(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071263
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】揮散装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/012 20060101AFI20230516BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230516BHJP
B65D 85/00 20060101ALI20230516BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
A61L9/012
B65D83/00 F
B65D85/00 A
A01M1/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183919
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 大彌
(72)【発明者】
【氏名】小岩 世梨花
【テーマコード(参考)】
2B121
3E068
4C180
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121CA02
2B121CA16
2B121CA44
2B121CA66
2B121CC02
2B121CC31
2B121EA01
2B121FA15
3E068AA35
3E068AB05
3E068AC10
3E068BB20
3E068CC03
3E068CC12
3E068CE03
3E068CE06
3E068DD07
3E068DD09
3E068DD11
3E068DD40
3E068DE11
3E068DE12
3E068DE18
3E068EE01
3E068EE22
3E068EE40
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA18
4C180CA06
4C180CA08
4C180GG10
4C180GG17
4C180JJ01
4C180JJ05
4C180MM09
(57)【要約】
【課題】複雑な形状の筐体を精度よく成形することができながらも、薬剤が筐体から漏れることを抑制できる揮散装置を提供する。
【解決手段】揮散装置1は、薬剤容器4を筐体2内に位置決めする位置決め部を備える。位置決め部は、揮散膜442に直交する第一方向において薬剤容器4を位置決めする突出部を有する。突出部の先端面は、使用状態で、揮散膜442における薬剤の液面よりも下側の位置に接触する接触領域531と、揮散膜442に接触しない非接触領域532と、を含む。突出部は、非接触領域532の少なくとも一部に形成されかつ接触領域531には形成されていない入れ子線7を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が収納された容器本体の開口面が揮散膜で閉じられた薬剤容器を筐体に収容可能な揮散装置であって、
前記筐体は、前記薬剤容器を前記筐体内に位置決めする位置決め部を備え、
前記位置決め部は、前記筐体の内面から突き出た突出部であって、前記揮散膜に直交する第一方向において前記薬剤容器を位置決めする突出部を有し、
前記突出部の先端面は、使用状態で、記揮散膜における薬剤の液面よりも下側の位置に接触する接触領域と、前記揮散膜に接触しない非接触領域と、を含み、
前記突出部は、前記非接触領域の少なくとも一部に形成されかつ前記接触領域には形成されていない入れ子線を含む、
揮散装置。
【請求項2】
前記位置決め部は、
前記第一方向に直交しかつ使用状態で水平面に沿う第二方向において、前記容器本体の少なくとも一部である第一部分の両側に位置する一対の第一規制壁であって、前記薬剤容器を前記第二方向に位置決めする一対の第一規制壁を有し、
一対の前記第一規制壁の中央に前記容器本体の中央が位置するように配置した場合に、前記第二方向において、一方の前記第一規制壁と前記第一部分との間の寸法は、前記入れ子線と前記揮散膜との間の寸法よりも小さい、
請求項1に記載の揮散装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、
前記第一方向に直交しかつ使用状態で水平面に沿う第二方向と前記第一方向とに直交する第三方向において、前記容器本体の少なくとも一部である第二部分の両側に位置する一対の第二規制壁であって、前記薬剤容器を前記第三方向に位置決めする一対の第二規制壁を有し、
一対の前記第二規制壁の中央に前記容器本体の中央が位置するように配置した場合に、前記第三方向において、一方の前記第二規制壁と前記第二部分との間の寸法は、前記入れ子線と前記揮散膜との間の寸法よりも小さい、
請求項1又は請求項2に記載の揮散装置。
【請求項4】
前記突出部がリブ状に形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の揮散装置。
【請求項5】
前記位置決め部は、
前記突出部である第一突出部と、
前記揮散膜における薬剤の液面よりも上側の位置に接触する部分を含む第二突出部と、
を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の揮散装置(特許文献1では、揮発性組成物ディスペンサ)が開示されている。特許文献1に記載の揮発性組成物ディスペンサは、ハウジング内にカートリッジが収容されている。
