(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071095
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 49/06 20060101AFI20230515BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20230515BHJP
B65G 21/20 20060101ALI20230515BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20230515BHJP
【FI】
B65G49/06 Z
B65G54/02
B65G21/20 A
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183705
(22)【出願日】2021-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】永田 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 傑之
(72)【発明者】
【氏名】梅原 政司
【テーマコード(参考)】
3F021
3F025
5F131
【Fターム(参考)】
3F021AA01
3F021BA02
3F021CA06
3F025BA06
3F025BA08
3F025BC01
3F025BC04
3F025BC06
3F025BC10
5F131AA02
5F131CA12
5F131DA05
5F131DA22
5F131DA23
5F131DA42
5F131DB12
5F131DB62
5F131DB72
5F131GA14
5F131HA09
5F131HA33
5F131HA35
5F131JA08
5F131JA16
5F131JA24
(57)【要約】
【課題】搬送トレイを接触支持する搬送部の部分での摩耗粉の発生を可及的に抑制することができる構成を持つ搬送装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバPc,Lc,Vc1~Vcn,Bc内で搬送路Tp1,Tp2に沿って被処理基板Swが配置される搬送トレイTrを搬送するための本発明の搬送装置TM
1は、搬送路に沿った搬送トレイの移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する重力加速度方向をZ軸方向とし、搬送トレイを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向への移動を案内する第1案内部4と、第1案内部によりその重量の一部が牽引された搬送トレイの残余の重量を接触支持してX軸方向前方に搬送トレイを搬送する搬送部5とを備え、搬送トレイを接触支持する搬送部の部分がZ軸方向の自由度のみを制限するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内で搬送路に沿って被処理基板が配置される搬送トレイを搬送するための搬送装置であって、
搬送路に沿った搬送トレイの移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する重力加速度方向をZ軸方向とし、搬送トレイを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向への移動を案内する第1案内部と、第1案内部によりその重量の一部が牽引された搬送トレイの残量の重量を接触支持してX軸方向前方に搬送トレイを搬送する搬送部とを備えるものにおいて、
搬送トレイを接触支持する搬送部の部分がZ軸方向の自由度のみを制限するように構成されることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記搬送部の部分が前記搬送トレイのZ軸方向下面に点接触する転動体で構成されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送トレイのZ軸方向下部にて非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向への移動を案内する第2案内部を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第2案内部は、前記搬送トレイの下部に設けた一方の磁石と、この一方の磁石とZ軸方向上方から引き合うように前記真空チャンバ内で前記搬送路に沿って設けた他方の磁石とを備えることを特徴とする請求項3記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内で搬送路に沿って被処理基板が配置される搬送トレイを搬送するための搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記種の搬送装置は、例えば特許文献1で知られている。