を高めるため、図1に示すように、複数のヒートローラ31hを多段に設けることが好ましい。この構成において乾燥強度を弱くする場合は、ヒートローラ温度を低くすればよい。例えば40~80℃程度とする。また、一部のヒートローラを加熱し、その他のヒートローラは加熱しないようにしてもよい。逆に、乾燥強度を強くする場合は、ヒートローラの使用本数を増やしたり、ヒートローラ温度を高くしたりすればよい。このように、ヒートローラの温度および/または使用本数を変更することで乾燥強度を制御することが可能である。
【0019】
なお、前処理用乾燥部30は、ヒートローラによって乾燥させる方法に限定されない。例えば、前処理用乾燥部30は、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、温風乾燥及びその他乾燥方法を用いることができる。また、前処理用乾燥部30は、複数の乾燥方法を組み合わせた乾燥方法を用いてもよい。更に、前処理用乾燥部30は、前処理部20が前処理液を塗布する前に、ロール紙Md(記録媒体)を加熱してもよい(プレヒート工程)。また、前処理用乾燥部30は、後述する後処理用乾燥部80と同様に、記録媒体を乾燥室内の昇温気体によって乾燥させる乾燥装置であってもよい。
【0020】
画像形成部40は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置である。画像形成部40は、本実施形態1では、前処理用乾燥部30によって乾燥されたロール紙Md上にインクを吐出することによって、ロール紙Mdの表面に画像を形成するインクジェット記録方式を採用している。
【0021】
図2(a)は、本実施形態1における画像形成部40を構成する4つの記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yの一例を示す概略平面図である。図2(b)は、ブラック(K)の記録ヘッド部40Kを構成する4つのヘッドユニット40K-1,40K-2,40K-3,40K-4のうちの1つを例示した概略平面図である。
【0022】
画像形成部40は、図2(a)に示すように、ロール紙Mdを挟んで記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yと対向する位置に、吸引保持部46を備えている。吸引保持部46は、吸気孔46bを有する保持面46a上にロール紙Mdを吸引保持する。これにより、記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yから吐出されるインクが着弾するロール紙Mdが吸引保持部46の保持面46aから浮くことが抑制され、高品質な画像の形成が可能となる。
【0023】
画像形成部40は、フルライン型の記録ヘッド部を用いることができる。本実施形態1の画像形成部40では、記録媒体の搬送方向Xmの上流側からブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)に対応する4つの記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yが配置されている。
【0024】
ブラック(K)の記録ヘッド部40Kは、ロール紙Mdの搬送方向Xmと直交する方向に4つのヘッドユニット40K-1,40K-2,40K-3,40K-4を千鳥状に配置している。これにより、画像形成部40は、ロール紙Md(記録媒体)の画像形成領域(印刷領域)の幅方向(搬送方向と直交する方向)の全域に画像を形成することができる。
【0025】
図2(b)に示すように、ヘッドユニット40K-1は、ノズル面(後述の図3(a)に示すノズル板43の外表面)に、複数の吐出口であるノズル40nを備える。ここで、複数のノズル40nは、ヘッドユニット40K-1の長手方向に沿って一列に配置され、ノズル列を構成している。なお、ヘッドユニット40K-1は、複数のノズル列を備えてもよい。
【0026】
図3(a)は、ヘッドユニット40K-1の一部を、液室40fの長手方向に沿って切断したときの概略断面図である。図3(b)は、ヘッドユニット40K-1の一部を、図3(a)のSC1に示す断面、すなわち、液室40fの長手方向に直交する方向(ノズルの並び方向)に沿って切断したときの概略断面図である。
【0027】
図3(a)に示すように、ヘッドユニット40K-1は、吐出するインクの流路を形成する流路板41と、流路板41の図中下面(ヘッドユニットの内部方向)に接合された振動板42と、流路板41の図中上面(ヘッドユニットの外部方向)に接合されたノズル板43と、振動板42の周縁部を保持するフレーム部材44とを備える。また、ヘッドユニット40K-1は、振動板42を変形させるための圧力発生部45を有する。
