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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071282
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】真空処理装置及び真空処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20230516BHJP
【FI】
C23C14/35 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183948
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】立川 晋輔
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 大
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】箱守 宗人
(72)【発明者】
【氏名】西ノ坊 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】須田 具和
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DC13
4K029DC40
4K029DC41
4K029DC43
4K029DC45
4K029DC46
4K029EA06
(57)【要約】
【課題】生産性を向上させる真空処理装置及び真空処理方法を提供する。
【解決手段】真空処理装置は、円筒状のスパッタリングターゲットと、磁場発生機構と、制御装置と、真空容器とを具備する。上記スパッタリングターゲットは、スパッタリング粒子を放出する第1主面と、上記第1主面とは反対側の第2主面とを含む。上記磁場発生機構は、上記第2主面に対向し、一軸方向に並設された複数の磁気回路部を有し、上記複数の磁気回路部の中、上記一軸方向において両端に配置された一対の磁気回路部から発せられる磁束の位置が変更可能に構成される。上記制御装置は、上記磁束の上記位置を制御し、上記第1主面に対向して形成される放電プラズマを上記スパッタリングターゲットの端部にまで逸らすことができる。上記真空容器は、上記スパッタリングターゲットと上記磁場発生機構とを収容する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッタリング粒子を放出する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを含む円筒状のスパッタリングターゲットと、
前記第2主面に対向し、一軸方向に並設された複数の磁気回路部を有し、前記複数の磁気回路部の中、前記一軸方向において両端に配置された一対の磁気回路部から発せられる磁束の位置が変更可能に構成された磁場発生機構と、
前記磁束の前記位置を制御し、前記第1主面に対向して形成される放電プラズマを前記スパッタリングターゲットの端部にまで逸らすことが可能な制御装置と、
前記スパッタリングターゲットと前記磁場発生機構とを収容する真空容器と
を具備する真空処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された真空処理装置であって、
前記第1主面は、前記放電プラズマによって前記第1主面がスパッタリングされるエロージョン領域と、前記エロージョン領域の外部である非エロージョン領域とを有し、
前記制御装置は、前記非エロージョン領域にまで前記放電プラズマを移動させることができる
真空処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載された真空処理装置であって、
前記制御装置は、前記エロージョン領域から前記スパッタリング粒子を放出させた後に、前記非エロージョン領域にまで前記放電プラズマを移動させ、前記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をする
真空処理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載された真空処理装置であって、
前記磁場発生機構は、前記複数の磁気回路部を前記スパッタリングターゲットの中心軸を中心に回転することができる回転機構を有し、
前記制御装置は、前記エロージョン領域をスパッタリングする制御をする際、前記複数の磁気回路部を第1の回転位置に位置させて前記エロージョン領域をスパッタリングする制御をし、
前記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をする際、前記複数の磁気回路部を前記第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置させて前記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をする
真空処理装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1つに記載された真空処理装置であって、
前記磁場発生機構は、前記複数の磁気回路部のそれぞれと前記スパッタリングターゲットとの間の距離を変更することができる移動機構を有し、
