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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070946
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】シート搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20230515BHJP
   B65H 26/02 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B65H7/02
B65H26/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183438
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】村井 俊文
【テーマコード(参考)】
3F048
3F105
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB01
3F048AC02
3F048BA11
3F048BA13
3F048BA14
3F048BA16
3F048BB02
3F048BB05
3F048BB09
3F048BC08
3F048CA02
3F048DA06
3F048DC12
3F048EA02
3F048EB17
3F105AA01
3F105AB03
3F105BA33
3F105BA37
3F105DA66
3F105DA67
3F105DB11
3F105DC11
(57)【要約】
【課題】スプライス設定操作(ティーチング)の漏れを防止可能とする。
【解決手段】シート搬送装置5は、搬送部7,8により搬送される連帳用紙Pの厚みを計測する厚み検出部62と、画像形成装置1の印刷開始契機を示す印刷開始信号の受信に応じて、厚み検出部62により連帳用紙Pの非スプライス部の厚みを計測させ、計測した非スプライス部の厚み量Tpを基準値として設定する基準値設定部61と、基準値設定部61により設定された基準値と、画像形成装置1の印刷動作中に厚み検出部62により計測された連帳用紙Pの厚みの情報とを比較して、連帳用紙Pのスプライス部Sを検出するスプライス検出部63と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に搭載されるシート搬送装置であって、
搬送方向に沿った一部にスプライス部が形成される印刷対象の長尺状のシートを搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送される前記シートの厚みを計測する厚み検出部と、
前記画像形成装置の印刷開始契機を示す印刷開始信号の受信に応じて、前記厚み検出部により前記シートの非スプライス部の厚みを計測させ、計測した前記非スプライス部の厚み量を基準値として設定する基準値設定部と、
前記基準値設定部により設定された前記基準値と、前記画像形成装置の印刷動作中に前記厚み検出部により計測された前記シートの厚みの情報とを比較して、前記シートの前記スプライス部を検出するスプライス検出部と、
を備える、
シート搬送装置。
【請求項2】
前記スプライス検出部により前記スプライス部が検出されたときに前記搬送部による前記シートの搬送を停止させる搬送制御部を備える、
請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記スプライス検出部は、前記厚み検出部により計測された前記シートの厚みが前記基準値より大きい状態が前記スプライス部の前記搬送方向に沿った幅と同等の所定量継続したときに、前記スプライス部として検出する、
請求項1または2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記スプライス検出部による前記スプライス部の誤検知を判定する誤検知判定部を備え、
前記誤検知判定部は、前記厚さ検知部により計測された前記シートの厚みが前記基準値より大きい状態が前記スプライス部の前記搬送方向に沿った幅より大きい範囲で継続したときに、前記スプライス部の誤検知と判定する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記基準値設定部による前記基準値の設定エラーを判定する基準値エラー判定部を備え、