【0028】
本実施形態1のヘッドユニット40K-1は、流路板41と、振動板42と、ノズル板43とを積層することによって、ノズル40nに連通する流路であるノズル連通路40r及び液室40fが形成される。また、ヘッドユニット40K-1は、フレーム部材44を更に積層することによって、液室40fにインクを供給するためのインク流入口40sと、インクを液室40fに供給する共通液室40cと、圧力発生部45を収納する収容部と、共通液室40cにヘッドユニット外部からインクを供給するためのインク供給口40iなどが形成される。
【0029】
また、ヘッドユニット40K-1は、圧力発生部45を用いて、振動板42を変形(撓み変形)させることができる。これにより、ヘッドユニット40K-1は、液室40fの容積(体積)を変化させ、液室40f内のインクに作用する圧力を変化させることができる。この結果、ヘッドユニット40K-1は、ノズル40nからインクを吐出することができる。
【0030】
圧力発生部45は、電気機械変換素子を用いることができる。圧力発生部45は、本実施形態1では、電気機械変換素子である圧電素子45pと、圧電素子45pを接合固定するベース基板45bと、隣り合う圧電素子45pの間隙に配置された支柱部とを備えている。また、圧力発生部45は、圧電素子45pを駆動回路(駆動IC)に接続するためのFPCケーブル45c等を備えている。
【0031】
圧電素子45pは、図3(b)に示すように、圧電材料45ppと内部電極45peとを交互に積層した積層型圧電素子(PZT)を用いることができる。内部電極45peは、複数の個別電極45peiと複数の共通電極45pecとからなる。内部電極45peは、本実施形態1では、圧電材料45ppの端面に交互に個別電極45pei又は共通電極45pecを接続している。
【0032】
また、圧電素子45pは、実施形態1では、圧電材料45ppの圧電方向として、d33方向を用いる。これにより、圧力発生部45は、圧電素子45pの圧電効果(d33方向の変位)を用いて、液室40f内のインクを加圧又は減圧することができる。なお、圧力発生部45は、圧電素子45pのd31方向の変位を用いて、液室40f内のインクを加圧又は減圧してもよい。また、圧力発生部45は、1つのノズル40nに対して1列の圧電素子を配置してもよい。なお、支柱部は、圧電素子部材(圧電素子45p)を分割することで、圧電素子45pと同時に形成してもよい。すなわち、ヘッドユニット40K-1は、圧電素子に電圧を印加しないことによって、圧電素子部材を支柱部として用いることができる。
【0033】
以下に、ノズル40nからインクを吐出する動作(引き-押し打ち動作)を具体的に説明する。
ヘッドユニット40K-1は、まず、圧電素子45p(圧力発生部45)に印加される電圧を基準電位から下げ、圧電素子45pをその積層方向に縮小させ、振動板42を撓み変形させる。これにより、液室40fの容積(体積)が拡大(膨張)し、共通液室40cから液室40f内にインクが流入する。次に、ヘッドユニット40K-1は、圧電素子45pに印加される電圧を上げ、圧電素子45pを積層方向に伸長させる。これにより、振動板42をノズル40n方向に変形させ、液室40fの容積(体積)を縮小(収縮)させる。その結果、液室40f内のインクに圧力が付加され、ノズル40nからインクが吐出(噴射)される。その後、圧電素子45pに印加される電圧を基準電位に戻し、振動板42を初期位置に戻す(復元する)。このときの液室40fの膨張によって液室40f内が減圧され、共通液室40c内から液室40f内にインクが充填(補充)される。次いで、ノズル40nのメニスカス面の振動が減衰(安定)した後、次のインクの吐出のための動作に移行し、前記の動作を繰り返す。
【0034】
ヘッドユニット40K-1の駆動方法は、上述した例(引き-押し打ち)に限定されるものではない。すなわち、記録ヘッド部の駆動方法は、圧電素子45pに印加する電圧(駆動波形)を制御することによって、引き打ち又は押し打ち等を行うことができる。
また、圧力発生部45は、前記の例(圧電素子45p)に限定されるものではない。すなわち、圧力発生部45は、発熱抵抗体を用いて液室40f内のインクを加熱して気泡を発生させる方法(いわゆるサーマル型)のもの(例えば特開昭61-59911号公報参照)を用いてもよい。また、圧力発生部45は、液室40fの壁面に振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させた静電力によって振動板を変形させる方法(いわゆる静電型)のもの(例えば特開平6-71882号公報参照)を用いてもよい。
【0035】
なお、他のヘッドユニット40K-2,40K-3,40K-4の構成及び動作は、上述のヘッドユニット40K-1と同様であるため、説明を省略する。
