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特開2023-69795魚用漬け込み液、魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂、及び魚加熱調理品の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069795
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】魚用漬け込み液、魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂、及び魚加熱調理品の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20230511BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20230511BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20230511BHJP
【FI】
A23D7/00 504
A23L27/00 D
A23L17/00 A
A23L17/00 Z
A23D7/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181925
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植西 洋平
(72)【発明者】
【氏名】富沢 直克
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 敏樹
【テーマコード(参考)】
4B026
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK05
4B026DK10
4B026DL01
4B026DL03
4B026DP01
4B042AC05
4B042AG12
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK08
4B042AP04
4B042AP07
4B042AP18
4B042AP21
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG03
4B047LG11
4B047LG23
4B047LG36
4B047LP02
(57)【要約】
【課題】柔らかい魚加熱調理品を製造する魚用漬け込み液の提供を目的とする。また、同魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂の提供を目的とする。また、柔らかい魚加熱調理品の製造方法を提供することである。
【解決手段】油脂と乳化剤を合計3~40質量%含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)が10:0.1~10:5であり、
該乳化剤が、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上であり、
該油脂が植物由来である、
魚用漬け込み液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂と乳化剤を合計3~40質量%含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)が10:0.1~10:5であり、
該乳化剤が、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上であり、
該油脂が植物由来である、
魚用漬け込み液。
【請求項2】
魚用漬け込み液が、水中油型乳化物である、請求項1に記載の魚用漬け込み液。
【請求項3】
前記油脂が、精製植物油である、請求項1又は2に記載の魚用漬け込み液。
【請求項4】
魚用漬け込み液が、塩味及び甘味を有する調味料である、請求項1~3のいずれか1項に記載の魚用漬け込み液。
【請求項5】
油脂と乳化剤を含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)が10:0.1~10:5であり、
該乳化剤が、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上であり、
該油脂が植物由来であり、
魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の魚用漬け込み液に、魚を漬け込み、その後加熱調理する、魚加熱調理品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔らかな魚加熱品調理品製造する漬け込み液の組成に関する。より詳細には、特定の乳化剤と油脂を含む、魚用漬け込み液、魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂、及び魚加熱調理品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉製品においてその肉質を軟らかく、ジューシーにすることを目的に、リン酸塩を主体とする塩類やタンパク、多糖を構成物質とする漬け込み液を用いたタンブリング、ピックル液のインジェクションといった手法が用いられ、これら畜肉製品ではある程度その目的が達成されている。しかしながら、魚においてはその組織が畜肉類と比べ結合組織が少なく脆弱であることから機械的なタンブリング、インジェクションといった積極的な方法は使用できず、単に漬け込み液に静置して漬け込んでいるのが実状である。そのため、肉質変化も塩類による変化は大きいものの、塩類は肉質を硬くする方向にあり、目的とするふっくら軟らかくする技術は少ない。
【0003】