前記基準値エラー判定部は、前記厚み検出部により計測された前記シートの厚みが前記基準値より小さい状態が発生したときに、前記搬送部により前記シートを所定距離搬送させて再び判定を行い、前記シートの厚みが前記基準値より小さい状態が継続している場合に、前記基準値設定部が前記非スプライス部ではなく、前記スプライス部の厚み量を前記基準値として設定した前記基準値の設定エラーを検出する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記基準値エラー判定部は、前記厚み検出部により計測された前記シートの厚みが前記基準値より小さい状態が発生したときにエラー発生を検出し、前記搬送部により前記シートを所定距離搬送させて再び判定を行い、前記シートの厚みが前記基準値より小さい状態が解消した場合には前記エラーを解除する、
請求項5に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記厚み検出部により計測された前記シートの厚みの情報に基づき、前記シートのジャム発生、前記シートが搬送経路を外れている状態、前記シートが折り重なる状態、の少なくとも一部をエラーとして検出するエラー判定部を備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット連帳プリンタで使用する連帳用紙のロール紙では、長尺の用紙を使用するが、製紙メーカによっては、用紙をテープにてつなぎ合わせて、長尺にしたロール紙も生産している。このスプライス(継ぎ目)のあるロール紙は、長さが足りない用紙を採用することができるため、スプライスのないロール紙に比べて安価で提供される。
【0003】
しかし、スプライスのあるロール紙に印刷する場合、厚みのあるスプライス部分がプリントヘッドに接触し、プリントヘッドが破損することがある。また、スプライス部に印刷した画像は、印刷物として不良になるため、印刷後の巻き出し及びカットする際に抽出して取り除かれるのが望ましい。そのため、スプライスがある用紙を使用する場合には、スプライス部をプリントヘッドの下を通過する前に検出する手段が考えられ、既に知られている。
【0004】
特許文献1には、繋ぎ部(スプライス部)を有する連続したシートへの記録および切断を行う際に、記録部における記録速度を変化させることなく、シートの繋ぎ部および非繋ぎ部の切断を適切に行う目的で、連続シートのスプライス部を光学的に非接触で検出するための検出部が記録部の上流側に設けられている構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のスプライス部検出手法では、スプライス部を検出するために事前にスプライス部以外の部分(非スプライス部)において厚さを検出させ、この非スプライス部の厚さを、スプライス部を検出するための基準値として設定する操作、所謂ティーチングが行われるのが一般的である。
【0006】
このようなスプライス設定操作(ティーチング)を操作者が実施し忘れるなど、スプライス設定操作の漏れが発生する場合がある。スプライス設定操作の漏れが発生すると、スプライス部がヘッドの下に搬送され、ヘッドをこするなどしてヘッドの破損を引き起こしてしまう。
【0007】
本発明は、スプライス設定操作(ティーチング)の漏れを防止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係るシート搬送装置は、画像形成装置に搭載されるシート搬送装置であって、搬送方向に沿った一部にスプライス部が形成される印刷対象の長尺状のシートを搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送される前記シートの厚みを計測する厚み検出部と、前記画像形成装置の印刷開始契機を示す印刷開始信号の受信に応じて、前記厚み検出部により前記シートの非スプライス部の厚みを計測させ、計測した前記非スプライス部の厚み量を基準値として設定する基準値設定部と、前記基準値設定部により設定された前記基準値と、前記画像形成装置の印刷動作中に前記厚み検出部により計測された前記シートの厚みの情報とを比較して、前記シートの前記スプライス部を検出するスプライス検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
スプライス設定操作(ティーチング)の漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例の概略構成を示す図
図2】スプライスセンサの構成例を示す模式図
