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特開2023-6858色素増感型太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール
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  • 特開-色素増感型太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール 図1
  • 特開-色素増感型太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006858
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】色素増感型太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
H01G9/20 113Z
H01G9/20 111A
H01G9/20 113B
H01G9/20 111C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109682
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 誠
(72)【発明者】
【氏名】亀山 涼嗣
(57)【要約】
【課題】電池特性に優れる色素増感型太陽電池およびその製造方法を提供する。また、電池特性に優れる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】多孔質半導体層および該多孔質半導体層に吸着した増感色素を含む光電極と、電解質層と、対向電極とを備える色素増感型太陽電池であって、前記増感色素の表面上に界面活性剤が存在する、色素増感型太陽電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質半導体層および該多孔質半導体層に吸着した増感色素を含む光電極と、電解質層と、対向電極とを備える色素増感型太陽電池であって、
前記増感色素の表面上に界面活性剤が存在する、色素増感型太陽電池。
【請求項2】
前記界面活性剤が、炭素数8個以上20個以下であるアルキル基を少なくとも1つ有する、請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項3】
前記界面活性剤がアルキルグルコシド系界面活性剤を含む、請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項4】
前記増感色素がルテニウム錯体色素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項5】
前記多孔質半導体層が酸化チタン粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
【請求項6】
多孔質半導体層に吸着した増感色素の表面に界面活性剤を付与する工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記界面活性剤の付与が、pH9.5以下の界面活性剤水溶液を用いて行われる、請求項6に記載の色素増感型太陽電池の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池が直列および/または並列に接続されてなる、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素増感型太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光エネルギーを電力に変換する光電変換素子として、太陽電池が注目されている。中でも、色素増感型太陽電池は、シリコン型太陽電池などに比べて軽量化が期待でき、広い照度範囲で安定して発電できることなどから注目されている。ここで、色素増感型太陽電池は、通常、増感色素を担持(吸着)させた多孔質半導体層を備える光電極と、電解質層(電解液層)と、触媒層を備える対向電極とがこの順で並んでなる構造を有する。
【0003】
ところで、色素増感型太陽電池は電池特性に優れることが求められており、近年、色素増感型太陽電池の電池特性を向上させるために様々な検討が盛んに行われている。例えば、特許文献1には、所定の界面活性剤および金属酸化物を含有する調合物を基体上に付与し、該調合物を低温処理して多孔質半導体層としての金属酸化物層を形成し、次いで該金属酸化物層に増感色素を担持させることにより製造した光電極を備える色素増感型太陽電池が電池特性に優れることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5046195号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、上記従来技術の色素増感型太陽電池は電池特性が十分ではないことが明らかとなった。すなわち、上記従来技術には、色素増感型太陽電池の電池特性を向上させるという点において、未だ改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、電池特性に優れる色素増感型太陽電池およびその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、電池特性に優れる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、色素増感型太陽電池を構成する光電極において、多孔質半導体層に吸着した増感色素の表面上に界面活性剤を存在させれば、色素増感型太陽電池の電池特性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の色素増感型太陽電池は、多孔質半導体層および該多孔質半導体層に吸着した増感色素を含む光電極と、電解質層と、対向電極とを備える色素増感型太陽電池であって、前記増感色素の表面上に界面活性剤が存在することを特徴とする。このように、増感色素の表面上に界面活性剤を存在させれば、色素増感型太陽電池の電池特性を向上させることができる。
なお、本発明において、「増感色素の表面上に界面活性剤が存在する」とは、増感色素の、多孔質半導体層に接する面とは反対側の表面上に界面活性剤が存在することを意味する。
【0009】
本発明の色素増感型太陽電池において、前記界面活性剤は炭素数8個以上20個以下であるアルキル基を少なくとも1つ有することが好ましい。炭素数8個以上20個以下であるアルキル基を少なくとも1つ有する界面活性剤を用いれば、色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させることができる。
【0010】
本発明の色素増感型太陽電池において、前記界面活性剤はアルキルグルコシド系界面活性剤を含むことが好ましい。アルキルグルコシド系界面活性剤を用いれば、色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させることができる。
【0011】
本発明の色素増感型太陽電池において、前記増感色素はルテニウム錯体色素であることが好ましい。増感色素としてルテニウム錯体色素を用いれば、色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させることができる。
【0012】
本発明の色素増感型太陽電池において、前記多孔質半導体層は酸化チタン粒子を含むことが好ましい。多孔質半導体層が酸化チタン粒子を含めば、色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させることができる。
【0013】
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、多孔質半導体層に吸着した増感色素の表面に界面活性剤を付与する工程を含む、上述のいずれかの色素増感型太陽電池の製造方法である。このように、多孔質半導体層に吸着した増感色素の表面に界面活性剤を付与すれば、得られる色素増感型太陽電池の電池特性を向上させることができる。
