(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070964
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】予備凍結用ラック及び予備凍結方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20230515BHJP
A61J 1/14 20230101ALI20230515BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
A61J3/00 301
A61J1/00 430
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183467
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青田 周樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 滋弘
(72)【発明者】
【氏名】藤田 守
【テーマコード(参考)】
4B029
4C047
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA27
4B029BB11
4B029GA06
4B029GB04
4C047AA11
4C047AA31
4C047CC01
4C047CC30
4C047EE02
4C047GG37
(57)【要約】
【課題】バッグに封入された生物学的試料を適切に予備凍結させることを可能とした予備凍結用ラックを提供する。
【解決手段】可撓性のバッグBに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、バッグBを常温から所定の温度まで冷却して生物学的試料を予備凍結させる際に用いられる予備凍結用ラック1Aであって、バッグBを保持するホルダ2を備え、ホルダ2は、互いに対向する一対の保持板4a,4bを有して、一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込む構造を有し、バッグBを保持したホルダ2に対して、バッグBを収納する包装箱Cが被せられると共に、保持板4a,4bの先端側には、包装箱Cの内側の面と当接される突出部13が設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる際に用いられる予備凍結用ラックであって、
前記バッグを保持するホルダを備え、
前記ホルダは、互いに対向する一対の保持板を有して、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込む構造を有し、
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記バッグを収納する包装箱が被せられると共に、
前記保持板の先端側には、前記包装箱の内側の面と当接される突出部が設けられていることを特徴とする予備凍結用ラック。
【請求項2】
前記突出部は、前記一対の保持板の先端側に各々設けられていることを特徴とする請求項1に記載の予備凍結用ラック。
【請求項3】
前記突出部の先端側が傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の予備凍結用ラック。
【請求項4】
前記一対の保持板は、前記バッグを挟み込んだときに互いに平行な状態となることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の予備凍結用ラック。
【請求項5】
前記ホルダは、前記一対の保持板のうち少なくとも一方の保持板を他方の保持板に対して相対的に接近する方向に撓み変形させながら、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込むことを特徴とする請求項4に記載の予備凍結用ラック。
【請求項6】
前記ホルダは、前記一対の保持板の間で折曲部を介して折り曲げられた板金からなることを特徴とする請求項5に記載の予備凍結用ラック。
【請求項7】
前記折曲部が設けられた側に窓部が設けられ、
前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記一対の保持板の間に前記バッグが挿入され、
前記窓部から前記一対の保持板の間に挟み込まれた前記バッグを押し出す治具が挿入されることを特徴とする請求項6に記載の予備凍結用ラック。
【請求項8】
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記包装箱が被せられることを特徴とする請求項7に記載の予備凍結用ラック。
