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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023068619
(43)【公開日】2023-05-17
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20230510BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230510BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20230510BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20230510BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/455
C23C16/40
C23C16/04
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147033
(22)【出願日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2021179687
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 成樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 博紀
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA07
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA42
4K030BA46
4K030BB14
4K030CA02
4K030CA04
4K030CA05
4K030CA12
4K030FA01
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA10
4K030KA41
4K030LA02
4K030LA14
4K030LA15
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB31
5F045AC02
5F045AC05
5F045AC11
5F045AC12
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045DC68
5F045DP03
5F045EE19
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH18
5F058BC02
5F058BC03
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF29
5F058BF37
(57)【要約】
【課題】金属膜の形成される領域の選択性を向上する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、下記(A)~(C)を含む。(A)ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面に有する基板を準備する。(B)前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスを供給する。(C)前記基板の前記表面に対して、プラズマ化した酸素を含む反応ガスを供給する。前記成膜方法は、前記原料ガスの供給と、前記プラズマ化した前記反応ガスの供給とを交互に行うことにより、前記元素Xの酸化膜である第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面に有する基板を準備することと、
前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスを供給することと、
前記基板の前記表面に対して、プラズマ化した酸素を含む反応ガスを供給することと、
を含み、
前記原料ガスの供給と、前記プラズマ化した前記反応ガスの供給とを交互に行うことにより、前記元素Xの酸化膜である第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成することを含む、成膜方法。
【請求項2】
ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面に有する基板を準備することと、
前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスを供給することと、
前記基板の前記表面に対して、Oガスをプラズマ化しないで供給することと、
を含み、
前記原料ガスの供給と、前記Oガスの供給とを交互に行うことにより、前記元素Xの酸化膜である第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成することを含む、成膜方法。
【請求項3】
前記第2膜は、ボロンを実質的に含有しない、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記基板を準備することは、前記第2膜に対して前記第2膜とは異なる材料で形成される第4膜の上に選択的に前記第1膜を形成することを含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記第2膜と前記第4膜とを表面に有する前記基板を準備することと、
前記第2膜に対して前記第4膜の上に選択的に前記第1膜を形成することと、
前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に前記第3膜を形成することと、
前記第3膜に対して前記第4膜又は前記第1膜の上に選択的に前記第1膜を再び形成することと、
前記第1膜に対して前記第3膜の上に選択的に前記第3膜を再び形成することと、
をこの順番で含む、請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記準備する前記基板は前記表面に凹部を有し、前記凹部の内部のみで前記第1膜が露出しており、前記第1膜は少なくとも前記凹部の底面で露出する、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記準備する前記基板は前記表面に凹部を有し、前記凹部の内部のみで前記第2膜が露出しており、前記第2膜は少なくとも前記凹部の底面で露出する、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記元素Xは、金属元素を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記元素Xは、遷移金属元素を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記元素Xは、半導体元素を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記プラズマ化した前記反応ガスの供給とを繰り返し行うことにより、前記元素Xの酸化膜である前記第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記プラズマ化した前記反応ガスの供給と、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記プラズマ化した前記反応ガスの供給とを繰り返し行うことにより、前記元素Xの酸化膜である前記第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成することを含む、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記Oガスの供給とを繰り返し行うことにより、前記元素Xの酸化膜である前記第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成することを含む、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記Oガスの供給と、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記Oガスの供給とを繰り返し行うことにより、前記元素Xの酸化膜である前記第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成することを含む、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記元素X1と前記元素X2のいずれか1つは金属元素であって残りの1つは半導体元素である、請求項11~14のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記元素Xは、互いに異なる3つ以上の元素を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記原料ガスの供給と、前記プラズマ化した前記反応ガスの供給とを100℃~800℃の温度で交互に行う、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記原料ガスの供給と、前記Oガスの供給とを100℃~800℃の温度で交互に行う、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項19】
ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面に有する基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板の前記表面に対してガスを供給する供給部と、
前記ガスをプラズマ化するプラズマ生成部と、
前記供給部と前記プラズマ生成部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスの供給と、プラズマ化した酸素を含む反応ガスの供給とを交互に行うことにより、前記元素Xの酸化膜である第3膜を前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成する制御を行う、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の窒化膜の形成方法は、第1の下地膜と第2の下地膜の表面に塩素ガスを吸着させる工程と、塩素ガスを吸着させた第1の下地膜と第2の下地膜の一方に対して選択的に窒化膜を形成する工程と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-174919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に酸化膜を選択的に形成する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、下記(A)~(C)を含む。(A)ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面に有する基板を準備する。(B)前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスを供給する。(C)前記基板の前記表面に対して、プラズマ化した酸素を含む反応ガスを供給する。前記成膜方法は、前記原料ガスの供給と、前記プラズマ化した前記反応ガスの供給とを交互に行うことにより、前記元素Xの酸化膜である第3膜を、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に形成する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に酸化膜を選択的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図2図2は、S101で準備する基板の第1例を示す図である。
図3図3は、S101で準備する基板の第2例を示す図である。
図4図4は、S101で準備する基板の第3例を示す図である。
図5図5は、S101で準備する基板の第4例を示す図である。
図6図6は、S101で準備する基板の第5例を示す図である。
図7図7は、S101で準備する基板の第6例を示す図である。
図8図8は、S101で準備する基板の第7例を示す図である。
図9図9は、S101で実施されるS201~S205の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、S101で準備する基板の第8例を示す図である。
図11図11は、一実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図12図12は、例1の処理前の基板を示すSEM写真である。
図13図13は、例1の処理後の基板を示すSEM写真である。
図14図14は、例9の処理前の基板を示すSEM写真である。
図15図15は、例9の処理後の基板を示すSEM写真である。
図16図16は、例13の処理前の基板を示すSEM写真である。
図17図17は、例13の処理後の基板を示すSEM写真である。
図18図18は、例14の処理前の基板を示すSEM写真である。
図19図19は、例14の処理後の基板を示すSEM写真である。
図20図20は、変形例に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図21図21は、図20においてKが2以上の整数である場合の手順を示すフローチャートである。
図22図22は、図21の処理例を示す図である。
図23図23は、図21の別の処理例を示す図である。
図24図24は、S101で準備する基板の第9例を示す図である。
図25図25は、S101で準備する基板の第10例を示す図である。
図26図26は、例15の処理前の基板を示すSEM写真である。
図27図27は、例15の処理後の基板を示すSEM写真である。
図28図28は、例16の処理前の基板を示すSEM写真である。
図29図29は、例16の処理後の基板を示すSEM写真である。
図30図30は、例17の処理前の基板を示すSEM写真である。
図31図31は、例17の処理後の基板を示すSEM写真である。
図32図32は、第2変形例に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図33図33は、例5の処理前の基板を示すSEM写真である。
図34図34は、例5の処理後の基板を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
先ず、図1を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば図1に示すステップS101~S106を含む。なお、成膜方法は、少なくともステップS101、S102及びS104を含めばよい。ステップS102及びS104の順番は逆でもよく、ステップS104がステップS102の前に行われてもよい。成膜方法は、図1に示すステップS101~S106以外のステップを含んでもよい。
【0010】
図1のステップS101は、基板Wを準備することを含む(図2参照)。基板Wは、その表面Waに、第1膜W1と第2膜W2とを有する。第1膜W1と第2膜W2は、例えば不図示の下地基板の上に形成される。下地基板は、シリコンウェハ、又は化合物半導体ウェハである。化合物半導体ウェハは、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0011】
第1膜W1は、ボロン(B)を含有する。第1膜W1におけるB含有量は、例えば20原子%~100原子%であり、好ましくは40原子%~100原子%である。第1膜W1は、例えば、B膜、BN膜、BNC膜、BO膜、BNOC膜、SiBN膜、SiBCN膜又はSiOBN膜である。ここで、BN膜とは、ボロン(B)と窒素(N)を含む膜という意味である。BN膜におけるBとNの原子比は1:1には限定されない。BN膜以外のBNC膜等についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0012】
第2膜W2は、第1膜W1とは異なる材料で形成される。第2膜W2は、Bを実質的に含有しない。Bを実質的に含有しないとは、B含有量が0原子%~5原子%であることをいう。第2膜W2におけるB含有量は、少ないほど好ましい。第2膜W2は、絶縁膜、導電膜、半導体膜のいずれでもよい。
【0013】
絶縁膜は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、又はTiO膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は、通常1:2であるが、1:2には限定されない。SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、及びTiO膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。絶縁膜は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。
【0014】
半導体膜は、特に限定されないが、例えばSi膜、SiGe膜、GaN膜である。半導体膜は、単結晶膜、多結晶膜、及びアモルファス膜のいずれでもよい。
【0015】