【0014】
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法において、前記界面活性剤の付与は、pH9.5以下の界面活性剤水溶液を用いて行われることが好ましい。pH9.5以下の界面活性剤水溶液を用いて界面活性剤を付与すれば、多孔質半導体層からの増感色素の脱落を抑制することができ、得られる色素増感型太陽電池の電池特性の悪化を抑制することができる。
なお、本発明において、界面活性剤水溶液のpHは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0015】
さらに、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の太陽電池モジュールは、上述したいずれかの色素増感型太陽電池が直列および/または並列に接続されてなることを特徴とする。このように、本発明の太陽電池モジュールは本発明の色素増感型太陽電池を備えるため、電池特性に優れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電池特性に優れる色素増感型太陽電池およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、電池特性に優れる太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る色素増感型太陽電池の概略構造を示す図である。
図2】増感色素の表面上に界面活性剤を有する半導体粒子の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の色素増感型太陽電池は、例えば、本発明の太陽電池モジュールを製造する際に用いることができる。そして、本発明の色素増感型太陽電池は、例えば、本発明の色素増感型太陽電池の製造方法により製造することができる。本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、本発明の色素増感型太陽電池を製造する際に用いることができる。本発明の太陽電池モジュールは、本発明の色素増感型太陽電池を備える。
【0019】
(色素増感型太陽電池)
本発明の色素増感型太陽電池は、多孔質半導体層および該多孔質半導体層に吸着した増感色素を含む光電極と、電解質層と、対向電極とを備えるものである。そして、本発明の色素増感型太陽電池は、増感色素の表面上に界面活性剤が存在することを特徴とする。そのため、本発明の色素増感型太陽電池は電池特性に優れる。
【0020】
本発明の色素増感型太陽電池の一例を図1に示す。図1に示す色素増感型太陽電池1は、光電極2、電解質層3、および対向電極4がこの順に並んでなる構造を有する。
【0021】
<光電極>
光電極2は、光電極基板21と光電変換層22とからなる。
【0022】
光電極基板21は、支持体211と導電膜212とを有する。光電極基板21は、光電変換層22などを担持する役割、および集電体としての役割を担うものである。
【0023】
支持体211としては、特に限定されることなく、従来公知の光透過性の基材から適宜選択して用いることができる。例えば、支持体211としては、透明樹脂またはガラスなどの可視領域で透明性を有する既知の透明基材が挙げられる。中でも、支持体211としては、フィルム状に成形された透明樹脂、すなわち、樹脂フィルムを用いることが好ましい。色素増感型太陽電池に軽量性や可撓性を付与できるため、色素増感型太陽電池を様々な用途に応用することができるからである。
【0024】
樹脂フィルムを形成しうる透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの合成樹脂が挙げられる。これらの透明樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
導電膜212としては、特に限定されることなく、例えば、Au、Ag、Cuなどの金属から構成される金属メッシュからなる導電膜;Agナノ粒子などの金属ナノ粒子や、微小なAgワイヤなどを塗布して形成された導電膜;インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、フッ素ドープスズ(FTO)などの複合金属酸化物からなる導電膜;カーボンナノチューブ、グラフェンなどを含むカーボン系導電膜;PEDOT/PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)などの導電性高分子よりなる導電膜を用いることができる。これらの材料は、他の材料との相性などにより適宜選択することができる。また、これらの導電膜は複数種が支持体211上に積層されていてもよいし、あるいは、これらの導電膜の形成に用いられうる上述したような各種導電性材料が混合されて1つの導電膜を形成していてもよい。
【0026】
導電膜212の厚みは適宜設定すればよいが、通常、0.1μm以上250μm以下である。
【0027】
支持体211の上に導電膜212を形成する方法としては、スパッタリングとエッチングとを組み合わせた方法や、スクリーン印刷などの従来公知の形成方法を用いることができる。
【0028】
光電変換層22は、多孔質半導体層221と、増感色素222と、界面活性剤223とを有し、任意に、その他の成分を更に有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、後述する界面活性剤溶液に含まれ得る炭化水素などや、後述する色素溶液に任意に添加される、増粘剤および充填剤などの添加剤が挙げられる。界面活性剤溶液が含み得る炭化水素などは、界面活性剤223と共に、増感色素222の表面上に付着していてもよい。
【0029】
多孔質半導体層221は、半導体成分を主成分とする層である。多孔質半導体層221が多孔質であることで、増感色素222の吸着量が増え、色素増感型太陽電池1の光電変換効率を向上させることができる。なお、本発明において「半導体成分を主成分とする」とは、多孔質半導体層221中に半導体成分を50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含むことを意味する。
【0030】
上記半導体成分としては、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化タングステンなどの各種金属酸化物半導体;チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムなどの各種複合金属酸化物半導体;酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガンなどの遷移金属酸化物;酸化セリウム、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化イッテルビウムなどのランタノイド酸化物;シリカに代表される天然または合成の珪酸化合物などが挙げられる。これらの半導体成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させる観点から、半導体成分は酸化チタンであることが好ましい。なお、多孔質半導体層221が含み得る半導体成分以外の成分としては、多孔質半導体層221の多孔質性を良好に維持できるものであれば、特に限定されない。
【0031】
多孔質半導体層221は、複数の半導体粒子を含む層であることが好ましく、複数の半導体粒子からなる層であることがより好ましい。多孔質半導体層221を複数の半導体粒子からなる層とすれば、多孔質半導体層221の多孔率を一層向上させて増感色素222の吸着量を一層増やすことができるため、色素増感型太陽電池の光電変換効率を一層向上させることができる。
【0032】
半導体粒子としては、上述した半導体成分からなる粒子が挙げられる。したがって、多孔質半導体層221は、複数の酸化チタン粒子を含む層であることが好ましく、複数の酸化チタン粒子からなる層であることがより好ましい。
【0033】
