(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071256
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230516BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183909
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】有吉 文彬
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 良輔
(72)【発明者】
【氏名】小岩 幸介
【テーマコード(参考)】
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004CA06
5F131AA02
5F131BA19
5F131BB02
5F131CA17
5F131CA32
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA13
5F131EB11
5F131EB16
5F131EB17
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】エッジリングの温度上昇を抑制し、エッジリング及びカバーリングの交換寿命を延長する。
【解決手段】プラズマ処理装置であって、チャンバと、前記チャンバの内部に設けられる基板支持部と、を有し、前記基板支持部は、前記基板を載置する載置面を備える本体部と、前記載置面を平面視において囲うように配置されるエッジリングと、前記エッジリングの外周上面を平面視において覆う遮蔽リングと、を有し、前記遮蔽リングは導体で形成され、前記エッジリングと前記遮蔽リングとの間には誘電部が設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバの内部に設けられる基板支持部と、を有し、
前記基板支持部は、
前記基板を載置する載置面を備える本体部と、
前記載置面を平面視において囲うように配置されるエッジリングと、
前記エッジリングの外周上面を平面視において覆う遮蔽リングと、を有し、
前記遮蔽リングは導体で形成され、
前記エッジリングと前記遮蔽リングとの間には誘電部が設けられる、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記誘電部はクリアランスである、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記クリアランスの距離dは、下記式(1)によって算出されるクリアランス距離下限値dvよりも大きい、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
dv=x/Cv ・・・(1)
但し、xは、プロセス中において前記エッジリングと前記遮蔽リングとの間に生じる最大の電位差(V)の測定値であり、Cvは、真空における単位距離当たりの絶縁破壊電圧(V/mm)である。
【請求項4】
前記誘電部は誘電体部材である、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記誘電体部材の厚さTは、下記式(2)によって算出される厚さ下限値Tdeよりも大きい、請求項4に記載のプラズマ処理装置。
Tde=x/Cde ・・・(2)
但し、xは、プロセス中において前記エッジリングと前記遮蔽リングとの間に生じる最大の電位差(V)の測定値であり、Cdeは、前記誘電体における単位距離当たりの絶縁破壊電圧(V/mm)である。
【請求項6】
前記遮蔽リングの外周を平面視において囲うように配置されるカバーリングをさらに有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記カバーリングは誘電体で形成される、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記カバーリングは半導体で形成される、請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記カバーリングは、前記遮蔽リングと一体に設けられる、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温度差の大きい2つの部品に付着するデポを除去する基板処理装置が開示されている。当該基板処理装置では、フォーカスリングが内側フォーカスリングと外側フォーカスリングの2体で構成されている。当該フォーカスリングについて、内側フォーカスリングは基板に隣接して配置され且つサセプタの冷却機構により冷却される。また、外側フォーカスリングが内側フォーカスリングを囲み且つ冷却されず、側面保護部材の対向面は、内側フォーカスリング及び外側フォーカスリングの隙間に対向するよう構成されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、エッジリングの温度上昇を抑制し、エッジリング及びカバーリングの交換寿命を延長する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、プラズマ処理装置であって、チャンバと、前記チャンバの内部に設けられる基板支持部と、を有し、前記基板支持部は、前記基板を載置する載置面を備える本体部と、前記載置面を平面視において囲うように配置されるエッジリングと、前記エッジリングの外周上面を平面視において覆う遮蔽リングと、を有し、前記遮蔽リングは導体で形成され、前記エッジリングと前記遮蔽リングとの間には誘電部が設けられる。
【0006】
本開示にかかる技術によると、エッジリングの温度上昇を抑制し、エッジリング及びカバーリングの交換寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成例を示す断面図である。
【
図3】実施形態にかかるリングアセンブリの構成の一例を示す断面図である。
【
図4】実施形態にかかるリングアセンブリの構成の他の一例を示す断面図である。
【
図5】実施形態にかかるリングアセンブリにおけるプラズマシースとイオン入射の関係の予想モデルである。
【
図6】実施形態にかかるリングアセンブリにおけるプラズマシースとイオン入射の関係の作用モデルである。
【
図7】実験例におけるプラズマシースとイオン入射の関係の予想モデルである。
【
図8】実験例におけるプラズマシースとイオン入射の関係の作用モデルである。
