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  • 特開-pH測定装置 図1
  • 特開-pH測定装置 図2
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  • 特開-pH測定装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071283
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】pH測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/18 20060101AFI20230516BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230516BHJP
【FI】
G01N33/18 106E
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183949
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】村山 幸司
(57)【要約】
【課題】 1基のpH測定装置で安定してpH測定を行うことが可能なpH測定装置を提供する。
【解決手段】 pH計10と、その棒状電極11が頂部から差し込まれた構造の筒状の縦形容器20とからなり、ポンプ2で昇圧された測定対象の水溶液を入口ノズル21から連続的に導入させると同時に出口ノズル22からオーバーフローさせながらpH測定を行うpH測定装置1であって、出口ノズル22は、その容器側開口部の最下部の位置Lが縦形容器20の上下方向の中央部Lよりも高く且つ入口ノズル21の容器側開口部の最上部の位置Lよりも高くなっており、縦形容器20の底部にはドレンノズル23及びこれに接続する排出バルブ24が設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH計と、その棒状電極が頂部から差し込まれた構造の筒状の縦形容器とからなり、ポンプで昇圧された測定対象の水溶液を入口ノズルから連続的に導入させると同時に出口ノズルからオーバーフローさせながらpH測定を行うpH測定装置であって、前記出口ノズルは、その容器側開口部の最下部の位置が前記縦形容器の上下方向の中央部よりも高く且つ前記入口ノズルの容器側開口部の最上部の位置よりも高くなっており、前記縦形容器の底部にはドレンノズル及び該ドレンノズルに接続する排出バルブが設けられていることを特徴とするpH測定装置。
【請求項2】
前記出口ノズルの前記最下部と前記入口ノズルの前記最上部とが上下方向に互いに離間する距離が、前記入口ノズルの容器側開口部の半径以上であることを特徴とする、請求項1に記載のpH測定装置。
【請求項3】
前記出口ノズルが、前記縦形容器の上端部に設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のpH測定装置。
【請求項4】
前記排出バルブがバタフライバルブであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のpH測定装置。
【請求項5】
pH計と、その棒状電極が頂部から差し込まれた筒状の縦形容器とからなるpH測定装置の洗浄方法であって、ポンプで昇圧された測定対象の水溶液を入口ノズルから連続的に導入すると同時に該導入した水溶液を、容器側開口部の最下部の位置が前記縦形容器の上下方向の中央部よりも高く且つ前記入口ノズルの容器側開口部の最上部の位置よりも高い出口ノズルからオーバーフローさせた状態のまま前記棒状電極を取り外して該容器の内部を掃除し、前記掃除後は該容器の底部のドレンノズルに設けたバルブを開けて洗浄排液を排出させることを特徴とするpH測定装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、pH測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種生産プラントの処理水や工場排水等の水質管理においては、処理対象となる水溶液のpH測定結果に基づいて薬剤の添加量等を調節するプロセス制御が行なわれており、安定的な制御のためには信頼性の高いpH測定装置を用いて正しくpH値を測定することが必要になる。また、処理後の水溶液に対して、適切な処理が行われたことを確認するためにも信頼性の高いpH測定装置を用いて正しくpH値を測定することが必要になる。しかしながら、長期間に亘ってpH測定装置を用いているうちに、pH電極にスケール等が付着したり、処理対象となる水溶液に含まれる夾雑物によりpH測定装置に上記水溶液を送るためのサンプリング配管(以下、供給配管とよぶこともある)が閉塞したりすることで正確にpH測定できなくなることがあった。
