IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-移動ロボットシステム 図1
  • 特開-移動ロボットシステム 図2
  • 特開-移動ロボットシステム 図3
  • 特開-移動ロボットシステム 図4A
  • 特開-移動ロボットシステム 図4B
  • 特開-移動ロボットシステム 図5
  • 特開-移動ロボットシステム 図6
  • 特開-移動ロボットシステム 図7
  • 特開-移動ロボットシステム 図8
  • 特開-移動ロボットシステム 図9
  • 特開-移動ロボットシステム 図10A
  • 特開-移動ロボットシステム 図10B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069316
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】移動ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20230511BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
B25J5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181096
(22)【出願日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金井 嘉毅
(72)【発明者】
【氏名】石川 慎一
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS27
3C707CS08
3C707LS15
3C707LS20
3C707WA16
(57)【要約】
【課題】
本発明は、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間に、位置ずれが発生した場合であっても、短時間で所定の作業を実行することができるように目標停止位置を決定する移動ロボットシステムを提供する。
【解決手段】
本発明の移動ロボットシステムは、作業対象の構造物に関する環境データと、マニピュレーション部の可動範囲及び移動機構の移動範囲に関するロボットデータと、所定の作業に関する教示データと、移動機構の停止精度である停止精度データと、を有するデータ管理部と、環境データとロボットデータと教示データとを使用し、作業可能領域を探索し、停止位置候補を探索する停止位置候補探索部と、停止位置候補と停止精度データとを使用し、停止位置候補から教示データを実行することができる目標停止位置を決定する目標停止位置決定部と、を有する移動制御部と、を有することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの作業対象の近傍の目標停止位置まで移動し、停止し、前記作業対象に対して所定の作業を実行し、移動機構と前記移動機構に搭載されるマニピュレーション部とを有する移動ロボットを有する移動ロボットシステムであって、
前記作業対象の構造物に関する環境データと、前記マニピュレーション部の可動範囲及び前記移動機構の移動範囲に関するロボットデータと、前記所定の作業に関する教示データと、前記移動機構の停止精度である停止精度データと、を有するデータ管理部と、
前記環境データと、前記ロボットデータと、前記教示データと、を使用し、前記マニピュレーション部の可動範囲外となる事象と、前記移動機構の移動範囲外となる事象と、前記マニピュレーション部及び前記移動機構が前記作業対象の構造物と干渉する事象と、が発生しないような、前記所定の作業を実行することができる停止位置候補を探索する停止位置候補探索部と、前記停止位置候補と前記停止精度データとを使用し、前記停止位置候補から前記教示データを実行することができる目標停止位置を決定する目標停止位置決定部と、を有する移動制御部と、
を有することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載する移動ロボットシステムであって、
前記マニピュレーション部は、前記作業対象を認識し、前記マニピュレーション部と前記作業対象との相対位置関係を取得する相対位置関係取得部を有することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項3】
請求項2に記載する移動ロボットシステムであって、
前記データ管理部は、前記相対位置関係に基づいて、前記作業対象に固定される座標系を基準とする前記教示データを、ロボット座標系を基準とするデータに変換する教示データ変換部を有することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項4】
請求項1に記載する移動ロボットシステムであって、
前記データ管理部は、前記停止精度データを決定する停止精度決定部を有することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項5】
請求項4に記載する移動ロボットシステムであって、
前記停止精度決定部は、前記移動機構が移動可能な移動空間の情報である移動空間データと、移動機構の移動又は停止に影響を及ぼす自己位置推定精度の情報である自己位置推定精度データと、を使用し、前記停止精度データを決定することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項6】
請求項1に記載する移動ロボットシステムであって、
前記停止位置候補探索部は、前記作業対象の近傍の複数のセルを使用し、セル毎に、作業遂行の可否を判定し、停止位置候補を探索することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項7】
請求項6に記載する移動ロボットシステムであって、