【
図9】基板におけるインナーチルティング進行度の観察位置を示す模式図である。
【
図10】エッジリング板厚に対するインナーチルティング進行度の関係を示すグラフである。
【
図11】RF印加時間に対するインナーチルティング進行度の関係を示すグラフである。
【
図12】RF印加時間に対するインナーチルティング進行度の関係を示すグラフである。
【
図13】エッジリング板厚とプラズマシース高さの関係のシミュレーション結果を示す模式図である。
【
図14】エッジリング板厚とプラズマシース高さの関係のシミュレーション結果を示す模式図である。
【
図15】エッジリング板厚とプラズマシース高さの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図16】エッジリング板厚とプラズマシース高さの関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図17】遮蔽リングとエッジリングの消耗の影響を示すグラフである。
【
図18】比較例の新品時におけるリングアセンブリの模式図である。
【
図19】比較例の消耗時におけるリングアセンブリの模式図である。
【
図20】実施例の新品時におけるリングアセンブリの模式図である。
【
図21】実施例の消耗時におけるリングアセンブリの模式図である。
【
図22】実施形態にかかる半導体で形成される遮蔽リングを有するリングアセンブリの構成の概略を示す断面図である。
【
図23】比較例のリングアセンブリの構成の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体基板(以下、「基板」という。)を収納したプラズマ処理装置において当該基板に所望の処理を行う様々な処理工程が行われている。プラズマ処理装置では、基板を載置する載置台において、載置された基板の周縁部を囲うエッジリングやカバーリングといったリングアセンブリが用いられている。
【0009】
プラズマ処理装置においては、基板をプロセス処理にかけた際に、基板周囲に配置したエッジリングの温度が上昇する現象が確認された。このような温度上昇は、製造プロセスにおいてプラズマシースの高さを任意にコントロールするような場合にはより顕著である。エッジリングの温度制御を行う構造では、エッジリングへの入熱が大きくなりすぎると、温度制御性が悪化するという問題がある。また、エッジリングへの入熱が大きくなると、冷却が不十分となり、基板間でプロセス処理中の温度差が生じ、処理の均一性が低下するという問題などが生じる場合がある。
【0010】
また、プラズマ処理におけるパターンエッチングにおいては、エッジリングのプラズマに暴露する側の表面がイオン入射によって消耗し、厚みが減少する。エッジリングの消耗が進行すると、エッチングパターンの垂直性に関し、インナーチルティングに進むことが判っている。なおインナーチルティングとは、以下のように進行する現象である。すなわち、エッジリングの板厚の減少により、基板の周縁部側の上方に形成されるプラズマシース位置が、基板の中心側の上方に形成されるプラズマシース位置よりも下がる。すると、基板の周縁部側の上方に形成されるプラズマシース位置でのイオン入射角が、鉛直方向から基板の周縁部側方向(内方)に傾斜する。その結果、基板の周縁部側に形成されるエッチング溝が傾斜する。インナーチルティングを抑制するためには、エッジリングが過度に消耗しないよう、定期的に交換する必要がある。しかしながら、交換のために頻繁に装置を停止することは生産性の観点から不利である。
【0011】
また、上記プラズマ処理においては、カバーリングも消耗し、定期的に交換する必要があるが、これについても同様に生産性の観点から不利である。
【0012】
上記課題に対し、エッジリングの抜熱手段としては、基台の材質変更による熱抵抗の調整、又は冷却機構における冷媒の流量上昇又は温度低下などが考えられる。しかしながら、これらの抜熱手段を設けることは低温域の制御性能とトレードオフの関係にある。また、エッジリング及びカバーリングの交換寿命の延長手段としては、特に有効な構成は提案されていない。
【0013】
また、特許文献1には内側エッジリングの熱をサセプタの冷却機構に吸収させることが開示されているが、当該冷却機構に依存する抜熱手段では、これとトレードオフの関係にある低温域の制御性能を向上させられない場合がある。また、特許文献1の技術は2体に設けるエッジリングによって堆積するデポを除去することを課題としており、エッジリングやカバーリングの交換寿命を延長することについては考慮されていない。
【0014】
そこで本開示にかかる技術は、プラズマ処理装置において基板をプロセス処理にかけた際に、高温域の制御能力を保ちつつエッジリングへの入熱を低減することを可能とする。具体的には、エッジリングとカバーリングとの間に、エッジリングの上方の一部を遮蔽する遮蔽リングを設けることにより実現する。またプラズマ処理装置において基板を繰り返しプロセス処理にかけた際に、エッジリングの消耗によるインナーチルティングの進行を抑制し、かつ、カバーリングの消耗を抑制し、これらの交換寿命を延長することを可能とする。
【0015】
以下、本実施形態にかかるプラズマ処理装置を備えたプラズマ処理システムの構成について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<プラズマ処理システム>
図1は、本実施形態にかかるプラズマ処理システムの構成の概略を示す平面図である。一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持部11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持部11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0017】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、 200kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0018】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0019】
次に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置1の構成例について、
