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特開2023-6977プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006977
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230111BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L21/302 101B
H05H1/46 R
H05H1/46 M
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109890
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 太樹
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB06
2G084CC08
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD04
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
5F004AA05
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA04
5F004DB03
5F004EB01
5F004EB03
(57)【要約】
【課題】プロセス性能を向上させる。
【解決手段】基板支持部に設けられた第1電極と、第1電極に対向する第2電極又はアンテナと、第1電極、第2電極又はアンテナに接続され、第1高周波電力パルスを供給する第1高周波電力供給部と、第1電極に接続され、第2高周波電力パルスを供給する第2高周波電力供給部と、第1及び第2高周波電力供給部を制御する制御部を備え、制御部は、第1高周波電力パルスに第1及び第2インターバル時間を設け、第2高周波電力パルスに第3及び第4インターバル時間を設け、第3インターバル時間に第1の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、第1インターバル時間に第2の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、第2及び第4インターバル時間は重複し、第1及び第2高周波電力パルスの出力に応じて処理ガスのプラズマにより基板処理を制御するプラズマ処理装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気可能なプラズマ処理容器と、
前記プラズマ処理容器内に配置される基板支持部に設けられた第1電極と、
前記第1電極に対向して設けられた第2電極又はアンテナと、
前記第1電極、前記第2電極又は前記アンテナに接続され、前記第1電極、前記第2電極又は前記アンテナにプラズマ生成用の第1の高周波電力パルスを供給する第1の高周波電力供給部と、
前記第1電極に接続され、前記第1電極にバイアス用の第2の高周波電力パルスを供給する第2の高周波電力供給部と、
前記第1の高周波電力供給部及び前記第2の高周波電力供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の高周波電力パルスに前記第1の高周波電力パルスをオフする第1インターバル時間及び第2インターバル時間を設け、
前記第2の高周波電力パルスに前記第2の高周波電力パルスをオフする第3インターバル時間及び第4インターバル時間を設け、
前記第3インターバル時間に前記第1の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、
前記第1インターバル時間に前記第2の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、
前記第2インターバル時間と前記第4インターバル時間とは重複し、
前記第1の高周波電力パルス及び前記第2の高周波電力パルスの出力に応じて、前記プラズマ処理容器内に供給された処理ガスから生成されるプラズマにより基板をプラズマ処理するように制御する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1の高周波電力パルスの第1のDuty比及び前記第2の高周波電力パルスの第2のDuty比は、それぞれ10%以上90%以下である、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第2インターバル時間及び前記第4インターバル時間の第3のDuty比は、10%以上90%以下である、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1の高周波電力パルスの周期及び前記第2の高周波電力パルスの周