【0003】
カートリッジは、容器と、容器の開口を閉じる膜とを備える。容器に収容された揮発性組成物は、容器から流れ出して膜を濡らし、膜から揮発することで、揮発性組成物ディスペンサが置かれている空間に拡散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のディスペンサでは、ハウジングの内部のカートリッジは、ハウジングに対して位置決めされている。
【0006】
一般的に、位置決めするための構造としては、ハウジングの内面から突き出る突起によってカートリッジの膜を押さえる構造を採用することが考えられる。
【0007】
ハウジングの内面が複雑な形状であると、精度よくハウジングを成形するには入れ子金型を有する金型を用いる必要がある。しかし、入れ子金型を用いると、金型本体と入れ子金型との接続部分に対向する突起の表面が隆起し、突起に筋状の入れ子線が形成される。
【0008】
本発明者らは、入れ子線と突起の端面との入隅部において、毛細管現象による作用によって、入れ子線に沿って揮発性組成物が移動し、揮発性組成物がハウジングの外側に漏れる可能性があることを発見した。
【0009】
本開示は、複雑な形状の筐体を精度よく成形することができながらも、薬剤が筐体から漏れることを抑制できる揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の揮散装置は、薬剤が収納された容器本体の開口面が揮散膜で閉じられた薬剤容器を筐体に収容可能な揮散装置であって、前記筐体は、前記薬剤容器を前記筐体内に位置決めする位置決め部を備え、前記位置決め部は、前記筐体の内面から突き出た突出部であって、前記揮散膜に直交する第一方向において前記薬剤容器を位置決めする突出部を有し、前記突出部の先端面は、使用状態で、前記揮散膜における薬剤の液面よりも下側の位置に接触する接触領域と、前記揮散膜に接触しない非接触領域と、を含み、前記突出部は、前記非接触領域の少なくとも一部に形成されかつ前記接触領域には形成されていない入れ子線を含む。
【0011】
また、本開示の揮散装置では、前記位置決め部は、前記第一方向に直交しかつ使用状態で水平面に沿う第二方向において、前記容器本体の少なくとも一部である第一部分の両側に位置する一対の第一規制壁であって、前記薬剤容器を前記第二方向に位置決めする一対の第一規制壁を有し、一対の前記第一規制壁の中央に前記容器本体の中央が位置するように配置した場合に、前記第二方向において、一方の前記第一規制壁と前記第一部分との間の寸法は、前記入れ子線と前記揮散膜との間の寸法よりも小さいことが好ましい。
【0012】
また、本開示の揮散装置では、前記位置決め部は、前記第一方向に直交しかつ使用状態で水平面に沿う第二方向と前記第一方向とに直交する第三方向において、前記容器本体の少なくとも一部である第二部分の両側に位置する一対の第二規制壁であって、前記薬剤容器を前記第三方向に位置決めする一対の第二規制壁を有し、一対の前記第二規制壁の中央に前記容器本体の中央が位置するように配置した場合に、前記第三方向において、一方の前記第二規制壁と前記第二部分との間の寸法は、前記入れ子線と前記揮散膜との間の寸法よりも小さいことが好ましい。
【0013】
また、本開示の揮散装置では、前記突出部がリブ状に形成されていることが好ましい。
【0014】
また、本開示の揮散装置では、前記位置決め部は、前記突出部である第一突出部と、前記揮散膜における薬剤の液面よりも上側の位置に接触する部分を含む第二突出部と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の揮散装置は、複雑な形状の筐体を精度よく成形することができながらも、薬剤が筐体から漏れることを抑制できる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る揮散装置の正面側からの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る揮散装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る揮散装置の背面側からの斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、実施形態に係る揮散装置のフレームと可動体との分解斜視図である。
図4(B)は、
図4(A)を組み立てた斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る揮散装置のカバーの背面側からの斜視図である。
【
図6】
図6(A)は、実施形態に係る揮散装置のフレームに対する薬剤容器の位置を示す正面図である。
図6(B)は、
図6(A)のB部分拡大図である。
【
図7】
図7(A)(B)は、
図6(B)のC-C線断面図である。
図7(C)は、第一突出部を成形する際の概略図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る揮散装置のフレームに対する薬剤容器の位置関係を示す正面図である。
【
図9】
図9(A)は、
図4(B)のA-A線断面図において薬剤容器を加えた図である。
図9(B)は、
図9(A)において、可動部が第二位置に移動した状態の断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る揮散装置の薬剤容器の斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る薬剤容器の分解斜視図である。
