IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

特開2023-71503基板処理方法、基板処理装置および接合システム
<>
  • 特開-基板処理方法、基板処理装置および接合システム 図1
  • 特開-基板処理方法、基板処理装置および接合システム 図2
  • 特開-基板処理方法、基板処理装置および接合システム 図3
  • 特開-基板処理方法、基板処理装置および接合システム 図4
  • 特開-基板処理方法、基板処理装置および接合システム 図5
  • 特開-基板処理方法、基板処理装置および接合システム 図6
  • 特開-基板処理方法、基板処理装置および接合システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023071503
(43)【公開日】2023-05-23
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置および接合システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230516BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230516BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/304 645C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184340
(22)【出願日】2021-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】三村 勇之
(72)【発明者】
【氏名】中島 常長
(72)【発明者】
【氏名】寺田 尚司
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA03
5F157AA08
5F157AA23
5F157AA28
5F157AA73
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157BG14
5F157BG23
5F157BG33
(57)【要約】
【課題】基板の表面に対してOH基を効率的かつ着実に付着させることがきる技術を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、(A)処理容器内を真空雰囲気とした状態で、洗浄用ガスの原子または分子の集合体であるガスクラスタを前記処理容器内に収容した基板の表面に噴出して、前記基板の表面に付着したパーティクルを除去する工程と、(B)前記処理容器内を真空雰囲気とした状態で、前記処理容器内に水蒸気を供給することにより、前記基板の表面を前記水蒸気に曝してOH基を付着させる工程と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)処理容器内を真空雰囲気とした状態で、洗浄用ガスの原子または分子の集合体であるガスクラスタを前記処理容器内に収容した基板の表面に噴出して、前記基板の表面に付着したパーティクルを除去する工程と、
(B)前記処理容器内を真空雰囲気とした状態で、前記処理容器内に水蒸気を供給することにより、前記基板の表面を前記水蒸気に曝してOH基を付着させる工程と、を含む、
基板処理方法。
【請求項2】
(C)真空雰囲気下に前記基板の表面を改質する工程を有し、
前記(C)工程の後に、前記基板を大気に曝さないまま前記(A)工程および前記(B)工程を行う、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
表面改質装置の装置内で前記(C)工程を行った後、真空雰囲気に調整された真空搬送モジュールを介して前記処理容器内に前記基板を搬送して前記(A)工程および前記(B)工程を行う、
請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
(D)2つの前記基板の表面同士を接合する工程を有し、
前記(D)工程の前に、前記(A)工程および前記(B)工程を行う、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記(B)工程は、前記(A)工程の後に開始する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記(B)工程は、前記(A)工程の実施中に開始する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記(B)工程は、前記(A)工程の前に開始する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記(B)工程では、前記処理容器内において前記基板の表面に対向するように配置された加湿ガスノズルから前記水蒸気を噴出する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記(B)工程では、不活性ガスにより前記水蒸気を搬送して、当該不活性ガスと共に前記水蒸気を前記処理容器内に供給する、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板を収容可能な処理容器と、
前記処理容器内を真空雰囲気とする減圧部と、
前記処理容器内を前記真空雰囲気とした状態で、洗浄用ガスの原子または分子の集合体であるガスクラスタを前記処理容器内に収容した前記基板の表面に噴出して、前記基板の表面に付着したパーティクルを除去する洗浄用ガス供給部と、
前記処理容器内を前記真空雰囲気とした状態で、前記処理容器内に水蒸気を供給することにより、前記基板の表面を前記水蒸気に曝してOH基を付着させる水蒸気供給部と、を含む、
基板処理装置。
【請求項11】
基板の表面を改質する表面改質装置と、
前記表面改質装置により改質された前記基板を処理する基板処理装置と、
前記基板処理装置により処理された2つの前記基板の表面同士を接合する接合装置と、を含む接合システムであって、
前記基板処理装置は、
前記基板を収容可能な処理容器と、