【0003】
そこで、定期的にpH測定装置やそのサンプリング配管を洗浄することが行なわれている。例えば特許文献1には、pH測定の対象となる廃液が受け入れられる共沈タンクに設けたサンプリング用の外部循環ラインに各々pH計を備えた1対のポットを並列に配設したうえで、この外部循環ラインに流入側制御弁を設けると共に、各ポットにも入口制御弁及び出口制御弁を設け、更にこれら制御弁のすぐ下流側に洗浄液ラインを接続することで、これら1対のポットへの廃液の流れを切換えて、各ポットごとに洗浄したり、サンプリング配管を全体的に洗浄したりする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開特開2016-223775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1の技術ではpH計を備えたpH測定装置を複数基設ける必要があり、これら複数のpH測定装置を切り換えながら運転を行う場合においても安定してpH測定が行われるようにするには、これら複数のpH測定装置に対して同様にメンテナンスや分解洗浄等を行う必要があり、多大なコストと手間がかかっていた。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、1基のpH測定装置で安定してpH測定を行うことが可能なpH測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るpH測定装置は、pH計と、その棒状電極が頂部から差し込まれた構造の筒状の縦形容器とからなり、ポンプで昇圧された測定対象の水溶液を入口ノズルから連続的に導入させると同時に出口ノズルからオーバーフローさせながらpH測定を行うpH測定装置であって、前記出口ノズルは、その容器側開口部の最下部の位置が前記縦形容器の上下方向の中央部よりも高く且つ前記入口ノズルの容器側開口部の最上部の位置よりも高くなっており、前記縦形容器の底部にはドレンノズル及び該ドレンノズルに接続する排出バルブが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、1基のpH測定装置で安定してpH測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態のpH測定装置の縦断面図である。
図2図1のpH測定装置の縦形容器のノズル取付位置を模式的に示す平面図である。
図3】本発明の実施例(a)及び比較例(b)で構築したpH測定設備のフロー図である。
図4】本発明の比較例で使用したpH測定装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態のpH測定装置について図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施形態のpH測定装置1は、好ましくはガラス電極法により測定する方式のpH計10と、その棒状のpH電極11が頂部の接続部から差し込まれた構造の略円筒形の縦形容器20とから成り、この縦形容器20の直胴部には、図示しないポンプで昇圧されたpH測定対象の水溶液が連続的に導入される入口ノズル21と、pH測定後の水溶液がオーバーフローにより排出される出口ノズル22とが設けられている。更に、この縦形容器20の底部には、ドレンノズル23が設けられており、このドレンノズル23には排出バルブ24が接続されている。
【0010】
なお、縦形容器20の底部は、ドレンノズル23から洗浄後の排液を容易に排出できるように、略逆円錐形状になっているのが好ましい。また、上記の棒状のpH電極11が差し込まれる縦形容器20の頂部の構造については特に限定はなく、例えば図1に示すように、縦形容器20の上端フランジにフランジ接合する蓋部25から外側に突出する中央ノズル部にキャップ状部材26を螺合させ、このキャップ状部材26の中央部に設けた貫通孔にpH電極11を挿通させる構造が好ましい。あるいは、縦形容器20の上端開口部に直接キャップ状部材をネジ込んで固定する構造でもよい。
【0011】
本発明の実施形態のpH測定装置1においては、出口ノズル22の容器側開口部の最下部の位置Lが、縦形容器20の直胴部の上下方向の中央部Lよりも高く、且つ入口ノズル21の容器側開口部の最上部の位置Lよりも高くなっている。かかる構造により、pH測定装置1での測定のためプロセス配管等から抜き出した測定対象となる排水などの水溶液のサンプルをポンプで昇圧してpH測定装置1に連続的に供給する状態を維持したまま、すなわちポンプの運転を停止することなくpH測定装置1を洗浄することができる。
【0012】
