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特開2023-69750光学素子、光学装置および光学素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069750
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】光学素子、光学装置および光学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20230511BHJP
   H01S 3/083 20060101ALI20230511BHJP
   H01S 3/08 20230101ALI20230511BHJP
   H01S 3/113 20060101ALI20230511BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20230511BHJP
   G03H 1/22 20060101ALI20230511BHJP
   G03H 1/04 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G02B5/18
H01S3/083
H01S3/08
H01S3/113
G02B5/32
G03H1/22
G03H1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181857
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】平等 拓範
【テーマコード(参考)】
2H249
2K008
5F172
【Fターム(参考)】
2H249AA06
2H249AA25
2H249AA44
2H249AA45
2H249AA50
2H249AA55
2H249CA01
2H249CA08
2H249CA15
2K008AA10
2K008CC03
2K008EE04
2K008FF17
2K008HH01
5F172AE12
5F172CC04
5F172NN13
5F172NQ34
5F172NQ44
5F172NQ53
5F172NS25
(57)【要約】
【課題】体積回折格子または体積ホログラフィック回折格子を有しており、高出力レーザなどに適した光学素子、上記光学素子を含む光学装置、および、上記光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光学素子は、単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されており且つ制御光によって励起される発光中心が添加されている第1光学部材を備え、第1光学部材には、制御光が第1光学部材に照射されていない非照射状態または照射されている照射状態において、所定波長の光を反射する第1回折格子が形成されており、第1回折格子は、体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている第1光学部材を備え、
前記第1光学部材には、所定波長の光を反射する第1回折格子が形成されており、
前記第1回折格子は、前記第1光学部材の一部が改質された複数の改質領域によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である、
光学素子。
【請求項2】
前記複数の改質領域それぞれは、面状または線状の領域である、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記第1光学部材には、前記第1回折格子と共振器を構成する第2回折格子が形成されており、
前記第2回折格子は、前記第1光学部材の一部が改質された複数の改質領域によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である、
請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記共振器はリング共振器である、
請求項3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記第1光学部材は、固体レーザ母材である、
請求項1~4の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記第1回折格子は、チャープ構造を有する、
請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
前記第1光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されている、
請求項1,2および6の何れか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の光学素子を備える、光学装置。
【請求項9】
請求項1に記載の光学素子と、
単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されており且つ制御光によって励起される発光中心が添加されている第2光学部材と、
を備え、
前記第2光学部材には、前記制御光が前記第1光学部材に照射されていない非照射状態または照射されている照射状態において、前記所定波長の光を反射する前記第1回折格子と共振器を形成する第2回折格子が形成されており、
前記第2回折格子は、体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である、
光学装置。
【請求項10】
前記共振器はリング共振器である、
請求項9に記載の光学装置。
【請求項11】
結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている複数の光学部材を備え、
前記複数の光学部材は、一方向に沿って配置されており、
前記複数の光学部材のうちの第1光学部材には、所定波長の光を反射する第1回折格子が形成されており、
前記第1回折格子は、前記第1光学部材の一部が改質された複数の改質領域によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である、
光学装置。
【請求項12】
前記第1光学部材は固体レーザ母材、ヒートシンクまたは可飽和吸収体である、
請求項11に記載の光学装置。
【請求項13】
前記第1光学部材は固体レーザ母材であり、
前記第1光学部材には、前記第1回折格子とともに共振器を構成する第2回折格子が形成されており、
前記第2回折格子は、前記第1光学部材が改質された複数の改質領域によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である、
請求項11に記載の光学装置。
【請求項14】
前記第1光学部材は固体レーザ母材であり、
前記複数の光学部材のうちの第2光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されているとともに、前記第1回折格子とともに共振器を構成する第2回折格子が形成されており、
前記第2回折格子は、体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である、
請求項11に記載の光学装置。
【請求項15】
固体レーザ母材と、共振器とを備え、レーザ光を出力する装置であって、
前記共振器内に配置されており、結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている光学部材を備え、
前記光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されているとともに、前記制御光が前記光学部材に照射されていない非照射状態または照射されている照射状態において、前記共振器の光軸と異なる方向に前記レーザ光を反射する回折格子が形成されており、
前記回折格子は、前記光学部材の一部が改質された複数の改質領域によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である、
光学装置。
【請求項16】
単結晶、セラミックスまたはガラスで形成されている光学部材に、所定波長の光を反射する体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子を形成する工程を備え、
前記体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子は、パルスレーザ光を用いて前記光学部材を改質することによって形成される、
光学素子の製造方法。
【請求項17】
前記パルスレーザ光のパルス幅は、0.1ps~1nsである、
請求項16に記載の光学素子の製造方法。
【請求項18】
前記パルスレーザ光のパルス幅は、1ps~1nsである、
請求項16に記載の光学素子の製造方法。
【請求項19】
前記光学部材において前記パルスレーザ光が入射される第1面に対して、前記パルスレーザ光は、前記第1面の垂直方向から前記第1面に入射される、
請求項16~18の何れか一項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項20】
前記光学部材における前記パルスレーザ光が入射される第1面に対して、前記パルスレーザ光は、前記第1面の垂直方向に対して斜め方向から前記第1面に入射される、
請求項16~18の何れか一項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項21】
前記体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子は、前記パルスレーザ光による複数の改質領域によって形成されており、
前記複数の改質領域それぞれを面状または線状に形成する、
請求項16~18の何れか一項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項22】
前記光学部材における前記パルスレーザ光が入射される第1面は、前記光学部材に前記所定波長の光が入射される第2面と異なる面である、
請求項16~21の何れか一項に記載の光学素子の製造方法。
【請求項23】
前記光学部材における前記パルスレーザ光が入射される第1面は、前記光学部材に前記所定波長の光が入射される第2面と同じ面である、