前記制御装置は、前記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をする際、前記複数の磁気回路部から前記一対の磁気回路部を除いた残りの磁気回路部と前記スパッタリングターゲットとの間の距離を前記エロージョン領域をスパッタリングする際よりも遠ざけて前記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をする
真空処理装置。
【請求項6】
スパッタリング粒子を放出する第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面とを含む円筒状のスパッタリングターゲットと、前記第2主面に対向し、一軸方向に並設された複数の磁気回路部を有し、前記複数の磁気回路部の中、前記一軸方向において両端に配置された一対の磁気回路部から発せられる磁束の位置が変更可能に構成された磁場発生機構とを準備し、
減圧雰囲気下で、前記磁束の前記位置を変更し、前記第1主面に対向して形成される放電プラズマを前記スパッタリングターゲットの端部にまで逸らして、前記第1主面のプラズマ処理をする真空処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載された真空処理方法であって、
前記第1主面は、前記放電プラズマによって前記第1主面がスパッタリングされるエロージョン領域と、前記エロージョン領域の外部である非エロージョン領域とを有し、
前記非エロージョン領域にまで前記放電プラズマを移動させて前記第1主面のプラズマ処理を行い、
前記エロージョン領域から放出した前記スパッタリング粒子が前記非エロージョン領域に堆積して形成された再付着膜を前記プラズマ処理によって取り除く
真空処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載された真空処理方法であって、
前記エロージョン領域から前記スパッタリング粒子を放出させた後に、前記非エロージョン領域にまで前記放電プラズマを移動させ、前記非エロージョン領域をスパッタリングする
真空処理方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載された真空処理方法であって、
前記磁場発生機構は、前記複数の磁気回路部を前記スパッタリングターゲットの中心軸を中心に回転することができる回転機構を有し、
前記エロージョン領域をスパッタリングする際、前記複数の磁気回路部を第1の回転位置に位置させて前記エロージョン領域をスパッタリングし、
前記非エロージョン領域をスパッタリングする際、前記複数の磁気回路部を前記第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置させて前記非エロージョン領域をスパッタリングする
真空処理方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1つに記載された真空処理方法であって、
前記磁場発生機構は、前記複数の磁気回路部のそれぞれと前記スパッタリングターゲットとの間の距離を変更することができる移動機構を有し、
前記非エロージョン領域をスパッタリングする際、前記複数の磁気回路部から前記一対の磁気回路部を除いた残りの磁気回路部と前記スパッタリングターゲットとの間の距離を前記エロージョン領域をスパッタリングする際よりも遠ざけて前記非エロージョン領域をスパッタリングする
真空処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置及び真空処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング成膜を実現する真空処理装置においては、平板型のスパッタリングターゲットに代えて、平板型のスパッタリングターゲットよりも使用寿命が長く、交換の周期が長いロータリターゲットを使用する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-131673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなロータリターゲットを長時間使用すると、スパッタリングターゲットの非エロージョン領域(例えば、スパッタリングターゲットの両端部)にスパッタリング粒子が再付着し、非エロージョン領域に再付着膜が形成される場合がある。このような再付着膜はスパッタリングターゲットから剥離する場合もあり、真空処理装置での発塵要因となる。
【0005】
この発塵を抑える方法として、スパッタリング成膜を定期的に中断し、人手によって再付着膜を非エロージョン領域から取り除くクリーニング作業(例えば、研磨作業)がある。しかしながら、このような作業は真空処理装置の大気解放を要することから、成膜工程の生産性向上の妨げとなっていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産性を向上させる真空処理装置及び真空処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空処理装置は、円筒状のスパッタリングターゲットと、磁場発生機構と、制御装置と、真空容器とを具備する。
上記スパッタリングターゲットは、スパッタリング粒子を放出する第1主面と、上記第1主面とは反対側の第2主面とを含む。
