IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-プラズマ源及びプラズマ処理装置 図1
  • 特開-プラズマ源及びプラズマ処理装置 図2
  • 特開-プラズマ源及びプラズマ処理装置 図3
  • 特開-プラズマ源及びプラズマ処理装置 図4
  • 特開-プラズマ源及びプラズマ処理装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071064
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】プラズマ源及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230515BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230515BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230515BHJP
   C23C 16/50 20060101ALI20230515BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/302 102
H01L21/205
H01L21/302 101E
H05H1/46 A
C23C16/50
C23C16/44 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183650
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 良二
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084BB26
2G084BB29
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD23
2G084DD24
2G084DD55
2G084FF01
2G084FF02
2G084FF15
2G084FF38
2G084FF39
4K030EA04
4K030FA01
4K030GA02
4K030KA09
4K030KA18
4K030KA20
4K030KA30
4K030KA41
4K030KA46
4K030KA47
5F004AA14
5F004AA15
5F004BA03
5F004BB29
5F004DA07
5F004DA17
5F045AA08
5F045DP03
5F045EB06
5F045EF05
5F045EH08
5F045EH18
(57)【要約】
【課題】効果的にパーティクルの発生を抑制する。
【解決手段】供給口が形成され、前記供給口から供給する前記処理ガスの上流側の流れを画定する壁を構成する金属部材と、排出口が形成され、前記排出口から排出する前記処理ガスの下流側の流れを画定する壁を構成するセラミックス部材と、チャンバ内にプラズマ生成用の電力を供給する電力供給部と、を有し、前記チャンバは、前記金属部材と前記セラミックス部材とから構成され、前記処理ガスをプラズマ化して生成した活性化ガスを前記排出口から前記チャンバの外部に排出するように構成される、プラズマ源が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口が形成され、前記供給口から供給する処理ガスの上流側の流れを画定する壁を構成する金属部材と、
排出口が形成され、前記排出口から排出する前記処理ガスの下流側の流れを画定する壁を構成するセラミックス部材と、
チャンバ内にプラズマ生成用の電力を供給する電力供給部と、を有し、
前記チャンバは、前記金属部材と前記セラミックス部材とから構成され、前記処理ガスをプラズマ化して生成した活性化ガスを前記排出口から前記チャンバの外部に排出するように構成される、プラズマ源。
【請求項2】
前記セラミックス部材は、焼結体である、
請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
前記金属部材と前記セラミックス部材とは、応力緩衝材を介して互いにロウ付けされる、
請求項1又は2に記載のプラズマ源。
【請求項4】
前記応力緩衝材は、前記金属部材の外壁と前記セラミックス部材の内壁とにロウ付けされる、
請求項3に記載のプラズマ源。
【請求項5】
前記応力緩衝材は、前記金属部材の下端部と前記セラミックス部材の上端部とにロウ付けされる、