前記処理容器内を真空雰囲気とする減圧部と、
前記処理容器内を前記真空雰囲気とした状態で、洗浄用ガスの原子または分子の集合体であるガスクラスタを前記処理容器内に収容した前記基板の表面に噴出して、前記基板の表面に付着したパーティクルを除去する洗浄用ガス供給部と、
前記処理容器内を前記真空雰囲気とした状態で、前記処理容器内に水蒸気を供給することにより、前記基板の表面を前記水蒸気に曝してOH基を付着させる水蒸気供給部と、を含む、
接合システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置および接合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
2つの基板同士を接合するSi-O-Si結合は、基板の接合面(表面)にOH基を付着させる必要がある。そのため、基板を接合する基板処理では、表面改質装置にて基板の接合面を改質した後、親水化処理装置(基板処理装置)に基板を搬送して、基板の接合面にOH基を付着させる親水化処理を行っている。
【0003】
基板処理装置が大気雰囲気に設けられている場合には、表面改質した基板を大気雰囲気に曝すことで、大気中の接合を阻害する成分と基板の表面とが反応するおそれがある。このため、特許文献1には、基板の接合面の改質後に、装置からロードロック室に基板を搬送し、ロードロック室にて水ガスを供給することで、基板の表面にOH基を付着させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/084285号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板の表面に対してOH基を効率的かつ着実に付着させることがきる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、(A)処理容器内を真空雰囲気とした状態で、洗浄用ガスの原子または分子の集合体であるガスクラスタを前記処理容器内に収容した基板の表面に噴出して、前記基板の表面に付着したパーティクルを除去する工程と、(B)前記処理容器内を真空雰囲気とした状態で、前記処理容器内に水蒸気を供給することにより、前記基板の表面を前記水蒸気に曝してOH基を付着させる工程と、を含む、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一態様によれば、基板の表面に対してOH基を効率的かつ着実に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る接合システムを示す概略平面図である。
図2】一実施形態に係る接合システムが接合する第1基板および第2基板の一例を示す概略側面図である。
図3】一実施形態に係る洗浄装置(基板処理装置)を示す概略側面図である。
図4図4(A)は、第1変形例に係る洗浄装置を示す概略側面図である。図4(B)は、第2変形例に係る洗浄装置を示す概略側面図である。
図5】接合システムによる接合方法(基板処理方法)を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る洗浄装置の基板処理方法を示すフローチャートである。
図7図7(A)は、第1実施形態に係るドライ洗浄および親水化処理を示すタイミングチャートである。図7(B)は、第2実施形態に係るドライ洗浄および親水化処理を示すタイミングチャートである。図7(C)は、第3実施形態に係るドライ洗浄および親水化処理を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る接合システム1は、2つの基板W(第1基板W1、第2基板W2)を接合することで接合基板Tを作製するシステムである。図1中において、接合システム1のX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、互いに垂直な方向であり、X軸方向およびY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。
【0011】
接合システム1は、第1基板W1および第2基板W2の搬入出ステーション2と、第1基板W1および第2基板を処理する処理ステーション3と、を備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、Y軸方向に沿って互いに隣接し、かつ連続するように設置される。
【0012】
この接合システム1で接合される第1基板W1および第2基板W2のうち少なくとも一方は、例えば、シリコンウェハまたは化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。化合物半導体ウェハは、特に限定されないが、例えば、GaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハまたはInPウェハである。なお、第1基板W1および第2基板W2は、半導体基板の代わりに、ガラス基板やサファイア基板が用いられてもよい。第1基板W1および第2基板W2のうち他方は、電子回路が形成されていないベアウェハでもよい。
【0013】
第1基板W1と第2基板W2とは、略同形状(同径)の円板に形成されている。図2に示すように、接合基板Tの作製では、第1基板W1のZ軸負方向側(鉛直方向下側)に第2基板W2を配置して、第1基板W1と第2基板W2を接合する。以下、2つの基板W(第1基板W1、第2基板W2)の板面において、相互に接合される面の各々を「接合面Wj」という。すなわち、第1基板W1は、第2基板W2と接合される接合面Wjとして「接合面W1j」を有し、第2基板W2は、第1基板W1と接合される接合面Wjとして「接合面W2j」を有する。
【0014】
図1に示すように、接合システム1の搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とをY軸方向に隣接配置している。載置台10は、複数の載置板11を上面に有する。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板Wを水平状態で収容するカセットC1、C2、C3がそれぞれ載置される。カセットC1は第1基板W1を収容するカセットであり、カセットC2は第2基板W2を収容するカセットであり、カセットC3は接合基板Tを収容するカセットである。カセットC1、C2において、第1基板W1および第2基板W2は、それぞれの接合面W1j、W2jを上面にした姿勢で収容される。