このものは、搬送路に沿った搬送トレイの移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する重力加速度方向をZ軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とし、搬送トレイを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向への移動を案内する案内部(第1案内部)と、搬送トレイを接触支持して搬送する搬送部とを備える。案内部としては、搬送トレイの上部に設けられる第1磁石と、この第1磁石からZ軸方向上方に間隔を置いて、且つ、第1磁石と引き合うように真空チャンバ内で搬送路に沿って設けられる第2磁石とを備えるものが一般に使用される。他方、搬送部としては、搬送トレイのZ軸方向下面にX軸方向にのびるように設けた円筒状のレール部材に係合する所定曲率で湾曲した凹溝を設けた搬送ローラを備えるものが一般に使用される。そして、搬送トレイのレール部材を介して搬送ローラで搬送トレイの下部を接触支持し、搬送ローラの回転によりその上部を案内部でガイドしながらX軸方向前方へと搬送トレイが搬送される。
【0003】
上記搬送装置の搬送部では、通常、摩耗粉(発塵)の抑制を目的として、案内部に搬送トレイの重量(基板が配置されている場合には、基板重量も含む)の一部を牽引させることで、搬送トレイの残余の重量を接触支持する搬送ローラに印加する面圧及び荷重を軽減させている。これと同時に、搬送部の搬送ローラと共にY軸方向の自由度等について制限する構成となっている。つまり、この搬送装置によって搬送トレイを搬送する際、案内部が搬送トレイに対し、Z軸方向上下を軸にした回転(ヨー)、X軸方向前後を軸にした回転(ロール)やY軸方向の移動について、搬送トレイの上部においてその移動をある範囲に制限する(移動の自由度を制限する)構成となっており、同様に搬送ローラも搬送トレイの下部において、Z軸方向上下を軸にした回転(ヨー)、X軸方向前後を軸にした回転(ロール)やY軸方向の移動について、その移動をある範囲に制限する構成となっている。なお、Z軸方向の移動とY軸方向前後を軸にした回転(ピッチング)の自由度については、搬送ローラがその移動の制限する構成となっており、案内部は搬送ローラに印加する面圧ならびに荷重を軽減させる効果のみを奏する構成となっている。
【0004】
上記搬送部の構成では、X軸或いはZ軸方向前後を軸にした搬送トレイの回転やY軸方向左右の移動の自由度に一定の制限を加えることができる(即ち、搬送トレイの下部の搬送ローラからの逸脱を防止することができる)が、搬送トレイ下部における移動の自由度の制限は、レール部材と搬送ローラの凹溝等による機械的な係合要素を用いる構成である。このため、搬送ローラの凹溝内では搬送トレイの移動に伴って係合部材がY軸方向左右に滑り移動する場合があり、このときの滑り摩擦に伴って係合部材と搬送ローラの回転に伴って凹溝内で摩耗粉を発生させてしまうという問題がある。特に、常時、Z軸方向に対して所定角度で搬送トレイを傾斜させて搬送させるような場合にはより顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、搬送トレイを接触支持する搬送部の部分での摩耗粉の発生を可及的に抑制することができる構成を持つ搬送装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内で搬送路に沿って被処理基板が配置される搬送トレイを搬送するための本発明の搬送装置は、搬送路に沿った搬送トレイの移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する重力加速度方向をZ軸方向とし、搬送トレイを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向への移動を案内する第1案内部と、第1案内部によりその重量の一部が牽引された搬送トレイの残余の重量を接触支持してX軸方向前方に搬送トレイを搬送する搬送部とを備え、搬送トレイを接触支持する搬送部の部分がZ軸方向の自由度のみを制限するように構成されることを特徴とする。この場合、例えば、前記搬送部の部分を前記搬送トレイのZ軸方向下面に点接触する転動体で構成することができる。
