(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071182
(43)【公開日】2023-05-22
(54)【発明の名称】複写牽制画線印刷物及び複写牽制画線印刷物の作成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20230515BHJP
B42D 25/337 20140101ALI20230515BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/337
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2022203847
(22)【出願日】2022-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB10
2C005JB19
2C005JB22
2C005JB25
2H113AA01
2H113AA06
2H113BA00
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA05
2H113BA09
2H113CA34
2H113CA36
2H113CA39
2H113CA40
2H113CA44
2H113EA06
2H113FA43
2H113FA56
(57)【要約】
【課題】
本発明は、複写機で複写した場合において、可視画像が不可視画像の濃度以下となり視認不可能となることで、原本と複写物を区別することができるとともに、原本から複写されたことを証明できる複写牽制画線印刷物を提供する。
【解決手段】
本発明は、基材上に、画線単位の中心を境に対向するように配置された第1画線要素及び第2画線要素の少なくとも一方の要素と、第3画線要素及び第4画線要素の少なくとも一方の要素と、を備えた画線単位が複数マトリクス状に配置されており、第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素及び第4画線要素が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素を配置したことを特徴とする複写牽制画線印刷物である。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、第1の方向に沿って、画線単位の中心を境に対向するように配置された第1画線要素及び第2画線要素の少なくとも一方の要素と、前記第1の方向と異なる第2の方向に沿って、前記中心を境に対向するように配置された第3画線要素及び第4画線要素の少なくとも一方の要素と、を備えた前記画線単位が、一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、
各々の前記画線単位における前記第1画線要素と前記第2画線要素は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、前記第1画線要素により第1不可視画像のポジ画像又はネガ画像が形成され、前記第2画線要素及び前記第1画線要素により形成された第1不可視画像のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第1不可視画像のネガ画像又はポジ画像が形成され、
各々の前記画線単位における前記第3画線要素と前記第4画線要素は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、前記第3画線要素により第2不可視画像のポジ画像又はネガ画像が形成され、前記第4画線要素及び前記第3画線要素により形成された第2不可視画像のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第2不可視画像のネガ画像又はポジ画像が形成され、
前記複数マトリクス状に配列された少なくとも一つの前記画線単位は、前記第1画線要素、前記第2画線要素、前記第3画線要素及び前記第4画線要素が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素を1個以上有しており、
前記第5画線要素は、前記第1画線要素及び前記第2画線要素において、判別具を重ねた際に前記第1不可視画像を可視化する前記判別具の中心線上からずれた位置に中心を有するとともに、前記第3画線要素及び前記第4画線要素において、判別具を重ねた際に前記第2不可視画像を可視化する前記判別具の中心線上からずれた位置に中心を有し、
前記第5画線要素により可視画像が形成され、前記可視画像は、前記複写機で複写した場合に、前記第5画線要素が縮退し、視認不可能となることを特徴とする複写牽制画線印刷物。
【請求項2】
前記第5画線要素が、一つの前記画線単位に2個以上配置された場合において、前記2個以上の前記第5画線要素の間隔が、前記第5画線要素の幅以上で配置されていることを特徴とする請求項1記載の複写牽制画線印刷物。
【請求項3】
前記第5画線要素において、前記複写機で再現不可能な形状は、前記第5画線要素の最大内接円の直径が50μm以下となる形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複写牽制画線印刷物。
【請求項4】
請求項1記載の複写牽制画線印刷物を、画像入力手段、配置設定手段、画像データ作成手段、印刷手段を有する作製装置を用いて作成する方法であって、
前記画像入力手段によって、前記可視画像の基となる可視画像データ、前記第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像の基となる第2の不可視画像データを入力する工程と、