【請求項9】
前記ホルダは、前記一対の保持板が対向する方向に複数並んで設けられていることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の予備凍結用ラック。
【請求項10】
前記複数のホルダの各々に対応して前記包装箱を保持する複数のクリップが並んで設けられたアダプタを備え、
前記バッグを保持した前記複数のホルダに対して、前記アダプタを介して前記包装箱が被せられることを特徴とする請求項9に記載の予備凍結用ラック。
【請求項11】
前記クリップは、互いに対向する一対の弾性板を有して、前記一対の弾性板の間で前記包装箱を挟み込む構造を有することを特徴とする請求項10に記載の予備凍結用ラック。
【請求項12】
前記クリップは、前記一対の弾性板の先端側が拡開する方向に折り曲げられた形状を有することを特徴とする請求項11に記載の予備凍結用ラック。
【請求項13】
可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる予備凍結方法であって、
請求項1~12の何れか一項に記載の予備凍結用ラックを用い、
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記バッグを収納する包装箱を被せた状態で、前記予備凍結用ラックを冷却機能を有する冷却装置の内部に収容することによって、前記バッグを冷却しながら前記生物学的試料を予備凍結させることを特徴とする予備凍結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備凍結用ラック、並びにそのような予備凍結用ラックを用いた予備凍結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、新薬の開発や医療の基礎研究では、血液、実験動物の精子、受精卵、細胞などの生物学的試料(以下、単に「試料」という。)が用いられている。試料は、常温では生物学的作用により劣化する。このため、可撓性のバッグに試料を封入した状態で、凍結保存装置などにより凍結保存するのが一般的である。凍結保存装置としては、液体窒素を用いた凍結保存装置が、長期間安定して保存できるため、広く用いられている(例えば、下記特許文献1,2を参照。)。
【0003】
上述した試料を例えば-150℃以下の低温下で凍結保存する場合、常温の試料を-150℃まで急冷させると、細胞の生存率が低下することが知られている。このため、試料を凍結保存する前に、例えばプログラムフリーザーやドライアイス、機械式冷凍機などの冷却手段を用いて、常温から所定の温度(例えば-80℃)まで冷却速度を制御しながら、バッグに封入された試料を予備凍結させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-136597号公報
【特許文献2】特開2021-83935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した凍結保存装置では、大量の試料を凍結保存することが求められている。このため、複数のバッグを並べて収納する予備凍結用ラックを用いて、この予備凍結用ラックをプログラムフリーザーなどの内部に収容し、それぞれのバッグに封入された試料をまとめて予備凍結することが行われている。
【0006】
しかしながら、上述した試料が封入されたバッグでは、その厚みが不均一となることで、常温から所定の温度まで冷却したときに、温度ムラが生じてしまい、試料の保存性が悪くなる。また、複数のバッグをまとめて冷却する場合、バッグ間での温度ムラも生じてしまう。
【0007】
特に、流通形態となる包装箱にバッグを収納したまま冷却する場合は、上述した温度ムラの発生がより顕著となる。一方、予備凍結後にバッグを包装箱に移し替える場合は、バッグの温度が上昇して、試料の品質低下を招いたり、労力の負荷が増したりすることが懸念される。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、バッグに封入された生物学的試料を適切に予備凍結させることを可能とした予備凍結用ラック、並びにそのような予備凍結用ラックを用いた予備凍結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる際に用いられる予備凍結用ラックであって、
前記バッグを保持するホルダを備え、
前記ホルダは、互いに対向する一対の保持板を有して、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込む構造を有し、
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記バッグを収納する包装箱が被せられると共に、