具体的に説明すると、測定対象の水溶液が、例えば海水のように縦形容器20の内側に付着しやすい藻等の付着物を含む場合や、測定条件によっては該測定対象の水溶液に含まれる物質が析出してスケール等の堆積物の形態で析出しやすい場合は、上記した縦形容器20の上端部のフランジを外したり、キャップ状部材を外したりすることで、pH電極11を縦形容器20から引き抜き、入口ノズル21から測定対象の水溶液を連続的に縦形容器20内に導入させると同時にこの入口ノズル21から流れ込んだ水溶液を出口ノズル22からオーバーフローさせる状態を継続させたまま、縦形容器20内をブラシなどの掃除用具を用いて洗浄する。これにより、縦形容器20の内壁部に付着した上記の藻等の付着物やスケール等の堆積物を容易に掃除することができる。
【0013】
上記の掃除を行った後は、底部に設けたドレンノズル23の先の排出バルブ24を開けることで、上記の藻やスケール等の付着物をほぼ完全にドレンノズル23から排出することができる。このように、縦形容器20の底部のドレンノズル23から付着物等を良好に排出させて出口ノズル22から付着物が水溶液と共にオーバーフローしないようにするため、ドレンノズル23から洗浄後の排液を排出させるときは、その単位時間当たりの排出量が、上記のポンプによって縦形容器20内に導入する水溶液の単位時間当たりの供給量よりも多くなるように該ポンプの能力や配管のサイズ及び長さ等を設計することが好ましい。
【0014】
上記のように、pH測定装置1の洗浄の際にポンプの運転を停止する必要がないので、縦形容器20の内部を1回掃除するだけで洗浄がほぼ完了するうえ、pH測定装置1の設置位置から一般的に離れた位置に設けられている上記ポンプの操作盤まで、作業者がポンプの運転停止及び再起動のために少なくとも2往復する必要がなくなる。加えて、仮にpH測定装置1の洗浄の際に上記ポンプの運転を停止すると、次に再起動した際には、該ポンプが設けられている供給配管系内に満液状態で残留していた水溶液が該ポンプの再起動時に一気に流れ始め、この急激な流れによる物理的な力により該供給配管系内に付着している藻やスケール等が剥がれ落ちて掃除後の縦形容器20内に流れ込むため、縦形容器20内を再度1~2回程度掃除する必要が生じるが、ポンプの運転を停止しないのであればこの再度の掃除も不要になる。
【0015】
測定対象の水溶液が海水の場合は、淡水に比べて配管内への藻の付着がより著しいため、上記のようにポンプの運転を一旦停止して掃除し、掃除後に再起動したときにより多くの藻が剥がれて縦形容器20内に大量の藻が流れ込む傾向がある。よって本発明の実施形態のpH測定装置1は、測定対象の水溶液が淡水である場合に比べて海水の場合においてより顕著な効果が得られる。また、本発明の実施形態のpH測定装置1を用いることで、上記のように縦形容器20の内部の掃除回数を減らすことができるので、pH測定装置1は1基のみであるにもかかわらず、安定的にpH測定できる連続測定時間を増やすことができる。
【0016】
本発明の実施形態のpH測定装置1は、上記の縦形容器20の出口ノズル22の容器側開口部の最下部の位置Lと入口ノズル21の容器側開口部の最上部の位置Lとが上下方向に互いに離間する距離Lが、入口ノズル21の容器側開口部の半径(D/2)以上であることが好ましく、縦形容器20の直胴部の高さHの半分(H/2)以上であることがより好ましい。出口ノズル22と入口ノズル21の上下方向の位置関係を上記のように定めることで、縦形容器20の内部において測定対象の水溶液がショートパスしたり過度に滞留したりすることが生じにくくなり、よってpH測定をより正確に行なうことができるうえ、縦形容器20内で藻等が付着するのを抑えることができる。
【0017】
また、本発明の実施形態のpH測定装置1は、出口ノズル22が縦形容器20の直胴部のできるだけ上端側に設けられていることが好ましい。このように出口ノズル22を縦形容器20の上端側に設けることで、入口ノズル21から縦形容器20内に導入した測定対象の水溶液を縦形容器20の内側で円滑に流すことができ、結果的により正確なpH測定が可能になるうえ、出口ノズル22よりも上側の内壁面に藻類が付着するのを抑えることができる。
【0018】
更に、本発明の実施形態のpH測定装置1は、ドレンノズル23に取り付けられている排出バルブ24のタイプがバタフライバルブ又はボールバルブであることが好ましく、バタフライバルブであることがより好ましい。これらのタイプのバルブは、ディスクやボールなどの可動部が全開したときの開口部分の内径をドレンノズル23の内径にほぼ等しくできるので、縦形容器20内に残留している剥離後の付着物をバルブの該可動部で邪魔されることなく容易に排出させることができる。特にバタフライバルブは、バルブ内部の接液部の面積が他のタイプのバルブに比べて少ないので、バルブ内部に藻等が付着する可能性を最小限に抑えることができる。