請求項3に記載のプラズマ源。
【請求項6】
前記応力緩衝材は、バネ状部材である、
請求項3~5のいずれか一項に記載のプラズマ源。
【請求項7】
前記バネ状部材は、開口部を有する中空部材であり、
前記開口部は、前記供給口及び前記排出口のいずれかが開口する方向と同じ方向に開口する、
請求項6に記載のプラズマ源。
【請求項8】
前記バネ状部材は、開口部を有する中空部材であり、
前記開口部は、前記供給口及び前記排出口が開口する方向と異なる方向に開口する、
請求項6に記載のプラズマ源。
【請求項9】
前記応力緩衝材の線熱膨張係数は、前記セラミックス部材の線熱膨張係数以上前記金属部材の線熱膨張係数以下である、
請求項3~8のいずれか一項に記載のプラズマ源。
【請求項10】
前記セラミックス部材の外壁には、金属の蒸着膜が形成される、
請求項1~9のいずれか一項に記載のプラズマ源。
【請求項11】
前記金属部材は、前記供給口から分岐する複数又は環状のプラズマ生成流路を形成するように構成され、
前記セラミックス部材は、前記複数又は環状のプラズマ生成流路の少なくとも合流部を形成するように構成されている、
請求項1~10のいずれか一項に記載のプラズマ源。
【請求項12】
チャンバを有し、前記チャンバの内部において処理ガスをプラズマ化して生成した活性化ガスを排出口から前記チャンバの外部に排出するように構成される、プラズマ源と、
前記チャンバに連通し、前記活性化ガスを導入し、前記活性化ガスを用いて基板を処理するリアクタと、を有し、
前記プラズマ源は、
供給口が形成され、前記供給口から供給する前記処理ガスの上流側の流れを画定する壁を構成する金属部材と、
前記排出口が形成され、前記排出口から排出する前記処理ガスの下流側の流れを画定する壁を構成するセラミックス部材と、
前記チャンバ内にプラズマ生成用の電力を供給する電力供給部と、を有し、
前記チャンバは、前記金属部材と前記セラミックス部材とから構成される、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ源及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの反応種をリモートプラズマ源からリアクタに供給し、リアクタ内にてウェハ処理やリアクタ内のクリーニングを行うプラズマ処理方法がある。例えば、特許文献1は、基板処理装置のリアクタに設置されたリモートプラズマ源からリアクタにフッ素含有ガスの反応種を供給し、リアクタ内のクリーニングを行う方法が開示されている。フッ素含有ガスの反応種をリモートプラズマ源からリアクタに供給する内壁には、フッ素樹脂のコーティングが施され、フッ素含有ガスによる内壁のダメージを低減し、パーティクルの発生を抑制できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-179426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、効果的にパーティクルの発生を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、供給口が形成され、前記供給口から供給する前記処理ガスの上流側の流れを画定する壁を構成する金属部材と、排出口が形成され、前記排出口から排出する前記処理ガスの下流側の流れを画定する壁を構成するセラミックス部材と、チャンバ内にプラズマ生成用の電力を供給する電力供給部と、を有し、前記チャンバは、前記金属部材と前記セラミックス部材とから構成され、前記処理ガスをプラズマ化して生成した活性化ガスを前記排出口から前記チャンバの外部に排出するように構成される、プラズマ源が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、効果的にパーティクルの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は実施形態に係るプラズマ源の構成例1及びプラズマ処理装置の構成例を示す図。
図2図2は従来のプラズマ源の構成例aを示す図。
図3図3は実施形態に係る応力緩衝材の変形例を示す図。
図4図4(a)は従来のプラズマ源の構成例b、図4(b)は実施形態に係るプラズマ源の構成例2を示す図。
図5図5は実施形態に係るプラズマ源の構成例3を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