【
図13】
図13(A)から(C)は、実施形態に係る薬剤容器の破断膜に穴を開けるときの動きを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態>
(1)全体
本実施形態に係る揮散装置1は、内部に収容された薬剤容器4から薬剤を揮散させ、揮散装置1が設置された空間に薬剤を拡散する装置である。本実施形態に係る揮散装置1は、
図1に示すように、水平面に平行な載置面1Gに載せて使用される。ただし、本開示に係る揮散装置1の設置態様には特に制限はない。本開示に係る揮散装置1は、例えば、天井等から吊るしたり、取手等に引っ掛けたり、ガラス面や鏡面等に吸盤等で引っ付けたり、送風機のルーバーに差し込んだりして設置されてもよい。本開示において、使用状態とは、薬剤を拡散する対象の空間に揮散装置1が設置された状態を意味する。使用状態の一例は、揮散装置1が載置面1Gに載った状態(脚部22の下面が載置面1Gに接した状態)である。
【0018】
揮散装置1は、
図2に示すように、フレーム23及びカバー29を有する筐体2と、筐体2に対して移動可能に取り付けられる可動体3と、を備える。可動体3及び薬剤容器4は筐体2に収容される。可動体3は、
図3に示すように、操作部31を有する。操作部31は、筐体2から突き出ており、筐体2から露出している。
【0019】
薬剤容器4は、
図2に示すように、薬剤が収容された容器本体41の開口面が揮散膜442で閉じられて構成されている。本実施形態に係る薬剤容器4は、揮散膜442と破断膜441とが積層されており、揮散膜442及び破断膜441によって、容器本体41の開口面が閉じられている。
【0020】
可動体3が筐体2に対して移動することで、可動体3は、破断膜441を破断させる。これにより、薬剤容器4が開封され、薬剤が揮散膜442に浸透し、空間に薬剤が揮散する。
【0021】
薬剤は、揮発性を有する液状の薬剤である。薬剤としては、特に制限はなく、例えば、芳香剤、消臭剤、防虫剤、又はこれらの混合物等が挙げられる。また、薬剤には、目的に応じて添加物が含まれる。添加物としては、例えば、香料、消臭成分、防虫成分、着色料等が挙げられる。
【0022】
(2)筐体
筐体2は、揮散装置1の外殻を構成する。筐体2は、
図3に示すように、本体部21と、脚部22と、を備える。本体部21の正面及び背面は、水平面に対して傾斜している。ここでは、本体部21の正面に直交する方向に沿って本体部21を見た場合(これを本体部21の「正面視」という)に、左右方向に平行な方向を「幅方向」とし、幅方向に直交する方向を「長さ方向」として定義する。また、幅方向と長さ方向に直交する方向(すなわち、本体部21の正面に直交する方向)を「厚さ方向」として定義する。以下の説明において、本体部21の長さ方向は、単に「長さ方向」と記載される。筐体2の幅方向は、単に「幅方向」と記載される。筐体2の厚さ方向は、単に「厚さ方向」と記載される。
【0023】
本体部21は、扁平な箱状であり、正面視略矩形状に形成されている。ここでいう「扁平」とは、厚さ方向の寸法が、幅方向の寸法及び長さ方向の寸法よりも短い形状を意味する。本体部21は中空である。長さ方向は、載置面1Gに載る脚部22の下面(筐体2の底部という場合がある)に対して傾斜している。長さ方向と脚部22の下面とのなす角(側面視におけるなす角)は、例えば、45°以上90°未満である。
【0024】
筐体2は、
図2に示すように、脚部22並びに本体部21の背面及び側周面を構成するフレーム23、及び本体部21の正面を構成するカバー29のほか、薬剤容器4を筐体2内に位置決めする位置決め部51,52(
図5,6等)を備える。筐体2の材質は合成樹脂である。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。本実施形態に係る筐体2は、熱可塑性樹脂を用いた射出成形(インジェクション成形)により成形される。ただし、本開示では、筐体2の材料及び成型方法は特に限定されない。
【0025】
(2.1)フレーム
フレーム23は、筐体2の骨格をなす部分である。フレーム23は、
図4に示すように、厚さ方向の正面側の面に開口面を有する容器状に形成されている。フレーム23は、背板部24と、側板部28と、を備える。
【0026】
背板部24は、本体部21の背面を構成する部分である。背板部24の上側の部分は、は、水平面に対して傾斜しており、背板部24の上側の部分の主面は厚さ方向に向いている。背板部24の下側の部分は、
図4(A)に示すように、複数の通気口25と、取付け部26と、を備える。
【0027】
通気口25は、薬剤容器4から揮散した薬剤が通る開口である。通気口25は、背板部24を貫通している。複数の通気口25は、背板部24の中央部分(すなわち、取付け部26)以外の部分に形成されている。各通気口25の形状としては、部位に応じて、矩形状、三角形状又は台形状等に形成されているが、これに限らず、例えば、円形状、楕円形状、五角形状、六角形状、網目状等に形成することもできる。
【0028】
取付け部26は、可動体3を取り付けるための部分である。取付け部26は、背板部24の幅方向の中央部で、かつ長さ方向の中央部の一範囲をなす部分で構成される。取付け部26は、
図4(A)に示すように、操作部開口261と、一対の保持部262と、複数のガイド部263と、を備える。
【0029】