上記磁場発生機構は、上記第2主面に対向し、一軸方向に並設された複数の磁気回路部を有し、上記複数の磁気回路部の中、上記一軸方向において両端に配置された一対の磁気回路部から発せられる磁束の位置が変更可能に構成される。
上記制御装置は、上記磁束の上記位置を制御し、上記第1主面に対向して形成される放電プラズマを上記スパッタリングターゲットの端部にまで逸らすことができる。
上記真空容器は、上記スパッタリングターゲットと上記磁場発生機構とを収容する。
【0008】
このような真空処理装置であれば、その生産性がより向上する。
【0009】
上記真空処理装置においては、上記第1主面は、上記放電プラズマによって上記第1主面がスパッタリングされるエロージョン領域と、上記エロージョン領域の外部である非エロージョン領域とを有し、上記制御装置は、上記非エロージョン領域にまで上記放電プラズマを移動させることができてもよい。
【0010】
このような真空処理装置であれば、上記制御装置の制御によって、その生産性がより向上する。
【0011】
上記真空処理装置においては、上記制御装置は、上記エロージョン領域から上記スパッタリング粒子を放出させた後に、上記非エロージョン領域にまで上記放電プラズマを移動させ、上記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をしてもよい。
【0012】
このような真空処理装置であれば、上記制御装置の制御によって、その生産性がより向上する。
【0013】
上記真空処理装置においては、上記磁場発生機構は、上記複数の磁気回路部を上記スパッタリングターゲットの中心軸を中心に回転することができる回転機構を有し、上記制御装置は、上記エロージョン領域をスパッタリングする制御をする際、上記複数の磁気回路部を第1の回転位置に位置させて上記エロージョン領域をスパッタリングする制御をし、上記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をする際、上記複数の磁気回路部を上記第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置させて上記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をしてもよい。
【0014】
このような真空処理装置であれば、上記制御によって、その生産性がより向上する。
【0015】
上記真空処理装置においては、上記磁場発生機構は、上記複数の磁気回路部のそれぞれと上記スパッタリングターゲットとの間の距離を変更することができる移動機構を有し、
上記制御装置は、上記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をする際、上記複数の磁気回路部から上記一対の磁気回路部を除いた残りの磁気回路部と上記スパッタリングターゲットとの間の距離を上記エロージョン領域をスパッタリングする際よりも遠ざけて上記非エロージョン領域をスパッタリングする制御をしてもよい。
【0016】
このような真空処理装置であれば、上記制御によって、その生産性がより向上する。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る真空処理方法では、上記スパッタリングターゲットと、上記磁場発生機構とが準備され、
減圧雰囲気下で、上記磁束の上記位置を変更し、上記第1主面に対向して形成される放電プラズマを上記スパッタリングターゲットの端部にまで逸らして、上記第1主面のプラズマ処理がされる。
【0018】
このような真空処理方法であれば、その生産性がより向上する。
【0019】
上記真空処理方法においては、上記第1主面は、上記放電プラズマによって上記第1主面がスパッタリングされるエロージョン領域と、上記エロージョン領域の外部である非エロージョン領域とを有し、上記非エロージョン領域にまで上記放電プラズマを移動させて上記第1主面のプラズマ処理を行い、上記エロージョン領域から放出した上記スパッタリング粒子が上記非エロージョン領域に堆積して形成された再付着膜を上記プラズマ処理によって取り除いてもよい。
【0020】
このような真空処理方法であれば、上記方法によって、その生産性がより向上する。
【0021】
上記真空処理方法においては、上記エロージョン領域から上記スパッタリング粒子を放出させた後に、上記非エロージョン領域にまで上記放電プラズマを移動させ、上記非エロージョン領域をスパッタリングしてもよい。
【0022】
このような真空処理方法であれば、上記方法によって、その生産性がより向上する。
【0023】
上記真空処理方法においては、上記磁場発生機構は、上記複数の磁気回路部を上記スパッタリングターゲットの中心軸を中心に回転することができる回転機構を有し、
上記エロージョン領域をスパッタリングする際、上記複数の磁気回路部を第1の回転位置に位置させて上記エロージョン領域をスパッタリングし、
上記非エロージョン領域をスパッタリングする際、上記複数の磁気回路部を上記第1の回転位置とは異なる第2の回転位置に位置させて上記非エロージョン領域をスパッタリングしてもよい。
【0024】
このような真空処理方法であれば、上記方法によって、その生産性がより向上する。
【0025】
上記真空処理方法においては、上記磁場発生機構は、上記複数の磁気回路部のそれぞれと上記スパッタリングターゲットとの間の距離を変更することができる移動機構を有し、