導電膜は、例えば金属膜である。金属膜は、特に限定されないが、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、Mo膜、W膜、又はTi膜である。導電膜は、金属窒化膜であってもよい。金属窒化膜は、特に限定されないが、例えばTiN膜、又はTaN膜である。ここで、TiN膜とは、チタン(Ti)と窒素(N)を含む膜という意味である。TiN膜におけるTiとNの原子比は、通常1:1であるが、1:1には限定されない。TaN膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0016】
図1のステップS102は、基板Wの表面Waに対して原料ガスを供給することを含む。原料ガスは、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。元素Xは、ステップS104で酸化されるものであれば特に限定されないが、好ましくは金属元素であり、より好ましくは遷移金属元素である。遷移金属元素は、例えばTi、W、V、Al、Mo、Sn又はHfである。原料ガスの具体例としては、TiClガス、WClガス、VClガス、AlClガス、MoClガス、SnClガス、又はHfClガスが挙げられる。元素Xは、半導体元素であってもよく、具体的にはSi又はGeであってもよい。原料ガスは、ハロゲン化シリコンガス又はハロゲン化ゲルマニウムガスである。ハロゲン化シリコンガスの具体例としては、SiClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiClガスSiHClガス、SiHガス、又はSiClCHガス等が挙げられる。ハロゲン化ゲルマニウムガスの具体例としては、GeClガス等が挙げられる。原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0017】
図1のステップS103は、基板Wの表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS102で基板Wの表面Waに吸着しなかった余剰の原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0018】
図1のステップS104は、基板Wの表面Waに対して反応ガスを供給することを含む。ステップS104は、反応ガスをプラズマ化することを含み、プラズマ化した反応ガスを基板Wの表面Waに対して供給することを含む。反応ガスは、酸素を含有し、吸着した原料ガスに含まれる元素Xを酸化することで、元素Xの酸化膜である第3膜W3を形成する(図2参照)。反応ガスは、例えばOガス、Oガス、COガス、NOガス、NOガス、又はHOガスである。反応ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0019】
なお、反応ガスは、上記ステップS104のみならず、ステップS102~S105の全てで供給してもよい。但し、反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS104のみで実施される。反応ガスは、プラズマ化されることで、基板Wの表面Waに吸着した原料ガスと反応しやすくなるからである。
【0020】
図1のステップS105は、基板Wの表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS104で基板Wの表面Waと反応しなかった余剰の反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0021】
図1のステップS106では、上記ステップS102~S105をN(Nは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。Nは2以上の整数であってもよく、上記ステップS102~S105が繰り返し実施されてもよい。第3膜W3の膜厚を厚くすることができる。
【0022】
上記ステップS102~S105の実施回数がN回未満である場合(ステップS106、NO)、第3膜W3の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS102~S105を再度実施する。Nは、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上である。Nは、好ましくは1000以下である。
【0023】
一方、上記ステップS102~S105の実施回数がN回に達した場合(ステップS106、YES)、第3膜W3の膜厚が目標値に達しているので、今回の処理が終了される。
【0024】
本実施形態によれば、プラズマALD(Atomic Layer Deposition)法により、第1膜W1に対して第2膜W2の上に選択的に第3膜W3を形成する。選択的に第3膜W3を形成するには、第1膜W1に対する原料ガスの吸着が弱く、第1膜W1の上に吸着した原料ガスがプラズマ化された反応ガスとの衝突又は反応によって成膜反応(第3膜W3の形成)を進めることなく脱離することが重要である。
【0025】
第1膜W1の上に吸着した原料ガスの脱離しやすさは、第1膜W1に対する原料ガスの吸着の強さに応じて変わり、第1膜W1の材料に応じて変わる。第1膜W1の上に吸着した原料ガスの脱離しやすさは原料ガスが第1膜W1表面の原子との反応により解離され、後の反応で酸化されやすい分子になるか否かでも変わる。ボロンを含有する第1膜W1の上では、ボロンを実質的に含有しない第2膜W2の上に比べて、原料ガスであるハロゲン化物の吸着が弱いか生じない、又はハロゲン化物の解離が生じにくいと考えられる。
【0026】
酸素を含有する反応ガスをプラズマ化することで、酸素イオンまたは酸素ラジカルが発生する。酸素イオンは、プラズマによる電位により加速され、基板Wに衝突する。加速された酸素イオンまたは酸素ラジカルの衝突によって、表面Wa上の物質を物理的に叩き飛ばすスパッタリングが生じると考えられる。又は酸素イオンまたは酸素ラジカルが表面Wa上の物質との化学反応により成膜が生じると考えられる。
【0027】
ボロンを実質的に含有しない第2膜W2に吸着したハロゲン化物は、十分に強く吸着されているか、又は酸化しやすい分子に解離されており、酸素イオンまたは酸素ラジカルの衝突によって酸化しやすい。それゆえ、第2膜W2の上では、酸化膜の形成が進むと考えられる。一方、ボロンを含有する第1膜W1に吸着したハロゲン化物は、弱く吸着されているか、又は酸化しやすい分子に解離されてないので、酸素イオンまたは酸素ラジカルの衝突により叩き飛ばされる。それゆえ、第1膜W1の上では、酸化膜の形成が進まないと考えられる。
【0028】
第1膜W1の上で酸化膜の形成が進まない理由として、スパッタリングまたは化学反応によってハロゲン化物が脱離されること、又は酸素イオンまたは酸素ラジカルの衝突によって第1膜W1がエッチングされハロゲン化物がリフトオフされること、も考えられる。
【0029】
なお、図32に示すように、ステップS104の代わりに、ステップS109が行われてもよい。ステップS109は、基板Wの表面Waに対してOガスをプラズマ化しないで供給することを含む。Oガスは、プラズマ化しないで供給するので、はじめは酸素イオンおよび酸素ラジカルを含まない。Oガスは、加熱された基板Wの表面Waに衝突することで、酸素ラジカルを生じる。酸素ラジカルはボロンを実質的に含有しない第2膜W2に吸着したハロゲン化物を酸化し、酸化膜の形成が進む。一方、ボロンを含有する第1膜W1に吸着したハロゲン化物は、叩き飛ばされることで酸化膜の形成が進まない。
【0030】
なお、酸素を含有しない反応ガス、例えばHガス又はNHガスをプラズマ化することでも、同様にイオン又はラジカルなどの活性種が発生するが、これらの活性種は成膜反応を進めやすい。それゆえ、酸素を含有しない反応ガスを使用すると、第2膜W2の上だけではなく第1膜W1の上でも成膜反応が進みやすく、選択性が損なわれると考えられる。従って、プラズマ化するガスとしては、酸素を含有するガスが適している。
【0031】
また、第1膜W1に吸着したハロゲン化物は、酸素イオンまたは酸素ラジカルの衝突によって分解しにくい。例えば、TiClなどのハロゲン化物は、Ti[N(CHなどの有機金属錯体に比べて、酸素イオンまたは酸素ラジカルの衝突によって分解しにくい。第1膜W1に吸着したハロゲン化物を第1膜W1から脱離させるには、酸素イオンまたは酸素ラジカルの衝突、および基板からの熱によって分解されにくいことが重要である。従って、原料ガスとしては、ハロゲンを含有するガスが適している。
【0032】
さらに、ハロゲン化物と酸素を共にプラズマ化するプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法では、酸素イオンまたは酸素ラジカルに加えてハロゲン化物が解離して生じるイオン又はラジカル等の活性種が発生する。ハロゲン化物から生じた活性種は反応性が大きく、第2膜W2の上だけではなく第1膜W1の上でも成膜反応が進みやすく、選択性が損なわれると考えられる。選択性を生じるためにはプラズマALD法を使用することが重要である。