魚を対象に含めた食感改良材として、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、HLB10未満のショ糖脂肪酸エステルおよびレシチンからなる群より選ばれる乳化剤を含有する肉片の改質剤(特許文献1)が提案されているが、これらは対象となる肉によりその効果は大きく異なり、魚ではその効果は少ない。また、漬け込み液の組成に占める乳化剤の量が多く、結果として価格的に高いものとなってしまう。また、魚油を含有させた魚用漬け込み調味料(特許文献2)も提案されているが、魚油は非常に酸化劣化を受けやすいので、風味劣化が激しく、安定的な風味を維持するのが難しかった。単に軟らかくするにはプロテアーゼが有効であるが、ふっくら感が失われ、むしろ食品としての評価は低いものとなってしまう。
【特許文献1】特開平7-289205号公報
【特許文献2】特開2002-125614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、柔らかい魚加熱調理品を製造するための魚用漬け込み液の提供を目的とする。また、同魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂の提供を目的とする。また、柔らかい魚加熱調理品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、魚用漬け込み液において、特定の油脂と特定の乳化剤を合計3~40質量%含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)を10:0.1~10:5とすることで、柔らかい魚加熱調理品が製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[6]を提供する。
[1] 油脂と乳化剤を合計3~40質量%含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)が10:0.1~10:5であり、
該乳化剤が、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上であり、
該油脂が植物由来である、
魚用漬け込み液。
[2] 魚用漬け込み液が、水中油型乳化物である、[1]の魚用漬け込み液。
[3] 前記油脂が、精製植物油である、[1]又は[2]の魚用漬け込み液。
[4] 魚用漬け込み液が、塩味及び甘味を有する調味料である、[1]~[3]のいずれかの魚用漬け込み液。
[5] 油脂と乳化剤を含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)が10:0.1~10:5であり、
該乳化剤が、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上であり、
該油脂が植物由来であり、
魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂。
[6] 前記[1]~[4]のいずれかの魚用漬け込み液に、魚を漬け込み、その後加熱調理する、魚加熱調理品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、魚の肉が柔らかい魚加熱調理品を提供することができる。また、魚用漬け込み液が十分浸漬した結果でもあるので、漬け込み液の呈味が十分しみ込むことも期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の魚用漬け込み液、魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂、及び魚加熱調理品の製造方法について、詳説する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、適宜「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0009】
[魚用漬け込み液]
本発明の魚用漬け込み液は、油脂と乳化剤を合計3~40質量%含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)が10:0.1~10:5であり、該乳化剤が、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上であり、該油脂が植物由来である。
【0010】
魚用漬け込み液は、油脂と乳化剤を合計3~40質量%含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)を10:0.1~10:5とすることで、魚肉中に適量の油脂が浸透すると考えられる。油脂と乳化剤は、魚用漬け込み液中に、合計5~30質量%含有することが好ましく、合計5~20質量%含有することがより好ましく、合計7~15質量%含有することがさらに好ましい。また、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)は、10:0.2~10:5が好ましく、10:0.2~10:3がより好ましく、10:0.5~10:2.5がさらに好ましい。
【0011】
魚用漬け込み液は、油脂と乳化剤により、少なくとも一部又は全部が乳化状態である。また、水溶性の呈味成分を含有する魚用漬け込み液の場合、水中油型乳化物(O/W乳化物)、油中水型乳化物(W/O乳化物)等の乳化状態でよく、特に水中油型乳化物であることが好ましい。なお、魚用漬け込み液中の水溶液は、水と水に溶解した成分であり、50~97質量%含有することが好ましく、60~97質量%がより好ましく、65~95質量%がさらに好ましく、80~90質量%がことさらに好ましく、油脂と乳化剤以外の成分が水溶液であることが最も好ましい。
【0012】
<油脂>
本発明の魚用漬け込み液に含まれる油脂は、植物由来である。植物由来の油脂としては、植物油脂の他、植物油脂を原料に、エステル交換、水素添加、加水分解、分別処理等の工程を経たもの、あるいは植物由来の脂肪酸を原料にエステル化した油脂を用いることができる。また、脱臭等の精製工程を経た油脂、風味を特徴とする焙煎油脂、未精製油脂等を用いることもできる。