図2を用いて説明する。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0020】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、後述する複数の環状部材を含む。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0021】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0022】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0023】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオンPN成分を基板Wに引き込むことができる。
【0024】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0025】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0026】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0027】
次に、本実施形態にかかるリングアセンブリ112の構成の詳細について、
図3を用いて説明する。
図3は、リングアセンブリ112及び本体部111の構成の詳細の一例を示す断面図である。ただし、本体部111は、リングアセンブリ112が配置される環状領域111bを含む一部のみを示し、中央領域111a側(図面左側)及び本体部111の下方側(図面下側)は図示を省略する。
【0028】
本実施形態にかかるリングアセンブリ112は、環状部材として、エッジリング120と、カバーリング122と、遮蔽リング124と、を含む。上述した通り、リングアセンブリ112は、本体部111の環状領域111b上に配置される。より具体的には、エッジリング120は、平面視において中央領域111aを囲うように配置される。またエッジリング120は、環状領域111bの内周領域126及びカバーリング上面130の上に、またがって載置される。カバーリング122は、環状領域111bの外周領域128に載置される。遮蔽リング124は、カバーリング上面130に載置される。遮蔽リング124は垂直部132及び水平部134を含む。垂直部132は所望の厚みを有する環状の部分である。また垂直部132は、鉛直部内周136がエッジリング外周137から距離d1だけ離間し、かつエッジリング外周137を覆う位置に載置される。水平部134は、垂直部132の上部からエッジリング120の内周側(図面左側)に張り出した、所望の厚みを有する環状の部分である。また水平部134は、水平部下面138がエッジリング上面139から距離d2だけ離間し、かつエッジリング120の外周上面を平面視において覆うように設けられる。エッジリング120と遮蔽リング124とによって囲われる空間を、誘電部と称する。一実施形態において、誘電部は空間そのものとしてのクリアランスCLとして設けられる。エッジリング上面139のうち、遮蔽リング124に面していない、径方向の長さL1の部分を暴露部140と称する。また、エッジリング120の上面であって遮蔽リング124に面する部分を、遮蔽部142と称する。
【0029】
リングアセンブリ112の材質に関し、エッジリング120及び遮蔽リング124はいずれも半導体であり、具体的にはシリコンで構成される。また、カバーリング122は誘電体であり、具体的にはクォーツで構成される。
【0030】
次に、リングアセンブリ112における、クリアランスCLの構成について説明する。
【0031】
クリアランスCLにおいて、距離d1及び距離d2は、下記によって導出されるクリアランスCLにおけるエッジリング120と遮蔽リング124との距離の下限値(クリアランス距離下限値dv)よりも、大きい値をとるように設定される。
【0032】
クリアランス距離下限値dv(mm)は、プロセス中に相対的に正電荷となる遮蔽リング124から、相対的に負電荷となるエッジリング120に対し、クリアランスCLの絶縁を破壊して電流が流れるアーキングと呼ばれる現象が生じないような距離として算出される。具体的には、プロセス中に、エッジリング120と遮蔽リング124との間に生じる最大の電位差x(V)を測定し、その測定値を真空における単位距離当たりの絶縁破壊電圧Cv(V/mm)で除した値が、求めるべきクリアランス距離下限値dvである。
dv=x/Cv ・・・ (1)
【0033】
上記式(1)によって算出されるクリアランス距離下限値dvは、プロセス中の条件下でエッジリング120と遮蔽リング124との間に最大電位差xが生じるときに、アーキングが生じるようなクリアランスCLの距離である。したがって、クリアランス距離下限値dvを下限として、安全率を1として距離d1又はd2を設定することができる。
【0034】
なお、クリアランスCL距離の上限については、特に限定されない。ただし、クリアランスCL距離を大きく設ける場合には、遮蔽リング124の上面が高くなった結果、搬入出される基板Wや搬送機構と接触することが考えられる。したがって、当該接触が生じないようにクリアランスCL距離上限を設定することができる。
【0035】
一実施形態において、誘電部には、誘電体部材150を設ける。
図4は、クリアランスCLに代えて誘電体部材150が挿入された構成とした場合のリングアセンブリ112を示す断面図である。
図4で、誘電体部材150は、環状の部分である厚さd3の鉛直部と、鉛直部からエッジリング120の内周側(図面左側)に張り出した、厚さd4の水平部を有し、誘電部に挿入される。別の観点では、エッジリング120の遮蔽部を覆うように誘電体部材150が載置され、誘電体部材150を覆うように遮蔽リング124が載置される。
【0036】
このとき、誘電体部材の厚さ下限値Tde(mm)は、エッジリング120と遮蔽リング124との間に生じる最大の電位差x(V)の測定値を、誘電体における単位距離当たりの絶縁破壊電圧Cde(V/mm)で除した値である。
Tde=x/Cde ・・・(2)
【0037】
上記式(2)によって算出される誘電体部材の厚さ下限値Tdeは、プロセス中の条件下でエッジリング120と遮蔽リング124との間に最大電位差xが生じるときに、アーキングが生じるような誘電体部材の厚さである。したがって、誘電体部材の厚さ下限値Tdeを下限として、安全率を1として厚さd1又はd2を設定することができる。
【0038】
次に、本実施形態にかかるリングアセンブリ112による、エッジリング120への入熱低減効果について、
