(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068550
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230510BHJP
G03G 15/22 20060101ALI20230510BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20230510BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20230510BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230510BHJP
B29C 64/205 20170101ALI20230510BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20230510BHJP
B29C 64/223 20170101ALI20230510BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230510BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B41J2/01 123
G03G15/22 103A
G03G15/20 505
B41J2/01 125
B41J2/01 129
B29C64/112
B29C64/106
B29C64/205
B29C64/209
B29C64/223
B33Y30/00
G03G9/08 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021179749
(22)【出願日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】河崎 明博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博秋
【テーマコード(参考)】
2C056
2H033
2H078
2H500
4F213
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056EA30
2C056EE17
2C056FD01
2C056FD13
2C056FD20
2C056HA42
2C056HA46
2H033AA49
2H033BB01
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2H078AA27
2H078AA40
2H078BB01
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2H078FF60
2H500AA14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
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4F213WL34
4F213WL43
4F213WL52
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL76
(57)【要約】
【課題】十分な高さと強度を有する凹凸画像を簡単に形成可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置は、基材としての用紙P上に接着剤としての粘着剤ADによる潜像を形成する潜像形成手段と、不溶解性物質としての耐熱性粒子Gaを内包した粒子Gを潜像に付着させて凹凸画像として顕像化する顕像化手段とを有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に接着剤による潜像を形成する潜像形成手段と、不溶解性物質を内包した粒子を前記潜像に付着させて凹凸画像として顕像化する顕像化手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基材の搬送路に沿って2以上の前記潜像形成手段と前記顕像化手段を交互に配置し、前記粒子を二層以上に積層した前記凹凸画像を形成可能にしたことを特徴とする請求項1の画像形成装置。
【請求項3】
電子写真方式又はインクジェット方式による画像形成手段を有し、当該画像形成手段によって前記基材上に形成した下画像の上に、前記潜像形成手段と前記顕像化手段によって前記凹凸画像を上画像として形成するようにしたことを特徴とする請求項1又は2の画像形成装置。
【請求項4】
電子写真方式又はインクジェット方式による画像形成手段を有し、前記潜像形成手段と前記顕像化手段によって前記基材上に形成した前記凹凸画像による下画像の上に、前記画像形成手段によって上画像を形成するようにしたことを特徴とする請求項1又は2の画像形成装置。
【請求項5】
前記下画像と前記上画像を前記基材上に加熱定着する加熱定着手段を有し、前記不溶解性物質が定着温度以上の耐熱温度を有することを特徴とする請求項3又は4の画像形成装置。
【請求項6】
前記凹凸画像にUV光を照射するUV光照射手段を有し、前記接着剤に添加したUV硬化剤を前記UV光照射手段で硬化させることにより前記下画像と前記上画像を前記基材上に定着することを特徴とする請求項3又は4の画像形成装置。
【請求項7】
前記不溶解性物質の周囲が、色材入りのコート層で被覆されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項8】
前記不溶解性物質が磁性粒子を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項9】
前記顕像化手段が、前記不溶解性物質を内包した粒子を貯留する粒子槽と、当該粒子槽の底部に回転可能に配設された粒子担持体とを有し、当該粒子担持体は表面が弾性層で被覆された磁石体を有することを特徴とする請求項8の画像形成装置。
【請求項10】
前記不溶解性物質が無色透明であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項11】
前記不溶解性物質の周囲が、色材を含まない無色透明の樹脂で被覆されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項12】
前記接着剤が、100℃以上の熱で硬化する物質を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項13】
前記接着剤が、100℃以上の熱で発泡しつつ硬化する物質を含むことを特徴とする請求項11の画像形成装置。
【請求項14】
前記接着剤が離型剤を含むことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項15】
インクジェット方式で前記基材上にコート剤を塗布するインクジェット手段を有し、前記コート剤によって前記不溶解性物質を内包した粒子を前記基材上に付着させることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項の画像形成装置。
【請求項16】