図3】実施形態に係るシート搬送装置の機能ブロック図
図4】スプライス検知処理のフローチャート
図5】スプライス検知手法の一例を示すタイミングチャート
図6】スプライス誤検知判定手法の一例を示すタイミングチャート
図7】基準値エラー判定手法の一例を示すタイミングチャート
図8】制御部のハードウェア構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例の概略構成を示す図である。図1に示すように、以下の説明では、本実施形態に係る画像形成装置の一例として、記録媒体にインクを吐出して画像の形成を行うインクジェット方式の画像形成装置1を例示して説明する。また、本実施形態のインクジェット方式の画像形成装置1は、搬送方向に沿った長尺状のシートをロール状に巻回したものを印刷対象の記録媒体として使用する。また、本実施形態で用いるシートは、画像の記録単位(単票)が搬送方向に沿って連続して連なる連続帳票であり、以下では「連帳ロール紙R」や「連帳用紙P」とも表記する。
【0013】
図1に示すように、画像形成装置1は、インクジェット印刷機2と、給紙装置3と、排紙装置4と、シート搬送装置5と、を備える。
【0014】
給紙装置3は、ロール状に巻かれた連帳ロール紙Rを保持し、保持している連帳ロール紙Rから長尺状の連帳用紙Pを引き出してインクジェット印刷機2に供給する。
【0015】
インクジェット印刷機2は、連帳用紙Pに画像を印刷する。インクジェット印刷機2は、複数のインクジェットヘッド2Aを有する。個々のインクジェットヘッド2Aは、インク吐出用のノズル列を有し、それぞれ異なる色のインクが供給されて各ノズル列から連帳用紙Pにインクを吐出して画像を形成する。
【0016】
排紙装置4は、インクジェット印刷機2によって画像が印刷された連帳用紙Pを再びロール状に巻回して収容する。
【0017】
なお、給紙装置3、インクジェット印刷機2、及び排紙装置4は、この順番で一方向に配置されており、各装置の間を連帳用紙Pが搬送される。以下ではこの連帳用紙Pの搬送方向を「用紙搬送方向」と呼ぶ。図1の例では、用紙搬送方向は図面左方向である。また、用紙搬送方向のうち、給紙装置3側を上流側、排紙装置4側を下流側とも表現する。
【0018】
シート搬送装置5は、長尺状の連帳用紙Pを用紙搬送方向に沿って給紙装置3からインクジェット印刷機2を経て排紙装置4まで搬送する。シート搬送装置5は、スプライスセンサ6と、搬送ローラ7、8(搬送部)と、制御部9とを備える。
【0019】
制御部9は、シート搬送装置5の各要素の動作を制御する。
【0020】
搬送ローラ7、8は、例えば図1に示すようにインクジェット印刷機2の上流側と下流側に配置される。搬送ローラ7、8は、共に駆動ローラとこれに対向する従動ローラとを有し、駆動ローラと従動ローラとの間に連帳用紙Pを挟持した状態で駆動ローラを回転駆動させることによって、挟持されている連帳用紙Pを用紙搬送方向に搬送する。なお、搬送ローラ7,8の配置や個数は図1の例に限られない。また、搬送ローラ7,8は、連帳用紙Pを搬送する「搬送部」の一例であり、「搬送部」の搬送手法は搬送ローラ7,8の構成には限られない。
【0021】
スプライスセンサ6は、給紙装置3の下流側、かつインクジェット印刷機2の上流側に配置される。スプライスセンサ6は、連帳用紙Pに形成されるスプライス部S(図2参照)を光学的に非接触で検出する。
【0022】
図2は、スプライスセンサ6の構成例を示す模式図である。図2に示すように、長尺状の連帳用紙Pには、搬送方向に沿った一部にスプライス部Sが形成される場合がある。スプライス部Sは、下流側の連帳用紙P1の後端部分と、上流側の連帳用紙P2の先端部分との継ぎ目が粘着テープCなどを用いて接続された部分である。スプライス部Sの厚さTsは、例えば図2に示すように、連帳用紙Sの一対の主面の両側に粘着テープCを添付して形成されるため、粘着テープCの厚さの分だけ連帳用紙Sの他の部分(非スプライス部)の厚さTpより大きくなる。
【0023】
本実施形態に係るシート搬送装置5は、このようなスプライス部S(継ぎ目)を持つ連帳用紙Pを印刷媒体として用いる画像形成装置1に適用される。スプライス部Sがインクジェット印刷機2のインクジェットヘッド2Aの下を通過すると、図1に示す用紙とインクジェットヘッド2Aとの間の距離Dよりスプライス部Sの厚みTsが大きい場合、スプライス部Sがインクジェットヘッド2Aをこすり、破損させる場合がある。このため、本実施形態のシート搬送装置5では、スプライス部Sがインクジェットヘッド2A下を通過する前に、スプライスセンサ6でスプライス部Sを検出し、連帳用紙Pの搬送を停止させる。