前記目標停止位置決定部は、前記停止位置候補について、前記停止精度データを加味し、前記所定の作業の実行が保証される作業遂行保証点を取得し、複数の作業遂行保証点が取得された場合には、その重心位置を目標停止位置と決定することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項8】
請求項1に記載する移動ロボットシステムであって、
前記作業対象の近傍及び前記目標停止位置を表示する表示部を有することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項9】
請求項1に記載する移動ロボットシステムであって、
前記目標停止位置決定部は、前記目標停止位置の決定に影響する影響要因の少なくとも一つを修正する修正方法算出部を有することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項10】
請求項1に記載する移動ロボットシステムであって、
前記目標停止位置決定部は、前記教示データが、前記所定の作業に対して、複数の時系列な教示データである場合には、全ての教示データについて目標停止位置を決定することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項11】
請求項10に記載する移動ロボットシステムであって、
前記目標停止位置決定部は、時系列な教示データにおいて、前記停止位置候補が重なり、重なる停止位置候補について、同一の目標停止位置を決定することを特徴とする移動ロボットシステム。
【請求項12】
請求項11に記載する移動ロボットシステムであって、
前記目標停止位置決定部は、前記目標停止位置の決定に影響する影響要因の少なくとも一つを修正する修正方法算出部を有し、
前記修正方法算出部は、教示データを修正する場合、修正する教示データの数が最小となるように、修正すべき教示データを選択することを特徴とする移動ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動機構により移動し、マニピュレーション部により所定の作業を実行する移動ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な現場において、作業の省人化や自動化に伴い、人と同じ現場に移動し、目標停止位置に到着した後、所定の作業を実行する移動ロボットシステムの開発や研究が行われている。
【0003】
こうした技術分野における背景技術として、例えば、特開2017-016359号公報(特許文献1)や特開2006-159399号公報(特許文献2)がある。
【0004】
特許文献1には、移動空間を構成する部分空間毎に移動空間における位置を示した空間情報、部分空間毎に機能の障害となるか否かを示した属性情報、目標対象物の位置を示す目標対象物位置、を記憶した記憶部と、自律移動ロボットの現在の自己位置及び姿勢を推定する位置推定手段と、移動目標位置を設定して自己位置から移動目標位置に至る移動経路を算出する経路探索手段と、移動経路に沿って自律移動ロボットが移動するよう制御する移動制御手段と、を有し、経路探索手段は、空間情報及び属性情報から求まる機能の障害となる部分空間の位置と目標対象物位置との位置関係から、目標対象物に対して機能を発揮可能な位置を求め、この位置に移動目標位置を設定する自律移動ロボットシステムが記載されている(特許文献1の要約参照)。
【0005】
また、特許文献2には、対象物位置姿勢取得部と、移動部と、マニピュレーション部と、制御部と、マニピュレーション部の動作に伴って変化する外界情報を取得する検出部と、作業対象の物体を探索する対象物探索部と、マニピュレーション部を使用し、把持動作可能な範囲を判断する把持範囲判断部と、移動部の移動手順を生成する移動手順生成部と、マニピュレーション部の把持動作手順を生成する把持動作生成部と、を有する作業用移動ロボットシステムが記載されている(特許文献2の要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-016359号公報
【特許文献2】特開2006-159399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2には、所定の作業を実行するための移動経路や移動手順、及び目標停止位置を設定する移動ロボットシステムが記載されている。
【0008】
しかし、特許文献1及び特許文献2には、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間に、位置ずれが発生した場合であっても、確実に所定の作業を実行することができるように、目標停止位置を決定する移動ロボットシステムは記載されていない。
【0009】
さらに、ロボットの停止位置において作業不可であった場合、ロボットの停止位置の修正動作や、作業内容の修正などにより、ロボットが作業開始可能になるまでに時間を要していた。
【0010】
そこで、本発明は、作業開始前に作業の可否を判断して、適切な移動位置を求めておくことで、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間に、位置ずれが発生した場合であっても、確実に、短時間で所定の作業を実行することができるように、目標停止位置を決定する移動ロボットシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するため、本発明の移動ロボットシステムは、少なくとも一つの作業対象の近傍の目標停止位置まで移動し、停止し、作業対象に対して所定の作業を実行し、移動機構と移動機構に搭載されるマニピュレーション部とを有する移動ロボットを有する移動ロボットシステムである。
【0012】
そして、移動ロボットシステムは、作業対象の構造物に関する環境データと、マニピュレーション部の可動範囲及び移動機構の移動範囲に関するロボットデータと、所定の作業に関する教示データと、移動機構の停止精度である停止精度データと、を有するデータ管理部を有する。
【0013】