前記不溶解性物質を内包した粒子の径が、20μm~500μmであることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不溶解性物質を内包した粒子を基材上に付着させて凹凸画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の電子写真方式の画像形成装置は使用するトナーの粒径が極小(数μm)であるため、点字のように数百μmの高さを有する凹凸画像(ドット)を形成することは困難である。そこで、トナーに発泡剤を添加し、この発泡剤を定着器で発泡させることによってサブmm程度の高さを有する凹凸画像(ドット)を形成することが提案されている(特許文献1:特許第4356714号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置は、発泡剤、定着圧および定着温度をバランスよく設定することが難しい。また、ドット内に空洞ができるためドットの強度を確保するのが難しく、ドット内のトナー密度も減少するので耐摩耗性を確保するのも難しいという課題があった。
【0004】
一方、ドットの高さと強度を満足するために不溶解性物質を核とする粒子で凹凸画像(ドット)を形成する技術も提案されている(特許文献2:特開2009-075400)。しかし、当該技術は使用する粒子径が小さく、サブmm程度の高さの凹凸画像(ドット)を形成するには数十層もトナー層を積層する必要があった。トナー層が多層になると凹凸画像(ドット)の十分な強度を得ることも難しかった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、十分な高さと強度を有する凹凸画像を簡単に形成可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、基材上に接着剤による潜像を形成する潜像形成手段と、不溶解性物質を内包した粒子を前記潜像に付着させて凹凸画像として顕像化する顕像化手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な高さと強度を有する凹凸画像を簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図1C】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】用紙上に複数の粒子層を形成する工程を示す図である。
【
図3】用紙上の粒子層を安定化する工程を示す図である。
【
図4A】用紙上の粒子層を固定する工程を示す図である。
【
図4B】用紙上の粒子層を固定する工程を示す図である。
【
図10】UV定着器を有する画像形成装置の概略構成図である。
【
図11A】電子写真方式の画像形成手段の概略構成図である。
【
図11B】プロセスユニットを示す拡大構成図である。
【
図11C】電子写真方式の画像形成手段に
図1Aの画像形成装置を組込んだハイブリッド型画像形成装置の概略構成図である。
【
図12】インクジェット方式の画像形成手段の概略構成図である。
【
図13】
図11Cの画像形成装置で用紙上に形成されたトナー像と粒子層を示す図である。
【
図14】感光ドラムの上流側に
図1Aの画像形成装置を組込んだ図である。
【
図15】
図14の画像形成装置で用紙上に形成されたトナー像と粒子層を示す図である。
【
図16】インクジェットプリンタに使用するインクの拡大図である。
【
図17】(a)点字の拡大断面図、(b)溶融前の粒子層の図、(c)溶融後の粒子層の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1A~
図1Cは、本発明の実施形態に係る画像形成装置100を示すものである。画像形成装置100は、従来の電子写真方式を利用した大径粒子層形成と、従来のインクジェット方式を利用した粘着剤層形成を組み合わせたものである。
【0010】
大径粒子Gは、従来の電子写真作像システムで使われるトナーよりも大きい粒子径を有する。このため、用紙P上に数百μm以上の厚みを有する凹凸画像を形成することができる。当該凹凸画像は、電子写真画像と同等の画像安定性を得ることが可能であり、数百μm程度の凹凸を必要とする点字形成などの分野へ展開できる。
【0011】
(●画像形成装置の基本構成)
図1Aは画像形成装置100の基本構成を示したものである。画像形成装置100は、粒子を貯留する粒子槽110と、接着剤としての粘着剤ADを貯留する粘着剤槽120を有する。粒子槽110と粘着剤槽120は、基材としての用紙Pの搬送路に沿って、搬送方向上流側から順番に配設されている。
【0012】
粒子槽110には、20μm以上の粒径を有する粒子が貯留されている。粒子槽110の底部には、ドラム状の粒子担持体130が回転可能に配設されている。粒子担持体130の回転軸線は、用紙Pの搬送路に対して直角かつ水平に配設されている。粒子担持体130は、電子写真方式で使用される現像ローラの技術を利用することができる。
【0013】
また、この粒子担持体130の回転方向下流側の外周面に接するようにして、規制ブレード111が配設されている。この規制ブレード111によって、粒子担持体130の外周面に担持される粒子層の厚みを一定厚に規制する。
【0014】
粘着剤槽120の底部にはノズル部121が配設されている。当該ノズル部121からインクジェット方式により滴下された粘着剤ADによって用紙P上に潜像が形成されるようになっている。すなわち、粘着剤槽120とノズル部121によって潜像形成手段が構成されている。ここで「潜像」とは、何等かの手法を用いて肉眼では見えないか見えにくいように形成した画像のことをいう。
【0015】
粘着剤槽120の下流側に配設された粒子槽110の粒子担持体130が、用紙Pに近接した状態で回転することによって、用紙P上に形成された粘着剤ADの潜像に対して、粒子Gが付着されて粒子Gによる凹凸画像が形成される。すなわち、粒子槽110と、規制ブレード111と、粒子担持体130によって、粘着剤ADの潜像を顕像化する顕像化手段が構成される。ここで「顕像」とは凹凸を有する像(形状)のことをいい、必ずしも視覚を通じて認識される像(形状)に限定されない。例えば無色透明の凹凸形状であっても「顕像」に含まれる。
【0016】
前記粒子Gを球形の単一径とし、粒子担持体130の外周面に基本的に単層の粒子層を形成することで、粒子層の帯電を均一化することができる。また1ドットの潜像に1粒子を現像させることで、均一ドット粒子像を形成することができ、FMスクリーン処理適用による画質安定化と、複数色を重ねず並べることでのカラー画像コスト低減と、クリーナレス化による省資源化/小型化を実現することができる。粒子担持体130の外周面に部分的に粒子層が二層に重なった箇所ができたとしても、粒子層の帯電均一化や均一ドット粒子像形成等に大きな影響はない。なお、粒子Gはトナーに限定されず、他の利用分野への展開が可能である。
【0017】
(●多層粒子層の形成)
粒子槽110と粘着剤槽120は、
図1Bに示すように、直列二連で配設することができる。すなわち、用紙Pの搬送路に沿って、2つの粒子槽110と2つの粘着剤槽120を、上流側から交互に配設する。これにより、用紙P上に粒子を厚み方向で二層に積層形成することができる。用紙P上に三層以上の粒子層を積層形成したい場合は、
図1Bの構成を用紙Pの搬送路に沿って直列三連や直列四連のように、必要層数分だけさらに増設することができる。これにより、高速機による1パスで複数層を形成することができる。用紙Pに代えて中間転写媒体を使用し、当該中間転写媒体上に形成された多層粒子層を一括で用紙P上に転写することも可能である。
【0018】