図5及び
図6を用いて説明する。
【0039】
図5は、リングアセンブリ112におけるプラズマシースPSとイオン入射の関係の予想モデルである。本実施形態にかかるリングアセンブリ112によると、プロセス中にプラズマシースPSが形成される際には、エッジリング120の暴露部140の上方には下段シースLPSが形成されることが予想された。また、遮蔽リング124の水平部134の上方には、上段シースUPSが形成されることが予想された。この予想モデルに基づくと、
図5に示す通り下段シース及び上段シースUPSのそれぞれに対して垂直にイオンPNが入射し、それぞれが暴露部140又は水平部134に入射することが考えられる。この場合、模式的な説明によると、暴露部140には4つのイオンPNが、水平部134には4つのイオンPNが、それぞれ入射することが予想された。なお、エッジリング120に対して入射しようとするイオンPNが、遮蔽リング124によって遮られ、エッジリング120ではなく遮蔽リング124に入射することを遮蔽効果と称する。
【0040】
上記予想モデルに対し、後述する実験データに基づいて本発明者らが鋭意検討した結果によると、遮蔽リング124に対しては上記で予想されたよりも多くのイオンPNが入射しており、遮蔽リング124による予期せぬ顕著な遮蔽効果が得られることが分かった。
【0041】
図6は、リングアセンブリ112におけるプラズマシースPSとイオン入射の関係の、後述する実験データに基づいて構築した作用モデルである。
図5の予想モデルと異なり、下段シースLPSと上段シースUPSは断面においてなだらかな曲線(曲線シースCPS)で連続している。そのため、暴露部140上方であって曲線シースCPS上方に形成されるイオンPNは、曲線シースCPSに対し垂直に入射することとなり、当該イオンPNは遮蔽リング124に入射することがわかった。この場合、模式的な説明によると、暴露部140には3つのイオンPNが、水平部134には5つのイオンPNが、それぞれ入射することがわかり、遮蔽リング124の遮蔽効果が予想モデルよりも高いことがわかる。
【0042】
ここで、本発明者が
図6の作用モデルを構築するにあたり検討に用いた実験データについて説明する。
【0043】
まず、下段シースLPSと上段シースUPSの間のシース厚の差(シース段差)が小さく構成されるリングアセンブリ112(実験例1)と、シース段差が大きく構成されるリングアセンブリ112(実験例2)と、の2種類のリングアセンブリ112を用意した。実験例1は、
図5又は
図6に示す構成と同様であり、シース段差h1は、当該構成において形成される下段シースLPSと上段シースUPSの高さの差である。実験例2は、
図7又は
図8に示すように、実験例1よりもシース段差を大きく設ける構成とした。実験例2におけるシース段差h2は、当該構成において形成される下段シースLPSと上段シースUPSの高さの差である。実験例2でシース段差h2をシース段差h1よりも大きく設けるに当たっては、実験例1の水平部134上面よりも、実験例2の水平部134上面が高くなるように構成した。また、実験例1の誘電部はクリアランスCLとして構成する一方、実験例2の誘電部は誘電体部材150を挿入した構成とした。
【0044】
本発明者らの検討によると、プラズマシースPSの厚さはエッジリング120と遮蔽リング124との間のインピーダンスに依存していることがわかった。また、インピーダンスが小さいほどエッジリング120から遮蔽リング124へのRadio Frequency(RF)抜け量が増加する。その結果、遮蔽リング124上の上段シースUPSが厚くなることがわかった。そのため、実験例2ではクリアランスCLに代えて誘電体部材150を挿入した構成とすることでインピーダンスを小さくすることができ、実験例1と比較してシース段差h2を大きく構成することができる。一方で、実験例1及び実験例2のリングアセンブリ112の暴露部140の面積及び水平部134の面積は、それぞれ等しく構成する。
【0045】
次に、シース段差の異なる実験例1及び実験例2について、一定時間イオンPNを入射させ、その期間のエッジリング120に対する温調モジュール(不図示)のヒータ仕事量(W)を計測した。なお、エッジリング120の温調モジュールは、実験例1又は実験例2についてエッジリング120を加熱して一定温度に維持するように温調している。ここで、エッジリング120に対するイオン入射による入熱量が小さければ、上記一定温度に維持するためにより大きい加熱を必要とするので、その結果ヒータ仕事量が大きくなる。
【0046】
上記計測により表1の結果が得られた。表1に示すように、シース段差の小さい実験例1における温調モジュールのヒータ仕事量と比べて、シース段差の大きい実験例2における温調モジュールのヒータ仕事量が大きくなることがわかった。すなわち、暴露部140の面積及び水平部134の面積がそれぞれ等しくても、シース段差が大きい場合には、エッジリング120に対するイオン入射による入熱量が小さくなることが分かった。
【0047】
【0048】
本発明者らは表1の結果に基づき、イオン入射の挙動について、まず予想モデルを採用した場合の
図5及び
図7を用いて考察した。
図5は実験例1における予想モデルであり、
図7は実験例2における
図5に倣った予想モデルである。
【0049】
図5の実験例1ではシース段差が小さい状態で、上段シースUPS及び下段シースLPSにそれぞれ垂直にイオンPNが入射する結果、遮蔽リング124に対して4つのイオンPNが入射している。一方、
図7の実験例2ではシース段差h2が実験例1のシース段差h1よりも大きい状態となっているが、上段シースUPS及び下段シースLPSにそれぞれ垂直にイオンPNが入射する結果、実験例1と同様に遮蔽リング124に対して4つのイオンPNが入射することが予想される。したがって、予想モデルに従った場合、シース段差h1、h2が仮に異なったとしても、暴露部140の面積及び水平部134の面積がそれぞれ等しい場合には、イオン入射の量は実験例1と実験例2とで同様なはずである。しかしながら、表1の結果によると、シース段差が異なることによってエッジリング120に対するイオン入射による入熱量が異なる。したがって、実際のイオン入射の挙動は
図5及び
図7の予想モデルとは異なることがわかる。
【0050】
表1の結果に基づくイオン入射の挙動について、次に、作用モデルを採用した場合の
図6及び
図8を用いて考察する。
図6は実験例1における作用モデルであり、
図8は実験例2における
図6に倣った作用モデルである。
【0051】