そして、移動ロボットシステムは、環境データと、ロボットデータと、教示データと、を使用し、マニピュレーション部の可動範囲外となる事象と、移動機構の移動範囲外となる事象と、マニピュレーション部及び移動機構が作業対象の構造物と干渉する事象と、が発生しないような、所定の作業を実行することができる停止位置候補を探索する停止位置候補探索部と、停止位置候補と停止精度データとを使用し、停止位置候補から教示データを実行することができる目標停止位置を決定する目標停止位置決定部と、を有する移動制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間に、位置ずれが発生した場合であっても、確実に、短時間で所定の作業を実行することができるように、目標停止位置を決定する移動ロボットシステムを提供することができる。
【0015】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明により、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1における移動ロボットシステム1の構成を説明するブロック図である。
図2】実施例1における移動ロボット2の外観を説明する説明図である。
図3】実施例1における移動ロボットシステム1が目標停止位置を決定するまでの流れF1を説明するフロー図である。
図4A】実施例1における移動ロボット2の、移動・停止から教示データ32の実行までの流れF2を説明するフロー図である。
図4B図4Aにおける手順F21と手順F22とを説明する説明図である。
図5】実施例1における移動ロボットシステム1のデータ管理部3を説明する説明図である。
図6】実施例1における停止位置候補探索部40の停止位置候補探索方法を説明する説明図である。
図7】実施例1における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法を説明する説明図である。
図8】実施例1における移動ロボットシステム1が目標停止位置を決定するまでの流れF11を説明するフロー図である。
図9】実施例1における移動ロボットシステム1において、目標停止位置を決定するためのユーザインタフェース画面G1を説明する説明図である。
図10A】実施例2における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法であって、時系列教示データ6を説明する説明図である。
図10B】実施例2における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法であって、作業対象5の近傍の状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を使用し、本発明の実施例を説明する。なお、各図面において、実質的に同一又は類似の構成には、同一の符号を使用し、説明する。各図面において、説明が重複する場合には、重複する説明を省略する場合がある。
【0018】
また、各図面や下記する実施例は、本発明の原理に則った実施形態を示すものであり、本発明の理解を助けるものであり、決して本発明を限定的に解釈するために使用されるものではない。そして、各図面や下記する実施例は、典型的な例示に過ぎず、特許請求の範囲を如何なる意味においても、限定するものではない。
【0019】
なお、本発明は、下記する実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。下記する実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
【0020】
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。
【実施例0021】
先ず、実施例1における移動ロボットシステム1の構成を説明する。
【0022】
図1は、実施例1における移動ロボットシステム1の構成を説明するブロック図である。
【0023】
移動ロボットシステム1は、移動ロボット2と、データ管理部3と、移動制御部4と、を有する。
【0024】
移動ロボット2は、移動機構21と、移動機構21に搭載されるマニピュレーション部20と、を有する。そして、移動ロボット2は、移動機構21により、少なくとも一つの作業対象5の近傍の作業対象領域の近傍に存在する目標停止位置まで移動し、停止し、マニピュレーション部20により、作業対象5に対して所定の作業を実行する。
【0025】
データ管理部3は、作業対象5の構造物50の大きさや配置の情報を有する環境データ30と、マニピュレーション部20の大きさや可動範囲、移動機構21の大きさや移動範囲などの情報を有するロボットデータ31(移動ロボット2の作業可能領域を有するロボットデータ31)と、所定の作業に関する情報が記述される教示データ32と、移動機構21の停止精度の情報を有する停止精度データ33と、を有する。
【0026】
環境データ30に含まれる作業対象5の構造物50の大きさや配置の情報は、例えば、作業対象5の構造物50の3Dモデルデータや、作業対象5の構造物50の形状や位置をテキスト形式で記述したファイルなどにより表現される。
【0027】
ロボットデータ31に含まれるマニピュレーション部20の大きさや可動範囲、移動機構21の大きさや移動範囲などの情報は、例えば、移動ロボット2の3Dモデルデータや、移動ロボット2の形状や構成をテキスト形式で記述したファイルなどにより表現される。
【0028】
教示データ32に記述される所定の作業に関する情報は、例えば、マニピュレーション部20に設置されるエンドエフェクタ200の手先位置姿勢情報を時系列的に並べたものや、作業手順をテキスト形式で記述したファイルなどにより表現される。なお、教示データ32は、マニピュレーション部20に出力され、マニピュレーション部20に設置されるエンドエフェクタ200は、作業対象5に対して、教示データ32に基づいて、所定の作業を実行する。
【0029】