【0033】
上記ステップS102~S105では、原料ガスの第1膜W1からの脱離を促進すべく、基板Wの温度を100℃以上に制御してもよい。基板Wの温度が100℃未満である場合、第1膜W1の上で原料ガスの脱離が十分に起こらずに原料ガスが物理吸着してしまい、第3膜W3が基板Wの表面Wa全体に形成されてしまう。基板Wの温度は、好ましくは300℃以上である。基板Wの温度は、好ましくは800℃以下である。
【0034】
次に、図3図5を参照して、ステップS101で準備する基板Wが表面Waに凹部Wa1を有し、凹部Wa1の内部のみで第2膜W2が露出する場合について説明する。第2膜W2は、図3図5に示すように、少なくとも凹部Wa1の底面で露出する。この場合、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の内部に第3膜W3を充填することができる。なお、図3図5において、第3膜W3は、凹部Wa1の一部を埋めるが、凹部Wa1の全体を埋めてもよい。後者の場合、図5において、第1膜W1は、エッチングによって第2膜W2の凸部の頂面にのみ残してもよい。
【0035】
図3のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面全体に第1膜W1を形成し、次に第1膜W1の表面の一部をエッチングする。その結果、凹部Wa1が第1膜W1の一部を貫通して形成され、第2膜W2が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の底面のみで第3膜W3が成長する。
【0036】
図4のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面の一部をエッチングして第2膜W2の表面に凹部を形成する。次に、その凹部を埋める第1膜W1を形成する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polising)又はエッチングにより第2膜W2が露出するまで第1膜W1を加工する。最後に、第1膜W1に対して第2膜W2を選択的にエッチングする。その結果、凹部Wa1が第1膜W1の一部を貫通して形成され、第2膜W2が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の底面のみで第3膜W3が成長する。
【0037】
図5のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面の一部をエッチングして第2膜W2の表面に凹部を形成する。次に、その凹部の内部に対して凹部の外部(つまり凸部の頂面)に選択的に第1膜W1を形成する。その結果、第2膜W2が凹部Wa1の底面と側面の下部で露出する。なお、ステップS101の途中で第1膜W1が凹部Wa1の底面にも堆積してしまう場合、底面に堆積した第1膜W1はエッチングなどで除去される。その後、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の底面と側面の下部で第3膜W3が成長する。
【0038】
次に、図6図8を参照して、ステップS101で準備する基板Wが表面Waに凹部Wa1を有し、凹部Wa1の内部のみで第1膜W1が露出する場合について説明する。第1膜W1は、図6図8に示すように、少なくとも凹部Wa1の底面で露出する。この場合、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の底面以外に第3膜W3を形成できる。
【0039】
図6のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面全体に第2膜W2を形成し、次に第2膜W2の表面の一部をエッチングする。その結果、凹部Wa1が第2膜W2の一部を貫通して形成され、第1膜W1が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の側面と凹部Wa1の外部(凸部の頂面)で第3膜W3が成長する。
【0040】
図7のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面の一部をエッチングして第1膜W1の表面に凹部を形成する。次に、その凹部を埋める第2膜W2を形成する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polising)又はエッチングにより第1膜W1が露出するまで第2膜W2を加工する。最後に、第2膜W2に対して第1膜W1を選択的にエッチングする。その結果、凹部Wa1が第2膜W2の一部を貫通して形成され、第1膜W1が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の側面と凹部Wa1の外部(凸部の頂面)で第3膜W3が成長する。
【0041】
図8のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面の一部をエッチングして第1膜W1の表面に凹部を形成する。次に、その凹部の内部に対して凹部の外部(つまり凸部の頂面)に選択的に第2膜W2を形成する。その結果、第1膜W1が凹部Wa1の底面と側面の下部で露出する。なお、ステップS101の途中で第2膜W2が凹部Wa1の底面にも堆積してしまう場合、底面に堆積した第2膜W2はエッチングなどで除去される。その後、ステップS102~S106を実施することで、凹部Wa1の外部(つまり凸部の頂面)と凹部Wa1の側面の上部とで第3膜W3が成長する。第3膜W3は、図8に示すように凹部Wa1の内部の空隙(エアギャップ)を閉じ込めてもよい。
【0042】
次に、図9図10を参照して、ステップS101の変形例について説明する。ステップS101は、図10に示すように、第2膜W2に対して第2膜W2とは異なる材料で形成される第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成することを含んでもよい。第1膜W1は、上記の通りボロンを含有する。
【0043】
第4膜W4は、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成できるものであればよく、絶縁膜、導電膜、半導体膜のいずれでもよい。例えば、第2膜W2に対する第1膜W1のインキュベーションタイムが、第4膜W4に対する第1膜W1のインキュベーションタイムよりも長ければよい。このインキュベーションタイムの差を利用して、選択的に第1膜W1を形成できる。
【0044】
インキュベーションタイムとは、成膜処理の開始(例えば原料ガス又は反応ガスの供給開始)から、実際に成膜が開始するまでの時間差のことである。
【0045】
ステップS101は、例えば図9に示すステップS201~S205を含む。なお、ステップS101は、少なくともステップS201及びS203を含めばよい。ステップS201及びS203の順番は逆でもよく、ステップS203がステップS201の前に行われてもよい。ステップS201及びS203が同時に行われてもよく、CVD法が用いられてもよい。
【0046】
図9のステップS201は、基板Wの表面に対して第2原料ガスを供給することを含む。第2原料ガスは、ボロンを含有する。第2原料ガスは、例えばトリスジメチルアミノボラン(TDMAB:C18BN)を含む。第2原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0047】
なお、第2原料ガスは、TDMABを含むものには限定されず、ボロンを含有するものであればよい。例えば、ジボラン(B)、三塩化ホウ素(BCl)、三フッ化ホウ素(BF)、トリスエチルメチルアミノボラン(C24BN)、トリメチルボラン(CB)、又はトリエチルボラン(C15B)、シクロトリボラザン(B)等を含むものであってもよい。
【0048】
図9のステップS202は、基板Wの表面に対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS201で基板Wの表面Waに吸着しなかった余剰の第2原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0049】
図9のステップS203は、基板Wの表面に対して第2反応ガスを供給することを含む。第2反応ガスは、例えば窒素を含有し、吸着した第2原料ガスを窒化することで、第1膜W1(例えばBN膜)を形成する。第2反応ガスは、例えばNガスとHガスの混合ガス、又はNHガスを含む。第2反応ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0050】