【0024】
スプライスセンサ6は、例えば図2に示すように、連帳用紙Pを上下(一対の主面の両側。図2では上下方向)から挟むように、発信部6Aと受信部6Bとが配置され、連帳用紙Pの厚みを検知する方式がある。この方式では、発信部6Aから受信部6Bに向けてレーザ光や超音波などの信号Lを発信して、受信部6Bの受信状況に応じて、発信部6Aと受信部6Bとの間に介在する連帳用紙Pの厚みを検知する。スプライス部Sを検知する際、例えば図2のように連帳用紙Pの継ぎ目を粘着テープCで貼り合わせているため、連帳用紙Pの通常部分(非スプライス部)の厚みTpとスプライス部Sの厚みTsに差が出るため、これらの厚みの差分をスプライス部Sとして検出する。
【0025】
この差分を検出するため、この方式のスプライスセンサ6では、最初の設定として、スプライス部Sではない部分(非スプライス部)の連帳用紙Pの厚みTsを認識させるティーチングを用紙交換毎に実施する必要がある。ティーチングでは、例えば、非スプライス部の厚さTpを、スプライス部Sを検出するための「基準値」として設定する操作が行われる。そして、ティーチング時の連帳用紙Pの厚みTpより厚みが増した際にスプライス部Sとして検出する。
【0026】
そして特に本実施形態では、このようなスプライス部設定操作(ティーチング)を、画像形成装置1の印刷開始を契機としてシート搬送装置5が自動的に実施する。具体的には、シート搬送装置5では、画像形成装置1の印刷開始に応じて、制御部9がティーチング動作信号をスプライスセンサ6に送信する。スプライスセンサ6は、ティーチング動作信号の受信に応じて帳票用紙Pの非スプライス部の厚さTpを測定して、測定した厚さTpを、スプライス部Sを検出するための基準値として設定する。
【0027】
図3は、本実施形態に係るシート搬送装置5の機能ブロック図である。シート搬送装置5の制御部9は、印刷開始契機認識部91と、搬送制御部92と、基準値設定開始制御部93と、エラー判定制御部94と、を有する。シート搬送装置5のスプライスセンサ6は、基準値設定部61と、厚み検出部62と、スプライス検出部63と、を有する。
【0028】
また、図3に示すように、画像形成装置1は、インクジェット印刷機2の動作に関する操作入宇力を受け付けるタッチパネルなどの印刷機操作部21を有する。この印刷機操作部21は、印刷開始契機生成部22を有する。印刷開始契機生成部22は、印刷機操作部21を介して画像形成装置1の印刷動作を開始する操作入力を受け付け、インクジェット印刷機2の印刷動作を開始するときに、印刷開始信号を生成してシート搬送装置5の制御部9に出力する。
【0029】
制御部9の印刷開始契機認識部91は、印刷開始信号の受信に応じて、インクジェット印刷機2の印刷動作が開始される印刷開始契機を認識する。印刷開始契機認識部91は、印刷開始契機を認識すると、その旨を基準値設定開始制御部93に出力する。
【0030】
搬送制御部92は、搬送ローラ7、8(搬送部)の動作を制御する。搬送制御部92は、印刷開始信号の受信に応じて、搬送ローラ7,8に駆動指令を出力して、インクジェット印刷機2への連帳用紙Pの供給を行わせる。
【0031】
また、搬送制御部92は、スプライスセンサ6から、連帳用紙Pのスプライス部Sが検出されたことを示すスプライス検出信号の受信に応じて、搬送ローラ7、8に動作を停止させる制御指令を出力して、インクジェット印刷機2への連帳用紙Pの供給を一時的に中止させる。
【0032】
本実施形態では、搬送制御部92が、スプライスセンサ6のスプライス検出部63によりスプライス部Sが検出されたときに搬送部7,8による連帳用紙P(シート)の搬送を停止させることによって、スプライス部Sがインクジェットヘッド2Aの直下に到達する前に搬送を停止(緊急停止)することができ、スプライス部Sとインクジェットヘッド2Aの接触及び破損を防ぐことができる。
【0033】
搬送停止後、インクジェットヘッド2Aを用紙Pから離れる方向(図1の例では上方向)に退避し、スプライス部Sの厚みTp以上の十分な距離を確保した後、用紙Pをスプライス部Sがインクジェットヘッド2Aの直下を抜けるまで搬送させる。その後、再印刷開始作業を開始する。
【0034】
基準値設定開始制御部93は、印刷開始契機認識部91からの印刷開始契機の受信に応じて、スプライスセンサ6にティーチング動作信号を出力する。