例えばNFガス等のフッ素含有ガスの反応種(活性化ガス)をリモートプラズマ源(以下、プラズマ源ともいう。)からリアクタに供給し、リアクタ内をクリーニングしたり、ウェハを一例とする基板を処理ガスにより処理したりするプラズマ処理方法がある。係るプラズマ処理方法では、プラズマ源の配管の曲がり部分、活性化ガスの排出口付近の配管や内壁等、フッ素含有ガスが滞留する箇所で発熱に伴いフッ化が進む。従来のプラズマ源では、例えばチャンバ壁を構成するアルミニウムがフッ化してAlF(フッ化アルミニウム)となり、壁から剥がれパーティクルとなることがある。
【0010】
チャンバ内壁にアルマイト処理(陽極酸化処理)等の表面処理を施してアルミナ(Al)を形成した場合や、イットリア(Y)等の酸化膜を形成した場合、チャンバ壁のフッ化を抑制しパーティクルを低減できる。しかし、酸化膜もダメージを受けて削られたり、クラックが発生したりしてフッ素含有ガスがチャンバ壁を構成するアルミニウムに到達する。この結果、チャンバ内壁から発生した削片やAlFがパーティクルとなってリアクタ内に落ちることがある。
【0011】
そこで、本実施形態に係るプラズマ源では、従来のアルミナやイットリアの酸化膜の表面処理ではなく、チャンバ内のフッ化し易い箇所、例えば反応種(活性化ガス)の排出口付近を例えばイットリアの焼結体により構成する。つまり、プラズマ源にガスを供給する供給口からチャンバ内に供給されたガスの滞留時間が長くなったり、ガスの密度が高くなったりしてフッ化し易いガスの下流側のチャンバの壁をイットリアの焼結体により構成する。これにより、チャンバ壁の耐久性を上げる。これにより、チャンバ内のフッ化し易い箇所の壁等にフッ素成分が入り込まないようにし、ダメージによるチャンバ壁等からのパーティクルの発生を抑制し、パーティクルがプラズマ源からリアクタ内に落下しないようにする。以下、図1を参照して実施形態に係るプラズマ源の構成例1及びプラズマ処理装置について詳細に説明する。
【0012】
[プラズマ源の構成例1及びプラズマ処理装置]
図1は実施形態に係るプラズマ源2の構成例1及びプラズマ源2を含むプラズマ処理装置1の構成例を示す図である。プラズマ源2は、チャンバ36と電力供給部37とを有する。チャンバ36は、金属部材30とセラミックス部材31とから構成される。なお、図1では、プラズマ源2とリアクタ10の大小関係は無視している。
【0013】
(チャンバ構造)
金属部材30は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状であり、内部はプラズマ生成空間30sになっている。金属部材30の上部は閉じ、下部は開口している。金属部材30の上部の略中央には処理ガスの供給口28が形成されている。供給口28は、開閉バルブ29を介してガス供給部24に接続されている。金属部材30は、供給口28から供給する処理ガスの上流側の流れを画定する壁を構成する。処理ガスは、ガス供給部24から供給され、開閉バルブ29により供給及び供給停止を制御され、供給口28から金属部材30の内部に導入される。処理ガスには、クリーニングガス、成膜ガス、エッチングガス等が含まれる。
【0014】
電力供給部37は、チャンバ36内にプラズマ生成用の電力を供給する。プラズマ生成用の電力は、400kHz、13.56MHz等の高周波(RF)電力であり得る。電力供給部37は、金属部材30の周囲に巻かれたコイル33に接続され、コイル33に高周波電力を印加する。金属部材30の側壁にはコイル33が配置された高さにて円周方向に隙間が設けられ、その隙間に環状の誘電体窓32が嵌め込まれている。コイル33に高周波電力を印加し形成される電磁界は、誘電体窓32を透過して金属部材30内のプラズマ生成空間30sに伝搬され、ガスからプラズマを生成するのに寄与する。
【0015】
これにより、プラズマ生成空間30sでは処理ガスのプラズマが生成される。金属部材30の内壁はイットリアの溶射膜30aによりコーティングされている。金属部材30の内壁にPEO(プラズマ電界酸化)処理を行ってもよい。いずれもプラズマ耐性を向上させることができる。
【0016】
本実施形態のプラズマ源2のチャンバ36は、処理ガスの上流側の流れを画定する金属部材30と、下流側の流れを画定するセラミックス部材31との2つの部材で主に構成される。つまり、セラミックス部材31には、排出口27が形成され、排出口27から排出する処理ガス(活性化ガス)の下流側の流れを画定する壁を構成する。本実施形態のプラズマ源2では、セラミックス部材31はイットリア焼結体により構成する。
【0017】