粒子槽110と粘着剤槽120の直列配設数を増やすことで、大径粒子Gの層数を二層以上に増やすことも可能である。このような方法をとることにより、従来では制御が難しかった厚み方向の調整を容易化することができる。
【0019】
また、
図1Cに示すように、中間担持体140を使用することで、二層以上の多層でも容易に形成することが可能である。
図1Bでは、用紙P上に直接粘着剤ADを塗布して大径粒子Gを吸着させるので、複数層の大径粒子層を作成する場合は層数分の粘着剤塗布装置(粘着剤槽120)と大径粒子供給装置(粒子槽110)が必要となる。中間担持体140を使用すると、層数分だけ中間担持体140を回転させることで、任意層数の大径粒子層を容易に形成可能になる。
【0020】
中間担持体140の径は粒子担持体130よりも大きく、図示例では約二倍から三倍の径を有する。中間担持体140の回転軸線は、用紙Pの搬送路に対して直角かつ水平に配設されている。
【0021】
粘着剤槽120は中間担持体140の真上に配設され、粒子槽110は粘着剤槽120よりも中間担持体140の回転方向下流側であって中間担持体140のほぼ真横に配設される。粒子槽110の外側に露出した粒子担持体130の外周面が、中間担持体140の外周面と対向している。
【0022】
中間担持体140が矢印方向に複数回(層数分だけ)回転することで、中間担持体140の外周面に形成された粘着剤ADによる潜像の同じ部分に、粒子担持体130から供給された粒子Gが繰り返し供給される。これにより、二層以上の任意層数の多層粒子層を中間担持体140の外周面に形成する。このようにして形成された多層粒子層は、中間担持体140の外周面を用紙Pに接近させることで、用紙P上に一括転写することができる。
【0023】
図1Cは中間担持体140に円柱状の媒体を用いているが、ベルト状の中間転写媒体で中間担持体140を構成することも可能である。さらに、中間担持体140を用紙Pの保持体として使用し、用紙Pを保持体としての中間担持体140に巻付けて、用紙P上に直接大径粒子層を形成することも可能である。
【0024】
(●往復による多層粒子層の形成)
図2(a)~(c)は、用紙Pを往復させることで当該用紙P上に多層粒子層を形成する工程を示したものである。すなわち、
図2(a)の工程で
図1Aと同様に一層目の粒子層を形成する。
図2(b)のように、一層目の粒子層を形成した用紙Pを矢印方向に後退させて一旦元の位置まで戻す。
【0025】
図2(c)のように、用紙Pを再び矢印方向に前進させ、一層目の粒子層の上に粘着剤を塗布し、二層目の粒子層を形成する。この工程を繰り返すことで、二層以上の多層粒子層でも容易に形成することができる。
【0026】
(●定着器)
図3は、
図1A~
図2で前述した画像形成装置100に定着器150を追加したものである。
図1A~
図2の方法で形成した大径粒子層は、粘着剤ADによって用紙P上に仮止めされているような状態である。そこで、大径粒子層による凹凸画像を安定化するため、定着器150の熱によって大径粒子Gの表層を溶かす。
【0027】
定着器150は、加熱源が内蔵された上下一対の加熱ロール151、152を有し、当該加熱ロール151、152の間に粒子層を形成した用紙Pを通紙する。加熱ロール151、152の熱によって粘着剤ADが固化されることで、粒子間結合力が高まると共に用紙Pに対する粒子層の結合力が高まる。
【0028】
これにより、凹凸画像を形成する大径粒子層を用紙Pに強固に定着させることができる。
図3の定着器150は、加熱ヒータを内包した加熱ロール151、152によって用紙Pを上下から挟んでいるが、加熱ロール151、152に代えて加熱ベルトを有する定着器を使用してもよい。
【0029】
(●熱硬化剤入りの粘着剤)
図4Aは熱硬化剤入りの粘着剤ADを使用した場合の図である。すなわち、大径粒子Gを吸着させるための液状もしくはジェル状の粘着剤ADの中に、100°以上の熱によって硬化する熱硬化剤を添加している。
【0030】
大径粒子Gが吸着された状態の用紙Pを定着器150に通紙すると、大径粒子Gが用紙Pに加圧されるとともに、粘着剤AD中に添加された熱硬化剤が熱により硬化する。この結果、熱により熱硬化した粘着剤ADが大径粒子Gを内包した状態で固定化され、大径粒子Gを強固に用紙Pに定着することが可能になる。
【0031】
図4Bは粘着剤ADに対して、熱硬化剤に加えて発泡剤も添加した場合の図である。基本的には、熱硬化剤を粘着剤ADに添加した
図4Aと同様の効果が得られるが、
図4Bでは用紙Pに対する粒子の結合力をより強固なものにすることができる。
【0032】
すなわち、大径粒子Gが定着器150を通過する際、加熱ロール151によって大径粒子Gが用紙Pに押し付けられた状態で発泡剤が発泡し、粘着剤ADが大径粒子Gを覆うように成長する。その結果、加熱ロール151の熱で硬化した粘着剤ADは、大径粒子Gを用紙Pとの接触面だけで固化するのではなく、大径粒子Gを内包する形で固化する。したがって、
図4Aの場合よりも大径粒子Gが用紙Pから脱離しにくくなる。また、発泡トナーだけで凹凸画像の高さを稼ごうとすると発泡率の影響で高さにばらつきが生じやすいが、
図4Aのように大径粒子Gを使うことで凹凸画像の高さを安定化することができる。。
【0033】
前記発泡剤としては、例えば、熱分解によりガスを発生する物質を主原料とする発泡剤を用いることができる。具体的には、熱分解により炭酸ガスを発生する炭酸水素ナトリウム等の重炭酸塩、窒素ガスを発生するNaNO2とNH4Clの混合物、アゾビスイロブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、酸素等を発生する過酸化物等を用いることができる。
【0034】
マイクロカプセル型発泡剤は、発泡性が高いので好ましい。マイクロカプセル内に内包されている低沸点物質は、少なくとも加熱定着温度よりも低い温度で気化することが必要であり、具体的には100℃以下、好ましくは50℃以下、より好ましくは25℃以下で気化する物質である。
【0035】
但し、マイクロカプセル型発泡剤の熱応答性は、芯材である低沸点物質の沸点のみならず、壁材の軟化点に依存するので、低沸点物質の好ましい沸点範囲は前記範囲には限定されない。低沸点物質としては、例えば、ネオペンタン、ネオヘキサン、イソペンタン、イソブチレン、イソブタン等が挙げられる。中でも、マイクロカプセルの壁材に対して安定で、熱膨張率の高いイソブタンが好ましい。
【0036】
(●大径粒子の構成)
図5A~
図5Dは大径粒子Gの複数の構成例をしたものである。
図5Aに示す大径粒子Gは、従来の電子写真で使われているトナー(粒径7~8μm)に比較して、数倍から数百倍の粒径(粒径20μm以上)を有する。粒径が大き過ぎると用紙Pに対する固定と大径粒子層の多層化が困難になるので、粒径は20μm以上で500μm以下が望ましい。
【0037】
大径粒子Gは、基本的に中心部と外周被覆部の2層構造である。すなわち、中心部は耐熱性粒子Gaであり、この耐熱性粒子Gaの外周が結着樹脂BRで被覆されている。
【0038】
耐熱性粒子Gaは、熱定着を行った際に熱による融解が起きにくい不溶解性物質で構成されている。結着樹脂BRは、大径粒子Gの外側から熱と圧力を加えると、溶融することで用紙Pや周辺の大径粒子Gと結着できる溶融性を有している。
【0039】
そのため、耐熱性粒子Gaと結着樹脂BRの熔解温度は、10℃以上の差が設けられていることが望ましい。また、その際の耐熱性粒子Gaの耐熱温度の例としては、定着温度が100℃の時に粒子の耐熱温度が120℃以上であることが望ましい。