請求項16~21の何れか一項に記載の光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、光学装置および光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバーブラッグ回折格子(FBG)素子は、ファイバーレーザの普及に大きく寄与した。しかしながら取り扱えるエネルギーが小さいため、近年ではバルクの体積ブラッグ回折格子(VBG)素子(または体積ホログラフィック回折格子(VHG)素子)が注目されている(たとえば、特許文献1参照)。体積回折格子は、バルク型であるため高いエネルギー領域で光のスペクトルや角度により反射・透過特性を設計できるため、レーザ発振装置、非線形光学波長変換装置、光パルスの伸張・圧縮装置など幅広く利用できると期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-224376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のVBG素子はガラスを母材としており、たとえばレーザ装置に使用する場合には誘導放出断面積、熱伝導率など様々な問題があった。さらには受動素子であり、光を透過する状態または透過しない状態は最初の設計に依存していた。すなわち、従来のVBG素子では、高出力レーザ材料には適さず、さらに外部信号によるスイッチング制御はできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、体積回折格子または体積ホログラフィック回折格子を有しており、高出力レーザなどに適した光学素子、上記光学素子を含む光学装置、および、上記光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る光学素子は、単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている第1光学部材を備え、上記第1光学部材には、所定波長の光を反射する第1回折格子が形成されており、上記第1回折格子は、上記第1光学部材の一部が改質された複数の改質面によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である。
【0007】
上記光学素子では、単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている第1光学部材に、上記第1回折格子が作り込まれている。よって、上記光学素子は、高出力レーザなどに適している。
【0008】
上記複数の改質領域それぞれは、面状または線状の領域であってもよい。
【0009】
上記第1光学部材には、上記第1回折格子と共振器を構成する第2回折格子が形成されており、上記第2回折格子は、上記第1光学部材の一部が改質された複数の改質領域によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子であってもよい。
【0010】
第2回折格子も、単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている第1光学部材に作り込まれている。よって、上記光学素子は、高出力レーザなどに適している。
【0011】
上記共振器はリング共振器でもよい。
【0012】
上記第1光学部材は、固体レーザ母材でもよい。この場合、たとえば、光学素子をレーザ装置に適用可能である。
【0013】
上記第1回折格子は、チャープ構造を有してもよい。この場合、たとえば、光学素子を用いてパルス圧縮または伸張が可能である。
【0014】
上記第1光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されていてもよい。この場合、制御光によって、第1光学部材をスイッチング制御可能である。
【0015】
本発明の他の側面に係る光学装置の一例は、上記光学素子を備える。
【0016】
本発明の他の側面に係る光学装置の他の例は、上記光学素子と、単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されており且つ制御光によって励起される発光中心が添加されている第2光学部材と、を備え、上記第2光学部材には、上記制御光が上記第1光学部材に照射されていない非照射状態または照射されている照射状態において、上記所定波長の光を反射する上記第1回折格子と共振器を形成する第2回折格子が形成されており、上記第2回折格子は、体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である。
【0017】
上記光学素子では、単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている第1光学部材に、上記第1回折格子が作り込まれている。更に、光学素子が有する第1回折格子と共振器を形成する第2回折格子が、単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されており且つ制御光によって励起される発光中心が添加されている第2光学部材に作り込まれている。よって、上記装置は、高出力レーザなどに適している。更に、第2光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されているため、第2回折格子が作り込まれた第2光学部材は、制御光によってスイッチング制御され得る。
【0018】
上記共振器はリング共振器でもよい。
【0019】
本発明の他の側面に係る光学装置の更に他の例は、結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている複数の光学部材を備え、上記複数の光学部材は、一方向に沿って配置されており、上記複数の光学部材のうちの第1光学部材には、所定波長の光を反射する第1回折格子が形成されており、上記第1回折格子は、上記第1光学部材の一部が改質された複数の改質面によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である。
【0020】
単結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている第1光学部材に、上記第1回折格子が作り込まれている。そのため、上記装置は、高出力レーザなどに適している。
【0021】
上記第1光学部材は固体レーザ母材、ヒートシンクまたは可飽和吸収体でもよい。
【0022】
上記第1光学部材は固体レーザ母材であり、上記第1光学部材には、上記第1回折格子とともに共振器を構成する第2回折格子が形成されており、上記第2回折格子は、上記第1光学部材が改質された複数の改質面によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子であってもよい。この場合、上記装置は、レーザ装置として機能する。
【0023】
上記第1光学部材は固体レーザ母材であり、上記複数の光学部材のうちの第2光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されているとともに、上記第1回折格子とともに共振器を構成する第2回折格子が形成されており、上記第2回折格子は、体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子であってもよい。この場合、上記装置は、レーザ装置として機能する。
【0024】
本発明の他の側面に係る光学装置は、固体レーザ母材と、共振器とを備え、レーザ光を出力する装置であって、上記共振器内に配置されており、結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている光学部材を備え、上記光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されているとともに、上記制御光が上記光学部材に照射されていない非照射状態または照射されている照射状態において、上記共振器の光軸と異なる方向に上記レーザ光を反射する回折格子が形成されており、上記回折格子は、上記光学部材の一部が改質された複数の改質面によって形成された体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子である。この場合、上記装置は、レーザ装置として機能する。また、結晶、セラミックスまたはガラスから形成されている光学部材に上記回折格子が形成されているので、高出力レーザに有効である。更に、上記光学部材には、制御光によって励起される発光中心が添加されているため、回折格子が作り込まれた光学部材を、制御光によって制御可能である。
【0025】
本発明の他の側面に係る光学素子の製造方法は、単結晶、セラミックスまたはガラスで形成されている光学部材に、上記所定波長の光を反射する体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子を形成する工程を備え、上記体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子は、パルスレーザ光を用いて上記光学部材を改質することによって形成される。
【0026】
上記方法では、単結晶、セラミックスまたはガラスで形成されている光学部材に、上記回折格子を作り込むことができる。その結果、高出力レーザ等に対して有効な光学素子を製造可能である。
【0027】
上記パルスレーザ光のパルス幅は、0.1ps~1nsであってもよいし、1ps~1nsであってもよい。
【0028】
上記光学部材において上記パルスレーザ光が入射される第1面に対して、上記パルスレーザ光は、上記第1面の垂直方向から上記第1面に入射されてもよい。或いは、上記光学部材における上記パルスレーザ光が入射される第1面に対して、上記パルスレーザ光は、上記入射面の垂直方向に対して斜め方向から上記第1面に入射されてもよい。
【0029】
上記体積型ホログラフィック回折格子または体積ブラッグ回折格子は、上記パルスレーザ光による複数の改質領域によって形成されており、上記複数の改質領域それぞれを面状または線状に形成されてもよい。
【0030】
上記光学部材における上記パルスレーザ光が入射される第1面は、上記光学部材に上記所定波長の光が入射される第2面と異なる面でよい。或いは、上記光学部材における上記パルスレーザ光が入射される第1面は、上記光学部材に上記所定波長の光が入射される第2面と同じ面でよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、体積回折格子または体積ホログラフィック回折格子を有しており、高出力レーザなどに適した光学素子、上記光学素子を含む光学装置、および、上記光学素子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、一実施形態に係る光学素子の概略構成を示す図面である。
図2図2は、図1に示した光学素子の製造方法を説明するための図面である。
図3図3は、外部制御可能な光学素子を説明するための図面である。
図4図4は、一実施形態に係る光学装置(レーザ装置)の一例の模式図である。
図5図5は、図4に使用した光学素子の変形例を示す模式図である。
図6図6は、一実施形態に係る光学装置(レーザ装置)の他の例の模式図である。
図7図7は、一実施形態に係る光学装置(レーザ装置)の更に他の例の模式図である。
図8図8は、一実施形態に係る光学装置(レーザ装置)の更に他の例の模式図である。
図9図9は、光学装置の一変形例を示す模式図である。
図10図10は、一実施形態に係る光学装置(レーザ装置)の更に他の例の模式図である。
図11図11は、一実施形態に係る光学装置(レーザ装置)の更に他の例の模式図である。
図12図12は、一実施形態に係る光学装置(レーザ装置)の更に他の例の模式図である。
図13図13は、光学素子の他の例を説明するための図面である。
図14図14は、光結合素子としての光学素子を説明するための図面である。
図15図15は、スペクトルフィルタとしての光学素子を説明するための図面である。