操作部開口261は、可動体3の操作部31が通される開口である。操作部開口261は、略矩形状に形成されている。操作部開口261に対して、操作部31が、筐体2の内側から外側に向かって通され、筐体2から露出する。操作部開口261内において、操作部31は、厚さ方向に沿って移動し得る。
【0030】
保持部262は、可動体3の弾性部33の一部を取付け部26上に保持する部分である。可動体3は、上述したように、厚さ方向に沿って移動し得るが、保持部262によって弾性部33が保持されることで、可動体3の移動範囲が一定の範囲に制限される。
【0031】
一対の保持部262は、長さ方向に離れている。本実施形態に係る揮散装置1では、一対の保持部262は、可動体3の長手方向(長さ方向)の両端部に対応する位置に形成されている。ただし、一対の保持部262としては、幅方向に離れていてもよく、この場合、可動体3の短手方向の両端部に対応する位置に形成されるとよい。
【0032】
各保持部262は、本実施形態では、弾性部33の一部を、厚さ方向に移動しないように保持する鉤状の爪によって構成されている。ただし、保持部262としては、爪に限らず、例えば、溶着、溶接、ピン止め、ねじ止め、断面C字状の軸受け等で構成されてもよい。
【0033】
ガイド部263は、可動体3における幅方向の両端に係り合い、可動体3を厚さ方向に平行移動させる。ガイド部263としては、例えば、厚さ方向に延びた突条やレール等が挙げられる。可動体3に、例えば、溝が形成される。突条等が溝に嵌まり合うことで、ガイド部263は、可動体3を、厚さ方向へ平行移動させることができる。
【0034】
側板部28は、背板部24の外周から厚さ方向に突き出た部分である。側板部28の突出先端によってフレーム23の開口面を構成する。側板部28は、筐体2の側周面を構成する。本実施形態に係る揮散装置1では、側板部28には通気口25は形成されていないが、通気口25が形成されていてもよい。
【0035】
(2.2)カバー
カバー29は、フレーム23の正面の開口面を閉じる部材である。カバー29は、
図2に示すように、フレーム23内に、可動体3及び薬剤容器4を収容した状態で、フレーム23の開口面を閉じる。カバー29は、薬剤容器4内の薬剤の残量を視認できる残量表示窓291を有する。残量表示窓291は、カバー本体292に形成された長さ方向に延びる貫通穴294と、貫通穴294を覆う透明板293と、で構成されている。貫通穴294は、筐体2の内部に収容された薬剤容器4に対応する位置に形成されている。
【0036】
(2.3)位置決め部
位置決め部51,52は、薬剤容器4を筐体2内に位置決めする部分である。本実施形態に係る位置決め部51,52は、揮散膜442が水平面に対して交差した状態となるように、薬剤容器4を位置決めする。位置決め部は、カバー29に設けられた第一位置決め部51(
図5)と、フレーム23に設けられた第二位置決め部52(
図6)と、を備える。
【0037】
第一位置決め部51は、
図5に示すように、カバー29の内面から厚さ方向の内側に突き出ている。第一位置決め部51は、厚さ方向に沿って第一位置決め部51を見た場合、略矩形枠状に形成されている。第一位置決め部51は、長さ方向及び幅方向において、薬剤容器4を位置決めする。
【0038】
第一位置決め部51は、幅方向に離れた一対の第一規制壁511と、長さ方向に離れた一対の第二規制壁512と、を備える。各第一規制壁511は、長さ方向に延びている。各第二規制壁512は、幅方向に延びている。各第一規制壁511は、一対の第二規制壁512における幅方向の端部間同士をつなぐ。第一規制壁511と第二規制壁512とでなすコーナー部513は、円弧状に形成されている。
【0039】
一対の第一規制壁511の間には、薬剤容器4の一部である剤収容部421(「第一部分」という場合がある)が位置する。一対の第一規制壁511の間には、剤収容部421(「第二部分」という場合がある)が位置する。これにより、薬剤容器4は、筐体2内において、長さ方向及び幅方向に位置決めされる。なお、本実施形態では、第一部分と第二部分とは、互いに同じ剤収容部421であるが、本開示では、互いに異なる部分であってもよい。例えば、第一部分をフランジ部43とし、第二部分を剤収容部421としてもよい。
【0040】
第二位置決め部52は、厚さ方向において薬剤容器4を位置決めする。第二位置決め部52は、
図6(A)に示すように、フレーム23の内面から突き出た複数の第一突出部53(突出部)及び複数の第二突出部54を備える。第一突出部53及び第二突出部54は、背板部24から厚さ方向に突き出ている。第一突出部53及び第二突出部54は、フレームに対して、樹脂成形によって一体に成形されている。
【0041】
第一突出部53は、薬剤容器4の中央よりも下側の部分を厚さ方向に押さえる部分である。第一突出部53は、本実施形態では、幅方向に離れて二つ設けられているが、薬剤容器4に対して、幅方向の両端部に対応する位置と、その間の位置との三箇所以上に設けられてもよい。
【0042】
第一突出部53は、薬剤容器4が第一位置決め部51によって筐体2内に位置決めされた状態において、薬剤容器4の揮散膜442に対し、薬液の液面よりも下側の位置を厚さ方向に押さえる。ここでいう「薬剤容器4」は、所定量の薬剤を収容した薬剤容器4を意味し、長期間使用して薬剤が所定量に満たない薬剤容器4や、不十分な量の薬剤しか収容されていない不良品の薬剤容器4を含まない。「所定量の薬剤」とは、薬剤容器4の揮散膜442を鉛直面に沿わせた状態で、薬剤の液面が、容器本体41の収容部42の鉛直方向の高さ寸法のおよそ1/2以上の位置に対応する量を意味する。本実施形態に係る第一突出部53は、第一位置決め部51によって筐体2内に位置決めされた薬剤容器4に対し、長さ方向の中央よりも下側の位置、好ましくは、収容部42よりも下側の位置を押さえるように配置されている。
