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特開2023-71500カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極
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  • 特開-カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071500
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20230516BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
G01N27/327 353F
G01N27/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184334
(22)【出願日】2021-11-11
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝巳
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 尚▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】米田 圭三
(72)【発明者】
【氏名】平塚 淳典
(72)【発明者】
【氏名】田中 丈士
(72)【発明者】
【氏名】六車 仁志
(57)【要約】
【課題】カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極の提供。
【解決手段】基板上にカーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層を有する電極が開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にカーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層を有する電極。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの直径中央値が10nm以下である、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記層が分散剤を更に含む、請求項1~3のいずれかに記載の電極。
【請求項5】
前記分散剤がコール酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記層が3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの補酵素を含まない、請求項1~5のいずれかに記載の電極。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の電極を備えたセンサ。
【請求項8】
3-ヒドロキシ酪酸を測定するための、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの補酵素を用いることなく3-ヒドロキシ酪酸を測定するための、請求項7又は8に記載のセンサ。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載の電極又は請求項7に記載のセンサを用いて3-ヒドロキシ酪酸を測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極に関する技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボンは電気の伝導率が高いことから他の物質との電子伝達を行う導電材料としての応用が進んでいる。例えばナノカーボンをカーボンと樹脂及び有機溶剤からなるインクに混合し基板上に印刷してバイオセンサ用の電極として用いることが提案されている(特許文献1)。また、ナノカーボンの一種であるカーボンナノチューブは過酸化物を測定するセンサに用いられたり(特許文献2)、酵素とともにフィルム状に成形し、センサや燃料電池の電極として用いられたりしている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2005/088288
【特許文献2】WO 2011/007582
【特許文献3】WO 2012/002290
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む電極を提供することが1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
斯かる課題を解決するため、下記を包含する発明が提供される。
項1.
基板上にカーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層を有する電極。
項2.
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである、項1に記載の電極。
項3.
前記カーボンナノチューブの直径中央値が10nm以下である、項1又は2に記載の電極。
項4.
前記層が分散剤を更に含む、項1~3のいずれかに記載の電極。
項5.
前記分散剤がコール酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種である、項4に記載の電極。
項6.
前記層が3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの補酵素を含まない、項1~5のいずれかに記載の電極。
項7.
項1~6のいずれかに記載の電極を備えたセンサ。
項8.
3-ヒドロキシ酪酸を測定するための、項7に記載のセンサ。
項9.
3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの補酵素を用いることなく3-ヒドロキシ酪酸を測定するための、項7又は8に記載のセンサ。
項10.