上記非エロージョン領域をスパッタリングする際、上記複数の磁気回路部から上記一対の磁気回路部を除いた残りの磁気回路部と上記スパッタリングターゲットとの間の距離を上記エロージョン領域をスパッタリングする際よりも遠ざけて上記非エロージョン領域をスパッタリングしてもよい。
【0026】
このような真空処理方法であれば、上記方法によって、その生産性がより向上する。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように、本発明によれば、生産性を向上させる真空処理装置及び真空処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態の真空処理装置に含まれるスパッタリングターゲット機構を示す模式的断面図である。
図2】図(a)、(b)は、磁気回路部に含まれる磁石の配列を示す模式的平面図であり、図(c)は、その配列を示す模式的斜視図である。
図3】本実施形態の真空処理装置を示す模式的断面図である。
図4】ターゲットのスパッタリング面にまで漏洩する磁場が移動する動作を示す模式的断面図である。
図5】スパッタリング面近傍の放電プラズマが移動する動作を示す模式的断面図である。
図6】本実施形態の変形例1に係る真空処理装置の動作を示す模式的断面図である。
図7】本実施形態の変形例2に係る真空処理装置の動作を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0030】
図1は、本実施形態の真空処理装置に含まれるスパッタリングターゲット機構を示す模式的断面図である。図1には、スパッタリングターゲット機構1(以下、ターゲット機構1とする)と、基板90とが示されている。基板90と、ターゲット機構1とは互いに対向する。基板90には、ターゲット機構1から放出されるスパッタリング粒子が堆積される。
【0031】
ターゲット機構1は、スパッタリングターゲット20(以下、ターゲット20とする。)と、磁場発生機構30とを具備する。ターゲット機構1は、減圧雰囲気で基板90にスパッタリング成膜を行う際のカソード電極として用いられる。
【0032】
ターゲット20は、層状に形成されたスパッタリング材21と、スパッタリング材21を支持する金属製の基材22(バッキングプレート)とを有する。ターゲット20は、放電プラズマによってスパッタリング粒子を放出するスパッタリング面(第1主面)201と、スパッタリング面201とは反対側の裏面(第2主面)とを含む。基板90には、スパッタリング面201が対向する。ターゲット20の長さは、X軸方向において、基板90の長さよりも長く構成され、ターゲット20の双方の端部20eが基板90から突き出る。
【0033】
なお、スパッタリング材21は、例えば、Al、タンタル、チタン、モリブデン、ガリウム、銅、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金(NiCr)、銅ニッケル合金(CuNi)等の金属、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ニオブ等の酸化物、シリコン等の半導体の少なくとも1つを含む。
【0034】
磁場発生機構30は、ターゲット20の裏面202に対向する。磁場発生機構30は、複数の磁気回路部311~319と、複数の移動機構331~339とを有する。移動機構331~339は、図示しない基体に固定されている。図1の例では、磁気回路部311~319の中、基板90に対して少なくとも3個の磁気回路部313、314、315が対向している。なお、磁気回路部の数は、一例であり図示された数に限らない。また、基板90に対向する磁気回路部の数は、一例であり図示された数に限らない。
【0035】
磁気回路部311~319は、一軸方向に所定のクリアランスを隔てて非接触に並設される。磁気回路部311~319は、ターゲット20の裏面202に対向する。本実施形態では、一軸方向をX軸方向とする。また、X軸方向に直交する方向をY軸方向またはZ軸方向とする。Z軸方向は、磁場発生機構30がターゲット20に向かう方向である。また、Y軸方向は、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向である。また、X軸方向において両端に配置された磁気回路部311、319以外の磁気回路部312~318は、一体的に構成されてもよい。
【0036】
磁場発生機構30に設けられた移動機構は、磁気回路部311~319のそれぞれの間とターゲット20との間の距離を変更することできる。例えば、移動機構331~339のそれぞれは、それぞれの磁気回路部とターゲット20との間の距離を独立して移動させることができる。移動機構331~339のそれぞれは、サーボモータ、ステッピングモータ、位置検出センサ、回転位置センサ等を有する。移動機構331~339のそれぞれの制御は、制御装置40(後述)によって行われる。
【0037】