前記配置設定手段によって、前記画像入力手段より入力された各々の画像データに対し、前記第1の不可視画像データのポジ画像及び前記第1の不可視画像データのネガ画像を作成するための第1画線要素と第2画線要素、前記第2の不可視画像データのポジ画像及び前記第2の不可視画像データのネガ画像を作成するための第3画線要素と第4画線要素、前記可視画像データを作成するための第5画線要素の各々の要素の形状の設定を行い、形状が設定された前記第1画線要素、前記第2画線要素、前記第3画線要素、前記第4画線要素を配置した前記単位画線を設定し、設定された前記単位画線を規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置し、かつ、前記第1画線要素、前記第2画線要素、前記第3画線要素及び前記第4画線要素が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の前記第5画線要素を1個以上配置する工程と、
前記画像データ作成手段によって、前記配置設定手段により設定された前記第1の不可視画像データのポジ画像及び前記第1の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作成し、前記第2の不可視画像データのポジ画像及び前記第2の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作成し、前記可視画像データの画像を作成し、前記第1の不可視画像データ、前記第2の不可視画像データ及び前記可視画像データを合成する工程と、
前記印刷手段によって、前記合成された画像データを元に基材に印刷する工程によって作製することを特徴とする複写牽制画線印刷物の作成方法。
【請求項5】
前記配置設定手段は、前記第5画線要素を、一つの前記画線単位に2個以上配置する場合に、互いの前記第5画線要素の間隔を前記第5の画線要素の幅以上の間隔で配置することを特徴とする請求項4記載の複写牽制画線印刷物の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書類、重要書類等の偽造防止が必要とされる印刷物に用いることができる、複写牽制画線印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、証明書類等の貴重印刷物では、偽造防止効果を与えるために様々な技術が適用されているが、近年、カラー複写機の高画質化及びカラー製版技術のコンピュータ化に伴い、証明書類等の貴重印刷物の偽造が多様化・高度化する傾向にある。このため、証明書類等の貴重印刷物の偽造防止策も、多様化・高度化することにより対応してきた。
【0003】
しかし、その一方で、偽造防止策に費やす製造コストも上がり、偽造防止効果を確認する環境を整えるために特殊な機械・器具を備える専用設備の導入が必要となる等、証明書類等の貴重印刷物の真偽判定についても、高コストとなる場合があった。
【0004】
低コストで証明書類等の貴重印刷物の真偽判定を可能にする有用な方法として、万線フィルタやレンチキュラーレンズ等の判別具を用い真偽判定を行う技術が知られている。この技術は、人の目では判別できない不可視画像が印刷されている印刷物の上に、判別具を重ねることで不可視画像を可視画像として発現させるものである。
【0005】
前述の判別具を用い真偽判定を行う技術として、本出願人は、特許文献1において、第1の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第1の画線及び第2の画線と、第1の方向と直交する第2の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第3の画線及び第4の画線とを有する画線要素が、一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、各々の画線要素における第1の画線と第2の画線、第3の画線と第4の画線は、ネガポジの関係にあり、第1の画線及び/又は第2の画線により第1の不可視画像が形成され、第3の画線及び/又は第4の画線により第2の不可視画像が形成されることを特徴とする偽造防止用印刷物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、単一の判別具により鮮明に発現可能となる不可視画像を形成することができ、不可視画像を発現させた時に可視画像によって視認性が阻害されない利点を有する。しかし、複写時において、不可視画像と可視画像の両者を再生することが可能となる場合があり、複写時において同一物が再現されるおそれがあった。
【0008】
特許文献1に記載の技術の具体的な課題について、
図1から
図6を用いて説明する。例えば、
図1に示す基材10上に模様4が形成された印刷物1を通常の可視条件において目視により観察すると、
図2に示されたように、任意の図形、文字、記号等からなる印刷模様3が視認される。そして、印刷物1上に判別具2を所定の角度(これを0度とする)を持って重ね合わせると、
図3(a)又は
図3(b)に示されたような第1の不可視画像5が可視画像となって発現する。また、印刷物1上に判別具2を所定の角度に対して90度を成す角度を持って重ね合わせると、
図4(a)又は
図4(b)に示されたような第2の不可視画像6が可視画像となって発現する。
【0009】
図5に、特許文献1に記載の技術に係る印刷模様3の一画線の構成を部分的に拡大して示す。特許文献1に記載の技術に係る印刷模様3は、縦横の寸法Sからなる画線ユニット7が、印刷物1の表面上においてマトリクス状に規則的に配置されて、印刷模様3を構成する。
【0010】
各画線ユニット7は、少なくとも3個以上の画線要素を備えている。画線要素A1と画線A2とは、対を成しており、相互にネガポジの関係にある。ネガポジの関係とは、たとえば、一方が黒(オン)のときは他方が白(オフ)、一方が有着色のときは他方が無着色であり、双方ともに黒、双方ともに白、双方ともに有着色又は双方ともに無着色であることがない等、双方が同じにならない関係である。そして、画線要素A1と画線要素A2とは、面積が同一である。
【0011】
このような画線要素A1と画線要素A2とが存在することで、通常の可視条件下では視認されず、画線要素A1のみにより第1の不可視画像(ネガ又はポジ)が、画線要素A2のみにより第1の不可視画像(画線要素A1のみにより形成される第1の不可視画像とネガポジの関係にあるもの)がそれぞれ形成されている。