植物由来の油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、コーン油、米油、ゴマ油、オリーブ油、えごま油、亜麻仁油、落花生油、ぶどう種子油、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パームオレイン、パームミッドフラクション、パームステアイン、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が好ましい。また、精製植物油であることが好ましい。
【0013】
<乳化剤>
本発明の魚用漬け込み液に含まれる乳化剤は、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上である。
【0014】
(HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明において、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステルは、魚漬け込み液中で、油脂と共に加熱された魚の肉を柔らかくする効果を有するとともに、油脂を乳化する作用、特にO/W乳化作用が期待され、HLBが2.5~8.0である必要がある。なお、本発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルに、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは含まない。
【0015】
HLBは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、乳化剤が親水性か親油性かを知る指標となるもので、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。本発明において、HLB値の算出はアトラス法の算出法を用いる。アトラス法の算出法は、
HLB=20×(1-S/A)
S:ケン化価
A:エステル中の脂肪酸の中和価
からHLB値を算出する方法を言う。同算出方法では、HLB値は、算術平均として算出される。
【0016】
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸をエステル化して合成されたものであり、市販品を用いることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として使用されるポリグリセリンは一般には、グリセリンを原料として苛性ソーダなどのアルカリ触媒の存在下、高温にて脱水縮合し、必要に応じて蒸留、脱臭、脱色して得られる。これらポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンは、反応ポリグリセリンとも呼ばれ、重合度の異なるポリグリセリンの混合物であり、重合度分布の広いものである。ポリグリセリン脂肪酸エステルは、一般的に、重合度4以上のものは、単離することが困難なため、様々な重合度のポリグリセリン脂肪酸エステルの混合物であることを許容する。
【0017】
本発明において、平均重合度(百分率)は、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの重合度を示すものである。なお、ここでいう平均重合度とは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料であるポリグリセリンの水酸基価より計算された値であり、例えば、次式(式1)及び(式2)から平均重合度(n)を導き出すことができる。
(式1)分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/分子量
【0018】
そして、一般のポリグリセリンは、水酸基価を測定して求められる末端基分析法により決定された平均重合度によって、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、デカグリセリン(平均重合度10)等と呼ばれて販売されている。従って、平均重合度は、計算上で求められた値であり、実際の重合度とは異なる値を示す場合がある。
【0019】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリン部分の平均重合度は、2~40が好ましく、2~12がより好ましく、4~12がさらに好ましく、5~10がことさらに好ましい。
【0020】
(レシチン)
本発明において、レシチンは、魚漬け込み液中で、油脂と共に加熱された魚の肉を柔らかくする効果を有するとともに、油脂を乳化する作用、特にW/O乳化作用が期待される。
【0021】
レシチンは、卵黄レシチンあるいは植物由来のレシチンを用いることができる。粗レシチン、分画レシチン、高純度レシチン、脱糖レシチンの他、リゾレシチン等も用いることができる。例えば、植物由来のレシチンとしては、大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、サフラワー、ゴマ、アマニなどの油糧種子を圧搾および/または抽出して得られる原油に水または水蒸気を吹き込んで沈澱物を分離し、乾燥して得られる粗レシチン、該粗レシチンから溶剤分別等の公知の方法で中性油脂分を除去した混合レシチン、さらには該混合レシチンから特定のリン脂質を分画・濃縮した分画レシチン、高純度レシチン等が利用できる。
【0022】
なお、レシチンとして販売されているものには、中性油等を含むものもあり、本発明においてレシチン量は、アセトン不溶分(食品添加物公定法分析試験法で求められるアセトン不溶物換算値)として算出されたものである。アセトン不溶分は、例えば以下のように算出する。レシチン約2gの質量aを精密に量り、これを50mL共栓遠心管に入れ、石油エーテル3mLを加えて溶かし、アセトン15mLを加えてよくかき混ぜた後、氷水中に15分間放置する。これに0~5℃のアセトンを加えて50mLとし、よくかき混ぜ、氷水中に15分間放置した後、遠心分離(約3000回転/分、10分間)し、上層液をフラスコに採る。さらに共栓遠心管の沈殿物に0~5℃のアセトンを加えて50mLとし、氷水中で冷却しながらよくかき混ぜた後、同様に遠心分離する。この上層液を先のフラスコに合わせ、水浴上で蒸留し、残留物を105℃で1時間乾燥し、その質量bを精密に量る。