また、他の記録ヘッド部40C,40M,40Yの構成及び動作は、ブラック(K)の記録ヘッド部40Kの構成と同様のため、説明を省略する。
【0036】
以上により、本実施形態1の画像形成システム100は、画像形成部40(4つの記録ヘッド部40K,40C,40M,40Y)を用いて、1回の記録媒体(ロール紙Md)の搬送動作で、画像形成領域の全域に白黒又はフルカラーの画像を形成することができる。
【0037】
後処理部50は、画像が形成された後の記録媒体を処理する。後処理部50は、本実施形態1では、画像形成部40によって画像を形成されたロール紙Mdの表面を、後処理液で後処理する。本実施形態1の後処理とは、ロール紙Md(記録媒体)上に後処理液を付与(吐出)する処理である。後処理液は、斑点形状や縞形状等の形状で形成される。これにより、画像が形成された記録媒体は、耐擦過性及び光沢度、並びに、保存安定性(耐水性、耐光性、耐ガス性など)等を向上させることができる。
【0038】
後処理液は、少なくとも記録媒体の画像を形成された部分(インクの付着部分)において、当該部分の面積よりも小さい面積で付着していればよく、画像が形成されていない部分については、付着していても付着していなくてもよい。
また、後処理方法として、ロール紙Mdの画像が形成された部分に後処理液を付着(堆積)させることが好ましい。後処理部50は、記録媒体の種類、浸透性、光沢度及び/若しくは解像度、並びに/又は、前処理部20が塗布した前処理液の付着量(液量)に基づいて、後処理液の吐出量(付着量)及び吐出方法を変えることが更に好ましい。
【0039】
また、本実施形態1の後処理部50は、画像形成部40と同様の記録ヘッド部を利用して、目標とする箇所に、所望の吐出量(所望の斑点形状又は所望の縞形状)で、後処理液を吐出することができる。具体的には、後処理部50は、ロール紙Mdの(1)画像を形成することが可能な範囲の全領域に吐出すること;(2)画像が形成された領域に吐出すること;(3)画像形成部分(ドット吐出部分)の領域のみに吐出すること;等を選択することができる。また、後処理部50は、(4)ロール紙Md(記録媒体)の画像形成部分より広い領域(画像形成部分の外縁に対して、+1ドット又は2ドット以上など)に吐出することを選択することができる。更に、後処理部50は、選択した後処理液を吐出する領域に対して、n%の領域(斑点形状又は縞形状)に後処理液を吐出することができる。ここで、n%は、5~50%とすることができる。また、n%は、実験又は数値計算等で予め定められる値をすることができる。
【0040】
また、本実施形態1に係る後処理部50は、後処理液を吐出する方法として、(1)印字Dutyに基づいて吐出する、(2)吐出する後処理液の液滴量に基づいて吐出する、などを選択することができる。このとき、後処理部50は、入力された情報(印刷画像データなど)から印字Dutyや後処理液の液滴量を算出し、算出した印字Duty等に基づいて吐出する方法を決定してもよい。これにより、本実施形態1の画像形成システム100によれば、記録媒体の全面に後処理液を塗布(吐出)する場合と比較して、後処理部50を用いて、画像が形成された領域の特定の部分のみに後処理液を堆積(吐出)することができる。その結果、後処理に要する時間、特に後処理液の乾燥に要する時間を短縮することができる。また、後処理に要する後処理液の液量を低減することができ、後処理に要するコストを低減することができる。
【0041】
なお、後処理部50の後処理方法は、特に制限はなく、後処理液の種類に応じて適宜選択してもよい。後処理部50の後処理方法は、装置の小型化及び後処理液の保存安定性の観点から、画像形成部40のインクを吐出する方法と同様の方法を用いることがより好ましい。したがって、後処理部50の構成は、画像形成部40の記録ヘッド部と同様に、ノズル面に複数のノズル40nを備えた液体吐出ヘッドを用いるのが好ましい。
【0042】
後処理液を吐出させる場合、画像形成部40のインクを吐出する方法で使用されている水溶性有機溶剤(湿潤剤)を適当量含有することが好ましい。また、後処理部50は、後処理液の乾燥後付着量が0.5g/m~10g/mとすることが好ましい。また、後処理液としては、ロール紙Md(記録媒体)上に透明な保護層を形成し得る成分を含有する処理液を用いることができる。透明な保護層を形成し得る成分を含有する処理液とは、例えば、水分散性樹脂(樹脂)、水溶性有機溶剤(湿潤剤)、浸透剤、界面活性剤、水及び/又は必要に応じてその他の成分を含有してなる処理液である。また、後処理液は、紫外線照射によって高分子化する成分を含む樹脂組成物及び/又は熱可塑性樹脂であっても良い。更に、後処理液は、光沢性・定着性向上のために、熱可塑性樹脂エマルジョンであることが好ましい。これにより、後処理部50は、吐出(付与)する方法に応じて、画像が形成されたロール紙Mdの表面の光沢性を増加させること、又は、ロール紙Mdの表面を樹脂層で保護することができる。