項1~6のいずれかに記載の電極又は項7に記載のセンサを用いて3-ヒドロキシ酪酸を測定する方法。
【発明の効果】
【0006】
主な効果として、3-ヒドロキシ酪酸を高感度で測定可能であることが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例で作製した電極の構造を示す。「1」はPETフィルムであり、「2」は粘着シートであり、「3」は金蒸着PETフィルムであり、「4」は作用電極部位である。
図2】直径中央値0.9nmのカーボンナノチューブを用いて測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図3】直径中央値1.0nmのカーボンナノチューブを用いて測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図4】直径中央値9.5nmのカーボンナノチューブを用いて測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図5】カーボンナノチューブを用いないで測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図6】直径中央値0.9nmのカーボンナノチューブを用いて測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図7】直径中央値1.0nmのカーボンナノチューブを用いて測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
図8】カーボンナノチューブを用いないで測定したサイクリックボルタモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
電極は、基板上にカーボンナノチューブ(「CNT」とも称する。)及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層を有することが好ましい。前記層は単一の層であっても2つ以上の層であってもよい。CNTと3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼは、単一の層に存在しても別々の層に存在してもよい。一実施形態において、CNT及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼは、2つの層に明確に分離できない層(実質的に単一の層)に存在することが好ましい。
【0009】
CNTの種類は特に制限されず、例えば、単層CNT、二層CNT、三層以上の多層CNTであってもよい。一実施形態において、CNTは、良好な測定感度を実現するため、単層CNTであることが好ましい。一実施形態において、CNTの直径及び直径中央値は、それぞれ、20nm以下、15nm以下、10nm以下、又は5nm以下であることが好ましく、2nm以下、1.9nm以下、1.8nm以下、1.7nm以下、1.6nm以下、1.5nm以下、1.4nm以下、1.3nm以下、1.2nm以下、1.1nm以下、又は1nm以下であることも好ましい。一実施形態において、CNTの直径及び直径中央値は、それぞれ、0.1nm以上、0.5nm以上、0.6nm以上、0.7nm以上、又は0.8nm以上であることが好ましい。一実施形態において、CNTの長さは0.1~1000μmであることが好ましい。CNTは市販されているものを購入して使用してもよく、合成して使用してもよい。CNTの製造方法は公知である。CNTの直径、直径中央値、及び長さは、ラマン分光法(RBM)、光吸収スペクトル、近赤外蛍光分光法、透過電子顕微鏡(TEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)によって測定することができる。
【0010】
3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼは、EC1.1.1.30である以下の反応を触媒する酵素であることが好ましい。
3-ヒドロキシ酪酸+NAD ←→ アセト酢酸+NADH
上記の酵素が3-ヒドロキシ酪酸を酸化する際に生じる電子の量を測定することにより、試料中の3-ヒドロキシ酪酸を測定(例:検出、定量)することができる。上記の酵素としては、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)、ロドスピリウム(Rhodospirillum)、リゾビウム(Rhizobium)、アルカリゲネス(Alcaligenes)等の微生物に由来するもの、当該微生物に由来する酵素遺伝子を他の微生物に組み込んだ改変微生物により製造されるもの、当該微生物に由来する酵素遺伝子を改変した遺伝子から発現されるもの等が挙げられる。
【0011】
CNT及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層において、CNT及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの含有量は任意であり、目的に応じて設定できる。CNTの量は、例えば、0.01~10μg/mmとすることができる。また、3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの含有量は、例えば、0.1~100U/mmとすることができる。ここで、1Uは1分間に1マイクロモルの3-ヒドロキシ酪酸が酸化される酵素量である。
【0012】
CNT及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層は、CNTが該層内で分散した状態で存在するように、分散剤を更に含有することが好ましい。分散剤は、CNTの凝集(bundling)を防止することができる限り特に限定されない。分散剤としては、例えば、アニオン系分散剤、カチオン系分散剤、及びノニオン系分散剤から選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0013】