なお、第2反応ガスは、窒素含有ガス、酸素含有ガス、及び還元性ガスの少なくとも1つを含めばよい。窒素含有ガスは、第2原料ガスを窒化することで、窒化ボロン膜を形成する。窒素含有ガスは、例えばNH、N、N又はNを含む。酸素含有ガスは、第2原料ガスを酸化することで、酸化ボロン膜を形成する。酸素含有ガスは、例えばO、O、HO、NO又はNOを含む。還元性ガスは、第2原料ガスを還元することで、ボロン膜を形成する。還元性ガスは、例えばH又はSiHを含む。
【0051】
ステップS203は、第2反応ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した第2反応ガスを基板Wの表面Waに対して供給することを含んでもよい。第2反応ガスをプラズマ化することで、第1膜W1の形成を促進できる。
【0052】
なお、第2反応ガスは、上記ステップS203のみならず、ステップS201~S204の全てで供給してもよい。但し、第2反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS203のみで実施される。第2反応ガスは、プラズマ化されることで、基板Wの表面に吸着した第2原料ガスとの反応が促進されるようになるからである。
【0053】
図9のステップS204は、基板Wの表面に対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS203で基板Wの表面Waと反応しなかった余剰の第2反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0054】
図9のステップS205では、上記ステップS201~S204をM(Mは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。Mは2以上の整数であってもよく、上記ステップS201~S204が繰り返し実施されてもよい。第1膜W1の膜厚を厚くすることができる。
【0055】
上記ステップS201~S204の実施回数がM回未満である場合(ステップS205、NO)、第1膜W1の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS201~S204を再度実施する。第1膜W1の膜厚の目標値は、好ましくは300Å以下であり、より好ましくは100Å以下であり、更に好ましくは50Å以下である。5Å程度の膜厚であってもよい。
【0056】
一方、上記ステップS201~S204の実施回数がM回に達した場合(ステップS205、YES)、第1膜W1の膜厚が目標値に達しているので、今回の処理が終了される。
【0057】
なお、図9に示す第1膜W1の形成方法は、ALD法であるが、CVD法であってもよい。ALD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを交互に行う。一方、CVD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを同時に行う。
【0058】
なお、第1膜W1は、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)のように、分子が化学吸着した分子膜であってもよい。分子は、気体又は液体の状態で基板表面に供給される。分子は、基板表面の所望の領域に選択的に化学吸着する第1官能基を有する。第1官能基は、特に限定されないが、例えばチオール基(SH基)、カルボキシ基(COOH基)または水酸基(OH基)である。分子は、第1官能基に加えて、Bを含有する第2官能基を含む。第2官能基は、BHまたはB(CHなどの、炭化水素基の炭素の少なくとも一部をホウ素(B)に置換した官能基である。第1膜W1は、分子膜を熱分解したものであってもよい。
【0059】
次に、図20を参照して、変形例に係る成膜方法について説明する。図20に示すように、本変形例の成膜方法は、ステップ301と、ステップS201~S205と、ステップS102~S106と、ステップS302と、を有する。
【0060】
図20におけるステップS201~S205は、図9におけるステップS201~S205と同様であるので、説明を省略する。なお、成膜方法は、ステップS201~S205の全てを有しなくてもよい。第1膜W1を所望の領域に選択的に形成できればよい。
【0061】
また、図20におけるステップS102~S106は、図1におけるステップS102~S106と同様であるので、説明を省略する。なお、成膜方法は、ステップS102~S106の全てを有しなくてもよい。第3膜W3を所望の領域に選択的に形成できればよい。
【0062】
ステップS301は、第2膜W2と第4膜W4とを表面Waに有する基板Wを準備することを含む(図22参照)。その後、ステップS201~S205によって、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1が形成される。更にその後、ステップS102~S106によって、第1膜W1に対して第2膜W2の上に選択的に第3膜W3が形成される。
【0063】
ステップS302は、一連の処理をK(Kは1以上の整数)回実施したか否かを確認することを含む。一連の処理は、ステップS201~S204をM(Mは1以上の整数)回実施することと、ステップS102~S105をN(Nは1以上の整数)回実施することと、を含む。
【0064】
実施回数がK回未満である場合(ステップS302、NO)、第3膜W3の膜厚が不十分であるので、制御部100は一連の処理を再度実施する。一方、実施回数がK回に達した場合(ステップS302、YES)、制御部100は今回の処理を終了する。Kは、好ましくは2以上の整数である。Kが2以上の整数であれば、第1膜W1を補充しつつ、第3膜W3の膜厚を増加できる。
【0065】
次に、Kが2以上の整数である場合の成膜方法について、図21図23を参照して説明する。図21に示すように、成膜方法は、ステップS401~S405を有してもよい。図21において、Lは(K-1)に等しい。
【0066】
ステップS401は、ステップS301と同様に、第2膜W2と第4膜W4とを表面Waに有する基板Wを準備することを含む(図22参照)。第4膜W4は、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成できるものであればよい。例えば第2膜W2に対する第1膜W1のインキュベーションタイムが、第4膜W4に対する第1膜W1のインキュベーションタイムよりも長ければよい。
【0067】
ステップS402は、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成することを含む(図22参照)。ステップS402は、ステップS201~S204をM回実施することを含む。Mは、1以上の整数である。Mは、2以上の整数であってもよい。
【0068】
ステップS403は、第1膜W1に対して第2膜W2の上に選択的に第3膜W3を形成することを含む(図22参照)。ステップS403は、ステップS102~S105をN回実施することを含む。Nは、1以上の整数である。Nは、2以上の整数であってもよい。
【0069】
ステップS404は、第3膜W3に対して第1膜W1の上に選択的に第1膜W1を再び形成することを含む(図22参照)。ステップS404は、ステップS402と同様に、ステップS201~S204をM回実施することを含む。
【0070】
なお、ステップS403において第3膜W3を形成する過程で、第1膜W1が薄くなることがあり、第1膜W1が消失することがある(図23参照)。第1膜W1が消失する場合、ステップS404は、第1膜W1の代わりに第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を再び形成することを含む(図23参照)。
【0071】
ステップS405は、第1膜W1に対して第3膜W3の上に選択的に第3膜W3を再び形成することを含む。ステップS405は、ステップS403と同様に、ステップS102~S105をN回実施することを含む。
【0072】
ステップS406は、ステップS404~S405をL(L=(K-1))回実施したか否かを確認することを含む。実施回数がL回未満である場合(ステップS406、NO)、制御部100はステップS404~S405を再度実施する。一方、実施回数がL回に達した場合(ステップS406、YES)、制御部100は今回の処理を終了する。
【0073】
次に、図24を参照して、ステップS101の別の変形例について説明する。図24のステップS101では、先ず凹凸パターンを有する第2膜W2を準備する。次に、ALD法又はCVD法で、第2膜W2の全体に、第2膜W2の凹凸パターンに沿って第1膜W1を形成する。次に、CMP又はエッチングによって、第2膜W2の凸部の頂面を露出する。このとき、第2膜W2の凹部の側面と底面には、第1膜W1を残す。その後、ステップS102~S106を実施することで、凸部の頂面に第3膜W3を形成できる。
【0074】