【0012】
同様に、画線要素B1と画線要素B2とは、対を成しており、相互にネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一である。画線要素B1のみにより第2の不可視画像(ネガ又はポジ)が、画線要素B2のみにより第2の不可視画像(画線要素B1のみにより形成される第2の不可視画像とネガポジの関係にあるもの)がそれぞれ形成されている。
【0013】
画線要素Cは、可視画像を構成するものであり、不可視画像を形成する画線要素が存在する不可視画像領域F1外の領域である可視画像領域F2で、かつ、不可視画像を可視化する際に重ねる判別具2の中心線上からずれた位置に中心を有し、通常の視認状態において肉眼で視認される任意の図形及び文字等からなる可視画像を構成する。
【0014】
しかしながら、不可視画像を構成する画線要素A1、画線要素A2、画線要素B1及び画線要素B2は、判別具2を重ねる際に発現する画像を形成するものであり、可視画像を構成する画線要素Cは、通常の視認状態において肉眼で視認されるものである。このため、画線要素A1、画線要素A2、画線要素B1、画線要素B2及び画線要素Cは、いずれの画線要素ともある程度の画線幅、すなわち複写機により再現可能な大きさを有する必要がある。このため、
図6に示すように、複写時においては、原本である印刷物1の全ての画線要素が忠実に再現されるおそれがあり、原本である印刷物1と複写物8とを区別することが困難であるという課題があった。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、複写機で複写した場合において、可視画像が不可視画像の濃度以下となり視認不可能となることで、原本と複写物を区別することができるとともに、原本から複写されたことを証明できる複写牽制画線印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成を有する複写牽制画線印刷物によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の複写牽制画線印刷物及び複写牽制画線印刷物の作成方法を提供するものである。
【0017】
本発明は、基材上に、第1の方向に沿って、画線単位の中心を境に対向するように配置された第1画線要素及び第2画線要素の少なくとも一方の要素と、第1の方向と異なる第2の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第3画線要素及び第4画線要素の少なくとも一方の要素と、を備えた画線単位が、一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、各々の画線単位における第1画線要素と第2画線要素は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、第1画線要素により第1不可視画像のポジ画像又はネガ画像が形成され、第2画線要素及び第1画線要素により形成された第1不可視画像のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第1不可視画像のネガ画像又はポジ画像が形成され、各々の画線単位における第3画線要素と第4画線要素は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、第3画線要素により第2不可視画像のポジ画像又はネガ画像が形成され、第4画線要素及び第3画線要素により形成された第2不可視画像のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第2不可視画像のネガ画像又はポジ画像が形成され、複数マトリクス状に配列された少なくとも一つの画線単位は、第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素及び第4画線要素が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素を1個以上有しており、第5画線要素は、第1画線要素及び第2画線要素において、判別具を重ねた際に第1不可視画像を可視化する判別具の中心線上からずれた位置に中心を有するとともに、第3画線要素及び第4画線要素において、判別具を重ねた際に第2不可視画像を可視化する判別具の中心線上からずれた位置に中心を有し、第5画線要素により可視画像が形成され、可視画像は、複写機で複写した場合に、第5画線要素が縮退し、視認不可能となることを特徴とする複写牽制画線印刷物である。
【0018】
本発明は、第5画線要素が、一つの画線単位に2個以上配置された場合において、2個以上の第5画線要素の間隔が、第5画線要素の幅以上で配置されていることを特徴とする複写牽制画線印刷物である。
【0019】
本発明は、第5画線要素において、複写機で再現不可能な形状は、第5画線要素の最大内接円の直径が50μm以下となる形状であることを特徴とする複写牽制画線印刷物である。
【0020】
本発明は、複写牽制画線印刷物を、画像入力手段、配置設定手段、画像データ作成手段、印刷手段を有する作製装置を用いて作成する方法であって、画像入力手段によって、可視画像の基となる可視画像データ、第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像の基となる第2の不可視画像データを入力する工程と、配置設定手段によって、画像入力手段より入力された各々の画像データに対し、第1の不可視画像データのポジ画像及び第1の不可視画像データのネガ画像を作成するための第1画線要素と第2画線要素、第2の不可視画像データのポジ画像及び第2の不可視画像データのネガ画像を作成するための第3画線要素と第4画線要素、可視画像データを作成するための第5画線要素の各々の要素の形状の設定を行い、形状が設定された第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素、第4画線要素を配置した単位画線を設定し、設定された単位画線を規