アニオン系分散剤としては、例えば、コール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。カチオン系分散剤としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。ノニオン系分散剤としては、オクチルフェノールエトキシレート(例:ダウケミカル社製のTriton-X-100、Triton-X-114、Triton-X-305、Triton-X-405)、ポリソルベート類(例:ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート40(Tween40)、ポリソルベート60(Tween60)、ポリソルベート80(Tween80))等が挙げられる。一実施形態において、分散剤は、アニオン系分散剤が好ましく、コール酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0014】
CNT及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層は、3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの補酵素(例えば、NAD)を含んでいても含まなくてもよい。前記補酵素を含まない場合であっても、3-ヒドロキシ酪酸を高感度で測定することができる。また、前記層は、フェナントロリンキノンを含んでいても含まなくてもよい。
【0015】
基板は、絶縁性基板上に金属膜(例えば、金属薄膜)が形成されたものであることが好ましい。絶縁性基板は、例えば、ガラス基板又はプラスチック基板(例えば、PET基板)を用いることができる。金属膜を形成する金属の種類は、電極に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、金、白金、及びチタン等を挙げることができる。また、基板は、絶縁性基板上に金属膜の代わりに炭素膜(例えば、カーボンペーストによる炭素薄膜)が形成されたものであってもよい。
【0016】
基板上にCNT及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層を形成することは、特に制限されない。例えば、これらの物質の各々を分散又は溶解させた液体を調製し、順次基板上の所定部位(基板が、絶縁性基板上に金属薄膜が形成されたものである場合、金属薄膜が形成された場所)に滴下し、乾燥させるという操作を繰り返す方法であってもよい。又は、これらの物質の各々を分散又は溶解させた液体を調製した後、これらを1つに混合し、基板上の所定部位に滴下し、乾燥させる方法であってもよい。分散媒又は溶媒としては、特に制限されず、例えば、水又はpH2~pH10の緩衝液、アルコール系溶媒(例えば、エタノール)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン)等が挙げられる。分散剤又は溶媒は、水(例えば超純水)、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、グッド緩衝液、又はトリス緩衝液であることが好ましい。CNTを分散又は溶解させた液体は、更に分散剤(例えば、コール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース)を含有することが好ましい。当該液体中のCNTの濃度は、例えば、0.002~2w/v%であり、当該液体中の分散剤の濃度は、例えば、0.25~0.75w/v%である。
【0017】
一実施形態において、CNTを分散媒又は溶媒(好ましくは、分散剤を含む)に添加し、超音波破砕機等を用いて分散させ、それを基板上に滴下し、乾燥させた後、3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む液体をその上に滴下し、乾燥させて、CNT及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを含む層を形成することが好ましい。
【0018】
センサは上記の電極を備えることが好ましい。上記電極は、通常、センサ中の作用電極となる。センサは、更に、カウンター電極及び必要により参照電極を備えることが好ましい。このようなセンサの構成は、当該技術分野において公知である。また、センサは、ポテンショスタット及び電流検出回路等のバイオセンサが通常備える構成を備えることができる。
【0019】
上記の電極又はそれを備えたセンサを用いて3-ヒドロキシ酪酸を感度良く測定(例えば、検出、定量)することができる。また、3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの補酵素を用いても又は用いなくても、3-ヒドロキシ酪酸を高感度で測定することができる。3-ヒドロキシ酪酸は任意の物質に由来し得る。センサは、通常測定器に装着されて使用される。測定器に装着されたセンサに試料(血液、特に糖代謝機能障害及び異常を伴う各種疾患(糖尿病等)を有する被験体の血液等)を供給すると、試料中の測定対象物質(3-ヒドロキシ酪酸)と3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼが反応し、電流が生じる。センサの作用極及び対極と電気的に接続された測定器により、この電流を計測することで、試料に含まれる測定対象物質の定量が可能である。作用極と対極の間に電圧を印加した際に流れる電流は、測定対象物濃度と相関がある。電流値と予め作成した検量線から測定対象物の濃度を決定することができる。
【実施例0020】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0021】
[実施例1]
以下の(1)~(3)のカーボンナノチューブのそれぞれの粉末30mgを0.5w/v%コール酸ナトリウム水溶液に懸濁し30mLの懸濁液を3種類調製した。
(1)単層カーボンナノチューブ、直径:0.9nm(中央値),0.8-1.0nm(測定法:TEM)(HiPco:NanoIntegris)
(2)単層カーボンナノチューブ、直径:1.0nm(中央値),0.5-1.5nm(測定法:ラマン分光法(RBM))(MEIJO eDIPS EC1.0:(株)名城ナノカーボン)