【0015】
搬送領域20は、載置台10のY軸負方向側に設置されることで、載置台10と処理ステーション3との間に位置している。搬送領域20は、X軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とを備える。搬送装置22は、Y軸方向に移動可能かつ水平面上で旋回(θ回転)可能であり、載置台10上に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、第1基板W1、第2基板W2および接合基板Tを搬送する。
【0016】
なお、載置台10上に載置される載置板11の数およびカセットC1~C3の個数は、特に限定されない。また、載置台10には、カセットC1、C2、C3以外に、不具合が生じた基板を回収するための図示しないカセットが載置されてもよい。
【0017】
処理ステーション3は、X軸正方向側に第1処理ブロックG1を備えるとともに、X軸負方向側に第2処理ブロックG2を備える。また、処理ステーション3は、Y軸正方向側(搬入出ステーション2と、第1処理ブロックG1および第2処理ブロックG2との間)に第3処理ブロックG3を備える。
【0018】
さらに、処理ステーション3は、第1処理ブロックG1~第3処理ブロックG3に囲まれた領域に、搬送装置61を備えた搬送領域60を有する。搬送装置61は、例えば、水平方向、鉛直方向および水平面上で旋回(θ回転)可能な搬送アームを有する。搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に、第1基板W1、第2基板W2および接合基板Tを搬送する。
【0019】
第1処理ブロックG1は、例えば、ロードロックモジュール31と、真空搬送モジュール32と、表面改質装置33と、洗浄装置(基板処理装置)34と、を備える。第1処理ブロックG1は、ブロック内全体を減圧した真空雰囲気とし、表面改質装置33や洗浄装置34内で基板Wを処理する。
【0020】
ロードロックモジュール31は、大気雰囲気となっている搬送領域60と、真空搬送モジュール32との間で基板Wの受渡しおよび受取りを行う。ロードロックモジュール31は、大気雰囲気と真空雰囲気とに切り替え可能な容器と、容器内の気体の流出入を行う圧力調整部と、を有する(共に不図示)。搬送領域60から第1処理ブロックG1に基板Wを搬送する場合に、ロードロックモジュール31は、基板Wの搬入後に大気雰囲気から真空雰囲気に切り替える。逆に、第1処理ブロックG1から搬送領域60に基板Wを搬送する場合に、ロードロックモジュール31は、基板Wの搬入後に真空雰囲気から大気雰囲気に切り替える。
【0021】
真空搬送モジュール32は、図示しない真空搬送装置を備え、ロードロックモジュール31、表面改質装置33および洗浄装置34の間で基板Wを搬送する。
【0022】
表面改質装置33は、基板Wの接合面Wjを改質する。例えば、表面改質装置33は、真空雰囲気において、酸素ガス等の処理ガスをプラズマによりイオン化し、基板Wの接合面Wjに照射する。これにより、基板Wの接合面Wjは、終端基及び、Siとの結合子が切断されてSi・(ダングリングボンド)となり、親水化し易くなる。
【0023】
また、本実施形態に係る洗浄装置34は、改質された第1基板W1の接合面W1jや第2基板W2の接合面W2jにドライ洗浄と親水化処理を行う。この洗浄装置34の構成については後に詳述する。
【0024】
一方、第2処理ブロックG2は、リンス洗浄装置41と、接合装置42と、を備える。リンス洗浄装置41は、表面改質前の基板Wに親水化処理を行う。あるいはリンス洗浄装置41は、洗浄装置34にて親水化処理した基板Wに対して、さらにOH基を付着させる追加処理を行ってもよい。そして、接合装置42は、洗浄装置34またはリンス洗浄装置41で親水化された基板Wである第1基板W1と第2基板W2とを接合して接合基板Tを形成する。
【0025】
第3処理ブロックG3は、例えば、Z軸正方向側からZ軸負方向側に向かって順に、第1位置調整装置、第2位置調整装置、およびトランジション装置等を積層して構成されている(共に不図示)。第1位置調整装置は、第1基板W1を水平面上で回転することにより第1基板W1の水平方向の姿勢を調整し、かつ第1基板W1を上下反転して第1基板W1の接合面W1jを下向きにする。第2位置調整装置は、第2基板W2を水平面上で回転することにより第2基板W2の水平方向の姿勢を調整する。トランジション装置は、第1基板W1、第2基板W2または接合基板Tを一時的に載置する。なお、第1位置調整装置および第2位置調整装置は、接合装置42の一部に設けられてもよい。
【0026】
接合システム1は、システム全体の動作を制御する制御装置90を備える。制御装置90は、1以上のプロセッサ91、メモリ92、図示しない入出力インタフェースおよび電子回路を有する制御用コンピュータである。1以上のプロセッサ91は、CPU、ASIC、FPGA、複数のディスクリート半導体からなる回路等のうち1つまたは複数を組み合わせたものであり、メモリ92に記憶されたプログラムを実行処理する。メモリ92は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含み、制御装置90の記憶部を形成している。
【0027】
次に、第1処理ブロックG1に設置される本実施形態に係る洗浄装置34(基板処理装置)の構成について詳述していく。洗浄装置34は、表面改質装置33で表面改質を行った基板Wの接合面Wjに、ガスクラスタを照射して接合面Wjに付着しているパーティクルを除去するドライ洗浄を行い、さらに基板Wの接合面WjにOH基を付着させる親水化処理を行う。
【0028】
具体的には図3に示すように、洗浄装置34は、処理容器101と、保持部102と、動作部103と、洗浄用ガス供給部104と、減圧部105と、加湿ガス供給部(水蒸気供給部)106と、制御部109と、を備える。