図16図16は、一実施形態に係る光学素子の変形例を説明するための模式図である。
図17図17は、図16における光学素子を光学素子に入射する光の方向からみた場合の模式図である。
図18図18は、図16に示した光学素子の製造方法を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。本開示において、「体積回折格子」は、体積型ホログラフィック回折格子(VHG)または体積ブラッグ回折格子(VBG)である。
【0034】
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係る光学素子の概略構成を示す図面である。図1に示した光学素子2は、光学部材(第1光学部材)4を有する。
【0035】
光学部材4は、単結晶から形成されたバルク状の結晶体、セラミックスから形成されたバルク状のセラミックス体またはガラスである。光学部材4、たとえば、柱状(円柱状、四角柱状を含む)を呈する。
【0036】
上記単結晶の例は、YAG,GGG、LuAG、YSAG、YGAG等のガーネット系、Y、Sr、Lu、Al、YALO、Sr等の酸化物、YVO、LuVO、GdVO等のバナデート系、YLF、CaFやFAPなどのフッ化物、アパタイト系、WOなどのタングステート系である。上記セラミックスの例は、YAGセラミックスのように上記単結晶と同様の材料の多結晶、一部アモルファスも含むなどである。このような単結晶およびセラミックスは、固体レーザ母材として機能する。
【0037】
光学部材4は、サファイア、ダイヤモンド、SiC、さらには無添加のレーザ母材などから形成されていてもよい。このような光学部材4は、ヒートシンクとして機能する。
【0038】
光学部材4は、非線形光学結晶から形成されていてもよい。非線形光学結晶から形成された光学部材4の材料としては、たとえば、水晶、強誘電体材料、半導体材料、ボレート系材料等が挙げられる。
【0039】
上記強誘電体材料としては、たとえば、LiNbO(Mgが添加されている場合、添加されていない場合の両方を含む)、LiTaO(Mgが添加されている場合、添加されていない場合の両方を含む)、KTiPO(Rbが添加されている場合、添加されていない場合の両方を含む)、RbTiPO(Rbが添加されている場合、添加されていない場合の両方を含む)、KTiOAsO、RbTiOAsOなどが挙げられる。
【0040】
上記半導体材料としては、たとえば、GaAs、GaP、GaN、ZnS、ZnSe、 ZnTe、ZnGeP、CdSiPなどが挙げられる。
【0041】
上記ボレート系材料としては、たとえば、LiB、BaB,Ca(BOF,CsLiB10,CaLnO(BO(Ln=Gd,Y)などが挙げられる。
【0042】
光学部材4には、所定波長の光を選択的に反射する体積回折格子(第1回折格子)6が形成されている。体積回折格子6は、VHGまたはVBGである。体積回折格子6は、周期Λで配置された複数の改質面(改質領域)6aを有する。改質面6aは、光学部材4が改質され、改質面6a以外の領域と異なる屈折率を有する屈折率変調面である。一実施形態において、各改質面6aは、複数の改質部が面状に形成された領域であり得る。図1では、説明の便宜のため、改質面6aを太実線で模式的に示している。改質面6aの図示の仕方は他の図でも同様である。
【0043】
光学素子2は、光学部材4に体積回折格子6を形成することによって製造され得る。すなわち、光学素子2の製造方法は、光学部材4に体積回折格子6を形成する工程を有する。
【0044】
上記体積回折格子6は、レーザ描画によって形成され得る。具体的には、図2に示したように、パルスレーザ光PLを集光部8で集光し、パルスレーザ光PLの照射領域の光学部材4を改質する。光学素子2を形成する場合、光学部材4の面(第1面)4cからパルスレーザ光PLを入射する。面4cは、図1に示したように体積回折格子6が形成された光学素子2に光Liを入射する場合において、光Lが入射される端面(第2面)4aと異なる面である。図2に示した例では、面4cは、端面4aに略直交している面である。形成すべき体積回折格子6の大きさおよび周期Λに応じて、パルスレーザ光PLを3次元的に走査することによって、複数の改質面6aを形成する。これにより、光学部材4に体積回折格子6が書き込まれ、光学素子2が得られる。パルスレーザ光PLは、改質面6aを書き込む書き込みレーザ光として機能し得る。上記照射領域で改質された部分を改質部と称した場合、各改質面6aは、複数の改質部が面状に配置されることによって形成されている。図2に示した例では、パルスレーザ光PLを面4cに対して垂直方向に入射している。しかしながら、パルスレーザ光PLは、面4cに対して斜め方向(垂直方向から傾いた方向)から入射されてもよい。
【0045】
パルスレーザ光PLは、サブピコからナノ秒パルス幅のパルスレーザ光でよい。パルスレーザ光PLのパルス幅は、0.1ps~10nsでよい。上記パルス幅は、0.1ps~1nsでもよいし、1ps~1nsでもよい。パルスレーザ光PLを出力するレーザ装置10の例は、小型で低消費電力でありサブナノ秒パルス幅のレーザ光を出力可能なマイクロチップレーザ(MCL)(たとえば、特開2019-129252号公報参照)である。光学部材4がNd:YAGであり且つパルスレーザ光PLが基本波である場合の波長の例は、1064nmであり、光学部材4がYb:YAGであり且つパルスレーザ光PLが基本波である場合の波長の例は、1024nm~1108nmである。パルスレーザ光PLとしては、基本波のみならず、固体レーザからの第2高調波,第3高調波,第4高調波、第5高調波、第6高調波、第7高調波などの高調波を用いてもよい。高調波を用いることで、パルス幅0.1ps未満の大形で不安定な超短パルスレーザを用いなくとも光子エネルギーを高める事ができるため物質と効率的に強く相互作用し、より微細な加工が可能である。
【0046】
パルスレーザ光PLのパワーおよび照射時間等は、パルスレーザ光PLの照射位置(集光位置)における屈折率が、体積回折格子6として機能し得る屈折率に変調可能に設定されていればよい。たとえば、パルスレーザ光PLの尖頭出力の例は、0.1MW~50MWである。パルスレーザ光PLの照射位置への照射時間は、0.1ps~1nsである。
【0047】
パルスレーザ光PLの走査は、パルスレーザ光PLを出力するレーザ装置自体を走査してもよいし、レーザ装置10から出力されたパルスレーザ光PLを、ミラーなどを用いて走査してもよい。
【0048】
図1に示したように、体積回折格子6が、周期Λで平行に配置された複数の改質面6aで形成されている場合を想定する。複数の改質面6aが配列されている方向(改質面6aに直交する方向)をz方向と称し、体積回折格子6が形成されている領域においてz方向における一方の端をz=0とし、z方向における体積回折格子6の幅をLとする。光学部材4に所定波長λの光Lが入射する場合を想定する。
【0049】
この場合、体積回折格子6のz方向の屈折率分布n(z)、光Lで回折効率最大となる周期Λ(ブラッグ反射条件)および最大反射率Rは、式(1)、式(2)および式(3)で表される(たとえば、以下の参考文献1参照)。式(3)は位相整合条件に相当する。式(1)~式(3)において、nは、光学部材4における改質面6a以外の屈折率(改質前の屈折率)であり、nは、改質面6aの屈折率であり、θは、光Lの体積回折格子6への入射方向と体積回折格子6(具体的には改質面6a)とのなす角度である。
参考文献1:P. Yen著,「フォトリフラクティブ非線形光学」,丸善株式会社,1995 年3 月1日,p.53-p.73。
【0050】
【数1】

【数2】

【数3】

式(2)において、θ=π/2である場合、Λは、λ/(2n)である。
また、参考文献1の例えば第42頁によれば、式(1)~式(3)のnとして10-3~10-5を確保できれば、体積回折格子6が有効に機能する。
【0051】
光学素子2では、所定波長の光を選択的に反射する体積回折格子(第1回折格子)6が形成されている。そのため、入射した光のうち所定波長の光を反射し、所定波長からズレた波長の光を透過する。光学素子2は、上記製造方法で説明したように、光学部材4の一部を、たとえばレーザ光を用いて改質することによって形成されている。光学部材4は、単結晶から形成されたバルク状の結晶体またはセラミックスから形成されたバルク状のセラミックス体である。このように上記製造方法では、単結晶、セラミックス体などに回折格子を形成可能である。
【0052】
そのため、上記製造方法を用いることで、従来では実現できていなかった固体レーザ用の単結晶、セラミックス体などに回折格子を形成することできる。これによって、固体レーザ用の単結晶、セラミックス体などに、たとえば共振器を直接形成可能であり、更に、発振波長をロックすることも可能である。さらに、異種材料との接合界面では、状況により部分反射コーティングを行う必要があるが、多層膜の蒸着になるため機械的に脆いとの欠点がある。上記製造方法では、脆弱な多層膜を必要としないので、より強靱な複合素子を実現可能である。
【0053】
さらに、単結晶、セラミックス体等が固体レーザ材料から形成されている場合、各種発光中心を添加できることから、これらの励起に基づく外部制御も実現可能である。この点を説明する。図3は、外部制御可能な光学素子を説明するための図面である。
【0054】
図3に示したように、光学部材に発光中心が添加されている場合の光学素子2を光学素子2Aと称す。光学素子2Aは、制御波長λの制御光L(外部信号)で励起される発光中心(第1発光中心)が光学部材に添加されている。発光中心の例は、希土類元素(Nd,Yb,Tm,Ho,Er,Ce,Pr,Dy,Tb,Smなど)、遷移金属元素(Cr,Ti,V,など)などを含む。
【0055】
図3に示したように、制御波長λの制御光Lが光学素子2に入射した場合、発光中心(たとえば、RE3+等)が励起され屈折率変調Δnが生じる。この屈折率変調Δnを考慮した最大反射率Rは、式(4)で表される。
【数4】
【0056】
は、通常、Δnより十分大きいため、式(4)は、式(5)のように近似できる。
【数5】
【0057】
屈折率変調Δnは、電子遷移による変化分(Δn)と発熱による変化分(Δn)に分けられる。すなわち、Δnは、式(6)で表される。
【数6】

ここで、ΔnおよびΔnは、式(7)および式(8)で表される。
【数7】

【数8】
【0058】
式(7)において、ΔNは反転分布密度である。Fは、ローレンツ因子(Lorents因子)であり、(n+2)/3で表される。Δpは、基底準位と励起準位間の分極差率である。Δpおよび(∂n/∂T)として、次の数値を採用する(たとえば、以下の参考文献2参参照)
Δp=(1.95±0.25)×10―26[cm
∂n/∂T≒(0.7±0.2)×10-5
参考文献2:O. L. Antipov, D. V. Bredikhin, O. N. Eremeykin, A. P. Savikin, E. V. Ivakin,and A. V. Sukhadolau, “Electronic mechanism for refractive-index changes inintensively pumped Yb:YAG laser crystals,” OPTICS LETTERS, 2006, Vol. 31, No. 6, 763-765.