従来のプラズマ源102の構成例aを図2に示す。従来のプラズマ源102の構成例aでは、アルミニウムにより構成されたチャンバ136の上部の供給口128から処理ガスを導入し、プラズマ生成空間30sにてプラズマを生成する。ガスの滞留時間が長くなったり、ガスの密度が高くなったりしてフッ化し易いガスの下流側の排出口127の近傍(例えばA領域)では、アルミニウムのチャンバ壁にフッ素成分が入り込み、パーティクルの発生原因となる。また、チャンバ136の内壁面に溶射によるセラミックス被膜を形成した場合においても、同様に、例えばA領域におけるセラミックス被膜にフッ素成分が入り込み、パーティクルの発生原因となる。
【0018】
そこで、図1に示す本実施形態のプラズマ源2の構成例1では、排出口27近くの処理ガスの下流側の流れを画定する壁をイットリアの焼結体により構成する。すなわち、本開示のチャンバ36は、イットリア焼結体のセラミックス部材31とアルミニウムの金属部材30とから主に構成される。
【0019】
これにより、ガスの滞留時間が長くなったり、ガスの密度が高くなったりする排出口27及びその周囲の処理ガスの流れの下流側だけをイットリア焼結体にしてフッ素に対する耐久性を向上させる。つまり、セラミックス部材31の部分を溶射により形成されたセラミックスではなく、溶射よりも緻密な焼結体により構成することで、フッ素に対する耐久性を更に向上させる。ただし、イットリアは熱伝導が良くないため、イットリア焼結体のセラミックス部材31は、チャンバ36内のガスが滞留する部分のみに配置することが好ましい。供給口28及びその周囲の処理ガスの流れの上流側及び上流側と下流側の中間はアルミニウムの金属部材30で構成する。
【0020】
係る構成により、チャンバ36は、金属部材30とセラミックス部材31とから構成され、処理ガスをプラズマ化して生成した活性化ガスを排出口27からチャンバ36の外部に排出するように構成される。これにより、ガスの下流側でチャンバ壁がフッ化し、パーティクルが発生することを抑制でき、かつ、金属部材30により熱伝導性をよくしてチャンバ36を冷却し易い構造とすることができる。
【0021】
イットリアにプラズマ耐性があるため、セラミックス部材31の内壁はイットリア焼結体が露出したままでよい。一方、セラミックス部材31の外壁には金属の蒸着膜31bを形成する必要がある。セラミックス部材31は誘電体であるため、蒸着膜31bがないとプラズマ生成空間30sを伝搬する電磁波がチャンバ36外の大気側まで透過する。これを防ぐために、セラミックス部材31の外壁に例えばアルミニウム、クロム、ニッケル、タンタル等の金属を蒸着する。蒸着膜31bにより、電磁波の漏洩を防ぐことができる。
【0022】
なお、セラミックス部材31は、イットリア焼結体の替わりにアルミナ(Al)焼結体、フッ化イットリウム(YF)焼結体、フッ化マグネシウム(MgF)焼結体、フッ化カルシウム(CaF)焼結体を使用できる。ただし、アルミナ焼結体、フッ化マグネシウム焼結体および、フッ化カルシウム焼結体は、イットリア焼結体よりもフッ素プラズマ耐性が低いため、セラミックス部材31にはイットリア焼結体を用いることが好ましい。
【0023】
また、金属部材30は、アルミニウムの替わりに表面に耐フッ化プラズマ処理が出来る材料であればこれに限らない。
【0024】
チャンバ36全体をイットリア焼結体で形成することも可能である。この場合、セラミックス部材31の、誘電体窓32を除く外壁全体に金属の蒸着膜31bを施す。ただし、チャンバ36全体をイットリア焼結体等のセラミックスで形成する場合には、プラズマ源2の製造コストが高額となり、また熱伝導性の面から冷却効率の問題が発生する。よって、セラミックス部材31を用いる箇所は、ある程度限定的である方が好ましい。
【0025】
チャンバ36のうち、ガス流路が狭くなる箇所やガス溜まりが生じる箇所等、フッ素含有ガスが高密度になる部分やフッ素含有ガスの流速が低くなる部分はフッ素成分が入り込み易い。このため、このようなフッ素成分が入り込み易い部分には最低限セラミックス部材31を施すことが好ましい。
【0026】
(応力緩衝材)