【0029】
処理容器101は、基板Wを収容する処理室111を内部に有する。処理容器101は、底壁112と、底壁112から鉛直方向上側に突出した側壁113と、が連続した凹状部114を備えるとともに、凹状部114の上端に固定されて凹状部114の開放部分を覆う天井部115を備える。処理室111は、底壁112、側壁113および天井部115によって密閉された空間となっており、減圧部105によって大気圧よりも低い圧力(真空雰囲気)に減圧される。側壁113は、基板Wの搬入出口113aを有し、かつ搬入出口113aを開閉するゲートバルブ116を備える。
【0030】
保持部102は、平面視で基板Wの形状に対応する正円状を呈しており、処理室111において基板Wを水平に保持する。保持部102は、基板Wを固定するチャック機構(不図示)を備えてもよい。保持部102は、表面改質装置33において表面改質された基板Wの接合面Wjを上に向けて保持する。つまり、接合面Wjは、洗浄装置34においてドライ洗浄および親水化処理がなされる基板Wの表面にあたる。保持部102は、基板Wの接合面Wjの中心と、当該保持部102の中心とが一致するように基板Wを保持する。
【0031】
動作部103は、保持部102を回転させるとともに、保持部102を水平方向に移動させる機構部である。例えば、動作部103は、保持部102を支持する支軸131と、支軸131を軸回りに回転させる回転機構部132と、支軸131および回転機構部132を水平方向に移動させる移動機構部133と、を含む。支軸131の軸心は、平面視で保持部102の中心に一致している。
【0032】
回転機構部132は、支軸131を支持し、支軸131と一体的に保持部102を回転させる。これにより、回転機構部132は、ガスクラスタや加湿ガスの噴出位置を、基板Wの接合面Wjの周方向に移動させることができる。
【0033】
移動機構部133は、水平方向に保持部102を移動させることで、処理容器101や洗浄用ガス供給部104、加湿ガス供給部106と相対的に保持部102を移動させる。例えば、移動機構部133は、回転機構部132を支持する図示しないアームを旋回させる、回転機構部132を支持する図示しないガイドレールに沿って直線移動させる等の構成を採ることができる。これにより、移動機構部133は、ガスクラスタや加湿ガスの噴出位置を、基板Wの接合面Wjの径方向に移動させることができる。
【0034】
洗浄用ガス供給部104は、ガスクラスタを形成する洗浄用ガスを処理容器101の処理室111に供給する。洗浄用ガスは、予め減圧された処理室111で断熱膨張することで、凝縮温度まで冷却され、分子または原子の集合体であるガスクラスタを形成する。洗浄用ガスとしては、例えば、二酸化炭素(CO)ガスおよびアルゴン(Ar)ガス等の不活性ガスのうち1種類のガス、または複数種類のガスを組み合わせたものを適用し得る。例えば、洗浄用ガス供給部104は、洗浄用ガス源141と、洗浄用ガス供給経路142と、洗浄用ガスノズル143と、を備える。
【0035】
洗浄用ガス源141は、洗浄用ガスを貯留可能な高圧タンク等が適用される。洗浄用ガス供給経路142は、洗浄用ガス源141と洗浄用ガスノズル143との間を接続し、洗浄用ガス源141の洗浄用ガスを洗浄用ガスノズル143に供給する。洗浄用ガス供給経路142の途中位置には、洗浄用ガスの供給および供給停止を切り替える開閉バルブ、洗浄用ガスの流量を調整するマスフローコントローラ等が設けられている(共に不図示)。
【0036】
洗浄用ガスノズル143は、保持部102に保持されている基板Wの接合面Wjに洗浄用ガスを噴射する。洗浄用ガスの噴射方向は、例えば基板Wの接合面Wjに対して垂直な方向であり、本実施形態では鉛直方向下側である。洗浄用ガスノズル143は、移動機構部133が待機している処理容器101内の基準位置にある状態で、保持部102の中心から径方向にずれた位置に配置される。洗浄用ガスノズル143は、例えば、保持部102の半径の中央位置よりも外周側の対向位置に設けられる。
【0037】
洗浄用ガスノズル143は、軸部144およびフランジ部145を有するとともに、軸部144の側周囲を囲う筒状部146を備える。筒状部146は、天井部115に固定される。
【0038】
軸部144およびフランジ部145の軸心部分には、洗浄用ガスの流路(不図示)が貫通形成されている。詳細には、流路は、洗浄用ガスの流通方向の上流側から下流側に向かって順に、ガス供給室と、ガス供給室よりも小径のスロートと、スロートから下流側に向かって徐々に拡大するテーパ孔と、を含む。また軸部144は、テーパ孔の下流端に、筒状部146の通路に連通する噴出口147を有する。このように構成された洗浄用ガスノズル143は、ガス供給室に供給された洗浄用ガスを小径のスロートにおいて加速させ、当該加速した洗浄用ガスを噴出口147から噴射する。噴射された洗浄用ガス(例えば、COガス)は、予め減圧された処理室111(筒状部146の通路を含む)において断熱膨張して凝縮温度まで冷却される。これにより、CO分子同士がファンデルワールス力により結合し、CO分子の集合体であるガスクラスタが形成される。ガスクラスタのサイズは、例えば、洗浄用ガス供給経路142からのガス圧、後記のキャリアガスと洗浄用ガスの流量比、処理室111のガス圧などに基づき調整できる。
【0039】
ガスクラスタは、基板Wの接合面Wjに付着したパーティクルに衝突し、パーティクルを吹き飛ばす。ガスクラスタは、パーティクルに直接衝突せずに接合面Wjに衝突することでも、衝突する位置周辺のパーティクルを吹き飛ばすことができる。特に、ガスクラスタは、洗浄用ガスノズル143によって、接合面Wjに対して垂直に衝突する。これにより、接合面Wjに予め形成された凹凸パターンのパターン倒壊を抑制できる。衝突によってガスクラスタは、高温になることで、集合体から分解される。
【0040】