【0043】
第一突出部53は、
図6(B)に示すように、幅方向に延びたリブ状に形成されている。第一突出部53の先端面の一部は、揮散膜442に接触して、揮散膜442を厚さ方向に押さえる。第一突出部53の先端面(厚さ方向の端面)は、揮散膜442に接触する接触領域531と、揮散膜442に接触しない非接触領域532と、を含む。第一突出部53には、補強リブ6がつながっている。補強リブ6は、第一突出部53と側板部28とをつなぐ。これにより、補強リブ6は、筐体2に対する第一突出部53の強度を向上させることができる。
【0044】
なお、本開示に係る第一突出部53は、リブ状に形成されていなくてもよい。第一突出部53は、例えば、円柱状、ブロック状、棒状、T字状等であってもよい。また、第一突出部53の接触領域531と非接触領域532が並ぶ方向は、幅方向に平行でなくてもよく、例えば、長さ方向に平行であってもよいし、長さ方向及び幅方向に交差する方向に平行であってもよい。また補強リブ6は無くてもよい。
【0045】
接触領域531は、第一突出部53の先端面のうち、揮散膜442における薬液の液面よりも下側の位置に接触する領域である。本実施形態に係る接触領域531は、第一位置決め部51によって位置決めされた薬剤容器4の揮散膜442が動き得る範囲によって定められる。
【0046】
非接触領域532は、第一突出部53の先端面のうち、揮散膜442に接触しない領域である。非接触領域532と接触領域531とは同一平面上に位置している。非接触領域532は、接触領域531に隣接している。本実施形態では、接触領域531と非接触領域532との境界は現れないが、本開示では、接触領域531と非接触領域532とは区画されてもよい。
【0047】
第二突出部54は、薬剤容器4の中央よりも上側の部分を厚さ方向に押さえる部分である。第二突出部54は、本実施形態では、幅方向に離れて二つ設けられている。ただし、第二突出部54としては、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0048】
第二突出部54は、薬剤容器4が第一位置決め部51によって筐体2内に位置決めされた状態において、薬剤容器4の揮散膜442に対し、薬液の液面よりも上側の位置を厚さ方向に押さえる。第二突出部54は、第一突出部53と同様、薬剤容器4の揮散膜442に接触する領域を有する。
【0049】
ところで、本実施形態に係る筐体2は、内面に第一突出部53及び第二突出部54が形成されており、平坦な内面ではないため、比較的複雑な形状をしている。このため、筐体2を成形する金型には入れ子金型が使用されている。入れ子金型を用いることで、第一突出部53及び第二突出部54のような小さな突出部でも精度よく成形することができる。また、
図7(C)に示すように、金型本体8に入れ子金型81を用いることで、樹脂材料1Pを注入した際、金型本体8と入れ子金型81との間からキャビティ内の空気を逃がすことができる。このため、第一突出部53及び第二突出部54の形状が安定しやすい。
【0050】
一方、本実施形態に係る筐体2には、入れ子金型81と金型本体8との境界に対応する部分に、表面の僅かな盛り上がり(これを「入れ子線7」と称する)が形成される。入れ子線7は、例えば、0.1mm以下の微小な隆起であり、
図7(A)に示すようなV字状に形成されたり、
図7(B)に示すような段差状に形成されたりする。入れ子線7は、断面視で入隅状の部分71を含む。
【0051】
入れ子線7に対して液滴が付着すると、毛細管現象の作用によって、入れ子線7に沿って液滴が移動する。入れ子線7は、
図6(B)に示すように、筐体2の外側にまで連続しているため、仮に液滴が付着すると、液滴は筐体2の外側にまで移動する可能性がある。このため、万が一、揮散膜442に入れ子線7が接触していると、入れ子線7によって液滴が吸い込まれ、薬剤が筐体2の外側に漏れる原因になり得る。
【0052】
これに対し、本実施形態に係る揮散装置1では、
図6(B)に示すように、入れ子線7が第一突出部53の非接触領域532にのみ形成され、接触領域531には形成されないように組み立てられた金型本体8と入れ子金型81とが用いられる。このため、薬剤容器4の揮散膜442が入れ子線7に接触することはなく、入れ子線7による漏れを防ぐことができるうえに、筐体2の内面の第一突出部53等を精度よく成形することができる。
【0053】
入れ子線7は、成形時に空気を逃がす関係上、非接触領域532の少なくとも一部に形成されていればよいが、非接触領域532の全長にわたって形成されてもよい。また、入れ子線7は、第一突出部53の端面の中央部に形成されてもよいし、第一突出部53の端面における縁に沿って形成されてもよい。
【0054】
入れ子線7は、
図6(B)に示すように、側板部28から補強リブ6の端面に沿って形成され、第一突出部53の非接触領域532において幅方向に沿って形成される。そして、入れ子線7は、幅方向の端部から、長さ方向の下側に向かい、第一突出部53の下面に沿って背板部24の内面に向かって連続する。
【0055】
図8に示すように、入れ子線7と揮散膜442との間には隙間がある。この隙間は、薬剤容器4の移動範囲を考慮して設定されている。すなわち、一対の第一規制壁511の中央に容器本体41の幅方向の中央が位置するように配置した場合、幅方向において、一方の第一規制壁511と容器本体41(ここでは収容部42の剤収容部421)との間の寸法1Lは、入れ子線7と揮散膜442との間の寸法2Lよりも小さい。