期は、それぞれ前記第2インターバル時間又は前記第4インターバル時間の周期の10倍以上である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第2インターバル時間及び前記第4インターバル時間の周期は、1kHz以上2kHz以下である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の高周波電力パルスの周期及び前記第2の高周波電力パルスの周期は、それぞれ10kHz以上20kHz以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1の高周波電力パルスの周期及び前記第2の高周波電力パルスの周期は、同一である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1の高周波電力パルス及び前記第2の高周波電力パルスのDuty比は、同一である、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1インターバル時間と前記第3インターバル時間とは重複しない、
請求項1~8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第1の高周波電力パルス又は前記第2の高周波電力パルスの少なくとも一方の振幅は複数の電力レベル又は電圧レベルを有する、
請求項1~9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
真空排気可能なプラズマ処理容器と、
前記プラズマ処理容器内に配置される基板支持部に設けられた第1電極と、
前記第1電極に対向して設けられた第2電極又はアンテナと、
前記第1電極、前記第2電極又は前記アンテナに接続され、前記第1電極、前記第2電極又は前記アンテナにプラズマ生成用の第1の高周波電力パルスを供給する第1の高周波電力供給部と、
前記第1電極に接続され、前記第1電極にバイアス用の第2の高周波電力パルスを供給する第2の高周波電力供給部と、
を備えるプラズマ処理装置において実行するプラズマ処理方法であって、
前記第1の高周波電力パルスに前記第1の高周波電力パルスをオフする第1インターバル時間及び第2インターバル時間を設け、
前記第2の高周波電力パルスに前記第2の高周波電力パルスをオフする第3インターバル時間及び第4インターバル時間を設け、
前記第3インターバル時間に前記第1の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、
前記第1インターバル時間に前記第2の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、
前記第2インターバル時間と前記第4インターバル時間とは重複し、
前記第1の高周波電力パルス及び前記第2の高周波電力パルスの出力に応じて、前記プラズマ処理容器内に供給された処理ガスから生成されるプラズマにより基板をプラズマ処理する、
プラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、載置台にプラズマ生成用の高周波電力のパルス波と、プラズマ生成用の高周波電力の周波数よりも低い周波数のバイアス用の高周波電力のパルス波と、を印加するプラズマ処理方法を提案する。このプラズマ処理方法は、プラズマ生成用の高周波電力のパルス波とバイアス用の高周波電力のパルス波とが位相差を有し、プラズマ生成用の高周波電力のデューティ比はバイアス用の高周波電力のデューティ比以上になるように制御する。これにより、プラズマ生成用の高周波電力のパルス波とバイアス用の高周波電力のパルス波との間にオフセットを設ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-157735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理装置において実行されるプロセスの性能を向上させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、真空排気可能なプラズマ処理容器と、前記プラズマ処理容器内に配置される基板支持部に設けられた第1電極と、前記第1電極に対向して設けられた第2電極又はアンテナと、前記第1電極、前記第2電極又は前記アンテナに接続され、前記第1電極、前記第2電極又は前記アンテナにプラズマ生成用の第1の高周波電力パルスを供給する第1の高周波電力供給部と、前記第1電極に接続され、前記第1電極にバイアス用の第2の高周波電力パルスを供給する第2の高周波電力供給部と、前記第1の高周波電力供給部及び前記第2の高周波電力供給部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1の高周波電力パルスに前記第1の高周波電力パルスをオフする