【0008】
以上によれば、搬送部の部分を例えば球体などの転動体で構成すると、搬送トレイの上部にて第1案内部でガイド案内しながら搬送トレイを搬送する際に、搬送トレイにX軸方向前後を軸にした搬送トレイの回転(ロール)やY軸方向左右の移動の自由度があっても、搬送部の部分では転がり摩擦しか発生しないため、上記従来例のような滑り摩擦に伴う摩耗粉の発生を可及的に抑制することができる。
【0009】
本発明においては、前記搬送トレイのZ軸方向下部にて非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向への移動を案内する第2案内部を更に備える構成を採用することができる。これにより、第1案内部により搬送トレイの重量の一部が牽引されることに加えて、第2案内部により搬送部で接触支持される搬送トレイの残余の重量の一部もまた牽引されることで、搬送トレイを接触支持する搬送部の部分に加わる搬送トレイの荷重を軽減でき、摩擦に伴う摩耗粉の発生を一層抑制することができる。この場合、前記第2案内部は、前記搬送トレイの下部に設けた一方の磁石と、この一方の磁石とZ軸方向上方から引き合うように前記真空チャンバ内で前記搬送路に沿って設けた他方の磁石とを備える構成を採用すれば、搬送トレイの下部におけるX軸方向前後を軸にした搬送トレイの回転(ロール)やY軸方向左右の移動の自由度を制限でき、摩擦に伴う摩耗粉の発生を一層抑制することができる。なお、本発明において、搬送トレイの「Z軸方向下部」は、Z軸方向下端部のみを指すものではなく、搬送部で接触支持された搬送トレイの重心よりZ軸方向下方に位置する部分をいう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の搬送装置を備えるインライン式の真空処理装置の縦断面図。
【
図2】
図1に示すインライン式の真空処理装置の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、被処理基板をフラットパネルディスプレイの製造に利用される大面積のガラス基板(以下、「基板Sw」という)とし、基板Swの一方の面(処理面)に成膜処理、熱処理、エッチング処理といった各種の真空処理を施すことができるインライン式の真空処理装置に適用したものを例に、真空チャンバ内で搬送路に沿って基板Swが配置される搬送トレイTrを搬送するための本発明の搬送装置TM1の実施形態を説明する。以下においては、搬送路Tp1,Tp2に沿った搬送トレイTrの移動方向をX軸方向、X軸方向に直交する重力加速度方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とする。また、搬送トレイTrにセットされた基板Swの一方の面(処理面)がY軸方向一方を向く搬送トレイTr(及び基板Sw)の姿勢を起立姿勢(Z軸に対して所定角度で搬送トレイTrが傾斜する姿勢も含む)、搬送トレイTrにセットされた基板Swの処理面がZ軸方向上方を向く搬送トレイTr(及び基板Sw)の姿勢を水平姿勢とする。
【0012】
図1~
図3を参照して、インライン式の真空処理装置Vmは、図外の搬送ロボットにより処理前の基板Swを水平姿勢で搬送トレイTrの一方の面に配置し、または、水平姿勢の搬送トレイTrから処理済みの基板Swを取り出すためのポジションチャンバPcを備える。搬送トレイTrは、基板Swより一回り大きな輪郭の板状体11で構成され、板状体11には、起立姿勢にしたときに基板Swの下辺が当接する基板受け部12と、板状体11に対して基板Swの縁部を局所的に押圧するクランプなどの押圧部(図示せず)とが設けられ、真空処理の間、起立姿勢の基板Swを搬送トレイTrに保持することができる。基板Swに対する真空処理によっては、マスクプレートが基板Swと共に取り付けられるようにしてもよい。このような搬送トレイTrとしては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0013】