【0043】
本実施形態1のように後処理部50を用いることにより、画像が形成されたロール紙Mdの表面が他の物体(例えばロール紙)と擦れることによって記録媒体上の画像(インク)が剥離(剥奪)することを防止し、すなわち、耐擦過性(耐擦性)を向上することができる。さらに、形成される画像の滲み、濃度、色調、光沢及び裏写りなどの品質問題、並びに、耐水性、耐候性及びその他画像堅牢性に関する問題が発生することを低減することができる。
【0044】
後処理用乾燥部80は、記録媒体を乾燥室内の昇温気体によって乾燥させる乾燥装置である。すなわち、後処理用乾燥部80は、ロール紙Mdに付着する後処理液の水分を蒸発させ、ロール紙Md(の前処理液)を乾燥させることができる。後処理用乾燥部80は、後処理部50を備えていない画像形成システム100では、画像形成部40によって記録媒体上に付着したインクを乾燥させるために用いられてもよい。後処理用乾燥部80の詳細については後述する。
【0045】
搬出部60は、画像が形成等された記録媒体を搬出(排出)する。図1に示すように、搬出部60は、保管部61及び複数の搬送ローラ62等で構成される。搬出部60は、搬送ローラ62等を用いて、保管部61の保管ロールに画像が形成されたロール紙Mdを巻き付けて、保管する。なお、ロール紙Mdを保管部61の保管ロールに巻き付けるときに、ロール紙Mdに作用する圧力が大きくなる場合には、ロール紙Mdの裏面に他の画像が転写することを防止するため、巻き取り直前にロール紙Mdを更に乾燥する乾燥部を設けてもよい。この乾燥部も、後処理用乾燥部80と同様に、記録媒体を乾燥室内の昇温気体によって乾燥させる乾燥装置であってもよい。
【0046】
次に、本発明の特徴部分である後処理用乾燥部80の構成及び動作について説明する。
図4は、本実施形態1における後処理用乾燥部80及び画像形成部40の概略構成を示す説明図である。
図5は、画像形成部40の吸引保持部46から後処理用乾燥部80の乾燥室81までの空気の流れと温度変化の概要を示すグラフである。
なお、ロール紙Mdの搬送方向Xmにおいて、画像形成部40と後処理用乾燥部80との間には後処理部50が存在するが、後処理用乾燥部80の乾燥構成に関わらないため、図4では図示を省略してある。
【0047】
後処理用乾燥部80は、加熱室83内の空気を加熱ヒータ84によって目標温度まで加熱し、その加熱空気(昇温気体)を乾燥室81へ送り込んで、乾燥室81内のロール紙Mdを乾燥させる。目標温度(既定の温度)は、例えば、60℃以上180℃以下の範囲内であるのが好ましく、60℃以上80℃以下の範囲内であるのがより好ましい。なお、本実施形態1では、乾燥室81内にも調整用ヒータ82が設けられ、乾燥に必要な温度の調整が可能になっている。後処理用乾燥部80には、加熱室83内の空気を乾燥室81の入口81aから乾燥室81の内部へと送り込むための送風ファン85が設けられている。送風ファン85によって乾燥室81内に送り込まれた空気は、ロール紙Mdへと吹き付けられる。
【0048】
従来の乾燥装置は、乾燥室内に外気(乾燥装置の外気あるいは乾燥装置を含む画像形成システムの外気)を取り込み、その外気を乾燥室内のヒータによって加熱することにより、記録媒体を乾燥させるために必要な温度まで昇温された昇温気体を得ていた。そのため、外気の温度が低いと、昇温気体として必要な温度まで昇温させるためにヒータが消費するエネルギー量が多くなる。そこで、本実施形態1においては、画像形成部40から排出される高温気体(外気よりも高温の気体)、具体的には画像形成部40の吸引保持部46における吸引室46cから排出される高温気体を乾燥室81へ送り込み、加熱室83の加熱ヒータ84や乾燥室81の調整用ヒータ82で消費されるエネルギー量を抑制する。
【0049】
本実施形態1において、画像形成部40に設けられる吸引保持部46は、記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yから吐出されるインクが着弾するロール紙Mdの位置がずれないように(吸引保持部46の保持面46aから浮かないように)、ロール紙Mdを吸引保持する。この吸引保持部46の吸引室46cは、図4に示すように、ダクト48を介して後処理用乾燥部80に設けられる加熱室83に接続されている。加熱室83は、加熱ヒータ84によって内部の空気を目標温度まで加熱する。加熱室83は、ダクト86を介して乾燥室81に連通している。ダクト86には送風ファン85が設けられており、送風ファン85が加熱室83内の空気(目標温度まで加熱された空気)を吸い出し、吸い出した空気を乾燥室81内へ送り込む。