【0040】
図5Bは、中心部に
図5Aで示した大径粒子Gと同じように耐熱性粒子Gaを内包している。耐熱性粒子Gaの外周被覆部は、色材を混入したコート層CMで構成されている。
【0041】
コート層CMには、白色顔料を含む色材を添加してある。白色顔料としては、二酸化チタン、超微細二酸化チタン、亜鉛華、リトポン等を使用することができる。
【0042】
コート層CMに白色顔料を含む色材を添加することで、中心部の耐熱性粒子Gaの色目が外観上殆ど目立たなくなる。また、耐熱性粒子Gaの形状は、表面にコート層CMを有するので、球形に限らず異形形状の耐熱性粒子Gaを使用可能である。球形の耐熱性粒子Gaは一般的に異形形状の耐熱性粒子Gaに比べてコスト高となる傾向があるので、異形形状の耐熱性粒子Gaを使用することで凹凸画像形成の低コスト化が可能である。
【0043】
異形形状は、例えば
図5B(b)のような凹凸形状であってよい。異形形状にすることで、耐熱性粒子Gaが用紙Pや周辺の大径粒子Gと結着しやすくなる効果も得られる。
【0044】
図5Cの大径粒子Gは、基本的には
図5Bの大径粒子Gと同じであるが、内包する耐熱性粒子Gaに磁性粒子MPを添加している点が異なる。このように磁性粒子MPを添加することで磁気センサ等に反応する凹凸画像を形成することが可能になる。これにより、例えば凹凸画像を形成した記録媒体等を磁気により分類・整理・検索等を行うことが容易になる。
【0045】
図5Dの大径粒子Gは、基本的には
図5Aの大径粒子Gと同じであるが、透明耐熱性粒子TPを内包し、表面が透明な透明結着樹脂TRで被覆されている点が異なる。このように透明結着樹脂TRを使用することで、点字などの凹凸画像を下層に形成された平面画像に影響を及ぼすことなく印刷可能になる。
【0046】
(●磁気吸着性を有する粒子担持体)
図6は、磁気吸着性を有する粒子担持体130の構成を示すものである。粒子担持体130はその回転軸となるシャフト131をS極とN極に磁化している。磁化したシャフト131の外周は中空のスリーブ132で被覆し、さらにスリーブ132の外周を低硬度ゴム層133で被覆している。
【0047】
従来のトナー(粒径5~13μm)に比べて非常に大きな大径粒子G(粒径20~100μm)を使用して凹凸画像を形成する場合、粒子担持体130の表面粗さRzが数μm程度では、大径粒子Gを粒子担持体130の表面に確実に担持して粘着剤AD表面に確実に供給することが難しい。そこで、
図5Cのように耐熱性粒子Gaに磁性粒子MPを添加すると共に、粒子担持体130に磁気吸着性を持たせた。
【0048】
低硬度ゴム層133は、ゴム硬度JIS-A換算で40硬度以下の低硬度ゴムを使用することができる。この低硬度ゴム層133は、ゴム硬度を柔らかくするために、ソリッドゴムではなく発泡ゴムもしくは表層付き発泡ゴムを使用しても同様の効果が期待できる。
【0049】
なお、粒子担持体130の表面をゴム硬度がさらに低い低硬度ゴム層、或いは表層なしの発泡ゴム、もしくはブラシローラを使用することで、粒子担持体130の表面担持性を高めることができる。これにより、磁気吸着を利用しないでも、
図5A、
図5Bのような磁性粒子MPを含まない大径粒子Gを、粒子担持体130の表面に確実に担持して粘着剤AD表面に確実に供給することができる。
【0050】
(●粘着剤に対する離型剤の添加)
図7は、離型剤を添加した粘着剤AD1を使用して大径粒子Gを固定する図である。離型剤を添加することで、定着器150による熱定着時に上方の加熱ロール151に大径粒子Gもしくは粘着剤AD1が付着しないようにする。
【0051】
この離型剤は、用紙P上に粘着剤が塗布されると当該粘着剤の表層に集まる性質がある。粘着剤AD1の表層に集まった離型剤によって、加熱ロール151に粘着剤AD1が付着するのを防止することができる。
【0052】
離型剤の一部は定着器150の熱で揮発する。この揮発した離型剤が加熱ロール151の外周面に付着して離型剤の薄膜を形成する。この離型剤の薄膜によって、加熱ロール151の外周面に大径粒子Gや粘着剤AD1が付着するのを防止することができる。粘着剤AD1は加熱ロール151を通過後に固化した粘着剤AD2となって、大径粒子Gを用紙Pに固定する。
【0053】
(●粘着剤のノズル部)
図8Aは、粘着剤槽120の底部のノズル部121に使用される吐出ヘッドの一例を示す斜視図であり、
図8Bは同吐出ヘッドの分解斜視図である。また、
図8Cは
図8Aの吐出ヘッドのA-A断面図であり、
図8DはB-B断面図である。この吐出ヘッドには、高粘度液体の塗布に対応したインクジェット方式の吐出システムを利用することができる。
【0054】
吐出ヘッドは、フレーム部材1210上に、振動板1220、流路板1230(即ち、加圧液室を有する流路形成部材)、ノズル板1240(即ち、ノズル孔を有する流路形成部材)をこの順に積層、接合した構成を備えている。フレーム部材1210は、例えば、エポキシ系樹脂、あるいはポリフェニレンサルファイト等を射出成形することで形成される。
【0055】
フレーム部材1210は、金属あるいはセラミックスなどの高剛性材料で形成したベース基板1213に接合されている。このベース基板1213の上に、流路板1230に備えた加圧液室1231内の液体(例えばインク)を加圧するための圧力発生手段である圧電素子1214(積層型圧電素子、電気機械変換素子)が形成されている。また、フレーム部材1210の内部に、加圧液室1231と連通した共通液室1211となる凹部と、共通液室1211に外部からインクを供給するためのインク供給穴1212が形成されている。
【0056】
圧電素子1214は、例えば、厚さが10~50μm/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さが数μm/1層の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層したものである。内部電極を交互に端面の端面電極(外部電極)である個別電極、共通電極に電気的に接続し、これらの電極に、FPCケーブル1217を介して駆動信号を供給するようにしている。
【0057】
圧電素子1214は、一方の面がベース基板1213に接合され、他方の面が振動板1220に接合される。圧電素子1214に、駆動信号が印加され充電が行われると伸長し、また圧電素子1214に充電された電荷が放電すると反対方向に収縮する。この圧電素子1214の伸縮により、振動板1220が撓むことにより、対応する加圧液室1231を収縮、膨張させるようになっている。
【0058】
また、各圧電素子1214の間には、加圧液室1231間の隔壁部1231Aに対応して支柱部1215を設けている。ここでは、圧電素子部材にハーフカットのダイシングによるスリット加工を施すことで櫛歯状に分割して、1つ毎に圧電素子1214と支柱部1215として形成している。支柱部1215の構成は圧電素子1214と同じであるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱してのみ機能する。
【0059】
振動板1220の外周部1220Aは、フレーム部材1210に接着剤にて接合されている。振動板1220は、加圧液室1231と連通してフレーム部材1210の共通液室1211から加圧液室1231にインクを供給するためのインク供給口1221を備えている。振動板1220は、例えば、3層構造のニッケルの金属プレート状に形成したものであって、例えば電鋳法で作製されるが、この他の金属板や樹脂板、あるいは金属と樹脂板との積層部材や、金属と金属の積層部材などを用いることもできる。