金属部材30とセラミックス部材31とは、応力緩衝材34を介して互いにロウ付けにより構成される。金属部材30とセラミックス部材31とを直接接合すると、熱膨張差により、チャンバ36内の温度の高低によって金属部材30とセラミックス部材31との接合部分やセラミックス部材31に割れ等が発生する恐れがある。割れ等が発生すると、その割れにフッ素成分が入り、接合部分の腐食によりパーティクルが生じる。このため、金属部材30とセラミックス部材31とを直接接合せず、金属部材30とセラミックス部材31との間に環状の応力緩衝材34を介在させる。応力緩衝材34は、金属部材30の下端付近の外壁とセラミックス部材31の上端付近の内壁とに周方向にロウ付けされている。ロウ付けには、例えばチタンと銀を混合させた活性金属ロウを用いることができる。また、応力緩衝材34とセラミックス部材31のイットリア焼結体との接合には、メタライズを用いることができる。
【0027】
応力緩衝材34は、金属部材30の熱膨張率とセラミックス部材31の熱膨張率との中間程度の熱膨張率を持つ物質が好ましい。例えば応力緩衝材34は、29%がNi、17%がCo、それ以外がFeを組成とするニッケル系金属が好ましい。このような金属の一例として、コバール(登録商標)を用いてもよい。応力緩衝材34により金属部材30とセラミックス部材31との熱膨張差による応力を吸収でき、これにより、金属部材30又はセラミックス部材31に割れが生じることを回避できる。ただし、応力緩衝材34は、セラミックス部材31の線熱膨張係数以上、金属部材30の線熱膨張係数以下の線熱膨張係数を有する部材であればよい。
【0028】
図1の例では、応力緩衝材34は、断面がU字状の開口部34aを有する中空部材のバネ状部材により構成されている。開口部34aは、供給口28及び排出口27のいずれかが開口する方向と同じ方向に開口する。
【0029】
なお、図1の応力緩衝材34の構成は一例であり、セラミックス部材31及び接合部分に負荷がかからない構成であれば、図3に応力緩衝材34の変形例を示すように、応力緩衝材34は板状部材であってもよい。
【0030】
(プラズマ処理装置)
図1に戻り、プラズマ処理装置1は、プラズマ源2及びリアクタ10を有する。連結部38は、プラズマ源2の排出口27を内部に形成し、リアクタ10の上壁の穴部に嵌め込まれる。これにより、プラズマ源2が立設する。プラズマ源2では処理ガスをプラズマ化し、生成された活性化ガスが排出口27からチャンバ36外へ排出され、リアクタ10内へと供給される。このとき、ガスのコンダクタンスが上がり、レジデンスタイムが上がる箇所である排出口27及びその近傍は、イットリア焼結体により形成されたセラミックス部材31を用いて耐腐食性を向上させている。これにより、例えばクリーニング時にフッ素含有ガスを使用したときにもイットリア焼結体にフッ素含有ガスが入り込まず、パーティクルの発生を抑制し、パーティクルがリアクタ10側に落下することを抑制できる。なお、図示は省略するが、連結部38にバルブを設けることでガスの逆流を防ぎ、またリアクタ10の容積を少なくすることが好ましい。
【0031】
リアクタ10は、チャンバ本体12を含んでいる。チャンバ本体12は、略円筒状を有しており、リアクタ10の側壁及び底壁を提供し上部が開口する。チャンバ本体12は、アルミニウム等の金属から形成され、接地されている。
【0032】
チャンバ本体12の側壁は、通路12pを提供している。基板Wは、リアクタ10の内部と外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。通路12pは、ゲートバルブ12vによって開閉可能である。ゲートバルブ12vは、チャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0033】
リアクタ10は、上壁14を更に含み、上壁14は、アルミニウム等の金属から形成されている。上壁14は略円盤状であり、チャンバ本体12の上部の開口を閉じている。上壁14は、接地されている。
【0034】
リアクタ10の底壁は、排気口16aを提供している。排気口16aは、排気装置16に接続されている。排気装置16は、自動圧力制御弁のような圧力制御器及びターボ分子ポンプのような真空ポンプを含んでいる。
【0035】
プラズマ処理装置1は、基板支持部18を更に備える。基板支持部18は、リアクタ10内に設けられている。基板支持部18は、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板Wは、略水平な状態で基板支持部18上に載置される。基板支持部18は、支持部材19によって支持されていてもよい。支持部材19は、リアクタ10の底部から上方に延びている。基板支持部18及び支持部材19は、窒化アルミニウム等の誘電体から形成され得る。
【0036】