半導体粒子の粒子径は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整することができる。半導体粒子の粒子径は、通常、体積平均粒子径で1nm以上、好ましくは3nm以上であり、通常100nm以下、好ましくは60nm以下である。
【0034】
多孔質半導体層221の厚みは、特に限定されないが、通常、0.1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。多孔質半導体層は、一層でなく二層以上の多層構造でも構わない。多層の場合、各層の粒子などの組成、粒径などは異なっていてもよい。
【0035】
導電膜212の上に多孔質半導体層221を形成する方法としては、特に限定されず、プレス法、水熱分解法、泳動電着法、スクリーン印刷法、エアロゾルディポジション(AD)法、コーティング法などの従来公知の形成方法を用いることができる。多孔質半導体層の具体例な形成方法の一例を、後述する「色素増感型太陽電池の製造方法」の項で説明する。
【0036】
増感色素222は、光によって励起されて多孔質半導体層221に電子を渡し得る化合物であり、多孔質半導体層221の表面に吸着されている。増感色素223は、通常、多孔質半導体層221の表面に層として吸着している。例えば、多孔質半導体層221が複数の半導体粒子からなる層である場合、増感色素222は、通常、半導体粒子の表面に層として吸着している。色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させる観点から、増感色素222は、単分子層の形態で半導体粒子の表面に吸着していることが好ましい。
【0037】
増感色素222は、特に限定されず、従来公知の有機色素および金属錯体色素を使用することができる。有機色素としては、シアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、キサンテン色素、スクワリリウム色素、ポリメチン色素、クマリン色素、リボフラビン色素、ペリレン色素などが挙げられる。また、金属錯体色素としては、鉄、銅、ルテニウムなどの金属のフタロシアニン錯体やポルフィリン錯体などが挙げられる。例えば、N3、N719、N749、D102、D131、D150、N205、HRS-1、およびHRS-2などが代表的な増感色素として挙げられる。これらの増感色素の中でも、得られる色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させる観点から、ルテニウム錯体色素が好ましい。
【0038】
増感色素222の吸着方法は、特に限定されず、例えば、増感色素222の溶液中に多孔質半導体層221を浸漬したり、増感色素222の溶液を多孔質半導体層221上に塗布することにより、増感色素222を多孔質半導体層221に吸着させることができる。具体的な吸着方法は、後述する「色素増感型太陽電池の製造方法」の項で説明する。
【0039】
界面活性剤223は、増感色素222の表面上に存在する。ここで、図2を参照して、界面活性剤223の存在態様の一例を説明する。図2は、増感色素の表面上に界面活性剤を有する半導体粒子の概略断面図である。図2に示すように、複数の界面活性剤223が、半導体粒子に吸着した増感色素222の表面に付着している。具体的には、界面活性剤223は、半導体粒子に吸着した増感色素222の層の、当該半導体粒子に接触する面とは反対側の表面上に存在している。
界面活性剤223は、増感色素222の表面上にのみ、あるいは、増感色素222の表面上および多孔質半導体層221の増感色素222で覆われていない表面上(増感色素222が吸着していない表面上)にのみ存在し、増感色素222の層の内部には存在しないことが好ましい(図2を参照)。すなわち、増感色素222および界面活性剤223は互いに混合されて1つの層を形成するのではなく、それぞれ別体として存在していることが好ましい。
【0040】
ここで、界面活性剤が増感色素の表面上に存在することにより色素増感型太陽電池の電池特性が向上する理由は必ずしも定かではないが、以下のとおりであると推察される。すなわち、多孔質半導体層の半導体成分近傍の水によって増感色素の溶解度が低下し、増感色素がスタッキングしやすくなり、増感色素の過吸着が発生すると考えられる。界面活性剤を増感色素の表面上に存在させることにより、過吸着を起こした余分な増感色素が界面活性剤へ溶出し、さらに同時に半導体成分からの漏れ電流も抑制されるため、色素増感型太陽電池の電池特性が向上すると推察される。
【0041】
また、界面活性剤223は、増感色素222の表面上に層として存在していてもよい。具体的には、界面活性剤223は、複数の分子が増感色素222の表面上に堆積されて層を形成していてもよい。界面活性剤223の層は、増感色素222の表面の一部に形成されていてもよいし、増感色素222の全面に形成されていてもよい。すなわち、界面活性剤223が層として存在する場合、界面活性剤223の層は増感色素222の表面の少なくとも一部に形成されていればよい。
界面活性剤223の層の厚さは、通常、1nm以上であり、2nm以上であることが好ましく、また、通常、10nm以下であり、8nm以下であることが好ましい。
【0042】
界面活性剤223の層は、例えば、後述する色素増感型太陽電池の製造方法の「界面活性剤付与工程」において使用する界面活性剤の量(界面活性剤溶液の量および/または界面活性剤溶液中の界面活性剤濃度)を調節することにより、形成することができる。
【0043】
界面活性剤223が増感色素222の表面上に存在すること、および、界面活性剤223が増感色素222の表面上で層を形成していることは、例えば、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)により確認することができる。また、界面活性剤223の層の厚さは、例えば、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)を用いたTOF-SIMS(GCIB/TOF-SIMS)により測定することができる。
【0044】
界面活性剤223は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、および両性界面活性剤のいずれでもよい。これらの界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
得られる色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させる観点から、界面活性剤223は、炭素数8個以上20個以下のアルキル基を少なくとも1つ有する界面活性剤であることが好ましい。
また、得られる色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させる観点から、界面活性剤223は、ノニオン系界面活性剤を含むことが好ましく、ノニオン系界面活性剤からなることがより好ましい。
【0045】
<<アニオン系界面活性剤>>
アニオン系界面活性剤は、水などの溶媒に溶解させたときに、対イオンとしてのカチオンと、界面活性イオンとしてのアニオンとに分離する界面活性剤である。アニオン系界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のアニオン系界面活性剤を使用することができる。アニオン系界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、およびリン酸エステル塩型のアニオン系界面活性剤を使用することができる。
アニオン系界面活性剤の対イオンとしては、アンモニウムイオン、第1~4級アンモニウムカチオン、アルカリ金属イオン、およびアルカリ土類金属イオンなどが挙げられる。
なお、アニオン系界面活性剤は、アニオン系界面活性剤本体(アニオン残基)が増感色素の表面に存在していればよく、アルカリ金属イオンなどの対イオンは増感色素の表面上に存在していてもよいし、存在していなくてもよい。
【0046】
[カルボン酸塩型]