【0060】
流路板1230は、例えば、ステンレス鋼材をプレート状に成形したもので、プレス加工法にて加圧液室1231、インク供給路1233を形成し、ダンパ室1232をウエットエッチング加工法にて加圧液室1231よりも浅くハーフエッチングにより形成したものである。また、例えば、結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を、水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、加圧液室1231などの流路パターンを形成したもの(単結晶シリコンに限らない)などを用いることもできる。
【0061】
ダンパ室1232は、ノズル板1240と振動板1220により、矩形の空間となるが振動板1220に設けられた大気連通管1222を通して大気と連通することにより、エアダンパ効果を持たせる構造としている。
【0062】
ノズル板1240は各加圧液室1231に対応してノズル孔1241を形成している。以下、ノズル板1240について詳説する。
【0063】
ノズル板1240には、プレス加工と研磨加工によりノズル孔1241が形成される。ノズル板1240は、例えば、ステンレス鋼材(SUS)をプレート状に形成したものである。
【0064】
ノズル板1240をSUS系の金属部材で構成することで、様々な液体に対応することが可能で、材料コストを抑え、かつ、長尺形状への対応が可能なノズル板を形成することが可能である。なお、ノズル板1240の材質は、ステンレス鋼に限らず、他の金属材料等を用いてもよい。
【0065】
ノズル孔1241の内側の形状は、ストレート形状、テーパー形状、または、2つを組み合わせたストレート-テーパー形状で形成される。ノズル孔1241の穴径は、例えば、インク滴出口側の直径で約10~35μmであって、各列のノズルピッチは150dpiである。
【0066】
ノズル板1240のノズル面1240A(吐出方向の外面である液体吐出面)には、撥水性の表面処理を施した撥水処理層が設けられる。撥水処理層としては、例えば、PTFE-Ni共析メッキや、フッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えば、フッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等がインク物性に応じて選定される。撥水処理膜を設けることで、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
【0067】
(●コート剤の塗布)
図9は、用紙P上に粒子を顕像化した後に、当該粒子を安定化させるために、粒子の上にコート剤を塗布するようにした凹凸画像形成装置100を示すものである。すなわち、大径粒子G供給装置と定着器の間に、大径粒子層の表面にコート剤を塗布するコート剤塗布装置を設けている。
【0068】
このコート剤塗布装置は、基本的にはインクジェットシステムと同等の塗布システムで実現可能である。もしくは、ディフューザーのように気化状態で噴霧する方法でも可能である。また、コート剤の中には、大径粒子Gを画像形成媒体に固定させる接着剤と、定着器の定着ローラとの離形性を向上させるために離型剤も添加している。
【0069】
(●UV定着器)
図10は、
図9の凹凸画像形成装置の粒子槽110と定着器150の間にUV光照射手段としてのUV定着器170を追加したものである。粘着剤槽120の粘着剤ADにはUV硬化剤を添加しておく。このUV硬化剤は、UV光によって硬化する樹脂成分を有する。
【0070】
凹凸画像が形成された用紙Pが定着器150に入る前に、UV定着器170でUV光を凹凸画像に照射する。これにより、凹凸画像の大径粒子Gを被覆する粘着剤ADのみが硬化し、大径粒子Gの脱離を防止することができる。
【0071】
また、平面画像が不要もしくは、UV硬化樹脂を添加したインクを用いて平面画像を形成した場合は、定着器150を省略し、UV定着器170のみで大径粒子Gによる凹凸画像と平面画像の両方を定着させることができる。この方式の場合、定着器よりも大幅な電力削減をすることが可能となる。
【0072】
(●電子写真方式の画像形成手段)
前述した画像形成装置100は、従来の電子写真方式による画像形成手段と組合わせて後述する
図11Cのようなハイブリッド型とすることも可能である。電子写真方式による画像形成手段は、モノクロプリンタであってもよいし、カラープリンタ(MFP含む)であってもよよい。
【0073】
以下、従来の電子写真方式による画像形成手段を
図11Aと
図11Bを参照して説明する。
図11Aは、電子写真方式の画像形成手段としてのプリンタを示す概略構成図、
図11Bは同プリンタのK用のプロセスユニットを示す拡大構成図である。
【0074】
このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、M、C、Kと記す)のトナー像を形成するための4つのプロセスユニット1Y,M,C,Kを備えている。これらは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。
【0075】
Kトナー像を形成するためのプロセスユニット1Kを例にすると、
図11Bに示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置4K、現像装置5K等を備えている。画像形成ユニットたるプロセスユニット1Kは、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。
【0076】
前記帯電装置4Kは、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転せしめられる感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、レーザー光Lによって露光走査されてK用の静電潜像を担持する。
【0077】
このK用の静電潜像は、図示しないKトナーを用いる現像装置5KによってYトナー像に現像される。そして、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写工程を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。
【0078】
また、前記除電装置は、クリーニング後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。他色のプロセスユニット(1Y,M,C)においても、同様にして感光体(2Y,M,C)上に(Y,M,C)トナー像が形成されて、後述する中間転写ベルト16上に中間転写される。
【0079】
なお、感光体2Kにおける筒状のドラム部は、中空のアルミ素管のおもて面に有機感光層が被覆されたものである。このドラム部の軸線方向の両端部にそれぞれドラム軸を有するフランジが取り付けられて、感光体2Kを構成している。
【0080】