第1インターバル時間及び第2インターバル時間を設け、前記第2の高周波電力パルスに前記第2の高周波電力パルスをオフする第3インターバル時間及び第4インターバル時間を設け、前記第3インターバル時間に前記第1の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、前記第1インターバル時間に前記第2の高周波電力パルスはオン及びオフを繰り返し、前記第2インターバル時間と前記第4インターバル時間とは重複し、前記第1の高周波電力パルス及び前記第2の高周波電力パルスの出力に応じて、前記プラズマ処理容器内に供給された処理ガスから生成されるプラズマにより基板をプラズマ処理するように制御する、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、プラズマ処理装置において実行されるプロセスの性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るプラズマ処理システムの一例を示す断面模式図。
図2】参考例に係るプラズマ処理方法の一例を示す図。
図3】第1実施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示す図。
図4】参考例に係るプラズマ処理方法を説明するための図。
図5】第1実施形態に係るプラズマ処理方法を説明するための図。
図6】ラジカル等の減衰特性の一例を示す図。
図7】第2実施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示す図。
図8】第3実施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理システム]
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、真空排気可能なプラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10の内部は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口13aと、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口10eとを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0010】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、ウェハを一例とする基板Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0011】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0012】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0013】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0014】
実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0015】
なお、プラズマ処理チャンバ10内に設けられた基板支持部11の基台の導電性部材は、処理容器内に配置され、被処理基板を支持する第1電極の一例である。シャワーヘッド13の導電性部材は、第1電極に対向して設けられた第2電極の一例である。第2電極の一例であるシャワーヘッド13の替わりに第1電極に対向してアンテナを設けてもよい。プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1に替えて誘導結合型のプラズマ処理装置を含んでもよい。誘導結合型のプラズマ処理装置では、被処理基板を支持する第1電極に対向してプラズマ処理チャンバ10の上部にアンテナが設けられ、アンテナに第1のRF生成部31aが接続されてもよい。
【0016】
第1のRF生成部31aは、第1電極、第2電極又はアンテナに接続されてもよい。第1のRF生成部31aは、第1電極、第2電極又はアンテナにプラズマ生成用の第1の高周波電力のパルス波である第1の高周波電力パルス(以下、「HFパルス」ともいう。)を供給する第1の高周波電力供給部の一例である。第2のRF生成部31bは、第1電極に接続され、第1電極にバイアス用の第2の高周波電力のパルス波である第2の高周波電力パルス(以下、「LFパルス」ともいう。)を供給する第2の高周波電力供給部の一例である。
【0017】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bはRF電源31に加えて設けられている。