カルボン酸型のアニオン系界面活性剤は、限定されないが、例えば、式R-COO(Rは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい炭素数8以上の炭化水素基を表し、Xは対イオンを表す)で表されるカルボン酸塩である。Rは、アルキル基であることが好ましく、該アルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、Rは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0047】
カルボン酸型のアニオン系界面活性剤の具体例としては、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムなどのアルキル(C8-C20)カルボン酸塩;ペルフルオロオクタン酸ナトリウム、ペルフルオロノナン酸ナトリウムなどのハロゲン化アルキル(C8-C20)カルボン酸塩;N-ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0048】
[硫酸エステル塩型]
硫酸エステル塩型のアニオン系界面活性剤は、限定されないが、例えば、式R-OSO (R、Xは上述のとおりである)で表されるアルコール硫酸エステル塩、または式R-O(CHCHO)SO (R、Xは上述のとおりであり、nは1以上の整数を表す)で表されるエーテル硫酸エステル塩である。
【0049】
硫酸エステル塩型のアニオン系界面活性剤の具体例としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウムなどのアルキル(C8-C20)硫酸エステル塩;ラウレス硫酸ナトリウムなどのアルキル(C8-C20)エーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル(C8-C20)フェノールスルホン酸ナトリウムなどのポリオキシエチレンアルキル(C8-C20)アリールスルホン酸塩が挙げられる。
【0050】
[スルホン酸塩型]
スルホン酸塩型のアニオン系界面活性剤は、限定されないが、例えば、式R-SO (R、Xは上述のとおりである)で表されるスルホン酸塩、または式R-CH=CHCHSO (R、Xは上述のとおりである)で表されるα-オレフィンスルホン酸塩である。
【0051】
スルホン酸塩型のアニオン系界面活性剤の具体例としては、オクタンスルホン酸ナトリウム、デカンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのアルキル(C8-C20)スルホン酸塩;オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖アルキル(C8-C20)ベンゼンスルホン酸塩(LAS)などの直鎖アルキル(C8-C20)アリールスルホン酸塩;トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩;ペルフルオロオクタンスルホン酸塩などのハロゲン化アルキルスルホン酸塩;1-テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデセンスルホン酸ナトリウムなどのα-オレフィン(C8-C20)スルホン酸塩が挙げられる。
【0052】
[リン酸エステル塩型]
リン酸エステル塩型のアニオン系界面活性剤は、限定されないが、例えば、式R-OPO (R、Xは上述のとおりである)で表されるリン酸エステル塩である。リン酸エステル塩型のアニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルリン酸ナトリウムなどのアルキル(C8-C20)リン酸エステル塩などが挙げられる。
【0053】
<<カチオン系界面活性剤>>
カチオン系界面活性剤は、水などの溶媒に溶解させたときに、対イオンとしてのアニオンと、界面活性イオンとしてのカチオンとに分離する界面活性剤である。カチオン系界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のカチオン系界面活性剤を使用することができる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩型、アミン塩型、およびピリジニウム塩型のカチオン系界面活性剤を使用することができる。
カチオン系界面活性剤の対イオンは特に限定されず、例えば、臭素、ヨウ素、塩素などのハロゲン原子のイオンである。
なお、カチオン系界面活性剤は、カチオン系界面活性剤本体(カチオン残基)が増感色素の表面に存在していればよく、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどの対イオンは増感色素の表面上に存在していてもよいし、存在していなくてもよい。
【0054】
[第4級アンモニウム塩型]
第4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤は、限定されないが、例えば、式R+(R、R、R、Rは、それぞれ独立して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し(但し、R、R、R、Rの少なくとも1つの炭素数は8個以上である)、Xは対イオンを表す。)で表される第4級アンモニウム塩である。R、R、R、Rのうちの少なくとも1つはアルキル基であることが好ましく、該アルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0055】
第4級アンモニウム塩型のカチオン系界面活性剤の具体例としては、塩化オクチルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウム塩;塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンザルコニウムなどのトリアルキルモノアリールアンモニウム塩;ジアルキルジアリールアンモニウム塩;および、テトラアリールアンモニウム塩が挙げられる。
【0056】
[アミン塩型]
アミン塩型のカチオン系界面活性剤は、限定されないが、例えば、式R-NH-HA(式中、Rは窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい炭素数8個以上の炭化水素基を表し、Aは塩酸などの酸を表す)で表される第1級アミン塩;式R-NH-HA(式中、R、Rは、それぞれ独立して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し(但し、R、Rの少なくとも1つの炭素数は8個以上である)、Aは塩酸などの酸を表す)で表される第2級アミン塩;および、式R-N-HA(式中、R、R、Rは、それぞれ独立して、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基を表し(但し、R、R、Rの少なくとも1つの炭素数は8個以上である)、Aは塩酸などの酸を表す)で表される第3級アミン塩である。R、R、R、のうちの少なくとも1つはアルキル基であることが好ましく、該アルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0057】
アミン塩型のカチオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルアミン塩酸塩などのモノアルキルアミン塩酸塩;ジドデシルアミン塩酸塩などのジアルキルアミン塩酸塩;トリドデシルアミン塩酸塩などのトリアルキルアミン塩酸塩が挙げられる。
【0058】
[ピリジニウム塩型]
ピリジニウム塩型のカチオン系界面活性剤は、限定されないが、例えば、式R-C(式中、R、Xは上述のとおりである)で表されるピリジニウム塩である。ピリジニウム塩型のカチオン系界面活性剤の具体例としては、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウムなどのアルキル(C8-C20)ピリジニウム塩が挙げられる。
【0059】
<<ノニオン系界面活性剤>>