現像手段たる現像装置5Kは、図示しないKトナーを収容する縦長のホッパ部6Kと、現像部7Kとを有している。ホッパ部6K内には、図示しない駆動手段によって回転駆動されるアジテータ8K、これの鉛直方向下方で図示しない駆動手段によって回転駆動される撹拌パドル9K、これの鉛直方向で図示しない駆動手段によって回転駆動されるトナー供給ローラ10Kなどが配設されている。
【0081】
ホッパ部6K内のKトナーは、アジテータ8Kや撹拌パドル9Kの回転駆動によって撹拌されながら、自重によってトナー供給ローラ10Kに向けて移動する。トナー供給ローラ10Kは、金属製の芯金と、これの表面に被覆された発泡樹脂等からなるローラ部とを有しており、ホッパ部6K内のKトナーをローラ部の表面に付着させながら回転する。
【0082】
現像装置5Kの現像部7K内には、感光体2Kやトナー供給ローラ10Kに当接しながら回転する現像ローラ11Kや、これの表面に先端を当接させる薄層化ブレード12Kなどが配設されている。ホッパ部6K内のトナー供給ローラ10Kに付着したKトナーは、現像ローラ11Kとトナー供給ローラ10Kとの当接部で現像ローラ11Kの表面に供給される。
【0083】
供給されたKトナーは、現像ローラ11Kの回転に伴ってローラと薄層化ブレード12Kとの当接位置を通過する際に、ローラ表面上での層厚が規制される。そして、層厚規制後のKトナーは、現像ローラ11Kと感光体2Kとの当接部である現像領域において、感光体2K表面のK用の静電潜像に付着する。この付着により、K用の静電潜像がKトナー像に現像される。
【0084】
図11Bを用いてK用のプロセスユニットについて説明したが、Y,M,C用のプロセスユニット1Y,M,Cにおいても、同様のプロセスにより、感光体2Y,M,C表面にY,M,Cトナー像が形成される。
【0085】
先に示した
図11Aにおいて、プロセスユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向上方には、光書込ユニット70が配設されている。潜像書込装置たる光書込ユニット70は、画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光Lにより、プロセスユニット1Y,M,C,Kにおける感光体2Y,M,C,Kを光走査する。
【0086】
この光走査により、感光体2Y,M,C,K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。かかる構成においては、光書込ユニット70と、プロセスユニット1Y,M,C,Kとにより、3つ以上の潜像担持体にそれぞれ互いに異なる色の可視像たるY,M,C,Kトナー像を作像する作像手段として機能している。
【0087】
なお、光書込ユニット70は、光源から発したレーザー光(L)を、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0088】
プロセスユニット1Y,M,C,Kの鉛直方向下方には、無端状の中間転写ベルト16を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写ユニット15が配設されている。転写手段たる転写ユニット15は、中間転写ベルト16の他に、駆動ローラ17、従動ローラ18、4つの1次転写ローラ19Y,M,C,K、2次転写ローラ20、ベルトクリーニング装置21、クリーニングバックアップローラ22などを備えている。
【0089】
中間転写ベルト16は、そのループ内側に配設された駆動ローラ17、従動ローラ18、クリーニングバックアップローラ22及び4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kによって張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ17の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
【0090】
4つの1次転写ローラ19Y,M,C,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト16を感光体2Y,M,C,Kとの間に挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、感光体2Y,M,C,Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0091】
1次転写ローラ19Y,M,C,Kには、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されており、これにより、感光体2Y,M,C,Kの静電潜像と、1次転写ローラ19Y,M,C,Kとの間に転写電界が形成される。なお、1次転写ローラ19Y,M,C,Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0092】
Y用のプロセスユニット1Yの感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴って上述のY用の1次転写ニップに進入すると、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト16上に1次転写される。このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト16は、その無端移動に伴ってM,C,K用の1次転写ニップを通過する際に、感光体2M,C,K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト16上には4色トナー像が形成される。
【0093】
転写ユニット15の2次転写ローラ20は、中間転写ベルト16のループ外側に配設されて、ループ内側の従動ローラ18との間に中間転写ベルト16を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ベルト16のおもて面と、2次転写ローラ20とが当接する2次転写ニップが形成されている。
【0094】
2次転写ローラ20には、図示しない転写バイアス電源によって2次転写バイアスが印加される。この印加により、2次転写ローラ20と、アース接続されている従動ローラとの間には、2次転写電界が形成される。
【0095】
転写ユニット15の鉛直方向下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット30がプリンタの筐体に対してスライド着脱可能に配設されている。この給紙カセット30は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ30aを当接させており、これを所定のタイミングで図中反時計回り方向に回転させることで、その記録紙Pを給紙路31に向けて送り出す。
【0096】
給紙路31の末端付近には、レジストローラ対32が配設されている。このレジストローラ対32は、給紙カセット30から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを上述の2次転写ニップ内で中間転写ベルト16上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに向けて送り出す。
【0097】
2次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト16上の4色トナー像は、2次転写電界やニップ圧の影響を受けて記録紙P上に一括2次転写され、記録紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録紙Pは、2次転写ニップを通過すると、2次転写ローラ20や中間転写ベルト16から曲率分離する。そして、転写後搬送路33を経由して、後述する定着器34に送り込まれる。