【0056】
ここでいう「寸法1L」は、第一規制壁511と容器本体41との間の最小の寸法を意味する。また、「寸法2L」は、入れ子線7と揮散膜442との間の最小の寸法を意味する。ただし、本実施形態では、第一規制壁511と容器本体41との間の最大の寸法を「寸法1L」とした場合でも、寸法1Lは、寸法2Lよりも小さくなるように設定されている。
【0057】
また、一対の第二規制壁512の中央に容器本体41の長さ方向の中央が位置するように配置した場合に、入れ子線7の一部は、揮散膜442の下方に位置している。この場合、長さ方向において、一方の第二規制壁512と容器本体41との間の寸法3Lは、入れ子線7と揮散膜442との間の寸法4Lよりも小さい。
【0058】
ここでいう「寸法3L」は、第二規制壁512と容器本体41との間の最小の寸法を意味する。また「寸法4L」は、入れ子線7と揮散膜442との間の最小の寸法を意味する。ただし、本実施形態では、第二規制壁512と容器本体41との間の最大の寸法を「寸法3L」とした場合でも、寸法3Lは、寸法4Lよりも小さくなるように設定されている。
【0059】
このため、薬剤容器4が第一位置決め部51の範囲で移動したとしても、揮散膜442が入れ子線7に接触しない。
【0060】
(3)可動体
可動体3は、筐体2に対して、移動可能に設けられた部材である。可動体3は、
図4(A)に示すように、ユーザによって操作される操作部31と、可動体3の主体を構成する可動部32と、一対の弾性部33と、を備える。
【0061】
操作部31は、厚さ方向に沿って移動し得る。操作部31は、初期の位置(可動部32が背板部24に当たる位置;
図9(A)参照)と、可動部32が薬剤容器4を開封する位置(
図9(B)参照)との間で移動可能に構成されている。本実施形態では、操作部31の移動範囲のうち、初期の位置を「第一位置」とし、可動部32が薬剤容器4を開封する位置を「第二位置」として定義する。
【0062】
本実施形態では、操作部31、可動部32及び弾性部33は、一体に成形されている。可動体3の材料としては、特に制限はなく、例えば、合成樹脂、金属、パルプ、カーボン等が挙げられる。
【0063】
可動部32は、操作部31と一体に動く。可動部32は、長さ方向に平行な長軸(言い換えると「長手軸」)を有する長円形状に形成されている。可動部32は、長手軸に沿う方向に離れて形成された複数(ここでは二つ)の突入部321を備える。
【0064】
各突入部321は、
図9(A)に示すように、操作部31が第一位置にあると、薬剤容器4に対して離れている。一方、各突入部321は、
図9(B)に示すように、操作部31が第二位置に移動すると、薬剤容器4に対して穴を開け、薬剤容器4を開封する。複数の突入部321は、可動部32の長手軸に沿う方向の両端部に形成されている。各突入部321は、可動部32の移動方向の第一位置側の面から突き出している。各突入部321の形状としては、例えば、錘状(円錐状、角錘状)、針状、棒状等が挙げられるが、円錐状であることが好ましい。
【0065】
複数の突入部321は、可動部32の長手軸方向(すなわち、長さ方向)に離れている。これによって、
図9(B)に示すように、薬剤容器4に対して、薬剤容器4の中央よりも上側の位置と下側の位置との両方に穴を開けることができる。すなわち、複数の突入部321は、薬剤容器4内の気相に対応する部分と液相に対応する部分との両方に穴を開けることができる。
【0066】
この結果、複数の穴のうちの上側の穴を空気取り込み穴とし、下側の穴を薬剤通過用の穴とすることができる。このため、薬剤容器4は、薬剤を吐出しやすくでき、薬剤の安定した揮発量を維持できる。可動部32の長手軸方向に並ぶ突入部321のうちの下側の突入部321は、できる限り容器本体41の開口縁に近い位置に穴を開けることが好ましい。なお、上側とは、揮散装置1を載置面1Gに置いた状態における上側を意味する。下側とは、揮散装置1を載置面1Gに置いた状態における下側を意味する。
【0067】
一対の弾性部33は、可動部32と筐体2とをつなぐ部分である。フレーム23の取付け部26に対し、可動体3が取り付けられると、
図9(A)に示すように、操作部31は第一位置に位置する。操作部31が第一位置に位置する状態で操作部31に外力を付加する(筐体2内に押し込む)と、
図9(B)に示すように、弾性部33が弾性変形する。このとき、操作部31が第一位置から第二位置へ移動するのに連動して可動部32が動く(
図9(A)→
図9(B))。この状態で、操作部31に付加された外力を除くと、弾性部33が元の状態に戻る。このとき、操作部31が第二位置から第一位置へ移動するのに連動して可動部32が復帰する(
図9(B)→
図9(A))。
【0068】
(4)薬剤容器
薬剤容器4は、薬剤が収容された容器である。薬剤容器4は、
図10に示すように、容器本体41と、蓋体44と、板部材45と、を備える。
【0069】
(4.1)容器本体
容器本体41は、薬剤容器4の主体を構成する部分である。容器本体41は、硬質樹脂で構成されている。硬質樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、あるいはこれらの積層体等が挙げられる。本実施形態では、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンとの積層体で構成されている。