作用モデルでは、実験例2のシース段差h2が実験例1のシース段差h1よりも大きい場合には、
図8に示すに曲線シースCPSの領域が、
図6に示す曲線シースCPSの領域よりも、エッジリング120の側に広くなることが考えられる。作用モデルに従った場合、実験例1の
図6では曲線シースCPSを通って遮蔽リング124に入射するイオンPNが1つなのに対し、実験例2の
図8では2つになると考えられる。そのため、
図6の実験例1の場合よりも、
図8の実験例2の場合の方が、曲線シースCPSを通過して遮蔽リング124に入射するイオンPNが増加することが考えられる。この作用モデルは、表1の結果と適合している。
【0052】
さらに、上記実験結果によると、シース段差の大きさによる遮蔽効果である入熱低減効果を算出することができる下記式(3)が得られる。
Ps=W0×S/S0×h/h0 ・・・(3)
但し、Sはエッジリング120の暴露部140の面積(mm2)であり、hは遮蔽リング124とエッジリング120の間のシース段差(mm)である。また、W0は上記実験例1と上記実験例2のヒータ仕事量の実験値の差40(W)である。また、S0はエッジリング120の暴露部140の上記実験値12864.8(mm2)である。また、h0は上記実験例1と上記実験例2の、遮蔽リング124とエッジリング120の間のシース段差の上記実験値の差1.05(mm)である。
【0053】
上記式(3)について、定数部分について実験値を代入して整理すると、下記式(3’)が得られる。
Ps=3.0×10-3×S×h ・・・(3’)
【0054】
式(3)によると、入熱低減効果はシース段差に比例するほか、エッジリング120の暴露部140の面積にも比例することがわかる。
【0055】
次に、本実施形態にかかるリングアセンブリ112による、エッジリング120の交換寿命延長効果について、
図9~
図17を用いて説明する。
【0056】
本発明者らは、リングアセンブリ112を本実施形態のように設けることで、従来のリングアセンブリ112よりも長期間、インナーチルティングを抑制することが可能となることを実験により確認した。具体的には、本発明者らは、下記の実施例のリングアセンブリ112と比較例のリングアセンブリ112について、基板Wとともにプラズマ処理に供した場合のインナーチルティングの進行度を観察する実験を行った。なお、実施例のリングアセンブリ112は遮蔽リング124を設けた構成を有し、比較例のリングアセンブリ112は、リングアセンブリ112を用いた遮蔽リング124を設けない構成を有する。
【0057】
図9は、実験においてインナーチルティングの進行度を観察した基板Wの位置を示す模式図(平面図)である。観察は
図9中のハッチングで示した観察位置160において、基板Wの中心部Cから基板Wの周縁部Eまでの位置で行った。特に周縁部Eに示す位置は、インナーチルティングの、エッジリング120の板厚に対する依存の度合いが大きいため、その後の評価に用いた。以下の評価において、E点における、基板Wの厚み方向6mm地点でのエッチング溝の、鉛直方向に対する角度(チルト角)を測定した。チルト角は、鉛直方向を0°(ゼロ度)とし、基板中心側を正、基板外周側を負とする。すなわち、チルト角が減少することは、インナーチルティングが進行することを示す。
【0058】
図10は、エッジリング120の板厚の変化に伴うインナーチルティング進行度の関係を示すグラフである。
図10で、丸又は四角で表す点は、エッジリング120の板厚に対するインナーチルティング進行度(チルト角)を示す実測値のプロットである。丸のプロットは実施例におけるプロットであり、四角のプロットは比較例のプロットである。また、プロットを結ぶ実線は、これらの実測値から算出した一次関数のグラフを示す。当該一次関数は、実施例については下記式(4)が、比較例については下記式(5)が得られた。
y=1.0551x-3.6516 ・・・(4)
y=1.8163x-6.6023 ・・・(5)
【0059】
実測値から算出したグラフの傾きを比較すると、実施例の傾きは比較例の傾きよりも顕著に小さいことがわかる。傾きが小さいことは、板厚の減少によるインナーチルティングの進行度が小さいことを意味する。したがって、実施例は板厚の減少によるインナーチルティングの進行度が比較例と比べて顕著に小さいことがわかる。
【0060】
図11及び
図12は、上記
図10の実施例及び比較例について、RF印加時間に対するインナーチルティング進行度の関係を示すグラフである。なお、エッジリング120の消耗速度は連続マラソン評価にて計測した。
図11及び
図12で、丸又は四角で表す点は、RF印加時間に対するインナーチルティング進行度を示す実測値のプロットである。丸のプロットは実施例におけるプロットであり、四角のプロットは比較例におけるプロットである。また、プロットを結ぶ実線は、これらの実測値から算出した一次関数のグラフを示す。当該一次関数は、実施例については下記式(6)が、比較例については下記式(7)が得られた。
y=-0.0006x-0.2928 ・・・(6)
y=-0.002x+1.2216 ・・・(7)
【0061】
実測値から算出したグラフの傾きを比較すると、実施例の傾きは比較例の傾きよりも顕著に小さいことがわかる。傾きが小さいことは、RF印加時間に対するインナーチルティングの進行度が小さいことを意味する。実際に、チルト角が1°減少するのに要するRF印加時間は、比較例では約600hであったのに対し、実施例では約1200hであり、インナーチルティングの進行を顕著に抑制できることがわかる。
【0062】
なお、エッジリングの板厚が1mm減少したときのチルト角の実測値は、実施例が1.01
[deg/mm]、比較例が3.13 [deg/mm]となり、約3倍になることがわかっている。したがって、インナーチルティングにかかる実際の交換寿命の観点からは、実施例は比較例の約3倍の交換寿命を有することがわかる。
【0063】
以上の実験の結果から、実施例は比較例と比べて、インナーチルティングの進行を顕著に抑制できることがわかった。インナーチルティングの抑制によると、エッジリング120の交換寿命を延長することが可能であり、その結果装置のダウンタイムを削減し、生産性を向上する効果が得られる。
【0064】
本発明者らは上記実験の結果について、エッジリング120の板厚が実際に減少しているにもかかわらず基板Wのインナーチルティングの進行が抑制されたことは、非自明であると考え、その理由について考察した。考察において、エッジリング120の板厚とプラズマシースPSの高さの関係についてシミュレーションを行い、