【0098】
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト16には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト16のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置21によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト16のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ22は、ベルトクリーニング装置21によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0099】
定着器34は、図示しないハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ34aと、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ34bとによって定着ニップを形成している。定着器34内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ34aに密着させるようにして、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。
【0100】
定着器34内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路35を経由した後、排紙路36と反転前搬送路41との分岐点にさしかかる。定着後搬送路35の側方には、回動軸42aを中心にして回動駆動される切替爪42が配設されており、その回動によって定着後搬送路35の末端付近を閉鎖したり開放したりする。
【0101】
定着器34から記録紙Pが送り出されるタイミングでは、切替爪42が図中実線で示す回動位置で停止して、定着後搬送路35の末端付近を開放している。よって、記録紙Pが定着後搬送路35から排紙路36内に進入して、排紙ローラ対37のローラ間に挟み込まれる。
【0102】
図示しないテンキー等からなる操作部に対する入力操作や、図示しないパーソナルコンピュータ等から送られてくる制御信号などにより、片面プリントモードが設定されている場合には、排紙ローラ対37に挟み込まれた記録紙Pがそのまま機外へと排出される。そして、筐体の上カバー50の上面であるスタック部にスタックされる。
【0103】
一方、両面プリントモードに設定されている場合には、先端側を排紙ローラ対37に挟み込まれながら排紙路36内を搬送される記録紙Pの後端側が定着後搬送路35を通り抜けると、切替爪42が図中一点鎖線の位置まで回動して、定着後搬送路35の末端付近が閉鎖される。これとほぼ同時に、排紙ローラ対37が逆回転を開始する。すると、記録紙Pは、今度は後端側を先頭に向けながら搬送されて、反転前搬送路41内に進入する。
【0104】
本プリンタの
図1における右端部は、回動軸40aを中心に回動することで筐体本体に対して開閉可能な反転ユニット40になっている。排紙ローラ対37が逆回転すると記録紙Pがこの反転ユニット40の反転前搬送路41内に進入して、鉛直方向上側から下側に向けて搬送される。
【0105】
そして、反転搬送ローラ対43のローラ間を経由した後、半円状に湾曲している反転搬送路44内に進入する。更に、その湾曲形状に沿って搬送されるのに伴って上下面が反転せしめられながら、鉛直方向上側から下側に向けての進行方向も反転して、鉛直方向下側から上側に向けて搬送される。
【0106】
その後、上述した給紙路31内を経て、2次転写ニップに再進入する。そして、もう一方の面にもフルカラー画像が一括2次転写された後、転写後搬送路33、定着器34、定着後搬送路35、排紙路36、排紙ローラ対37を順次経由して、機外へと排出される。
【0107】
上述の反転ユニット40は、外部カバー45と揺動体46とを有している。具体的には、反転ユニット40の外部カバー45は、プリンタ本体の筺体に設けられた回動軸40aを中心にして回動するように支持されている。この回動により、外部カバー45は、その内部に保持している揺動体46とともに筺体に対して開閉する。
【0108】
図中点線で示すように、外部カバー45がその内部の揺動体46とともに開かれると、反転ユニット40とプリンタ本体側との間に形成されていた給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36が縦に2分されて、外部に露出する。これにより、給紙路31、2次転写ニップ、転写後搬送路33、定着ニップ、定着後搬送路35、排紙路36内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0109】
また、揺動体46は、外部カバー45が開かれた状態で、外部カバー45に設けられた図示しない揺動軸を中心にして回動するように外部カバー45に支持されている。この回動により、揺動体46が外部カバー45に対して開かれると、反転前搬送路41や反転搬送路44が縦に2分されて外部に露出する。これにより、反転前搬送路41内や反転搬送路44内のジャム紙を容易に取り除くことができる。
【0110】
プリンタの筺体の上カバー50は、図中矢印で示すように、軸部材51を中心にして回動自在に支持されており、図中反時計回り方向に回転することで、筺体に対して開いた状態になる。そして、筺体の上部開口を大きく露出させる。
【0111】
中間転写ベルト16の図中左側方には、中間転写ベルト16における駆動ローラ17への掛け回し箇所に対してそのおもて面側から所定の間隙を介して対向する光学センサユニット29が配設されている。この光学センサユニット29は、中間転写ベルト16上に形成された後述のズレ検知用画像内のパッチ像(矩形状のベタトナー像)を検知するものである。
【0112】
(●ハイブリッド型プリンタ)
図11C、
図11Dは、前述した
図11A、
図11Bのような従来の電子写真方式の画像形成手段に、本発明に係る凹凸画像形成装置を組込んだハイブリッド型プリンタの概略構成図である。このハイブリッド型プリンタでは、感光体ドラム2Kと定着器34の間に、少なくとも本発明に係る凹凸画像形成装置100の粒子槽110と粘着剤槽120を配置している。
【0113】
また、
図12のような従来のインクジェット方式による画像形成手段200に、本発明に係る凹凸画像形成装置を組込んだハイブリッド型プリンタとすることも可能である。このようなハイブリッド型プリンタとすることで、
図13のように、従来の画像形成手段による用紙P上の平面画像(トナー像T)の上に、粘着剤ADと粒子Gを順番に重ねて大径粒子Gによる凹凸画像を追加形成することが可能となる。
【0114】
インクジェット方式の画像形成手段200は、本体内に印字機構部203等を収納し、本体の下方部には前方側から多数枚の記録紙230を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)204を抜き差し自在に装着されている。また、記録紙230を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ205を有している。給紙カセット204あるいは手差しトレイ205から給送される記録紙230を取り込み、印字機構部203によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ206に排紙する。