【0059】
この場合、たとえば、光学素子2AがYb:YAG(Ybの添加量:100at.%)で形成されており且つ100%励起したとすると、Δnは2.93×10-3程度までの屈折率変化が生じる。仮に、Ybの添加量を0.68at.%としても50%励起することで、10―5程度の屈折率変化が生じる。そのため、制御光Lを光学素子2Aに照射し、発光中心を励起することで、Δnとして、前述した体積回折格子6として機能させる場合の屈折率変化を確保できる。換言すれば、制御光Lを光学素子2Aに照射し、発光中心を励起することで、Δnとして、体積回折格子6の反射特性に影響を及ぼす屈折率変化を確保できる。
【0060】
したがって、光学素子2Aに制御光Lが照射されていない状態(非照射状態)で体積回折格子6が光Lを反射するように設計されている場合、光学素子2Aに制御光Lを照射した場合、式(3)に表される条件(位相整合条件)は満たされない。その結果、所定波長λの光Lは体積回折格子6で反射されない。
【0061】
逆に、光学素子2Aに制御光Lが照射した状態(照射状態)で体積回折格子6が光Lを反射するように設計されている場合、制御光Lの照射を停止した非照射状態では、式(3)に表される条件(位相整合条件)は満たされない。その結果、所定波長λの光Lは体積回折格子6で反射されない。
【0062】
そのため、光学素子2Aは、制御光Lの光学素子2Aへの照射の有無(換言すれば、照射状態と非照射状態とを切り換えること)で、光学素子2A(具体的には体積回折格子6)が光Lを反射する場合と、反射しない場合(すなわち透過する場合)とに切り換え可能である。したがって、光学素子2Aは、反射特性を外部制御可能なスイッチ素子として機能する。
【0063】
制御光Lの照射の有無で光学素子2Aの機能をスイッチング制御できるので、光学素子2Aではスイッチング速度の向上が図れるとともに、光学素子2Aを、ピコ秒、フェムト秒パルスを用いた高い精度で制御可能である。
【0064】
上記光学素子2,2Aは、光学部材4の材料および体積回折格子6の設計に伴う光学素子2,2Aの機能に応じてレーザ加工装置、レーザ計測装置、レーザ医療装置およびその他の光学装置(理化学機器も含む)に適用可能である。
【0065】
光学部材4が、単結晶またはセラミックスから形成されている場合、入射する光のパワーに対して高い耐性を有する。そのため、光学素子2,2Aは、高出力のレーザ光に対するスイッチ素子として使用可能であり、たとえば、高出力のレーザ光(たとえばパルスレーザ光)を出力する(或いは扱う)レーザ装置、レーザ加工装置、非線形波長変換装置、光パルスの伸張または圧縮装置等に適用可能である。
【0066】
次に、光学素子2または光学素子2Aを用いた種々のデバイスまたは装置の実施形態を説明する。以下の説明する実施形態では、固体レーザ母材、ヒートシンク、非線形結晶などが光学部材4である。
【0067】
(第2実施形態)
第2実施形態として、本開示に係る光学素子を備えた光学装置を説明する。図4は、光学素子を備えた光学装置の一例であるレーザ装置10の模式図である。図4に示したレーザ装置(光学装置)10は、レーザ波長λを有するレーザ光Lを出力する装置である。
【0068】
レーザ装置10は、第1光供給部(励起光供給部)12と、光学素子2Bとを備える。
【0069】
第1光供給部12は、光学素子2Bに励起波長λを有する励起光Lを供給する。第1光供給部12は、励起光Lを出力する光源部12Aと、励起光Lを光学素子2Bに入射するように集光する集光光学系12Bとを有する。図4では、集光光学系12Bをレンズとして模式的に示している。光源部12Aの例は、半導体レーザ素子である。
【0070】
光学素子2Bは、励起光Lが供給されることで、レーザ光Lを出力する光発振器(または光増幅器)として機能する。光学素子2Bは、光学部材4Aを有し、光学部材4Aに、体積回折格子6A1と、体積回折格子(第2回折格子)6A2とが形成されている。体積回折格子6A1および体積回折格子6A2は、共振器14を構成している。
【0071】
光学部材4Aは、端面4aおよび端面4bを有する。端面4bは、端面4aと反対側の端面である。断らない限り、端面4aおよび端面4bは平行である。説明の便宜のため、端面4a(または端面4b)に直交する方向をZ方向と称す場合もある。第2実施形態において、Z方向は、共振器14の光軸方向に相当する。
【0072】
光学部材4Aは、励起波長λを有する励起光Lによって励起される発光中心(第2発光中心)が添加された固体レーザ母材から形成されている。すなわち、光学部材4Aはレーザ媒質である。光学部材4Aは、たとえば、柱状(円柱状、四角柱状を含む)を呈する。
【0073】
光学部材4Aに添加される発光中心の例は、第1実施形態で光学素子2に関して説明した発光中心の例と同様の希土類または遷移金属である。光学部材4Aを形成する固体レーザ母材の例は、光学部材4の場合と同様である。光学部材4Aは、たとえばNdが添加されたYAG(Nd:YAG)から形成されている。
【0074】
体積回折格子6A1は、光学部材4Aにおいて端面4a側に形成されており、共振器14における入力側反射部(第1反射部)として機能する。体積回折格子6A1は、共振器14の入力側反射部としての励起光Lに対する透過特性およびレーザ光Lに対する反射特性を有する。
【0075】
一実施形態において、体積回折格子6A1は、励起波長λ(波長808nm、波長885nm等)に対して80%より大きい(好ましくは90%より大きい)透過率を有する一方、レーザ波長(レーザ発振波長)λ(例えば波長1064nm)に対して99%より大きい反射率を有する。
【0076】
体積回折格子6A1は、光学部材4Aに作り込まれた複数の改質面6aを有する。体積回折格子6A1は、第1実施形態における体積回折格子6の場合と同様にレーザ描画で形成され得る。体積回折格子6A1が有する複数の改質面6aの配置(たとえば周期)および改質面6aの屈折率は、共振器14の入力側反射部に応じた透過特性および反射特性を実現するように設定されていればよい。すなわち、体積回折格子6A1は、共振器14の入力側反射部として機能するように設計された体積回折格子6に相当する。
【0077】
体積回折格子6A2は、光学部材4Aにおいて端面4b側に形成されており、共振器14における出力側反射部(第2反射部)として機能する。体積回折格子6A2は、共振器14の出力側反射部としての励起光Lに対する透過特性およびレーザ光Lに対する反射特性を有する。
【0078】
一実施形態において、体積回折格子6A2は、レーザ発振波長であるレーザ波長λ(例えば波長1064nm)に対して出力結合用に90%~99%の反射率(部分反射率)を有する。体積回折格子6A2は、励起波長λの光を反射しなくてもよい。しかしながら、体積回折格子6A2が励起波長λに対して50%より大きい反射率を有することで、媒質長さ(具体的には、光学部材4Aにおける体積回折格子6A1および体積回折格子6A2の間の長さ)を短くでき、安定的で効率的なレーザ発振、特に、CWレーザ発振が可能である。
【0079】
体積回折格子6A2は、光学部材4Aに作り込まれた複数の改質面6aを有する。体積回折格子6A2は、第1実施形態における体積回折格子6の場合と同様にレーザ描画で形成され得る。体積回折格子6A2が有する複数の改質面6aの配置(たとえば周期)および改質面6aの屈折率は、共振器14の出力側反射部に応じた透過特性および反射特性を実現するように設定されていればよい。すなわち、体積回折格子6A2は、共振器14の出力側反射部として機能するように設計された体積回折格子6に相当する。
【0080】
レーザ装置10は、端面4a側に、ヒートシンク16を有してもよい。ヒートシンク16は、光学部材4Aに接合されている。ヒートシンク16の材料としては、たとえば、サファイア、ダイアモンド等が挙げられる。ヒートシンク16および光学素子2B(具体的には光学部材4A)は、本技術分野で公知の接合方法で接合されていればよい。たとえば、ヒートシンク16は、接着剤、オプティカルコンタクト、または表面活性化低温接合(以下、単に「表面活性結合」とも称す)で光学素子2B(具体的には光学部材4A)と一体化されている。
【0081】
表面活性結合は、真空中で接合する材料の接合面の酸化膜又は表面付着物をイオンビーム照射又はFAB(中性原子ビーム)照射によって除去し、平坦で構成原子の露出した接合面同士を接合するという手法である。表面活性結合は、分子間結合を利用した直接接合である。
【0082】
上記レーザ装置10では、発光中心が添加された固体レーザ母材から形成されている光学部材4Aに、体積回折格子6A1および体積回折格子6A2が作り込まれている。したがって、光学素子2Bが第1実施形態における光学素子2に相当し、光学素子2Bは、光学素子2と同様の作用効果を有する。たとえば、体積回折格子6A1および体積回折格子6A2が光学部材4Aに作り込まれていることによって、誘電体多層膜を利用する場合より、光発振器としての光学素子2Bの機械的強度が向上している。
【0083】
レーザ装置10において、体積回折格子6A1および体積回折格子6A2は、共振器14を構成している。すなわち、光学部材4Aに共振器14が作り込まれている。したがって、光学素子2Bに励起光Lを入射することで、レーザ光Lを生成可能である。