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置し、かつ、第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素及び第4画線要素が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素を1個以上配置する工程と、画像データ作成手段によって、配置設定手段により設定された第1の不可視画像データのポジ画像及び第1の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作成し、第2の不可視画像データのポジ画像及び第2の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作成し、可視画像データの画像を作成し、第1の不可視画像データ、第2の不可視画像データ及び可視画像データを合成する工程と、印刷手段によって、合成された画像データを元に基材に印刷する工程によって作製することを特徴とする複写牽制画線印刷物の作成方法である。
【0021】
本発明は、配置設定手段は、第5画線要素を、一つの画線単位に2個以上配置する場合に、互いの第5画線要素の間隔を第5の画線要素の幅以上の間隔で配置することを特徴とする請求項3記載の複写牽制画線印刷物の作成方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、複写機で複写した場合において、可視画像が不可視画像の濃度以下となり視認不可能となることで、原本と複写物を区別することができるとともに、原本から複写されたことを証明できる複写牽制画線印刷物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】従来技術の印刷物の模様(全体像)を示す図。
【
図3】従来技術の印刷物に判別具を載置し、第1の不可視画像が視認可能となった場合を示す図。
【
図4】従来技術の印刷物に判別具を載置し、第2の不可視画像が視認可能となった場合を示す図。
【
図5】従来技術の印刷物野原本において、模様を構成する画線ユニットを示す図。
【
図6】従来技術印刷物の原本及び複写物において、第1の不可視画像及び第2の不可視画像をそれぞれ可視化した場合を示す図。
【
図7】本発明の一実施態様である複写牽制画線印刷物の原本と複写物を示す図。
【
図8】本発明の一実施態様である複写牽制画線印刷物の原本と複写物に、判別具を載置した場合を示す図。
【
図9】本発明の一実施態様である複写牽制画線印刷物の原本と複写物に、判別具を
図8とは異なる角度で載置した場合を示す図。
【
図10】本発明の複写牽制画線印刷物の原本及び複写物における、模様の画線構成を示す図。
【
図11】本発明の複写牽制画線印刷物の原本において、模様を構成する画線単位の配置を示す図。
【
図12】本発明の複写牽制画線印刷物の原本において、模様を構成する画線単位を示す図。
【
図13】本発明の複写牽制画線印刷物の複写物において、模様を構成する画線単位を示す図。
【
図14】第5画線要素15に内接する最大内接円Tの直径Rの関係を示す図。
【
図15】本発明の複写牽制画線印刷物を作成する方法を示す一例図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施態様に係る複写牽制画線印刷物及び複写牽制画線印刷物の作成方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内であれば、その他の様々な実施態様が含まれる。
【0025】
本発明において、「不可視画像」は、通常の可視光のもとで、目視により視認することができない、あるいは極めて視認され難い画像を意味する。
【0026】
本発明において、「可視画像」は、通常の可視光のもとで、目視により視認することができる画像を意味する。
【0027】
本発明において、「面積が同一」は、印刷機、プリンタ等においてインキが転移される際に生じる(印刷に際して発生する)各画線要素の面積のばらつきの範囲内や、目視において各画線要素面積が同じであると判断し得る範囲内である場合を意味する。具体的には、要素Xの面積をA1とし、要素Yの面積をA2とした場合において、A2/A1が0.98~1.02、好ましくは0.99~1.01の範囲内である場合、本発明における「面積が同一」とする。
【0028】
<複写牽制画線印刷物>
本発明の第1実施態様に係る複写牽制画線印刷物は、「基材上に、第1の方向に沿って、画線単位の中心を境に対向するように配置された第1画線要素及び第2画線要素と、第1の方向と異なる第2の方向に沿って、画線単位の中心を境に対向するように配置された第3画線要素及び第4画線要素と、を有する画線単位が一定のピッチで複数マトリクス状に配置されており、各々の画線単位における第1画線要素と第2画線要素は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、第1画線要素により第1不可視画像のポジ画像又はネガ画像が形成され、第2画線要素により第1画線要素により形成された第1不可視画像のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第1不可視画像のネガ画像又はポジ画像が形成され、各々の画線単位における第3画線要素と第4画線要素は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、第3画線要素により第2不可視画像のポジ画像又はネガ画像が形成され、第4画線要素及び第3画線要素により形成された第2不可視画像のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第2不可視画像のネガ画像又はポジ画像が形成され、画線単位の少なくとも一部は、第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素及び第4画線要素が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素を1個以上有しており、第5画線要素は、第1画線要素及び第2画線要素において、判別具を重ねた際に第1不可視画像を可視化する第1可視化線上及び第2可視化線上からずれた位置に中心を有するとともに、第3画線要素及び第4画線要素において、判別具を重ねた際に第2不可視画像を可視化する第3可視化線上及び第4可視化線上からずれた位置に中心を有し、第5画線要素を2個以上有している場合、2個以上の第5画線要素は、互いに第5画線要素の幅以上の間隔で配置されており、第5画線要素により可視画像が形成され、可視画像は、複写機で複写した場合に、第5画線要素が縮退し、視認不可能となる、複写牽制画線印刷物。」である。