なお、洗浄用ガス供給部104は、洗浄用ガスとキャリアガスの混合ガスを処理室111に供給してもよい。例えば、洗浄用ガス供給部104は、洗浄用ガス源141または洗浄用ガス供給経路142に接続される合流経路と、合流経路の上流端に接続されるキャリアガス源とを備える(共に不図示)。キャリアガスは、洗浄用ガスよりも小さな分子量または原子量のものを適用することで、洗浄用ガスよりも高い凝縮温度を有しており、ガスクラスタを形成しない。例えば、キャリアガスとしては、水素(H)ガス、ヘリウム(He)ガス等のうち1種類のガス、または複数種類のガスを組み合わせたものを適用するとよい。キャリアガスは、洗浄用ガスの分圧を下げることで、洗浄用ガスノズル143の内部での洗浄用ガスの液化を抑制する。また、キャリアガスは、洗浄用ガスノズル143に対するガスの供給圧を所望の気圧まで高めることで、洗浄用ガスの加速を高め、ガスクラスタの成長を促すことができる。
【0041】
なお、洗浄用ガスを噴出する構成は、上記に限定されず、例えば、洗浄用ガス供給部104は、複数の洗浄用ガスノズル143を天井部115に備えてもよい。また、洗浄用ガス供給部104は、処理容器101と相対的に水平方向に洗浄用ガスノズル143を移動可能な移動部を有してもよい。
【0042】
減圧部105は、底壁112の排気口112aを介して、処理室111の気体を排気することで、処理室111を大気圧よりも低い圧力である真空雰囲気に減圧する。排気する処理室111の気体には、洗浄用ガス供給部104が供給した洗浄用ガス、または後記の加湿ガス供給部106が供給した加湿ガスが含まれる。なお図3中では、洗浄用ガスノズル143に対向する位置(洗浄用ガスノズル143の真下)に排気口112aを設けているが、排気口112aの位置は任意に設計してよい。
【0043】
減圧部105は、例えば、処理室111のガスを吸引する吸引ポンプと、排気口112aと吸引ポンプとを接続する吸引経路と、吸引経路の途中に設けられる圧力制御器と、を有する(共に不図示)。圧力制御器は、制御部109による制御下に、処理室111のガス圧を調整する。制御部109は、ガスクラスタを基板Wに噴出する際に、例えば、5Pa~120Paの範囲において所定の目標圧力に維持する。
【0044】
加湿ガス供給部106は、処理容器101の処理室111に加湿ガスである水蒸気(HO)を供給する。処理室111内で基板Wの接合面Wjに至った加湿ガスは、シリコン(Si)と反応することで、表面改質後の基板WにOH基を付着させる。本実施形態において処理容器101に供給する「加湿ガス」は、気化した水(水蒸気)のみの気体でもよく、水蒸気の他に当該水蒸気を搬送するためのキャリアガスを含む気体でもよい。キャリアガスとしては、アルゴン(Ar)ガスや窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガス等の不活性ガスがあげられる。
【0045】
具体的に、加湿ガス供給部106は、処理容器101に接続される加湿ガス供給経路161を有する。そして例えば、加湿ガス供給部106は、この加湿ガス供給経路161の上流側から下流側に向かって順に、給水源162、気化器163、流量調整器164、開閉バルブ165および加湿ガスノズル166を備える。
【0046】
給水源162は、液体の水(以下、液水という)を貯留しており、加湿ガス供給経路161に液水を圧送する。気化器163は、給水源162から供給された液水を加熱することで水蒸気(HO)を生成して、気化器163よりも下流側の加湿ガス供給経路161に水蒸気を送出する。流量調整器164は、マスフローコントローラ等が適用され、処理容器101に供給する水蒸気の流量を調整する。開閉バルブ165は、加湿ガス供給経路161の流路を開放および遮断することで、処理容器101への水蒸気の供給および供給停止を切り替える。
【0047】
なお、キャリアガスにより水蒸気を搬送する場合は、給水源162に貯留された液水にキャリアガスでバブリングすることで、水蒸気を生成し、水蒸気とキャリアガスを加湿ガス供給経路161に送出してもよい。あるいは、加湿ガス供給部106は、気化器163にキャリアガスを供給して液水をキャリアガスで霧化させることで水蒸気を生成し、水蒸気とキャリアガスを加湿ガス供給経路161にしてもよい。加湿ガス供給部106は、キャリアガスにより水蒸気を搬送することで、処理容器101内に水蒸気をより安定して供給することができる。
【0048】
また、加湿ガス供給部106は、処理容器101内に噴出する加湿ガスの温度を調整する温度調整部(不図示)を、加湿ガス供給経路161の途中位置に備えてもよい。温度調整部により適宜の温度に調整された加湿ガスは、処理室111内において気体の状態を良好に維持することができる。
【0049】
加湿ガスノズル166は、処理容器101に設置され、加湿ガス供給経路161から供給された加湿ガスを処理室111に噴出する。加湿ガスノズル166は、天井部115において洗浄用ガスノズル143に隣接し、軸が鉛直方向に沿うように強固に固定される。加湿ガスノズル166は、移動機構部133が待機している処理容器101内の基準位置にある状態で、保持部102の中心から径方向にずれた位置に配置されている。加湿ガスノズル166は、例えば、保持部102の半径の中央位置よりも中心側の対向位置に設けられる。なお、天井部115における加湿ガスノズル166の位置は、特に限定されず、例えば、保持部102(基板W)の中心に対向するように配置されてもよい。
【0050】
加湿ガスノズル166の下流端には、保持部102に対向する噴出口167が形成されている。加湿ガスノズル166は、噴出口167から鉛直方向下側に向かって加湿ガスを噴出することで、保持部102に保持された基板Wの接合面Wjに加湿ガスを直ぐに当てることができる。また、加湿ガスノズル166内の通路166aは、噴出口167に向かって徐々に拡径するテーパ状に形成されている。そのため、加湿ガスノズル166は、噴出口167から処理室111の水平方向に広がるように加湿ガスを噴出できる。
【0051】
なお、加湿ガスを噴出する構成は、特に限定されず、例えば、加湿ガス供給部106は、複数の加湿ガスノズル166を天井部115に備えてもよい。この場合、加湿ガス供給経路161を複数に分岐させて、各加湿ガスノズル166に接続すればよい。また、加湿ガスノズル166は、天井部115の略全体から加湿ガスを噴出可能なシャワー構造等をとってもよい。さらに、加湿ガス供給部106は、処理容器101と相対的に水平方向に加湿ガスノズル166を移動可能な移動部を有してもよい。