大気雰囲気に維持されるポジションチャンバPcには、他方の面側から搬送トレイTrを保持した状態で傾動自在な傾動部2が備えられ、水平姿勢と起立姿勢との間で搬送トレイTrの姿勢を変更することができる。傾動部2は保持板21を備え、保持板21の所定位置には、特に図示して説明しないが、バキュームチャックなどの保持機構が設けられ、搬送トレイTrを起立姿勢にしたときでも保持板21から基板Swが離脱しないようにしている。保持板21には、X軸方向に間隔を置いて立設されて、単軸ロボットなどの機構(図示せず)によりZ軸方向上下に同期して伸縮自在な2本のフレーム22に設けた回転軸23が連結され、モータMtにより回転軸23を一方向に回転駆動すると、保持板21が回転軸23回りに回転して搬送トレイTrを傾動するようにしている。各フレーム22の下端は、Y軸方向にのびるようにポジションチャンバPcに設けた単軸ロボットの移動機構24に連結され、Y軸方向左右に往復動自在となっている。
【0014】
ポジションチャンバPcにて水平姿勢の搬送トレイTrに基板Swが配置されると、傾動部2は、搬送トレイTrを持ち上げながら回転して搬送トレイTrを起立姿勢とし、移動機構24により後述の搬送部のZ軸方向上方の位置までY軸方向一方に移動した後、搬送トレイTrを差し込むように搬送部へと受け渡す。一方、後述の搬送部から処理済みの基板Swがある搬送トレイTrを受け取るときには、傾動部2は、他方の面側から搬送トレイTrを保持した後、Z軸方向上方に引き抜くように起立姿勢の搬送トレイTrを持ち上げた後、搬送トレイTrを持ち下げながら搬送トレイTrを回転させて水平姿勢に変更してY軸方向他方に所定位置まで移動し、搬送トレイTrからの処理済みの基板Swの回収が可能となる。
【0015】
ポジションチャンバPcのX軸方向前方には、ゲートバルブGv1を介してロードロックチャンバLcが連設されている。ロードロックチャンバLcには、特に図示して説明しないが、真空ポンプからの排気管とベントガスを導入するベントガスラインとが夫々接続され、ロードロックチャンバLcを真空雰囲気と大気雰囲気とに適宜切り換えることができる。ロードロックチャンバLcのX軸方向前方には、基板Swの処理面に対して実施しようとする各種の真空処理に応じた数の処理チャンバVc1~VcnがゲートバルブGv2,Gvnを介して順次連設されている。各処理チャンバVc1,Vcnは、X軸方向に沿ってのびる隔離壁31によってY軸方向で左右2室に隔絶され、各室31a,31bには、例えば、スパッタリングカソードといった各種の真空処理の実施に必要な装置32が夫々設けられている。そして、基板Swの処理面がY軸方向一方(
図2中、下方)を向く起立姿勢で搬送トレイTrが各処理チャンバVc1,Vcnの各室31a,31bを夫々通過する間に、基板Swの処理面に対し各種の真空処理が施される。X軸方向前方で最下流側に位置する処理チャンバVcnにはターンバックチャンバBcが連設されている。これらポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc、処理チャンバVc1~Vcn及びターンバックチャンバBcが、本実施形態の真空チャンバを構成する。
【0016】
ターンバックチャンバBcには、特に図示して説明しないが、上面に搬送ローラを設けたY軸方向(
図2中、上下方向)に移動自在な移動ステージが設けられ、処理チャンバVcnのY軸方向左側の室31aから受け取った搬送トレイTrを再度処理チャンバVcnのY軸方向右側の室31bに戻すことができる。そして、ポジションチャンバPcとターンバックチャンバBcとの間でX軸方向にのびる2本の搬送路Tp1,Tp2に沿って搬送トレイTrを起立姿勢で夫々搬送できるように本実施形態の搬送装置TM
1が設けられている。以下において、互いにX軸方向に連設されたポジションチャンバPcからロードロックチャンバLc、各処理チャンバVc1,VcnのY軸方向左側の室31aを経てターンバックチャンバBcに通じる、搬送トレイTrがX軸方向前方(
図1,2中、左側から右側)に搬送されるものを行き搬送路Tp1、逆に、ターンバックチャンバTcからY軸方向右側の室31b、ロードロックチャンバLcを経てポジションチャンバPcに通じる、搬送トレイTrがX軸方向後方(
図1中、右側から左側)に搬送されるものを戻り搬送路Tp2とする。
【0017】