停止精度データ33に含まれる移動機構21の停止精度の情報は、例えば、停止位置に対して円形に広がるような、全方位に一様な数値、数式化されたもの、マップ化されたものなどにより表現される。そして、停止精度データ33は、例えば、セル430を使用したグリッドマップ43により表現されてもよい。
【0030】
停止精度データ33に含まれる移動機構21の停止精度とは、移動機構21の制御精度や移動機構21の床面に対する滑りやすさ(移動部の移動精度)、移動機構21の移動空間内の自己位置を推定する際に使用する位置センサ(特に、実施例1では、移動機構21に搭載される位置センサ)の測位精度(検出部の検出精度)など、移動空間内の任意の地点に移動ロボット2が移動する際に発生する、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間の位置ずれの要因を統合的に含むものである。
【0031】
このため、停止精度データ33は、事前に同一環境及び同一システムにおいて同定されることが好ましい。
【0032】
移動制御部4は、作業対象5の近傍の作業対象領域において、マニピュレーション部20の可動範囲外となる事象、移動機構21の移動範囲外となる事象、マニピュレーション部20及び移動機構21が作業対象5の構造物50と干渉する事象が発生しないような、所定の作業を実行することができる領域(以下、作業可能領域)を探索し、停止位置候補(停止位置候補情報)を探索する停止位置候補探索部40と、停止精度データ33を加味し、停止位置候補から移動ロボット2が確実に作業可能領域(後述する作業遂行領域を含む領域)に停止できるような目標停止位置(目標停止位置情報)を決定する目標停止位置決定部41と、を有する。
【0033】
停止位置候補探索部40は、環境データ30、ロボットデータ31、教示データ32を使用し、作業可能領域を探索し、停止位置候補(作業可能領域)を探索する。
【0034】
目標停止位置決定部41は、停止位置候補探索部40から取得される停止位置候補と停止精度データ33とを使用し、目標停止位置を決定し、目標停止位置を移動機構21に出力する。
【0035】
次に、実施例1における移動ロボット2の外観を説明する。
【0036】
図2は、実施例1における移動ロボット2の外観を説明する説明図である。
【0037】
移動ロボットシステム1の移動部及び可動部である移動ロボット2は、アクチュエータ及び位置センサを搭載し、一つ以上の車輪を有する移動機構21と、移動機構21に搭載され、アクチュエータ及び位置センサを搭載し、複数の関節を有するマニピュレーション部20と、を有する。
【0038】
なお、移動機構21に搭載される位置センサ及びマニピュレーション部20に搭載される位置センサは、移動機構21の移動空間内の自己位置を推定する際に使用される。実施例1では、位置センサは、移動機構21及びマニピュレーション部20に搭載されるが、移動機構21又はマニピュレーション部20に搭載されてもよい。
【0039】
移動機構21は、車輪や関節を制御するロボット制御部22を有する。
【0040】
マニピュレーション部20は、作業対象5における把持対象物51を把持するエンドエフェクタ200と、作業対象5を認識し、エンドエフェクタ200と作業対象5との相対位置関係(相対位置関係情報)を取得する相対位置関係取得部23と、を有する。なお、実施例1では、相対位置関係取得部23は、マニピュレーション部20に搭載される位置センサの機能を有する。
【0041】
つまり、マニピュレーション部20は、移動機構21が目標停止位置に停止後に、作業対象5を認識し、マニピュレーション部20(広義には移動ロボット2、狭義にはエンドエフェクタ200)と作業対象5との相対位置関係を取得する相対位置関係取得部23を有する。
【0042】
なお、データ管理部3及び/又は移動制御部4は、移動ロボット2の内部、特に、ロボット制御部22に設置されてもよいし、移動ロボット2の外部に設置されてもよい。
【0043】
次に、実施例1における移動ロボットシステム1が目標停止位置を決定するまでの流れF1を説明する。
【0044】
図3は、実施例1における移動ロボットシステム1が目標停止位置を決定するまでの流れF1を説明するフロー図である。
【0045】
手順F10において、使用する移動ロボット2を準備し、同時に、ロボットデータ31と停止精度データ33とを取得する。
【0046】
手順F11において、作業対象5における把持対象物51の配置を決定し、同時に、環境データ30を取得する。
【0047】
手順F12において、作業対象5における把持対象物51の配置を決定し、同時に、環境データ30を取得した状態で、移動ロボット2に対して、作業対象5の構造物50の配置や作業対象5における把持対象物51の配置を教示する教示データ32を作成する。
【0048】
なお、手順F10、手順F11、手順F12は、ユーザにより処理される手順(ユーザによる処理範囲)である。
【0049】
手順F13において、停止位置候補探索部40により、環境データ30、ロボットデータ31、教示データ32を取得した後、環境データ30、ロボットデータ31、教示データ32を使用し、作業可能領域を探索し、停止位置候補を探索する。
【0050】
手順F14において、目標停止位置決定部41により、停止位置候補と停止精度データ33とを使用し、目標停止位置を決定し、移動ロボット2を移動する。
【0051】
なお、手順F13、手順F14は、移動制御部4により処理される手順(移動制御部4による処理範囲)であり、移動ロボット2の移動前に、ソフト的に処理される手順である。
【0052】
これにより、実施例1によれば、移動ロボット2の移動後に、作業対象5を検出し、設定された停止位置候補を修正する場合と比較し、事前に(移動ロボット2の移動前に)目標停止位置の決定と教示データ32の実行とを保証することができるため、移動ロボット2の動作時間を短縮することができる。
【0053】
次に、実施例1における移動ロボット2の、移動・停止から教示データ32の実行までの流れ(移動ロボット2の停止後における教示データ32の作業実行手順)F2を説明する。