【0052】
図4Aに示す第1変形例のように、加湿ガス供給部106は、加湿ガスノズル166を処理容器101の側壁113に備えてもよい。このように側壁113に設置した加湿ガスノズル166でも、処理室111に加湿ガスを供給することで、処理室111内の水蒸気量を充分に増加させることができる。あるいは、図4Bに示す第2変形例のように、加湿ガス供給部106は、処理容器101の側壁113と天井部115の各々に加湿ガスノズル166を備えていてもよい。これにより、加湿ガス供給部106は、処理室111内を満遍なく加湿することができ、基板Wの接合面WjにOH基をより均一に付着させることが可能となる。
【0053】
図3に戻り、洗浄装置34の制御部109は、洗浄装置34の動作部103、洗浄用ガス供給部104、減圧部105および加湿ガス供給部106の動作を制御する。制御部109は、プロセッサ191、メモリ192、図示しない入出力インタフェース、電子回路等を有するコンピュータを適用し得る。制御部109は、接合システム1の制御装置90に通信可能に接続され、制御装置90の制御指令に基づき洗浄装置34を制御する。なお、制御装置90が制御部109の機能を備えてもよい。
【0054】
制御部109は、洗浄用ガス供給部104を制御して、保持部102に保持された基板Wに対して洗浄用ガスのガスクラスタを噴出することで、基板Wの接合面Wjのパーティクルを除去するドライ洗浄を行う。また、制御部109は、加湿ガス供給部106を制御して、保持部102に保持された基板Wに対して加湿ガスを噴出することで、基板Wの接合面WjにOH基を付着させる親水化処理を行う。
【0055】
本実施形態に係る接合システム1および洗浄装置34(基板処理装置)は、基本的には以上のように構成され、以下、第1実施形態に係る基板処理方法について具体的に説明していく。
【0056】
図1に示すように、接合基板Tの製作において、作業者または搬送ロボット(不図示)は、複数枚の第1基板W1を収容したカセットC1、複数枚の第2基板W2を収容したカセットC2、および空のカセットC3を搬入出ステーション2の載置台10に載置する。
【0057】
接合システム1の搬送装置22は、カセットC1から第1基板W1を取り出し、第3処理ブロックG3のトランジション装置に搬送する。さらに、接合システム1の搬送装置61は、トランジション装置から第1基板W1を取り出して、第1処理ブロックG1のロードロックモジュール31に搬送する。ロードロックモジュール31は、第1基板W1の搬送後に大気雰囲気から真空雰囲気に減圧し、その後に真空搬送装置によりロードロックモジュール31から表面改質装置33に基板Wを搬送する。
【0058】
そして図5に示すように、接合システム1は、表面改質装置33により、第1基板W1の表面改質を行う(ステップS1:(C)工程)。表面改質装置33は、第1基板W1の接合面W1jを上に向けた状態で接合面W1jを改質する。ステップS1の後、真空搬送装置は、表面改質装置33から第1基板W1を取り出して、真空雰囲気のまま洗浄装置34に第1基板W1を搬送する。
【0059】
接合システム1は、洗浄装置34により、第1基板W1のドライ洗浄および親水化処理を行う(ステップS2:(A)工程および(B)工程)。この洗浄装置34の動作については、後に詳述する。その後、接合システム1は、真空搬送装置により洗浄装置34から第1基板W1を取り出してロードロックモジュール31に搬送する。そして、ロードロックモジュール31において真空雰囲気から大気雰囲気に戻した後、搬送装置61によりロードロックモジュール31から第1基板W1を取り出して第3処理ブロックG3の第1位置調整装置に搬送する。なお、接合システム1は、第1位置調整装置に第1基板W1を搬送する前にリンス洗浄装置41に搬送して、リンス洗浄装置41においてさらに第1基板W1の親水化処理を行ってもよい。第1基板W1の親水化処理は、第1基板W1を大気雰囲気に暴露することで行ってもよく、例えば搬送装置61による第1基板W1の搬送中に行ってもよい。
【0060】
接合システム1は、第1位置調整装置により、第1基板W1を回転することで第1基板W1の水平姿勢を調整し、また第1基板W1の上下を反転する(ステップS3)。これにより、第1基板の接合面W1jが鉛直方向下側に向けられる。その後、接合システム1は、搬送装置61により第1位置調整装置から第1基板W1を取り出して、接合装置42に基板Wを搬送する。
【0061】
また、接合システム1は、第1基板W1に対する上記の処理と並行して(時間を前後して)、第2基板W2にも処理を実施する。接合システム1は、まず搬送装置22によりカセットC2内の第2基板W2を取り出し、第3処理ブロックG3のトランジション装置に第2基板W2を搬送する。その後、接合システム1は、搬送装置61によりトランジション装置から第2基板W2を取り出して、第1処理ブロックG1のロードロックモジュール31に搬送する。ロードロックモジュール31は、第2基板W2の搬送後に大気雰囲気から真空雰囲気に減圧し、その後に真空搬送装置によりロードロックモジュール31から表面改質装置33に基板Wを搬送する。
【0062】
接合システム1は、表面改質装置33により、第2基板W2の表面改質を行う(ステップS4:(C)工程)。表面改質装置33は、第2基板W2の接合面W2jを上に向けた状態で接合面W2jの表面を改質する。ステップS4の後、搬送装置61は、表面改質装置33から第2基板W2を取り出して、真空雰囲気のまま洗浄装置34に第2基板W2を搬送する。
【0063】
そして、接合システム1は、洗浄装置34により、第2基板W2のドライ洗浄および親水化処理を行う(ステップS5:(A)工程および(B)工程)。その後、接合システム1は、真空搬送装置により洗浄装置34から第2基板W2を取り出してロードロックモジュール31に搬送する。そして、ロードロックモジュール31において真空雰囲気から大気雰囲気に戻した後、搬送装置61によりロードロックモジュール31から第2基板W2を取り出して第3処理ブロックG3の第2位置調整装置に搬送する。なお、接合システム1は、第2位置調整装置に第2基板W2を搬送する前にリンス洗浄装置41に搬送して、リンス洗浄装置41においてさらに第2基板W2の親水化処理を行ってもよい。第2基板W2の親水化処理は、第2基板W2を大気雰囲気に暴露することで行ってもよく、例えば搬送装置61による第2基板W2の搬送中に行ってもよい。