例えば、移動機構331は、磁気回路部311の位置を移動させ、磁気回路部311と裏面202との間の距離を変更する。移動機構332は、磁気回路部312の位置を移動させ、磁気回路部312と裏面202との間の距離を変更する。移動機構333は、磁気回路部313の位置を移動させ、磁気回路部313と裏面202との間の距離を変更する。移動機構334は、磁気回路部314の位置を移動させ、磁気回路部314と裏面202との間の距離を変更する。移動機構335は、磁気回路部315の位置を移動させ、磁気回路部315と裏面202との間の距離を変更する。移動機構336は、磁気回路部316の位置を移動させ、磁気回路部316と裏面202との間の距離を変更する。移動機構337は、磁気回路部317の位置を移動させ、磁気回路部317と裏面202との間の距離を変更する。移動機構338は、磁気回路部318の位置を移動させ、磁気回路部318と裏面202との間の距離を変更する。移動機構339は、磁気回路部319の位置を移動させ、磁気回路部319と裏面202との間の距離を変更する。
【0038】
図2(a)、(b)は、磁気回路部に含まれる磁石の配列を示す模式的平面図であり、図2(c)は、その配列を示す模式的斜視図である。また、図2(a)には、ターゲット20の裏面202から磁気回路部311、319のいずれか1つを見たときの様子と、磁気回路部311、319のいずれか1つをY-Z軸平面において切断したときの様子が示されている(A-A切断面)。図2(b)には、ターゲット20の裏面202から磁気回路部312~318のいずれか1つを見たときの様子と、磁気回路部312~318のいずれか1つをY-Z軸平面において切断したときの様子が示されている(B-B切断面)。
【0039】
図2(a)、(b)のそれぞれの断面図において、磁石部31、32と、磁石部33、34とが円弧状に配置されているのは、ターゲット20が円筒状のロータリターゲットである場合を想定したことによる。ターゲット20が円筒状のロータリターゲットである場合には、ターゲット20の双方の端部20eの少なくとも一方が図示しない回転機構によって支持される。
【0040】
ここで、磁石部31~34のそれぞれがターゲット20に対向する側を磁石部31~34の表側、磁石部31~34のそれぞれがターゲット20に対向しない側を磁石部31~34の裏側とすると、磁石部31~34の裏側には、図示しないヨーク板が配置される。磁石部31~34は、図示しないヨーク板に裏側から支持される。従って、磁石部31~34の裏側においては、磁石部31~34が放つ磁力線がヨーク板に吸収され、ループ磁場が形成されない。なお、ターゲット20は、円筒状のロータリターゲットにかぎらず、プレーナ型ターゲットでもよい。
【0041】
磁気回路部311、319においては、図2(a)に示すように、X軸方向に延在する磁石部31(第1磁石部)と、磁石部31を囲み、U字状に構成された磁石部32(第2磁石部)と、コイル部35とが設けられている。磁石部31は、さらに、磁石部31Aと、X軸方向において磁石部31Aに並ぶ磁石部31Bとを含む。さらに、磁石部31Aは、コイル部35によって取り囲まれている。磁石部32においては、破線aで囲まれた側において磁石部31を開放する。この破線aで囲まれた側は、磁気回路部312~318が位置する側に対応する。
【0042】
例えば、ターゲット20の裏面202に向かって、磁石部31では、S極(第1極)が表面に露出し、磁石部32では、S極と反対のN極(第2極)が表面に露出される。例えば、磁石部31では、S極がターゲット20の裏面202に臨み、磁石部32では、N極がターゲット20の裏面202に臨む。磁石部31Aでは、S極がコイル部35から露出している。
【0043】
磁気回路部311と、磁気回路部319とではX軸方向における向きが逆になっている。すなわち、磁気回路部311において破線aで囲まれた側と、磁気回路部319において破線aで囲まれた側とは、互いに対向する。
【0044】
また、磁気回路部312~318においては、図2(b)に示すように、X軸方向に延在する磁石部33(第3磁石部)と、X軸方向に延在し、磁石部33の両側に配置された一対の磁石部34(第4磁石部)とを含む。例えば、ターゲット20の裏面202に向かって、磁石部33においては、S極が表面に露出し、磁石部34においては、N極が表面に露出する。すなわち、磁石部33においては、S極がターゲット20の裏面202に臨み、磁石部34においては、N極がターゲット20の裏面202に臨む。
【0045】
磁石部31~34のそれぞれは、例えば、同じ材質に構成された永久磁石である。なお、磁石部31Aは、永久磁石に代えて鉄心でもよい。また、この場合、磁石部31A及びコイル部35によって電磁石が構成される。磁石部31B、32~34のそれぞれは、一体的に構成されてもよく、所々で分割されてもよい。
【0046】
磁石部31A、31B、31B、32においては、S極を囲む任意の箇所のN極から磁力線が発せられ、その磁力線が途中でループを描き、そのN極に近接するS極にまで磁力線が走ることになる(図2(c))。同様に、磁石部33、34においても、S極を囲む任意の箇所のN極から磁力線が発せられ、その磁力線が途中でループを描き、そのN極に近接するS極にまで磁力線が走る。これにより、ターゲット20の側では、ループ状の磁場30gが形成される。この磁場30gは、ターゲット20を突き抜け、ターゲット20のスパッタリング面201付近にまで漏洩する。
【0047】
また、磁石部31Aが発する磁場には、コイル部35によって形成されるコイル磁場が重畳される。コイル部35内に流れる電流は、制御装置40(後述)によって制御されている。このコイル部35内に流れる電流値または電流の向きを変えることにより、磁石部31、32によって形成される磁束の位置を適宜変更することができる。すなわち、複数の磁気回路部311~319の中、X軸方向において双方の端部20eに対向する一対の磁気回路部311、319においては、磁石部31、32が発する磁束の位置が変更可能に構成される。