【0054】
図4Aは、実施例1における移動ロボット2の、移動・停止から教示データ32の実行までの流れF2を説明するフロー図である。
【0055】
手順F20において、移動機構21により、決定された目標停止位置まで移動し、決定された目標停止位置で停止する。
【0056】
手順F21において、相対位置関係取得部23により、エンドエフェクタ200と作業対象5との相対位置関係を取得する。
【0057】
手順F22において、取得される相対位置関係に基づいて、教示データ32を移動ロボット2が実行可能なデータに変換する。つまり、取得される相対位置関係に基づいて、データ管理部3に設置される教示データ変換部34により、教示データ32を、ロボット座標系(移動ロボット2に固定される座標系)を基準として表現されるデータ(ロボット座標基準データ)に変換する。このように、データ管理部3は、取得される相対位置関係に基づいて、教示データ32を、ロボット座標系を基準とするデータに変換する教示データ変換部34を有する。
【0058】
手順F23において、マニピュレーション部20により、変換された教示データ32を実行する。これにより、マニピュレーション部20は、所定の作業を実行することができる。
【0059】
次に、図4Aにおける手順F21と手順F22とを説明する。
【0060】
図4Bは、図4Aにおける手順F21と手順F22とを説明する説明図である。
【0061】
作業対象5は、構造物50と把持対象物51とを有する。
【0062】
教示データ32は、把持対象物51をエンドエフェクタ200により把持する際の、エンドエフェクタ200の先端(手先)の位置姿勢の点軌跡、つまり、教示データ軌跡320として表現される。
【0063】
そして、教示データ32は、作業対象5に固定される座標系(作業対象座標系52)を基準として表現されるデータであり、教示データ軌跡320は、作業対象5に固定される座標系である作業対象座標系52を基準とする、エンドエフェクタ200の手先位置姿勢情報として、データ管理部3に保存される。
【0064】
手順F21においては、相対位置関係取得部23により、移動ロボット2に固定される座標系であるロボット座標系24と作業対象座標系52との相対位置関係を取得する。
【0065】
手順F22においては、取得される相対位置関係に基づいて、教示データ変換部34により、教示データ32を、移動ロボット2が実行可能なデータである、ロボット座標系24を基準とするデータに変換する。そして、変換されたデータの位置姿勢に、エンドエフェクタ200の先端(手先)が重なるように、マニピュレーション部20の関節角度を制御する。これにより、エンドエフェクタ200は、教示データ軌跡320を追従することができる。
【0066】
次に、実施例1における移動ロボットシステム1のデータ管理部3を説明する。
【0067】
図5は、実施例1における移動ロボットシステム1のデータ管理部3を説明する説明図である。
【0068】
データ管理部3は、停止精度データ33を決定する停止精度決定部37を有する。
【0069】
設定された停止位置候補と実際の停止位置との間の位置ずれの要因において、特に、移動機構21の床面に対する滑りによる位置ずれは、移動空間内の位置により相違する可能性がある。また、移動空間内の自己位置を推定する際に使用する位置センサは、移動空間内の位置により、測位精度が変化する可能性がある。
【0070】
そこで、データ管理部3において、停止精度決定部37は、移動空間内の位置により、停止精度データ33を可変とするため、移動空間データ35と自己位置推定精度データ36とを使用し、停止精度データ33を決定する。
【0071】
移動空間データ35は、任意の移動空間内の位置における、移動機構21の移動又は停止に影響を及ぼす、移動機構21が移動可能な移動空間の環境情報であり、例えば、移動空間内における移動機構21の床面に対する滑り量を数式化又はマップ化したものや、床面の状況の情報を示すものなどにより表現される。
【0072】
自己位置推定精度データ36は、任意の移動空間内の位置における、移動制御部4に設置される自己位置推定部42により推定される、移動機構21の移動又は停止に影響を及ぼす自己位置推定精度の情報(例えば、作業室の壁や柱などの測位対象までの距離)であり、例えば、自己位置推定精度を数式化又はマップ化したものや、使用される位置センサの情報を示すものなどにより表現される。
【0073】
このように、移動制御部4は、移動空間内における移動ロボット2の自己位置及び姿勢を推定する自己位置推定部42を有し、自己位置推定部42は、自己位置推定精度データ36を推定する。
【0074】
これにより、移動空間内の位置における移動機構21の停止精度の変化を、目標停止位置の決定に反映することができる。
【0075】
なお、移動空間内の床面に一様な床面の状況を有するタイルなどを敷き詰めることにより、また、移動空間内に自己位置を推定するためのヒントとなる測位対象を別途配置することにより、移動空間内の位置による移動機構21の停止精度の変化をなくすこともできる。
【0076】
次に、実施例1における停止位置候補探索部40の停止位置候補探索方法を説明する。
【0077】
図6は、実施例1における停止位置候補探索部40の停止位置候補探索方法を説明する説明図である。
【0078】
停止位置候補を探索する場合、停止位置候補探索部40は、作業対象5が存在する作業対象領域431の近傍のグリッドマップ43において、前後左右に一定間隔(格子状)のセル430(一定の前後左右の幅を有する探索点)毎に、所定の作業を実行することができるか否か(作業遂行の可否)を判定し、停止位置候補を探索する。
【0079】
つまり、停止位置候補探索部40は、停止位置候補を探索する場合、作業対象5の近傍の作業対象領域431の近傍であって、前後左右に一定間隔の複数のセル430に分割されるグリッドマップ43を使用し、セル430毎(一定の前後左右の探索幅)で、作業遂行の可否を判定し、停止位置候補(作業遂行が可のセル430)を探索する。