前記保持板の先端側には、前記包装箱の内側の面と当接される突出部が設けられていることを特徴とする予備凍結用ラック。
〔2〕 前記突出部は、前記一対の保持板の先端側に各々設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の予備凍結用ラック。
〔3〕 前記突出部の先端側が傾斜していることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の予備凍結用ラック。
〔4〕 前記一対の保持板は、前記バッグを挟み込んだときに互いに平行な状態となることを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の予備凍結用ラック。
〔5〕 前記ホルダは、前記一対の保持板のうち少なくとも一方の保持板を他方の保持板に対して相対的に接近する方向に撓み変形させながら、前記一対の保持板が互いに平行となる状態において、前記一対の保持板の間で前記バッグを挟み込むことを特徴とする前記〔4〕に記載の予備凍結用ラック。
〔6〕 前記ホルダは、前記一対の保持板の間で折曲部を介して折り曲げられた板金からなることを特徴とする前記〔5〕に記載の予備凍結用ラック。
〔7〕 前記折曲部が設けられた側に窓部が設けられ、
前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記一対の保持板の間に前記バッグが挿入され、
前記窓部から前記一対の保持板の間に挟み込まれた前記バッグを押し出す治具が挿入されることを特徴とする前記〔6〕に記載の予備凍結用ラック。
〔8〕 前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記折曲部が設けられた側とは反対側から前記包装箱が被せられることを特徴とする前記〔7〕に記載の予備凍結用ラック。
〔9〕 前記ホルダは、前記一対の保持板が対向する方向に複数並んで設けられていることを特徴とする前記〔1〕~〔8〕の何れか一項に記載の予備凍結用ラック。
〔10〕 前記複数のホルダの各々に対応して前記包装箱を保持する複数のクリップが並んで設けられたアダプタを備え、
前記バッグを保持した前記複数のホルダに対して、前記アダプタを介して前記包装箱が被せられることを特徴とする前記〔9〕に記載の予備凍結用ラック。
〔11〕 前記クリップは、互いに対向する一対の弾性板を有して、前記一対の弾性板の間で前記包装箱を挟み込む構造を有することを特徴とする前記〔10〕に記載の予備凍結用ラック。
〔12〕 前記クリップは、前記一対の弾性板の先端側が拡開する方向に折り曲げられた形状を有することを特徴とする前記〔11〕に記載の予備凍結用ラック。
〔13〕 可撓性のバッグに封入された生物学的試料を凍結保存する前に、前記バッグを常温から所定の温度まで冷却して前記生物学的試料を予備凍結させる予備凍結方法であって、
前記〔1〕~〔12〕の何れか一項に記載の予備凍結用ラックを用い、
前記バッグを保持した前記ホルダに対して、前記バッグを収納する包装箱を被せた状態で、前記予備凍結用ラックを冷却機能を有する冷却装置の内部に収容することによって、前記バッグを冷却しながら前記生物学的試料を予備凍結させることを特徴とする予備凍結方法。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、バッグに封入された生物学的試料を適切に予備凍結させることを可能とした予備凍結用ラック、並びにそのような予備凍結用ラックを用いた予備凍結方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る予備凍結用ラックの構成を示し、(a)はその正面側から見た斜視図、(b)はその背面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1に示す予備凍結用ラックが備えるホルダの構成を示し、(a)はその背面側から見た斜視図、(b)はその正面側から見た斜視図、(c)はその正面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。
【
図3】
図1に示す予備凍結用ラックが備えるホルダにバッグを挿入する状態を示す断面図である。
【
図4】
図3に示すバッグが挿入されたホルダをアダプタが備えるクリップに保持された包装箱に挿入する状態を示す断面図である。
【
図5】
図4に示すバッグを保持したホルダに対して包装箱が被せられた状態を示す断面図である。
【
図6】
図5に示す予備凍結用ラックをプログラムフリーザーの内部に収容した状態を示す断面図である。
【
図7】
図6に示すホルダに保持されたバッグを治具により押し出した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