【0064】
接合システム1、第2位置調整装置52により、第2基板W2を回転することで、第2基板W2の水平姿勢を調整する(ステップS6)。これにより、第2基板W2の接合面W2jが所定の方位に向けられる。その後、接合システム1は、搬送装置61により第2位置調整装置52から第2基板W2を取り出して、接合装置42に搬送する。
【0065】
接合システム1は、接合装置42により、第1基板W1の接合面W1jと第2基板W2の接合面W2j(2つの基板Wの表面同士)を接合して、接合基板Tを製作する(ステップS7:(D)工程)。なお、接合システム1は、接合工程の実施前に、接合装置42内または図示しない温調装置において、第1基板W1、第2基板W2の各々の温度を調整する温調工程を行ってもよい。
【0066】
接合基板Tの製作後、接合システム1は、搬送装置61により接合装置42から接合基板Tを取り出し、第3処理ブロックG3のトランジション装置に搬送する。最後に、接合システム1は、搬送装置22によりトランジション装置54から接合基板Tを取り出し、載置台10上のカセットC3に搬送する。これにより、接合システム1の一連の処理が終了する。ただし、接合システム1による接合方法は、上記のステップS1~S7に処理フローに限定されず、他の処理を実施してもよい。
【0067】
次に、洗浄装置34の動作(上記のステップS2またはS5の動作)について、図6を参照して説明する。
【0068】
洗浄装置34は、第1処理ブロックG1に基板Wが搬入されるよりも前のタイミングに減圧部105を動作して、処理室111の圧力を目標圧力まで減圧する(ステップS11)。これにより、真空搬送モジュール32、表面改質装置33および洗浄装置34の各空間が真空雰囲気となり、第1処理ブロックG1内で基板Wが大気雰囲気に曝されることを回避できる。
【0069】
そして、接合システム1は、表面改質装置33による表面改質後の基板Wを真空搬送装置により処理容器101内に搬入する。この際、洗浄装置34の制御部109は、ゲートバルブ116を開放して処理室111への基板Wの搬入を可能とし(ステップS12)、搬入された基板Wを保持部102により保持する。基板Wの保持後に、洗浄装置34は、基板処理を開始する。
【0070】
制御部109は、基板処理において、まず洗浄用ガス供給部104を動作して、基板Wの接合面Wjのドライ洗浄((A)工程)を開始する(ステップS13)。洗浄用ガス供給部104は、洗浄用ガス源141から洗浄用ガス供給経路142に洗浄用ガスを送出し、洗浄用ガス供給経路142の図示しない流量調整器により洗浄用ガスの流量を調整し、洗浄用ガスノズル143から処理室111に洗浄用ガスを噴出する。洗浄用ガスノズル143から処理室111内に流出した洗浄用ガスは、処理室111内の真空雰囲気下に冷却され、ガスクラスタとして基板Wの接合面Wjに吹き付けられる。ガスクラスタの吹き付けにより、先に表面改質装置33にて表面改質された基板Wの接合面Wjに付着しているパーティクルが除去される。
【0071】
ドライ洗浄において、制御部109は、減圧部105により処理室111の圧力を目標圧力に維持している。また、制御部109は、動作部103の回転機構部132を制御して、支軸131を回転中心として保持部102を回転させる。これにより、洗浄装置34は、回転している基板Wに向かってガスクラスタを噴射することで、接合面Wjのパーティクルを満遍なく除去できる。さらに、制御部109は、動作部103の移動機構部133を制御して、保持部102を水平方向に移動させてもよい。洗浄装置34は、水平方向に移動している基板Wに向かってガスクラスタを噴射することで、基板Wの径方向外側に向かうようにパーティクルを誘導できる。制御部109は、予め設定した洗浄期間にわたってドライ洗浄を行う。そして洗浄期間を経過すると、制御部109は、洗浄用ガス供給部104の洗浄用ガスの供給を停止して、ドライ洗浄を終了する(ステップS14)。なお、制御部109は、洗浄用ガスの供給停止後に、動作部103による保持部102の回転を継続してもよく、逆に回転を停止してもよい。
【0072】
ドライ洗浄を停止すると、次に制御部109は、加湿ガス供給部106を動作して、基板Wの接合面Wjを親水化する親水化処理((B)工程)を開始する(ステップS15)。加湿ガス供給部106は、給水源162から加湿ガス供給経路161に送出し、気化器163において加湿ガスである水蒸気を生成し、この加湿ガスを加湿ガス供給経路161の下流側に供給する。そして、加湿ガス供給部106は、加湿ガス供給経路161の流量調整器164により加湿ガスの流量を調整し、加湿ガスノズル166から処理室111に加湿ガスを噴出する。加湿ガスノズル166は、処理容器101内において基板Wの表面に対向側から水蒸気を噴出することで、基板Wの表面に水蒸気を不足なく供給できる。また、加湿ガスノズル166からの水蒸気の噴出により、処理室111内の水蒸気の量(水分量)が所定の濃度に調整される。
【0073】
加湿ガスは基板Wの接合面Wjにおいてシリコン(Si)と反応する。その結果、基板Wの接合面WjにOH基が付着する。特に、洗浄装置34は、ドライ洗浄に続いて親水化処理でも、減圧部105により処理室111の圧力を目標圧力に維持しているので、処理容器101内のドライ洗浄後に、基板Wを大気に曝すことなく、基板WにOH基を直ちに付着させる。このため、大気中の成分や基板Wの接合を阻害する成分が基板Wの接合面WjのSiに反応することを抑制して、基板Wの接合面WjにOH基を着実に反応させることができる。
【0074】
なお、制御部109は、減圧部105を制御して、ドライ洗浄の処理室111の目標圧力と、親水化処理の処理室111の目標圧力とを異なる設定としてよい。例えば、制御部109は、ドライ洗浄の目標圧力よりも親水化処理の目標圧力を高い値に設定することで、水蒸気の凝固を抑制して基板Wの接合面Wjに水蒸気をスムーズに移動させることが可能となる。この場合でも、処理容器101内に基板Wを収容したまま大気に曝すことがないため、接合面Wjに対してOH基を良好に付着させることができる。