【0050】
送風ファン85が加熱室83の内部の空気を吸い出すことで、加熱室83内は負圧状態になる。そのため、加熱室83にダクト48を介して連通している吸引保持部46の吸引室46c内の空気は、ダクト48から加熱室83へと吸い出される。これにより、吸引室46c内が負圧となるため、吸引保持部46の保持面46aに形成されている吸気孔46bには外部空気を吸引室46c内へ吸い込む吸い込み気流が発生する。この吸い込み気流によりロール紙Mdが保持面46a上に吸引保持される。
【0051】
本実施形態1の吸引保持部46は、図4に示すように、保持面46aの内面側(吸引室46cの内部)にロール紙ヒータ47を備えている。このロール紙ヒータ47によって吸引保持部46の保持面46aが加熱され、この保持面46aに吸引保持されるロール紙Mdが加熱される。このようなロール紙ヒータ47が設けられているため、吸引室46c内の空気は加熱され、図5に示すように、外気よりも高温となる。
【0052】
本実施形態1においては、この吸引室46c内の加熱された空気(外気よりも高温の気体)がダクト48を通じて、後処理用乾燥部80の加熱室83へと送り込まれる。そのため、後処理用乾燥部80における加熱室83の加熱ヒータ84や乾燥室81の調整用ヒータ82で消費されるエネルギー量を、乾燥室81へ外気を送り込む場合よりも少なくできる。
【0053】
従来、吸引保持部46内の高温空気は、画像形成部40の温度上昇を抑制するため、排気ダクトを通じて機外に排気されていた。本実施形態1は、これまで機外に排気されていた吸引室46c内の高温気体を利用し、この高温気体を乾燥室81へ送り込むことで、乾燥室81内の気体を必要な温度まで昇温させるのに必要な消費エネルギーを少なく抑えるものである。
【0054】
なお、本実施形態1では、画像形成部40の吸引保持部46から送られてくる高温気体をそのまま乾燥室81に送り込むのではなく、図4に示すように、その途中の加熱室83の内部で加熱ヒータ84により加熱する。これにより、乾燥室81には、より高温の空気を送り込むことができ、後処理用乾燥部80による乾燥機能を向上させることができる。ただし、画像形成部40の吸引保持部46から送られてくる高温気体が十分に高い温度であれば、加熱室83を設けず、画像形成部40の吸引保持部46から送られてくる高温気体をそのまま乾燥室81に送り込んでもよい。
【0055】
後処理用乾燥部80における加熱ヒータ84や調整用ヒータ82としては、例えば、ガス式、ニクロム線ヒータ又はセラミックヒータなどを用いることができる。
【0056】
〔実施形態2〕
次に、本発明に係る乾燥装置を含む画像形成システムの他の例(以下、本例を「実施形態2」という。)について、図面を参照して説明する。
図6は、本実施形態2の画像形成システム100の外観を示す斜視図である。本実施形態2の画像形成システム100は、いわゆるインクジェット方式の画像形成装置によって構成されている。本実施形態2の画像形成システム100は、1つの装置(画像形成装置)として構成され、上述した実施形態1における前処理部20や後処理部50に相当する機能は備わっていない。
【0057】
本画像形成システム100の内部には、両側板にガイドロッド3a及び副ガイドレール3bが掛け渡されている。これらのガイドロッド3a及び副ガイドレール3bには、キャリッジ5が矢印A方向(主走査方向)に移動可能に保持されている。キャリッジ5は、駆動プーリ4aと加圧プーリ4bとに掛け渡されたタイミングベルト4cが接続されている。このタイミングベルト4cが、主走査モータ4dにより、駆動プーリ4aを介して駆動されることで、キャリッジ5が、主走査方向Aに沿って往復移動する。タイミングベルト4cには、加圧プーリ4bによって張力が付加されている。このため、弛みを発生することなくキャリッジ5が駆動される。
【0058】
図7は、本実施形態2の画像形成システム100におけるキャリッジ走査機構の平面図である。
図7において、ロール紙Mdは、キャリッジ5が往復移動する下部を、矢印B方向(副走査方向)に沿って間欠的に搬送される。記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yは、複数のノズルからロール紙Mdに対してインクを吐出する。これにより、ロール紙Md上に、所定の画像又は文字等が印刷される。また、インクは、液体の一例である。一例であるが、インクとしては、例えば水性インク、UV(紫外線)硬化型インク、電子線硬化型インク又はソルベントインク等を用いることができる。
【0059】