【0035】
エラー判定制御部94は、スプライスセンサ6によるスプライス部Sの判定結果に関するエラーを検出する。エラー判定制御部94が検出するエラーの詳細については図6図7を参照して後述する。
【0036】
スプライスセンサ6の基準値設定部61は、制御部9の基準値設定開始制御部93からのティーチング動作信号の受信に応じて、ティーチング処理を実施する。基準値設定部61は、厚み検出部62により連帳用紙Pのうちスプライス部S以外の通常部分(非スプライス部)の厚みTpを計測させ、計測した非スプライス部の厚み量Tpを、スプライス判定のための「基準値」として設定する。基準値設定部61は、設定した基準値の情報をスプライス検出部63に出力する。
【0037】
厚み検出部62は、搬送部7,8により搬送される連帳用紙Pの厚みを計測する。厚み検出部62は、基準値設定部61からの指令に応じて非スプライス部を計測して、計測結果を基準値設定部61に戻す。また、厚み検出部62は、印刷中に搬送部7,8により搬送されている連帳用紙Pの厚みを連続的に計測し、計測結果(検出値)をスプライス検出部63に出力する。また、厚み検出部62は、連帳用紙Pの厚みの計測値が基準値未満である場合に、厚みエラー信号を制御部9のエラー判定制御部94に出力する。
【0038】
スプライス検出部63は、基準値設定部61により設定された基準値と、画像形成装置1の印刷動作中に厚み検出部62により計測された連帳用紙Pの厚みの情報とを比較して、連帳用紙Pのスプライス部Sを検出する。スプライス検出部63は、スプライス部Sを検出した場合に、スプライス部Sを検出したことを示すスプライス検出信号を制御部9の搬送制御部92及びエラー判定制御部94に出力する。
【0039】
なお、図3に示す例とは異なり、制御部9が基準値設定部61及びスプライス検出部63を有し、スプライスセンサ6は厚み検出部62のみを有する構成でもよい。
【0040】
次に、図4を参照して本実施形態と従来のスプライス検出手法の相違点を説明する。図4は、スプライス検知処理のフローチャートである。図4の(A)は従来のスプライス検出手法の手順を示し、(B)は本実施系阿智のスプライス検出手法を示す。図4中の四角形状の処理はユーザの操作を示し、長円形状の処理は制御部9等による装置の自動操作を示す。
【0041】
図4(B)に示すように、本実施形態では、ユーザにより給紙装置3へのロール紙交換が完了し(ステップS01)、印刷機操作部21などを介して印刷開始ボタンが押下されると(ステップS02)、シート搬送装置5により自動的にティーチング処理が開始される(ステップS03)。
【0042】
ステップS03では、具体的には、ステップS02の印刷開始ボタンの押下に応じて、印刷機操作部21の印刷開始契機生成部22からシート搬送装置5の制御部9へ印刷開始信号が出力される。制御部9では、印刷開始信号の受信に応じて印刷開始契機認識部91及び基準値設定開始制御部93を介してティーチング動作信号がスプライスセンサ6へ出力される。スプライスセンサ6では、ティーチング動作信号の受信に応じて基準値設定部61が非スプライス部の厚さTpの計測値を、スプライス部Sの検出用の基準値として設定し、スプライス検出部63へ出力する。スプライス検出部63は、受信した基準値をメモリ等の記憶装置に記憶する。
【0043】
ステップS04では、ステップS03のティーチング処理の完了の後に、画像形成装置1により印刷が開始される。制御部9の搬送制御部92が搬送部7,8に駆動指令を送信し、搬送部7,8は駆動指令に応じて連帳用紙Pを用紙搬送方向に搬送する。画像形成装置1のインクジェット印刷機2は、搬送部7,8により搬送される連帳用紙Pに印刷を行う。
【0044】
ステップS05では、画像形成装置1による印刷動作の実行中に、スプライスセンサ6のスプライス検出部63によりスプライス部Sの検出が行われる。スプライス検出部63は、例えば基準値設定部61により設定された基準値(非スプライス部の厚みTp)と、画像形成装置1の印刷動作中に厚み検出部62により計測された連帳用紙Pの厚みの情報とを比較して、計測された厚みが基準値を超えた場合にスプライス部Sが通過していると判定する。
【0045】
ステップS05にてスプライス検出部63によりスプライス部Sが検出されると、スプライス検出部63から制御部9にスプライス検出信号が出力される。制御部9の搬送制御部92は、スプライス検出信号の受信に応じて搬送部7,8を停止させ、連帳用紙Pの搬送を停止させる。
【0046】