【0075】
また親水化処理でも、制御部109は、動作部103の回転機構部132を制御して、支軸131を回転中心として保持部102を回転させる。これにより、洗浄装置34は、回転している基板Wに向かって加湿ガスを噴射することで、接合面Wjに水蒸気を均一的に供給できる。さらに、制御部109は、動作部103の移動機構部133を制御して、保持部102を水平方向に移動させてもよい。洗浄装置34は、水平方向に移動に伴って、加湿ガスノズル166を接合面Wjの全面に対向させることが可能となり、接合面Wjの全面に加湿ガスを安定的に噴出できる。
【0076】
制御部109は、予め設定した親水化処理期間にわたって親水化処理を行う。そして親水化処理期間を経過すると、制御部109は、加湿ガス供給部106の加湿ガスの供給を停止して、親水化処理を停止する(ステップS16)。これにより、処理容器101内での基板処理が終了する。その後、洗浄装置34の制御部109は、ゲートバルブ116を開放して処理室111から基板Wを搬出可能とし(ステップS17)、接合システム1は、真空搬送装置を動作して処理容器101内から基板Wを取り出し、上記したようにロードロックモジュール31に基板Wを搬送する。ロードロックモジュール31は、基板Wの搬入後に真空雰囲気から大気雰囲気に切り替える。これにより、基板Wは、大気に曝されることになるが、既に接合面WjにOH基が付着していることで、シリコンが異物と反応することが抑制される。
【0077】
以上のように、基板処理方法は、真空雰囲気とした処理容器101内において、ドライ洗浄および親水化処理の両方を行うことで、基板Wの表面にOH基を効率的かつ着実に付着させることができる。つまり、基板処理方法は、処理容器101内で大気に基板Wを曝すことを回避しつつ、洗浄用ガスにより基板Wの表面からパーティクルを除去し、また処理容器101内から基板を取り出すことなく親水化処理を行う。その結果、基板Wに異物が反応することを防いで、多量のOH基を基板Wの表面に付着させることができる。
【0078】
特に、基板処理方法は、表面改質装置33による改質工程(ステップS1)の後に、基板Wを大気に曝さないままドライ洗浄および親水化処理(ステップS2)を行うため、基板Wの表面にOH基を一層確実に付着させることができる。そして、基板処理方法は、接合工程(ステップS7)の前にドライ洗浄および親水化処理を実施することで、基板Wの表面に多くのOH基を付着させた状態で接合工程を行うため、基板Wを強固に接合することが可能となる。また、基板処理方法は、表面改質装置33とは異なる装置である洗浄装置34の処理容器101において、ドライ洗浄および親水化処理を行うため、洗浄用ガスや水蒸気を供給する構成のレイアウト性を高めることができる。
【0079】
上記の第1実施形態に係る基板処理方法をまとめると、図7(A)に示すようなタイミングチャートとなる。すなわち、洗浄装置34は、基板処理の開始後、時点ta~時点tbの洗浄期間にわたってドライ洗浄を行う。さらに、洗浄装置34は、時点tbよりも後の時点tc~時点tdの親水化処理期間にわたって親水化処理を行う。なお、洗浄装置34は、ドライ洗浄の終了後に親水化処理を直ちに行ってもよい(時点tbと時点tcが同じタイミングでもよい)。このように、ドライ洗浄においてパーティクルを除去した後の基板Wに対して親水化処理を行うことで、基板処理方法は、基板Wの表面にOH基を良好に付着させることができる。ドライ洗浄と親水化処理を同時に実施しないことで、ガスクラスタと水蒸気の反応を抑制でき、意図しない成分が基板Wの表面に付着することを抑制できる。
【0080】
また、洗浄装置34による基板処理方法は、上記に限定されず、種々の形態をとり得る。以下、基板処理方法の別の実施形態について、いくつか説明していく。
【0081】
図7(B)に示す第2実施形態のように、基板処理方法は、ドライ洗浄の実施中に親水化処理を行ってもよい。これにより、ドライ洗浄後の親水化処理の実施期間を短くすることができ、洗浄装置34の基板処理全体としての作業効率を高めることができる。この際、洗浄装置34は、ドライ洗浄時における加湿ガスの供給量と、ドライ洗浄後における加湿ガスの供給量とを異なる値としてもよい。なお、図7(B)中では、ドライ洗浄の開始する時点taよりも後の時点tcにおいて親水化処理を開始しているが、時点taと時点tcは同じタイミングでもよい。また、ドライ洗浄を終了する時点tbと親水化処理を終了する時点tdとは同じタイミングでもよく、あるいは時点tbよりも前に親水化処理を終了してもよい(時点tdが時点tbより前でもよい)。
【0082】
図7(C)に示す第3実施形態のように、基板処理方法は、ドライ洗浄の実施よりも前に親水化処理を開始してもよい。これにより、表面改質後の基板Wに対して親水化処理を直ちに実施するため、表面改質された基板Wの表面に対してOH基を直ぐに付着させることができる。なお、洗浄装置34は、ドライ洗浄前における加湿ガスの供給量と、ドライ洗浄時における加湿ガスの供給量と、ドライ洗浄後の加湿ガスの供給量と、を異なる値にしてもよい。また図7(C)中では、ドライ洗浄の終了後も親水化処理を継続しているが、ドライ洗浄時に親水化処理を終了してもよく(時点tdが時点ta~時点tbの間でもよく)、あるいはドライ洗浄よりも前に親水化処理を終了してもよい(時点tdが時点taより前でもよい)。
【0083】
今回開示された実施形態に係る基板処理方法、接合システム1および洗浄装置34(基板処理装置)は、すべての点において例示であって制限的なものではない。実施形態は、添付の請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形および改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0084】
34 洗浄装置(基板処理装置)
101 処理容器
104 洗浄用ガス供給部
105 減圧部
106 加湿ガス供給部
W 基板
Wj 接合面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7