【0018】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。例えば、制御部2は、第1のRF生成部31a、及び第2のRF生成部31bを制御する。実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0020】
次に、参考例に係るプラズマ処理方法の一例について、図2を参照しながら説明し、その後、実施形態に係るプラズマ処理方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。なお、実施形態に係るプラズマ処理方法は、制御部2により制御される。第1のRF生成部31aから供給されるソースRF信号は、第1の高周波電力又はHFとも表記する。第1の高周波電力のパルス波は、HFパルスとも表記する。第2のRF生成部31bから供給されるバイアスRF信号は、第2の高周波電力又はLFとも表記する。第2の高周波電力のパルス波は、LFパルスとも表記する。
【0021】
[参考例に係るプラズマ処理方法]
図2は、参考例に係るプラズマ処理方法の一例を示す図である。参考例に係るプラズマ処理方法では、HF及びLFはパルス波である。HFパルスのDuty比は50%である。LFパルスのDuty比は20%である。図2の例では、HFとLFの位相は、HFをONする時間を基準として50%シフトされ、HFとLFのオン時間(供給時間、印加時間)は重ならない。HFをオフ(供給停止)するときにLFがオンされる。1サイクルのうちの50%はHFをオンし、20%はLFをオンし、30%はHF及びLFのいずれもオフし、合計で100%、つまり1サイクルとなる。例えば1サイクルの周波数は1kHzであり、1サイクルの時間は1000μsである。
【0022】
HFをオンしている間、プラズマ及びラジカルが生成される。LFをオンしている間、プラズマ中のイオンが基板へ引き込まれ、エッチングが促進される。HF及びLFをオフしている間、エッチング時に生成された反応生成物(反応生成物)が、エッチング対象物に形成されたエッチング対象膜の凹部から排気される。
【0023】
高いエッチングレートを維持しつつ、高い異方性のエッチング、すなわち、エッチング形状の垂直性を実現するためには、高出力のLFのパワーが必要となる。しかしながら、図2の例では、LFをオンしている間、高出力のLFのパワーを印加することで高エネルギーのイオンにより基板上のエッチング対象膜へエッチングが行われる一方で、高エネルギーのイオンのエッチングによりマスクも削れる。また、高エネルギーのイオンによりエッチングが促進されることによって多量の反応生成物が生成され、マスクに付着する。これにより、エッチング対象膜の上のマスクのクロッギングが引き起こされる。マスクのクロッギングは、反応生成物がマスクの側壁に付着することでマスクの間口が狭まったり、又はマスクの間口が完全に閉塞したりすることをいう。マスクのクロッギングを回避する方法として、HFとLFの両方をオフし、排気を促進する時間(Off Time)を設ける方法がある。しかし、LFをオフする時間が短いと、エッチング対象物のエッチング対象膜の凹部から反応生成物が効率的に排出されない。
【0024】
そこで、以下に説明する実施形態に係るプラズマ処理方法では、HFパルスとLFパルスのオン及びオフ時間を制御しつつ、これまでのOff Timeに加えて、更に2つのOff Timeを制御し、合計で3つのOff Timeを有するRFの制御を行う。これにより、マスクのクロッギングの回避とマスクの高選択比を両立させることができる。以下、実施形態に係るプラズマ処理方法について説明する。
【0025】
[実施形態に係るプラズマ処理方法]
(第1実施形態)
第1実施形態に係るプラズマ処理方法について、図3を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示す図である。実施形態に係るプラズマ処理方法では、図3に示すように、HFパルスのパルス周期を周波数F1で示し、LFパルスのパルス周期を周波数F2で示し、HFパルス及びLFパルスがそれぞれのパルス周期でオン及びオフを繰り返すサイクルを制御する。
【0026】
図3の例では周波数F1により示されるHFパルスのパルス周期及び周波数F2により示されるLFパルスのパルス周期のそれぞれは10kHzである。ただし、これに限らず、HFパルスのパルス周期及びLFパルスのパルス周期は、それぞれ10kHz~20kHの範囲であればよく、本開示のように同一であってもよいし、異なってもよい。
【0027】
HFパルスのDuty1(第1のDuty比)は、HFのオン時間とオフ時間の合計時間に対するHFのオン時間を示す。図3の例では、Duty1は75%であり、HFパルスは、1サイクルの3/4をオンし、1/4をオフするようにHFのオン及びオフを周期的に繰り返す。このようにHFのオン及びオフを繰り返す時間を「HFパルスの出力時間」ともいう。図3の例では、1~5サイクル目がHFパルスの出力時間である。
【0028】