次に、図25を参照して、ステップS101のさらに別の変形例について説明する。図25のステップS101では、先ず凹凸パターンを有する第2膜W2を準備する。次に、第2膜W2の凹部を埋める第1膜W1を形成する。第1膜W1は、液体である。液体は、例えば、TDMABなどの有機配位子を有するB含有分子を、Nプラズマなどで重合させたものである。次に、第2膜W2の凹部に埋め込んだ液体をOプラズマなどで分解させ、第2膜W2の凹部の側面と底面に第1膜W1を残す。第2膜W2の凸部の頂面は、露出したままである。図示しないが、第2膜W2の凹部に埋め込んだ液体をHプラズマなどで改質し、第2膜W2の凹部に埋め込まれた第1膜W1を形成してもよい。その後、ステップS102~S106を実施することで、凸部の頂面に第3膜W3を形成できる。
【0075】
次に、図11を参照して、成膜装置1について説明する。成膜装置1は、略円筒状の気密な処理容器2を備える。処理容器2の底壁の中央部には、排気室21が設けられている。排気室21は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室21には、例えば排気室21の側面において、排気配管22が接続されている。
【0076】
排気配管22には、圧力調整部23を介して排気部24が接続されている。圧力調整部23は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管22は、排気部24によって処理容器2内を減圧できるように構成されている。処理容器2の側面には、搬送口25が設けられている。搬送口25は、ゲートバルブ26によって開閉される。処理容器2内と搬送室(図示せず)との間における基板Wの搬入出は、搬送口25を介して行われる。
【0077】
処理容器2内には、ステージ3が設けられている。ステージ3は、基板Wの表面Waを上に向けて基板Wを水平に保持する保持部である。ステージ3は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材31によって支持されている。ステージ3の表面には、例えば直径が300mmの基板Wを載置するための略円形状の凹部32が形成されている。凹部32は、基板Wの直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部32の深さは、例えば基板Wの厚さと略同一に構成される。ステージ3は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ3は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部32の代わりにステージ3の表面の周縁部に基板Wをガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0078】
ステージ3には、例えば接地された下部電極33が埋設される。下部電極33の下方には、加熱機構34が埋設される。加熱機構34は、制御部100からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ3に載置された基板Wを設定温度に加熱する。ステージ3の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ3の全体が下部電極として機能するので、下部電極33をステージ3に埋設しなくてよい。ステージ3には、ステージ3に載置された基板Wを保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン41が設けられている。昇降ピン41の材料は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン41の下端は、支持板42に取り付けられている。支持板42は、昇降軸43を介して処理容器2の外部に設けられた昇降機構44に接続されている。
【0079】
昇降機構44は、例えば排気室21の下部に設置されている。ベローズ45は、排気室21の下面に形成された昇降軸43用の開口部211と昇降機構44との間に設けられている。支持板42の形状は、ステージ3の支持部材31と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン41は、昇降機構44によって、ステージ3の表面の上方と、ステージ3の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0080】
処理容器2の天壁27には、絶縁部材28を介してガス供給部5が設けられている。ガス供給部5は、上部電極を成しており、下部電極33に対向している。ガス供給部5には、整合器511を介して高周波電源512が接続されている。高周波電源512から上部電極(ガス供給部5)に100kHz~2.45GHz、好ましくは450kHz~100MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部5)と下部電極33との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマ生成部51は、整合器511と、高周波電源512と、を含む。なお、プラズマ生成部51は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。また、プラズマ化されたガスがリモートプラズマ源より供給されてもよい。
【0081】
ガス供給部5は、中空状のガス供給室52を備える。ガス供給室52の下面には、処理容器2内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔53が例えば均等に配置されている。ガス供給部5における例えばガス供給室52の上方には、加熱機構54が埋設されている。加熱機構54は、制御部100からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0082】
ガス供給室52には、ガス供給路6が設けられている。ガス供給路6は、ガス供給室52に連通している。ガス供給路6の上流には、それぞれガスラインL61、L62、L63を介して、ガス源G61、G62、G63が接続されている。なお、ガス源の数、及びガス種は、図示のものには限定されない。
【0083】
ガス源G61は、TiClのガス源であり、ガスラインL61を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL61には、マスフローコントローラM61、貯留タンクT61及びバルブV61が、ガス源G61の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM61は、ガスラインL61を流れるTiClガスの流量を制御する。貯留タンクT61は、バルブV61が閉じられた状態で、ガスラインL61を介してガス源G61から供給されるTiClガスを貯留して貯留タンクT61内におけるTiClガスの圧力を昇圧できる。バルブV61は、開閉動作により、ガス供給路6へのTiClガスの供給・遮断を行う。
【0084】
ガス源G62は、Arのガス源であり、ガスラインL62を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL62には、マスフローコントローラM62及びバルブV62が、ガス源G62の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM62は、ガスラインL62を流れるArガスの流量を制御する。バルブV62は、開閉動作により、ガス供給路6へのArガスの供給・遮断を行う。
【0085】
ガス源G63は、Oのガス源であり、ガスラインL63を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL63には、マスフローコントローラM63、及びバルブV63が、ガス源G63の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM63は、ガスラインL63を流れるOガスの流量を制御する。バルブV63は、開閉動作により、ガス供給路6へのOガスの供給・遮断を行う。
【0086】
成膜装置1は、制御部100と、記憶部101とを備える。制御部100は、CPU、RAM、ROM等(いずれも図示せず)を備えており、例えばROMや記憶部101に格納されたコンピュータプログラムをCPUに実行させることによって、成膜装置1を統括的に制御する。具体的には、制御部100は、記憶部101に格納された制御プログラムをCPUに実行させて成膜装置1の各構成部の動作を制御することで、基板Wに対する成膜処理等を実行する。
【0087】