図13~16の結果が得られた。
【0065】
図13及び
図14は、上記実施例と上記比較例における、エッジリング120の板厚とプラズマシースPSの高さの関係を示すシミュレーション結果である。ここで、
図13はエッジリング120の板厚の減少に伴いプラズマシースPSの高さも減少する条件(以下、条件1)とした場合の結果を示す。また、
図14はエッジリング120の板厚の減少にかかわらずプラズマシースPSの高さが一定である条件(以下、条件2)とした場合の結果を示す。
図13及び
図14で、破線はプラズマシースを示す。丸点はイオンPNの入射位置、実線はイオンPNの入射経路を示す。
図15は、
図13のイオンPNの入射位置p1~p4に対し、当該イオンPNの入射経路が鉛直方向に対してなす角θ1~θ4について、プロット(図中丸点)したグラフである。
図16は、
図14のイオンPNの入射位置p5~p8について、当該イオンPNの入射経路が鉛直方向に対してなす角θ5~θ8についてプロット(図中ひし形点)したグラフである。なお、
図15及び
図16において四角点のプロットは、いずれもエッジリング120の板厚が減少していない場合の参考例におけるシミュレーション結果のプロットである。また、p1~p4と、p5~p8の基板中心からの距離はそれぞれ等しい条件とした。
【0066】
図15で、条件1では、基板Wの周縁部に近いp4においては入射角θ4が約-2°となり、入射角が顕著に内方に傾斜することがわかった。一方
図16で、条件2では、基板Wの周縁部に近いp8においても、入射角θ8は約-0.5°となり、入射角が鉛直に近く維持されることがわかった。この結果から、プラズマシース高さがエッジリング120の厚みに依存せず維持される場合には、エッジリング120の板厚の減少によってもイオン入射角を鉛直に近く維持することができ、インナーチルティングの進行が抑制されるものと考えられる。
【0067】
ここで、
図6及び
図8の遮蔽リング124の作用モデルと、条件2のシミュレーション結果とを併せて考察する。
図6及び
図8からは、遮蔽リング124の水平部の高さを高く設け、又はエッジリング120と遮蔽リング124との間に誘電体部材150を設けることでプラズマシース高さを維持することができると考えられる。また、条件2のシミュレーション結果からは、プラズマシース高さを維持することで、インナーチルティングの進行を抑制することができると考えられる。したがって、遮蔽リング124を設けることで、インナーチルティングの進行を抑制し、エッジリング120の交換寿命を延長することが可能となる。
【0068】
本発明者らは、次に、本実施形態にかかる遮蔽リング124の消耗によるインナーチルティング進行度に対する影響が小さいことを、実験で確認した。具体的には、本発明者らは、消耗していない遮蔽リング124(新遮蔽リング124)又は消耗した遮蔽リング124(消耗遮蔽リング124)を、それぞれ消耗していないエッジリング120(新エッジリング120)又は消耗したエッジリング120(消耗エッジリング120)に組合わせてリングアセンブリ112を構成した。具体的な組合せは、新遮蔽リング124と新エッジリング120(組合せ1)、消耗遮蔽リング124と新エッジリング120(組合せ2)、新遮蔽リング124と消耗エッジリング120(組合せ3)及び、消耗遮蔽リング124と消耗エッジリング120(組合せ4)の4通りである。これら4通りの組合せについて、基板Wとともにプラズマ処理に供した場合のインナーチルティングの進行度を観察する実験を行った。実験は異なる電圧条件V1、V2、及びV3[V](0<V1<V2<V3)で実施した。なおインナーチルティングの進行度は、図のE点の基板Wの厚み方向6mm地点でのエッチング溝の、鉛直方向に対する角度(チルト角)として評価した。評価の結果、表2が得られた。
【0069】
【0070】
図17は、上記4通りの組合せについての表2の結果をプロットした、印加電圧に対するインナーチルティング進行度の関係を示すグラフである。グラフから読み取れるように、新遮蔽リング124・新エッジリング120の組合せ(組合せ1)と、消耗遮蔽リング124・新エッジリング120の組合せ(組合せ2)におけるインナーチルティングの進行度の傾向は同様であった。また、新遮蔽リング124・消耗エッジリング120の組合せ(組合せ3)と、消耗遮蔽リング124・消耗エッジリング120の組合せ(組合せ4)におけるインナーチルティングの進行度の傾向は同様であった。これらの結果から、インナーチルティングの進行度は印加する電圧によらず、エッジリング120の消耗の有無にのみ依存しており、遮蔽リング124の消耗の有無には依存しないことがわかった。したがって、エッジリング120の交換寿命は、遮蔽リング124とは独立して管理可能であり、その逆も然りである。
【0071】
次に、本実施形態にかかるリングアセンブリ112による、カバーリング122の交換寿命延長効果について、
図18~
図21を用いて説明する。
【0072】
本発明者らは、リングアセンブリ112を本実施形態のように設けることで、従来のリングアセンブリ112よりもカバーリング122の交換寿命を延長することができることを実験で確認した。具体的には、遮蔽リング124を設けた構成を有するリングアセンブリ112を用いた実施例と、遮蔽リング124を設けない構成を有するリングアセンブリ112を用いた比較例について、基板Wとともにプラズマ処理に供した場合のカバーリング122の消耗を観察する実験を行った。
【0073】
図18及び
図19は、実験に用いた比較例のリングアセンブリ112の模式図であり、
図18は消耗前(新品時)、
図19は消耗後を表す。また、
図20及び
図21は、実験に用いた実施例のリングアセンブリ112の模式図であり、
図20は消耗前(新品時)、
図21は消耗後を表す。新品時と消耗後において、比較例及び実施例のカバーリング122の消耗比を測定した。消耗比は、カバーリング122の上面から減少した高さ方向の長さと、RF印加時間との比として評価した。比較例では、消耗比は0.54mm/100hであった。また実施例では、消耗比は0.33mm/100hであった。したがって、実施例のリングアセンブリ112ではRF印加時間に対するカバーリング122の消耗が、比較例と比べて軽度であることがわかる。
【0074】
本発明者らは、遮蔽リング124が直接遮蔽していないにもかかわらず、カバーリング122の消耗が抑制されたことは、非自明であると考え、その理由について考察した。具体的には、カバーリング122の消耗にかかわる要因としてRF抜けRFPについて考察した。