【0019】
本発明の実施形態のpH測定装置1の接液部の材質は、測定対象の水溶液に対して容易に腐食するのでなければ特に限定はなく、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)などの樹脂や、SUS316などの耐食性金属を好適に用いることができる。特に、排出バルブ24の材質はポリ塩化ビニルであるのがより好ましい。ポリ塩化ビニルは耐食性に優れているうえ、錆びが発生しないこともあって内面の摩擦抵抗が小さいので、剥離した付着物を容易に排出することができ、よって水垢の発生や藻等の付着を抑えることができるからである。
【0020】
本発明の実施形態のpH測定装置1は、図2に示すように真上から見たときの入口ノズル21の取付位置の角度を0°としたとき、出口ノズル22の取付位置の角度が135°以上225°以下の範囲内にあることが好ましい。ノズル取付位置(ノズルオリエンテーション)を上記のように規定することで、縦形容器20の内部における水溶液の流れを全体的に直線に近い流れにすることができる。これにより、縦形容器20の内壁面に藻やスケール等が付着するのを抑えることができる。すなわち、縦形容器20内の流れが全体的に曲がっていると、その最も内周側において局所的に流れが遅くなったり流れが淀んだりし、この部分に接する内壁面に藻やスケール等の付着が生じやすくなるので好ましくない。
【実施例0021】
[実施例]
図1に示すような構造のpH測定装置1を用いて図3(a)に示すpH測定設備を構築し、冷却水としての海水を含む工場排水からサンプリング配管を介して連続的に抜き出したサンプルを1分間に30~60リットルの流量でpH測定装置1に導入してpH測定を行った。なお、pH測定装置1には図1に示すような構造のものを使用し、ポンプ2には株式会社ワールドケミカル製のポンプ(型式:YD-16GS-S)を使用、排出バルブ24には内径16mmのバタフライバルブを用いた。
【0022】
縦形容器20の直胴部の高さHは170mmであり、入口ノズル21の内径は16mm、出口ノズル22の内径は26mmであった。出口ノズル22の容器側開口部の最下部の位置Lは、縦形容器20の直胴部の上下方向の中央部Lよりも高く、且つ入口ノズル21の容器側開口部の最上部の位置Lよりも高くなるようにした。また、上記の出口ノズル22の容器側開口部の最下部の位置Lと入口ノズル21の容器側開口部の最上部の位置Lとが上下方向に互いに離間する距離を30mmにすることで、入口ノズル21の容器側開口部の半径8mm以上になるようにした。
【0023】
このpH測定装置1によるpH測定を3ヶ月間に亘って行ない、その間、2日に1回の頻度で洗浄を行った。この洗浄の際、ポンプ2の運転は停止せずに、入口ノズル21から排水を連続的に縦形容器20内に導入すると同時に出口ノズル22からオーバーフローにより排出させる状態を維持したまま、pH電極11を縦形容器20から外して縦形容器20内に付着していた藻等の付着物をブラシで掃除した。その結果、洗浄時間を1回当たり約2分で済ますことができた。
【0024】
[比較例]
図4に示すような構造のpH測定装置101を使用して図3(b)に示すpH測定設備を構築した以外は上記実施例と同様にして工場排水のpH測定を行った。この比較例のpH測定装置101は、縦形容器20の側部に入口ノズル21を有する上記実施例とは異なり、縦形容器120の底部に入口ノズル121が設けられているため、pH測定装置101の洗浄の際にポンプ2の運転を停止する必要が生じた。
【0025】
また、洗浄後に縦形容器120内に残留する液を排出するため、底部の入口ノズル121に接続されている供給配管を取り外す必要が生じた。更に、ブラシによる縦形容器120内の掃除後に、上記供給配管を繋いでポンプ2を再起動させたとき、縦形容器120の底部の入口ノズル121から該供給配管の内部に付着していたと思われる藻等の付着物が縦形容器120の内部に流れ込んだ。このため、再度ブラシによる掃除が必要になり、剥離した藻等の付着物をほぼ完全に取り除くまでの時間が実施例に比べて長くなった。具体的には、実施例では前述したように1回当たりの洗浄時間が約2分であったのに対して比較例では約4分を要し、また、再洗浄が毎回必要になり、そのために1回当たり最長で約12分を要した。更に、再々洗浄を要する場合が3回に1回程度の頻度で発生し、この再々洗浄には1回当たり約15分を要した。
【符号の説明】
【0026】
1、101 pH測定装置
10 pH計
11 pH電極
20、120 縦形容器
21、121 入口ノズル
22、122 出口ノズル
23 ドレンノズル
24 排出バルブ
25、125 蓋部
26、126 キャップ状部材
図1
図2
図3
図4