次に、図11を再度参照して、成膜装置1の動作について説明する。先ず、制御部100は、ゲートバルブ26を開いて搬送機構により基板Wを処理容器2内に搬送し、ステージ3に載置する。基板Wは、表面Waを上に向けて水平に載置される。制御部100は、搬送機構を処理容器2内から退避させた後、ゲートバルブ26を閉じる。次いで、制御部100は、ステージ3の加熱機構34により基板Wを設定温度に加熱し、圧力調整部23により処理容器2内を設定圧力に調整する。例えば、基板Wを処理容器2内に搬入することなどが、図1のステップS101に含まれる。
【0088】
次に、制御部100は、図1のステップS102を実施する。ステップS102では、バルブV61,V62,V63を開き、TiClガスとArガスとOガスとを同時に処理容器2内に供給する。
【0089】
上記ステップS102の具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
TiClガスの流量:1sccm~500sccm
Arガスの流量:100sccm~100000sccm
ガスの流量:100sccm~100000sccm
処理時間:0.1秒~30秒
処理温度:100℃~450℃
処理圧力:3Pa~10000Pa。
【0090】
次に、制御部100は、図1のステップS103を実施する。ステップS103では、バルブV61を閉じる。このとき、バルブV62,V63は開いているので、処理容器2内にはArガスとOガスが供給され、処理容器2内に残留するTiClガスが排気配管22へと排出される。
【0091】
上記ステップS103の具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
Arガスの流量:100sccm~100000sccm
ガスの流量:100sccm~100000sccm
処理時間:0.1秒~30秒
処理温度:100℃~450℃
処理圧力:3Pa~10000Pa。
【0092】
次に、制御部100は、図1のステップS104を実施する。ステップS104では、プラズマ生成部51によりプラズマを生成し、Oガスをプラズマ化する。これにより、吸着したTiClガスが酸化され、例えばTiO膜が形成される。TiO膜は、第1膜W1に対して第2膜W2に選択的に形成される。ステップS104の具体的な処理条件は、プラズマを生成する以外、上記ステップS103の処理条件と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
次に、制御部100は、図1のステップS105を実施する。ステップS105では、プラズマの生成を停止する。このとき、バルブV62,V63は開いているので、処理容器2内にはArガスとOガスが供給され、処理容器2内に残留するプラズマ化したガスが排気配管22へと排出される。ステップS105の具体的な処理条件は、上記ステップS103の処理条件と同様であるので、説明を省略する。
【0094】
次に、図1のステップS106では、制御部100は、ステップS102~S105をN(Nは1以上の自然数)回実施したか否かを確認する。実施回数がN回未満である場合(ステップS106、NO)、制御部100はステップS102~S105を再度実施する。一方、実施回数がN回に達した場合(ステップS106、YES)、制御部100は今回の処理を終了する。その後、制御部100は、ゲートバルブ26を開いて搬送機構により基板Wを処理容器2外に搬送する。制御部100は、搬送機構を処理容器2内から退避させた後、ゲートバルブ26を閉じる。
【0095】
なお、制御部100は、図9に示すステップS201~S205を実施してもよい。また、制御部100は、図20に示す一連の処理を実施してもよい。一連の処理は、ステップS201~S204をM(Mは1以上の整数)回実施することと、ステップS102~S105をN(Nは1以上の整数)回実施することと、を含む。制御部100は、一連の処理をK(Kは1以上の整数)回実施する。
【0096】
なお、図1ではステップS102~S105をN回実施するが、後述する表12に示すように、ステップS103の後であってステップS104の前に、ステップS102A及びS103Aを実施してもよい。ステップS102Aは、ステップS102とは異なる原料ガスを用いる点を除き、ステップS102と同様に行われる。ステップS103Aは、ステップS103と同様に行われる。
【0097】
後述する表12に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給と、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給と、プラズマ化した反応ガスの供給とを繰り返し行うことにより、元素X(詳細には元素X1及びX2)の酸化膜である第3膜W3を、第1膜W1に対して第2膜W2の上に選択的に形成してもよい。元素X1と元素X2のいずれか1つは金属元素(好ましくは遷移金属元素)であって残りの1つは半導体元素である。ステップS102とS102Aの両方を実施することにより、第3膜W3の結晶化を抑制でき、第3膜W3の平坦性を向上できる。
【0098】
なお、表12では元素X1が金属元素であって元素X2が半導体元素であるが、元素X1が半導体元素であって元素X2が金属元素であってもよい。また、元素X1と元素X2の組み合わせは金属元素同士、半導体元素同士の組み合わせであってもよい。元素Xは元素X1、X2とは異なる元素X3を含んでもよく、互いに異なる3つ以上の元素を含んでもよい。制御部100は、元素X3を含む原料ガスの供給をも実施してもよい。
【0099】
また、後述する表13に示すように、n(nは1以上N以下の任意の自然数)回目のステップS102~S105の後であってn+1回目のステップS102~S105の前に、ステップS102A~S105Aを実施してもよい。ステップS102Aは、ステップS102とは異なる原料ガスを用いる点を除き、ステップS102と同様に行われる。ステップS103A~S105Aは、ステップS103~S105と同様に行われる。
【0100】
後述する表13に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給と、プラズマ化した反応ガスの供給と、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給と、プラズマ化した反応ガスの供給とを繰り返し行うことにより、元素X(詳細には元素X1及びX2)の酸化膜である第3膜W3を、第1膜W1に対して第2膜W2の上に選択的に形成してもよい。元素X1と元素X2のいずれか1つは金属元素(好ましくは遷移金属元素)であり、残りの1つは半導体元素である。ステップS102とS102Aの両方を実施することにより、第3膜W3の結晶化を抑制でき、第3膜W3の平坦性を向上できる。
【0101】
なお、表13では元素X1が金属元素であって元素X2が半導体元素であるが、元素X1が半導体元素であって元素X2が金属元素であってもよい。また、元素X1と元素X2の組み合わせは金属元素同士、半導体元素同士の組み合わせであってもよい。元素Xは元素X1、X2とは異なる元素X3を含んでもよく、互いに異なる3つ以上の元素を含んでもよい。制御部100は、元素X3を含む原料ガスの供給をも実施してもよい。
【0102】
[実施例]
次に、実施例などについて説明する。下記の例1、例5及び例9~例17が実施例であり、下記の例2~例4及び例6~例8が比較例である。
【0103】
[例1]
例1では、図12に示すようにB膜W1-1の表面とSiO膜W2-1の表面とを同一平面に有する基板を準備し、表1に示す処理条件で図1のステップS102~S105を実施した。
【0104】
【表1】
【0105】
表1において、「RF」の「ON」は高周波電力によってガスをプラズマ化したことを意味する。「RF」の「OFF」はガスのプラズマ化を実施しなかったことを意味する。下記の表2、表3、表5、表7、表8、および表10~表16において、同様である。
【0106】
表1に示すように、例1では、プラズマALD法により、基板表面に対してTiClガスとプラズマ化したOガスを交互に供給した。その結果、図13に示すようにB膜W1-1に対してSiO膜W2-1の上に選択的にTiO膜W3-1が形成された。
【0107】
[例2~例4]
例2~例4では、図12と同じ構造の基板を準備し、熱ALD法、熱CVD法、又はプラズマCVD法によりTiO膜を形成したが、いずれも、基板表面全体にTiO膜が形成されてしまった。
【0108】
例2では、熱ALD法により、350℃に加熱した基板に対して、TiClガスの供給と、プラズマ化しないHOガスの供給とを交互に300回ずつ実施した。
【0109】
例3では、熱CVD法により、350℃に加熱した基板に対して、TiClガスの供給と、プラズマ化しないOガスの供給とを同時に実施した。
【0110】
例4では、プラズマCVD法により、350℃に加熱した基板に対して、TiClガスの供給と、プラズマ化したOガスの供給とを同時に実施した。
【0111】
例1と、例2~例4とを比較すると、B膜に対してSiO膜の上に選択的にTiO膜を形成するには、プラズマALD法を用いることが重要であることが分かる。