搬送装置TM1は、起立姿勢の搬送トレイTrを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態で、X軸方向前方または後方への移動を案内する第1案内部4と、第1案内部4によりその重量の一部が牽引された搬送トレイTrの残余の重量を接触支持してX軸方向前方または後方に搬送トレイTrを搬送する搬送部5と、搬送トレイTrのZ軸方向下部にて非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向前方または後方への移動を案内する第2案内部6とを備える。第1案内部4は、搬送トレイTrの板状体11のZ軸方向上面にその上辺に沿って取り付けたX軸方向に長手の第1磁石41と、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vcn内のZ軸方向上部に夫々配置した第2磁石42とを備える。第1磁石41と第2磁石42とは、その対向面の極性が異なるように着磁され、これにより、搬送トレイTrを非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向前後への移動を夫々案内する。なお、第1磁石41と第2磁石42とはY軸方向に間隔を置いて複数列で設けることもでき、この場合には、第1磁石41と第2磁石42との互いに向かい合うものの極性を交互に変えることが好ましい。
【0018】
搬送部5は、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vcn内の下部にX軸方向に間隔を置いて複数設けられる転動体としての搬送コロ51を備える。各搬送コロ51は、ポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vcn内の所定位置に夫々軸支される軸体51aと、各軸体51aに夫々外嵌されて搬送トレイTrのZ軸方向下面に接触する車輪部51bとで構成される。この場合、単一の軸体51aには、Y軸方向に間隔を置いて少なくとも2個の車輪部51bが取り付けられ、車輪部51bの先端はまた、径方向外方に向かって先細りである楕円状に形成され、車輪部51bが搬送トレイTrのZ軸方向の下面に点接触するようにしている。本実施形態では、各搬送コロ51が、Z軸方向の自由度のみを制限した状態で搬送トレイTrを接触支持する搬送部5の部分を構成する。特に図示して説明しないが、各搬送コロ51の軸体51aには、プーリー、歯車、駆動ベルトやモータといった公知の動力伝達機構が連結され、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2毎に各搬送コロ51が同期して同方向に回転駆動される。
【0019】
第2案内部6は、搬送トレイTrのZ軸方向下部に設けた第3磁石(一方の磁石)61と、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vcn内の下部に夫々配置した第4磁石62とを備える。搬送トレイTrの板状体11には、基板Swが配置される一方の面に背向する他方の面側(
図3中、左側)でその下端にその外方に向けて延出させて支持板部13が形成され、支持板部13のZ軸方向上面に第3磁石61が設けられている。他方、行き搬送路Tp1及び戻り搬送路Tp2に沿ってポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vcn内のZ軸方向下部には、搬送トレイTrの支持板部13にZ軸方向に間隔を置いて対峙する水平壁部63aを持つ支持壁63がX軸方向に沿ってのびるように夫々設けられ、水平壁部63aの下面に第4磁石62が設けられている。第3磁石61と第4磁石62とは、その対向面の極性が異なるように着磁され、これにより、搬送トレイTrのZ軸方向下部を非接触でZ軸方向上方に牽引した状態でX軸方向前後への移動を夫々案内する。なお、第3磁石61と第4磁石62とは、上記同様、Y軸方向に間隔を置いて複数列で設けることもでき、この場合には、第3磁石61と第4磁石62との互いに向かい合うものの極性を交互に変えることが好ましい。また、搬送部5に対する搬送トレイTrの受け渡しまたは受け取りの際に、第3磁石61と第4磁石64とが干渉する場合には、ポジションチャンバPc内の支持壁63をY軸方向左右に一体に移動自在に構成することが好ましい。
【0020】
以上の実施形態によれば、搬送トレイTrをX軸方向前後に搬送する際、搬送トレイTrの下面と搬送部5の部分として、転動体である点接触の搬送コロ51を用いたことから、転動体と搬送トレイTr側の軌道面との間の滑り摩擦が発生しないため、上記従来例のような滑り摩擦に伴う摩耗粉の発生を可及的に抑制することができる。しかも、第1案内部4によって搬送トレイTrの重量の一部が牽引されることに加えて、第2案内部6によって、搬送コロ51で接触支持される搬送トレイTrの残余の重量の一部もまた牽引されることで、各搬送コロ51に加わる搬送トレイTrの荷重をより一層軽減することができ、その上、第2案内部6によって搬送トレイTrの下部におけるX軸方向前後を軸にした搬送トレイTrの回転(ロール)やY軸方向左右の移動の自由度が制限されることで、摩擦に伴う摩耗粉の発生をより一層抑制することができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、搬送部5として、搬送トレイTrのZ軸方向の下面に点接触して支持する搬送コロ51を備えるものを例に説明したが、Z軸方向の自由度のみを制限した状態で搬送トレイTrを接触支持できるものであれば、これに限定されるものではない。例えば、変形例に係る搬送装置TM