〔予備凍結用ラック〕
先ず、本発明の一実施形態として、例えば
図1~
図5に示す予備凍結用ラック(以下、単に「ラック」という。)1の構成について説明する。
【0014】
なお、
図1は、ラック1の構成を示し、(a)はその正面側から見た斜視図、(b)はその背面側から見た斜視図である。
図2は、ラック1が備えるホルダ2の構成を示し、(a)はその背面側から見た斜視図、(b)はその正面側から見た斜視図、(c)はその正面図、(d)はその側面図、(e)はその背面図である。
図3は、ラック1が備えるホルダ2にバッグBを挿入する状態を示す断面図である。
図4は、
図3に示すバッグBが挿入されたホルダ2をアダプタ20が備えるクリップ21に保持された包装箱Cに挿入する状態を示す断面図である。
図5は、
図4に示すバッグBを保持したホルダ2に対して包装箱Cが被せられた状態を示す断面図である。
【0015】
本実施形態のラック1は、
図1(a),(b)に示すように、可撓性のバッグBに封入された生物学的試料(以下、単に「試料」という。)を凍結保存する前に、バッグBを常温から所定の温度まで冷却して試料を予備凍結させる際に好適に用いられるものである。
【0016】
具体的に、このラック1は、バッグBを保持する複数のホルダ2と、複数のホルダ2を上下方向(高さ方向)に並べて収納するラック本体3とを備えている。
【0017】
ホルダ2は、
図2(a)~(e)に示すように、互いに対向する一対の保持板4a,4bと、一対の保持板4a,4bの間で折り曲げられた折曲部5とを有している。なお、本実施形態では、ホルダ2の折曲部5が設けられた側をホルダ2の背面側とし、それとは反対側をホルダ2の正面側として説明する。
【0018】
ホルダ2は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた板金からなり、一対の保持板4a,4bの間で折曲部2cを介して折り曲げられることによって、全体として偏平な略直方体形状を有している。
【0019】
ホルダ2は、互いに対向する一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込むクリップ構造を有している。
【0020】
具体的に、一対の保持板4a,4bは、互いに一致した形状を有して、矩形平板状に形成されている。折曲部5は、ホルダ2の背面を形成する背板部5aと、背板部5aの上側及び下側の端縁部に沿って折り曲げられた一対の屈曲部5b,5cとを有している。
【0021】
一対の屈曲部5b,5cは、背板部5aに対して互いの先端側が接近する方向に向かって屈曲して設けられている。一対の保持板4a,4bは、互いに対向した状態となるように、一対の屈曲部5b,5cの先端側の端縁部に沿って折り曲げられている。これにより、一対の保持板4a,4bは、折曲部5が設けられた基端(ホルダ2の背面)側から先端(ホルダ2の正面)側に向かって拡開された形状を有している。
【0022】
一対の保持板4a,4bの先端側には、それぞれ突出部13が設けられている。突出部13は、一対の保持板4a,4bの先端部に沿って幅方向に延在しながら、一対の保持板4a,4bの互いに対向する面(内面)とは反対側の面(外面)から突出して設けられている。本実施形態では、突出部13として、断面視で略台形状の突起部が設けられている。
【0023】
また、突出部13の先端側の面(以下、「傾斜面」という。)13aが傾斜している。すなわち、この傾斜面13aは、突出部13の平坦な上面13bに対して、一対の保持板4a,4bの先端部に向かって傾斜して設けられている。
【0024】
ホルダ2では、一対の保持板4a,4bのうち少なくとも一方の保持板を他方の保持板に対して相対的に接近する方向に撓み変形させることが可能となっている。本実施形態では、一対の保持板4a,4bを互いに接近する方向に撓み変形させることが可能となっている。
【0025】
また、ホルダ2の背面側には、窓部6が設けられている。窓部6は、背板部5aの幅方向に亘って略矩形状に開口して設けられている。
【0026】
ラック本体3は、
図1(a),(b)に示すように、その背面を構成する背板7aと、その両側面を構成する一対の側板7b,7cと、その上面を構成する天板7dとを有して、その正面及び下面側が開口したフレーム構造を有している。
【0027】
ラック本体3は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた板金からなり、背板7aと一対の側板7b,7cとの間で折り曲げられると共に、天板7dが溶接等により取り付けられることによって、全体として上下方向に延びる略直方体形状を有している。
【0028】