プラズマ処理装置1は、シャワーヘッド20を更に備える。シャワーヘッド20は、アルミニウム等の金属から形成されている。シャワーヘッド20は、略円盤状を有しており、その中に拡散室30dを提供している。シャワーヘッド20は、基板支持部18の上方、且つ、上壁14の下部に設けられている。シャワーヘッド20は、リアクタ10の内部空間を画成する天部を構成し、その上部の上に上壁14が設けられている。
【0037】
拡散室30dから垂直方向に貫通する複数のガス孔20iが形成され、複数のガス孔20iは、シャワーヘッド20の下面に開口し、リアクタ10内のシャワーヘッド20と基板支持部18との間の処理空間30eに向けてガスを導入する。これにより、シャワーヘッド20は、プラズマ源2から供給される活性化ガスを拡散室30dから複数のガス孔20iに通して処理空間30eに導入する。
【0038】
シャワーヘッド20の外周は、セラミックスのような誘電体部材13で覆われている。基板支持部18の外周は、セラミックスのような誘電体部材15で覆われている。シャワーヘッド20に高周波を印可しない場合、誘電体部材13はなくてもよい。ただし、基板支持部18の対向電極として機能させるシャワーヘッド20の領域を確定するために誘電体部材13は配置した方がよい。また、電極のアノードとカソードとの比をなるべく均等にするためにも誘電体部材13は配置した方がよい。
【0039】
基板支持部18には、整合器61を介して高周波電源60が接続されている。整合器61は、インピーダンス整合回路を有する。インピーダンス整合回路は、高周波電源60の出力インピーダンスとプラズマ側の負荷インピーダンスとを整合させるように構成される。高周波電源60から供給される高周波の周波数は60MHz以下の周波数である。高周波の周波数の一例としては、13.56MHzが挙げられる。なお、高周波電源60により、シャワーヘッド20に高周波を印加してもよい。
【0040】
係る構成のプラズマ処理装置1によれば、リアクタ10は、チャンバ36に連通し、排出口27から活性化ガスが導入される。活性化ガスは、シャワーヘッド20の導入口13a及び拡散室30dを通って処理空間30eに供給される。処理空間30eに到達した活性化ガスは高周波電源60からの高周波電力により容易に再解離し、これにより、活性化ガスを用いて基板Wを処理することができる。なお、高周波電源60を設けずに、直接活性化ガスを処理空間30eへ供給してもよい。
【0041】
制御部(制御装置)90は、プロセッサ91、メモリ92を有するコンピュータであり得る。制御部90は、演算部、記憶部、入力装置、表示装置、信号の入出力インターフェース等を備える。制御部90は、プラズマ源2を含むプラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部90では、入力装置を用いて、オペレータがプラズマ処理装置1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができる。また、制御部90では、表示装置により、プラズマ処理装置1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御部90のメモリ92には、制御プログラム及びレシピデータが格納されている。制御プログラムは、プラズマ処理装置1で各種処理を実行するために、制御部90のプロセッサ91によって実行される。プロセッサ91は、制御プログラムを実行し、レシピデータに従ってプラズマ処理装置1の各部を制御する。これにより、NFガス、ClFガス等のフッ素含有ガスを用いたクリーニング処理、成膜処理、エッチング処理、その他の種々のプラズマ処理がプラズマ処理装置1で実行され得る。
【0042】
[プラズマ源のその他の構成例]
プラズマ源2のその他の構成例について、図4及び図5を参照して説明する。図4(a)は従来のプラズマ源102の構成例bを示し、図4(b)は実施形態に係るプラズマ2源2の構成例2を示す。図5は、実施形態に係るプラズマ源2の構成例3を示す。
【0043】
図4(a)の従来のプラズマ源102の構成例bでは、アルミニウムにより構成されたチャンバ136の上壁の供給口128から処理ガスを導入する。チャンバ136は、供給口128から分岐する複数のプラズマ生成流路R1、R2を形成するように構成される。プラズマ生成流路R1、R2は、ガス流れの上流側から分岐し、ガスが分岐した環状のガス流路又は2本以上のガス流路を流れ、下流側で合流する。
【0044】