【0080】
作業対象領域431の近傍の或るセル430に、移動ロボット2を停止させ、教示データ32に基づいて、実際に、マニピュレーション部20に設置されるエンドエフェクタ200を、動作させる。そして、エンドエフェクタ200が動作する場合(教示データ32を作成することができた場合)に、このセル430(最初に探索された停止位置候補)を、教示地点4300として、停止位置候補の探索の始点とする。教示地点4300を始点として、前後左右のセル430に対して、停止位置候補を探索する。
【0081】
そして、停止位置候補を探索する場合、或るセル430に、移動ロボット2を停止させ、教示データ32に基づいて、エンドエフェクタ200の動作範囲内(マニピュレーション部20の可動範囲内)となる場合、及び、エンドエフェクタ200(マニピュレーション部20)が作業対象5の構造物50と干渉しない場合を、作業可能領域となる作業可能点4301として、停止位置候補を探索する。なお、教示地点4300は、最初の作業可能点4301である。
【0082】
そして、同様に、教示地点4300の四方位(前後左右に隣接)のセル430A(説明の便宜上定義)について、停止位置候補を探索する。更に、このセル430Aの四方位に隣接するセル430B(説明の便宜上定義)について、停止位置候補を探索し、更に、このセル430Bの四方位に隣接するセル430C(説明の便宜上定義)について、停止位置候補を探索する。
【0083】
また、停止位置候補が探索されるセル430において、エンドエフェクタ200の動作範囲外(マニピュレーション部20の可動範囲外)となる場合、又は、エンドエフェクタ200(マニピュレーション部20)が作業対象5の構造物50と干渉する場合は、作業不可点とし、そのセル430以降について、停止位置候補の探索を打ち切る。なお、作業対象領域431の近傍のセル430について、任意の範囲を指定し、その範囲外となる場合に、停止位置候補の探索を打ち切ってもよい。
【0084】
このように、複数の作業可能点4301の集合(複数のセル430の集合)である停止位置候補を探索する。
【0085】
所定の作業の実行が保証される教示地点4300を停止位置候補の探索の始点とし、停止位置候補を探索することにより、作業対象5の近傍の全ての作業対象領域431を探索する場合よりも、少ない計算コストで、停止位置候補を探索することができる。
【0086】
次に、実施例1における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法を説明する。
【0087】
図7は、実施例1における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法を説明する説明図である。
【0088】
複数の作業可能点4301の集合である停止位置候補について、目標停止位置決定部41は、停止精度データ33を加味し、所定の作業の実行(遂行)が保証される作業遂行保証点4302を取得する。
【0089】
なお、作業遂行保証点4302が、一つのセル430として取得される場合には、その一つのセル430を目標停止位置と決定し、作業遂行保証点4302が、複数のセル430として取得される場合には、その複数のセル430(複数の作業遂行保証点4302の集合である作業遂行領域)の重心位置432を目標停止位置と決定する。
【0090】
これにより、作業遂行保証点4302において、最も移動機構21の停止精度の裕度が高いセル430を目標停止位置と決定することができる。
【0091】
また、グリッドマップ43におけるセル430の間隔は、停止精度データ33に依存する値であることが好ましい。例えば、移動機構21の停止精度を±Rmmの円形として設定する場合には、セル430の間隔をRmm以上に設定することが好ましい。
【0092】
そして、作業遂行保証点4302を取得する場合に、或る作業可能点4301の八方位(前、後、左、右、前左、前右、後左、後右)のセル430が、同様に、作業可能点4301であれば、そのセル430を、作業遂行保証点4302として、取得することができる。これにより、少ない計算コストで作業遂行保証点4302を取得することができる。
【0093】
次に、実施例1における移動ロボットシステム1が目標停止位置を決定するまでの流れF11を説明する。
【0094】
図8は、実施例1における移動ロボットシステム1が目標停止位置を決定するまでの流れF11を説明するフロー図である。
【0095】
ここでは、図3に示した流れF1における手順F14において、目標停止位置を決定することができない場合の流れF11を示す。
【0096】
手順F141において、目標停止位置決定部41において、目標停止位置を決定することができるか否かを判定する。つまり、作業遂行保証点4302を取得することができるか否かを判定する。目標停止位置を決定することができる場合(YES)には、手順F142に進み、目標停止位置を決定することができない場合(NO)には、手順F143に進む。
【0097】
そして、手順F141において、目標停止位置を決定することができると判定される場合(YES)には、手順F142において、目標停止位置決定部41により、目標停止位置を決定し、移動ロボット2を移動する。
【0098】
なお、手順F141において、目標停止位置を決定することができないと判定される場合(NO)には、目標停止位置決定部41に設定される修正方法算出部410により、マニピュレーション部20の構成、床面の状況、作業対象5の構造物50の配置、教示データ32などの目標停止位置の決定に影響する影響要因の少なくとも一つを、修正する、又は修正をユーザに表示する。つまり、影響要因の少なくとも一つを、目標停止位置決定部41の条件を満足する目標停止位置が存在するように、修正する、又は修正をユーザに表示する。
【0099】
修正方法算出部410は、例えば、以下のような修正方法により、影響要因を修正する、又は修正をユーザに表示する。
修正方法(1):マニピュレーション部20の可動範囲を広げるように、マニピュレーション部20の構成を変更する。