HFパルスには、HFをオフする第1インターバル時間と第2インターバル時間が設けられている。6~7サイクル目が第1インターバル時間(図3の(1))であり、8~10サイクル目が第2インターバル時間(2)である。第1インターバル時間(1)と第2インターバル時間(2)は連続した時間でもよいし、連続しない時間でもよい。
【0029】
LFパルスのDuty2(第2のDuty比)は、LFのオン時間とオフ時間の合計時間に対するLFのオン時間を示す。図3の例では、Duty2は50%であり、LFパルスは、1サイクルの1/2をオンし、1/2をオフするようにLFのオン及びオフを周期的に繰り返す。このようにLFのオン及びオフを繰り返す時間を「LFパルスの出力時間」ともいう。図3の例では、6~7サイクル目がLFパルスの出力時間である。
【0030】
LFパルスには、LFをオフする第3インターバル時間と第4インターバル時間が設けられている。1~5サイクル目が第3インターバル時間((3))であり、8~10サイクル目が第4インターバル時間(4)である。第3インターバル時間(3)と第4インターバル時間(4)は連続した時間でもよいし、連続しない時間でもよい。
【0031】
HFパルスの出力時間とLFパルスの出力時間とは重複しない。HFパルスの出力時間と第3インターバル時間(3)とが重複し、LFパルスの出力時間と第1インターバル時間(1)とが重複する。本開示では、HFパルスの出力時間の後にLFパルスの出力時間があり、その後にHFパルス及びLFパルスの両方がオフするインターバル時間が設けられているが、これに限らない。例えば、LFパルスの出力時間の後にHFパルスの出力時間があり、その後にHFパルス及びLFパルスの両方がオフするインターバル時間が設けられてもよい。例えば、LFパルスの出力時間の後にHFパルス及びLFパルスの両方がオフするインターバル時間があり、その後にHFパルスの出力時間が設けられてもよい。
【0032】
本開示では、HFパルスの出力時間とLFパルスの出力時間とは完全にずれ、HFパルスのオンとLFパルスのオンのタイミングは重ならない。ただし、HFパルスの出力時間とLFパルスの出力時間とは一部が重複してもよい。本開示では、第3インターバル時間(3)とHFパルスの出力時間は完全に重複するが、一部が重複してもよい。本開示では、第1インターバル時間(1)とLFパルスの出力時間は完全に重複するが、一部が重複してもよい。第1インターバル時間(1)と第3インターバル時間(3)とは重複しない。第2インターバル時間(2)と第4インターバル時間(4)とは重複する。
【0033】
第2インターバル時間(2)と第4インターバル時間(4)とが重複するインターバル周期は、周波数F3により示される。周波数F3は、第2インターバル時間(2)と第4インターバル時間(4)とが重複するインターバル時間が繰り返し出現する周期であり、図3の例では1kHzであるが、これに限らず、1kHz~2kHzであってよい。周波数F3により示されるインターバル周期は、周波数F1及び周波数F2により示されるHF及びLFのパルス周期よりもサイクルが長い。図3の例では周波数F1及び周波数F2は、周波数F3の10倍である。周波数F1及び周波数F2は、周波数F3の10倍以上であってもよい。
【0034】
Duty3は、Duty1で示されるHFパルスのオン及びオフを繰り返す時間(HFパルスの出力時間)とDuty2で示されるLFパルスのオン及びオフを繰り返す時間(LFパルスの出力時間)とHFパルス及びLFパルスの両方がオフするインターバル時間との合計時間(図3の例では1000μs)に対するHFパルスの及びLFパルスの出力時間の合計を示す。図3の例では、Duty3は70%(HFパルスの出力時間が50%、LFパルスの出力時間が20%)であるが、これに限らず、Duty3は10%~90%であってよい。
【0035】
HFパルスの出力時間内のHFパルスのオフ時間のそれぞれは、第1インターバル時間(1)及び第2インターバル時間(2)よりも短時間である。LFパルスの出力時間内のLFパルスのオフ時間のそれぞれは、第3インターバル時間(3)及び第4インターバル時間(4)よりも短時間である。
【0036】
1~5サイクルの間、HFパルスのオン及びオフが5回繰り返され、その間LFはオフに制御される第3インターバル時間(3)である。6~7サイクルの間、LFパルスのオン及びオフが2回繰り返され、その間HFはオフに制御される第1インターバル時間(1)である。8~10サイクルの間、HFパルス及びLFパルスの両方がオフに制御される第2インターバル時間(2)及び第4インターバル時間(4)である。図3の例では、HF及びLFが両方オフ状態となるインターバル時間は、30%に設定されているが、第2インターバル時間(2)及び第4インターバル時間(4)で示すインターバル時間は、10%以上90%以下であってよい。
【0037】