また、画像形成システム100には、記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yの維持メンテナンスを実行する維持機構6と、記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yにインクを供給するカートリッジ7と、が設けられている。キャリッジ5内にはエンコーダセンサ5aが設けられている。エンコーダセンサ5aは、両側板に掛け渡されたエンコーダシート5bを連続的に読み取ることで、キャリッジ5の主走査方向位置を検知する。キャリッジ5は、エンコーダセンサ5aで検知された主走査方向位置に基づいて、2つの側板間の移動が制御される。また、キャリッジ5には、キャリッジ5と共に移動する撮像ユニット5cが設けられている。この撮像ユニット5cで基準チャートの色パッチを読み取り、紙種類毎の測色処理を実行する。
【0060】
図8は、本画像形成システム100の内部構成を示す概略説明図である。
本実施形態2の画像形成システム100では、搬入部10によって送り出されるロール紙Mdの表面に、画像形成部40によって画像を形成する。画像形成部40では、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yにより、吸引保持部46の保持面46a上に吸引保持されたロール紙Mdへの印字が行われる。その後、印字後乾燥部80'によって、画像が形成されたロール紙Mdを乾燥した後、搬出部60によってロール紙Mdを巻き取る。
【0061】
本実施形態2における印字後乾燥部80'の構成は、図4に示した上述した実施形態1の後処理用乾燥部80と同様の構成が採用される。したがって、本実施形態2においても、これまで機外に排気されていた吸引保持部46の吸引室内の高温気体を利用し、この高温気体を印字後乾燥部80'の乾燥室へ送り込むことで、乾燥室内の気体を必要な温度まで昇温させるのに必要な消費エネルギーを少なく抑えることができる。
【0062】
〔変形例1〕
次に、実施形態1及び実施形態2における画像形成システム100の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。なお、本変形例1では、上述した実施形態1の画像形成システム100の変形例として説明するが、実施形態2の画像形成システム100の変形例としても同様に適用可能である。
【0063】
画像形成システム100の印刷動作が完了すると、ロール紙Mdの搬送が停止し、このときに乾燥室81内に存在するロール紙Mdが乾燥室81内に留まることになる。そのため、印刷動作の完了後も乾燥室81内の温度が高いままだと、当該ロール紙Mdが高温に長時間晒され、当該ロール紙Mdに熱ダメージ(変形等)を引き起こす。そこで、本変形例1では、印刷動作が完了した後に乾燥室81内の温度を速やかに冷却できる構成を採用する。
【0064】
図9は、本変形例1における画像形成システム100の後処理用乾燥部80及び画像形成部40の概略構成を示す説明図である。
本変形例1における画像形成システム100の基本構成は、上述した実施形態1のものと同様であるが、本変形例1では、図9に示すように、後処理用乾燥部80のダクト86の気流方向上流側が2つに分岐している。
【0065】
ダクト86における一方の上流側分岐路86Aは、上述した実施形態1と同じく、加熱室83に連通しており、他方の上流側分岐路86Bは、外気を取り込む外気ダクト88に連通している。ダクト86の分岐部分には、流路切替部87が設けられている。流路切替部87は、制御部70による制御の下、ダクト86の気流方向下流側に接続されている乾燥室81を、一方の上流側分岐路86Aを介して加熱室83に連通させるか、他方の上流側分岐路86Bを介して外気ダクト88に連通させるかを切り替える。
【0066】
制御部70は、流路切替部87を制御して、印刷動作中は、ダクト86の気流方向下流側に接続されている乾燥室81を、一方の上流側分岐路86Aを介して加熱室83に連通させる。これにより、印刷動作中は、画像形成部40の吸引保持部46における吸引室46c内の高温気体が加熱室83に送り込まれ、加熱室83で更に加熱された気体がダクト86から乾燥室81へと送られる。そのため、上述した実施形態1と同様、消費エネルギーの抑制を果たすことができる。
【0067】
一方、印刷動作が完了したら、制御部70は、ロール紙Mdの搬送を停止するとともに、流路切替部87を制御して、ダクト86の気流方向下流側に接続されている乾燥室81を、他方の上流側分岐路86Bを介して外気ダクト88に連通させる。これにより、印刷動作の完了後は、外気ダクト88から取り込まれた外気がダクト86から乾燥室81へと送られる。これにより、乾燥室81の内部が速やかに冷却され、乾燥室81内に留まるロール紙Mdの熱ダメージ(変形等)を抑制することができる。
【0068】
〔変形例2〕