修正方法(2):移動機構21の停止精度が向上するように、位置センサを変更し、床面の状況を変更する。
修正方法(3):マニピュレーション部20が動作しやすいように作業対象5の構造物50の配置を変更する。
修正方法(4):作業対象5の構造物50に干渉しにくいような教示データ32に変更する。
【0100】
修正方法(1)や修正方法(2)のような修正は、移動ロボット2のハードウェア的構成を変更する必要がある。このため、修正方法(3)及び/又は修正方法(4)のような修正が好ましい。これにより、修正にかかるユーザ処理工数を少なくすることができる。
【0101】
そして、手順F141において、目標停止位置を決定することができないと判定される場合(NO)には、手順F143において、修正方法算出部410により、影響要因の修正内容を、ユーザに表示し、手順F10に戻る。
【0102】
なお、影響要因の修正については、ユーザが、表示された影響要因の修正内容に基づいて、手順F10、手順11、手順F12の少なくとも一つの手順を修正する。
【0103】
また、影響要因の修正については、ソフト処理により、自動的に実行してもよい。例えば、教示データ32を変更(教示データ32の一部のデータ点の位置を変更)する場合には、データ点を自動的に変更してもよい。これにより、ユーザへの手戻りを無くすことができるため、ユーザ処理工数を少なくすることができる。
【0104】
次に、実施例1における移動ロボットシステム1において、目標停止位置を決定するためのユーザインタフェース画面G1を説明する。
【0105】
図9は、実施例1における移動ロボットシステム1において、目標停止位置を決定するためのユーザインタフェース画面G1を説明する説明図である。
【0106】
ユーザインタフェース画面(表示部)G1は、グリッドマップ43と、地図座標系G100と、目標停止位置選択カーソルG101と、を表示し、作業対象5の近傍及び目標停止位置を表示する地図表示部G10と、教示データ32の名称を表示する教示データ名称表示部G11と、目標停止位置選択カーソルG101を移動し、目標停止位置が選択可能なカーソル移動ボタンG12と、目標停止位置選択カーソルG101の位置情報を表示するカーソル位置情報表示部G13と、目標停止位置を設定する目標停止位置設定ボタンG14と、を有する。
【0107】
なお、目標停止位置選択カーソルG101は、作業遂行保証点4302のみを選択し、ユーザは、任意の作業遂行保証点4302を目標停止位置に決定することができる。
【0108】
一般的に、移動ロボットシステム1は、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間に、位置ずれが発生し、教示データ32を実行することができない場合には、移動機構21の移動範囲外となる事象、マニピュレーション部20の可動範囲外となる事象、作業実行時に、マニピュレーション部20又は移動機構21が作業対象5の構造物50と干渉する事象が発生する場合がある。
【0109】
このため、実施例1に記載する移動ロボットシステム1は、作業対象5の近傍の作業対象領域431において、移動機構21の移動範囲外となる事象、マニピュレーション部20の可動範囲外となる事象、及びマニピュレーション部20及び移動機構21が作業対象5の構造物50と干渉する事象が発生しないような作業可能領域を、教示データ32と、ロボットデータ31と、環境データ30とに基づいて、探索し、停止位置候補を探索し、停止位置候補に、移動機構21の停止精度である停止精度データ33を加味し、移動ロボット2が確実に作業遂行領域(作業可能領域の内部の領域)に停止できるような、目標停止位置を決定する。
【0110】
つまり、実施例1によれば、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間に、位置ずれが発生した場合であっても、確実に所定の作業を実行することができるように、目標停止位置を決定することができる。
【0111】
また、実施例1によれば、移動部の移動精度や検出部の検出精度に依存することなく、確実に所定の作業を実行することができるように、目標停止位置を決定することができる。
【0112】
また、実施例1によれば、移動ロボット2が目標停止位置に収束する時間を短縮することができ、移動ロボット2の動作時間を短縮することができる。
【0113】
また、実施例1によれば、特に、所定の作業を実行する領域が狭い場合であっても、移動ロボット2は、その領域に容易に停止することができる。
【0114】
以上により本システムは、設定された停止位置候補と実際の停止位置との間に、位置ずれが発生した場合であっても、確実に、短時間で所定の作業を実行することができる。
【実施例0115】
次に、実施例2における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法を説明する。
【0116】
図10Aは、実施例2における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法であって、時系列教示データ6を説明する説明図であり、図10Bは、実施例2における目標停止位置決定部41の目標停止位置決定方法であって、作業対象5の近傍の状態を説明する説明図である。
【0117】
なお、実施例2では、実施例1と相違する部分について説明する。実施例2で説明されていない部分については、実施例1と同様である。
【0118】
図10Aは、一つの作業対象5に対して少なくとも二つ以上の教示データ32を有する時系列教示データ6を示す。実施例2では、データ管理部3は、例えば、三つの教示データ32を有し、三つの教示データ32は、時系列教示データ6として、教示データA61、教示データB62、教示データC63の順番で実行される。
【0119】
図10Bは、一つの作業対象5の近傍の状態であり、時系列教示データ6に含まれる教示データA61、教示データB62、教示データC63について、作業可能領域を探索した様子を示す。