制御部2は、HFパルス及びLFパルスの出力に応じて、プラズマ処理チャンバ10内に供給された処理ガスから生成されるプラズマにより基板Wを処理するように第1のRF生成部31a、及び第2のRF生成部31bを制御する。これにより、マスクのクロッギングの回避とマスクの高選択比の向上を両立させることができる。その理由について、図4の参考例及び図5及び図6の実施形態に関する図を参照しながら説明する。
【0038】
図4は、参考例に係るプラズマ処理方法を説明するための図である。図5は、第1実施形態に係るプラズマ処理方法を説明するための図である。図6は、ラジカル等の減衰特性の一例を示す図である。参考例及び本実施形態では、例えば、基板上にエッチング対象膜101としてSiO膜が形成され、その上に有機膜等のマスク102が形成される。マスク102のパターンに合わせてエッチング対象膜101がエッチングされることでエッチング対象膜101にパターンに応じた凹部(ホール等)が形成される。ただし、基板W上の膜構造はこれに限られない。
【0039】
図4に示す参考例に係るプラズマ処理方法では、8~10サイクルの間、HFパルス及びLFパルスがオフするインターバル時間がある。1~7サイクルの間、HFパルス及びLFパルスのパルス周期は、図4の例では1kHzである。HFパルスのDuty比及びLFパルスのDuty比はともに50%である。HFとLFとは位相差があり、HFがオフされるタイミングにLFがオンされる。
【0040】
インターバル周期は、0.1kHzであり、HFパルス及びLFパルスのパルス周期よりもサイクルが長い。HFパルス及びLFパルスのパルス周期は、インターバル周期の10倍である。
【0041】
インターバル周期は、HFパルス及びLFパルスがオン及びオフを繰り返す時間(1~7サイクルの合計サイクル時間)と、HF及びLFが続けてオフ状態となるインターバル時間の合計時間の30%に設定されている。
【0042】
図4に示す1サイクル目のA期間では、HFパルスがオンに制御され、LFパルスがオフに制御される。よって、A期間では、図4(a)に示すようにHFがプラズマ及びラジカルの生成に寄与し、イオン、電子、ラジカルが生成され、高密度プラズマが生成される。
【0043】
図4に示す1サイクル目のB期間では、LFパルスがオンに制御され、HFパルスがオフに制御される。よって、B期間は、LFにより高エネルギーのイオンをエッチング対象膜101の凹部に引き込む。これにより、B期間では、高いエネルギーを持ったイオンにより、エッチングが促進される。また、A期間において高密度プラズマが生成されているため、B期間では高密度プラズマ中のイオン数が多く、かつイオンエネルギーが高いためにエッチングが促進され、相対的に反応生成物の量が多くなる。
【0044】
エッチング時に生成された反応生成物が、マスク102の側面や上面に付着して保護膜が形成されると、マスク102の選択比を向上させることができる。しかしながら、A期間にて高密度プラズマが生成されているために、続くB期間では高密度プラズマ中のイオン数が多いため、様々な入射角度のイオンが生成され、イオンの入射角度の分布が大きい。そこで、図4(b)に示すようにエッチング対象膜101の凹部へ様々な入射角度のイオンが入射するため凹部内の反応生成物に衝突し易い。この衝突が反応生成物の排気を阻害し、エッチング対象膜101の凹部からの反応生成物の排気が進みにくく、その結果、反応生成物がマスク102の側面や上面に付着し、保護膜を形成することも阻害され、マスク選択比が向上しない。
【0045】
図4に示す2~7サイクル目においてもA期間及びB期間にて上記現象を繰り返す。8~10サイクル目のインターバル時間は、HFパルス及びLFパルスの両方がオフに制御されるため、図4(c)に示すように、エッチング対象膜101の凹部からの反応生成物の排気が促進される。
【0046】
以上、図4に示す参考例に係るプラズマ処理方法の場合、B期間においてA期間で生成された高密度プラズマ中の上記イオンの働きにより、反応生成物の排気が阻害され、反応生成物がマスクの側面や上面に付着し難い。これにより、マスクの高選択比を向上させることが難しい。
【0047】
これに対して、本実施形態に係るプラズマ処理方法では、図5に示すように、HFパルス及びLFパルスが両方ともオフされる時間が「Off time1」、「Off time2」、「Off time3」と設けられている。Off time1及びOff time2のインターバル時間はOff time3のインターバル時間よりも短時間である。
【0048】
図5に示す1サイクル目のC期間では、HFパルスがオンに制御され、LFパルスがオフに制御される。よって、C期間は、図5(a)に示すように、HFがプラズマ及びラジカルの生成に寄与し、イオン、電子、ラジカルが生成され、高密度プラズマが生成される。
【0049】