【0084】
体積回折格子6A1および体積回折格子6A2のうちの一方の代わりに誘電体多層膜を使用してもよい。この場合でも、共振器14を構成する2つの反射部をともに誘電体多層膜で形成する場合より、光発振器としての光学素子2Bの機械的強度が向上している。
【0085】
(変形例1)
図5を利用して、光学素子2Bの変形例である光学素子2Cを説明する。図5は、図4に示した光学素子の変形例を説明するための図面である。光学素子2Cは、光学部材4Aと、体積回折格子6B1と、体積回折格子6B2とを有する。光学素子2Cは、体積回折格子6A1および体積回折格子6A2の代わりに、体積回折格子6B1および体積回折格子6B2を有し、体積回折格子6B1および体積回折格子6B2がリング共振器14Aを構成している点で、光学素子2Bと主に相違する。
【0086】
変形例1における光学部材4Aは、図4に示した光学部材4Aと同じであることから、説明を省略する。
【0087】
体積回折格子6B1は、ブレーズ角θB1で入射するレーザ光Lを反射するように設計されている点以外は、体積回折格子6A1と同様である。すなわち、体積回折格子6B1は、端面4a側に配置されており、体積回折格子6A1の場合と同様に作製される複数の改質面6aを有する。体積回折格子6B1は、リング共振器14Aにおいて入力側反射部として機能する。
【0088】
体積回折格子6B2は、ブレーズ角θB2で入射するレーザ光Lを反射するように設計されている点以外は、体積回折格子6A2と同様である。すなわち、体積回折格子6B2は、端面4b側に配置されており、体積回折格子6A2の場合と同様に作製される複数の改質面6aを有する。体積回折格子6B2は、リング共振器14Aにおいて出力側反射部として機能する。
【0089】
上記構成により、体積回折格子6B1および体積回折格子6B2で構成されるリング共振器14Aは、レーザ光Lに対するブレーズ角θB1およびブレーズ角θB2でリング状にレーザ光Lが伝播する共振器である。
【0090】
光学素子2Cは、体積回折格子6B1および体積回折格子6B1が作り込まれた光学部材4Aである。よって、光学素子2Cが第1実施形態における光学素子2に相当し、光学素子2Cは、光学素子2と同様の作用効果を有する。
【0091】
光学素子2Cは、光学素子2Cの代わりにレーザ装置10に適用可能である。
【0092】
光学素子2Cは、リング共振器14Aを備えていることで、光学素子2Cの小型化を図りながら、共振器長を確保可能である。
【0093】
変形例4の光学素子2Cを、レーザ装置10に適用した場合、レーザ装置10は、光学素子2CにZ方向に沿って外部磁場を印加する外部磁場供給部を更に備えてもよい。これによって、ファラデー効果を利用できる。図5に示したように、光学素子2Cの外部からシード光Lを入射してもよい。このようにシード光Lsを光学素子2Cに入射する婆胃、リング共振器(光学素子2C)を備えたレーザ装置において、レーザ光を光注入同期でき、その発振波長や位相を制御できる。
【0094】
(第3実施形態)
第3実施形態として、本開示に係る光学素子を備えた光学装置の他の例を説明する。図6は、光学素子を備えた光学装置の一例であるレーザ装置10Aの模式図である。図6に示したレーザ装置10Aは、レーザ波長λを有するレーザ光Lとして、パルスレーザ光を出力する装置である。
【0095】
レーザ装置10Aは、第1光供給部12と、光学素子2Dと、可飽和吸収部17とを備える受動Qスイッチ型のレーザ装置である。後述するように、レーザ装置10Aでは、光学素子2Dが有する体積回折格子6A1と、可飽和吸収部17が有する体積回折格子6A2とによって、共振器14が形成されている。
【0096】
第1光供給部12は、光学素子2Dに励起光Lを供給する。第1光供給部12の構成は、第2実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。図6では、第1光供給部12をブロックとして模式的に示している。
【0097】
光学素子2Dは、体積回折格子6A2の代わりに体積回折格子6C1を有する点で、主に光学素子2Cと相違する。光学素子2Dは、光学部材4Aと、体積回折格子6A1と、体積回折格子6C1とを有する。
【0098】
光学部材4Aは、第2実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。体積回折格子6A1の構成および作製方法は、第2実施形態の場合と同様である。第3実施形態においても、体積回折格子6A1は、共振器14における入射側反射部として機能する。
【0099】
体積回折格子6C1は、複数の改質面6aを有する。体積回折格子6C1は、励起波長λを有する励起光Lに対して50%より大きな反射率(好ましくは、90%より大きな反射率)を有する。体積回折格子6C1の作製方法は、第1実施形態における体積回折格子6の場合と同様である。
【0100】
可飽和吸収部17は、光学部材4Aの端面4bに接合されており、可飽和吸収体18と、体積回折格子6A2を有する。
【0101】
可飽和吸収体18の例はQスイッチ素子である。可飽和吸収体18は、可飽和吸収特性を有するように構成された光学部材4に相当する、可飽和吸収体18は、Crが添加されたYAG(Cr:YAG)から形成されていてもよい。可飽和吸収体18は、光学部材4Aの端面4bに接合されている。可飽和吸収体18は、たとえば、接着剤、オプティカルコンタクト、または表面活性接合で光学素子2D(具体的に光学部材4A)と一体化されている。以下、説明の便宜のため、光学素子2Dと可飽和吸収部17との接合体を光学素子3と称す。
【0102】
可飽和吸収体18の端面(光学素子と反対側の面)側には、体積回折格子6A1とともに、共振器14を構成する体積回折格子6A2が作り込まれている。体積回折格子6A2は、複数の改質面6aを有し、体積回折格子6A2の反射特性および透過特性は、第2実施形態の場合と同様である。体積回折格子6A2の作製方法は、第1実施形態における体積回折格子6の場合と同様である。
【0103】
レーザ装置10Aにおいても体積回折格子6A1および体積回折格子6A2が共振器14を構成している。更に、可飽和吸収体18を有する。そのため、レーザ光Lとして、パルスレーザ光を出力可能である。
【0104】
第3実施形態において、光学素子2Dが光学素子2に相当する。また、可飽和吸収部17も光学素子2に相当する。よって、光学素子2Dおよび可飽和吸収部17(光学素子)は、光学素子2と同様の作用効果を有する。
【0105】
レーザ装置10Aでは、励起波長λを有する励起光Lに対して高い反射率を有する体積回折格子6C1が、光学部材4Aに作り込まれている。たとえば、同様の反射特性を体積回折格子6C1以外で実現する場合には、光学部材4Aと可飽和吸収体18との間に体積回折格子6C1と同様の反射特性を有する誘電体多層膜を形成することが考えられる。しかしながら、そのような誘電体多層膜は機械強度が低いため、光学部材4Aと可飽和吸収体18とを誘電体多層膜を介して接合する際等に破損する場合がある。光学部材4Aと可飽和吸収体18とを誘電体多層膜を介して一体化された後でも、強度的に脆弱さが存在する。これに対して、レーザ装置10Aでは、体積回折格子6C1を、光学部材4Aに作り込んでいるので、上記のような作製時の破損は生じず、更に作製後の脆弱さが存在しない。特に、光学部材4A(たとえば、Nd:YAG)と、可飽和吸収体18(たとえば、Cr:YAG)とを表面活性結合で接合する場合には、原子レベルの強固な接合が期待されるので、光学素子3は外圧に対する耐性を有し得る。
【0106】
レーザ装置10Aでは、体積回折格子6A1が光学部材4Aに作り込まれており、体積回折格子6A2が可飽和吸収体18に作り込まれている。そのため、光学素子3は外圧により高い耐性を有し得る。
【0107】
レーザ装置10Aでは、体積回折格子6C1は、可飽和吸収体18に作り込まれていてもよい。レーザ装置10Aでは、体積回折格子6A1の代わりに、光学部材4Aの端面4aに形成された誘電体多層膜を入力側反射部として用いてもよい。レーザ装置10Aでは、体積回折格子6A2の代わりに、可飽和吸収体18の端面(光学素子2Dと反対側の端面)に形成された誘電体多層膜を出力側反射部として用いてもよい。
【0108】
(第4実施形態)
第4実施形態として、本開示に係る光学素子を備えた光学装置の他の例を説明する。図7は、光学素子を備えた光学装置の一例であるレーザ装置10Bの模式図である。図7に示したレーザ装置10Bは、レーザ波長λを有するレーザ光Lとして、パルスレーザ光を出力する装置である。
【0109】
レーザ装置10Bは、第1光供給部(励起光光供給部)12と、レーザ媒質20と、放熱部22Aと、放熱部22Bと、可飽和吸収部17とを備える。後述するように、レーザ装置10Bでは、放熱部22Aが有する体積回折格子6A1と、可飽和吸収部17が有する体積回折格子6A2とによって、共振器14が形成されている。
【0110】
第1光供給部12は、レーザ媒質20に励起光Lを供給する。第1光供給部12の構成は、第2実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。レーザ媒質20は、第3実施形態における光学部材4Aと同様とし得る。レーザ媒質20は、たとえば、Nd:YAGで形成されている。可飽和吸収部17も第3実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。