一方、図4(A)に示すように、従来手法では、ステップS03は行われず、その代わりにステップS01とステップS02の間のタイミングで、ユーザの操作によってスプライス設定操作(ティーチング)が行われる(ステップS13)。このため、従来手法では、ユーザの操作忘れによってティーチングが実施されない場合がある。
【0047】
この場合、後段のステップS05のスプライス検出処理において、正確にスプライス部Sを検出することができないなどの不具合が発生する虞がある。ユーザのティーチング操作の操作漏れが発生すると、前述の通りスプライス部Sがインクジェット印刷機2のインクジェットヘッド2Aの下に搬送されてしまい、スプライス部Sがインクジェットヘッド2Aをこすり、インクジェットヘッド2Aの破損を引き起こす虞がある。
【0048】
このように、図4(A)に示す従来手法では、画像形成装置1の用紙交換毎にユーザによる手動でのティーチング操作が必要だった。これに対して図4(B)に示す本実施形態では、印刷機操作部21から印刷開始信号を受け取ったシート搬送装置5の制御部9が、スプライスセンサ6にティーチング開始信号を送信することによって、ステップS03のように自動でティーチングを実施することができる。これにより、本実施形態では、ユーザのティーチング操作の操作忘れを防ぐことができ、スプライス設定操作(ティーチング)の漏れを確実に防止可能となり、ユーザの操作忘れによる不具合の発生を防止できる。
【0049】
次に図5を参照して、スプライス検出部63によるスプライス検出手法についてさらに説明する。図5は、スプライス検知手法の一例を示すタイミングチャートである。図5には(A)と(B)の2種類のグラフ例が示される。各グラフの横軸は時間を表し、縦軸はスプライス検出部63が生成するスプライス検出信号を表す。図5では、スプライス信号がONの状態を「H」と示し、OFFの状態を「L」と示す。通常の動作中には、厚み検出部62の検出値が非スプライス部の厚みTpを超えた場合に、スプライス信号はLからHに切り替わる。
【0050】
図5(A)のグラフでは、基準値Tpから瞬時的にセンサ出力が増大する推移の一例が示されている。このような推移は、検出時間の短いノイズを判断できる。一方、図5(B)のグラフでは、基準値Tpから一定時間に亘ってセンサ出力が増大する推移の一例が示されている。
【0051】
本実施形態のスプライス検出部63は、図5(A)に示すような検出時間の短いノイズの場合にはスプライス部Sとして検出せず、図5(B)に示すような既定の検出時間以上継続する信号が出力された場合にスプライス部Sと検出する構成とすることができる。つまり、スプライス検出部63は、図5(A)のケースではスプライス検出信号をOFF状態(L)のまま制御部9に出力し、図5(B)のケースではスプライス検出信号をON状態(H)に切り替えて制御部9に出力する。要は、ノイズレベルの短期間のスプライス検出信号を無視し、一定時間以上スプライス検出信号を受信した場合にのみスプライスを認識する。なお、「規定の検出時間」とは、例えば、スプライス部Sの搬送方向に沿った幅と同等の所定量の一例とも表現できる。この所定量は、時間単位ではなく長さでもよい。
【0052】
言い換えると、スプライス検出部63は、厚み検出部62により計測された連帳用紙Pの厚みが基準値Tpより大きい状態が、スプライス部Sの用紙搬送方向に沿った幅と同等の所定量(時間または長さ)だけ継続したときに、スプライス部Sとして検出する構成とすることができる。この構成により、ノイズやチャタリングによる誤検知を防止することができるので、スプライスセンサ6の検出精度を高めることができる。
【0053】
次に図6図7を参照して、エラー判定制御部94によるエラー判定処理についてさらに説明する。
【0054】
エラー判定制御部94は、スプライス検出部63によるスプライス部Sの誤検知を判定する「誤検知判定部」として機能する構成とすることができる。この場合、エラー判定制御部94は、厚み検出部62により計測された連帳用紙Pの厚みが基準値Tpより大きい状態が、スプライス部Sの搬送方向に沿った幅より大きい範囲(時間または長さ)で継続したときに、スプライス部Sの誤検知と判定する。
【0055】
図6は、エラー判定制御部94によるスプライス誤検知判定手法の一例を示すタイミングチャートである。図6には(A)と(B)の2種類のグラフ例が示される。各グラフの横軸は時間を表し、縦軸はスプライス検出部63から制御部9に出力されるスプライス検出信号を表す。図6(A)のグラフでは、通常のスプライス部Sを検知した場合のスプライス検出信号の時間推移の一例が例示されている。図6(B)のグラフでは、スプライス部Sを誤検知した場合の一例が例示されている。