【0120】
そして、図10Bは、教示データA61に関する作業可能領域610とそこから決定された目標停止位置611、教示データB62に関する作業可能領域620とそこから決定された目標停止位置621、教示データC63に関する作業可能領域630とそこから決定された目標停止位置631を示す。
【0121】
このように、時系列教示データ6を実行する際には、時系列教示データ6に含まれる全ての教示データ(教示データA61、教示データB62、教示データC63)について、目標停止位置を決定する。
【0122】
つまり、目標停止位置決定部41は、教示データ32が、所定の作業に対して、複数の時系列な教示データ(時系列教示データ6)である場合には、全ての教示データ(教示データA61、教示データB62、教示データC63)について、これら教示データ毎に、目標停止位置を決定する。
【0123】
なお、所定の作業を実行する場合に、教示データ毎に移動ロボット2の立ち位置を目標停止位置に変更し、それぞれの目標停止位置において、それぞれの教示データを実行してもよい。
【0124】
また、所定の作業を実行する場合に、連続する教示データにおいて作業可能領域(停止位置候補)が重なり、重なる作業可能領域(停止位置候補)について、同一の(一つの)目標停止位置を決定することができる場合には、この同一の目標停止位置において、それぞれの教示データを実行してもよい。
【0125】
つまり、目標停止位置決定部41は、複数の時系列な教示データであって、少なくとも2つの連続する教示データにおいて、停止位置候補を形成する領域(作業可能領域)が重なり(共通し)、重なる(共通する)停止位置候補を形成する領域(作業可能領域)について、同一の目標停止位置を決定する。
【0126】
例えば、実施例2では、教示データA61の作業可能領域と教示データB62の作業可能領域とが重なり、重なる作業可能領域について、移動機構21の停止精度である停止精度データ33を加味し、教示データA61と教示データB62との共通の目標停止位置64を決定する。この場合、移動ロボット2は、先ず、目標停止位置64に移動し、教示データA61と教示データB62とを実行し、次に、目標停止位置631に移動し、教示データC63を実行する。
【0127】
また、時系列教示データ6に含まれる全ての教示データを、共通の目標停止位置により、実行することができるように、教示データを修正してもよい。
【0128】
この場合、全ての教示データの作業可能領域が重なり、重なる作業可能領域について、目標停止位置を決定することができるように、かつ、修正する教示データの数が最小となるように、修正すべき教示データを選択し、選択された教示データについて、修正方法算出部410により、実施例1と同様に、修正する。
【0129】
ただし、実施例1で示した修正方法(1)、修正方法(2)、修正方法(3)は、全ての教示データの作業可能領域に影響するため、修正方法(4)により、修正することが好ましい。
【0130】
つまり、目標停止位置決定部41は、目標停止位置の決定に影響する影響要因の少なくとも一つを修正する修正方法算出部410を有し、修正方法算出部410は、教示データを修正する場合、修正する教示データの数が最小となるように、修正すべき教示データを選択する。
【0131】
そして、教示データ毎に、それぞれの教示データの作業可能領域の範囲情報に基づいて、全ての教示データの作業可能領域が重なるように、教示データを修正する。
【0132】
つまり、目標停止位置決定部41は、全ての教示データについて、目標停止位置決定部41の条件を満たす目標停止位置が存在しない場合には、教示データ毎に、それぞれの教示データにおける停止位置候補の範囲を算出し、目標停止位置決定部41の条件を満たす目標停止位置が存在するように、かつ、修正する教示データの数が最小となるように、算出された停止位置候補の範囲に基づいて、修正すべき教示データを選択する。
【0133】
例えば、実施例2では、それぞれの教示データの作業可能領域の範囲情報に基づいて、全ての教示データの作業可能領域が重なるためには、教示データC63のみを修正すればよい。教示データC63のみを修正した後、移動ロボット2は、全ての教示データについて、共通の目標停止位置に移動し、全ての教示データを実行する。
【0134】
実施例2によれば、実行すべき教示データが複数存在した場合においても、確実に、短時間で所定の作業を実行することができるように、目標停止位置を決定することができる。
【符号の説明】
【0135】
1・・・移動ロボットシステム、2・・・移動ロボット、20・・・マニピュレーション部、200・・・エンドエフェクタ、21・・・移動機構、22・・・ロボット制御部、23・・・相対位置関係取得部、24・・・ロボット座標系、3・・・データ管理部、30・・・環境データ、31・・・ロボットデータ、32・・・教示データ、320・・・教示データ軌跡、33・・・停止精度データ、34・・・教示データ変換部、35・・・移動空間データ、36・・・自己位置推定精度データ、37・・・停止精度決定部、4・・・移動制御部、40・・・停止位置候補探索部、41・・・目標停止位置決定部、410・・・修正方法算出部、42・・・自己位置推定部、43・・・グリッドマップ、430・・・セル、4300・・・教示地点、4301・・・作業可能点、4302・・・作業遂行保証点、431・・・作業対象領域、432・・・重心位置、5・・・作業対象、50・・・構造物、51・・・把持対象物、52・・・作業対象座標系、6・・・時系列教示データ、61・・・教示データA、610・・・教示データAの作業可能領域、611・・・教示データAの目標停止位置、62・・・教示データB、620・・・教示データBの作業可能領域、621・・・教示データBの目標停止位置、63・・・教示データC、630・・・教示データCの作業可能領域、631・・・教示データCの目標停止位置、64・・・共通目標停止位置。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B