【0029】
図7から
図9は、第1実施態様に係る複写牽制画線印刷物Pの一実施態様を示すものである。複写牽制画線印刷物Pは、
図7(a)に示すように、全体に「JPN」に係る可視画像23、中央に「鳳凰」に係る可視画像23及び左下に「城」に係る可視画像23を備え、さらに各種の情報9が印字されたものである。一方で、複写牽制画線印刷物Pの複写物Qは、
図7(b)に示すように、印字された各種の情報9については複写されているが、原本である複写牽制画線印刷物Pに存在していた「JPN」に係る可視画像23、「鳳凰」に係る可視画像23及び「城」に係る可視画像23が視認不可能となっている。
【0030】
複写牽制画線印刷物Pは、
図8(a)に示すように、判別具2を重ねることにより、任意の位置に設けられた第1不可視画像21を可視化することができる。さらに、複写牽制画線印刷物Pの複写物Qについても、
図8(b)に示すように、判別具2を重ねることにより、原本である複写牽制画線印刷物Pと同様に第1不可視画像21を可視化することができる。
【0031】
複写牽制画線印刷物Pは、
図9(a)に示すように、
図8に示す判別具2を90°回転させて重ねることにより、任意の位置に設けられた第2不可視画像22を可視化することができる。さらに、複写牽制画線印刷物Pの複写物Qについても、
図9(b)に示すように、判別具2を重ねることにより、原本である複写牽制画線印刷物Pと同様に第2不可視画像22を可視化することができる。
【0032】
このように、本発明の第1実施態様に係る複写牽制画線印刷物Pは、原本に備わる可視画像23が複写により消えることで、原本の複写牽制画線印刷物Pと複写物Qの区別を容易に行うことができる。また、原本に備わる不可視画像(21、22)については、複写しても消えないことから、原本からの複写物Qであることを容易に立証することができる。
【0033】
図10は、本発明の第1実施態様に係る複写牽制画線印刷物Pに対する、印刷模様の一部を部分的に拡大したものである。
図10(a)は、本発明の第1実施態様に係る複写牽制画線印刷物Pにおける印刷模様3の一部を部分的に拡大したものであり、
図10(b)は、複写牽制画線印刷物Pの複写物Qにおける印刷模様3´の一部を部分的に拡大したものである。
【0034】
図11は、
図10をより詳細に示すため説明図であり、画線単位20を便宜的に示す一例図であり、pixel単位を表す線(実際の印刷物には印字されていない)を加えたものであり、一つの画線単位20を10pixel×10pixelとして説明するものである。なお、本明細書における画線単位20とは、第1画線要素11、第2画線要素12、第3画線要素13、第4画線要素14及び第5画線要素の各要素を少なくとも三つ以上の画線要素を備えている。
【0035】
図11は、縦に4個の画線単位20と横に5個の画線単位20がマトリクス状に配置された状態を示している。画線単位20の縦横の寸法は、特に限定されず、解像度に応じて適宜決定される。例えば、解像度を600dpiとして出力する場合、1画線単位は423μm×423μmとなり、この画線単位20により、1インチ当たり60線のピッチでマトリクス状に配置して、印刷模様を形成することになる。なお、マトリクス状を示す線は発明の説明の便宜上の仮想線であり、実際に印刷物上に記載されている線ではない。
【0036】
図11に示すように、複写牽制画線印刷物Pにおける印刷模様3は、基材10上に、第1画線要素11、第2画線要素12、第3画線要素13及び第4画線要素14と、を有する画線単位20が一定のピッチで複数マトリクス状に配置されて形成された画線により構成されたものである。
【0037】
各々の画線単位20における第1画線要素11と第2画線要素12は、対を成しており、互いにネガポジの関係にある。ネガポジの関係とは、たとえば、一方が黒(オン)のときは他方が白(オフ)、一方が有着色のときは他方が無着色であり、双方ともに黒、双方ともに白、双方ともに有着色又は双方ともに無着色であることがない等、双方が同じにならない関係である。また、第1画線要素11と第2画線要素12は、面積が同一である。そして、第1画線要素11により、通常の可視条件では視認されない第1不可視画像21のポジ画像又はネガ画像が形成され、第2画線要素12により第1画線要素11により形成された第1不可視画像21のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第1不可視画像21のネガ画像又はポジ画像が形成される。一例として、
図11においては、第1画線要素11は黒色で形成されており、斜線で示す第2画線要素12は白色で形成されている。
【0038】
各々の画線単位20における第3画線要素13と第4画線要素14は、対を成しており、互いにネガポジの関係にある。また、第3画線要素13と第4画線要素14は、面積が同一である。そして、第3画線要素13により、通常の可視条件では視認されない第2不可視画像22のポジ画像又はネガ画像が形成され、第4画線要素14により第3画線要素13により形成された第2不可視画像22のポジ画像又はネガ画像とネガポジの関係にある第2不可視画像22のネガ画像又はポジ画像が形成される。一例として、
図11においては、第3画線要素13は黒色で形成されており、斜線で示す第4画線要素14は白色で形成されている。
【0039】