1サイクル目のD期間では、例えば10~100μsの短時間、HFパルス及びLFパルスのいずれもオフに制御する。図6は、電子、イオン及びラジカルの減衰特性を示す。図6の横軸は時間であり、縦軸は規格化された減衰量である。RFパワー(HF)をオンからオフに切り替えると、最初に電子温度(Plasma Potential)が急激に減衰する。次に、イオン(Plasma Density)が減衰する。これに対して、ラジカルの減衰は緩やかである。
【0050】
これにより、本実施形態ではD期間にてHFをオフしてもエッチングに必要なラジカルを失活させることなく、プラズマ密度を中程度に保つことができる。1~5サイクル目では、このようにHFパルスのオン及びオフを周期的に繰り返し、間欠的にHFをオンすることで、プラズマ密度を高密度化させずに中程度に制御する。なお、1~5サイクル目ではLFパルスはオフに制御される第3インターバル時間(3)である。
【0051】
高密度プラズマの場合、プラズマ中のイオン数が多いため、様々な入射角度のイオンが生成され、イオンの入射角度の分布が大きい。これに対して、本実施形態ようにHFパルスの出力時間にOff time1を設けてプラズマ密度を中程度に制御することで高密度プラズマの場合よりもプラズマ中のイオン数を少なくできる。この結果、イオンの入射角度の分布を小さくすることができる。換言すれば、比較的イオンの入射角度が揃ったイオンを生成できる。これにより、図5(b)に示すように、エッチング対象膜101に入射するイオンの角度がある程度揃った垂直方向となり、イオンに指向性を持たせることができる。
【0052】
このように、イオンの入射角度にバラツキが少なく指向性のあるイオンの入射により、図5(c)に示すようにエッチング時に発生した反応生成物と次のエッチングで使われるイオンとの衝突を減らすことができる。6~7サイクル目では、E期間においてLFパルスをオンしてイオンの引き込み、かつ失活していないラジカルの作用も加えてエッチングが促進される。エッチングの促進により時間Eにおいて反応生成物の生成量も増える。そこで、続く時間FにおいてLFパルスの出力時間に、例えば10~100μsの短時間、Off time2を設けることで反応生成物の排気を促進する。エッチング中の反応生成物の排気促進により、マスク102の側面や上面に付着する反応生成物の量が多くなる。これにより、マスク選択比を向上させることができる。なお、この間、HFパルスは第1インターバル時間(1)でありオフに制御される。
【0053】
Off time2がない場合、6~7サイクル目にLFパルスがオンされ続け、イオンの引き込みによるエッチングが進む。このため、反応生成物の生成量が多くなるが排気が促進されない。Off time2がある場合、LFパルスがオンされる間にはイオンの引き込み及びラジカルの作用によりエッチングが進み、LFパルスがオフされる間には反応生成物の排気促進とマスク選択比の向上を図ることができる。このようにして図5(c)に示すようにLFパルスをオンするE期間とLFパルスをオフするF期間とを交互に設けることでエッチングの促進と、反応生成物の排気の促進及びマスク選択比の向上と、を図ることができる。
【0054】
Off time3は、HFパルスの第2インターバル時間(2)であり、かつLFパルスの第4インターバル時間(4)であり、HFパルス及びLFパルスのいずれもオフに制御される。8~10サイクル目の間、図5(d)に示すように反応生成物の排気が十分に促進される。これにより、反応生成物がエッチング対象膜101に形成された凹部から排気される途中でマスク102に付着し、マスク選択比の向上が図れる。
【0055】
以上に説明したように、本実施形態に係るプラズマ処理方法では、Off time1を設ける。これにより、HFパルスをオフするD期間にプラズマ密度を中程度に制御することができる。
【0056】
加えてOff time2を設けることで、LFパルスをオンするE期間にエッチング時に発生した反応生成物と次のエッチングで使われるイオンとの衝突を減らし、エッチングを促進させ、LFパルスをオフするF期間にイオンとの衝突が減るために反応生成物の排気の促進とマスク選択比の向上を図ることができる。これを交互に繰り返すことで、エッチングの間に排気の促進及びマスク選択比を向上させることができる。加えてOff time3を設けることで、反応生成物の排気を十分に促進させることができる。これにより、本実施形態に係るプラズマ処理方法では、マスクのクロッギングの回避とマスクの高選択比を両立させることができる。これにより、プラズマ処理装置において実行されるプロセスの性能を向上させることができる。
【0057】
