特開 2023-69465 液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023069465

(43)【公開日】2023-05-18

(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法

(51)【国際特許分類】

   B41J 2/14 20060101AFI20230511BHJP

   B41J 2/16 20060101ALI20230511BHJP

【ＦＩ】

B41J2/14 307

B41J2/16 307

B41J2/14 501

B41J2/14 607

B41J2/16 503

B41J2/16 517

【審査請求】未請求

【請求項の数】10

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2021181344

(22)【出願日】2021-11-05

(71)【出願人】

【識別番号】000006747

【氏名又は名称】株式会社リコー

(74)【代理人】

【識別番号】100090527

【弁理士】

【氏名又は名称】舘野 千惠子

(72)【発明者】

【氏名】大野 隆介

【テーマコード（参考）】

2C057

【Ｆターム（参考）】

2C057AF65

2C057AF93

2C057AN01

2C057AP24

2C057AP56

2C057BA04

2C057BA14

(57)【要約】

【課題】インクへの耐液性を向上させた液体吐出ヘッドを提供する。
【解決手段】ノズル３ａを有する第１部材３０と、前記第１部材と接合され、液体流路の少なくとも一部を形成する第２部材２０と、を備え、前記第２部材は、母材２ｆと、前記母材の面全体に形成された表面処理膜２ｅと、を有し、前記第１部材と前記第２部材は金属接合されていることを特徴とする。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

ノズルを有する第１部材と、
前記第１部材と接合され、液体流路の少なくとも一部を形成する第２部材と、を備え、
前記第２部材は、母材と、前記母材の面全体に形成された表面処理膜と、を有し、
前記第１部材と前記第２部材は金属接合されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。

【請求項2】

前記第１部材は、前記第２部材側の面に第１金属層を有し、
前記第２部材は、前記第１部材側の面であって前記表面処理膜上に第２金属層を有し、
前記第１金属層と前記第２金属層とが金属接合されていることを特徴とする請求項１に記載の液体吐出ヘッド。

【請求項3】

前記第１金属層及び前記第２金属層は、金、銅又はアルミニウムにより形成されていることを特徴とする請求項２に記載の液体吐出ヘッド。

【請求項4】

前記表面処理膜は、Ｓｉを含む酸化膜であり、
前記酸化膜は、不動態膜を形成する遷移金属を含んでいることを特徴とする請求項１～３のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。

【請求項5】

請求項１～４のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。

【請求項6】

前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする請求項５に記載の液体吐出ユニット。

【請求項7】

請求項１～４のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項５若しくは６に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。

【請求項8】

ノズルを有する第１部材と、前記第１部材と接合され、液体流路の少なくとも一部を形成する第２部材と、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、
前記第２部材が有する母材の面全体に表面処理膜を形成する表面処理膜形成工程と、
前記第１部材と前記第２部材を金属接合させる接合工程と、を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。

【請求項9】

前記第１部材における前記第２部材側の面に第１金属層を形成する第１金属層形成工程と、
前記第２部材における前記第１部材側の面であって前記表面処理膜上に第２金属層を形成する第２金属層形成工程と、を含み、
前記接合工程は、前記第１金属層と前記第２金属層を金属接合させることを特徴とする請求項８に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【請求項10】

前記第１金属層形成工程は、前記第１部材が有する母材に金属層を形成し、該金属層に表面処理を行い、表面を金属原子が露出した状態にして前記第１金属層を形成し、
前記第２金属層形成工程は、前記表面処理膜上に金属層を形成し、該金属層に表面処理を行い、表面を金属原子が露出した状態にして前記第２金属層を形成し、
前記接合工程は、前記第１金属層と前記第２金属層とを金属原子レベルで金属接合させることを特徴とする請求項９に記載の液体吐出ヘッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法に関する。

【背景技術】

【0002】

インクジェット方式に用いられる液体吐出ヘッドは、構成部材を接合して製造されることが多い。液体吐出ヘッドの構成部材を接合する方法としては、接着剤を用いて接着する方法が主に用いられている。