そして、複数の画線単位20の少なくとも一部は、第1画線要素11、第2画線要素12、第3画線要素13及び第4画線要素14に加えて、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素15を1個以上有している。印刷模様において、第5画線要素15により可視画像23が形成され、可視画像23は、複写機で複写した場合に、第5画線要素15が縮退することで、視認不可能となる、
【0040】
第5画線要素15は、複写機で再現不可能な形状であって、具体的には、複写機において通常の複写処理を行った場合に縮退することで、第5画線要素15が消滅又は視認不可能な形状(大きさ・形状)となり、第5画線要素15により形成される可視画像23が再現されない又は視認が極めて困難な状態になる形状である。複写機の性能等によるが、例えば、第5画線要素15に内接する最大内接円Tの直径Rが50μm未満であると、通常の複写処理においては、複写機は第5画線要素15を認識することができないため、複写機により第5画線要素15が再現されることがない。一例として、第5画線要素15における最大内接円Tの直径Rの関係を
図14に示す。
図14(a)に示すように、第5画線要素15が円系の場合は、第5画線要素15の幅と最大内接円Tの直径Rは同一となる。また、
図14(b)に示す第5画線要素15がひし形、
図14(c)に示す第5画線要素15が正方形、
図14(d)に示す第5画線要素15が楕円系の場合における最大内接円Tの直径Rは、各図に示すとおりである。
【0041】
図10(b)に示すように、複写牽制画線印刷物Pの複写物Qにおける印刷模様3´において、第1画線要素11、第2画線要素12、第3画線要素13及び第4画線要素14は、いずれも原本である複写牽制画線印刷物Pの
図10(a)と同様の位置・形状で再現されている。しかしながら、第5画線要素15は、複写機で再現不可能な形状であることから、
図10(b)で示すように、第5画線要素15は複写により縮退し、第5画線要素15で構成されていた可視画像23は消滅又は視認が極めて困難な視認不可能な状態となっている。
【0042】
基材(10)としては、印刷に供されるものであれば特に限定されない。例えば、紙、プラスチックフィルム、木材、布帛、金属、ガラス、セラミックス、これらの複合体等が挙げられる。特に、紙、プラスチックフィルム、これらの複合体等の、複写機を用いて複写可能で複写物を製造し得るものが特に好ましい。
【0043】
第1不可視画像21、第2不可視画像22及び可視画像23としては、特に限定されず、それぞれ任意の模様、図柄、図形、文字等とすることができ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
第1画線要素11、第2画線要素12、第3画線要素13及び第4画線要素14の形状等としては、特に限定されず、それぞれ任意の形状(円、多角形、十字、L字等)等とすることができ、互いに同一であっても異なっていてもよい。大きさについても、不可視画像を形成し得るものであれば、特に限定されない。
【0045】
図12は、
図11において点線円で囲った画線単位20を拡大して示したものである。また、
図13は、
図12に示す画線単位20の複写後の状態を示すものである。
図12に示すように、画線単位20は、第1の方向51に沿って、画線単位20の中心40を境に対向するように配置された第1画線要素11及び第2画線要素12と、第1の方向51と異なる第2の方向52に沿って、画線単位20の中心40を境に対向するように配置された第3画線要素13及び第4画線要素14とを有している。
【0046】
図12において、第1の方向51は、画線単位20の左右の配列方向であり、第2の方向52は画線単位20の上下の配列方向である。なお、第1の方向51、第2の方向52は、互いに異なる方向であり、第1画線要素11及び第2画線要素12から形成される第1不可視画像21を判別具で視認可能とした際に、第3画線要素13及び第4画線要素14から形成される第2不可視画像22が視認可能となり第1不可視画像21の視認を妨げることがない方向となっていれば、特に限定されない。例えば、第1の方向51と第2の方向52は、互いに90°±45°の範囲となるようにすることができ、好ましくは90°±30°、より好ましくは90°±15°、更により好ましくは、直角又は目視において直角と視認し得る角である。
【0047】
第1画線要素11と第2画線要素12は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、第1画線要素11により第1不可視画像21のポジ画像又はネガ画像が形成され、第2画線要素12より第1不可視画像21のネガ画像又はポジ画像が形成されている。
【0048】
第3画線要素13と第4画線要素14は、互いにネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一であり、第3画線要素13により第2不可視画像22のポジ画像又はネガ画像が形成され、第4画線要素により第2不可視画像22のネガ画像又はポジ画像が形成されている。
【0049】
このような構成を有する画線単位20を、
図10(a)、
図11に示すように、基材上にマトリクス状に隙間なく連続的かつ規則的に配置する(印刷する)ことにより、複写牽制画線印刷物Pを構成することができる。複写牽制画線印刷物Pにおいて、第1画線要素11の総画線面積と第2画線要素12の総画線面積とが等しく、それぞれ対になっている画線要素同士がネガポジの関係にあることによって、第1不可視画像21を、通常の可視光のもとで、目視により視認することができない、あるいは極めて視認され難い状態とすることができる。第3画線要素13及び第4画線要素14についても同様の構成とすることで、第2不可視画像22を、通常の可視光のもとで、目視により視認することができない、あるいは極めて視認され難い状態とすることができる。
【0050】
本発明の複写牽制画線印刷物Pは、判別具2を第1不可視画像21又は第2不可視画像22を備えている印刷部分に重ね正面から観察することで、第1不可視画像21又は第2不可視画像22を目視により視認することが可能となる。