以上は一例であり、第1実施形態に係るプラズマ処理方法では、1~5サイクル目では、HFパルスがオン及びオフを周期的に繰り返し、6~7サイクル目では、LFパルスがオン及びオフを周期的に繰り返すが、HFパルスとLFパルスが繰り返されるサイクルはこれに限られない。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るプラズマ処理方法について、図7を参照しながら説明する。図7は、第2施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示す図である。第2施形態に係るプラズマ処理方法が第1施形態に係るプラズマ処理方法と異なる点は、HFパルスのパルス周期が20kHz及び10kHzの2種類あり、Duty比が異なる点である。また、LFパルスのパルス周期は同じであるがDuty比が異なる点である。その他の条件は同じである。
【0059】
1~5サイクル目のHFパルスの出力時間では、1、3、5サイクル目はパルス周期が10kHzであり、Duty比が75%である。2、4サイクル目はパルス周期が20kHzであり、Duty比が80%である。これにより、1、3、5サイクル目はサイクル毎にOff time1が1回発生し、2、4サイクル目はサイクル毎にOff time1が2回発生する。
【0060】
6~7サイクル目のLFパルスの出力時間では、6~7サイクル目のいずれもパルス周期が10kHzであり、6サイクル目ではDuty比が75%であり、7サイクル目ではDuty比が50%である。これにより、6~7サイクル目はサイクル毎にOff time2が1回発生する。
【0061】
以上は一例であり、第2実施形態に係るプラズマ処理方法では、HFパルスのパルス周期の周波数又はDuty比のいずれか一方が同一でもよい。また、LFパルスのパルス周期が異なっていてもよい。また、HFパルス及びLFパルスの少なくとも一方の周波数及びDuty比は3種類以上で構成されていてもよい。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るプラズマ処理方法について、図8を参照しながら説明する。図8は、第3施形態に係るプラズマ処理方法の一例を示す図である。第3施形態に係るプラズマ処理方法が第1施形態に係るプラズマ処理方法と異なる点は、HFパルスの振幅が2種類あり、LFパルスの振幅が2種類ある点である。その他の条件は同じである。
【0063】
1~5サイクル目のHFパルスの出力時間では、1、3、5サイクル目の振幅がA1であり、2、4サイクル目の振幅がA2である。6~7サイクル目のLFパルスの出力時間では、6サイクル目の振幅のB1であり、7サイクル目の振幅のB2である。
【0064】
以上は一例であり、HFパルス及びLFパルスのそれぞれの出力時間では、各サイクルについてパルス周期、Duty、振幅の少なくともいずれかを変えて制御してもよい。また、HFパルス及びLFパルスの少なくとも一方の振幅は3種類以上で構成されていてもよい。
【0065】
(その他)
Duty1は、90%以下に設定される。Duty1を90%以上に設定すると、マスクのクロッギングが発生する可能性が高まり、かつ、エッチング対象膜101の凹部からの反応生成物の排気の促進が阻害されるためである。さらに、Duty1は、10%以上かつ90%以下であることが好ましい。Duty1が10%未満であると、HFがオンされる時間が短く、プラズマが着火しない可能性があるためである。
【0066】
Duty2は、10%以上かつ90%以下であることが好ましい。Duty2を10%未満に設定すると、LFがオンされる時間が短くなり、エッチング対象膜101のエッチング対象膜101の凹部からの反応生成物の排気は良くなるが、エッチングレートが下がるためである。また、Duty2を90%よりも大きくすると、エッチングレートは上がるが、エッチング対象膜101の凹部からの反応生成物の排気が悪くなり、マスクのクロッギング(マスク閉塞)を発生させ、エッチストップが発生する可能性があるためである。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法によれば、マスクのクロッギングの回避とマスクの高選択比を両立させることができる。これにより、プラズマ処理装置において実行されるプロセスの性能を向上させることができる。
【0068】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0069】
本開示のプラズマ処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
2a1 処理部
2a2 記憶部
2a3 通信インターフェース
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
21 ガスソース
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
40 排気システム
100 シリコン基板
101 エッチング対象膜
102 マスク
111 本体部
112 リングアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8