図18~21で、エッジリング120からカバーリング122に対して通過するRF抜けRFPを矢印で表し、かつその相対量を矢印の本数で表した。ただし、RF抜けRFPの相対量を表す矢印の本数は、その相対量の大小関係を示すのみであって、その相対量の比を示すものではないことに留意する。具体的には、例えば、矢印を2本で表したRF抜けRFPの相対量は、矢印を1本で表したRF抜けRFPの相対量より大きいことを示すが、その相対量の比は必ずしも2倍ではない。
【0075】
図18で、新品時の比較例においてエッジリング120からカバーリング122に対し5本の矢印で示す相対量のRF抜けRFPがあるとする。その後エッジリング120及びカバーリング122が消耗し、
図19に示す消耗後では、RF抜けRFPは2本の矢印で示す相対量に低下する。これに対し、
図20で、新品時の実施例においてエッジリング120から遮蔽リング124に対し3本の矢印で示す相対量のRF抜けRFPがあり、遮蔽リング124からカバーリング122に対し1本の矢印で示す相対量のRF抜けRFPがある。その後エッジリング120、遮蔽リング124及びカバーリング122が消耗し、図に示す消耗後においても、新品時から変化せず同様である。
【0076】
なお、下記の(イ)~(ハ)の理由から、実施例は比較例と比べてカバーリング122が消耗した場合における、RF抜けRFPの相対量の経時変化の影響が小さいことがわかった。すなわち、(イ)実施例は、新品時におけるエッジリング120及びカバーリング122の間のRF抜けRFPの相対量が比較例と比べて小さいため、カバーリング122の消耗によってはRF抜けRFPの相対量が変化しにくい。(ロ)実施例は、エッジリング120及び遮蔽リング124の間のインピーダンスの経時変化が小さい。(ハ)実施例において、遮蔽リング124の上方に形成されるプラズマシースPSの厚さが、エッジリング120の上方に形成されるプラズマシースPSの厚さと比べて小さくなる。
【0077】
(イ)に関して、新品時において実施例のエッジリング120及びカバーリング122の間のRF抜けRFPの相対量が比較例と比べて小さい理由として、以下が考えられる。すなわち、エッジリング120及びカバーリング122が隣接している比較例に対し、実施例ではエッジリング120及びカバーリング122の間に遮蔽リング124が介在している。このため比較例と比べて、エッジリング120及びカバーリング122の間のキャパシタンスが小さく、ゆえにインピーダンスが大きくなる。RF抜けRFPはインピーダンスに依存するため、比較例と比べて実施例のRF抜けRFPの相対量が小さくなると考えられる。
【0078】
(ロ)に関して、エッジリング120及び遮蔽リング124の間のインピーダンスの経時変化が小さい理由として、以下が考えられる。すなわち、実施例の誘電体部材150は遮蔽リング124によって囲われているためプラズマ消耗しにくく、またエッジリング120の遮蔽部142も消耗しにくい。このため、比較例と異なりこれらの接触面積が時間によって変化しにくいことが考えられる。なお、図のように誘電部には誘電体部材150を設けているが、これに代えて誘電部をクリアランスCLとした場合であっても、エッジリング120及び遮蔽リング124の間のインピーダンスの経時変化が小さいことに変わりはない。
【0079】
(ハ)に関して、遮蔽リング124の上方に形成されるプラズマシースPSの厚さが、エッジリング120の上方に形成されるプラズマシースPSの厚さと比べて小さくなる理由として、以下が考えられる。すなわち、遮蔽リング124に対しては誘電体部材150を介してRFが印加されるが、そのような介在のないエッジリング120と比べて、印加されるRFの強度が低下するためである。
【0080】
ところで、プラズマシースPSの厚みが大きい場合は、厚みが小さい場合と比較して相対的にイオンPNの入射速度が上昇することが知られている。そして、速度の大きいイオン入射を受けるリングアセンブリ112は、速度の小さいイオン入射を受ける場合よりも消耗しやすい。そのため、上方に厚みの大きいプラズマシースPSが形成されるエッジリング120よりも、比較的厚みの小さいプラズマシースPSが形成される遮蔽リング124の方が、消耗速度が小さい。
【0081】
したがって、比較例では、上方に厚みの大きいプラズマシースPSが形成されるエッジリング120に隣接してカバーリング122が設けられるため、その分カバーリング122においても速度の大きいイオン入射を受けることが考えられる。一方、実施例においては、上方に厚みの比較的小さいプラズマシースPSが形成される遮蔽リング124に隣接してカバーリング122が設けられるため、カバーリング122においても比較的速度の小さいイオン入射を受けることが考えられる。このため比較例のカバーリング122は消耗しやすく、実施例のカバーリング122は消耗しにくいという結果が得られたものと考えられる。
【0082】
上記実施形態によると、プラズマ処理装置において基板Wをプロセス処理にかけた際に、高温域の制御能力を保ちつつエッジリングへの入熱を低減することが可能となる。またプラズマ処理装置において基板Wを繰り返しプロセス処理にかけた際に、エッジリングの消耗によるインナーチルティングの進行を抑制し、かつ、カバーリングの消耗を抑制し、これらの交換寿命を延長することが可能となる。
【0083】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0084】
例えば、エッジリング120の材質、載置方法などについては、特に限定されず、公知の構成を採用することができる。材質に関し、例えばシリコンが採用可能である。載置方法に関し、内周領域及びカバーリング122上面において、固定せず載置すること、粘着性のシートで貼り付け固定すること、又は静電チャックによって固定することなど、任意の載置方法を採用可能である。
【0085】
また、遮蔽リング124の材質、載置方法などについては、特に限定されず、公知の構成を採用することができる。材質に関し、上記実施形態ではシリコンを用いることとしたが、これに限定されず、所望の性質を有する導体を用いることができる。
【0086】
また、遮蔽リング124の形状について、上記実施形態においては垂直部132と水平部134とを有することとしたが、これに限定されない。遮蔽リング124は、エッジリング120の外周上面を平面視において覆うことが可能な構成であればよい。したがって垂直部132を有さず、エッジリング120の外周上面を平面視において覆う水平部134のみを有する構成としてもよい。