ノニオン系界面活性剤は、水などの溶媒に溶解させたときにイオン性を示さない界面活性剤である。ノニオン系界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のノニオン系界面活性剤のいずれも使用することができる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルグルコシド型、エーテル型、エステル型、エステルエーテル型、アルカノールアミド型、アルコール型のノニオン系界面活性剤が挙げられる。中でも、得られる色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させる観点から、ノニオン系界面活性剤としては、アルキルグルコシド型、およびエーテル型のノニオン系界面活性剤が好ましい。
【0060】
[アルキルグルコシド型]
アルキルグルコシド型のノニオン系界面活性剤(アルキルグルコシド系界面活性剤)は、糖と高級アルコールとがグリコシド結合してなるアルキルグルコシドである。アルキルグルコシドとしては、例えば、式R‐X‐G(式中、Rは炭素数8個以上20個以下のアルキル基であり、Xは酸素原子または硫黄原子であり、Gはグルコースの残基であり、nは1~5の整数である)で表されるアルキルグルコシドを用いることができる。Rで表されるアルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0061】
アルキルグルコシド系型のノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、n-オクチル-β-D-グルコシド、n-デシル-β-D-グルコシド(デシルグルコシド)、n-オクチル-β-D-マルトシド、n-ドデシル-β-D-グルコシド(ラウリルグルコシド)、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-オクチル-β-D-チオグルコシド、n-ノニル-β-D-チオマルトシドなどが挙げられる。これらの中でも、n-ドデシル-β-D-グルコシド(ラウリルグルコシド)を用いることが好ましい。
【0062】
[エーテル型]
エーテル型のノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル;ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシプロピレンアリールエーテルなどのポリオキシアルキレンアリールエーテル;ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレンポリオキシアルキレングリコール;(ポリ)エチレングリコールモノエチルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル;(ポリ)エチレングリコールモノフェニルエーテルなどの(ポリ)アルキレングリコールアリールエーテル;アルキルカルビトール;アルキルアミンEO付加物、アルキルジアミンEO付加物、アルキルアミンEOPO付加物などのアルキルアミンエーテル;ポリヒドロキシアルキルエーテルなどが挙げられる。これらのエーテル型ノニオン系界面活性剤中の少なくとも1つのアルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、当該アルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0063】
[エステル型]
エステル型のノニオン系界面活性剤としては、脂肪族ソルビタンエステル、脂肪酸ショ糖エステル、脂肪酸ポリグリセリンエステルが挙げられる。これらのエステル型のノニオン系界面活性剤中の少なくとも1つのアルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、当該アルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0064】
[エステルエーテル型]
エステルエーテル型のノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコールが挙げられる。これらのエステルエーテル型のノニオン系界面活性剤中の少なくとも1つのアルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、当該アルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0065】
[アルカノールアミド型]
エステルエーテル型のノニオン系界面活性剤としては、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドジエタノールアミンなどの脂肪族アルカノールアミドが挙げられる。これらのアルカノールアミド型のノニオン系界面活性剤中の少なくとも1つのアルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、当該アルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0066】
[アルコール型]
アルコール型のノニオン系界面活性剤としては、セチルアルコールなどのアルキル(C8-C20)アルコール;ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコール;N-メチルジエタノールアミンなどのアルキルアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0067】
<<両性界面活性剤>>
両性界面活性剤は、水などの溶媒に溶解させたときに、アルカリ性のpH領域ではアニオン系界面活性剤の性質を示し、酸性のpH領域ではカチオン系界面活性剤の性質を示す界面活性剤である。両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知の両性界面活性剤のいずれも使用することができる。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型、脂肪酸アミドプロピルベタイン型、アルキルイミダゾール型、アミノ酸型、およびアミンオキシド型の両性界面活性剤が挙げられる。これらの両性界面活性剤の少なくとも1つのアルキル基の炭素数は8個以上20個以下であることが好ましい。また、当該アルキル基は、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、水酸基、アミノ基などの置換基を有していてもよい。
【0068】
<<界面活性剤の含有割合>>
界面活性剤の含有割合は、多孔質半導体層の半導体成分100モル%に対して、0.05モル%以上であることが好ましい。半導体成分に対する界面活性剤の含有割合が上記下限値以上であれば、得られる色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させることができる。
【0069】
また、界面活性剤の含有割合は、増感色素100モル%に対して、10モル%以上であることが好ましい。増感色素に対する界面活性剤の含有割合が上記下限値以上であれば、得られる色素増感型太陽電池の電池特性を一層向上させることができる。
【0070】
界面活性剤の含有割合は、後述する色素増感型太陽電池の製造方法の「界面活性剤付与工程」において使用する界面活性剤の量(界面活性剤溶液の量および/または界面活性剤溶液の界面活性剤濃度)を調整したり、後述する色素増感型太陽電池の製造方法において「洗浄除去工程」を行うことで適宜調節することができる。
【0071】
<<界面活性剤の付与方法>>
増感色素222の表面に界面活性剤223を付与する方法は、特に限定されないが、界面活性剤223を含む溶液を、増感色素222を吸着させた多孔質半導体層221の表面に滴下する方法が挙げられる。
界面活性剤223を含む溶液の溶媒は特に限定されず、水;メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、ドデカノールなどのアルコール系;ヘキサン、トルエン、キシレン、ドデセン、テトラデセンなどの炭化水素系;アセトン、ジメチルケトンなどのケトン系;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系;カルボキシエチルエステルなどのエステル系;N-メチルピロリドンなどのアミン系;などが挙げられる。これらは一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、界面活性剤223を含む溶液は、通常、増感色素を含まない。