従来のプラズマ源102の構成例bでは、チャンバ136は、プラズマ生成空間30sの内部に大気空間30pを有するように構成されている。チャンバ136に巻かれた複数のコイル33a、33bに高周波電力を印加する。コイル33a、33bに印加された高周波電力は、誘電体窓32a、32bを透過してチャンバ136内のプラズマ生成空間30sに供給され、処理ガスをプラズマ化する。
【0045】
供給口128から供給されたガスの滞留時間が長くなったり、ガスの密度が高くなったりしてフッ化し易いガスの下流側の排出口127の近傍(例えばA領域)では、チャンバ136のアルミニウムの壁にフッ素成分が入り込み、パーティクルの発生原因となる。
【0046】
そこで、図4(b)の本実施形態のプラズマ源2の構成例2では、チャンバ36は、イットリア焼結体のセラミックス部材31とアルミニウムの金属部材30とから構成される。そして、供給口28から供給し、排出口27から排出する処理ガスの下流側の流れを画定するセラミックス部材31をイットリア焼結体により構成する。これにより、緻密なイットリア焼結体にはフッ素成分が入り込まず、パーティクルの発生を抑制できる。
【0047】
チャンバ36は、プラズマ生成空間30sの内部に大気空間30pを有するように構成されている。セラミックス部材31は、複数のプラズマ生成流路R1、R2の少なくとも合流部を形成するように構成されている。複数のプラズマ生成流路R1、R2の各々とセラミックス部材31との間に応力緩衝材34、35が設けられる。応力緩衝材34、35は、複数のプラズマ生成流路R1、R2において金属部材30の外壁とセラミックス部材31の内壁とにロウ付けされるように構成される。
【0048】
図5の本実施形態のプラズマ源2の構成例3では、本開示のチャンバ36は、アルミニウムの金属部材30とイットリア焼結体のセラミックス部材31とから構成される。金属部材30の構成は、図4(b)のプラズマ源2の構成例2と同じである。また、排出口27から排出する処理ガスの下流側の流れを画定するセラミックス部材31をイットリアの焼結体により構成する点も構成例2と同じである。これにより、パーティクルの発生を抑制できる。
【0049】
プラズマ生成空間30sは、内部に大気空間30pを有し、セラミックス部材31は、複数のプラズマ生成流路R1、R2の少なくとも合流部を形成するように構成されている。複数のプラズマ生成流路R1、R2の各々とセラミックス部材31との間に応力緩衝材34、35が設けられる。応力緩衝材34、35は、複数のプラズマ生成流路R1、R2において金属部材30とセラミックス部材31とにロウ付けされるように構成される。
【0050】
図4(b)のプラズマ源2の構成例2と異なる点の一つは、セラミックス部材31の縦断面形状がY字になるようにセラミックス部材31の複数のプラズマ生成流路R3、R4が斜めに形成され、プラズマ生成流路R1、R2にそれぞれ連通している点である。斜めにプラズマ生成流路R3、R4を形成することで流路内の段差や角部を少なくしてガス流れを良くし、排出口27の近傍でより乱流や対流が生じにくい構造とすることができる。これにより、フッ素成分によるセラミックス部材31の劣化要因を更に減らし、パーティクルの発生をより抑制できる。
【0051】
更に図4(b)のプラズマ源2の構成例2と異なる他の点は、応力緩衝材34、35は、金属部材30の下端部とセラミックス部材31の上端部とにロウ付けされるように構成されている点である。この場合、応力緩衝材34、35の開口部34a、35aは、供給口28及び排出口27が開口する方向と垂直な方向に開口する。ただし、これに限らず、応力緩衝材34、35の開口部34a、35aは、供給口28及び排出口27が開口する方向に対して斜めに開口してもよい。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態に係るプラズマ源2及びプラズマ処理装置1によれば、ガス流れの下流側で、コンダクタンスが上がり、レジデンスタイムが上がる箇所に、イットリア焼結体のセラミックス部材31を設けることで耐腐食性を向上させ、効果的にパーティクルの発生を抑制することができる。
【0053】
今回開示された実施形態に係るプラズマ源及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…プラズマ処理装置
2…プラズマ源
10…リアクタ
18…基板支持部
20…シャワーヘッド
28…供給口
30…金属部材
31…セラミックス部材
34…応力緩衝材
36…チャンバ
図1
図2
図3
図4
図5