【0112】
[例5]
例5では、図33に示すようにBN膜W1-5の表面とSiO膜W2-5の表面とを同一平面に有する基板を準備し、表2に示す処理条件で図32の処理を実施した。
【0113】
【表2】
【0114】
表2に示すように、例5では、熱ALD法により、400℃に加熱した基板表面に対してTiClガスの供給と、プラズマ化しないOガスの供給とを交互に300回ずつ実施した。その結果、図34に示すようにBN膜W1-5に対してSiO膜W2-5の上に選択的にTiO膜W3-5が形成された。
【0115】
[例6~例8]
例6では、図12と同じ構造の基板を準備し、プラズマALD法によりTi膜を形成したが、基板表面全体にTi膜が形成されてしまった。例6のプラズマALD法では、350℃に加熱した基板に対して、TiClガスの供給と、プラズマ化したHガスの供給とを交互に実施した。
【0116】
例7では、図12と同じ構造の基板を準備し、プラズマALD法によりTiN膜を形成したが、基板表面全体にTiN膜が形成されてしまった。例7のプラズマALD法では、350℃に加熱した基板に対して、TiClガスの供給と、プラズマ化したNHガスの供給とを交互に実施した。
【0117】
例8では、図12と同じ構造の基板を準備し、熱ALD法によりTiN膜を形成したが、基板表面全体にTiN膜が形成されてしまった。例8のプラズマALD法では、250℃に加熱した基板に対して、TDMAT(Ti[N(CH)ガスの供給と、プラズマ化しないNHガスの供給とを交互に実施した。
【0118】
例1と、例6~例8とを比較すると、B膜に対してSiO膜の上に選択的にTi含有膜を形成するには、酸素を含む反応ガスをプラズマ化することが重要であり、酸化膜を形成することが重要であることが分かる。
【0119】
[例9]
例9では、図14に示すようにB膜W1-9の表面の一部に凹部を形成し、凹部の底面のみにSiO膜W2-9を露出した基板を準備し、表3に示す処理条件で図1のステップS102~S105を実施した。
【0120】
【表3】
【0121】
表3に示すように、例9では、基板表面に対してTiClガスとプラズマ化したOガスを交互に供給した。その結果、図15に示すようにB膜W1-9の凹部の内部に選択的にTiO膜W3-9が充填された。
【0122】
[例10]
例10では、表4に示す各種下地膜に対して、表5に示す処理条件で図1のステップS102~S105を実施した。その後、各種下地膜の上に形成されたTiO膜の厚みを測定した。厚みの測定結果を表4に示す。なお、表4において、「c-Si」は結晶化シリコンである。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
表4から明らかなように、Bを含有する膜の上にはTiO膜が形成されなかったのに対し、Bを実質的に含有しない膜の上にはTiO膜が形成された。ステップS106のNが1000回を超える処理条件でも、同様の傾向が見られた。
【0126】
[例11]
例11では、表6に示す各種下地膜に対して、表7に示す処理条件で図9のステップS201~S205を実施し、続いて表8に示す処理条件で図1のステップS102~S106を実施した。その後、各種下地膜の上に形成された第3膜(TiO膜)の厚みを測定した。厚みの測定結果を表6に示す。
【0127】
【表6】
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
表6から明らかなように、TiO膜、及びRu膜の上には第3膜(TiO膜)が形成されなかったのに対し、SiO膜、及びMo膜の上には第3膜(TiO膜)が形成された。表4と表6を照らし合わせると、TiO膜及びRu膜の上にはBN膜が形成され、SiO膜及びMo膜の上にはBN膜が形成されなかったと推定される。ステップS106のNが1000回を超える処理条件でも、同様の傾向が見られた。
【0131】
[例12]
例12では、表9に示す各種下地膜に対して、表10に示す処理条件で図9のステップS201~S205を実施し、続いて表11に示す処理条件で図1のステップS102~S106を実施した。その後、各種下地膜の上に形成された第3膜(TiO膜)の厚みを測定した。厚みの測定結果を表9に示す。
【0132】
【表9】
【0133】
【表10】
【0134】
【表11】
【0135】
表9から明らかなように、SiO膜の上には第3膜(TiO膜)が形成されなかったのに対し、TiO膜、Mo膜、及びRu膜の上には第3膜(TiO膜)が形成された。表4と表9を照らし合わせると、SiO膜の上にはBN膜が形成され、TiO膜、Mo膜、及びRu膜の上にはBN膜が形成されなかったと推定される。ステップS106のNが1000回を超える処理条件でも、同様の傾向が見られた。なお、例11と例12とでBN膜が形成される下地膜の膜種が異なるのは、主にステップS203でプラズマ化するガスの種類が異なるためと推定される。例11のステップS203では表7に示すようにNHガスを使用したのに対して、例12のステップS203では表10に示すようにNガスとHガスの混合ガスを使用した。
【0136】
[例13]
例13では、図16に示すようにB膜W1-13の表面とSiO膜W2-13の表面とを同一平面に有する基板を準備し、表12に示す処理条件で図1のステップS102~S105を実施した。なお、例13では、表12に示すように、ステップS103の後であってステップS104の前に、ステップS102A及びS103Aを実施した。
【0137】
【表12】
【0138】
表12に示すように、例13では、プラズマALD法により、基板表面に対してTiClガスとSiClガスとプラズマ化したO2ガスとをこの順番で供給することをN(N=300)回繰り返した。その結果、図17に示すようにB膜W1-13に対してSiO膜W2-13の上に選択的にTiSiO膜W3-13が形成された。
【0139】
[例14]
例14では、図18に示すようにB膜W1-14の表面とSiO膜W2-14の表面とを同一平面に有する基板を準備し、表13に示す処理条件で図1のステップS102~S105を実施した。なお、例14では、表13に示すように、n(nは1以上N以下の任意の自然数)回目のステップS102~S105の後であってn+1回目のステップS102~S105の前に、ステップS102A~S105Aを実施した。
【0140】
【表13】
【0141】
表13に示すように、例14では、プラズマALD法により、基板表面に対してTiClガスとプラズマ化したOガスとSiClガスとプラズマ化したO2ガスとをこの順番で供給することをN(N=300)回繰り返した。その結果、図19に示すようにB膜W1-14に対してSiO膜W2-14の上に選択的にTiSiO膜W3-14が形成された。
【0142】
[例15]
例15では、図26に示すようにB膜W1-15の表面とSiO膜W2-15の表面とを同一平面に有する基板を準備し、表14に示す処理条件で図1のステップS102~S105を実施した。
【0143】
【表14】
【0144】
表14に示すように、例15では、プラズマALD法により、基板表面に対してSiClガスとプラズマ化したOガスを交互に供給した。その結果、図27に示すようにB膜W1-15に対してSiO膜W2-15の上に選択的にSiO膜W3-15が形成された。
【0145】
[例16]
例16では、図28に示すようにRu膜W4-16の表面とSiO膜W2-16の表面とを同一平面に有する基板を準備し、表15に示す処理条件で図20のステップS201、S203及びS204並びにS102~S105を実施した。
【0146】
【表15】
【0147】
その結果、例16では、図29に示すようにRu膜W4-16に対してSiO膜W2-16の上に選択的にTiO膜W3-16が形成された。Ru膜W4-16の上にはBN膜が形成され、SiO膜W2-16の上にはBN膜が形成されなかったためと推定される。例16の結果は、例11の結果(表6参照)とも整合する。
【0148】
[例17]
例17では、図30に示すようにRu膜W4-17の表面とSiO膜W2-17の表面とを同一平面に有する基板を準備し、表16に示す処理条件で図20のステップS201~S204並びにS102~S105を実施した。
【0149】
【表16】
【0150】
その結果、例17では、図31に示すようにRu膜W4-17に対してSiO膜W2-17の上に選択的にTiO膜W3-17が形成された。Ru膜W4-17の上にはB膜が形成され、SiO膜W2-17の上にはB膜が形成されなかったためと推定される。
【0151】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0152】
W 基板
W1 第1膜
W2 第2膜
W3 第3膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34