【0051】
本発明において、判別具2を重ねて不可視画像(21、22)を視認可能とする場合には、複写牽制画線印刷物Pと判別具2の相対的な位置関係により、第1不可視画像21又は第2不可視画像22のいずれかが視認可能となる。さらに、判別具を重ねて第1不可視画像21を視認可能とする場合には、複写牽制画線印刷物Pと判別具2の相対的な位置関係により、第1不可視画像21のネガ画像又は第1不可視画像21のポジ画像のいずれかが視認可能となる。また、判別具2を重ねて第2不可視画像22を視認可能とする場合には、複写牽制画線印刷物Pと判別具2の相対的な位置関係により、第2不可視画像22のネガ画像又は第2不可視画像22のポジ画像のいずれかが視認可能となる。
【0052】
本発明において用いられる判別具2は、本発明の複写牽制画線印刷物Pにおける不可視画像(21、22)を可視化し得るものであれば、特に限定されない。例えば、レンチキュラーレンズ、万線フィルタ等が挙げられる。本発明においては、レンチキュラーレンズを用いることが好ましい。簡易的に判別を行う際には、万線フィルタを用いてもよく、万線フィルタは、万線部分が第5画線要素15を隠蔽することで可視画像23を隠蔽し、第1不可視画像21又は第2不可視画像22を視認可能とするものであるが、第5画線要素15を完全に隠蔽することが困難である場合があり、その際には可視画像23が若干視認される恐れがある。
【0053】
本発明の複写牽制画線印刷物Pは、通常の可視光のもとでは、目視により視認できるのは可視画像23のみであり、第1不可視画像21及び第2不可視画像22を目視により確認することは困難である。このような印刷物における画像のスイッチ効果の原理について、以下に説明する。
【0054】
本発明の複写牽制画線印刷物Pにおいて、特定の領域(例えば、
図7(a)において、鳳凰が視認される領域)においては、可視画像23が視認され、第1不可視画像21及び第2不可視画像22が視認されない又は極めて視認され難い画像とされている。可視画像23は、第5画線要素15により構成されている。
【0055】
第1不可視画像21は、互いに面積が同一でネガポジの関係にあり、第1の方向51に沿って画線単位20の中心40を境に対向するように配置されている第1画線要素11及び第2画線要素12により構成されている。第2不可視画像22は、互いに面積が同一でネガポジの関係にあり、第1の方向51とは異なる第2の方向52に沿って画線単位20の中心40を境に対向するように配置されている第3画線要素13及び第4画線要素14により構成されている。
【0056】
例えば、特定の領域(例えば、
図7(a)において、鳳凰が視認される領域)に、判別具2であるレンチキュラーレンズ又は万線フィルタを載置し、各レンズの中心線又は万線フィルタの万線部の中心線が第1画線要素11の中心となる第1可視化線31と一致するように載置すると、第1画線要素11がレンチキュラーレンズにより拡大された状態で視認又は万線フィルタにより一部隠ぺいされることにより視認することができるようになる。これにより、第1画線要素11により構成されている第1不可視画像21が確認できることとなる。なお、レンチキュラーレンズの場合は、可視画像23を構成していた第5画線要素15及び第2不可視画像22を構成している第3画線要素13及び第4画線要素14は、拡大されている第1画線要素11よりも面積が相対的に小さく視認されることとなる。
【0057】
さらに、第3画線要素13及び第4画線要素14は、相互にネガポジの関係にあることから、第2不可視画像22として視認することができず、単なる背景として視認されることとなり、実質的に画像がスイッチすることとなる。第2画線要素12が拡大又は隠ぺいされるように第1方向と平行に判別具を移動させて第2可視化線32と一致するように載置すると、第1画線要素11により視認されていた第1不可視画像21のネガポジが反転して視認されることとなる。
【0058】
特定の領域(例えば、
図7(a)において、鳳凰が視認される領域)に、判別具2であるレンチキュラーレンズ又は万線フィルタを載置し、各レンズの中心線又は万線フィルタの万線部が第3画線要素13の中心となる第3可視化線33と一致するように載置すると、第3画線要素13が拡大された拡大された状態で視認又は万線フィルタにより一部隠ぺいされることにより視認することができるようになる。これにより、第3画線要素13により構成されている第2不可視画像22が確認できることとなる。その際、可視画像23を構成していた第5画線要素15及び第1不可視画像21を構成している第1画線要素11及び第2画線要素12は、拡大されている第3画線要素13よりも面積が相対的に小さく視認されることとなる。
【0059】
さらに、第1画線要素11及び第2画線要素12は、相互にネガポジの関係にあることから、第1不可視画像21として認識することができず、単なる背景として視認されることとなり、実質的に画像がスイッチすることとなる。第4画線要素14が拡大されるように第2方向と平行に判別具2を移動させて第4可視化線34と一致するように載置すると、第3画線要素13により視認されていた第2不可視画像22のネガポジが反転して視認されることとなる。
【0060】
図12に示す画線単位20は、第1画線要素11、第2画線要素12、第3画線要素13及び第4画線要素14が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素15を8個有している。
【0061】
第5画線要素15は、文字、模様、図形、図柄等の可視画像23を構成するものであり、通常の視認状態において目視で視認される任意の画像を構成する。第5画線要素15の数を制御することで、可視画像23の濃淡を調製することができる。
【0062】
第5画線要素15は、画線単位20内において、それぞれ、第1画線要素11及び第2画線要素12において、判別具2を重ねた際に第1不可視画像21を可視化する第1可視化線31上及び第2可視化線32上からずれた位置に中心を有するとともに、第3画線要素13及び第4画線要素14において、判別具2を重ねた際に第2不可視画像22を可視化する第3可視化線33上及び第4可視化線34上からずれた位置に中心を有している。