【0115】
印字機構部203は、主走査方向に移動可能なキャリッジ201とキャリッジ201に搭載した吐出ヘッド及び吐出ヘッドに対してインクを供給するインクカートリッジ202等で構成される。また、印字機構部203は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド207と従ガイドロッド208とでキャリッジ201を主走査方向に摺動自在に保持する。
【0116】
このキャリッジ201にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する吐出ヘッドを複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。また、キャリッジ201には吐出ヘッドに各色のインクを供給するための各インクカートリッジ202を交換可能に装着している。
【0117】
インクカートリッジ202は上方に大気と連通する大気口、下方には吐出ヘッドにインクを供給する供給口が設けられている。インクカートリッジ202の内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力により吐出ヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。また、吐出ヘッドとしては各色の吐出ヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の吐出ヘッドでもよい。
【0118】
ここでキャリッジ201は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド207に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド208に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ201を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ209aで回転駆動される駆動プーリ210と従動プーリ211との間にタイミングベルト212を張装し、このタイミングベルト212をキャリッジ201に固定している。これにより、主走査モータの正逆回転によりキャリッジ201が
図12の紙面に垂直な方向で往復駆動される。
【0119】
一方、給紙カセット204にセットした記録紙230を吐出ヘッドの下方側に搬送するために、給紙カセット204から記録紙230を分離給装する給紙ローラ213及びフリクションパッド214と、記録紙230を案内するガイド部材215とを有する。また、給紙された記録紙230を反転させて搬送する搬送ローラ216と、この搬送ローラ216の周面に押し付けられる搬送コロ217及び搬送ローラ216からの記録紙230の送り出し角度を規定する先端コロ218とを有する。搬送ローラ216は副走査モータによってギヤ列を介して回転駆動される。
【0120】
そして、キャリッジ201の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ216から送り出された記録紙230を吐出ヘッドの下方側で案内するため用紙ガイド部材である印写受け部材219を設けている。この印写受け部材219の用紙搬送方向下流側には、記録紙230を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ220と拍車221とを設けている。さらに記録紙230を排紙トレイ206に送り出す排紙ローラ223と拍車224と、排紙経路を形成するガイド部材225,226とを配設している。
【0121】
この画像形成手段200の記録時には、キャリッジ201を移動させながら画像信号に応じて吐出ヘッドを駆動することにより、停止している記録紙230にインクを吐出して1行分を記録する。その後、記録紙230を所定量搬送した後、次の行の記録を行う。記録終了信号または記録紙230の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録紙230を排紙する。なお、インクジェット方式と組合わせたハイブリッド型に
図10のUV定着器170を組込み、キャリッジ201動作中(紙送り停止時)のUV照射量の制御をすることで定着性を向上させることも可能である。
【0122】
(●平面画像の視認性向上)
図11C、
図11Dのように、従来の画像形成手段による平面画像の上に大径粒子Gによる凹凸画像を追加形成すると、
図13のように平面画像(トナー像T)が大径粒子Gによる凹凸画像の下に隠れる。したがって、平面画像(トナー像T)の視認性が悪化する可能性がある。
【0123】
そこで、平面画像(トナー像T)と凹凸画像の形成順序を入替えたのが
図14である。すなわち、従来の画像形成手段で用紙P上に平面画像(トナー像T)を形成する前の段階で大径粒子Gによる凹凸画像を形成する。
【0124】
その後に、従来の画像形成手段で平面画像(トナー像T)を形成する。この画像形成方法であれば、
図15のように凹凸画像の表面に平面画像(トナー像T)が形成されるので、平面画像の視認性を確保することが可能となる。
【0125】
(●平面画像を形成するインク)
次に、
図16を参照して平面画像を形成するインクについて説明する。
図12の画像形成手段200において使用するインクは、トナーと同等の色材及び結着樹脂を有する微粒子を含んでいる。
【0126】
当該微粒子がインク液中でコロイド状になって浮遊している。画像形成手段200に
図4A、
図4Bの定着器150を組込むことで、インクジェット方式であっても電子写真方式と同等の画像安定性を得ることが可能となる。
【0127】
(●大径粒子Gの粒径)
図17(a)~(d)は大径粒子Gの粒径について説明するものである。
図17(a)は点字BRaの断面を示したものである。一般的に点字BRaの直径Aは1.4~1.5mm、頂部平坦面の直径Bは0.6~1.0mm、高さCは0.3~0.5mmである。
【0128】
したがって、大径粒子層による凹凸画像で点字BRaを表現するためには、その厚みを0.3~0.5mmにする必要がある。凹凸画像を大径粒子層の1層もしくは2層で形成する場合、大径粒子Gの粒径Dは300~500μmであることが望ましい。
【0129】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0130】
100:画像形成装置
110:粒子槽
111:規制ブレード
120:粘着剤槽
121:ノズル部
130:粒子担持体
131:シャフト
132:スリーブ
133:低硬度ゴム層
140:中間担持体
150:定着器
151、152:加熱ロール
170:UV定着器
BR:結着樹脂
BRa:点字
CM:コート層
G:大径粒子
Ga:耐熱性粒子
MP:磁性粒子
P:用紙
T:平面画像(トナー像)
TP:透明耐熱性粒子
TR:透明結着樹脂
【先行技術文献】
【特許文献】
【0131】
【特許文献1】特許第4356714号公報
【特許文献2】特開2009-075400号公報