【0048】
図3は、本実施形態の真空処理装置を示す模式的断面図である。
【0049】
真空処理装置2は、例えば、マグネトロンスパッタリング装置であって、ターゲット機構1と、基板支持機構91と、真空容器10と、制御装置40とを具備する。このほか真空処理装置2には、図示しない防着板、排気機構、真空計、ガス供給機構、及びDC、AC,バイポーラ等の電源等が付設される。ターゲット機構1(ターゲット20、磁場発生機構30)、基板90、及び基板支持機構91は、真空容器10に収容される。
【0050】
真空処理装置2においては、ターゲット機構1が真空容器10内に少なくとも1つ設けられる。一例として、図3では複数のターゲット機構1が基板90に沿って配置されている。ターゲット機構1は、真空処理装置2の成膜源である。
【0051】
真空処理装置2においては、基板90及びターゲット群のそれぞれの位置が固定された状態で成膜が実行されてもよく、基板90及びターゲット群のどちらか一方がY軸方向に移動しながら成膜が実行されてもよい。また、真空処理装置2は、枚葉式でもよく、インライン装置の一部でもよい。
【0052】
ターゲット20は、スパッタリング面201が外周面、裏面202が内周面となった円筒状のターゲットである。ターゲット20においては、図1に示すスパッタリング材21と基材22とは同心円状に配置される。磁場発生機構30は、ターゲット20の内部に配置される。一例として、ターゲット20は、いわゆるロータリターゲットであって、中心軸20cを中心に回転し、磁場発生機構30の周りを回転可能に構成される。さらに、ターゲット機構1は、磁場発生機構30が中心軸20cを中心に回転可能になる回転機構(不図示)を有してもよい。
【0053】
基板支持機構91は、基板90を支持する。基板90は、平面形状が矩形であり、例えば、X軸方向が1800mm~3000mm、Y軸方向が1500mm~3400mmのガラス基板を含む。また、基板90は、板状に限らず、ロール状に巻回することが可能な可撓性基板でもよい。この場合、基板支持機構91に代えて、ロール・トゥ・ロール式の基板搬送機構が真空処理装置2に設置される。
【0054】
制御装置40は、真空処理装置2が行う真空処理を自動的に制御する。この真空処理には、ターゲット機構1の制御のほか、基板支持機構91、排気機構、ガス供給機構、及び電源等の制御が含まれる。また、制御装置40には、真空計によって掲出された圧力が入力される。
【0055】
真空処理装置2において、真空容器10内に放電ガスが導入され、ターゲット20に放電電圧が印加されると、ターゲット20のスパッタリング面201の表面近傍で放電ガスが電離し、スパッタリング面201の表面近傍に放電プラズマが発生する。スパッタリング面201から放出されるスパッタリング粒子は、基板90に到達する。これにより、基板90には、スパッタリング粒子を含む被膜が形成される。
【0056】
また、制御装置40は、磁気回路部311、319から放出される磁束の位置を制御し、スパッタリング面201に対向して形成される放電プラズマをターゲット20の端部20eにまで逸らすことできる。
【0057】
なお、真空処理装置2の上下方向(床・天井方向)においては、複数のターゲット機構1の群(以下、ターゲット群)から基板90に向かう方向(Z軸方向)を上下方向としてもよく、ターゲット群が並んだ方向(Y軸方向)を上下方向としてもよく、任意のターゲット機構1が延在する方向(X軸方向)を上下方向としてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、真空処理装置2に限らず、真空処理装置2を用いた真空処理方法が提供される。例えば、ターゲット20と、磁場発生機構30とを準備し、減圧雰囲気下で、磁気回路部311、319が発する磁束の位置を変更し、スパッタリング面201に対向して形成される放電プラズマをターゲット20の端部20eにまで逸らして、スパッタリング面201のプラズマ処理がなされる。
【0059】
次に、真空処理装置2の作用(動作)について説明する。以下に示される真空処理装置2の動作は、制御装置40によって自動的に行われる。
【0060】
図4(a)、(b)は、ターゲットのスパッタリング面にまで漏洩する磁場が移動する動作を示す模式的断面図である。図4(a)、(b)には、図1に示す磁気回路部311が形成する磁場30g(磁力線)の様子が示されている。
【0061】
ここで、図4(a)では、ターゲット20の端部20eからターゲット20の内部を見た場合の磁石部31A、磁石部32、及びコイル部35によって形成される磁場30g(磁力線)が模式的に表され、図4(b)では、ターゲット20の端部20eをY軸方向から見た場合の磁石部31A、31B、磁石部32、及びコイル部35によって形成される磁場30g(磁力線)の様子が模式的に表されている。なお、磁気回路部311と対となる磁気回路部319は、磁気回路部311と同様の磁力線を描く。但し、磁気回路部319が形成する磁力線は、ターゲット20の中央部を基準に磁気回路部311に対し線対称になっている。
【0062】