ラック本体3の内側には、複数のホルダ2が上下方向に等間隔に並んだ状態で収納されている。各ホルダ2は、背板部5aをラック本体3の背板7aに溶接等により取り付けることによって、ラック本体3に固定されている。これにより、ホルダ2は、その背面側が片持ち支持された状態で、一対の保持板4a,4bが対向する方向(本実施形態ではラック本体3の上下方向)に複数並んで設けられている。
【0029】
ラック本体3の背面には、複数の窓部8が上下方向に並んで設けられている。窓部8は、上述した各ホルダ2の窓部6と一致するように、背板7aの幅方向に亘って略矩形状に開口して設けられている。
【0030】
ラック本体3の両側面には、開口部9が設けられている。開口部9は、一対の側板7b,7cの上下方向に亘って略矩形状に開口して設けられている。
【0031】
ラック本体3の上面には、取手部10が設けられている。取手部10は、天板7dに溶接等により取り付けられている。これにより、ラック1では、取手部10を把持しながら、ラック本体3を持ち運ぶことが可能となっている。
【0032】
以上のような構成を有する本実施形態のラック1では、先ず、
図3に示すように、各ホルダ2の正面側から一対の保持板4a,4bの間にバッグBをそれぞれ挿入する。このとき、各ホルダ2では、一対の保持板4a,4bの先端側が拡開しているため、一対の保持板4a,4bの間にバッグBが挿入し易くなっている。
【0033】
次に、
図4に示すように、バッグBが挿入された各ホルダ2に対して、アダプタ20を介して包装箱Cを被せる。包装箱Cは、予備凍結後にバッグBを収納する紙製や樹脂製などのカートンからなる。
【0034】
アダプタ20は、ラック本体3の上下方向(高さ方向)に並ぶ複数のホルダ2に各々対応して、上下方向(高さ方向)に並ぶ複数のクリップ21を備えている。アダプタ20は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性に優れた板金からなり、その背面を構成する背板20aを介して複数のクリップ21が互いに連結された構造を有している。なお、本実施形態では、アダプタ20の背板20aが設けられた側をアダプタ20の背面側とし、それとは反対側をアダプタ20の正面側として説明する。
【0035】
クリップ21は、互いに対向する一対の弾性板22a,22bを有して、これら一対の弾性板22a,22bの間で包装箱Cを挟み込む構造を有している。また、クリップ21では、一対の弾性板22a,22bの間に包装箱Cが挟み込まれた状態において、これら一対の弾性板22a,22bが互いに離間する方向に撓み変形することで、一対の弾性板22a,22bが包装箱Cを挟み込む方向(互いに接近する方向)に付勢されている。
【0036】
これにより、アダプタ20では、各クリップ21により包装箱Cを安定した状態で保持することが可能である。包装箱Cは、その開口部側をアダプタ20の正面側に向けた状態で、各クリップ21に保持されている。
【0037】
また、クリップ21は、一対の弾性板22a,22bの先端側が拡開する方向に折り曲げられた形状を有している。これにより、クリップ21では、一対の弾性板22a,22bの間に包装箱Cが挿入し易くなっている。
【0038】
本実施形態のラック1では、バッグBが挿入された各ホルダ2に対して、アダプタ20の各クリップ21に保持された包装箱Cを被せる際に、各ホルダ2の先端側を各クリップ21に保持された包装箱Cの開口部を通して包装箱Cの内側へと挿入する。
【0039】
このとき、各ホルダ2では、突出部13の傾斜面13aが包装箱Cの開口端と摺接しながら、一対の保持板4a,4bを互いに接近する方向に撓み変形させる。
【0040】
その後、包装箱Cの開口部から包装箱Cの内側へとホルダ2が挿入されることによって、突出部13の上面(以下、「当接面」という。)13bが包装箱Cの内側の面と当接された状態となる。これにより、各ホルダ2では、一対の保持板4a,4bが互いに接近する方向に撓み変形しながら、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込む。
【0041】
その後、
図5に示すように、バッグBを保持した各ホルダ2に対して、アダプタ20を介して包装箱Cが被せられた状態となる。このとき、各ホルダ2では、一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込みながら、これら一対の保持板4a,4bが互いに平行な状態となっている。
【0042】
これにより、本実施形態のラック1では、バッグBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能である。したがって、本実施形態のラック1では、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制することが可能である。