界面活性剤223を含む溶液は、後述するように、溶媒として水を含む界面活性剤水溶液であることが好ましい。そして、界面活性剤水溶液は、後述するように、酸性から塩基性など適宜pHを調整されていてもよい。
具体的な界面活性剤の付与方法は、色素増感型太陽電池の製造方法の項で説明する。
【0072】
<電解質層>
電解質層3は、光電極2と対向電極4とを分離するとともに、電荷移動を効率良く行わせるための層である。電解質層3は、通常、支持電解質、酸化還元対(酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で相互に変換しうる一対の化学種)、溶媒などを含有する。電解質層3に使用する支持電解質、酸化還元対、および溶媒などは特に限定されず、例えば特開2021-057497号公報に記載されているものを用いることができる。溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で増感色素表面の界面活性剤を溶解してもよいが、界面活性剤を溶解しないことが好ましい。
【0073】
電解質層3は、例えば、光電極2と対向電極4とを有するセルを作製し、その隙間に、電解質層3の構成成分を含有する溶液(電解液)を注入することで形成することができる。
【0074】
<対向電極>
対向電極4は、支持体41と、支持体41上に形成された導電膜42と、導電膜42上に形成された触媒層43とからなる。
【0075】
支持体41は、上述した支持体211と同様のものとすることができる。あるいは、支持体41として、チタン、SUS、アルミなどの箔や板のような透明性を有さない基材であって、その他の色素増感型太陽電池部材による腐食などがないものを用いることもできる。支持体41は、支持体211と同様の理由により、樹脂フィルムを用いて形成することが好ましい。樹脂フィルムとしては、上述した支持体211と同様のものを用いることができる。
【0076】
導電膜42は、上述した導電膜212と同様のものとすることができる。なお、導電膜42が後述するカーボンナノチューブなどの炭素ナノ構造体からなる場合、当該導電膜42は触媒層43を兼ねることもできるため、触媒層43を省略することができる。
【0077】
触媒層43は、色素増感型太陽電池1において、対向電極4から電解質層3に電子を渡すときの触媒として機能する。
【0078】
触媒層43としては、特に限定されることなく、導電性高分子、炭素ナノ構造体、貴金属の粒子や層、およびこれらの組み合わせなど、例えば、炭素ナノ構造体と貴金属粒子との混合物などの触媒として機能しうる成分を含む任意の触媒層を用いることができる。
【0079】
ここで、導電性高分子としては、例えば、ポリ(チオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ブチルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)、ポリ(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b]-1,4-ジオキシン)(PEDOT)等のポリチオフェン;ポリアセチレンおよびその誘導体;ポリアニリンおよびその誘導体;ポリピロールおよびその誘導体;ポリ(p-キシレンテトラヒドロチオフェニウムクロライド)、ポリ[(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシロキシ))-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ[(2-メトキシ-5-(3’,7’-ジメチルオクチロキシ)-1,4-フェニレンビニレン)]、ポリ[2-2’,5’-ビス(2’-エチルヘキシロキシ)フェニル]-1,4-フェニレンビニレン]などのポリフェニレンビニレン類;などを挙げることができる。
炭素ナノ構造体としては、例えば、天然黒鉛、活性炭、人造黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノバッド、カーボンアロイなどを挙げることができる。
貴金属粒子としては、触媒作用のあるものであれば特に限定されず、白金、パラジウム、およびルテニウムなどの公知の貴金属元素を含む粒子を適宜選択して用いることができる。これらは、例えば、コアシェル、複合粒子などの形状になっていてもよい。
【0080】
触媒層43の厚みは、特に限定されることなく、例えば0.005μm以上100μm以下とすることができる。
【0081】
触媒層43の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば、スパッタ、蒸着などの乾式方法や、導電性高分子、炭素ナノ構造体、貴金属粒子、または炭素ナノ構造体と貴金属粒子の両方を適当な溶媒に溶解または分散させて得られる混合液を、導電膜上に塗布または噴霧し、該混合液の溶媒を乾燥させることにより行うことができる。炭素ナノ構造体や貴金属粒子を用いる場合、混合液にさらにバインダーを含有させてもよく、バインダーとしては炭素ナノ構造体の分散性や基材との密着性の点から、水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基など官能基、及びこれら官能基のナトリウム塩などをもつ高分子を用いるのが好ましい。
【0082】
<他の部材>>
本発明の色素増感型太陽電池は、図1に示した構成に限定されず、光電極、電解質層、および対向電極の他に、例えば、下塗り層、保護層、反射防止層、ガスバリア層などを更に有していてもよい。
【0083】
例えば、図1に示した色素増感型太陽電池1では、導電膜212の上に下塗り層が設けられ得る。ここで、色素増感型太陽電池1では、電解質層3を構成する電解液が多孔質半導体層221を経て導電膜212に到達し、導電膜212から電解質層3へと電子が漏れ出す「逆電子移動」と呼ばれる内部短絡現象が発生しうる。そのため、光の照射と無関係な逆電流が発生して光電変換効率が低下する虞がある。そこで、導電膜212上に下塗り層を設けて、このような内部短絡現象を防ぐことができる。さらに、導電膜212上に下塗り層を設けることで、多孔質半導体層221と導電膜212と間の密着性を向上させることができる。
下塗り層は、内部短絡現象を防ぐことのできる(界面反応が起こりにくい)物質であれば、特に限定はされない。下塗り層は、例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、または酸化タングステンなどの材料を含む層とすることができる。また、下塗り層を形成する方法としては、上記材料を導電膜212に直接スパッタする方法、あるいは上記材料を溶媒に溶解した溶液、金属酸化物の前駆体である金属水酸化物を溶解した溶液、または有機金属化合物を水含有混合溶媒に溶解して得た金属水酸化物を含む溶液を、導電膜212上に塗布、乾燥し、必要に応じて焼結する方法がある。
【0084】
<光電変換のメカニズム>
図1に示す色素増感型太陽電池1においては、次のようなリサイクルが繰り返されることで、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。すなわち、(i)増感色素222が光を受けて励起されると、増感色素222の電子が取り出される。(ii)この電子は、導電膜212を介して光電極2から出て、外部の回路10を通って対向電極4に移動し、さらに触媒層43を介して、電解質層3に移動する。(iii)電解質層3に含まれる還元剤(ヨウ化物など)により、酸化状態の増感色素222が還元されて、増感色素222が再生され、再び光を吸収できる状態に戻る。
【0085】
なお、本発明の色素増感型太陽電池は、太陽を光源とするものに限定されず、例えば屋内照明を光源とするものであってもよい。
【0086】
(色素増感型太陽電池の製造方法)