【0003】

しかし、接着剤を用いて接着する方法の場合、インクに対する耐久性が接着剤の性能に左右されたり、接着剤が硬化するときの熱の影響により製造精度が低下したりする。このため、他の方法についても検討がなされている。

【0004】

構成部材を接合する方法としては、他にも、熱拡散法により加熱、押圧して部材同士を直接接合する方法がある。しかし、この方法の場合、熱の影響を受けてしまうために変形や破損が発生し、品質が低下する問題がある。

【0005】

これらの問題に対して、金属接合を行う方法が提案されている。この方法では、部材の表面に金属層を形成し、その表面をプラズマ照射により活性化して押圧することで、常温での直接接合を実現して高精度な接合を行う。例えば特許文献１では、母材の表面に金属層を形成して金属接合を行うことが開示されている。また、特許文献２では、ノズル基板とインク液室基板を接着する金属質薄層が開示されている。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

しかしながら、従来技術では、金属層が形成されている接合界面以外は、母材とインクが直接接触するため、母材に耐液性の弱い材料を用いることが困難である。インクの流路を形成する部分は母材が露出するため、母材にインクへの耐液性のあるものを使用する必要がある。そのため、インクへの耐液性を向上させる技術が望まれている。

【0007】

そこで本発明は、インクへの耐液性を向上させた液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

上記課題を解決するために、本発明の液体吐出ヘッドは、ノズルを有する第１部材と、前記第１部材と接合され、液体流路の少なくとも一部を形成する第２部材と、を備え、前記第２部材は、母材と、前記母材の面全体に形成された表面処理膜と、を有し、前記第１部材と前記第２部材は金属接合されていることを特徴とする。

【発明の効果】

【0009】

本発明によれば、インクへの耐液性を向上させた液体吐出ヘッドを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本発明における液体吐出ヘッドの一例を説明するための断面概略図である。

【図2】図１の要部拡大図である。

【図3A】本発明における液体吐出ヘッドの製造方法の一例を説明するための概略図（ａ）～（ｃ）である。

【図3B】本発明における液体吐出ヘッドの製造方法の一例を説明するための概略図（ｄ）及び（ｅ）である。

【図4】液体を吐出する装置の一例における概略図である。

【図5】液体を吐出する装置の他の例における概略図である。

【図6】液体吐出ユニットの一例における概略図である。

【図7】液体吐出ユニットの他の例における概略図である。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、本発明に係る液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。

【0012】

（液体吐出ヘッド及び液体吐出ヘッドの製造方法）
本発明の液体吐出ヘッドは、ノズルを有する第１部材と、前記第１部材と接合され、液体流路の少なくとも一部を形成する第２部材と、を備え、前記第２部材は、母材と、前記母材の面全体に形成された表面処理膜と、を有し、前記第１部材と前記第２部材は金属接合されていることを特徴とする。

【0013】

本発明によれば、流路の一部を形成する部材が有する母材に、表面処理膜を形成することにより、母材がインクに直接接触することを防止でき、母材をインク等の液体から保護することができる。このため、インク等の液体への耐液性を向上させることができる。

【0014】

図１は、本発明に係る液体吐出ヘッドの一実施形態を説明するための断面概略図である。図２は、図１の要部拡大図である。

【0015】

本実施形態の液体吐出ヘッド４０４は、例えば、フレーム１０、流路板２０、ノズル板３０、振動板６０を有している。本実施形態において、ノズル板３０は第１部材の一例であり、流路板２０は第２部材の一例である。

【0016】

フレーム１０は、例えばインク供給口、共通液室１ｂ、ベース部材１ａを有している。なお、ここではインク供給口の図示を省略している。共通液室１ｂは、例えばベース部材１ａに彫り込みを形成することで設けられる。

【0017】

流路板２０は、ノズル板３０と接合され、液体流路の少なくとも一部を形成する。流路板２０は、第２母材２ｆと、第２母材２ｆの面全体に形成された表面処理膜２ｅを有し、その他にも例えば流体抵抗部２ａ、加圧液室２ｂ等を有する。