【0056】
図6に示すように、エラー判定制御部94は、スプライス検出信号がON状態(H)であり、スプライス部Sを検出した際、例えば仕様の時間以上ON状態を出力し続けた場合に、誤検知の虞があると判断する。この場合、搬送制御部92を介して通常のスプライス部Sの幅以上(例えば100mm)だけ連帳用紙Pを搬送する。そのときに図6(B)に円E1で示すように、スプライス検出信号がOFF状態Lに切り替わらなかった場合、スプライスセンサ6の故障またはスプライス部Sの誤検出であると判断する。この場合、スプライスセンサ6の交換や、誤検出要因の排除をしないと正常動作が不可能な故障エラーとなる。一方、図6(A)のようにOFF状態Lに戻った場合には、スプライスセンサ6が正常動作に復帰したと判断でき、スプライスセンサ6の交換などは不要な種類の誤検出と判断する。
【0057】
このように、エラー判定制御部94を「誤検知判定部」として機能させることにより、スプライスセンサ6などのデバイスの故障などのセンサ出力異常に起因するスプライス検出機能の誤動作を抑制でき、スプライス部Sの検出精度を向上できる。
【0058】
エラー判定制御部94は、基準値設定部61による基準値の設定エラーを判定する「基準値エラー判定部」として機能する構成とすることができる。この場合、エラー判定制御部94は、厚み検出部62により計測された連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態が発生したときに、搬送部7,8により連帳用紙Pを所定距離搬送させて再び判定を行う。判定の結果、連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態が継続している場合に、基準値設定部61が非スプライス部ではなく、スプライス部Sの厚み量Tsを基準値として設定した基準値の設定エラー(基準値エラー)を検出する。
【0059】
図7は、エラー判定制御部94による基準値エラー判定手法の一例を示すタイミングチャートである。図7の(A)は、連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態が発生した場合の厚みエラー信号の一例を示すグラフである。図7(A)のグラフの横軸は時間を表し、縦軸は厚み検出部62からエラー判定制御部94に出力される厚みエラー信号を表す。図7では、厚みエラー信号がONの状態を「H」と示し、OFFの状態を「L」と示す。通常の動作中には、厚み検出部62の検出値が基準値よりも小さくなった場合に、厚みエラー信号はLからHに切り替わる。
【0060】
図7(A)では、連帳用紙Pの搬送中に符号E2で示す区間で厚みエラー信号が所定時間連続で立ち上がっている。このとき、エラー判定制御部94は、厚みエラー信号の受信に応じて、基準値設定部61が非スプライス部ではなく、スプライス部Sの厚み量Tsを基準値として設定していた「基準値エラー」であると一時的に判定する。
【0061】
図7の(B)は、上述のような連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態であるが、厚みエラーではない場合の一例を示す。図7(B)に示すように、連帳用紙Pの表面に、微小な破損や凹凸などの部分F1が局所的に存在する場合に、図7(A)のような厚みエラー信号の挙動となる場合があり得る。
【0062】
図7の(C)は、上述のような連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態であるが、厚みエラーではない場合の他の例を示す。図7(C)に示すように、連帳用紙Pの表面に、一次的で微小な蛇行部分F2が局所的に存在する場合にも、図7(A)のような厚みエラー信号の挙動となる場合があり得る。
【0063】
厚みエラー信号が図7(A)に示す変動E2となる時点では、図7(B)や(C)に例示する基準値エラー以外の場合も含まれる。そこで、本実施形態では、エラー判定制御部94は、図7に示す通り、搬送制御部92を介して自動で一定の短い距離分だけ連帳用紙Pを搬送して、連帳用紙P上のスプライスセンサ6の検出位置をずらす。そしてこの搬送後の位置で、再度エラー判定を実施する。判定の結果、図7(A)に円E3で示すように、厚みエラー信号がOFF状態Lに切り替わった場合に、一時的な用紙の損傷や蛇行に起因する現象と判断し、基準値エラー判定を解除する。