【0087】
また、誘電体部材150の材質、載置方法などについては、特に限定されず、公知の構成を採用することができる。材質に関し、上記実施形態ではクォーツを用いることとしたが、これに限定されず、所望の性質を有する誘電体を用いることができる。
【0088】
また、誘電体部材150の形状について、上記実施形態においては誘電部全体を占める形状としたが、これに限定されない。例えばエッジリング120と遮蔽リング124とのそれぞれに対して、一部のみに接するような形状としてもよい。また、複数種類の誘電体を併せて用いてもよい。この場合、当該複数種類の誘電体を縦に重ねて、一の誘電体がエッジリング120のみに接し、他の誘電体が遮蔽リング124のみに接する構成としてもよい。また、当該複数種類の誘電体を横に並べて、それぞれがエッジリング120と遮蔽リング124とに接する構成としてもよい。
【0089】
また、本実施形態で遮蔽リング124の外周を囲うように、誘電体で形成されるカバーリング122を設けることとしたが、これに限定されない。カバーリング122としては、半導体で形成されるカバーリング122を用いてもよい。また、半導体で形成されるカバーリング122としての機能を有する、半導体で形成される遮蔽リング124を用いてもよい。
【0090】
上記で、半導体で形成されるカバーリング122としての機能を有する、半導体で形成される遮蔽リング124を用いる場合の、リングアセンブリ112の構成について、
図22及び
図23を用いて説明する。
【0091】
図22は、半導体で形成される遮蔽リング124を用いる場合の、リングアセンブリ112の構成の概略を示す断面図である。
図22で、リングアセンブリ112は、環状部材として、エッジリング120と、下部誘電体リング200と、遮蔽リング124と、を含む。下部誘電体リング200は環状領域111bの外周領域128に載置され、エッジリング120は、環状領域111bの内周領域126及び下部誘電体リング上面130にまたがって載置される。遮蔽リング124は、下部誘電体リング上面130に載置される。遮蔽リング124は垂直部132及び水平部134を含む。垂直部132は所望の厚みを有する環状の部分であって、リングアセンブリ112の外周112aを構成する。また垂直部132は、鉛直部内周136がエッジリング120の外周側(図面右側)から距離d5だけ離間し、かつエッジリング120の外周側を覆う位置に載置される。水平部134は、垂直部132の上部からエッジリング120の内周側(図面左側)に張り出した、所望の厚みを有する環状の部分である。また水平部134は、水平部134下面138がエッジリング120の上面から距離d6だけ離間し、かつエッジリング120の外周側の上方を覆うように設けられる。誘電部には、誘電体部材150が設けられる。
【0092】
上記構成によると、上述した入熱低減効果及び、エッジリング120の交換寿命延長効果を享受するほか、以下に説明する効果が得られる。
【0093】
図23は、従来の半導体で形成されるカバーリング122(半導体カバーリング210)を用いた場合の比較例のリングアセンブリ112の構成の概略を示す模式図である。
図23で、比較例のリングアセンブリ112においては、実施例のリングアセンブリ112と異なり、エッジリング120と半導体カバーリング210の間の空間に誘電体部材150を設けることができない。これは、仮に誘電体部材150を設けたとしても消耗が激しく使用に耐えないためである。
【0094】
これに対し、実施例のリングアセンブリ112では、エッジリング120と遮蔽リング124との間に誘電体部材150を設けることができる。
【0095】
上記のような構成の違いによると、実施例のリングアセンブリ112は比較例のリングアセンブリ112と比べて以下の(ホ)~(ト)の点で有利である。すなわち、(ホ)実施例のリングアセンブリ112におけるエッジリング120と遮蔽リング124の間のカップリングCPが、比較例のリングアセンブリ112におけるエッジリング120と半導体カバーリング210との間のカップリングCPと比較して強い。(ヘ)カバーリング122上にデポが堆積しにくく、ブラックシリコンを形成しにくい。(ト)アーキングのリスクが小さい。なお本明細書においてカップリングCPとは、実施例においてはエッジリング120と遮蔽リング124が容量結合した状態を指し、比較例においてはエッジリング120と半導体カバーリング210が容量結合した状態を指す。
【0096】
(ホ)に関して、比較例のリングアセンブリ112にあっては、エッジリング120と半導体カバーリング210は周方向のみで容量結合する一方で、実施例のリングアセンブリ112にあっては、エッジリング120と遮蔽リング124が周方向と高さ方向に容量結合する。また、上述したようにエッジリング120と遮蔽リング124の間には誘電体部材150を設けることができ、これによってもエッジリング120と遮蔽リング124の間のカップリングCPを強くすることができる。
【0097】
(ヘ)に関して、その理由は、比較例のリングアセンブリ112においては半導体カバーリング210上に形成されるプラズマシースPSは厚さが薄いため、イオン入射の量が少なく又は速度が小さい。これに対し実施例のリングアセンブリ112における遮蔽リング124の上方に形成されるプラズマシースPSは十分に厚く、イオン入射の量が多く又は速度が大きい。すると、遮蔽リング124の上部に堆積したデポがイオン入射によって散らされやすくなり、デポが堆積しにくい。ブラックシリコンはデポが堆積した場合に半導体材料と反応して形成されるが、実施例のリングアセンブリ112ではデポが堆積しにくいためブラックシリコンの形成も抑制できる。
【0098】
(ト)に関して、比較例のリングアセンブリ112ではエッジリング120と半導体カバーリング210との間に電位差が生じやすく、アーキングが発生するおそれがある。アーキングを抑制するためにはエッジリング120と半導体カバーリング210との間のクリアランスCLを大きくすることが考えられるが、この場合カップリングCPがさらに弱まってしまう。これに対し実施例のリングアセンブリ112では、エッジリング120と遮蔽リング124の間に電位差が生じにくく、また誘電体部材150を介在しているため絶縁破壊電圧が大きいことからアーキングのリスクが小さい。
【符号の説明】
【0099】
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
111 本体部
120 エッジリング
124 遮蔽リング