【0111】
放熱部22Aは、ヒートシンク16と、体積回折格子6A1とを有する。換言すれば、放熱部22Aは、体積回折格子6A1が作り込まれたヒートシンク16である。ヒートシンク16も光学部材4の一例である。体積回折格子6A1は、第1実施形態の場合と同様の構成および光学特性(反射特性及び透過特性)を有し得る。体積回折格子6A1の作製方法も、第1実施形態の場合と同様である。放熱部22A(具体的にはヒートシンク16)は、レーザ媒質20と、接着剤、オプティカルコンタクト、または表面活性接合で一体化されている。
【0112】
放熱部22Bは、ヒートシンク16と、体積回折格子6C1とを有する。換言すれば、放熱部22Bは、体積回折格子6C1が作り込まれたヒートシンク16である。放熱部22Bは、体積回折格子6A1の代わりに体積回折格子6C1が作り込まれている点以外は、放熱部22Aと同様の構成とし得る。体積回折格子6C1は、第3実施形態の場合と同様の構成および光学特性(反射特性及び透過特性)を有し得る。体積回折格子6C1の作製方法も、第3実施形態の場合と同様である。放熱部22B(具体的にはヒートシンク16)は、レーザ媒質20および可飽和吸収部17(具体的には、可飽和吸収体18)と、接着剤、オプティカルコンタクト、または表面活性接合で一体化されている。
【0113】
第4実施形態において、放熱部22A、放熱部22Bおよび可飽和吸収部17それぞれが、光学素子2に相当する。よって、光学素子としての放熱部22A、放熱部22Bおよび可飽和吸収部17は、光学素子2と同様の作用効果を有する。
【0114】
以下の説明の便宜のため、放熱部22A、レーザ媒質20、放熱部22Bおよび可飽和吸収部17によって形成される積層体を、光学素子3Aと称す。
【0115】
レーザ装置10Bにおいても体積回折格子6A1および体積回折格子6A2が共振器14を構成している。更に、可飽和吸収体18を有する。そのため、レーザ装置10Bは、レーザ光Lとして、パルスレーザ光を出力可能である。
【0116】
レーザ装置10Bでは、レーザ媒質20と可飽和吸収部17との間に放熱部22Bが配置されており、体積回折格子6C1が、放熱部22Bが有するヒートシンク16に作り込まれている。そのため、レーザ装置10Aの場合と同様に、たとえば、体積回折格子6C1と同様の反射特性を誘電体多層膜で実現する場合に比べて、光学素子3Aの機械強度の向上が図られている。
【0117】
同様の観点で、体積回折格子6A1もヒートシンク16に作り込まれていることから、光学素子3Aの機械強度の向上が図られている。更に、体積回折格子6A2が可飽和吸収体18に作り込まれているため、光学素子3Aの機械強度の向上が図られている。
【0118】
レーザ装置10Bでは、体積回折格子6A2の代わりに、可飽和吸収体18の端面(放熱部22Bと反対側の端面)に形成された誘電体多層膜を出力側反射部として用いてもよい。
【0119】
(第5実施形態)
第5実施形態として、本開示に係る光学素子を備えた光学装置を説明する。図8は、光学素子を備えた光学装置の一例であるレーザ装置10Cの模式図である。図8に示したレーザ装置10Cは、レーザ波長λを有するレーザ光Lを出力する装置である。
【0120】
レーザ装置10Cは、第1光供給部12と、光発振器24と、第2光供給部(制御光供給部)26を備える。
【0121】
第1光供給部12は、光発振器24に励起光Lを供給する。第1光供給部12の構成は、第2実施形態の場合と同様であることから、説明を省略する。
【0122】
光発振器24は、光学素子2Eと、光学素子2Fとを有する。光学素子2Eが有する体積回折格子6A1と、光学素子2Fが有する体積回折格子6Dとによって、共振器14が形成されている。光発振器24は、励起光Lが供給されることで、レーザ光Lを出力する。光発振器24は、ヒートシンク16を有してもよい。第5実施形態では、ヒートシンク16を備えた場合の光発振器24を説明する。
【0123】
図8に示したように、ヒートシンク16、光学素子2Eおよび光学素子2Fは、この順に、Z方向に沿って配置されている。
【0124】
光学素子2Eは、体積回折格子6A2が形成されていない点で、第2実施形態における光学素子2Bと相違する。すなわち、光学素子2Eは、体積回折格子6A1が作り込まれた光学部材4Aである。光学部材4Aおよび体積回折格子6A1は、第2実施形態の場合と同じであることから、説明を省略する。
【0125】
光学素子2Fは、光学部材(第2光学部材)4Bと、体積回折格子(第2回折格子)6Dとを有する。光学素子2Fは、体積回折格子6Dが作り込まれた光学部材4Bである。
【0126】
光学部材4Bは、発光中心が添加された固体レーザ母材で形成されている。光学部材4Bに添加された発光中心は、制御波長λを有する制御光Lによって励起される一方、励起波長λを有する励起光Lでは励起されない希土類または遷移金属である。たとえば光学部材4Bは、Ybが添加されたYAG(Yb:YAG)である。光学部材4Bは、光学部材4Aと、接着剤、オプティカルコンタクト、または表面活性接合で一体化されている。
【0127】
体積回折格子6Dは、複数の改質面6aを有する。体積回折格子6Dの作製方法は、第1実施形態における体積回折格子6の場合と同様である。体積回折格子6Dは、制御光Lが光学素子2Fに照射している状態(照射状態)で、体積回折格子6A1と同様に共振器14を構成するように形成されている。すなわち、体積回折格子6Dは、制御光Lの非照射状態で共振器14の出力側反射部として機能する。
【0128】
体積回折格子6Dは、発光中心が添加された光学部材4Bに作り込まれている。したがって、光学素子2Aで説明したように、制御光Lが照射されていない状態(非照射状態)では、反射特性などが照射状態から変化する。そのため、体積回折格子6Dは、制御光Lの非照射状態では、共振器14の出力側反射部としての機能を有しない。
【0129】
一実施形態において、体積回折格子6Dは、照射状態においてレーザ光L(パルスレーザ光の基本波、好ましくは高調波のレーザ発振波長)に対する等価的反射率が20%以上であることが好ましく、非照射状態において上記等価的反射率が20%未満であることが好ましい。
【0130】
ヒートシンク16、光学部材4Aおよび光学部材4Bは、接着剤、オプティカルコンタクト、または表面活性接合で一体化されている。
【0131】
第2光供給部26は、制御光Lを出力する光源部26Aと、制御光Lを光学部材4に入射するように集光する集光光学系26Bとを有する。図8では、集光光学系26Bをレンズとして模式的に示している。光源部26Aの例は、半導体レーザ素子である。
【0132】
上記レーザ装置10Cでは、第2光供給部26が、制御光Lを光学素子2Fに照射していない状態で(非照射状態)において、第1光供給部12から励起光Lを光発振器24に入射する。これにより、固体レーザ母材である光学部材4Aが励起され反転分布が形成される。この際、体積回折格子6Dのレーザ光Lの透過率が高いので、共振器14としての損失が大きい。すなわち、レーザ共振器としてのQ値が小さく、レーザ発振が抑制される。充分な反転分布が確保できた段階で、第2光供給部26が、制御光Lを光学素子2Fに照射する。これにより、体積回折格子6Dのレーザ光Lに対する反射率が増加し、共振器14が成立する。その結果、レーザ発振が生じ、レーザ光Lが出力される。この際、第2光供給部26が、制御光Lを光学素子2Fに照射する。これにより、光学素子2Fが有する体積回折格子6Dは、共振器14の出力側反射部として機能する。すなわち、光発振器24において、体積回折格子6A1と体積回折格子6Dとによって共振器14が形成される。その結果、レーザ装置10Cからレーザ光Lが出力される。
【0133】
したがって、制御光Lの光学素子2への照射の有無による光学素子2Fのスイッチング動作(制御光Lによる光学素子2Fのスイッチング制御)によって、レーザ光Lのパルス化が図れる。第1実施形態で説明したように、光学素子2Fでは、光の速度に追随するスイッチング動作が可能である。そのため、レーザ装置10Cは、短パルスレーザ光を出力可能である。すなわち、レーザ装置10Cでは、光学素子2FがQスイッチ素子として機能する。
【0134】
光学素子2Eが有する光学部材4Aには、端面4b側に、第3実施形態で説明した体積回折格子6C1が形成されていてもよい。体積回折格子6C1の反射特性などは、第3実子形態の場合と同様である。
【0135】
光学素子2Fにおける照射状態および非照射状態と反射(または透過)特性との関係は例示した場合と反対でもよい。すなわち、光学素子2Fが非照射状態で共振器14が成立し、照射状態で共振器14が成立しない形態であってもよい。
【0136】
(変形例2)
図9は、図8に示した光発振器の変形例を示す模式図である。図9に示した光発振器24Aは、光学素子2Eの代わりに光学素子2Gを備えるとともに、光学素子2Fの代わりに光学素子2Hを備える点で、光発振器24と相違する。光発振器24Aでは、制御光Lの照射状態で、光学素子2Gが有する体積回折格子6B1と、光学素子2Gが有する体積回折格子6B2とによってリング共振器14Aを形成している。図9では省略しているが、光発振器24Aは、光発振器24と同様にヒートシンク16を有してもよい。