【0043】
なお、本発明で言うところの「バッグBを挟み込んだときに一対の保持板4a,4bが互いに平行な状態となる」とは、一対の保持板4a,4bが完全に平行な状態を保つ場合に限定されるものではなく、バッグBの厚みを均一に保つという目的を達成し得る範囲で、一対の保持板4a,4bが僅かに非平行な状態となる場合も許容するものとする。
【0044】
〔予備凍結方法〕
次に、上記ラック1を用いた予備凍結方法について、
図5~
図7を参照しながら説明する。
【0045】
なお、
図6は、
図5に示すラック1をプログラムフリーザーPFの内部に収容した状態を示す断面図である。
図7は、
図6に示すホルダ2に保持されたバッグBを治具Tにより押し出した状態を示す断面図である。
【0046】
本実施形態のラック1を用いた予備凍結方法では、先ず、上述した
図5に示すように、バッグBを保持したホルダ2に対して、アダプタ20を介して包装箱Cが被せられた状態のラック1を用意する。
【0047】
次に、
図6に示すように、冷却機能を有する冷却装置であるプログラムフリーザーPFの内部にラック1を収容する。これにより、冷却速度を制御しながら、バッグBを常温から所定の温度(例えば-80℃)まで冷却する。これにより、バッグBに封入された試料を予備凍結させることが可能である。
【0048】
次に、
図7に示すように、プログラムフリーザーPFの内部に収容されたラック1を外部へと取り出した後、ラック1からアダプタ20を取り外す。
【0049】
その後、ラック本体3の各窓部8及び各ホルダ2の窓部6から治具Tを挿入する。これにより、各ホルダ2に保持されたバッグBを治具Tによりホルダ2の正面側から押し出しながら、バッグBを包装箱Cに収納したまま、ホルダ2から離脱させることが可能である。
【0050】
以上のように、本実施形態のラック1を用いた予備凍結方法では、上述したバッグBの厚みを均一に保ちながら、各ホルダ2によりバッグBを保持することが可能なことから、バッグBを常温から所定の温度まで冷却したときの温度ムラの発生を抑制しながら、バッグBに封入された試料を適切に予備凍結させることが可能である。
【0051】
また、本実施形態のラック1を用いた予備凍結方法では、予備凍結後に、ホルダ2に保持されたバッグBを包装箱Cへと速やか且つ容易に移し替えることが可能なことから、バッグBの温度が上昇して、試料の品質が低下したりすることを防ぐことが可能である。
【0052】
さらに、紙製や樹脂製のカートンのような熱伝導性の低い包装箱CにバッグBが収納された状態であっても、バッグBに封入された試料を迅速に冷却し、予備凍結することが可能である。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記ラック1では、上述したホルダ2の構成に必ずしも限定されるものではなく、
図8(A)~(D)に示すような構成とすることも可能である。
【0054】
すなわち、ホルダ2は、
図8(A)に示すように、保持板4a,4bの先端側の中央部に、突出部13Aが設けられた構成であってもよい。
【0055】
また、ホルダ2は、
図8(B)に示すように、保持板4a,4bの先端部に沿って、複数の突出部13Bが並んで設けられた構成であってもよい。
【0056】
また、ホルダ2は、
図8(C)に示すように、突出部13Cとして、保持板4a,4bの先端側が傾斜面13aを形成するように折り返された折返部が設けられた構成であってもよい。
【0057】
また、ホルダ2は、
図8(D)に示すように、折曲部5を構成する一方(本実施形態では上側)の屈曲部5bのみを有した構成であってもよい。また、他方(本実施形態では下側)の屈曲部5cが省略されることによって、一方(本実施形態では上側)の保持板4aが一方の屈曲部5bの先端側の端縁部に沿って折り曲げられ、他方(本実施形態では下側)の保持板4bが背板部5aの下側の端縁部に沿って折り曲げられている。
【0058】
これにより、
図8(D)に示すホルダ2では、一方の保持板4aを他方の保持板4bに対して接近する方向に撓み変形させながら、一対の保持板4a,4bが互いに平行となる状態において、これら一対の保持板4a,4bの間でバッグBを挟み込むことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1A~1E…予備凍結用ラック 2…ホルダ 3…ラック本体 4a,4b…一対の保持板 5…折曲部 6…窓部 7a…背板 7b,7c…一対の側板 7d…天板 8…窓部 9…開口部 10…取手部 11…ヒンジ部 12…固定具 13,13A~13C…突出部 13a…傾斜面 13b…当接面 20…アダプタ 21…クリップ 22a,22b…一対の弾性板 B…バッグ C…包装箱 T…治具