【0018】

なお、ノズル板３０が有する母材を第１母材３ｃとし、流路板２０が有する母材を第２母材２ｆとしている。また、加圧液室２ｂは、加圧室、個別液室などと称してもよい。また、加圧液室２ｂは、例えば第２母材２ｆに彫り込みを形成することで設けられる。

【0019】

流路板２０は、ノズル３ａに連通するインク流路２ｃを有しており、インク流路２ｃは液体流路の一部であるともいえる。液体流路の形状等は、適宜変更することができる。また、液体吐出ヘッド４０４が吐出する液体としては、例えばインクが挙げられ、適宜選択することができる。

【0020】

図示されるように、本実施形態では、流路板２０が有する第２母材２ｆの面全体に表面処理膜２ｅが形成されている。このため、第２母材２ｆと液体流路（例えばインク流路２ｃ）との間に表面処理膜２ｅが存在することになり、第２母材２ｆに直接インクが触れることを防止できる。これにより、第２母材２ｆをインクから保護することができ、インクへの耐液性を向上させることができる。

【0021】

また、インクへの耐液性が向上できることから、第２母材２ｆの材料の選択性が向上する。例えば、耐液性が弱い材料を第２母材２ｆに用いてもよい。
適宜選択することが可能であるが、本実施形態において、流路板２０の第２母材２ｆの材料としては、例えばシリコン、SUS304等を用いることができる。

【0022】

第２母材２ｆの面全体に表面処理膜２ｅが形成されていることにより、例えば加圧液室２ｂ内のインクが第２母材２ｆに接触することを防止できる。また、インク流路２ｃや加圧液室２ｂ以外の箇所でもインクが第２母材２ｆに接触することを防止できる。

【0023】

表面処理膜２ｅの厚みとしては、適宜選択することができるが、例えば、２５ｎｍ以上５０μｍ以下であることが好ましい。この範囲である場合、流路形成部材に欠陥があった場合に欠陥部を覆うことができ、かつ振動版６０の動作特性に影響を与えないという利点が得られる。

【0024】

表面処理膜２ｅとしては、適宜選択することができる。例えば、Ｓｉを含む酸化膜であることが好ましく、前記酸化膜は、不動態膜を形成する遷移金属を含んでいることがより好ましい。このような酸化膜を用いることにより、インクに対して耐液性が向上する。

【0025】

前記酸化膜において、遷移金属が含まれる量や割合としては、適宜選択することができる。例えば酸化膜中に含まれる遷移金属は、３．５ａｔｏｍｉｃ％以上１３．５ａｔｏｍｉｃ％以下であることが好ましい。この範囲である場合、酸化膜の欠陥が少なく、かつ充填率の高い構造をとることができ、インクへの耐性を得やすくすることができる。

【0026】

ノズル板３０は、ノズル３ａを有している。ノズル３ａの数や形状等は、適宜選択することができる。また、ノズル板３０の液体吐出面側に撥液膜３ｂが形成されている。撥液膜３ｂが形成されていることにより、ノズル板３０が有する第１母材３ｃがインク等から保護される。撥液膜３ｂとしては、例えば撥水膜を用いてもよい。

【0027】

また、撥液膜３ｂは、図示されるように、ノズル３ａの内側にも形成されていることが好ましい。これにより、第１母材３ｃがインクに接触することをより防止できる。

【0028】

振動板６０は、例えば凸部６ａ、ダイヤフラム部６ｂ及びインク流入口６ｃを有している。

【0029】

本実施形態の液体吐出ヘッド４０４は、振動板６０に接着層７０を介して接合された積層圧電素子５０を有している。積層圧電素子５０により、加圧液室２ｂに圧力が印加され、加圧液室２ｂ内の液体がノズル３ａから吐出される。