また、図4(a)においては、両側のN極から真中のS極に向かう磁束がターゲット20のスパッタリング面201と平行になる位置を、位置P1(図の左側)及び位置P2(図の右側)としている。また、図4(b)においては、N極からS極に向かう磁束がターゲット20のスパッタリング面201と平行になる位置を位置P3としている。
【0063】
図4(a)、(b)に示すように、磁石部31A、31B、32によって形成される磁場(磁力線)は、ターゲット20の裏面202からスパッタリング面201にまで漏洩する。スパッタリング面201近傍に放電プラズマを発生させると、放電プラズマ中の電子がスパッタリング面201にまで漏洩した磁力線に捕捉されてスパッタリング面201近傍に高密度プラズマが形成される。
【0064】
ここで、コイル部35に電流を通電させない状態をイニシャル状態とする。コイル部35に電流を通電させると、磁石部31Aによって形成される磁力線には、コイル部35によって形成されるコイル磁場が重畳されることになる。
【0065】
例えば、Z軸方向からみて反時計回りにコイル部35に電流を通電させた場合は、所謂、右ねじ法則によって磁石部31A及びコイル部35によって形成される磁場は、イニシャル状態よりも磁束密度が高くなる。従って、図4(a)に示す位置P1、P2は、イニシャル状態よりも互いに離れる方向に移動する(破線矢印)。また、図4(b)に示す位置P3は、イニシャル状態よりも端部20eに近づく方向に移動する(破線矢印)。
【0066】
一方、Z軸方向からみて時計回りにコイル部35に電流を通電させた場合は、磁石部31Aによって形成される磁場強度がコイル部35によって形成される磁場によって弱められる。これにより、磁石部31A及びコイル部35によって形成される磁場は、イニシャル状態よりも磁束密度が低くなる。従って、図4(a)に示す位置P1、P2は、イニシャル状態よりも互いに接近し合う方向に移動する(実線矢印)。また、図4(b)に示す位置P3は、イニシャル状態よりも端部20eから遠ざかる方向に移動する(実線矢印)。
【0067】
例えば、図4(b)に示す位置P3は、コイル電流が+7(A)(反時計回り)から-7(A)(時計回り)まで変動させたところ、スパッタリング面201において、X軸方向に11mmの範囲で移動することがガウスメータにより確認されている。なお、磁気回路部311、319以外の磁気回路部312~318では、それぞれが永久磁石で構成されているため、図2(c)に示すように磁石部33、34によるループ状の固定磁場が形成される。磁気回路部312~318によって形成される磁場もスパッタリング面201に漏洩する。
【0068】
図5(a)、(b)は、スパッタリング面近傍の放電プラズマが移動する動作を示す模式的断面図である。図5(a)、(b)には、ターゲット20の双方の端部20e付近が示されている。また、図5(a)には、スパッタリング成膜時の様子が示され、図5(b)には、スパッタリング成膜を休止した時のアイドリング時の様子が示されている。
【0069】
例えば、ターゲット20に放電電力が投入され、ターゲット20と基板90との間で放電ガス(例えば、アルゴン)が電離すると、図5(a)に示すように、ターゲット20のスパッタリング面201付近に放電プラズマ50が形成される。
【0070】
このとき、ターゲット20の端部20eにおいては、ターゲット20を支持する回転機構(不図示)が露出している。このため、制御装置40は、放電プラズマ50がターゲット20の端部20eに晒されないよう放電プラズマ50の位置を調整する。例えば、制御装置40は、コイル部35に流れる電流値と電流の向きを制御して端部20e付近の放電プラズマ50の位置を調整する。
【0071】
これにより、成膜工程では、スパッタリング面201に、放電プラズマ50によってスパッタリング面201がスパッタリングされるエロージョン領域203と、エロージョン領域203の外部であって、スパッタリング面201よりもスパッタリングが抑制、またはスパッタリングがされない非エロージョン領域204とが形成される。
【0072】
但し、成膜工程では、スパッタリング面201から放出されるスパッタリング粒子が基板90に堆積して、基板90にスパッタリング膜が形成されることのほか、非エロージョン領域204には、スパッタリング面201から放出されたスパッタリング粒子が再付着して、非エロージョン領域204に再付着膜が形成される場合がある。
【0073】
このような再付着膜が成膜工程中に非エロージョン領域204から剥離すると、基板90に形成されるスパッタリング膜に再付着膜の成分が混入し、スパッタリング膜の信頼性が低下してしまう。
【0074】
再付着膜のスパッタリング膜への混入を防止する手法として、成膜工程を一旦停止し、真空容器10を大気に開放して、研磨具(やすり、サンドペーパー)等で再付着膜を非エロージョン領域204から除去する手法がある。しかしながら、このような手法は、真空容器10を大気に開放したり、また大気に開放された真空容器10を所望の減圧雰囲気になるまで真空排気したりすることから、成膜工程が中断し、成膜処理の歩留まりが低くなってしまう。
【0075】
これに対して、本実施形態では、非エロージョン領域204に再付着膜が形成されても、大気開放及び大気開放後の真空排気を要さず、真空中で放電プラズマ50が非エロージョン領域204にまで移動して、非エロージョン領域204のプラズマクリーニングがなされる。
【0076】