次に、実施形態1及び実施形態2における画像形成システム100の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。なお、本変形例2についても、上述した実施形態1の画像形成システム100の変形例として説明するが、実施形態2の画像形成システム100の変形例としても同様に適用可能である。
図10は、本変形例2における画像形成システム100の後処理用乾燥部80及び画像形成部40の概略構成を示す説明図である。
【0069】
本変形例2では、画像形成部40には、記録ヘッド部40K,40C,40M,40Yを取り囲む画像形成室としての印刷室49を備えている。印刷室49は内部に温風ファン49aを備え、温風ファン49aからの温風をロール紙Mdに吹き付けることによりロール紙Mdを加熱する。そのため、印刷室49内は温風ファン49aの温風によって高温になる。よって、この印刷室49内の空気も、吸引保持部46の吸引室46c内の空気と同様に、外気よりも高温であり、後処理用乾燥部80の乾燥室81へ送り込むことで消費エネルギーの抑制に寄与し得る。
【0070】
そこで、本変形例2における画像形成システムでは、画像形成部40における印刷室49の空気と吸引室46cの空気のうち、より高温である空気を後処理用乾燥部80の乾燥室81へ送り込むことにより、消費エネルギーの更なる抑制を果たす。
【0071】
本変形例2における画像形成システム100の基本構成は、上述した実施形態1のものと同様であるが、本変形例2では、図10に示すように、後処理用乾燥部80の加熱室83の入口側に接続されるダクト48の気流方向上流側が2つに分岐している。
【0072】
ダクト48における一方の上流側分岐路48Aは、上述した実施形態1と同じく、吸引保持部46の吸引室46cに連通しており、他方の上流側分岐路48Bは、印刷室49に連通している。ダクト48の分岐部分には、流路切替部87が設けられている。流路切替部87は、制御部70による制御の下、ダクト48の気流方向下流側に接続されている加熱室83を、一方の上流側分岐路48Aを介して吸引室46cに連通させるか、他方の上流側分岐路48Bを介して印刷室49に連通させるかを切り替える。
【0073】
また、本変形例2における画像形成システムには、印刷室49内の温度を検知する第一温度センサとしての印刷室温度センサ49bと、吸引保持部46の吸引室46c内の温度を検知する第二温度センサとしての吸引室温度センサ46dとが備わっている。これらの温度センサ49c,46dの温度検知結果は、制御部70へと送られる。制御部70は、印刷動作中、これらの温度センサ49c,46dの温度検知結果を比較する。そして、例えば、現在の接続先の温度(例えば印刷室49の温度)よりも他方の温度(例えば吸引室46cの温度)が所定温度以上高くなったという切替条件が満たされたとき、流路切替部87を制御して、流路を切り替える。なお、流路切替部87によって印刷室49に連通する他方の上流側分岐路48Bに切り替わった場合、制御部70は、吸引室46cの負圧を維持するために、図10に示すように、吸引ファン48aを稼働させ、ダクト48Cから吸引室46cの空気を吸い出すようにする。
【0074】
本変形例2によれば、吸引室46cの空気と印刷室49の空気のうち、より高温の空気を後処理用乾燥部80の加熱室83へ送り込むことができるので、後処理用乾燥部80での消費エネルギーを更に抑制することができる。
【0075】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、既定の温度(目標温度)に保たれた気体で被乾燥媒体(例えばロール紙Md)の乾燥を行う乾燥室81を具備し、吸気孔46bと吸引室46cを備えた吸引保持部46で被乾燥媒体を吸引保持するときに吸引した気体で前記乾燥室の乾燥を行うことを特徴とするものである。
従来の乾燥装置は、取り込んだ外気をヒータによって加熱することにより、被乾燥媒体を乾燥させるために必要な既定の温度まで昇温された気体(温風)を得る。そのため、外気の温度が低いと、温風として必要な既定の温度まで昇温させるために消費するエネルギー量が多くなる。
そこで、本態様では、吸気孔と吸引室を備えた吸引保持部で被乾燥媒体を吸引保持するときに吸引した気体を乾燥室に取り込み、この気体を用いて乾燥室での乾燥を行う構成を採用する。吸引保持部は、通常、外気よりも高温である媒体搬送路内の気体を吸引するため、吸引保持部が吸引して吸引保持部から排出される気体は外気よりも高温である場合が多い。また、吸引保持部には、被乾燥媒体を加熱するためのヒータが設けられる場合もある。そのため、吸引保持部から排出される気体は、従来、画像形成装置の機内温度上昇を抑制するために、排気ダクトを通じて画像形成装置の機外に排気されることが多い。本態様によれば、これまで機外に排気されていた吸引保持部の高温気体を乾燥室に取り込むため、取り込んだ気体を被乾燥媒体の乾燥に必要な既定の温度まで昇温させるのに必要なヒータによる消費エネルギーを少なく抑えることができる。あるいは、吸引保持部の高温気体が被乾燥媒体の乾燥に必要な既定の温度に達していれば、ヒータを省略した乾燥装置を実現することも可能であり、更なる消費エネルギーの抑制も可能である。