【0137】
光学素子2Gは、体積回折格子6A1の代わりに体積回折格子6B1が光学部材4Aに作り込まれている点で、光学素子2Eと相違する。体積回折格子6B2および光学部材4Aは、光学素子2Eの場合と同様であることから、説明を省略する。
【0138】
光学素子2Hは、体積回折格子6Dの代わりに体積回折格子6B2が光学部材4Aに作り込まれている点で、光学素子2Fと相違する。光学部材4Bは、光学素子2Fの場合と同様であることから、説明を省略する。
【0139】
体積回折格子6B1および体積回折格子6B2は、制御光Lの照射状態において、光学素子2C(図5参照)の場合と同様に、リング共振器14Aを形成する。
【0140】
すなわち、体積回折格子6B1は、複数の改質面6aを有し、ブレーズ角θB1で入射するレーザ光Lを反射するように設計されている。体積回折格子6B1は、リング共振器14Aにおいて入力側反射部として機能する。体積回折格子6B2は、複数の改質面6aを有し、ブレーズ角θB2で入射するレーザ光Lを反射するように設計されている。体積回折格子6B2は、リング共振器14Aにおいて出力側反射部として機能する。
【0141】
体積回折格子6B2は、発光中心が添加された光学部材4Bに作り込まれている。したがって、光学素子2Aで説明したように、制御光Lが照射されていない状態(非照射状態)では、反射特性などが照射状態から変化する。そのため、体積回折格子6B2は、制御光Lの非照射状態では、リング共振器14Aの出力側反射部としての機能を有しない。
【0142】
一実施形態において、体積回折格子6B2は、照射状態においてレーザ光L(パルスレーザ光の基本波、好ましくは高調波のレーザ発振波長)に対する等価的反射率が20%以上であることが好ましく、非照射状態において上記等価的反射率が20%未満であることが好ましい。
【0143】
上記構成により、光発振器24Aを、光発振器24の代わりにレーザ装置10Cに適用した場合、制御光Lの照射状態では、体積回折格子6B1および体積回折格子6B2がリング共振器14Aとして機能する。その結果、レーザ光Lが出力できる。一方、制御光Lcの非照射状態では、体積回折格子6B1および体積回折格子6B2がリング共振器14Aとして機能しないため、レーザ光Lが出力されない。よって、光発振器24Aは、光発振器24と同様の作用効果を有する。更に、光発振器24Aは、リング共振器14Aを備えていることで、光学素子2Cの場合と同様に、光発振器24Aの小型化を図りながら、共振器長を確保可能である。
【0144】
光学部材4Aまたは光学部材4Bには、第3実施形態で説明した体積回折格子6C1が形成されていてもよい。体積回折格子6C1の反射特性などは、第3実施形態の場合と同様である。
【0145】
光学素子2Hにおける照射状態および非照射状態と反射(または透過)特性との関係は例示した場合と反対でもよい。すなわち、光学素子2Hが非照射状態でリング共振器14Aが成立し、照射状態でリング共振器14Aが成立しない形態であってもよい。
【0146】
(第6実施形態)
第6実施形態として、本開示に係る光学素子を備えた光学装置の他の例を説明する。図10は、光学素子を備えた光学装置の一例であるレーザ装置10Dの模式図である。
【0147】
レーザ装置10Dは、第1光供給部12と、光発振器24Bと、第2光供給部26とを備える。第1光供給部12および第2光供給部26は、レーザ装置10Cの場合と同様であることから、説明を省略する。
【0148】
光発振器24Bは、光学素子2Fの代わりに光学素子2Iを備える点および誘電体多層膜28を備える点で、光発振器24と相違する。よって、光発振器24Bは、光学素子2E、光学素子2Iおよび誘電体多層膜28を有する。光発振器24Bが備える光学素子2Eは、光発振器24の場合と同様であることから、説明を省略する。光発振器24Bは、光発振器24の場合と同様に、ヒートシンク16を有してもよい。
【0149】
誘電体多層膜28は、光学素子2Iにおいて光学素子2Eと反対側の面に設けられている。誘電体多層膜28は、レーザ光Lを一部透過する部分反射率を有する。誘電体多層膜28は、光学素子2Eが有する体積回折格子6A1とともに、光発振器24Bにおける共振器14を構成する。
【0150】
光学素子2Iは、光学部材4Bと、体積回折格子6Eを有する。すなわち、光学素子2Iは、体積回折格子6Eが作り込まれた光学部材4Bである。光学部材4Bは、レーザ装置10Cの場合と同様であることから、説明を省略する。
【0151】
体積回折格子6Eは、複数の改質面6aを有する。体積回折格子6Eは、制御光Lの非照射状態において、共振器14の光軸A(光軸Aの方向はZ方向に相当)に対して角度β(βは0より大きい角度)の方向にレーザ光Lを反射するように形成されている。体積回折格子6Eの作製方法は、体積回折格子6の場合と同様である。
【0152】
角度βは、角度βで反射するレーザ光Lが元のレーザ光L(体積回折格子6Eに入射するレーザ光)とは完全に軸が外れる角度であればよい。たとえば、レーザビーム直径をd、利得媒質長をLGMとする場合、角度(反射角)βが以下の式で示される条件を満たせば良い。
【数9】

このような角度βでレーザ光Lを反射させることによって、反射されたレーザ光Lは、元のレーザ光Lとは完全に軸が外れるため、効率的な誘導放出は生じない。したがって、制御光Lcによって、レーザ発振を抑制することが可能となる。
【0153】
ただし、実際には10回程度往復することで利得が発生すればよいことから角度βは上記の式の1/10程度でもよい。
【0154】
体積回折格子6Eにおいて、制御光Lの非照射状態におけるレーザ光Lの反射率をROFFと称し、制御光Lの照射状態におけるレーザ光Lの透過率をTONと称した場合、ROFFは10%以上であり、90%以上が好ましく、TONは、50%より大きく、90%より大きいことが好ましい。
【0155】
上記レーザ装置10Dでは、制御光Lの非照射状態で励起光Lを光発振器24Bに照射する場合、レーザ光LLは、体積回折格子6Eで、角度βの方向に反射される。よって、レーザ発振器としてのQ値は低くなることから、レーザ発振が抑制される。充分な反転分布が確保された段階で、制御光Lを光学部材4Bに照射することで体積回折格子6Eは、レーザ光Lに対して透過状態となり、共振器14が成立し、レーザ光Lが出力される。すなわち、光学素子2IがQスイッチ素子として機能する。
【0156】
すなわち、レーザ装置10Dでは、制御光Lを利用した光学素子2I(具体的には体積回折格子6E)の外部制御に基づくQスイッチレーザ装置である。光学素子2Iは、光学素子2Aに相当し、光学素子2Aと同様の作用効果を有する。よって、レーザ装置10Dでは、立ち上がりに迫る確度でのジッター制御が可能である。
【0157】
光学素子2Iにおける照射状態および非照射状態と反射特性との関係は例示した場合と反対でもよい。すなわち、光学素子2Iが照射状態において体積回折格子6Eがレーザ光Lを角度βで反射し、非照射状態においては体積回折格子6Eがレーザ光Lを透過してもよい。
【0158】
(第7実施形態)
第7実施形態として、本開示に係る光学素子を備えた光学装置の他の例を説明する。図11は、光学素子を備えた光学装置の一例であるレーザ装置10Eの模式図である。
【0159】
レーザ装置10Eは、第1光供給部12と、光発振器24Cと、第2光供給部26とを備える。第1光供給部12および第2光供給部26は、レーザ装置10Cの場合と同様であることから、説明を省略する。
【0160】
光発振器24Cは、可飽和吸収体18を備えており、誘電体多層膜28が可飽和吸収体18において光学素子2Eと反対側の面に設けられている点で、光発振器24Bと相違する。よって、光発振器24Cは、光学素子2E、光学素子2I、可飽和吸収体18および誘電体多層膜28を有する。光発振器24Cが備える光学素子2Eおよび誘電体多層膜28は、光発振器24Bの場合と同様であることから、説明を省略する。可飽和吸収体18は、レーザ装置10Aにおける可飽和吸収体18と同様である。光発振器24Bは、光発振器24の場合と同様に、ヒートシンク16を有してもよい。
【0161】
光学素子2Iは、光発振器24Bの場合と同様に、光学部材4Bと、体積回折格子6Eとを有する。すなわち、光学素子2Iは、体積回折格子6Eが作り込まれた光学部材4Bである。光学部材4Bは、光発振器24Bの場合と同様であるため、説明を省略する。体積回折格子6Eは光発振器24Bの場合と同様でもよい。可飽和吸収体18を有する光発振器24Cでは、照射状態と非照射状態との間の透過率の変調量、すなわち、非照射状態におけるレーザ光Lの透過率TOFFと照射状態におけるレーザ光Lの透過率TONの間の変調量は、5%以上あればよい。
【0162】
上記レーザ装置10Eでは、制御光Lの非照射状態で励起光Lを光発振器24Bに照射する場合、レーザ光Lは、体積回折格子6Eで、角度βの方向に反射される。よって、レーザ発振器としてのQ値は低くなることから、レーザ発振が抑制される。充分な反転分布が確保された段階で、制御光Lを光学部材4Bに照射することで体積回折格子6Eは、レーザ光Lに対して透過状態となり、共振器14が成立し、レーザ光Lが出力される。すなわち、光学素子2IがQスイッチ素子として機能する。