【0063】
これにより、判別具2を重ねて第1不可視画像21又は第2不可視画像22を視認する際に、第5画線要素15が視認されない又はほとんど認識されないようにすることができ、可視画像23が視認されないようにすることができる。これにより、第1不可視画像21又は第2不可視画像22を視認し得る画像として発現させた際に、第5画線要素15により構成される可視画像23が、これらの画像の視認性を阻害することはない。
【0064】
図12、
図13に示すように、第5画線要素15は、互いに第5画線要素15の幅以上の間隔で配置されている。すなわち、第5画線要素15に内接する最大内接円Tの直径R以下とする必要がある。第5画線要素15の互いの間隔を第5画線要素15の幅以下とした場合は、第5画線要素15が密着した状態として複写時に再現可能な大きさとなり、可視画像が制限されることとなる。よって、互いに第5画線要素15の幅以上の間隔とすることで第5画線要素15を密着することを防止し、第5画線要素15を互いに孤立させることとなり、第5画線要素15が複写されることを防ぐこと又は第5画線要素15が可視画像23を形成し得るように複写されることを防ぐことが可能となる。
【0065】
<複写牽制画線印刷物の作成方法>
次に、前述の複写牽制画線印刷物を、画像入力手段(S1)、配置設定手段(S2)、画像データ作成手段(S3)、印刷手段(S4)を有する作製装置を用いて作成する方法について、
図15により説明する。
【0066】
画像入力手段(S1)は、パソコン等の情報処理装置を使用して可視画像の基となる可視画像データ、第1の不可視画像の基となる第1の不可視画像データ及び第2の不可視画像の基となる第2の不可視画像データの各画像データを入力する手段であり、各画像データは外部機器から入力しても良く、あるいは情報処理装置で各画像データを作成してもよい。
【0067】
配置設定手段(S2)は、画像入力手段(S1)により入力された各画像データに対し、パソコン等の情報処理装置により第1の不可視画像データのポジ画像及び第1の不可視画像データのネガ画像を作成するための第1画線要素と第2画線要素、第2の不可視画像データのポジ画像及び第2の不可視画像データのネガ画像を作成するための第3画線要素と第4画線要素、可視画像データを作成するための第5画線要素の各要素の形状の設定を行い、形状が設定された第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素、第4画線要素を配置した単位画線を設定し、設定された単位画線を規則的に所定のピッチでマトリクス状に配置し、かつ、第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素及び第4画線要素が存在しない領域において、複写機で再現不可能な形状の第5画線要素を1個以上配置し、第5画線要素を2個以上配置する場合は、第5画線要素の幅以上の間隔で互いに配置する。
【0068】
画像データ作成手段(S3)は、配置設定手段(S2)により設定された第1画線要素及び第2画線要素により第1の不可視画像データのポジ画像及び第1の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作成し、第3画線要素及び第4画線要素により第2の不可視画像データのポジ画像及び第2の不可視画像データをネガ反転させたネガ画像を作成し、第5画線要素により可視画像データの画像を作成し、第1の不可視画像データ、第2の不可視画像データ及び可視画像データを合成する。
【0069】
印刷手段(S4)は、合成された画像データを元に基材にUV・インクジェットプリンタ等のコンピュータからの画像を印刷可能な印刷装置等により印刷する工程である。
【0070】
なお、複写牽制画線印刷物の作成方法において、「第1画線要素」、「第2画線要素」、「第3画線要素」、「第4画線要素」、「第5画線要素」、「画線単位」、「画線単位の中心」、「第1不可視画像」、「第2不可視画像」、「可視画像」、「第1可視化線」、「第2可視化線」、「第3可視化線」、「第4可視化線」、「第1の方向」及び「第2の方向」は、それぞれ、第1実施態様に係る<複写牽制画線印刷物>に記載したのと同様である。
【0071】
また、画線単位(第1画線要素、第2画線要素、第3画線要素、第4画線要素及び第5画線要素)を作製する方法は、とくに限定されず、通常の印刷方法が用いられる。例えば、インクジェット印刷、トナー印刷(レーザープリント)、凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等が挙げられるが特に限定されない。特に、証明書類等の印刷に用いられている、インクジェット印刷やトナー印刷(レーザープリンタによる印刷)等のオンデマンド印刷による印刷方法が好ましい。
【0072】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上記の構成において、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。したがって、上記の説明に含まれるか又は添付の図面に示されるすべての事項は、例示的なものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0073】
1 印刷物
2 判別具
3 印刷模様
4 模様
5 第1の不可視画像
6 第2の不可視画像
7 画線ユニット
8 複写物
9 情報
10 基材
A1、A2、B1、B2、C 画線要素
F1 不可視画像領域
F2 可視画像領域
P 複写牽制画線印刷物
Q 複写牽制画線印刷物の複写物
11 第1画線要素
12 第2画線要素
13 第3画線要素
14 第4画線要素
15 第5画線要素
20 画線単位
21 第1不可視画像
22 第2不可視画像
23 可視画像
31 第1可視化線
32 第2可視化線
33 第3可視化線
34 第4可視化線
40 画線単位の中心
51 第1の方向
52 第2の方向