【0070】
本実施形態に係る容器本体41は、薬剤の残量が視認できるように、透明な樹脂で構成されている。ここでいう「透明」とは、薬剤の残量が視認できる程度の透明度であればよく、いわゆる半透明も含まれる。なお、本開示では、容器本体41は不透明な材料で構成されてもよい。
【0071】
容器本体41は、収容部42と、フランジ部43と、を備える。収容部42は、容器本体41において薬剤が収容される部分である。収容部42は、一面に開口面を有する容器状に形成されている。収容部42は、
図11に示すように、剤収容部421と、板材収容部422と、を備える。
【0072】
剤収容部421は、主に薬剤が収容される部分である。剤収容部421は、
図12に示すように、平面視略矩形状の底壁4211と、底壁4211の外周縁から立ち上がる第一側壁4212と、を備える。板材収容部422は、板部材45が収容される部分であり、剤収容部421とフランジ部43との間に形成される。板材収容部422は、剤収容部421の第一側壁4212につながる支持部4221と、支持部4221の外周縁から立ち上がる第二側壁4222と、を備える。第二側壁4222のフランジ部43側の端によって、収容部42の開口面が形成されている。
【0073】
剤収容部421の厚さ方向の寸法(内寸)は、特に制限はないが、例えば、5mm以上20mm以下に設定される。板材収容部422の厚さ方向の寸法(内寸)は、板部材45の厚さ方向の寸法に応じて適宜設定されるが、例えば、1mm以上5mm以下に設定される。
【0074】
フランジ部43は、蓋体44が接合される部分である。フランジ部43は、収容部42の開口面の外周の全周に沿って設けられている。フランジ部43の蓋体44が接合される面は、平面である。フランジ部43の蓋体44が接合される面の全面が同一平面上に位置している。
【0075】
(4.2)蓋体
蓋体44は、容器本体41の開口面を閉じるようにして、フランジ部43に接合される。フランジ部43に対する蓋体44の接合方法としては、例えば、溶着、接着等により実現される。蓋体44は、可とう性を有している。蓋体44は、破断膜441と、揮散膜442と、が重ねられて構成されている。蓋体44は、薬剤容器4の内側から外側に向かって、破断膜441、揮散膜442の順に配置されている。
【0076】
破断膜441は、厚さ方向の外側から揮散膜442に外力が加わった際に、揮散膜442よりも少ない伸長量で破断するように構成されている。破断膜441は、液不透過性の材料で構成されている。破断膜441としては、例えば、ポリエチレン層、アルミニウム層及びポリエチレンテレフタレート層が積層された薄膜が挙げられる。
【0077】
破断膜441の具体例として、例えば、第一のポリエチレン層、アルミニウム層、第二のポリエチレン層及びポリエチレンテレフタレート層が、内側から外側に向かって、この順で積層された薄膜が挙げられる。この場合、例えば、第一のポリエチレン層の厚さが、5μm以上30μm、アルミニウム層の厚さが5μm以上25μm以下、第二のポリエチレン層の厚さが5μm以上25μm以下、ポリエチレンテレフタレート層の厚さが5μm以上25μm以下に設定される。
【0078】
揮散膜442は、破断膜441に形成された穴(破断穴)を通過した薬剤を保持しつつ、薬剤を揮散させる。揮散膜442は、破断膜441の外側の面(厚さ方向において、容器本体41とは反対側の面)に配置されている。揮散膜442は、厚さ方向の外側から揮散膜442に外力が加わった際に、破断膜441よりも破断しにくい。揮散膜442としては、例えば、テスリン(商標)、ダラミック(商標)等の多孔質フィルムが挙げられる。
【0079】
このような構成の薬剤容器4は、
図13に示すように、操作部31が第一位置から第二位置に移動する際、突入部321が揮散膜442を押す。その後、突入部321が破断膜441を押し込む。このとき、揮散膜442及び破断膜441は伸長するが、先に破断膜441が破断し、破断膜441に穴が開く(
図13(A)→(B))。この後、操作部31に対する外力が除かれると、弾性部33によって、操作部31は第二位置から第一位置に復帰し、可動部32及び突入部321は、揮散膜442から離れる。
【0080】
すると、薬剤容器4内の薬剤は、下側の穴を通って外部に出る。薬剤は揮散膜442に浸透し、揮散する。薬剤が外に出ると、容器内が減圧するため、上側の穴を通って空気が取り込まれる。このとき、揮散膜442は、薬剤の液面と略同じ程度の高さから下側の部分が主に濡れ、薬剤の液面よりも上側の部分は濡れないか、又は濡れる量が少ない。このため、揮散膜442において、薬剤の液面よりも上側を押さえる第二突出部54には薬剤が付着しにくい。
【0081】
(4.3)板部材
板部材45は、蓋体44に対して、外力が加わった際に、蓋体44の伸びを部分的に阻止するための部材である。板部材45によって、外力が加わった際に、破断膜441がより破断し易くなる。板部材45は、
図11に示すように、略矩形状に形成された板状に形成されている。板部材45の材料としては、特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリ塩化ビニル、あるいはこれらの積層体等が挙げられる。
【0082】
板部材45には、複数(ここでは二つ)の貫通穴451が形成されている。複数の貫通穴451は、板部材45の長手方向(長さ方向)の両端部分に形成されている。貫通穴451は、外力が加えられる予定の部分に対応する位置に形成されている。