【0030】

また、本実施形態の液体吐出ヘッド４０４は、積層圧電素子５０を固定するベース４０を備えている。接着層７０としては、公知の接着剤を用いて形成することができる。また、積層圧電素子５０は配線８により電源等と接続される。

【0031】

本実施形態において、ノズル板３０と流路板２０は金属接合されている。ノズル板３０と流路板２０が金属接合されていることにより、接着剤を用いて接合する場合に比べて、インクに対する流路の耐久性等を向上させることができる。また、本実施形態によれば、接着剤や高温加熱を用いることなく部材の接合を行うことができ、また常温で接合可能であることから、高精度に接合を行うことができる。更に本実施形態によれば、金属接合させることで部材同士を強固に接合できる。

【0032】

金属接合としては、適宜選択することができる。例えば本実施形態のように、第１金属層３ｄと第２金属層２ｄとを金属接合させる。本実施形態において、ノズル板３０は流路板２０側の面に第１金属層３ｄを有し、流路板２０はノズル板３０側の面であって表面処理膜２ｅ上に第２金属層２ｄを有し、第１金属層３ｄと第２金属層２ｄとが金属接合されている。このように第１金属層３ｄと第２金属層２ｄとを用いて金属接合させる場合、ヘッドの作製が容易になるという利点がある。

【0033】

第１金属層３ｄ及び第２金属層２ｄとしては、任意の金属材料を用いることができる。中でも、第１金属層３ｄ及び第２金属層２ｄは、金、銅又はアルミニウムにより形成されていることが好ましい。この場合、接着剤や高温加熱を用いることなく、常温において直接接合することが可能となる。例えば金は、低温で容易に接合でき、インク流路からインクが接合界面に侵入することを防止しやすくなる。

【0034】

なお、第１金属層と第２金属層を区別なく説明する場合、単に金属層などと称することがある。

【0035】

図２に示されるように、第１金属層３ｄ及び第２金属層２ｄは、一部が液体流路に露出するようにしてもよい。図示される例における一部は、例えば第１金属層３ｄ及び第２金属層２ｄの側面と称されてもよい。

【0036】

次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法における詳細例について説明する。
本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法の一例としては、ノズルを有する第１部材と、前記第１部材と接合され、液体流路の少なくとも一部を形成する第２部材と、を備える液体吐出ヘッドの製造方法であって、前記第２部材が有する母材の面全体に表面処理膜を形成する表面処理膜形成工程と、前記第１部材と前記第２部材を金属接合させる接合工程と、を含むことを特徴とする。

【0037】

また、本実施形態では、以下とすることが好ましい。前記第１部材における前記第２部材側の面に第１金属層を形成する第１金属層形成工程と、前記第２部材における前記第１部材側の面であって前記表面処理膜上に第２金属層を形成する第２金属層形成工程と、を含み、前記接合工程は、前記第１金属層と前記第２金属層を金属接合させる。

【0038】

本実施形態の製造方法の一例について、図３Ａ及び図３Ｂを用いて説明する。
まず、図３Ａ（ａ）に示すように、第２母材２ｆの面全体に表面処理膜２ｅを形成する（表面処理膜形成工程）。表面処理膜２ｅを形成する方法としては、適宜選択することができる。例えば蒸着法、スパッタ法、ＣＶＤ（Chemical Vapor Deposition）法、ＡＬＤ（Atomic Layer Deposition）法等の方法が挙げられる。

【0039】

表面処理膜２ｅとして、Ｓｉを含み、不動態膜を形成する遷移金属を含む酸化膜とする場合、例えば多元スパッタ法を用い、各ターゲットのパワー変えることで、前記酸化膜における遷移金属が含まれる量や割合を調整することができる。

【0040】

次いで、図３Ａ（ｂ）に示すように、流路板２０におけるノズル板３０側の面であって表面処理膜２ｅ上に第２金属層２ｄを形成する（第２金属層形成工程）。
第２金属層２ｄを形成する方法としては、例えばスパッタ法、蒸着法等が挙げられる。