本発明の色素増感型太陽電池の製造方法は、光電極の作製にあたり、多孔質半導体層に吸着された増感色素の表面に界面活性剤を付与する「界面活性剤付与工程」を含むことを必要とし、任意で、界面活性剤付与工程以外の他の工程を含み得る。ここで、他の工程としては、例えば、基材上に多孔質半導体層を形成する「多孔質半導体層形成工程」、多孔質半導体層の表面に増感色素を吸着させる「吸着工程」、および、増感色素の表面上の余分な界面活性剤を洗浄除去する「洗浄除去工程」が挙げられる。
【0087】
<光電極の作製>
<<界面活性剤付与工程>>
界面活性剤付与工程では、多孔質半導体層に吸着された増感色素の表面に界面活性剤を付与する。界面活性剤の付与方法としては、例えば、ディスペンサーやスポイトなどを用いて、所望の量の界面活性剤溶液を、増感色素を吸着させた多孔質半導体層の表面に滴下する方法や、増感色素を吸着させた多孔質半導体層を界面活性剤溶液中に浸漬させる方法が挙げられる。
【0088】
ここで、界面活性剤溶液は、例えば、1種以上の界面活性剤を水などの溶媒に溶解することにより得ることができる。
界面活性剤溶液の溶媒としては、「色素増感型太陽電池」の項で記載したものを用いることができる。なお、界面活性剤溶液は、通常、増感色素を含まない。また、界面活性剤としては、「色素増感型太陽電池」の項で記載したものを用いることができる。
【0089】
界面活性剤溶液は市販のものを使用してもよい。市販の界面活性剤溶液としては、例えば、クリンスルーTW-100、クリンスルーLC841、クリンスルーPA-900、マイドール12(以上、花王株式会社製)が挙げられる。
【0090】
界面活性剤溶液中の界面活性剤濃度は、所望する界面活性剤含有割合に応じて、例えば、水などの溶媒を添加して適宜調節することができる。
【0091】
界面活性剤溶液は、溶媒として水を含む界面活性剤水溶液であることが好ましい。ここで、界面活性剤水溶液のpHは、9.5以下であることが好ましく、8.5以下であることがより好ましく、また、5.0以上であることが好ましく、6.0以上であることがより好ましい。界面活性剤水溶液のpHが9.5以下であれば、多孔質半導体層に吸着させた増感色素の脱落を抑制することができ、得られる色素増感型太陽電池の電池特性の悪化を抑制することができる。
界面活性剤水溶液のpHは、例えば、界面活性剤水溶液中の界面活性剤の種類および/または濃度を変更することで、適宜調節することができる。
【0092】
また、界面活性剤付与工程は、増感色素を吸着させた多孔質半導体層に適用した界面活性剤溶液を乾燥させる工程を含んでいてもよい。
【0093】
<<他の工程>>
[多孔質半導体層形成工程]
多孔質半導体層形成工程では、多孔質半導体層を基材上に形成する。多孔質半導体層は、例えば、半導体粒子などの半導体成分を水などの溶媒に分散させてなる半導体成分分散液を基材上に適用(塗布)し、得られた塗膜を乾燥および加熱させることにより得ることができる。ここで、基材としては、「色素増感型太陽電池」の項で記載した、導電膜、光電極基板、および下塗り層を用いることができる。また、半導体成分は「色素増感型太陽電池」の項で記載したものを用いることができる。
半導体成分分散液の適用は、アプリケーターなどの公知の手段を用いて行うことができる。また、得られる塗膜の乾燥方法および加熱方法は特に限定されず、色素増感型太陽電池の多孔質半導体層の製造に用いられる従来公知の乾燥方法および加熱方法を用いることができる。
【0094】
[吸着工程]
吸着工程では、上記界面活性剤付与工程に先立って、多孔質半導体層の表面に増感色素を吸着させる。増感色素を吸着させる方法としては、例えば、増感色素を含む色素溶液中に多孔質半導体層を浸漬する方法、および、色素溶液を多孔質半導体層上に任意の方法で適用(塗布)する方法が挙げられる。
【0095】
色素溶液に用いる有機溶媒としては、特に限定されず、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトニトリルなどのニトリル類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、アミド類、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、芳香族、ニトロメタンなどが挙げられる。有機溶媒は、溶媒に存在している水分および気体を除去するために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
【0096】
色素溶液中の増感色素の濃度は、特に限定されないが、増感色素の濃度は4mM未満であることが好ましい。
【0097】
色素溶液中の増感色素としては、「色素増感型太陽電池」の項で記載したものを用いることができる。また、色素溶液は、任意に、増粘剤、充填剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0098】
吸着工程は、多孔質半導体層に吸着させた増感色素を洗浄および乾燥させる工程を含んでいてもよい。増感色素の洗浄に使用する溶媒は、特に限定されず、エタノールなどのアルコール類を使用することができる。
【0099】
[洗浄除去工程]
洗浄除去工程では、上記界面活性剤付与工程の後に、増感色素の表面上の余分な界面活性剤を除去する。余分な界面活性剤を洗浄除去する方法としては、例えば、界面活性剤が表面に付与された増感色素を有する多孔質半導体層上に洗浄剤を流す方法や、界面活性剤が表面に付与された増感色素を有する多孔質半導体層を洗浄剤に浸漬し、次いで洗浄剤から引き上げる方法が挙げられる。
界面活性剤の洗浄除去に用いる洗浄剤としては、特に限定されず、水、エタノールなどのアルコール類、および、これらの混合物が挙げられる。
洗浄除去工程は、余分な界面活性剤を除去した増感色素を乾燥させる工程を含んでいてもよい。
【0100】
<電解質層の形成>
上述のようにして作製した光電極に対して、「色素増感型太陽電池」の項で記載した電解液を従来公知の方法により適用(塗布)することにより、あるいは、光電極と対向電極とを有するセルを作製し、その隙間に電解液を注入することで、電解質層を形成することができる。塗布方法としては、スピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、インクジェット法、ディスペンスによる滴下法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、多層同時塗布方法等を採用することができる。また、任意で、電解質層の形成時に加熱してもよい。
【0101】
<対向電極の設置>
光電極上に電解質層を塗布により形成した場合には、形成した電解質層上に、対向電極を設置する。対向電極の設置方法としては、接着性樹脂や接着性シートを用いた公知の設置方法を採用することができる。対向電極としては、「色素増感型太陽電池」の項で記載したものを用いることができる。
このようにして、色素増感型太陽電池を作製することができる。
【0102】
(太陽電池モジュール)
本発明に係る太陽電池モジュールは、上述した本発明の色素増感型太陽電池が直列および/または並列に接続されてなるものである。モジュール構造としては、Z型、W型、並列型、集電配線型、モノリシック型などの公知の構造がある。
本発明の太陽電池モジュールは、本発明の色素増感型太陽電池を備えているため、電池特性に優れている。
【0103】
<太陽電池モジュールの製造方法>
本発明の太陽電池モジュールは、例えば、本発明の色素増感型太陽電池を平面状または曲面上に配列し、各電池間に非導電性の隔壁を設けるとともに、各電池の光電極や対向電極を導電性の部材を用いて電気的に接続することで得ることができる。
太陽電池モジュールの製造に使用する色素増感型太陽電池の数は特に限定されず、目的の電圧に応じて適宜決定することができる。
【実施例0104】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例における各種の測定および評価については、以下の方法に従って行なった。
【0105】
<電池特性の評価>