例えば、制御装置40がZ軸方向からみて反時計回りにコイル部35に電流を所定の電流値で通電させることにより、図4(b)に示す位置P3を端部20eに近づけることができる。これにより、スパッタリング面201付近で磁場に捕捉される放電プラズマ50は、エロージョン領域203のみならず非エロージョン領域204にまで広がり、非エロージョン領域204に放電プラズマ50を晒すことができる。この結果、成膜工程でエロージョン領域203から放出したスパッタリング粒子が非エロージョン領域204に堆積して形成された再付着膜は、放電プラズマ50によるプラズマ処理によってスパッタリングされ、非エロージョン領域204から取り除かれる。
【0077】
このような手法によれば、真空容器10を大気に開放したり、または、大気開放後の真空排気をしたりする手間を省くことができる。これにより、真空処理装置2のダウンタイムは減少し、成膜工程の生産性がより向上する。特に、成膜工程を停止させた後のアイドリング時間に、非エロージョン領域204に堆積した再付着膜を放電プラズマ50によって除去する処理を組み込めば、成膜工程が大気開放及び大気開放後の真空排気に浸食されることがなくなり、効率よくスパッタリング成膜を行うことができる。
【0078】
なお、アイドリング時間中に非エロージョン領域204に堆積した再付着膜を放電プラズマ50によって除去する場合は、基板90として製品用の基板でなくダミー基板を用いてもよい。
【0079】
(変形例1)
【0080】
図6(a)、(b)は、本実施形態の変形例1に係る真空処理装置の動作を示す模式的断面図である。
【0081】
磁場発生機構30は、複数の磁気回路部311~319をターゲット20の中心軸20cを中心に回転することができる回転機構(不図示)を利用してもよい。
【0082】
例えば、図6(a)に示すように、制御装置40は、成膜工程時、エロージョン領域203をスパッタリングする制御をする際、複数の磁気回路部311~319が基板90に対向する位置(第1の回転位置)に位置させて、エロージョン領域203をスパッタリングする制御をする。
【0083】
また、図6(b)に示すように、制御装置40は、アイドリング時、非エロージョン領域204をスパッタリングする制御をする際、複数の磁気回路部311~319を図6(a)の位置とは異なる回転位置(第2の回転位置)に位置させて非エロージョン領域204をスパッタリングする制御をする。ここで、「異なる回転位置」とは、複数の磁気回路部311~319が基板90に対向する位置から複数の磁気回路部311~319を中心軸20cを中心に180度回転させた位置である。この180度回転させた位置では、複数の磁気回路部311~319は、例えば、防着板(不図示)に対向する。
【0084】
このような手法によれば、スパッタリング面201から放出されるスパッタリング粒子が直接的に基板90に入射することが回避され、スパッタリング粒子は、防着板(不図示)に堆積する。これにより、基板90への再付着膜成分の混入がより確実に防止される。
【0085】
(変形例2)
【0086】
図7(a)、(b)は、本実施形態の変形例2に係る真空処理装置の動作を示す模式的断面図である。
【0087】
制御装置40は、移動機構331~339(図1)を利用して、非エロージョン領域204をスパッタリングする制御をしてもよい。例えば、制御装置40は、複数の磁気回路部311~319から一対の磁気回路部311、319を除いた残りの磁気回路部312~318とターゲット20との間の距離を、エロージョン領域203をスパッタリングする際よりも遠ざけて非エロージョン領域204をスパッタリングする制御をしてもよい。
【0088】
例えば、図7(a)に示すように、制御装置40は、成膜工程時には、複数の磁気回路部311~319のそれぞれとターゲット20との距離が同じになる位置でエロージョン領域203をスパッタリングする制御をする。
【0089】
また、図7(b)に示すように、制御装置40は、アイドリング時には、複数の磁気回路部312~318とターゲット20との距離が図7(a)の状態よりも長くなるように複数の磁気回路部312~318を移動させ、非エロージョン領域204をスパッタリングする制御をする。
【0090】
このような手法によれば、エロージョン領域203のスパッタリングが抑制されて、非エロージョン領域204が選択的にスパッタリングされる。これにより、再付着膜を除去する際、エロージョン領域203の消費が抑えられ、非エロージョン領域204を効率よくクリーニングできる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…ターゲット機構(スパッタリングターゲット機構)
2…真空処理装置
10…真空容器
20…ターゲット(スパッタリングターゲット)
20c…中心軸
20e…両端部
21…スパッタリング材
22…基材
30…磁場発生機構
30g…磁場
31、31A、31B、32、33、34…磁石部
35…コイル部
40…制御装置
50…放電プラズマ
90…基板
91…基板支持機構
201…スパッタリング面
202…裏面
203…エロージョン領域
204…非エロージョン領域
311、312、313、314、315、316、317、318、319…磁気回路部
331、332、333、334、335、336、337、338、339…移動機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7