【0041】

また、図３Ａ（ｃ）に示すように、ノズル板３０における流路板２０側の面に第１金属層３ｄを形成する（第１金属層形成工程）。第１金属層３ｄを形成する方法としては、適宜選択することができ、例えば、めっき等の公知の方法を用いることができる。
なお、第１金属層形成工程を行うタイミングは適宜変更可能である。第１金属層形成工程は、接合工程より前に行えばよい。

【0042】

図３Ｂ（ｄ）は、接合工程における接合前の状態を示す図である。
接合工程で行う方法としては、例えば公知の装置を用い、流路板２０とノズル板３０が対向するように配置し、両部材を押圧しながら接合する方法が挙げられる。
なお、流路板２０を紙面上側に図示し、ノズル板３０を紙面下側に図示しているが、これに限られるものではない。

【0043】

図３Ｂ（ｅ）は、接合工程における接合後の状態を示す図である。接合工程により、流路板２０とノズル板３０が金属接合される。本実施形態によれば、接着剤や高温加熱を用いることなく部材の接合を行うことができ、また常温で接合可能であることから、高精度に接合を行うことができる。更に本実施形態によれば、金属接合させることで部材同士を強固に接合できる。

【0044】

上記実施形態において、金属層を形成する際に表面処理を行うことが好ましい。以下、好適な例を説明する。

【0045】

本例における第１金属層形成工程では、ノズル板３０が有する第１母材３ｃに金属層を形成し、該金属層に表面処理を行い、表面を金属原子が露出した状態にして第１金属層３ｄを形成する。
また、本例における第２金属層形成工程では、表面処理膜２ｅ上に金属層を形成し、該金属層に表面処理を行い、表面を金属原子が露出した状態にして第２金属層２ｄを形成する。

【0046】

第１金属層形成工程及び第２金属層形成工程における上記の表面処理としては、例えば、金属層の表面をプラズマ照射により活性化する方法を用いることができる。

【0047】

本例における接合工程では、上記のように両部材を押圧しながら接合することで、第１金属層３ｄと第２金属層２ｄとを金属原子レベルで金属接合させることができる。このように、本例によれば、常温において金属原子レベルで金属接合を行うことができるため、高精度かつ強固に接合することができる。

【0048】

（液体を吐出する装置及び液体吐出ユニット）
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図４及び図５を参照して説明する。図４は同装置の要部平面説明図、図５は同装置の要部側面説明図である。

【0049】

この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構４９３によって、キャリッジ４０３は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構４９３は、ガイド部材４０１、主走査モータ４０５、タイミングベルト４０８等を含む。ガイド部材４０１は、左右の側板４９１Ａ、４９１Ｂに架け渡されてキャリッジ４０３を移動可能に保持している。そして、主走査モータ４０５によって、駆動プーリ４０６と従動プーリ４０７間に架け渡したタイミングベルト４０８を介して、キャリッジ４０３は主走査方向に往復移動される。

【0050】

このキャリッジ４０３には、本発明に係る液体吐出ヘッド４０４及びヘッドタンク４４１を一体にした液体吐出ユニット４４０を搭載している。液体吐出ユニット４４０の液体吐出ヘッド４０４は、例えば、イエロー（Ｙ）、シアン（Ｃ）、マゼンタ（Ｍ）、ブラック（Ｋ）の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド４０４は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。

【0051】

液体吐出ヘッド４０４の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド４０４に供給するための供給機構４９４により、ヘッドタンク４４１には、液体カートリッジ４５０に貯留されている液体が供給される。

【0052】

供給機構４９４は、液体カートリッジ４５０を装着する充填部であるカートリッジホルダ４５１、チューブ４５６、送液ポンプを含む送液ユニット４５２等で構成される。液体カートリッジ４５０はカートリッジホルダ４５１に着脱可能に装着される。ヘッドタンク４４１には、チューブ４５６を介して送液ユニット４５２によって、液体カートリッジ４５０から液体が送液される。