光源として、150Wキセノンランプ光源にAM1.5Gフィルタを装着した疑似太陽光照射装置(PEC-L11型、ペクセル・テクノロジーズ社製)を用いた。光量は、1sun(AM1.5G、100mW/cm(JIS C 8912のクラスA)に調整した。作製した色素増感型太陽電池をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続し、以下の電流電圧特性の測定を行った。
1sunの光照射下、バイアス電圧を0Vから0.8Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。出力電流の測定は、各電圧ステップにおいて、電圧を変化させた後、0.05秒後から0.15秒後までの値を積算することで行った。バイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまで変化させる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を光電流とした。
上記の電流電圧特性の測定結果より、開放電圧Voc(V)、曲線因子FF、および光電変換効率(%)を算出した。また、短絡電流密度Jsc(mA/cm)を測定した。
【0106】
<界面活性剤溶液のpHの測定>
pHメーター(HORIBA F-70S)を用いて、各実施例において、所定の界面活性剤濃度の界面活性剤溶液のpHを25℃で測定した。
【0107】
(実施例1)
<色素溶液の調製>
ルテニウム錯体色素(N719)72mgを200mLのメスフラスコに入れた。脱水エタノール190mLを混合し、撹拌した。メスフラスコに栓をしたのち超音波洗浄器による振動により、60分間撹拌した。溶液を常温に保った後、脱水エタノールを加え、全量を200mLとすることで、色素溶液を調製した。
【0108】
<界面活性剤溶液の準備>
クリンスルーTW-100(花王株式会社製、界面活性剤成分:ラウリルグルコシド、ポリヒドロキシアルキルエーテル;界面活性剤濃度50質量%の水溶液)を界面活性剤溶液として準備した。
【0109】
<光電極の作製>
支持体である透明基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、厚み:200μm)上に、導電膜である透明導電層(非晶性のインジウム-スズ酸化物(ITO))をコートして透明導電性基板(シート抵抗:13ohm/sq.)を得た。導電膜上に、酸化チタンペースト(PECC-C01-06、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)をベーカー式アプリケーターにより塗布した。ペーストを常温で10分間乾燥させた後、150℃の熱風循環式オーブン中でさらに5分間加熱乾燥し、多孔質半導体層(長さ:60mm、幅:5mm)を形成した。
その後、多孔質半導体層(長さ:60mm、幅:5mm)を形成した透明導電性基板を、調製した色素溶液(40℃)に浸し、軽く撹拌しながら、色素を吸着させた。90分(吸着時間)後、色素吸着済み酸化チタン膜を色素吸着容器から取り出し、エタノールにて洗浄して乾燥させた。
次いで、スポイトを用いて、界面活性剤溶液(0.1ml)を、色素を吸着させた多孔質半導体層の上に色素の表面全体に広がるように滴下し、乾燥させることで、光電極を作製した。
【0110】
<対向電極の作製>
透明基材(PETフィルム、厚み:200μm)上に対向電極用導電層である透明導電層(非晶性のITO)をコートして得た透明導電性基板(ITO/PET、シート抵抗:13ohm/sq.)を得た。
この透明導電性基板の透明導電層側の表面に、白金膜パターン幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。次いで、開口部(長さ:60mm、幅:5mm)を打ち抜き加工した金属製マスクを重ね合わせ、スパッタ法により白金膜パターン(触媒層)を形成し、触媒層形成部分が72%程度の光透過率を有する対向電極を得た。対向電極は、光電極と対向電極とをお互いの導電面を向かい合わせて重ね合せたときに、多孔質半導体層と触媒層とが一致するように作製した。
【0111】
<電解液の調製>
γ-ブチロラクトンに、下記物質を下記の濃度となるように加え、超音波洗浄機による振動により1時間撹拌したのち24時間以上暗所に静置して、電解液を調製した。
ヨウ素:0.04mol/L
ヨウ化リチウム:0.10mol/L
テトラブチルアンモニウムヨージド:0.40mol/L
【0112】
<色素増感型太陽電池の作製>
厚さ25μmの熱融着フィルム(SOLARONIX社製)の内側を直径9mmの円形状にくり抜き、このフィルムを対向電極上にセットした。電解液を滴下し、光電極を上から重ね合わせ、みの虫クリップで両側を挟むことで色素増感型太陽電池を作製した。そして、電池性能を評価した。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例2)
実施例1において、界面活性剤溶液の滴下および乾燥後、以下のようにして水を用いて余分な界面活性剤を洗浄除去し、次いで乾燥を行った以外は実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
<界面活性剤の洗浄除去>
実施例1と同様にして作製した光電極を水に浸漬させ、直ちに水から引き上げることにより、色素表面上の余分な界面活性剤を除去した。
【0114】
(実施例3)
実施例2において、界面活性剤溶液の滴下および乾燥後、水の代わりにエタノールを用いて余分な界面活性剤を洗浄除去し、次いで乾燥を行った以外は実施例2と同様にして、色素増感型太陽電池を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例4)
実施例1において、下記のように調製した界面活性剤溶液を使用し、かつ、界面活性剤溶液の滴下および乾燥後、エタノールを用いて余分な界面活性剤を洗浄除去し、次いで乾燥を行った以外は実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
<界面活性剤溶液の調製>
市販の食器用洗剤(界面活性剤成分:直鎖アルキル(C10-C14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム)を、界面活性剤成分濃度が2質量%になるように水で希釈して、界面活性剤溶液を調整した。
【0116】
(比較例1)
実施例1において、多孔質半導体層に吸着させた色素の表面に界面活性剤を付与しなかった以外は実施例1と同様にして、色素増感型太陽電池を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0117】
(比較例2)
比較例1において、多孔質半導体層に吸着させた色素を更に水で洗浄した以外は比較例1と同様にして、色素増感型太陽電池を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0118】
(比較例3)
比較例1において、多孔質半導体層に吸着させた色素を更にエタノールで洗浄した以外は比較例1と同様にして、色素増感型太陽電池を作製し、各種測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0119】
【表1】
【0120】
表1の実施例1~4と比較例1~3との比較により、増感色素の表面上に界面活性剤を存在させることで、短絡電流密度Jsc、開放電圧Voc、曲線因子FF、および光電変換効率が高く、電池特性に優れる色素増感型太陽電池が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、電池特性に優れる色素増感型太陽電池およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、電池特性に優れる太陽電池モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 色素増感太陽電池
2 光電極
3 電解質層
4 対向電極
10 回路
21 光電極基板
41 支持体
42 導電膜
43 触媒層
211 支持体
212 導電膜
221 多孔質半導体層
222 増感色素
223 界面活性剤
図1
図2