【0163】
レーザ装置10Eでは、制御光Lを利用した光学素子2I(具体的には体積回折格子6E)の外部制御に基づくQスイッチレーザ装置である。光学素子2Iは、光学素子2Aに相当し、光学素子2Aと同様の作用効果を有する。よって、レーザ装置10Eでは、立ち上がりに迫る確度でのジッター制御が可能である。
【0164】
光学素子2Iにおける照射状態および非照射状態と反射特性との関係は例示した場合と反対でもよい。すなわち、光学素子2Iが照射状態において体積回折格子6Eがレーザ光Lを角度βで反射し、非照射状態においては体積回折格子6Eがレーザ光Lを透過してもよい。
【0165】
(第8実施形態)
図12は、第8実施形態に係る光学素子を示す模式図である。図12に示した光学素子2Jは、チャープ構造を有する体積回折格子6Fを有する点で、主に光学素子2と相違する。この点を中心に光学素子2Jを説明する。
【0166】
光学素子2Jは、光学部材4と、体積回折格子6Fとを有する。すなわち、光学素子2Jは、体積回折格子6Fが作り込まれた光学部材4である。
【0167】
光学部材4の材料の例は、第1実施形態で例示した場合と同様である。第8実施形態において、光学部材4は、たとえば水晶である。
【0168】
体積回折格子6Fは、複数の改質面6aを有する。体積回折格子6Fはチャープ構造を有する点で、体積回折格子6と相違する。すなわち、複数の改質面6aの間隔(周期)は、一定間隔ではない。体積回折格子6Fの形成方法は、体積回折格子6の場合と同様である。体積回折格子6Fは、スペクトル幅Δλの信号光Sλに対する高反射率を有する回折格子として設計され得る。この場合、体積回折格子6Fの周期は上記スペクトル幅Δλに応じてチャープされている。これにより、パルス状の信号光Sλのパルス圧縮または伸張が可能である。
【0169】
上記光学素子2Jは、パルス圧縮またはパルス伸張のための素子として、レーザ装置等の光学装置に適用可能である。
【0170】
(第9実施形態)
図13は、第9実施形態に係る光学素子を示す模式図である。図13に示した光学素子2Kは、光学部材4に、光学素子2Aの場合と同様に、発光中心が添加されている点で、光学素子2Jと相違する。
【0171】
この場合、制御光Lの光学素子2Kへの照射の有無で、光学素子2Aの場合と同様に、体積回折格子6Fの反射特性(または透過特性)が変化する。したがって、光学素子2Kは、制御光Lの光学素子2Kへの照射状態と非照射状態とを切り換えることで、体積回折格子6Fの反射によるチャープ量を可変することが可能である。
【0172】
発光中心は光学部材4に一様に分散されていてもよい。たとえば、図13にグラデーションで模式的に示したように、発光中心が所定の分布状態(たとえば、一方の端面4aから他方の端面4bにかけて添加量が低減する分布状態)で添加されていてもよい。これによって、制御光Lの光学素子2Kへの照射状態と非照射状態に基づくチャープ量の変化に加えて、上記発光中心の分布に基づくチャープ量の変化も生じることから、より大きなチャープ可変量を得ることが可能である。
【0173】
上記光学素子2Kは、パルス圧縮またはパルス伸張のための素子として、レーザ装置等の光学装置に適用可能である。
【0174】
本発明は例示した種々の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される範囲が含まれるとともに、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0175】
光学素子2は、たとえば、図14に示したように光結合素子(またはビーム結合素子)として利用できる。具体的には、光学部材4に形成された体積回折格子6におけるブラッグ波長λである波長λの光Lλ1を端面4aから光学素子2に入射する。この際、波長λ1(ブラッグ波長λ)の帯域Δλ(体積回折格子6で反射可能な帯域)よりズレた波長λの光Lλ2を、光Lλ1の反射方向と同軸に端面4b側から光学素子2に入射する。これにより、体積回折格子6で反射した光Lλ1と体積回折格子6を透過した光Lλ2が合成された波長λ1と波長λ2を有する光Lλ3を得ることができる。この場合も、光学部材4に発光中心が添加されているため、制御光Lの照射の有無で、光結合を実施する場合と実施しない場合のスイッチングが可能である。
【0176】
光学素子2は、たとえば、図15に示したようにスペクトルフィルタとして利用できる。具体的には、光学部材4に形成された体積回折格子6におけるブラッグ波長λである波長λ1および上記波長λ2を有する光Lλ3を端面4aから光学素子2に入射する。この際、波長λ1(ブラッグ波長λ)の光Lλ1は、体積回折格子6で反射される一方、波長λ2の光Lλ2は、体積回折格子6を透過する。これにより、波長λ1および上記波長λ2を有する光Lλ3を、波長λ1の光Lλ1と、波長λ2の光Lλ2とに分離できる。この場合も、光学部材4に発光中心が添加されているため、制御光Lの照射の有無で、光学素子2のフィルタリング機能の有無のスイッチングが可能である。
【0177】
光学素子2は、体積回折格子6がブレーズ角θで入射した光のみ反射するように設計されている場合、光学素子2に入射する光のうちブレーズ角θを中心として反射可能な角度内の成分のみ反射し、上記ブレーズ角θを中心として反射可能な角度を超えた角度で入射する成分を透過する。したがって、光学素子2は、光学素子2に入射する光(たとえば、レーザビーム)の横モードをフィルタリングする素子としても機能する。この場合も、光学部材4に発光中心が添加されているため、制御光Lの照射の有無で、光学素子2のフィルタリング機能を制御可能である。
【0178】
光学素子が有する複数の改質領域それぞれは例示した改質面のように面状の領域に限定されない。図16および図17に示した光学素子のように、各改質領域は、線状の領域でもよい。図16は、光学素子の更に他の変形例を示す模式図である。図17は、図16に示した光学素子を図中に示した励起光Lの入射側からみた場合の図面である。図16および図17では、他の図と同様に、改質領域を太い実線で示している。図17において、二点鎖線で囲まれる領域αは、光学素子内において光が伝播する領域を模式的に示している。
【0179】
図16および図17に示した光学素子2Lは、体積回折格子6の代わりに体積回折格子6Gを有する点で、図3に示した光学素子2Aと相違する。光学素子2Lは、光学部材4と、体積回折格子6Gとを有する。光学部材4は、図2に示した光学素子2Aが有する光学部材4と同様の部材であり、制御光LCによって励起される発光中心が添加された光学部材である。図16では、円柱状の光学部材4を例示している。
【0180】
体積回折格子6Gは、複数の改質領域6bを有する。各改質領域6bは、光L(たとえばレーザ光)が入射される端面4aに対して交差する方向に延在している。図16に示した一形態では、各改質領域6bは、端面4aに対して直交している。複数の改質領域6bは、それらで構成される体積回折格子6Gによって、光Lを反射させながら光学部材4を伝播可能に形成されている。図16および図17に示した形態では、円柱状の光学部材4の中心軸に沿って光Lが入射される場合、中心軸の周りに複数の改質領域6bが配置されている。光学素子2Aの場合と同様に、制御光Lの有無で体積回折格子6Gの反射特性が変化する。よって、たとえば、光学素子2L(または光学部材4)を光共振器内に配置した場合(光学部材4の端面4aおよびそれと反対の端面4bに光共振器を構成する誘電体多層膜を形成した場合を含む)、制御光Lの照射状態および非照射状態の切り替えによって発振モードを制御可能である。
【0181】
光学素子2Lは、パルスレーザ光PLの光学部材4への入射位置が異なる点および改質領域6bを線状に形成する点以外は、図2を用いて説明した製造方法と同様にして製造される。具体的には、図18に示したように、光学素子2Lは、励起光Lが入射されるべき端面4aから光学部材4にパルスレーザ光PLを照射することによって形成され得る。
【0182】
光学素子2Lが有する光学部材4には、図1に示した光学素子2が有する光学部材4の場合と同様に、制御光Lで励起される発光中心が添加されていなくてもよい。
【0183】
以上説明した種々の実施形態、変形例などは、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0184】
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I,2J,2K,2L…光学素子、4,4A,4B…光学部材、6…体積回折格子、6a…改質面(改質領域)、6b…改質領域、10,10A,10B,10C,10D,10E…レーザ装置(光学装置)、6A1…体積回折格子、6A2…体積回折格子、6B1…体積回折格子、6B2…体積回折格子、6C1…体積回折格子、6D…体積回折格子、6E…体積回折格子、6F…体積回折格子、14…共振器、14A…リング共振器、24,24A,24B,24C…光発振器(光学装置)、A…光軸。

図1
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