【0053】

この装置は、用紙４１０を搬送するための搬送機構４９５を備えている。搬送機構４９５は、搬送手段である搬送ベルト４１２、搬送ベルト４１２を駆動するための副走査モータ４１６を含む。

【0054】

搬送ベルト４１２は用紙４１０を吸着して液体吐出ヘッド４０４に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト４１２は、無端状ベルトであり、搬送ローラ４１３と、テンションローラ４１４との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。

【0055】

そして、搬送ベルト４１２は、副走査モータ４１６によってタイミングベルト４１７及びタイミングプーリ４１８を介して搬送ローラ４１３が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。

【0056】

さらに、キャリッジ４０３の主走査方向の一方側には搬送ベルト４１２の側方に液体吐出ヘッド４０４の維持回復を行う維持回復機構４２０が配置されている。

【0057】

維持回復機構４２０は、例えば液体吐出ヘッド４０４のノズル面（ノズルが形成された面）をキャッピングするキャップ部材４２１、ノズル面を払拭するワイパ部材４２２などで構成されている。

【0058】

主走査移動機構４９３、供給機構４９４、維持回復機構４２０、搬送機構４９５は、側板４９１Ａ，４９１Ｂ、背板４９１Ｃを含む筐体に取り付けられている。

【0059】

このように構成したこの装置においては、用紙４１０が搬送ベルト４１２上に給紙されて吸着され、搬送ベルト４１２の周回移動によって用紙４１０が副走査方向に搬送される。

【0060】

そこで、キャリッジ４０３を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド４０４を駆動することにより、停止している用紙４１０に液体を吐出して画像を形成する。

【0061】

このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。

【0062】

次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図６を参照して説明する。図６は同ユニットの要部平面説明図である。

【0063】

この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板４９１Ａ、４９１Ｂ及び背板４９１Ｃで構成される筐体部分と、主走査移動機構４９３と、キャリッジ４０３と、液体吐出ヘッド４０４で構成されている。

【0064】

なお、この液体吐出ユニットの例えば側板４９１Ｂに、前述した維持回復機構４２０、及び供給機構４９４の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。

【0065】

次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図７を参照して説明する。図７は同ユニットの正面説明図である。

【0066】

この液体吐出ユニットは、流路部品４４４が取付けられた液体吐出ヘッド４０４と、流路部品４４４に接続されたチューブ４５６で構成されている。

【0067】

なお、流路部品４４４はカバー４４２の内部に配置されている。流路部品４４４に代えてヘッドタンク４４１を含むこともできる。また、流路部品４４４の上部には液体吐出ヘッド４０４と電気的接続を行うコネクタ４４３が設けられている。

【0068】

本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。

【0069】

この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。

【0070】

例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物（三次元造形物）を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置（三次元造形装置）がある。

【0071】

また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。

【0072】

上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層（粉末層）、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。

【0073】

上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。

【0074】

また、「液体」は、インク、処理液、ＤＮＡ試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。

【0075】

また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。

【0076】

また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。

【0077】

「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。

【0078】

ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。

【0079】

例えば、液体吐出ユニットとして、図５で示した液体吐出ユニット４４０のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。

【0080】

また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。

【0081】

また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図６で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。

【0082】

また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。

【0083】

また、液体吐出ユニットとして、図７で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。

【0084】

主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。

【0085】

また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ（積層型圧電素子を使用するものでもよい。）以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。

【0086】

また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。

【符号の説明】

【0087】

１ｂ 共通液室
２ｂ 加圧液室
２ｃ インク流路
２ｄ 第２金属層
２ｅ 表面処理膜
３ａ ノズル
３ｂ 撥液膜
３ｄ 第１金属層
２０ 流路板
３０ ノズル板
５０ 積層圧電素子

【先行技術文献】

【特許文献】

【0088】

【特許文献1】特開２００６－１６８１８９号公報

【特許文献2】特開昭６１－９４７６７号公報

【図1】

【図2】

【図3A】

【図3B】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】