【0076】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記乾燥室は、前記吸引室から排出された気体を取り込む入口81aを有することを特徴とするものである。
これによれば、前記吸引室から排出された高温気体を乾燥室に取り込むことができる。
【0077】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記吸引室から排出された気体を加熱する加熱部(例えば加熱ヒータ84、調整用ヒータ82)を有することを特徴とするものである。
これによれば、より高温の気体によって被乾燥媒体を乾燥させることができる。
【0078】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記加熱部(例えば加熱ヒータ84)は、前記乾燥室に取り込まれる前の気体を加熱することを特徴とするものである。
これによれば、加熱済みの気体を乾燥室に送り込むことができるので、乾燥室内の温度ムラが少なく、記録媒体に対する均一な乾燥処理を実現できる。
【0079】
[第5態様]
第5態様は、第3又は第4態様において、前記加熱部は、ガス式、ニクロム線ヒータ又はセラミックヒータを用いて加熱することを特徴とするものである。
これによれば、記録媒体に対する適切な乾燥処理を実現できる。
【0080】
[第6態様]
第6態様は、第3乃至第5態様のいずれかにおいて、前記加熱部による加熱後の気体の温度は、60℃以上80℃以下の範囲内であることを特徴とするものである。
これによれば、記録媒体に対する適切な乾燥処理を実現できる。
【0081】
[第7態様]
第7態様は、記録媒体(例えばロール紙Md)に画像を形成する画像形成装置(例えば画像形成部40)と、前記記録媒体の乾燥を行う乾燥室81を具備した乾燥装置(例えば後処理用乾燥部80)とを含む画像形成システム100であって、前記乾燥装置として、第1乃至第6態様のいずれかを用いることを特徴とするものである。
これによれば、消費エネルギーが抑制された画像形成システムを実現することができる。
【0082】
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記乾燥装置における前記乾燥室は、前記画像形成装置が記録媒体に画像を形成する画像形成室(例えば印刷室49)から排出される気体を取り込む入口81aを備え、前記画像形成室内の温度を検知する第一温度センサ(例えば印刷室温度センサ49b)と、前記吸引室内の温度を検知する第二温度センサ(例えば吸引室温度センサ46d)と、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサの検知結果に基づき、前記乾燥室へ取り込む気体を、前記画像形成室及び前記吸引室のうちの温度の高い方から排出される気体に切り替える切替手段(例えば制御部70及び流路切替部87)とを有することを特徴とするものである。
これによれば、より高温の空気を乾燥室へ送り込むことができるので、乾燥装置での消費エネルギーを更に抑制することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 :搬入部
20 :前処理部
30 :前処理用乾燥部
40 :画像形成部
46 :吸引保持部
46a :保持面
46b :吸気孔
46c :吸引室
46d :吸引室温度センサ
47 :ロール紙ヒータ
48 :ダクト
48A :上流側分岐路
48B :上流側分岐路
48C :ダクト
48a :吸引ファン
49 :印刷室
49a :温風ファン
49b :印刷室温度センサ
49c :温度センサ
50 :後処理部
60 :搬出部
70 :制御部
80 :後処理用乾燥部
81 :乾燥室
81a :入口
82 :調整用ヒータ
83 :加熱室
84 :加熱ヒータ
85 :送風ファン
86 :ダクト
86A :上流側分岐路
86B :上流側分岐路
87 :流路切替部
88 :外気ダクト
100 :画像形成システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2014-14981号公報
図1
図2
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図4
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図7
図8
図9
図10