【0083】
(5)効果
以上説明したように、本実施形態に係る揮散装置1では、突出部の先端面が接触領域531と非接触領域532とを含み、突出部の入れ子線7が、非接触領域532の少なくとも一部に形成されかつ接触領域531には形成されていない。このため、入れ子金型を用いることによって、内面が複雑な形状の筐体2を成形することができながらも、薬剤容器4の揮散膜442が入れ子線7に接触することがない。このため、複雑な形状の筐体2を精度よく成形することができながらも、薬剤が筐体2から漏れるのを防ぐことができる。
【0084】
また、位置決め部が第一突出部53と第二突出部54とを有するため、厚さ方向(揮散膜442に直交する第一方向)における、薬剤容器4の位置決めを効果的に行うことができる。
【0085】
また、一対の第一規制壁511の中央に容器本体41の中央が位置するように配置した場合に、幅方向(第二方向)において、一方の第一規制壁511と容器本体41(第一部分)との間の寸法1Lは、入れ子線7と揮散膜442との間の寸法2Lよりも小さい。このため、薬剤容器4が幅方向に動いても、揮散膜442が入れ子線7に接触しない。
【0086】
また、一対の第二規制壁512の中央に容器本体41の中央が位置するように配置した場合に、長さ方向(第三方向)において、一方の第二規制壁512と容器本体41(第二部分)との間の寸法3Lは、入れ子線7と揮散膜442との間の寸法4Lよりも小さい。このため、薬剤容器4が長さ方向に動いても、揮散膜442が入れ子線7に接触しない。
【0087】
また、突出部がリブ状に形成されているため、薬剤容器4を位置決めするための強度を確保しながら、接触領域531をできる限り小さくすることができる。
【0088】
<変形例>
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0089】
上記実施形態に係る揮散装置1では、可動体3は、筐体2とは別部材で構成されたが、筐体2と可動体3とは一体に形成されてもよい。また、可動体3を備えたが、本開示では、揮散装置1が可動体3の機能を有する必要はなく、可動体3はなくてもよい。本開示に係る揮散装置1では、予め開封された薬剤容器4を筐体2に収容してもよい。
【0090】
上記実施形態に係る操作部31は、厚さ方向に沿って移動可能に構成されたが、本開示では、操作部31の移動方向は、厚さ方向に限らず、例えば、長さ方向又は幅方向に沿って移動可能に構成されてもよい。この場合、操作部31は、例えば、筐体2の側周面から突き出していてもよい。操作部31の移動に連動して、押す方向と交差する方向に可動部32が移動してもよい。また、操作部31は、押す操作だけでなく、スライド操作、回転操作、引張り操作等によって操作してもよい。
【0091】
上記実施形態に係る揮散装置1では、薬剤容器4はフランジ部43を備えたが、フランジ部43は無くてもよい。
【0092】
上記実施形態では、筐体2が載置面1Gに対して傾斜するため、揮散膜442が第一突出部53及び第二突出部54によって、常時接触することで支持されていた。しかし、本開示では、筐体2の長さ方向が載置面1Gに対して垂直に延びてもよい。この場合、第一突出部53及び第二突出部54は、揮散膜442に対して、対向(近接又は接触)していればよく、必ずしも常時接触していなくてもよい。ただし、揮散膜442が斜め下方を向くように、筐体2内において薬剤容器4が位置決めされると、揮散膜442が薬剤によって濡れる範囲を広くすることができる。したがって、揮散膜442からの揮散量が安定するため好ましい。
【0093】
使用状態において、揮散膜442は水平面と平行であってもよい。例えば、揮散装置1は、揮散膜442が水平面と平行になるように、ゴミ箱の蓋の裏側に吸盤等で取り付けられてもよい。この場合、第一突出部53及び第二突出部54が揮散膜442に接し、第一突出部53及び第二突出部54の接触領域において、入れ子線7がない。
【0094】
上記実施形態では、本体部21は、長さ方向の寸法が幅方向の寸法よりも長く形成されたが、本開示では、長さ方向の寸法と幅方向の寸法は同じであってもよいし、幅方向の寸法が長さ方向の寸法よりも長くてもよい。なお、上記実施形態では、筐体2の「厚さ方向」「幅方向」「長さ方向」に基づいて、実施形態の説明をしたが、筐体2の「厚さ方向」「幅方向」「長さ方向」は、それぞれ、「第一方向」「第二方向」「第三方向」と言い換えることもできる。
【0095】
上記実施形態に係る揮散装置1では、薬剤容器4を、薬剤容器のみを新しい薬剤容器4に交換できるカートリッジ式の薬剤容器としてもよい。なお、「破断膜441」「揮散膜442」は、それぞれ、「第1膜」、「第2膜」と言い換えることもできる。
【0096】
本明細書にて、「略平行」、又は「略直交」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0097】
また、本明細書において「端部」及び「端」などのように、「…部」の有無で区別した表現が用いられている。例えば、「端」は物体の末の部分を意味するが、「端部」は「端」を含む一定の範囲を持つ域を意味する。端を含む一定の範囲内にある点であれば、いずれも、「端部」であるとする。他の「…部」を伴った表現についても同様である。
【符号の説明】
【0098】
1 揮散装置
2 筐体
4 薬剤容器
41 容器本体
442 揮散膜
511 第一規制壁
512 第二規制壁
53 第一突出部(突出部)
531 接触領域
532 非接触領域
54 第二突出部
7 入れ子線