2では、同一の部材、要素に同一の符号を付した
図4に示すように、搬送トレイTrのZ軸方向下面に対峙させてポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vcn内にはレール板7が設けられ、レール板7のZ軸方向上面には、X軸方向及びY軸方向に沿って半球状の球受け部71が複数個設けられ、各球受け部71には、転動自在に球体72に格納されている。そして、転動体としての各球体72によりZ軸方向の自由度のみを制限した状態で搬送トレイTrを接触支持することができる。この場合、特に図示して説明しないが、搬送トレイTrをX軸方向前後に搬送する駆動手段が別途設けられ、このような駆動手段としては、推進コイルを設けた公知のリニアモータなどを利用することができる。
【0022】
また、上記実施形態では、第1案内部4と第2案内部6として、互いに引き合うように配置した一対の磁石41,42,61,62を備えるものを例に説明したが、第1案内部4として、搬送トレイTrの重量(基板Sw重量も含む)の一部を牽引できると共に、少なくともX軸方向の自由度、Z軸方向上下の移動とY軸方向左右を軸とした回転(ピッチング)の自由度がある程度制限できるものであれば、これに限定されるものではない。特に図示して説明しないが、例えば、ポジションチャンバPc、ロードロックチャンバLc及び各処理チャンバVc1,Vcn内上部にレール部材を設け、このレール部材に摺動自在に係合するスライダに設け、スライダにX軸方向に間隔を置いて吊設した複数本のワイヤで送トレイTrを牽引した状態で案内するようにしてもよい。他方、第2案内部6もまた、特に、X軸方向前後を軸にした搬送トレイTrの回転(ロール)やY軸方向左右の移動の自由度がある程度制限できるものであれば、これに限定されるものではなく、上記第1案内部と同様の構成を採用するようにしてもよい。
【0023】
更に、上記実施形態では、搬送部5に備わる転動体として単一の軸体51aに少なくとも2個の車輪部51bを設けた搬送コロ51を例に説明したが、これに限定されるものでなく、1個の車輪部とした構成でも不都合はない。また、搬送トレイTrのZ軸方向の自由度を制限すると共に搬送トレイTrへX軸方向の駆動力を転がり接触による摩擦力にて伝達されるように構成されるのであれば不都合はない。つまり、滑り接触ではなく転がり接触で駆動可能となるための垂直抗力が第1案内部4によりその重量の一部が牽引された搬送トレイTrの残余の重量として確保され、これに必要な安全率を付与した構成とすれば理想的な実施形態となる。更に、上記実施形態では、車輪部51bの先端が搬送トレイTrのZ軸方向の下面に点接触するようにし、その点接触部位は、軸体51aを経由して回転駆動力が伝達される機構としたが、この車輪部と軸体との嵌合部に例えば等速ジョイントを用いれば、確実に転がり接触によって搬送トレイTrへ駆動力を伝達することもできるため、変形例に係る搬送装置TM2で述べた軸方向前後に搬送する別途の駆動手段を設ける必要が無い構成とすることもできる。また、上記実施形態では、搬送トレイTrの板状体11に、基板Swが配置される一方の面に背向する他方の面側でその下端に支持板部13を形成し、支持板部13のZ軸方向上面に第3磁石61を設けたものを例に説明したが、第3磁石61を配置できれば、その形態は問わない。例えば、搬送トレイTrの板状体11に、基板Swが配置される一方の面側に支持板部13を形成し、その上面に第3磁石61を配置してもよい。
【符号の説明】
【0024】
TM1,TM2…搬送装置、Sw…基板(被処理基板)、Tp1,Tp2…搬送路、Tr…搬送トレイ、Pc…ポジションチャンバ(真空チャンバ)、Lc…ロードロックチャンバ(真空チャンバ)、Vc1~Vcn…処理チャンバ(真空チャンバ)、Bc…ターンバックチャンバ(真空チャンバ)、4…第1案内部、5…搬送部、51…搬送コロ(転動体)、6…第2案内部、61…第3磁石(一方の磁石)、62…第4磁石(他方の磁石)。