【0064】
一方、判定の結果、厚みエラー信号がOFF状態Lに切り替わらず、連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態が継続している場合には、基準値設定部61がティーチングを行ったときに、連帳用紙Pの非スプライス部ではなく、スプライス部Sの厚み量Tsを基準値として設定していた「基準値エラー」であると判定する。
【0065】
このように、エラー判定制御部94を「基準値エラー判定部」として機能させることにより、基準値設定部61によるティーチング処理の失敗を検出することが可能となり、システム全体の誤動作を防止でき、かつ、スプライス部Sの検出精度をさらに向上できる。
【0066】
また、エラー判定制御部94を「基準値エラー判定部」として機能させる際には、検知部により計測された連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態が発生したときにエラー発生を検出し、搬送部7,8により連帳用紙Pを所定距離搬送させて再び判定を行い、連帳用紙Pの厚みが基準値より小さい状態が解消した場合にはエラーを解除する。この構成により、図7(B)や(C)に例示したような基準値エラー以外の場合を除外できるので、基準値エラーの検出精度を向上でき、無駄なエラー検出を回避できる。
【0067】
さらに、このような基準値エラーを検出できると、例えば厚紙でティーチング設定されている時に、厚みの小さい薄紙を使用した場合に有利である。このようなケースでは、薄紙上のスプライス部Sが検出できないため、張力や搬送速度などの用紙設定を厚紙設定のまま変えずに薄紙を搬送してしまい、張力が掛かりすぎてしまう事による用紙の破断やジャムが発生する虞があるが、基準値エラーを検出することによってこのような状況発生を防ぐことができる。
【0068】
また、エラー判定制御部94は、厚み検出部62により計測された連帳用紙Pの厚みの情報に基づき、連帳用紙Pのジャム発生、連帳用紙が搬送経路を外れている状態、連帳用紙Pが折り重なる状態、の少なくとも一部をエラーとして検出する「エラー判定部」として機能する構成とすることができる。搬送物のジャムが発生する、搬送物検出位置の用紙が搬送経路を外れる、折り重なる等が発生した場合も、厚み検出部62の計測値が変化するため、スプライス同様、エラーとして検出する事ができる。
【0069】
なお、エラー判定制御部94は、上述の「誤検知判定部」、「基準値エラー判定部」、及び「エラー判定部」の各機能の少なくとも一部を有する構成でもよい。
【0070】
図8は、制御部9のハードウェア構成図である。図8に示すように、制御部9は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102およびROM(Read Only Memory)103、入力デバイスであるキーボード及びマウス等の入力装置104、ディスプレイ等の出力装置105、ネットワークカード等のデータ送受信デバイスである通信モジュール106、補助記憶装置107、などを含むコンピュータシステムとして構成することができる。
【0071】
図3を参照して後述する制御部9の各機能は、CPU101、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール106、入力装置104、出力装置105を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置107におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0072】
また、図3に示すスプライスセンサ6の各機能も同様のハードウェア構成により実現される。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0074】
1 画像形成装置
5 シート搬送装置
7、8 搬送ローラ(搬送部)
61 基準値設定部
62 厚み検出部
63 スプライス検出部
92 搬送制御部
94 エラー判定制御部(誤検知判定部、基準値エラー判定部、エラー判定部)
P 連帳用紙(シート)
S スプライス部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特開2013-104949号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8