アセトン不溶物(質量%)=(1-b/a)×100
【0023】
(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)
本発明において、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステルは、魚漬け込み液中で、油脂と共に加熱された魚の肉を柔らかくする効果を有するとともに、油脂を乳化する作用が期待される。
【0024】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ポリグリセリンとリシノレイン酸や縮合リシノレイン酸をエステル化して合成されたものであり、市販品を用いることができる。ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、グリセリンの重合度が2~40が好ましく、2~12がより好ましく、4~10がさらに好ましい。また、縮合リシノレイン酸の重合度が2~6であることが好ましい。また、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸のHLBは、3以下が好ましく、1.5~3.0がより好ましい。
【0025】
<呈味成分>
本発明の魚用漬け込み液は、必要に応じて水溶性の呈味成分を含み、調味料とすることができる。好ましくは、砂糖、水飴、液糖などの甘味成分、食塩等の塩味成分が挙げられる。その他、必要に応じて、みりん、各種エキス等を含有することができる。
【0026】
[魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂]
本発明の魚用漬け込み液に含有するための乳化剤含有油脂は、油脂と乳化剤を含有し、油脂と乳化剤の含有質量比(油脂含有量:乳化剤含有量)が10:0.1~10:5であり、該乳化剤が、HLB2.5~8.0のポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種、又は2種以上であり、該油脂が植物由来である。この乳化剤含有油脂と、前述の魚漬け込み液の水溶性成分を調合することで、魚用漬け込み液を得ることができる。油脂、乳化剤等の詳細については、前述の[魚用漬け込み液]に記載の通りである。
【0027】
[魚加熱調理品の製造方法]
本発明の魚加熱調理品の製造方法は、前述の[魚用漬け込み液]に、魚を漬け込み、その後加熱調理するものである。漬け込む時間は、15℃以上の場合、15分~1日が好ましく、1~18時間がより好ましい。15℃以下の場合は15分~3日が好ましく、10℃以下の場合は1時間~3日が好ましい。
【実施例0028】
次に、実施例、比較例及び参考例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0029】
[魚用漬け込み液]
上白糖(三井製糖株式会社製)5質量部、食塩(伯方塩業株式会社製「伯方の塩 粗塩」)3質量部、水92質量部を混合し、呈味水溶液を調整した。呈味水溶液と以下の油脂と乳化剤を用いて、表1~3の配合で調合し、魚用漬け込み液を得た。

油脂:日清オイリオグループ製「日清キャノーラ油」、
乳化剤a:ポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン製「ポエムDO-100V」、HLB7.4、モノオレイン酸ジグリセリン)
乳化剤b:ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学株式会社製「サンソフトA-173E」、HLB7.0、トリオレイン酸ペンタグリセリン)
乳化剤c:ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(太陽化学株式会社製「サンソフトNo.818H」、縮合リシノレイン酸ヘキサグリセリン)
乳化剤d:レシチン(日清オイリオグループ株式会社製「レシチンDX」)
乳化剤e:ポリグリセリン脂肪酸エステル(三菱ケミカル株式会社製「リョートーポリグリエステル O-50D」、HLB7.0、ペンタオレイン酸デカグリセリン)
乳化剤f:ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学株式会社製「サンソフトQ-1710S」、HLB3.0、デカオレイン酸デカグリセリン)
乳化剤g:ソルビタン脂肪酸エステル(太陽化学株式会社製「サンソフトNo.81S」、HLB5.1、モノオレイン酸ソルビタン)
乳化剤h:ショ糖エルカ酸エステル(三菱ケミカル株式会社製「ER-290」、HLB2.0)、
乳化剤i:有機酸モノグリセリド(太陽化学株式会社製「サンソフト623M」、HLB7.0、クエン酸モノオレイン酸グリセリン)
【0030】
[浸漬・加熱調理]
冷凍メカジキの切り身(100g)を食品包装用ラップフィルムでカバーし、10℃で24時間解凍した。その後、透明パウチ(福助工業株式会社製「ナイロンポリ新LタイプNo.13」)に、魚用漬け込み液200g、解凍したメカジキ100gを投入し、真空密封シール機(Sepp Haggenmuller GmbH & Co.KG製:50mbar)でヒートシールした。冷蔵庫(5℃)で24時間放置し、急速冷凍機(-24℃)で24時間冷凍し、さらに冷蔵庫(5℃)で24時間解凍した。
浸漬したメカジキの切り身を取り出し、コンベクションオーブン(リンナイ株式会社製「電子コンベック RSR-S51E(A)」)を用い、200℃、3分で焼成し、食感評価用サンプルを得た。
【0031】
[食感評価]
浸漬・加熱調理で得た食感評価用サンプルを、5名の専門パネルで評価した。評価は、1~5点(0.5点刻み)で点数化し、平均値を算出した。数値が高いほど、身が柔らかいことを示す。なお、評価にあたり、メカジキの身が硬く感じる比較例1を3.0とし、メカジキの身がやや柔らかい比較例2を3.5点としてパネル間で食感の基準を統一した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表2、3の結果から明らかであるように、実施例1~13は、表1の比較例1~5に比べて、メカジキの身が柔らかいことが示された。