(3)多層カーボンナノチューブ、直径:9.5nm(中央値),5-15nm(測定法:TEM)(NC7000:Nanocyl)
【0022】
これらのカーボンナノチューブ懸濁液を18℃でチップ型超音波破砕機(Branson Sonifier 450D:日本エマソン株式会社)を用いて出力30%、1時間処理することによりカーボンナノチューブを分散させた。これらの超音波処理液を210,000g、2時間の超遠心にかけ上清の80%を回収した。これらの回収液をアミコンウルトラ遠心式フィルターユニット 100k(Merck)を用いて濃縮し、0.75~1.5mg/mLのカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0023】
PETシートに金を蒸着させ、9mmの作用電極部位を持つ電極チップを作製した(図1)。上記(1)~(3)のカーボンナノチューブの分散液又は0.5w/v%コール酸ナトリウム水溶液を5μL作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に溶解した3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(東洋紡(株)製、2U/μL)5μLを作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、作用電極部位に2%ナフィオン液を5μL滴下し、乾燥させ、カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを作用電極に固定化した。
【0024】
電気化学アナライザー(ALS/CHI 660B:ビー・エー・エス社)の作用極に上記で作製した電極チップ、参照電極に銀/塩化銀電極、対極に白金線をセットした。この3電極を3-ヒドロキシ酪酸及び補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーによる測定を実施した。0mM、2.5mM、4.4mM、又は10mMの3-ヒドロキシ酪酸濃度についてそれぞれ測定したサイクリックボルタモグラムは図2(直径0.9nmのカーボンナノチューブ)、図3(直径:1.0nmのカーボンナノチューブ)、図4(直径9.5nmのカーボンナノチューブ)、図5(コール酸ナトリウム水溶液;カーボンナノチューブなし)に示すものとなった。このサイクリックボルタモグラムにおいて-0.8Vから+0.8Vへ掃引する際の+0.6Vの電流値は以下の通りであった。
【0025】
【表1】
【0026】
以上の結果より、カーボンナノチューブがある場合に3-ヒドロキシ酪酸の測定が可能で、かつ単層カーボンナノチューブである場合により精度良く3-ヒドロキシ酪酸の測定が可能であることが示された。
【0027】
[実施例2]
以下の(4)~(5)のカーボンナノチューブのそれぞれの粉末30mgを0.5w/v%コール酸ナトリウム水溶液に懸濁し30mLの懸濁液を2種類調製した。
(4)単層カーボンナノチューブ、直径:0.9nm(中央値),0.8-1.0nm(測定法:TEM)(HiPco:NanoIntegris)
(5)単層カーボンナノチューブ、直径:1.0nm(中央値),0.5-1.5nm(測定法:ラマン分光法(RBM))(MEIJO eDIPS EC1.0:(株)名城ナノカーボン)
【0028】
これらのカーボンナノチューブ懸濁液を18℃でチップ型超音波破砕機(Branson Sonifier 450D:日本エマソン株式会社)を用いて出力30%、1時間処理することによりカーボンナノチューブを分散させた。これらの超音波処理液を210,000g、2時間の超遠心にかけ上清の80%を回収した。これらの回収液をアミコンウルトラ遠心式フィルターユニット 100k(Merck)を用いて濃縮し、0.75~1.5mg/mLのカーボンナノチューブ分散液を得た。
【0029】
PETシートに金を蒸着させ、9mmの作用電極部位を持つ電極チップを作製した(図1)。上記(4)、(5)のカーボンナノチューブの分散液又は0.5w/v%コール酸ナトリウム水溶液を5μL作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に溶解した3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(東洋紡(株)製、2U/μL)5μLを作用電極部位に滴下し乾燥させた。乾燥後、作用電極部位に2%ナフィオン液を5μL滴下し、乾燥させ、カーボンナノチューブ及び3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼを作用電極に固定化した。
【0030】
電気化学アナライザー(ALS/CHI 660B:ビー・エー・エス社)の作用極に上記で作製した電極チップ、参照電極に銀/塩化銀電極、対極に白金線をセットした。この3電極を3-ヒドロキシ酪酸を含みニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを含まない50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)に浸漬し、サイクリックボルタンメトリーによる測定を実施した。0mM、2.5mM、4.4mM、又は10mMの3-ヒドロキシ酪酸濃度についてそれぞれ測定したサイクリックボルタモグラムは図6(直径0.9nmのカーボンナノチューブ)、図7(直径:1.0nmのカーボンナノチューブ)、図8(コール酸ナトリウム水溶液;カーボンナノチューブなし)に示すものとなった。このサイクリックボルタモグラムにおいて-0.8Vから+0.8Vへ掃引する際の+0.6Vの電流値は以下の通りであった。
【0031】
【表2】
【0032】
以上の結果より、補酵素であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチドがなくても3-ヒドロキシ酪酸の測定が可能であることが示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8